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  • 特開-サスペンダ及びシートトリム 図1
  • 特開-サスペンダ及びシートトリム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022221
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】サスペンダ及びシートトリム
(51)【国際特許分類】
   B68G 7/052 20060101AFI20250206BHJP
   B60N 2/58 20060101ALI20250206BHJP
   A47C 31/02 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
B68G7/052 A
B60N2/58
A47C31/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023126611
(22)【出願日】2023-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 周平
(72)【発明者】
【氏名】堀越 善生
(72)【発明者】
【氏名】蓮實 英貴
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DE03
(57)【要約】
【課題】サスペンダが湾曲された状態で表皮材がサスペンダに接合された際に当該表皮材に皺が形成されることを防止又は抑制する。
【解決手段】サスペンダ10は、帯状に形成された吊り部材14と、吊り部材14の短手方向一方側端部に固定された補強片16と、を備えている。吊り部材14の短手方向他方側の端部には、切欠部18が形成されている。切欠部18は、吊り部材14の短手方向他方側が開放可能な形状かつ短手方向一方側が閉止された形状に形成されている。また、切欠部18は、吊り部材14を短手方向一方側へ湾曲させる前の状態において開放端側の部位18Bが窄まる形状となっている。さらに、切欠部18は、吊り部材14を短手方向一方側へ湾曲させた際に開放端側の部位18Bが広がる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状に形成された吊り部材と、
前記吊り部材の短手方向一方側端部に固定された補強片と、
前記吊り部材の短手方向他方側の端部に形成されていると共に前記吊り部材の短手方向他方側が開放可能な形状かつ短手方向一方側が閉止された形状に形成され、前記吊り部材を短手方向一方側へ湾曲させる前の状態において開放端側の部位が窄まる形状となっており、前記吊り部材を短手方向一方側へ湾曲させた際に開放端側の部位が広がる切欠部と、
を備えたサスペンダ。
【請求項2】
請求項1に記載されたサスペンダと、
シートパッドの一部を覆うと共に前記吊り部材に接合された第1の表皮材と、
前記シートパッドの他の一部を覆うと共に前記吊り部材に接合された第2の表皮材と、
を備えたシートトリム。
【請求項3】
前記吊り部材の長手方向に沿うと共に前記切欠部の開放端側の部位を通過し、前記第1の表皮材を前記吊り部材に接合する第1の縫製部材と、
前記吊り部材の長手方向に沿うと共に前記第1の縫製部材よりも前記切欠部の閉止端側の部位を通過し、前記第1の表皮材及び前記第2の表皮材を前記吊り部材に接合する第2の縫製部材と、
を備えた請求項2に記載のシートトリム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンダ及びシートトリムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、カバー吊り部材と、このカバー吊り部材の端部に固定された補強片とを有するサスペンダが開示されている。この文献に記載されたカバー吊り部材の補強片が固定された部分には、補強片に沿って多数のスリット(三角孔)が形成されている。この構成を採ることにより、表皮部材にしわが発生することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-196043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この上記特許文献1に記載された構成は、サスペンダが湾曲された状態で表皮材がサスペンダに接合された際に当該表皮材に皺が形成されることを防止又は抑制することを考慮していない。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、サスペンダが湾曲された状態で表皮材がサスペンダに接合された際に当該表皮材に皺が形成されることを防止又は抑制することを本発明が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様のサスペンダは、帯状に形成された吊り部材と、前記吊り部材の短手方向一方側端部に固定された補強片と、前記吊り部材の短手方向他方側の端部に形成されていると共に前記吊り部材の短手方向他方側が開放可能な形状かつ短手方向一方側が閉止された形状に形成され、前記吊り部材を短手方向一方側へ湾曲させる前の状態において開放端側の部位が窄まる形状となっており、前記吊り部材を短手方向一方側へ湾曲させた際に開放端側の部位が広がる切欠部と、を備えている。
【0007】
第1の態様のサスペンダによれば、吊り部材を短手方向一方側へ湾曲させると、吊り部材の短手方向他方側の端部に形成された切欠部の開放端側の部位が広がる。この構成では、吊り部材を短手方向一方側へ湾曲させた際に、吊り部材が波打つように変形することが抑制される。これにより、吊り部材を短手方向一方側へ湾曲させた状態で、表皮材を吊り部材に接合したとしても、表皮材に皺が発生することを抑制することができる。
【0008】
第2の態様のシートトリムは、第1の態様のサスペンダと、シートパッドの一部を覆うと共に前記吊り部材に接合された第1の表皮材と、前記シートパッドの他の一部を覆うと共に前記吊り部材に接合された第2の表皮材と、を備えている。
【0009】
第2の態様のシートトリムは、第1の態様のサスペンダを備えている。これにより、吊り部材を短手方向一方側へ湾曲させた状態で、第1の表皮材及び第2の表皮材を吊り部材に接合したとしても、第1の表皮材及び第2の表皮材に皺が発生することを抑制することができる
【0010】
第3の態様のシートトリムは、第2の態様のシートトリムにおいて、前記吊り部材の長手方向に沿うと共に前記切欠部の開放端側の部位を通過し、前記第1の表皮材を前記吊り部材に接合する第1の縫製部材と、前記吊り部材の長手方向に沿うと共に前記第1の縫製部材よりも前記切欠部の閉止端側の部位を通過し、前記第1の表皮材及び前記第2の表皮材を前記吊り部材に接合する第2の縫製部材と、を備えている。
【0011】
第3の態様のシートトリムによれば、第1の表皮材を吊り部材に第1の縫製部材を介して接合することができる(第1の表皮材を吊り部材に仮縫いすることができる)。次に、第1の表皮材及び第2の表皮材を吊り部材に第2の縫製部材を介して接合することができる(第1の表皮材及び第2の表皮材を吊り部材に本縫いすることができる)。ところで、吊り部材を短手方向一方側へ湾曲させた際の切欠部の寸法の変化は、閉止端側よりも開放端側のほうが大きい。ここで、第3の態様のシートトリムでは、第1の表皮材及び第2の表皮材を吊り部材に本縫いするための第2の縫製部材が、第1の縫製部材よりも切欠部の閉止端側の部位を通過するようにしている。これにより、第1の表皮材及び第2の表皮材をサスペンダに本縫いした状態における第1の表皮材及び第2の表皮材への皺の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るサスペンダ及びシートトリムは、サスペンダが湾曲された状態で表皮材がサスペンダに接合された際に当該表皮材に皺が形成されることを防止又は抑制することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】サスペンダの一部を拡大して示す拡大平面図である。
図2】シートトリムの製造工程を説明するための模式図であり、第1の表皮材がサスペンダに接合される前の状態を示している。
図3】シートトリムの製造工程を説明するための模式図であり、第1の表皮材がサスペンダに接合された後の状態を示している。
図4】シートトリムの製造工程を説明するための模式図であり、第1の表皮材及び第2表皮材がサスペンダに接合された後の状態を示している。
図5】シートトリムがクッションパッドに取り付けられた状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1図5を用いて、本発明の実施形態に係るサスペンダ10及びシートトリム12について説明する。
【0015】
図1には、後述するシートパッド28(図5参照)に係止される(吊り込まれる)サスペンダ10が示されている。この図に示されるように、サスペンダ10は、帯状に形成された吊り部材14と、吊り部材14に固定された補強片16と、を備えている。
【0016】
吊り部材14は、長尺の帯状に形成されている。ここで、吊り部材14の長手方向一方側を矢印A1で示し、吊り部材14の短手方向一方側を矢印A2で示すことにする。なお、吊り部材14の長手方向及び短手方向は、サスペンダ10の長手方向及び短手方向とそれぞれ一致している。吊り部材14の短手方向一方側の端部には、線状又は棒状に形成された補強片16が固定されている。この補強片16は、吊り部材14の短手方向一方側の端部を長手方向に沿って補強している。
【0017】
吊り部材14の短手方向他方側の端部には、切欠部18が形成されている。なお、図1に示された例では、2つの切欠部18が吊り部材14の短手方向他方側の端部に形成されているが、切欠部18の数はこれに限定されない。切欠部18の数は、吊り部材14に接合される表皮材の構成を考慮して適宜設定すればよい。
【0018】
吊り部材14を短手方向へ湾曲させる前の状態における切欠部18を吊り部材14の厚み方向から見た形状は、吊り部材14の短手方向他方側が開放された形状かつ短手方向一方側が閉止された形状に形成されている。具体的には、切欠部18は、閉止端側の部位18AがU字状湾曲していると共に開放端側の部位18Bが窄まるティアドロップ形状となっている。なお、切欠部18の形状はこの形状に限定されない。
【0019】
図2図4に示されるように、以上説明したサスペンダ10には、第1の表皮材20及び第2の表皮材22が接合される。
【0020】
図2には、サスペンダ10に接合される第1の表皮材20が示されている。この図に示されるように、第1の表皮材20においてサスペンダ10に接合される側の端部20Aは、緩やかに湾曲している。
【0021】
図3に示されるように、先ず、第1の表皮材20をサスペンダ10に仮縫いする。詳述すると、サスペンダ10(吊り部材14及び補強片16)を短手方向一方側へ湾曲させることにより、サスペンダ10を第1の表皮材20の端部20Aに沿って配置して両者を重ねる。この時、切欠部18の開放端側の部位18Bが広がる。
【0022】
次に、吊り部材14の長手方向に沿うと共に切欠部18の開放端側の部位18Bを通過するように縫製をすることにより、第1の表皮材20を吊り部材14に仮縫いする(接合する)。なお、第1の表皮材20をサスペンダ10に仮縫いする際に用いる縫製糸を第1の縫製部材24と呼ぶことにする。ここで、本実施形態では、サスペンダ10を短手方向一方側へ湾曲させる前の状態では、切欠部18の開放端側の部位18Bが閉止端側の部位18Aに対して窄まっている。そのため、切欠部18の開放端側の部位18Bが閉止端側の部位18Aに対して窄まっていない構成に対して、サスペンダ10を短手方向一方側へ湾曲させる際における切欠部18の開放端側の部位18Bの広がりが抑制される。これにより、本工程の仮縫いがし難くなることを抑制することができる。
【0023】
図4に示されるように、次に、第1の表皮材20及び第2の表皮材22を吊り部材14に本縫いする。詳述すると、サスペンダ10に仮縫いされた状態の第1の表皮材20の端部20Aと第2の表皮材22の端部22Aとを重ね合わせる。なお、第2の表皮材22の端部22Aも第1の表皮材20の端部20Aと対応する形状に緩やかに湾曲している。
【0024】
次に、吊り部材14の長手方向に沿うと共に第1の縫製部材24よりも切欠部18の閉止端側の部位18Aを通過するように縫製をすることにより、第1の表皮材20及び第2の表皮材22を吊り部材14に本縫いする(接合する)。なお、第2の表皮材22をサスペンダ10に本縫いする際に用いる縫製糸を第2の縫製部材26と呼ぶことにする。
【0025】
以上の工程を経ることにより、第1の表皮材20及び第2の表皮材22がサスペンダ10に接合されて、シートトリム12が形成される。
【0026】
図5に示されるように、以上説明したシートトリム12は、サスペンダ10がシートパッド28に形成された溝28Aに吊り込まれた状態で当該シートパッド28に取り付けられる。なお、サスペンダ10の補強片16は、シートパッド28に埋設されたインサートワイヤにホグリングを介して係止されている。シートトリム12がシートパッド28に取り付けられた状態では、シートパッド28の一部28Bが第1の表皮材20によって覆われていると共にシートパッド28の他の一部28Cが第2の表皮材22によって覆われている。
【0027】
以上説明したように、本実施形態のサスペンダ10では、吊り部材14を短手方向一方側へ湾曲させると、切欠部18の開放端側の部位18Bが広がる。この構成では、吊り部材14を短手方向一方側へ湾曲させた際に、吊り部材14における切欠部18の両側の部位が吊り部材14の短手方向に縮むように変形することが抑制される。すなわち、吊り部材14が波打つように変形することが抑制される。これにより、吊り部材14を短手方向一方側へ湾曲させた状態で、第1の表皮材20及び第2の表皮材22を吊り部材14に接合したとしても、第1の表皮材20及び第2の表皮材22に皺が発生することを抑制することができる。
【0028】
ところで、図4及び図5に示されるように、本縫いを終えた状態に対して第1の表皮材20及び第2の表皮材22を裏返した状態で当該第1の表皮材20及び第2の表皮材22がシートパッド28に固定される。また、吊り部材14を短手方向一方側へ湾曲させた際の切欠部18の寸法の変化は、閉止端側よりも開放端側のほうが大きい。そのため、寸法の変化が大きい切欠部18の開放端側を第1の表皮材20及び第2の表皮材22とは反対側へ向けることで、本縫いを終えた状態に対して第1の表皮材20及び第2の表皮材22を裏返した状態における第1の表皮材20及び第2の表皮材22への皺の発生を抑制することができる。
【0029】
なお、以上説明した例では、第1の表皮材20及び第2の表皮材22を第1の縫製部材24及び第2の縫製部材26を用いてサスペンダ10に接合した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第2の縫製部材26と対応する縫製部材のみを用いて第1の表皮材20及び第2の表皮材22をサスペンダ10に接合してもよい。
【0030】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0031】
10 サスペンダ
12 シートトリム
14 吊り部材
16 補強片
18 切欠部
20 第1の表皮材
22 第2の表皮材
24 第1の縫製部材
26 第2の縫製部材
28 シートパッド
28B シートパッドの一部
28C シートパッドの他の一部
図1
図2
図3
図4
図5