(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022225
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】リフタレバー及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/16 20060101AFI20250206BHJP
B60N 2/42 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
B60N2/16
B60N2/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023126615
(22)【出願日】2023-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】影山 敦士
(72)【発明者】
【氏名】堀越 善生
(72)【発明者】
【氏名】北爪 伸弥
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA15
3B087BB21
3B087CD05
(57)【要約】
【課題】リフタレバーの近くにシートベルトが配置される場合でも、シートベルトの損傷を防止する。
【解決手段】リフタレバー30は、板金製のレバー本体32と、樹脂製のノブ34と、樹脂製のノブキャップ46とを備える。レバー本体32は、シートクッション12のアウタカバー20の内側に設けられたリフタ機構26に後端部が連結され、アウタカバー20に形成された開口24に前後方向の中間部が挿通され、前部側がアウタカバー20の外側に配置される。ノブ34の内側には、レバー本体32の前部側が嵌合する。ノブキャップ46は、レバー本体32の前後方向中間部に取り付けられ、ノブ34によってレバー本体32に保持され、レバー本体32におけるアウタカバー20とノブ34との間の部位を覆う。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートのシートクッションのアウタカバーの内側に設けられたリフタ機構にシート後方側の端部が連結され、前記アウタカバーに形成された開口にシート前後方向の中間部が挿通され、シート前方側の部分が前記アウタカバーの外側に配置される板金製のレバー本体と、
前記レバー本体におけるシート前方側の部分が内側に嵌合する樹脂製のノブと、
前記レバー本体におけるシート前後方向の中間部に取り付けられ、前記ノブによって前記レバー本体に保持され、前記レバー本体における前記アウタカバーと前記ノブとの間の部位を覆う樹脂製のノブキャップと、
を備えたリフタレバー。
【請求項2】
前記ノブキャップは、前記ノブの内側に嵌合する嵌合部を有している請求項1に記載のリフタレバー。
【請求項3】
前記ノブキャップは、
前記レバー本体に対してシート後方側から接触し、前記ノブにおける前記レバー本体の差込口を塞ぐ後壁と、
前記後壁からシート前方側へ延出され、前記レバー本体に対してシート上方側から接触する上壁と、
前記レバー本体に対して前記後壁及び前記上壁とは反対側から接触する前壁と、
を有している請求項1又は請求項2に記載のリフタレバー。
【請求項4】
前記ノブの内側には、シート幅方向の一方側に突出したリブが形成されており、当該リブと前記レバー本体との間に前記ノブキャップの前記嵌合部が挟まれる請求項2に記載のリフタレバー。
【請求項5】
アウタカバーの内側にリフタ機構が設けられ、前記アウタカバーに開口が形成され、乗員が着座するシートクッションと、
前記乗員の背部を支持するシートバックと、
前記レバー本体におけるシート後方側の端部が前記リフタ機構に連結され、前記レバー本体におけるシート前後方向の中間部が前記開口に挿通された請求項1又は請求項2に記載のリフタレバーと、
を備えた車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関し、特にリフタレバーに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両用シートのシートクッションを昇降させる昇降機構(リフタ機構)を操作するためのリフタレバーが開示されている。このリフタレバーは、リフタ機構に連結される板状延在部と、シートクッションのアウターシールド(アウタカバー)に形成された開口に挿通され、操作可能に外部に露出する挿通露出部とを有しており、挿通露出部に樹脂製の操作用ノブが取り付けられている。このリフタレバーの近くには、シートベルトが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなリフタレバーは、板金によって構成されているため、車両の衝突時にシートベルトがリフタレバーと接触することにより、リフタレバーのエッジによってシートベルトが損傷する虞がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、シートベルトが近くに配置される場合でも、シートベルトの損傷を防止することができるリフタレバー及び該リフタレバーを備えた車両用シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様のリフタレバーは、車両用シートのシートクッションのアウタカバーの内側に設けられたリフタ機構にシート後方側の端部が連結され、前記アウタカバーに形成された開口にシート前後方向の中間部が挿通され、シート前方側の部分が前記アウタカバーの外側に配置される板金製のレバー本体と、前記レバー本体におけるシート前方側の部分が内側に嵌合する樹脂製のノブと、前記レバー本体におけるシート前後方向の中間部に取り付けられ、前記ノブによって前記レバー本体に保持され、前記レバー本体における前記アウタカバーと前記ノブとの間の部位を覆う樹脂製のノブキャップと、を備えている。
【0007】
第1の態様のリフタレバーでは、板金製のレバー本体は、車両用シートのシートクッションのアウタカバーの内側に設けられたリフタ機構にシート後方側の端部が連結される。このレバー本体は、アウタカバーに形成された開口にシート前後方向の中間部が挿通され、シート前方側の部分がアウタカバーの外側に配置される。レバー本体におけるシート前方側の部分は、樹脂製のノブの内側に嵌合する。レバー本体におけるシート前後方向の中間部には、樹脂製のノブキャップが取り付けられる。このノブキャップは、ノブによってレバー本体に保持され、レバー本体におけるアウタカバーとノブとの間の部位を覆う。これにより、本リフタレバーの近くにシートベルトが配置される場合でも、板金製のレバー本体とシートベルトとの接触を防止することができるので、シートベルトの損傷を防止することができる。
【0008】
第2の態様のリフタレバーは、第1の態様において、前記ノブキャップは、前記ノブの内側に嵌合する嵌合部を有している。
【0009】
第2の態様のリフタレバーでは、ノブキャップが有する嵌合部が、レバー本体におけるシート前方側の部分と一緒にノブの内側に嵌合する。これにより、レバー本体からのノブキャップの脱落を効果的に防止することができる。
【0010】
第3の態様のリフタレバーは、第1の態様又は第2の態様において、前記ノブキャップは、前記レバー本体に対してシート後方側から接触し、前記ノブにおける前記レバー本体の差込口を塞ぐ後壁と、前記後壁からシート前方側へ延出され、前記レバー本体に対してシート上方側から接触する上壁と、前記レバー本体に対して前記後壁及び前記上壁とは反対側から接触する前壁と、を有している。
【0011】
第3の態様のリフタレバーでは、ノブキャップの後壁は、レバー本体に対してシート後方側から接触し、ノブにおけるレバー本体の差込口を塞ぐ。ノブキャップの上壁は、後壁からシート前方側へ延出され、レバー本体に対してシート上方側から接触する。ノブキャップの前壁は、レバー本体に対して後壁及び上壁とは反対側から接触する。これにより、レバー本体に対するノブキャップのシート前後方向及びシート上下方向のガタつきを抑えることができる。
【0012】
第4の態様のリフタレバーは、第2の態様において、前記ノブの内側には、シート幅方向の一方側に突出したリブが形成されており、当該リブと前記レバー本体との間に前記ノブキャップの前記嵌合部が挟まれる。
【0013】
第4の態様のリフタレバーでは、ノブの内側に形成された上記のリブとレバー本体との間にノブキャップの嵌合部が挟まれるため、レバー本体に対するノブキャップのシート幅方向のガタつきを抑えることができる。
【0014】
第5の態様の車両用シートは、アウタカバーの内側にリフタ機構が設けられ、前記アウタカバーに開口が形成され、乗員が着座するシートクッションと、前記乗員の背部を支持するシートバックと、前記レバー本体におけるシート後方側の端部が前記リフタ機構に連結され、前記レバー本体におけるシート前後方向の中間部が前記開口に挿通された第1の態様~第4の態様の何れか1つの態様のリフタレバーと、を備えている。
【0015】
第5の態様の車両用シートでは、シートクッションに着座する乗員の背部がシートバックによって支持される。シートクッションのアウタカバーの内側に設けられたリフタ機構には、レバー本体におけるシート後方側の端部が連結されている。レバー本体におけるシート前後方向の中間部は、アウタカバーに形成された開口に挿通されている。このレバー本体は、第1の態様~第4の態様の何れか1つの態様のリフタレバーのものであるため、前述した効果が得られる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、リフタレバーの近くにシートベルトが配置される場合でも、シートベルトの損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係る車両用シートの一部を示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係る車両用シートの一部を示す横断面図である。
【
図3】実施形態に係るリフタレバーを示す第1の斜視図である。
【
図4】実施形態に係るリフタレバーを示す第2の斜視図である。
【
図5】実施形態に係るリフタレバーが備えるノブを示す第1の斜視図である。
【
図6】実施形態に係るリフタレバーが備えるノブを示す第2の斜視図である。
【
図7】実施形態に係るリフタレバーが備えるノブキャップを示す第1の斜視図である。
【
図8】実施形態に係るリフタレバーが備えるノブキャップを示す第2の斜視図である。
【
図9】実施形態に係るリフタレバーが備えるレバー本体の一部とノブキャップを示す第1の斜視図である。
【
図10】実施形態に係るリフタレバーが備えるレバー本体の一部とノブキャップを示す第2の斜視図である。
【
図11】実施形態に係るリフタレバーが備えるレバー本体の一部とノブキャップを示す第3の斜視図である。
【
図13】ノブキャップが取り付けられたレバー本体に対するノブの取り付け方法を説明するための斜視図である。
【
図14】
図4のF14-F14線に沿った切断面を示す断面図である。
【
図15】本実施形態に係るリフタレバーにシートベルトが接触した状態を示す斜視図である。
【
図16A】比較例に係る車両用シートの一部を示す横断面図である。
【
図17A】比較例に係る車両用シートのアウタカバーがシートベルトからの荷重で潰れた状態を示す横断面図である。
【
図18】比較例に係る車両用シートのアウタカバーとリフタレバーのノブとの間にシートベルトが食い込んだ状態を示す横断面図である。
【
図19A】比較例に係る車両用シートのリフタレバーのレバー本体とシートベルトが干渉した状態を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、
図1~
図19Bを参照して本発明の一実施形態に係る車両用シート10について説明する。なお、各図中においては、図面を見易くする関係から一部の符号を省略している場合がある。また、各図中に適宜示される矢印FR、OUT、IN及びUPは、車両用シート10の前方、幅方向外方、幅方向内方及び上方をそれぞれ示している。以下、単に前後、左右、上下の方向を用いて説明する場合、車両用シート10の前後方向、左右方向(幅方向)、上下方向を示すものとする。
【0019】
図1に示されるように、本実施形態に係る車両用シート10は、乗員が着座するシートクッション12と、乗員の背部を支持するシートバック14とを備えている。この車両用シート10は、例えば所謂左ハンドル車の運転席であり、車室前部の左側に配置されている。
【0020】
この車両用シート10には、3点式シートベルト装置によって乗員が拘束される。このシートベルト装置が備えるシートベルト16(
図2参照;
図1では図示省略)の基端部は、例えば車両のセンタピラーの下端部付近に設けられたリトラクタに係止されており、このシートベルト16の先端部は、シートクッション12の左方側(ここでは車幅方向外側)で車体に床部に係止されている。このシートベルト16の中間部に設けられた図示しないタングプレートが、シートクッション12の右方側に設けられたバックル18に連結されることで、乗員がシートベルト16を装着した状態となる。
【0021】
シートクッション12のシート幅方向外側の側部には、樹脂製のアウタカバー(サイドフィニッシャ)20が設けられている。アウタカバー20の前後方向中間部には、左右方向の一方側(シート幅方向内側)へ凹んだ凹部22が形成されている。この凹部22には、リフタレバー30が配置されている。なお、図示は省略するが、リフタレバー30の後方側には、車両用シート10のリクライニング機構を操作するためのリクライニングレバーが設けられている。
【0022】
図1~
図4に示されるように、リフタレバー30は、レバー本体32と、ノブ34と、ノブキャップ46とによって構成されている。レバー本体32は、板金がプレス成形されて製造されたものであり、前後方向を長手方向とし且つ左右方向を板厚方向とする長尺板状をなしている。レバー本体32の前後方向中間部は、下方側へ略台形状に曲がっており、レバー本体32は、側面視で略V字状をなしている(
図13参照)。
【0023】
レバー本体32の前後方向中間部は、凹部22の後面壁22Rに形成された開口24に挿通されている。レバー本体32の後部側(シート後方側の部分)は、アウタカバー20の内側に配置されている。アウタカバー20の内側には、
図2に示されるようにリフタ機構26が配置されており、レバー本体32の後端部に設けられた連結部32Aがボルト締結等の手段でリフタ機構26に連結されている。
【0024】
リフタ機構26は、左右方向を軸線方向とする略円柱状をなしており、連結部32Aに対して左右方向一方側(シート幅方向内側)に配置されている。リフタ機構26の左右方向他方側には、シートクッション12のフレーム13が配置されており、当該フレーム13にリフタ機構26が固定されている。
【0025】
このリフタ機構26は、車体の床部に取り付けられるシートスライドレール28と上記のフレーム13とを連結した図示しない複数のリフタリンクを含むリフタ装置の本体部を構成している。このリフタ装置では、リフタレバー30のレバー本体32が上下方向に回転操作されることにより、リフタ機構26に設けられた図示しない出力軸が回転する。この出力軸に固定されたピニオンが、上記複数のリフタリンクの一つに設けられたセクタギヤに噛合されており、出力軸の回転によって複数のリフタリンクが回転する。これにより、シートクッション12が昇降するように構成されている。
【0026】
レバー本体32の前部側(シート前方側の部分)は、アウタカバー20の凹部22内に配置されており、アウタカバー20の外側に配置されている。このレバー本体32の前部側は、ノブ34の内側に嵌合している。ノブ34は、例えば樹脂の射出成形によって製造されたものであり、
図5及び
図6に示されるように、前後方向を長手方向とする略箱状をなしている。このノブ34は、左右方向の寸法よりも上下方向の寸法が大きく設定されており、前方側へ向かうほど上下方向の寸法が小さくなっている。
【0027】
ノブ34の後端部には、レバー本体32の差込口36が形成されている。この差込口36からレバー本体32の前部側がノブ34の内側に差し込まれている。
図5に示されるように、ノブ34の上面及び左右方向一方側の面(シート幅方向外側の面)には、車両用シート10に着座した乗員がリフタレバー30を操作する際に、ノブ34に指をかけるための凹み38、40が形成されている。
【0028】
図6に示されるように、ノブ34の前部側には、弾性変形可能な係止爪42が設けられている。この係止爪42は、ノブ34におけるシート幅方向内側の内側壁34Aに形成されている。ノブ34の内側に差し込まれるレバー本体32の前部側には、上記の係止爪42が嵌入する図示しない係止孔が形成されている。この嵌入によりノブ34がレバー本体32に係止される構成になっている。また、ノブ34の内側で差込口36の付近には、前後方向に延びる上下二つの突き当てリブ44が形成されている。上下の突き当てリブ44は、ノブ34におけるシート幅方向外側の外側壁34Bからシート幅方向内側へ向けて突出している。
【0029】
図2~
図4に示されるように、レバー本体32の前後方向中間部には、ノブキャップ46が取り付けられている。
図7及び
図8に示されるように、ノブキャップ46は、例えば樹脂の射出成形によって製造されたものであり、後壁46Aと、側壁46Bと、上壁46Cと、前壁46Dと、上方被覆壁46Eと、側方被覆壁46Fとを一体に有している。
【0030】
後壁46Aは、上下方向を長手方向とし且つ略前後方向を板厚方向とすると共に、上下方向に対して若干前傾した板状をなしている。後壁46Aの下部は、シート幅方向内側の部分が切り欠かれており、後壁46Aの上部よりも左右方向の寸法が小さくなっている。側壁46Bは、後壁46Aの前面におけるシート幅方向外側の部分から前方側へ延出されており、左右方向を板厚方向とし且つ左右方向視で五角形の板状をなしている。この側壁46Bには、肉抜き用の複数の孔48が形成されている。側壁46Bの前縁部の上部側は、後方側へ向かって上り勾配に傾斜しており、側壁46Bの前縁部の下部側は、後方側へ向かって下り勾配に傾斜している。
【0031】
上壁46Cは、側壁46Bの上縁部からシート幅方向内側へ延出されており、略上下方向を板厚方向とする板状をなしている。前壁46Dは、側壁46Bの前縁部の下部側からシート幅方向内側へ延出されている。この前壁46Dは、前壁本体46D1と、前壁本体46D1に対して後方斜め下方側に配置されたガタ詰めフランジ46D2とに分割されている。前壁本体46D1とガタ詰めフランジ46D2との間には、スリット50が形成されている。
図12に示されるように、ガタ詰めフランジ46D2の後面には、シート幅方向に延びる上下二つのビード部52が形成されている。
【0032】
上方被覆壁46Eは、後壁46Aの上下方向中央部から後方側へ延出されており、上下方向を板厚方向とする板状をなしている。側方被覆壁46Fは、後壁46Aの下部におけるシート幅方向内側の縁部から後方側へ延出されている。側方被覆壁46Fの上縁部は、上方被覆壁46Eのシート幅方向外側縁部に繋がっている。側方被覆壁46Fは、上方被覆壁46Eよりも後方側へ延びている。側方被覆壁46Fの下縁部には、シート幅方向内側へ屈曲した屈曲部54が形成されている。
【0033】
図9から
図11に示されるように、ノブキャップ46が取り付けられたレバー本体32の前後方向中間部は、前後方向に延びる水平部32Bと、水平部32Bの前端部から前方側かつ上方側へ斜めに延びる傾斜部32Cとを有している。傾斜部32Cの後縁部は、上方側へ向かうほど前方側へ向かうように傾斜しており、上部側で下部側よりも傾斜が緩くなっている。
【0034】
ノブキャップ46の後壁46Aは、傾斜部32Cの後縁部の下部側に対して後方側から接触しており、ノブキャップ46の上壁46Cは、傾斜部32Cの後縁部の上部側に対して後方側かつ上方側から接触している。ノブキャップ46の前壁46Dの前壁本体46D1は、傾斜部32Cの前縁部に対して前方側かつ下方側から近接して対向している。前壁本体46D1の後面におけるシート幅方向内側の縁部には、後方側かつ上方側へ向けて突出した爪部56が形成されている。この爪部56が傾斜部32Cの前縁部に対してシート幅方向内側から引っ掛かることで、ノブキャップ46がレバー本体32に係止されている。
【0035】
前壁46Dのガタ詰めフランジ46D2に形成された二つのビード部52は、傾斜部32Cの前縁部に対して前方側かつ下方側(すなわち傾斜部32Cに対して後壁46A及び上壁46Cとは反対側)から接触している。このガタ詰めフランジ46D2が撓むことにより、ノブキャップ46やレバー本体32の寸法誤差が吸収され、レバー本体32に対する後壁46A、上壁46C及びガタ詰めフランジ46D2の接触状態が確保されるように構成されている。その結果、レバー本体32に対するノブキャップ46の前後方向及び上下方向のガタつきが防止されるように構成されている。
【0036】
上方被覆壁46Eは、レバー本体32の水平部32Bの上縁部に対して上方側から接触又は近接して対向しており、側方被覆壁46Fは、水平部32Bに対してシート幅方向外側から接触又は近接して対向している。側方被覆壁46Fの下縁部に形成された屈曲部54は、水平部32Bの下縁部に対して下方側から接触又は近接して対向している。
【0037】
上記のようにノブキャップ46が取り付けられたレバー本体32の前部側は、
図13に示されるようにノブ34の内側に嵌合される。この際には、
図13に矢印Sで示されるように、ノブ34がレバー本体32に対して前後方向に真直ぐ接近され、レバー本体32の前部側がノブ34の内側に挿入される。そして、ノブ34の係止爪42がレバー本体32の係止孔に嵌入することで、ノブ34がレバー本体32に係止される。
【0038】
ノブキャップ46の後壁46A、側壁46B、上壁46C及び前壁46Dは、ノブ34の内側に嵌合する嵌合部47を構成している。この嵌合により、ノブキャップ46がノブ34によってレバー本体32に保持され、レバー本体32からのノブキャップ46の脱落が防止される。この嵌合状態では、
図3及び
図4に示されるように、ノブキャップ46の後壁46Aによってノブ34の差込口36が塞がれる。また、
図14に示されるように、ノブ34の内側に嵌合した側壁46B(すなわち嵌合部47)は、ノブ34の外側壁34Bに形成された上下のリブ44とレバー本体32との間に挟まれるように構成されている。
【0039】
ノブキャップ46の上方被覆壁46E及び側方被覆壁46Fは、アウタカバー20の凹部22の後面壁22Rに形成された開口24とノブ34との間に配置され、レバー本体32におけるアウタカバー20とノブ34との間の露出部分が、上方被覆壁46E及び側方被覆壁46Fによって上方側及びシート幅方向外側から覆われるように構成されている。
【0040】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
上記構成の車両用シート10では、シートクッション12に着座する乗員の背部がシートバック14によって支持される。シートクッション12のアウタカバー20の内側に設けられたリフタ機構26には、リフタレバー30が備えるレバー本体32の後端部が連結されている。このレバー本体32は、アウタカバー20に形成された開口24に前後方向中間部が挿通され、前部側がアウタカバー20の外側に配置されている。レバー本体32の前部側は、樹脂製のノブ34の内側に嵌合している。レバー本体32の前後方向中間部には、樹脂製のノブキャップ46が取り付けられている。
【0041】
このノブキャップ46は、ノブ34によってレバー本体32に保持されており、レバー本体32におけるアウタカバー20の後面壁22Rとノブ34との間の部位を覆っている。これにより、リフタレバー30の近くに配置されたシートベルト16が車両衝突時にアウタカバー20の後面壁22Rとノブ34との間の隙間に入り込んでリフタレバー30に干渉した場合(
図15参照)でも、板金製のレバー本体32とシートベルト16との接触を防止することができる。その結果、シートベルト16の損傷を防止することが可能となる。
【0042】
上記の効果について、
図16A~
図19Bに示される比較例を用いて補足説明する。
図16A及び
図16Bに示されるように、この比較例では、リフタレバー30’がノブキャップ46を備えていないが、それ以外の構成は本実施形態と同様とされている。
図17A及び
図17Bに示されるように、車両衝突時には、シートベルト16の先端側(以下、単に「シートベルト16」と称する)が乗員からの荷重によって前方側かつシート幅方向内側へ引っ張られる(矢印F、C参照)ことにより、アウタカバー20がシート幅方向内側へ潰され、シートベルト16がノブ34の後端面に接触する。
【0043】
その状態で更にシートベルト16が前方側かつシート幅方向内側へ引っ張られると、
図18に示されるように、アウタカバー20の後面壁22Rとノブ34との間の隙間にシートベルト16が入り込む(食い込む)。その状態で更にシートベルト16の先端側が前方側かつシート幅方向内側へ引っ張られると、
図19A及び
図19Bに示されるように、シートベルト16が板金製のレバー本体32と干渉する。その結果、シートベルト16に解れ等の損傷が生じる場合があるが、本実施形態ではこれを回避することができる。
【0044】
しかも、本実施形態では、ノブキャップ46の後壁46A、上方被覆壁46E及び側方被覆壁46FのR形状や面粗度の調整により、ノブキャップ46に対するシートベルト16の干渉時におけるシートベルト16の挙動を制御することができる。また、ノブキャップ46がノブ34と別部品とされているため、ノブキャップ46とノブ34が一体の場合と比較して、レバー本体32への取り付けが容易になる。つまり、ノブキャップ46とノブ34が一体の場合、レバー本体32の前部側をノブ34の内側に挿入する際に、ノブ34を捩る等の対応が必要になり、取付作業が煩雑になるが、本実施形態では、ノブキャップ46が取り付けられたレバー本体32の前部側をノブ34の内側に真直ぐ挿入すればよいため、取付作業が容易である。
【0045】
また、本実施形態では、ノブキャップ46が有する嵌合部47が、レバー本体32の前部側と一緒にノブ34の内側に嵌合する。これにより、レバー本体32からのノブキャップ46の脱落を効果的に防止することができる。
【0046】
また、本実施形態では、ノブキャップ46の後壁46Aは、レバー本体32に対して後方側から接触し、ノブ34の差込口36を塞ぐ。ノブキャップ46の上壁46Cは、後壁46Aから前方側へ延出されており、レバー本体32に対して上方側から接触している。ノブキャップ46の前壁46Dは、レバー本体32に対して後壁46A及び上壁46Cとは反対側から接触している。これにより、レバー本体32に対するノブキャップ46の前後方向及びウ上下方向のガタつきを抑えることができる。
【0047】
また、本実施形態では、ノブ34の内側で差込口36の付近には、シート幅方向内側に突出した上下のリブ44が形成されており、これらのリブ44とレバー本体32との間にノブキャップ46の嵌合部47が挟まれている。これにより、レバー本体32に対するノブキャップ46のシート幅方向のガタつきを抑えることができる。
【0048】
以上、実施形態を挙げて本発明について説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
10 車両用シート
12 シートクッション
14 シートバック
20 アウタカバー
24 開口
26 リフタ機構
30 リフタレバー
32 レバー本体
34 ノブ
36 差込口
46 ノブキャップ
46A 後壁
46B 側壁
46C 上壁
46D 前壁
47 嵌合部