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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022240
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】液体噴霧装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 11/10 20230101AFI20250206BHJP
   B01F 23/213 20220101ALI20250206BHJP
   B01F 25/42 20220101ALI20250206BHJP
   B01F 35/71 20220101ALI20250206BHJP
   B01F 35/75 20220101ALI20250206BHJP
   B05B 11/00 20230101ALI20250206BHJP
   B05B 15/30 20180101ALI20250206BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
B05B11/10 101C
B01F23/213
B01F25/42
B01F35/71
B01F35/75
B05B11/00 101C
B05B11/00 101E
B05B11/10 101E
B05B15/30
B65D83/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023126653
(22)【出願日】2023-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】512004648
【氏名又は名称】株式会社リスニ
(71)【出願人】
【識別番号】521475392
【氏名又は名称】株式会社アクアフューチャー研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】武居 廣雄
(72)【発明者】
【氏名】加藤 啓雄
【テーマコード(参考)】
3E014
4D073
4G035
4G037
【Fターム(参考)】
3E014PB04
3E014PC03
3E014PD11
3E014PE11
4D073AA04
4D073BB03
4D073CA07
4D073CA30
4D073CB04
4G035AB04
4G035AC11
4G035AC37
4G035AE13
4G037AA02
4G037AA11
4G037EA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】単純な機構によりながらファインバブル領域、特にウルトラファインバブル領域の気泡数密度を著しく高めた液体を噴霧可能な装置を提供する。
【解決手段】液体噴霧装置は、液体を貯留する容器Aと、容器内の液体を噴霧ノズルに導く流路部材と、液体を流路部材を介して吸引し、噴霧ノズルより噴霧させるポンプと、流路部材の流路内に、ポンプにより流路内を流通する液体と接触するように配設され、液体との接触面に液体の流速を局所的に増加させるキャビテーションポイントが複数分散形成されているキャビテーション処理部材54とを備え、キャビテーション処理部材の配設位置における流路の液体流通断面積が、噴霧ノズルの噴霧口の流通断面積よりも大きく設定されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留する容器と、前記容器内の液体を噴霧ノズルに導く流路部材と、前記液体を前記流路部材を介して吸引し、前記噴霧ノズルより噴霧させるポンプと、前記流路部材の流路内に、前記ポンプにより前記流路内を流通する前記液体と接触するように配設され、前記液体との接触面に前記液体の流速を局所的に増加させるキャビテーションポイントが複数分散形成されているキャビテーション処理部材とを備え、前記キャビテーション処理部材の配設位置における前記流路の液体流通断面積が、前記噴霧ノズルの噴霧口の流通断面積よりも大きく設定されていることを特徴とする液体噴霧装置。
【請求項2】
前記キャビテーション処理部材はねじ谷部が前記キャビテーションポイントとして機能するねじ部材であり、該ねじ部材のねじピッチ及びねじ谷深さがいずれも0.2mm以上0.4mm以下であり、前記ねじ部材の配設位置における前記流路の液体流通断面積が2.5mm以上15mm以下であり、前記噴霧ノズルの前記噴霧口の内径が0.2mm以上1.0mm以下である請求項1記載の液体噴霧装置。
【請求項3】
前記ねじ部材の配設位置において前記流路の液体流通断面に存する前記ねじ部材のねじ谷部の数を、前記液体流通断面積により除して得られるねじ谷数面積密度の値が2個/mm以上20個/mm以下である請求項2記載の液体噴霧装置。
【請求項4】
前記ポンプが手動式プッシュポンプであり、1プッシュあたりの噴霧量が0.3cc以上2cc以下である請求項2記載の液体噴霧装置。
【請求項5】
前記手動式プッシュポンプを前記液体の平均噴霧流量が30cc/分以上200cc/分となるように手動操作したとき、前記ねじ部材の配設位置における前記流路の液体流通断面における平均流速が0.05m/秒以上1.2m/秒以下であり、前記流路の液体流通断面に存する前記ねじ部材のねじ谷部の数を、前記平均噴霧流量の値により除して得られるねじ谷数流量密度の値が0.08個・分/L以上0.80個・分/L以下である請求項4記載の液体噴霧装置。
【請求項6】
前記流路部材は、第一端部が前記ポンプの吸引側に接続され第二端部が前記容器内にて底面に臨む位置まで延出する吸引チューブを有し、前記キャビテーション処理部材は前記吸引チューブに取り付けられている請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の液体噴霧装置。
【請求項7】
前記キャビテーション処理部材は、前記容器内の残液レベルが満充填状態の50%のとき液面下に没する位置にて前記吸引チューブに取り付けられている請求項6に記載の液体噴霧装置。
【請求項8】
前記キャビテーション処理部材は、前記吸引チューブの前記第二端部に取り付けられている請求項7に記載の液体噴霧装置。
【請求項9】
前記キャビテーション処理部材はねじ谷部が前記キャビテーションポイントとして機能するねじ部材であり、前記吸引チューブと別体に形成された樹脂製のノズル本体に対し前記ねじ部材が、該ねじ部材の脚部が前記ノズル本体に貫通形成された流通孔内に露出するように組み付けられてキャビテーションノズルを形成しており、該キャビテーションノズルが前記吸引チューブに着脱可能に取り付けられている請求項6記載の液体噴霧装置。
【請求項10】
前記吸引チューブの前記第二端部が前記キャビテーションノズルの前記流通孔内に圧入されている請求項9に記載の液体噴霧装置。
【請求項11】
前記キャビテーション処理部材はねじ谷部が前記キャビテーションポイントとして機能するねじ部材であり、該ねじ部材の脚部が前記吸引チューブの壁部に対し壁部外周面側から直接ねじ込まれている請求項6記載の液体噴霧装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体噴霧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、マイクロバブル(ファインバブル)水を空中に噴射するための空中噴霧用マイクロバブルノズルが開示されている。また、特許文献2には、容器A内に液体が圧縮ガスとともに充填されるとともに、噴射部材付きのバルブ機構を設けた噴射製品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-100720号公報
【特許文献2】特許第6746382号公報
【特許文献3】特開2004-358284号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】NanotechJapan Bulletin Vol. 8, No. 4, 2015 企画特集「Collabo ナノテクノロジー」 <第4 回> 1~6頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の空中噴霧用マイクロバブルノズルは、大気を導入するための特殊な導入口が形成されたノズルを要する。また、このノズルは、導入した大気と圧力水とを混合するための特殊構造を要し、煩雑である。液体を圧縮ガスとともに充填する特許文献2の噴射製品についても同様である。
【0006】
また、こうした加圧溶解式の機構により得られるファインバブル水は、除圧とともに気泡成長が進みやすく、液中に保持できるファインバブルの数密度を高めることが難しく、特にウルトラファインバブル領域の気泡の数密度を確保しにくい問題がある。
【0007】
本発明の課題は、単純な機構によりながらファインバブル領域、特にウルトラファインバブル領域の気泡数密度を著しく高めた液体を噴霧可能な装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の液体噴霧装置は、液体を貯留する容器と、容器内の液体を噴霧ノズルに導く流路部材と、液体を流路部材を介して吸引し、噴霧ノズルより噴霧させるポンプと、流路部材の流路内に、ポンプにより流路内を流通する液体と接触するように配設され、液体との接触面に液体の流速を局所的に増加させるキャビテーションポイントが複数分散形成されているキャビテーション処理部材とを備え、キャビテーション処理部材の配設位置における流路の液体流通断面積が、噴霧ノズルの噴霧口の流通断面積よりも大きく設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記本発明によると、単純な機構によりながらファインバブル領域、特にウルトラファインバブル領域の気泡数密度を著しく高めた液体を噴霧可能な装置が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の液体処理装置の一例を示す断面図。
図2図1の液体処理装置の押下ヘッドを拡大して示す断面図。
図3図1の液体処理装置の空気シリンダ周辺を拡大して示す断面図。
図4図1の液体処理装置の動作を説明する断面図。
図5図1の液体処理装置のキャビテーションノズルの拡大図。
図6図5の縦断面図。
図7】流通孔へのねじ部材の配置形態の第一例を示す底面図。
図8】流通孔へのねじ部材の配置形態の第二例を示す底面図。
図9】液滴中の気泡核が噴霧時に成長して気泡となる様子を説明する模式図。
図10】キャビテーションノズルの別例を示す図。
図11】ねじ部材を吸引チューブの壁部に直接ねじ込む実施形態を示す断面図。
図12図11の吸引チューブを用いた液体処理装置の構成例を示す断面図。
図13】気泡径クラス別の個数密度の算出結果を実施例1と比較例1とで対比して示すヒストグラム。
図14】気泡径クラス別の体積密度の算出結果を実施例1と比較例1とで対比して示すヒストグラム。
図15】気泡径クラス別の個数密度の算出結果を実施例2と比較例1とで対比して示すヒストグラム。
図16】気泡径クラス別の体積密度の算出結果を実施例2と比較例1とで対比して示すヒストグラム。
図17】気泡径クラス別の個数密度の算出結果を実施例3と比較例2とで対比して示すヒストグラム。
図18】気泡径クラス別の体積密度の算出結果を実施例3と比較例2とで対比して示すヒストグラム。
図19】気泡径クラス別の個数密度の算出結果を実施例4と比較例2とで対比して示すヒストグラム。
図20】気泡径クラス別の体積密度の算出結果を実施例4と比較例2とで対比して示すヒストグラム。
図21】気泡径クラス別の個数密度の算出結果を実施例106と比較例2とで対比して示すヒストグラム。
図22】気泡径クラス別の体積密度の算出結果を実施例106と比較例2とで対比して示すヒストグラム。
図23】気泡径クラス別の個数密度の算出結果を実施例118と比較例1とで対比して示すヒストグラム。
図24】気泡径クラス別の体積密度の算出結果を実施例118と比較例1とで対比して示すヒストグラム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を添付の図面に基づき説明する。
図1に本発明の一実施形態である液体噴霧装置1の断面図を示す。液体噴霧装置1はスプレー噴霧装置として構成され、液体Lが充填される容器Aと、シリンダ部材Bと、作動部材Cとを備える。容器Aは、筒状の胴部2より口頸部3を起立している。シリンダ部材Bは、大径の空気シリンダ4の下部に小径の液体シリンダ5を延設して容器A内へ垂下させている。図示例では、装着キャップDに空気シリンダ4の上端が固定されている。装着キャップDは、容器Aの口頸部3の外面へ嵌合させた周壁6の上端より内向きにフランジ状頂壁7を延設するとともに、頂壁7の内周部から案内筒9を起立している。そして、空気シリンダ4の外周上部より外方へ突周設した断面鉤型の係合突条が、上記頂壁7の下面の係合凹部に嵌着させせた形で固定されている。また、空気シリンダ4の下端の内向きフランジ状底壁10の内周からは、小径の液体シリンダ5が垂下し、該シリンダ下端から吸引チューブ11を容器体内底部まで垂下している。そして、該吸引チューブ11の下端には後述のキャビテーションノズル50が着脱可能に装着されている。
【0012】
液体Lの種別については水、水溶液(例えば化粧水等)、アルコールなどの有機溶媒、ないしそれらの混合物であるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
図2及び図3に示すように、作動部材Cは、液体シリンダ5内から起立するステム12と、該ステム12の上端部に嵌着される押下ヘッド13と、大径筒状ピストン14が組み込まれた空気シリンダ4を有する。ステム12の中間部は空気シリンダ4内に嵌合させた大径筒状ピストン14の中心部に貫設されている。また、押下ヘッド13は上方付勢状態で上下動可能に設けられ、その上部内には噴霧ノズル15が横設されている。
【0014】
噴霧ノズル15は、同軸的に配置された第一部材15aと第二部材15bとからなる。第一部材15aは押下ヘッド13内に埋設される筒状であり、軸線方向に空気シリンダ4内と連通する空気噴出路aが形成される。第二部材15bは小空隙部28(液体流出路bの一部をなす)を形成しつつ第一部材15aの前端側を覆う形で押下ヘッド13の凹部に嵌着され、その前方側が噴霧口16として開口している。噴霧ノズル15の外側には噴霧口16とステム12内とを連通させる液体流出路bが形成されている。図12に示すように作動部材Cを押し下げると、空気噴出路aを通り噴霧口16から噴出する空気により液体流出路b内が負圧化し、該負圧化で容器体内液体が吸い上げられ、噴出空気と混合して噴霧される。
【0015】
図2及び図3に示すように、液体シリンダ5の内周には小径筒状ピストン17が嵌合され、該小径筒状ピストン17の下端部外周に突設したステム12の上端に押下ヘッド13を嵌着している。また、押下ヘッド13は、周壁18aの上端に頂壁18bを延設した下端開口の有頂筒状をなすケーシング18の内側上部に、前端を開口した横筒19を横設したものであり、この横筒19内に先端に噴出口を開口した噴霧ノズル15を嵌着している。また、押下ヘッド13は、この横筒19内に上端を連通させて垂下するとともに、下端部をステム12内周上端部に嵌合した縦内筒20と、該縦内筒20外周部分に垂下するとともに、ステム12外周上端部に下端部を隙間をあけて垂下した縦外筒21とを備えている。
【0016】
また、空気シリンダ4内へ嵌合させた大径筒状ピストン14の中央部には基筒部14aが貫設されている。基筒部14aの上部は押下ヘッド13の上記縦外筒21下部内面に対し気密に、かつ小ストロークにて上下動可能に嵌合している。また、ステム12は小径の液体シリンダ5内に設けたコイルスプリング22で上方に付勢され、該上方付勢により、後述する可動弁体の下面を大径筒状ピストン14の隔壁部14bの上面に、また、基筒部14aの下端面をステム12の中間部外面へ付設した受座23の上面に、それぞれ圧接させている。
【0017】
大径筒状ピストン14の基筒部14aと、外周筒状部14cとの間には隔壁部14bが設けられている。隔壁部14bの径方向中間部は起立筒部とされ、その基筒部14aに接する隔壁部部分に複数の外気吸込み弁孔24が穿設されている。また、基筒部14aの下部外面には合成樹脂製筒部25が気密に嵌着され、該合成樹脂製筒部25の下部外面にはフランジ状弾性薄板26が上向き外方に突設されている。該フランジ状弾性薄板26の外周縁は、外気吸込み弁孔24よりも外方にて隔壁部14bの下面に圧接され、外気吸込み弁27を形成している。
【0018】
空気噴出路aは、基筒部14aの下端面から、ステム12と基筒部14aとの間、ステム12と縦外筒21との間、および縦内筒20と縦外筒21の間を通る形で噴霧ノズル15内に連通し、さらに小空隙部28を通って噴霧口16と連通するように構成されている。また、液体流出路bは、ステム12内から縦内筒20内を介して横筒19に穿設した透孔29を通り、さらに噴霧ノズル15周囲の隙間30、および小空隙部28を通って噴霧口16と連通ように成している。そして、基筒部14a下端面と受座23上面とにより空気吐出弁31が形成され、ステム12内には液止め弁32が設けられている。
【0019】
また、ステム12内には係合突条33を周設させている。小径液体シリンダ5の下部内面へ複数縦設した係合起立板の中間部内面には上向きの係合段部が設けられている。一方、ステム12内には棒34の上部が挿通されている。棒34の下部外面には、前述の係合起立板間に上下動自在に嵌合する係合突子が複数付設されている。このような棒34の上端部は、半球状に上部を大径部としてその上部外面が、係合突条33の上側面へ水密に係合され、液漏れ防止弁35を形成している。また、小径液体シリンダ5の下部と小径筒状ピストン17との間にはコイルスプリング22が棒34を遊挿させる形で配設されている。該スプリング22の下端は係合起立板の係合段部上へ載置され、小径筒状ピストン17を介して作動部材Cを上方付勢する一方、該上方付勢により係合突条33を介して棒34を、係合突子がコイルスプリング22の下端面へ圧接する状態に引き上げている。
【0020】
本実施形態では、噴霧に伴う容器体内の液の減少に当たって容器A内が負圧化するのを防止するための外気導入孔hが空気シリンダ4に設けられるとともに、この外気導入孔hを開閉可能に閉塞する可動弁体Eが設けられている。上記可動弁体Eは、上記作動部材Cが、図4に示す最下降の係止状態に移行した際には、作動部材Cにより可動弁体Eが押し下げられて外気導入孔hの閉塞状態に移行する。他方、作動部材Cが図1に示す最上昇状態に移行する際には大径筒状ピストン14により押し上げられて外気導入孔hが開放状態に移行し、さらに作動部材Cが液噴出のために上下動する際には外気導入孔hが開放状態に維持される。
【0021】
可動弁体Eは、上記大径筒状ピストン14上方の空気シリンダ4内面に外周縁の筒状シール部42を嵌合させるとともに、該筒状シール部42より内方の上記縦外筒21外周近傍位置までフランジ状壁43を延設している。フランジ状壁43は中央へ昇る階段状をなし、下面より押圧用突部44を突設している。そして、上記コイルスプリング22(弾性部材)による通常の上方付勢状態、即ち最上昇状態では大径筒状ピストン14により押圧用突部44が押し上げられ、上面が装着キャップDの頂壁7の下面に当接した状態で係止されている。この際、筒状シール部42は外気導入孔hの上方に位置している。
【0022】
また、縦外筒21の外面所定位置にはリブを突設することにより形成した下向き段部45を設けている。作動部材Cを図1の最上昇位置から図4の最下降の係止状態まで押し下げると、途中で下向き段部45が可動弁体Eのフランジ状壁43上面内周縁部に当接し、その筒状シール部42が外気導入孔hを閉塞する位置まで押し下げられるように構成されている。
【0023】
上記噴霧容器1は、初期状態では液体シリンダ5が空の状態になっており、図1に示す状態から数回作動部材Cを上下動させることで、液体Lはキャビテーションノズル50及び吸引チューブ11を介して吸引され、液体シリンダ5を満たす。該状態から作動部材Cを押し下げると、まず大径筒状ピストン14に対してステム12が押下ヘッド13とともに下降して空気吐出弁31が開き、次いで押下ヘッド13の縦外筒21下端が大径筒状ピストン14の隔壁部14bの上面に接して、空気吐出弁31を開いたままで大径筒状ピストン14もステム12とともに下降する。
【0024】
その際、外気吸込み弁27は閉塞しているから、空気シリンダ4内の空気は空気噴出路a及び小空隙部28を通って噴霧口16から噴出する。小空隙部28の外周部は負圧化するから、該小空隙部に連通する液体流出路b内も負圧化することとなり、よって液体流出路bを介して液体シリンダ5内の液体Lが小空隙部28内へ吸い出され、該小空隙部内へ吸い出された液体Lは上記噴出空気と混合して噴霧口16から霧となって噴出する。
【0025】
押下ヘッド13を放すと空気噴出は停止するため、小空隙部28内の負圧状態が解消するので液止め弁32は閉塞する。また、大径筒状ピストン14に先だってステム12が上昇することで空気吐出弁31が閉じ、次いで大径筒状ピストン14も受座23による上端位置まで引き上げられるため、空気シリンダ4内が負圧化する。よって外気吸込み弁27が開いて外気を空気シリンダ内へ吸入する。一方、液体シリンダ5内には吸引チューブ11を介して容器A内の液体Lが吸引される。この際、可動弁体Eは図1の状態を維持しているため、外気導入孔hは開いた状態にあり、容器体内の液の減少による負圧化に伴い外気が外気導入孔hを介して容器A内へ導入される。
【0026】
このときの液体Lの吸引量は、押下ヘッド13の1ストロークの押下によりシリンダ4の空気を排出させた大径筒状ピストン14が、図4の下端位置から図1の上端位置に戻るまでのシリンダ4内への空気流入の速度により定まる。押下ヘッド13を下端位置まで押し下げたときの押下ストロークに対応するコイルスプリング22の弾性変位がほぼ一定であることから、大径筒状ピストン14の上昇速度も当該弾性変位に応じたコイルスプリング22の弾性復帰力によりほぼ一定になると考えられる。押下ヘッド13を指(例えば利き腕の人差し指又は親指)により自然な動作で連続押下する際は、押下ヘッド13の押下ストロークに要する操作時間と、次の押下に備えて指を戻す時間とがほぼ等しくなる。そして、コイルスプリング22の弾性復帰力は、その指を戻す時間内に押下ヘッド13が上限位置に戻るように調整される。ストレスのない連続押下操作を実現するためには、押下ヘッド13が下限位置から上限位置に戻る時間が、噴霧時における押下ヘッド13の1回の押下ストローク時間(=1ショットの噴霧時間)にほぼ等しくなっていることが望ましいといえる。
【0027】
なお、図1の液体噴霧装置1からキャビテーションノズル50を省略した構成の装置は、特許文献3に開示されているものと同じである。ただし、本発明の適用対象となる液体噴霧装置の構成はこれに限定されるものではない。例えば、図1の液体噴霧装置1は、容器内の液体を吸入した空気とあらかじめ混合してから噴霧口16から噴霧するようにしていたが、空気との混合を行わず、液体のみを噴霧口16から噴霧するように構成した噴霧装置を用いてもよい。
【0028】
図1に戻り、液体噴霧装置1において、キャビテーションノズル50、吸引チューブ11、液体シリンダ5、ステム12及び縦内筒20は、容器A内の液体Lを噴霧ノズル15に導く流路部材を構成している。また、押下ヘッド13、空気シリンダ4及び大径筒状ピストン14は液体Lを流路部材を介して吸引し、噴霧ノズル15より噴霧させるポンプを構成している。
【0029】
キャビテーションノズル50は、図5及び図6に示すように、樹脂製のノズル本体51に対しねじ部材54(金属製:材質はステンレス鋼、チタン等)が、脚部54fがノズル本体51に貫通形成された流通孔53内に露出するように組み付けられたものである。本実施形態では、円形断面の流通孔53の直径方向に脚部54fが沿うようにねじ部材54を配置している。
【0030】
なお、ねじ部材54は、ノズル本体51に形成された雌ねじ孔にねじ込むようにしてもよいし、インサート成型によりノズル本体51と一体化してもよい。また、図10に示すように、ノズル本体51の流通孔53内にねじ部材54を流れ方向に複数本配置するようにしてもよい。図10においては、2本のねじ部材54を脚部54の軸線が90°をなすねじれの位置関係となるように配置している。流路内の圧損増加を抑制するため、複数のねじ部材54の脚部54は、流れ方向にて内縁間距離がねじの呼び径よりは大きくなるように(望ましくは呼び径の1.3倍以上となるように)配置するのがよい。
【0031】
流通孔53に液体を流通させたときの流速分布は、脚部54fに形成されたねじ谷部で局所的に増加する傾向がみられる。すなわち、ねじ部材51はねじ谷部がキャビテーションポイントCPとして機能する。脚部54fにはねじ山部がらせん状に複数巻き形成されており、図7及び図8に示すように、流通孔53の軸断面内にて、ねじ谷部は脚部54fの径方向両側に沿って、それぞれ軸方向にねじピッチ間隔にて複数個配列する形で現れる。ねじ部材5は液体との接触面に液体の流速を局所的に増加させるキャビテーションポイントCPが複数分散形成されたキャビテーション処理部材を構成するものである。なお、本発明においてキャビテーション処理部材はねじ部材に限らず、例えば外周面にキャビテーションポイントとなる凹凸部を分散形成したロッド部材などで代用することも可能である。
【0032】
すなわち、図4の液体噴霧装置1は、液体Lを流路部材を介して吸引し、噴霧ノズル15より噴霧させるポンプと、流路部材の流通孔53(流路)内に、ポンプにより流通孔53内を流通する液体Lと接触するように配設され、液体Lとの接触面に液体の流速を局所的に増加させるキャビテーションポイントCPが複数分散形成されているねじ部材54(キャビテーション処理部材)とを備えている。そして、ねじ部材54の配設位置における流通孔53の液体流通断面積(図7及び図8に示す軸断面投影にて、円形の流通孔53の投影領域からねじ部材54の投影領域を除いた部分の面積)が、噴霧ノズル15の噴霧口16の流通断面積よりも大きく設定されている。
【0033】
このように構成された液体噴霧装置1は、噴霧口16から噴射された液体が、ねじ部材54(キャビテーション処理部材)を省略した構成の液体噴霧装置を用いて噴霧された液体よりも、1μm以下の気泡(いわゆるウルトラファインバブル)の存在密度が大幅に増加することを、本発明者らは見出した。そのメカニズムを、本発明者らは以下のように推定している。
【0034】
押下ヘッド13の操作により容器A内の液体Lは、キャビテーションノズル50を通過した後、吸引チューブ11、液体シリンダ5、ステム12及び縦内筒20を経て噴霧ノズル15に導かれ、空気と混合されて噴霧口16から霧となって噴射される。ここで、流通孔53内にはキャビテーションポイントCP(ねじ谷)が分散配置されており、液体の流速は流通孔53内での平均的な値は比較的小さいが、V字型のねじ谷の谷底付近では流れが絞られるとともに、円形断面のねじ脚部54fに衝突迂回することによる遠心力も加わることから、該谷底付近の局所的な流速は相当高くなる。
【0035】
谷底付近の高流速領域はベルヌーイの定理により負圧領域となり、常圧と負圧での空気溶存量の差に基づいて、溶けきれなくなった溶存空気が減圧析出し、気泡核が発生する(キャビテーション)。気泡核を析出する減圧域は谷底付近に限られており、液体流は瞬時的に該領域を通過し、その後は常圧状態に戻るから、発生した気泡核の多くは核の状態で成長が停止すると考えられる。気泡核の正確なサイズは不明であるが、例えば非特許文献1には、旋回流式ウルトラファインバブル(UFB)発生装置で処理した水を瞬間凍結し超高圧電子顕微鏡にて観察した画像において、平均径10nm以下の微細な斑点が、例えば数密度にて8.1×1017個/cc程度認められる、と報告されている。文献中では論じられていないが、本発明者らは該電子顕微鏡写真に表れている斑点が、サイズ及び数密度から気泡核を示すものである可能性が十分にあると考えている。なお、このようなサイズの気泡核の存在密度は、一般的なウルトラファインバブル計測装置(例えば、レーザー回折式粒度計やナノトランキング式計測装置)では計測不能である。
【0036】
このように、容器内の液体は、噴霧口16から噴射されるに先立ってキャビテーション処理部材との接触により、(気泡には成長しない)気泡核を相当量発生させるための前処理がなされていると考えることができる。図9に示すように、気泡核BNを含む液滴LDを空気と混合して小径の噴霧口から噴霧すると、噴霧時の高流速化により液滴BDは減圧され、溶存していた空気は気泡核BNをシーズとして計測可能なサイズの気泡GBへと成長する。液滴LD中に発生する気泡GBの総体積は気泡核BNの存在密度が高くなるほど大きくなると考えられる。よって、キャビテーション処理部材との接触により前処理し、気泡核の存在密度を積極的に高めた液体を噴霧することで、前処理しない液体を噴霧する場合よりも、気泡の生成量を大幅に増加できると考えられる。
【0037】
ここで重要な点は、前処理により形成される気泡核の存在密度が過剰となった場合は、噴霧時に成長する気泡GBの密度が大きくなりすぎ、近接した気泡が合体して液滴外に抜けてしまう結果、液滴中に保持できるウルトラファインバブルの量が却って減少してしまうことである。よって、キャビテーション処理部材による前処理については、形成される気泡核の存在密度が過剰とならないよう、流速の調整が必須となる。本発明においては、ねじ部材54(キャビテーション処理部材)の配設位置における流通孔53(流路)の液体流通断面積を、噴霧ノズル15の噴霧口16の流通断面積よりも大きく設定する。これにより、キャビテーション処理部材と接触する液体の流速が、気泡核の形成密度が過剰とならないレベルに調整され、気泡の合体浮上が抑制される結果、キャビテーション処理部材を設けずに液体を噴霧する場合よりもウルトラファインバブルの生成量を大幅に増加できる効果が達成される。
【0038】
図4に戻り、吸引チューブ11は、第一端部がポンプの吸引側に接続され第二端部が容器A内にて底面に臨む位置まで延出している。図1の構成では、キャビテーション処理部材をなすねじ部材54が、キャビテーションノズル50のノズル本体51を介して吸引チューブ11に取り付けられている。キャビテーション処理部材は例えば図1のキャップDや押下ヘッド13の内部に組み込むことも可能であるが、上記のごとく吸引チューブ11に取り付けることで構造の大幅な簡略化を図ることができている。
【0039】
キャビテーション処理部材の吸引チューブ11への組付け状態が気密性に欠ける場合、キャビテーション処理部材が容器A内にて液面上に露出していると、液面上の気体が気密の確保できていない隙間等から吸引チューブ11内に吸引される。この時、吸引された気体がキャビテーション処理部材に気泡となって衝突すると、部材上のキャビテーションポイントが気泡に覆われ、気泡核生成が妨げられることにつながる。この場合、キャビテーション処理部材(ねじ部材54)は、容器A内の残液レベルが満充填状態の50%のとき液面下に没する位置にて吸引チューブ11に取り付けておくことが望ましい。このようにすると、残液レベルが満充填状態の50%に減少するまでは、キャビテーション処理部材(ねじ部材54)は容器A内の液体L中に没した状態となり、上記のような不具合が効果的に抑止できる。図4の構成では、キャビテーション処理部材(ねじ部材54)は、吸引チューブ11の第二端部に取り付けられており、液面レベルがより低下するまでキャビテーション処理部材が液中に留置されるようになっている。本実施形態では、図6に示すように、キャビテーションノズル50の流通孔53(流路)の上端側はテーパ孔55とされ、吸引チューブ11の第二端部はキャビテーションノズル50のテーパ孔55(流通孔)内に圧入されている。これにより、吸引チューブ11に対しキャビテーションノズル50を簡単に組み付けることができる。ただし、吸引チューブ11へのキャビテーションノズル50の組付け形態はこれに限定されるものではなく、例えば、流通孔53が貫通形成された凸部をキャビテーションノズル50側に形成し、この凸部を吸引チューブ11内に圧入するようにしてもよい。
【0040】
なお、図11に示すように、ねじ部材54は脚部54fが吸引チューブ11の壁部に対し壁部外周面側から直接ねじ込まれるようにしてもよい。図12に示す液体噴霧装置100においては、ねじ部材54を直接組み付けた吸引チューブ11を用いることで、キャビテーションノズルを別体形成する必要がなくなり、構造がより簡略化できていることがわかる。
【0041】
キャビテーション処理部材としてねじ部材54を用いる場合、ねじ部材54の配設位置において流通孔53(流路)の液体流通断面に存するねじ部材54のねじ谷部CP(キャビテーションポイント)の数は、液体流通断面積により除して得られるねじ谷数面積密度の値が2個/mm以上20個/mm以下であるのがよい。ねじ谷数面積密度の値が2個/mm未満であると、気泡核の生成量が不十分となり、キャビテーション処理部材を設けずに液体を噴霧する場合と比較したとき、ウルトラファインバブルの生成量における優位性が顕著でなくなる。一方、ねじ谷数面積密度の値が20個/mmを超えると、気泡核の形成密度の過剰化により気泡の合体浮上が顕著となり、ウルトラファインバブルの生成量における優位性が顕著でなくなる場合がある。
【0042】
図4に示すように、液体噴霧装置1は、ポンプが手動式プッシュポンプとして構成されており、個人が携帯して使用する際に汎用性の高いものである。このような装置は、液体Lとして例えば化粧水やアルコールなどが充填され、1プッシュあたりの噴霧量が例えば0.3cc以上2cc以下の範囲内に調整される。1プッシュあたりの噴霧量がこのような比較的小さい値に設定されることで、ねじ部材54の配設位置における流通孔53(流路)の液体流通断面における平均流速が比較的小さい値に調整され、気泡核の形成密度の過剰化、ひいては気泡の合体浮上による損失を抑制することができる。なお、ポンプは電動式のポンプを採用することも可能である。また、液体噴霧装置1は液体と空気との混相流を噴霧口16から噴霧するようになっているが、液体のみを噴霧するように構成されていてもよい。この構成にあっては、噴霧口16から液体が高速で噴出される際に減圧され、噴霧口16の出口直近の外気が減圧状態の液体流に混合されることで霧化がなされるので、噴霧後の液滴サイズが多少大きく点を除けば、本発明の効果は同様に達成できる。
【0043】
例えば、1プッシュあたりの噴霧量が0.3cc以上2cc以下の範囲にある場合、一般的な成人が通常の力で手動式プッシュポンプを操作する場合の、1プッシュあたりの噴霧時間は例えば0.2秒以上1.5秒以下である。この場合、液体噴霧装置1における液体の平均噴霧流量は、例えば30cc/分以上200cc/分程度である。このような平均噴霧流量となるように手動式プッシュポンプを手動操作したとき、ねじ部材の配設位置における流路の液体流通断面における平均流速は例えば0.05m/秒以上1.2m/秒以下であるのがよい。そして、流通孔53(流路)の液体流通断面に存するねじ部材54のねじ谷部CPの数を、平均噴霧流量の値により除して得られるねじ谷数流量密度の値は、例えば0.08個・分/L以上0.80個・分/L以下であるのがよい。キャビテーション処理部材を設けずに液体を噴霧する場合よりもウルトラファインバブルの生成量を増加させる効果は、上記の数値範囲において特に顕著なものとなる。
【0044】
以下、本発明の液体噴霧装置の効果を確認するために行った種々の試験の結果について説明する。
(試験例1)
試験用の液体噴霧装置として図1に示す形状のスプレー噴霧装置を、キャビテーションノズル50を除いたスプレー噴霧装置の本体部分については、噴霧口16の内径と1プッシュあたりの噴霧量が異なる2種類(スプレー1及びスプレー2)用意した。表1に各スプレー噴霧装置の特性値をまとめて示す。
【0045】
【表1】
【0046】
キャビテーションノズル50は図5及び図6に示す形態のものを種々用意した。使用したねじ部材はJISに定められた0番1種なべ小ねじ(並目ピッチ)であり、呼び径がM1.4及びM1.0の2種類であり、ねじ数は1である。採用したノズル本体の流通孔の内径、ねじピッチと深さ、ねじ谷数、流通断面積、ねじ谷数面積密度の値を、組み合わせたスプレー噴霧装置の種別(表1)とともに表2に示している。また、キャビテーションノズル50のねじ部材54の配設位置における液体流通断面積は、例えば図7及び図8に示すように、流通孔53に相当する円の面積から、脚部54fの投影領域の面積を減ずる形で画像処理により算出している。図7はM1.4のねじ部材を用いた場合の、図8はM1.0のねじ部材を用いた場合の各投影図である(流通孔53の内径は2.5mmの場合にて例示している)。ねじ谷部CPの数はこれらの投影図上にて計数することができる。
【0047】
そして、各スプレー噴霧装置の表1に示す噴霧流量と液体流通断面積とから、ねじ部材54の配設位置における断面内の液体の平均流速を算出している。また、ねじ谷部CPの数を噴霧流量で除することにより、ねじ谷数流量密度の値を算出している。
【0048】
キャビテーションノズル50を装着したスプレー噴霧装置に純水(溶存酸素量(DO:6ppm)を充填し、手動にて押下ヘッドを繰り返し操作する形でビーカー内に噴霧された処理水を15cc採取した。採取した処理水は石英製のバッチセルに充填し、レーザー回折式の高感度型ファインバブル測定システム(島津製作所製:SALD-7500×10)を用い、ウルトラファインバブル領域の気泡数密度を測定した(実施例1~4)。なお、比較のため、各スプレー噴霧装置についてキャビテーションノズル50を装着せずに噴霧・採取した処理水(比較例1、2)についても同様の測定を行っている。以上の結果を表2にまとめて示す。
【0049】
【表2】
【0050】
さらに、各番号の実施例及び比較例について、気泡測定により得られた気泡径クラス別の個数密度と体積密度の算出結果を表3~表8にまとめて示す。
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】
【表5】
【0054】
【表6】
【0055】
【表7】
【0056】
【表8】
【0057】
表2に示す如く、キャビテーションノズルを装着した液体噴霧装置については、スプレー1を使用した場合(実施例1及び実施例2)、及びスプレー2を使用した場合(実施例3及び実施例4)のいずれにおいても、キャビテーションノズルを装着しない液体噴霧装置(比較例1及び比較例2)を用いた場合と比較して、処理水の気泡数密度(1μm以下のウルトラファインバブル領域のもの)の測定値が、数倍~17倍以上の極めて大きな値となっていることがわかる。なお、キャビテーションノズルを装着しない比較例1及び比較例2の液体噴霧装置により得られた処理水も、20億個/cc以上のウルトラファインバブルが検出されていることもわかる。これは、使用した純水中にも、何らかのキャビテーション的な履歴により気泡核が元から一定量含まれていたことを意味する。しかし、キャビテーションノズルによる前処理を経ることで、処理水の気泡核の存在密度は劇的に増加したものと推測され、噴霧時にこれが成長することで圧倒的な気泡数密度の差となって表れたものと考えられる。実施例の液体噴霧装置はウルトラファインバブル領域の体積存在率を比較例の2倍以上に向上させることが可能である。以下、詳細に結果を説明する。
【0058】
図13は気泡径クラス別の個数密度の算出結果を実施例1と比較例1とで対比して示すヒストグラムであり、図14は同じく体積密度の算出結果を実施例1と比較例1とで対比して示すヒストグラムである。図13の個数密度のヒストグラム比較によれば、キャビテーションノズルによる前処理を経た実施例1の分布ピーク位置は、キャビテーションノズル非装着の場合(比較例1)よりも小径側にシフトしていることがわかる。また、図14の体積密度のヒストグラム比較によれば、ウルトラファインバブル領域(気泡径:1μm以下)とファインバブル領域での気泡径5μm以上の領域とにそれぞれ現れている2つのピークのうち、前者のほうが後者よりも増加比率が大きくなっていることがわかる。すなわち、該結果は、キャビテーションノズルによる前処理が、ウルトラファインバブル領域の気泡を優先的に増加させる効果を有していることを示すものである。比較例1におけるウルトラファインバブル領域の体積存在率は表7から約4.6μL/Lであるのに対し、実施例1では表3より約31.7μL/Lと比較例1の約7倍に達する。
【0059】
図15は気泡径クラス別の個数密度の算出結果を実施例2と比較例1とで対比して示すヒストグラムであり、図16は同じく体積密度の算出結果を実施例2と比較例1とで対比して示すヒストグラムである。実施例2の分布ピーク位置は、実施例1と同様に比較例1よりも小径側にシフトしているが、ウルトラファインバブルの気泡数密度の絶対値は実施例1よりも低い。また、図16の結果からも明らかなごとく、比較例1に対するファインバブル領域のピークの増加率がウルトラファインバブル領域のピークの増加率よりも大きくなっている。実施例2のねじ谷数流量密度が実施例1よりも高いため、ウルトラファインバブル領域の気泡数密度がやや過剰となり、それらの一部が合体してファインバブル領域の気泡数密度を増加させた可能性がある。実施例2におけるウルトラファインバブル領域の体積存在率は表4から約13.2μL/Lであり、比較例1の約2.9倍に達する。
【0060】
図17は気泡径クラス別の個数密度の算出結果を実施例3と比較例2とで対比して示すヒストグラムであり、図18は同じく体積密度の算出結果を実施例3と比較例2とで対比して示すヒストグラムである。図17の個数密度のヒストグラム比較によれば、実施例3の分布ピーク位置が比較例2よりも小径側にシフトしていることがわかる。また、図18の体積密度のヒストグラム比較によれば、ウルトラファインバブル領域とファインバブル領域とにそれぞれ現れている2つのピークのうち、前者のほうが後者よりも増加比率が大きくなっていることがわかる。すなわち、実施例1と同様に、キャビテーションノズルによる前処理が、ウルトラファインバブル領域の気泡を優先的に増加させる効果を有していることが裏付けられている。比較例2におけるウルトラファインバブル領域の体積存在率は表8から約1.9μL/Lであるのに対し、実施例3では表5より約40.6μL/Lと比較例2の約21倍に達する。
【0061】
図19は気泡径クラス別の個数密度の算出結果を実施例4と比較例2とで対比して示すヒストグラムであり、図20は同じく体積密度の算出結果を実施例4と比較例2とで対比して示すヒストグラムである。図19の個数密度のヒストグラム比較によれば、実施例4の分布ピーク位置が比較例2よりも小径側にシフトしていることがわかる。また、図20の体積密度のヒストグラム比較によれば、ウルトラファインバブル領域とファインバブル領域とにそれぞれ現れている2つのピークのうち、ここでも前者のほうが後者よりも増加比率が大きくなっており、キャビテーションノズルによる前処理が、ウルトラファインバブル領域の気泡を優先的に増加させる効果を有していることが裏付けられている。
【0062】
(試験例2)
試験例1と同じ2種類のスプレー噴霧装置を用意するとともに、キャビテーションノズルについては、呼び径がM1.4及びM1.0の2種類を用いつつ、ノズル本体の流通孔の内径、ねじピッチと深さ、ねじ谷数、流通断面積、ねじ谷数面積密度の値をさらに種々に設定して、試験例1と同様に処理水の評価を行った。なお、本試験例2においては、図10の形態でねじ部材54を2本(脚部54fの内縁間距離:2mm)組み付けたキャビテーションノズルも試験に供した。また、純水については溶存酸素量が8ppmのものと6ppmのものとの2種類を用いた。以上の結果を表9にまとめて示す。
【0063】
【表9】
【0064】
この結果によると、キャビテーションノズルを装着した液体噴霧装置の処理水ついては、いずれもキャビテーションノズルを装着しない表2の比較例1あるいは比較例2の液体噴霧装置の処理水よりも計測されるウルトラファインバブル領域の気泡数密度が大きくなっていることがわかる。特に、溶存酸素量が6ppmの純水を用いた場合、ねじ谷数流量密度が0.80個・分/L以下となる条件では該気泡数密度が特に大きくなっていることがわかる。
【0065】
また、特に気泡数密度の高い実施例106及び実施例118について、気泡測定により得られた気泡径クラス別の個数密度と体積密度の算出結果を表10及び表11にまとめて示す。
【0066】
【表10】
【0067】
【表11】
【0068】
図21は気泡径クラス別の個数密度の算出結果を実施例106と比較例2とで対比して示すヒストグラムであり、図22は同じく体積密度の算出結果を実施例106と比較例2とで対比して示すヒストグラムである。図21の個数密度のヒストグラム比較によれば、実施例106の分布ピーク位置が比較例2よりもやや小径側にシフトしていることがわかる。また、図22の体積密度のヒストグラム比較によれば、ウルトラファインバブル領域とファインバブル領域とにそれぞれ現れている2つのピークのうち、前者のほうが後者よりも増加比率が大きくなっていることがわかる。すなわち、キャビテーションノズルによる前処理が、ウルトラファインバブル領域の気泡を優先的に増加させる効果を有していることが裏付けられている。実施例106におけるウルトラファインバブル領域の体積存在率は表10から約43.6μL/Lであり、比較例2(約1.9μL/L)の約22.9倍に達する。
【0069】
図23は気泡径クラス別の個数密度の算出結果を実施例118と比較例1とで対比して示すヒストグラムであり、図24は同じく体積密度の算出結果を実施例118と比較例1とで対比して示すヒストグラムである。図23の個数密度のヒストグラム比較によれば、実施例4の分布ピーク位置が比較例1よりも小径側にシフトしていることがわかる。また、図24の体積密度のヒストグラム比較によれば、ウルトラファインバブル領域とファインバブル領域とにそれぞれ現れている2つのピークのうち、ここでも前者のほうが後者よりも増加比率が大きくなっており、キャビテーションノズルによる前処理が、ウルトラファインバブル領域の気泡を優先的に増加させる効果を有していることが裏付けられている。実施例118におけるウルトラファインバブル領域の体積存在率は表11から約31.6μL/Lであり、比較例1(約4.6μL/L)の約6.9倍に達する。
【符号の説明】
【0070】
1,100 液体噴霧装置
5 液体シリンダ
4 空気シリンダ
11 吸引チューブ
12 ステム
13 押下ヘッド
14 大径筒状ピストン
15 噴霧ノズル
20 縦内筒
50 キャビテーションノズル
54 ねじ部材(キャビテーション処理部材)
A 容器
L 液体
CP ねじ谷部(キャビテーションポイント)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24