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特開2025-22245バルーンカテーテルおよびバルーンカテーテルの作動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022245
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】バルーンカテーテルおよびバルーンカテーテルの作動方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/10 20130101AFI20250206BHJP
【FI】
A61M25/10 520
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023126667
(22)【出願日】2023-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】594170727
【氏名又は名称】日本ライフライン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】吉川 大輔
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA07
4C267BB28
4C267BB29
4C267BB40
4C267CC07
4C267CC08
4C267EE11
(57)【要約】
【課題】バルーンカテーテルにおけるバルーンの形状追従性と膨張コントロール性との両立を図りやすくする。
【解決手段】バルーンカテーテル1は、流体を通す拡張ルーメン16を有するシャフト2と、シャフト2の先端側に位置するとともに、拡張ルーメン16に連通されて流体の流入により拡張可能な内層バルーン20と、内層バルーン20を覆う外層バルーン22と、を有する。内層バルーン20を構成する材料は、外層バルーン22を構成する材料よりも20%延伸時におけるヤング率が低い。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を通す拡張ルーメンを有するシャフトと、
前記シャフトの先端側に位置するとともに、前記拡張ルーメンに連通されて前記流体の流入により拡張可能な内層バルーンと、
前記内層バルーンを覆う外層バルーンと、を有し、
前記内層バルーンを構成する材料は、前記外層バルーンを構成する材料よりも20%延伸時におけるヤング率が低い、
バルーンカテーテル。
【請求項2】
流体を通す拡張ルーメンを有するシャフトと、
前記シャフトの先端側に位置するとともに、前記拡張ルーメンに連通されて前記流体の流入により膨張可能な内層バルーンと、
前記内層バルーンを覆うとともに、前記シャフトの軸に直交する断面視で未膨張の前記内層バルーンより周長が長い部分を有し、膨張する前記内層バルーンにより押圧されて拡張する外層バルーンと、を有する、
バルーンカテーテル。
【請求項3】
流体を内層バルーンに流入させて前記内層バルーンを膨張させ、
膨張する前記内層バルーンにより、前記内層バルーンを覆う外層バルーンを押圧して拡張することを含む、
バルーンカテーテルの作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バルーンカテーテルおよびバルーンカテーテルの作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カテーテルチューブにバルーンが設けられたバルーンカテーテルが知られている(例えば特許文献1参照)。バルーンカテーテルは、結石等の異物の除去、消化管等に形成された狭窄部の拡張、止血といった各種の治療に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09-56806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バルーンには、消化管や血管内で拡張する際に管の形状に追従できること、つまり高い形状追従性が求められる。一方で、バルーンを拡張させる位置の近傍には、バルーンとの接触を避けるべき部位が存在する場合がある。あるいは、消化管等の分岐部においてバルーンを拡張させる際に、分岐の一方のみにバルーンを拡張させ、分岐の他方にはバルーンを拡張させたくない場合がある。このため、バルーンには拡張範囲を精度良くコントロールできること、つまり高い拡張コントロール性が求められる。
【0005】
形状追従性を向上させる方法としては、柔軟性の高い材料でバルーンを形成することが考えられる。しかしながら、バルーンを柔軟性の高い材料で構成すると、膨張コントロール性が低下し得る。
【0006】
本開示はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、バルーンカテーテルにおけるバルーンの形状追従性と膨張コントロール性との両立を図りやすくするための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のある態様は、バルーンカテーテルである。このバルーンカテーテルは、流体を通す拡張ルーメンを有するシャフトと、シャフトの先端側に位置するとともに、拡張ルーメンに連通されて流体の流入により拡張可能な内層バルーンと、内層バルーンを覆う外層バルーンと、を有する。内層バルーンを構成する材料は、外層バルーンを構成する材料よりも20%延伸時におけるヤング率が低い。
【0008】
本開示の他の態様は、バルーンカテーテルである。このバルーンカテーテルは、流体を通す拡張ルーメンを有するシャフトと、シャフトの先端側に位置するとともに、拡張ルーメンに連通されて流体の流入により膨張可能な内層バルーンと、内層バルーンを覆うとともに、シャフトの軸に直交する断面視で未膨張の内層バルーンより周長が長い部分を有し、膨張する内層バルーンにより押圧されて拡張する外層バルーンと、を有する。
【0009】
本開示の他の態様は、バルーンカテーテルの作動方法である。この作動方法は、流体を内層バルーンに流入させて内層バルーンを膨張させ、膨張する内層バルーンにより、内層バルーンを覆う外層バルーンを押圧して拡張することを含む。
【0010】
以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、バルーンカテーテルにおけるバルーンの形状追従性と膨張コントロール性との両立を図りやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態に係るバルーンカテーテルの側面図である。
図2】バルーンカテーテルの軸方向に沿った断面の模式図である。
図3図3(A)は、バルーンが拡張する前のバルーンカテーテルの断面図である。図3(B)は、拡張前のバルーンの一部分の断面図である。
図4図4(A)は、バルーンが拡張途中にあるバルーンカテーテルの断面図である。図4(B)は、拡張途中のバルーンの一部分の断面図である。
図5図5(A)は、バルーンが完全に拡張したバルーンカテーテルの断面図である。図5(B)は、完全に拡張したバルーンの一部分の断面図である。
図6】実施の形態に係るバルーンカテーテルの使用態様を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、本開示を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも本開示の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限りこの用語はいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0014】
図1は、実施の形態に係るバルーンカテーテル1の側面図である。図2は、バルーンカテーテル1の軸方向に沿った断面の模式図である。図1には、収縮状態(拡張前の状態)にあるバルーン4が示されている。図2には、バルーン4を含む部分のみが示されている。また、図2では、造影マーカ42の図示を省略している。
【0015】
バルーンカテーテル1は、シャフト2と、バルーン4と、マニホールド6とを備える。バルーンカテーテル1は、一端側が体内に挿入され、他端側が体外に配置される。以下では適宜、バルーンカテーテル1の体内に挿入される側を「先端側」といい、体外に配置される側を「基端側」という。また、バルーンカテーテル1を構成する各部材についても、バルーンカテーテル1の先端側と同じ側をその部材の「先端側」といい、バルーンカテーテル1の基端側と同じ側をその部材の「基端側」という。
【0016】
シャフト2は、長尺の管状部材である。シャフト2の長さは、例えば600mm~1800mmである。シャフト2は、アウターシャフト8と、インナーシャフト10とを有する。アウターシャフト8およびインナーシャフト10の素材としては、ポリオレフィンやポリアミドといった樹脂等の公知の可撓性材料が例示される。アウターシャフト8は、インナーシャフト10が通される第1ルーメン12を有する。第1ルーメン12は、アウターシャフト8を構成するチューブの内側面によって区画され、当該チューブの内部空間が第1ルーメン12となっている。第1ルーメン12は、アウターシャフト8の基端から先端にかけて延在する。したがって、シャフト2の先端には、第2ルーメン14の開口28が形成されている。
【0017】
インナーシャフト10は、ガイドワイヤGW(図6参照)が通される第2ルーメン14を有する。つまり、第2ルーメン14は、ガイドワイヤルーメンを構成する。第2ルーメン14は、インナーシャフト10を構成するチューブの内側面によって区画され、当該チューブの内部空間が第2ルーメン14となっている。第2ルーメン14は、インナーシャフト10の基端から先端にかけて延在する。インナーシャフト10の外径は、アウターシャフト8の内径より小さい。このため、第1ルーメン12内には、アウターシャフト8の内側面とインナーシャフト10の外側面とで区画される空間が延在する。この空間は、バルーン4を拡張させるための流体F(図4(A)参照)を通す拡張ルーメン16を構成する。
【0018】
インナーシャフト10は、先端側がアウターシャフト8から突出している。インナーシャフト10における第1ルーメン12から露出する外側面には、固着リング18が固定されている。固着リング18は、シャフト2と同様に公知の樹脂材料で構成される。インナーシャフト10と固着リング18とは、一例として融着により互いに接合される。
【0019】
バルーン4は、シャフト2の先端側に位置する。バルーン4の先端部は、インナーシャフト10におけるアウターシャフト8から突出した部分に固定され、バルーン4の基端部は、アウターシャフト8の先端部に固定される。シャフト2の先端側が患者の体内に挿入されることで、バルーン4が体内に送り込まれる。
【0020】
バルーン4は、内層バルーン20と、外層バルーン22とを有する。内層バルーン20および外層バルーン22は、シャフト2の軸方向に延在する筒状体である。内層バルーン20の先端部は、融着等により固着リング18に接合される。なお、固着リング18が省略されて、内層バルーン20の先端部がインナーシャフト10に直に接合されてもよい。内層バルーン20の基端部は、アウターシャフト8の先端部に融着等により接合される。これにより、拡張ルーメン16の先端は、内層バルーン20の内部に連通される。外層バルーン22は、内層バルーン20を覆う。例えば、外層バルーン22の先端部の内側面と、内層バルーン20の先端部の外側面とが融着等により接合される。また、外層バルーン22の基端部の内側面と、内層バルーン20の基端部の外側面とが融着等により接合される。
【0021】
内層バルーン20を構成する材料は、外層バルーン22を構成する材料よりも20%延伸時におけるヤング率が低い。よって、内層バルーン20は、外層バルーン22よりも柔軟性が高く剛性が低い。本実施の形態における、各バルーンを構成する材料の20%延伸時におけるヤング率は、以下に説明する引張試験により算出される、各バルーンから切り出した試験片が20%延びたとき、つまり試験片が120%の長さとなったときの試験片の引張弾性率である。内層バルーン20を構成する材料の20%延伸時におけるヤング率は、例えば0.1MPa以上10MPa以下、好ましくは1MPa以上5MPa以下である。外層バルーン22を構成する材料の20%延伸時におけるヤング率は、例えば100MPa以上1000MPa以下、好ましくは200MPa以上500MPa以下である。
【0022】
引張試験では、各バルーンから幅3mm、長さ15mmの長方形の試験片を切り出し、シャフト2の軸方向における試験片の両端から5mmの部分をチャックで挟む。したがって、チャック間距離は5mmである。また、各チャックにおける試験片の把持面積は15mmとする。続いて、室温23℃、引張速度200mm/minでシャフト2の軸方向に試験片を引っ張る。そして、試験片が1mm(20%)延びたときの引張応力と引張ひずみとから20%延伸時におけるヤング率を算出する。
【0023】
一例として、内層バルーン20は、加圧により外径が変化するコンプライアント型のバルーンである。外層バルーン22は、加圧による外径の変化がコンプライアント型より小さいセミコンプライアント型のバルーンであるか、当該変化が実質的にないノンコンプライアント型のバルーンである。内層バルーン20を構成する材料としては、ラテックス、シリコーンゴム、ウレタンゴム等が例示される。外層バルーン22を構成する材料としては、ナイロン、ナイロンエラストマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が例示される。バルーン4の拡張態様については、後に詳細に説明する。
【0024】
マニホールド6は、シャフト2の基端側に接続される。シャフト2の先端側が患者の体内に挿入された状態で、マニホールド6は体外に配置されて操作者によって把持される。マニホールド6は、バルーン拡張ポート24と、ガイドワイヤポート26とを有する。ガイドワイヤルーメンを構成する第2ルーメン14は、ガイドワイヤポート26に接続される。
【0025】
拡張ルーメン16は、バルーン拡張ポート24に接続される。バルーン4は、流体Fの流入により拡張可能である。具体的には、バルーン拡張ポート24に接続される流体給排装置(図示せず)から、流体Fがバルーンカテーテル1に供給される。流体Fとしては、滅菌蒸留水、生理食塩水等の液体や、空気等の気体が例示される。流体Fは、バルーン拡張ポート24および拡張ルーメン16を流れて内層バルーン20内に流入する。これにより、バルーン4が拡張する。また、流体給排装置が流体Fを吸引すると、拡張ルーメン16およびバルーン拡張ポート24を介して内層バルーン20内の流体Fが排出される。これにより、バルーン4が収縮する。以下、バルーン4の拡張態様と、バルーンカテーテル1の作動方法とについて詳細に説明する。
【0026】
図3(A)は、バルーン4が拡張する前のバルーンカテーテル1の断面図である。図3(B)は、拡張前のバルーン4の一部分の断面図である。図4(A)は、バルーン4が拡張途中にあるバルーンカテーテル1の断面図である。図4(B)は、拡張途中のバルーン4の一部分の断面図である。図5(A)は、バルーン4が完全に拡張したバルーンカテーテル1の断面図である。図5(B)は、完全に拡張したバルーン4の一部分の断面図である。図3(A)、図4(A)および図5(A)には、バルーンカテーテル1におけるシャフト2の軸に直交する断面を示している(図1におけるA-A線断面に相当)。図3(B)、図4(B)および図5(B)には、バルーン4におけるシャフト2の軸に直交する断面を示している。
【0027】
図3(A)および図3(B)に示すように、シャフト2の軸に直交する断面視で、外層バルーン22は未膨張(膨張前、あるいは流体Fの流入前)の内層バルーン20より周長が長い部分を有する。当該部分は、好ましくは内層バルーン20と外層バルーン22との接合部を除く部分である。当該部分の周長は、例えば未膨張の内層バルーン20の周長の1.5倍以上である。拡張前のバルーン4において、外層バルーン22は、折り畳まれて内層バルーン20に巻き付けられている。なお、内層バルーン20は、折り畳まれていても折り畳まれていなくてもよい。折り畳まれた外層バルーン22は、複数のひだ22Aを有する。図3(A)には、5つのひだ22Aが形成された状態が示されているが、ひだ22Aの数は特に限定されない。複数のひだ22Aは、内層バルーン20の周方向におおよそ等間隔に並んでいる。各ひだ22Aは、シャフト2の軸方向に延在し、シャフト2の周方向に倒されている。
【0028】
図4(A)および図4(B)に示すように、内層バルーン20に流体Fを流入させると、内層バルーン20は内圧の上昇にともなって弾性変形して膨張し始める。内層バルーン20が膨張していくと、外層バルーン22の内側面に内層バルーン20の外側面が密着し、外層バルーン22が内層バルーン20により押圧される。これにより、外層バルーン22が徐々に拡張していく。外層バルーン22が押し広げられることで、各ひだ22Aは徐々に展開していく。
【0029】
図4(A)および図4(B)には、便宜上、断面視でバルーン4が略真円状に拡張する様子を示している。しかしながら、外層バルーン22が完全に拡張する前は、外層バルーン22は内層バルーン20の外側面に沿って変形する。したがって、バルーン4の外形は、内層バルーン20の外形に依存する。このため、実際のバルーン4は、バルーン4が押し当てられる管壁等の形状に追従した形状をとる。
【0030】
図5(A)および図5(B)に示すように、内層バルーン20の押圧で外層バルーン22が拡張し、各ひだ22Aが完全に消失すると、外層バルーン22の拡張が実質的に停止する。上述のように外層バルーン22は、内層バルーン20よりも20%延伸時におけるヤング率が高く、加圧による変形が内層バルーン20に比べて小さい。このため、外層バルーン22が完全に拡張すると、内層バルーン20の膨張は著しく抑制されて実質的に停止する。外層バルーン22が完全に拡張した状態では、バルーン4の外形は外層バルーン22の外形に依存する。
【0031】
続いて、バルーンカテーテル1の使用態様について説明する。図6は、実施の形態に係るバルーンカテーテル1の使用態様を説明する模式図である。本実施の形態のバルーンカテーテル1は、結石除去、狭窄拡張、止血、オクリュージョンといった各種の治療に使用することができる。以下では一例として、バルーンカテーテル1を胆管結石除去術に用いる場合について説明する。
【0032】
鉗子チャンネル32およびカメラ34を備える内視鏡30が、患者の口から十二指腸36内に挿入されている。総胆管38には、鉗子チャンネル32を通じてガイドワイヤGWが予め挿入されている。十二指腸36と総胆管38との間には乳頭40が存在するが、乳頭40の開口径に比べて十分に小径なガイドワイヤGWは、乳頭40を通過して総胆管38の内部に進入できる。この際、内視鏡30およびバルーンカテーテル1の操作者は、カメラ34から得られる映像を確認しながら、ガイドワイヤGWを安全に乳頭40内に挿入できる。
【0033】
ガイドワイヤGWが総胆管38に挿入されている状態で、シャフト2の先端にある開口28から、ガイドワイヤGWの基端部が第2ルーメン14に挿入される。シャフト2の先端側は、ガイドワイヤGWに案内されながら、鉗子チャンネル32を通って十二指腸36まで到達する。続いてシャフト2は、図6に示す状態からさらに進行して総胆管38に挿入される。これにより、バルーン4が総胆管38内に配置される。
【0034】
この状態で、バルーン拡張ポート24および拡張ルーメン16を介して内層バルーン20内に流体Fが供給され、内層バルーン20が膨張するとともに外層バルーン22が拡張する。これにより、バルーン4は、総胆管38の管壁の形状に追従した形状となる。この状態で、バルーン4が総胆管38から引き抜かれる。このような操作により、総胆管38内に蓄積した結石を十二指腸36に掻き出すことができる。
【0035】
図1に示すように、インナーシャフト10の外側面には、バルーン4と重なる位置に造影マーカ42が設けられている。また、流体Fには、造影剤が混合されている。操作者は、手技中に撮影される造影画像に基づいて、バルーン4の位置や拡張の様子をリアルタイムで確認できる。
【0036】
本実施の形態のバルーン4は、柔軟性の高い内層バルーン20を有する。外層バルーン22が完全に拡張する前の状態では、バルーン4の外形は、柔軟性の高い内層バルーン20の外形に依存する。このため、バルーン4の形状追従性を高めることができる。また、バルーン4は、柔軟性の低い外層バルーン22を有する。したがって、内層バルーン20が膨張して外層バルーン22が完全に拡張されると、内層バルーン20のそれ以上の膨張が抑制される。これにより、バルーン4が意図しない方向に拡張することを抑制することができる。つまり、バルーン4の膨張コントロール性を高めることができる。よって、本実施の形態のバルーンカテーテル1によれば、バルーン4の形状追従性と膨張コントロール性との両立を図りやすくすることができる。
【0037】
また、バルーン4が内層バルーン20のみからなる場合、鋭利な形状の結石や石灰化病変等への接触、あるいは他の医療器具への接触により、バルーン4が破損する可能性が考えられる。この課題に対し、本実施の形態のバルーン4は、剛性の高い外層バルーン22を外殻として有する。このため、バルーン4が破損する可能性を軽減することができる。
【0038】
内層バルーン20のみからなるバルーン4の破損リスクを軽減する方法としては、バルーン4の厚みを増やすことが考えられる。しかしながら、バルーン4を厚くすると、膨張前のバルーン4が太くなってしまい、乳頭40や他の狭窄部にバルーン4を挿通させにくくなり得る(Crossabilityの低下)。この課題に対し、本実施の形態では柔軟性の低い外層バルーン22でバルーン4に強度を持たせている。このため、バルーン4の厚みの増加を抑制しながら、バルーン4の破損リスクを軽減することができる。
【0039】
また、内層バルーン20は、流体Fが流入し続けると過度に膨張して破裂し得る。これに対し、内層バルーン20を外層バルーン22で覆うことで、内層バルーン20に膨張限界を設けることができる。これにより、バルーン4の破裂を抑制することができる。また、内層バルーン20に膨張限界を設けることで、内層バルーン20への流体Fの流入量を増加させることができる。したがって、内層バルーン20の内圧を高めることができる。内層バルーン20の内圧を高めることで、バルーン4で狭窄部を強く挟み込むことが可能になる。これにより、バルーン4の拡張時に、バルーン4が挿抜方向にずれてしまうことを抑制することができる。
【0040】
バルーン4は、内層バルーン20の膨張および外層バルーン22の拡張の少なくとも一方を制限する拘束部材(図示せず)をシャフト2の軸方向における一部に有してもよい。拘束部材は、例えば環状の弾性バンドで構成される。拘束部材により、バルーン4の一部分は他の部分に比べて拡張量が小さくなるか、拡張が遅延される。バルーン4の拘束部材が設けられた部分を狭窄部に対応付けた状態でバルーン4を拡張することで、より確実にバルーン4で狭窄部を挟み込むことができる。
【0041】
以上、本開示の実施の形態について詳細に説明した。前述した実施の形態は、本開示を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施の形態の内容は、本開示の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された本開示の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。設計変更が加えられた新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形それぞれの効果をあわせもつ。前述の実施の形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「本実施の形態の」、「本実施の形態では」等の表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。各実施の形態に含まれる構成要素の任意の組み合わせも、本開示の態様として有効である。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0042】
実施の形態は、以下に記載する項目によって特定されてもよい。
[第1項目]
流体(F)を通す拡張ルーメン(16)を有するシャフト(2)と、
シャフト(2)の先端側に位置するとともに、拡張ルーメン(16)に連通されて流体(F)の流入により拡張可能な内層バルーン(20)と、
内層バルーン(20)を覆う外層バルーン(22)と、を有し、
内層バルーン(20)を構成する材料は、外層バルーン(22)を構成する材料よりも20%延伸時におけるヤング率が低い、
バルーンカテーテル(1)。
[第2項目]
流体(F)を通す拡張ルーメン(16)を有するシャフト(2)と、
シャフト(2)の先端側に位置するとともに、拡張ルーメン(16)に連通されて流体(F)の流入により膨張可能な内層バルーン(20)と、
内層バルーン(20)を覆うとともに、シャフト(2)の軸に直交する断面視で未膨張の内層バルーン(20)より周長が長い部分を有し、膨張する内層バルーン(20)により押圧されて拡張する外層バルーン(22)と、を有する、
バルーンカテーテル(1)。
[第3項目]
流体(F)を内層バルーン(20)に流入させて内層バルーン(20)を膨張させ、
膨張する内層バルーン(20)により、内層バルーン(20)を覆う外層バルーン(22)を押圧して拡張することを含む、
バルーンカテーテル(1)の作動方法。
【符号の説明】
【0043】
1 バルーンカテーテル、 2 シャフト、 4 バルーン、 16 拡張ルーメン、 20 内層バルーン、 22 外層バルーン、 F 流体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6