(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002226
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】差圧計ポート付きフィルタ、表示部付きフィルタおよびファンフィルタユニット
(51)【国際特許分類】
F24F 7/06 20060101AFI20241226BHJP
F24F 8/80 20210101ALI20241226BHJP
【FI】
F24F7/06 C
F24F8/80 155
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102258
(22)【出願日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】591066465
【氏名又は名称】日本エアーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100206612
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 修博
(74)【代理人】
【識別番号】100209749
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 和輝
(74)【代理人】
【識別番号】100217755
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 淳史
(72)【発明者】
【氏名】岡本 守
(72)【発明者】
【氏名】大塚 陽介
(72)【発明者】
【氏名】片岡 黎
(72)【発明者】
【氏名】篠原 秀之
【テーマコード(参考)】
3L058
【Fターム(参考)】
3L058BF01
3L058BF06
3L058BG05
(57)【要約】
【課題】フィルタが収納されるケースに穴加工をする必要がなく、従来のような計測チューブの配管が不要となることで、計測チューブの潰れに起因する計測値の不具合を防止できる差圧計ポート付きフィルタ、表示部付きフィルタおよびファンフィルタユニットを提供する。
【解決手段】表示部付きフィルタ100は、差圧計ポート付きフィルタ10と、フィルタ11のフレーム12Aに取り付けられた差圧計20と、差圧計20に基端部が接続され、先端部が一次側差圧計ポート41に接続された一次側計測チューブ31と、差圧計20に基端部が接続され、先端部が二次側差圧計ポート42に接続された二次側計測チューブ32と、フレーム12Aに設けられて、差圧計20の計測値を表示する表示部21とを備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタと、
前記フィルタに取り付けられたフレームと、
前記フレームに取り付けられ、前記フィルタの空気流入側と連通する一次側差圧計ポートと、
前記フレームに取り付けられ、前記フィルタの空気排出側と連通する二次側差圧計ポートと、を備えたことを特徴とする差圧計ポート付きフィルタ。
【請求項2】
請求項1に記載の差圧計ポート付きフィルタと、
前記差圧計ポート付きフィルタのフレームに取り付けられた差圧計と、
前記差圧計に基端部が接続され、先端部が前記差圧計ポート付きフィルタの一次側差圧計ポートに接続された一次側計測チューブと、
前記差圧計に基端部が接続され、先端部が前記差圧計ポート付きフィルタの二次側差圧計ポートに接続された二次側計測チューブと、
前記フレームに設けられて、前記差圧計の計測値を表示する表示部と、を備えたことを特徴とする表示部付きフィルタ。
【請求項3】
少なくとも前記差圧計と、前記表示部とがプリント基板に設けられ、
前記プリント基板が前記フレームに取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載の表示部付きフィルタ。
【請求項4】
前記プリント基板に、前記差圧計の計測値を外部に通信可能な通信部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の表示部付きフィルタ。
【請求項5】
前記通信部がRS485モジュールによって構成されていることを特徴とする請求項4に記載の表示部付きフィルタ。
【請求項6】
フィルタの目詰まり状況を表示する表示手段としての発光部材を備え、
前記プリント基板に、給電コネクタが設けられ、
前記給電コネクタに、前記発光部材に給電する給電ケーブルが接続されていることを特徴とする請求項3に記載の表示部付きフィルタ。
【請求項7】
ファンと、当該ファンを駆動する駆動モータと、請求項1に記載の差圧計ポート付きフィルタと、前記ファン、前記駆動モータおよび前記差圧計ポート付きフィルタが収納されるケースとを備え、
前記ファンの作動によって、前記差圧計ポート付きフィルタより上流側の空気を前記フィルタに送り込んで当該フィルタによって清浄化して、前記フィルタより下流に吹き出すことを特徴とするファンフィルタユニット。
【請求項8】
ファンと、当該ファンを駆動する駆動モータと、請求項2~6のいずれか1項に記載の表示部付きフィルタと、前記ファン、前記駆動モータおよび前記表示部付きフィルタが収納されるケースとを備え、
前記ファンの作動によって、前記表示部付きフィルタのフィルタより上流側の空気を前記フィルタに送り込んで当該フィルタによって清浄化して、前記フィルタより下流に吹き出すことを特徴とするファンフィルタユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差圧計ポート付きフィルタ、表示部付きフィルタおよびファンフィルタユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
ファンフィルタユニットは、電子工業、医薬品、食品などの分野において、製造工程(本室)を清浄環境(クリーンルーム等)に保つために、天井面や側面に設置される。
【0003】
従来、ファンフィルタユニットとしては、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。
このファンフィルタユニットは、ファンと、当該ファンを駆動する駆動モータと、空気を清浄化するHEPAフィルタ等のフィルタと、当該フィルタを支持するフレームと、前記ファン、前記駆動モータ、前記フィルタおよびフレームが収納されるケースとを備え、前記ファンの作動によって、前記フィルタより上流側の空気を前記フィルタに送り込んで当該フィルタによって清浄化して、前記フィルタより下流側に吹き出すようにしている。
【0004】
このようなファンフィルタユニットにおいて、従来フィルタの目詰まりを管理する場合、例えば
図8に示す第1例のように、ファンフィルタユニットのHEPAフィルタより上流側の一次側ポートと、ファンフィルタユニットが設けられたクリーンルームにある二次側ポートとの圧力差を差圧計によって計測することによって行っている。
また、
図9に示す第2例のように、ファンフィルタユニットのHEPAフィルタより上流側の一次側ポートと、下流側の二次側ポートとの圧力差を差圧計によって計測することによって行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した第1例の場合、HEPAフィルタ等のフィルタが収納されるケースとクリールームを形成する壁のそれぞれに、差圧計に接続された計測チューブを接続するための継手部材を挿通する穴を形成する必要があり、第2例の場合、HEPAフィルタ等のフィルタが収納されるケースに、差圧計に接続された計測チューブを接続するための継手部材を挿通する穴を形成する必要がある。
このため、継手部材を挿通するための穴加工が必要であり、その加工費用がかかっていた。
また、目視できる位置に設置されている差圧計まで、計測チューブを配管する必要があり、配管に手間がかかるとともに、計測チューブは潰れ易いため、潰れると差圧計の測定値に不具合が生じるおそれがある。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、フィルタが収納されるケースに穴加工をする必要がなく、従来のような計測チューブの配管が不要となることで、計測チューブの潰れに起因する計測値の不具合を防止できる差圧計ポート付きフィルタ、表示部付きフィルタおよびファンフィルタユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の差圧計ポート付きフィルタは、
フィルタと、
前記フィルタに取り付けられたフレームと、
前記フレームに取り付けられ、前記フィルタの空気流入側と連通する一次側差圧計ポートと、
前記フレームに取り付けられ、前記フィルタの空気排出側と連通する二次側差圧計ポートと、を備えたことを特徴とする。
【0009】
前記フィルタとしては、例えばHEPAフィルタ、ULPAフィルタ、PTFEフィルタ等の高性能フィルタや超高性能フィルタが挙げられるが、高性能フィルタや超高性能フィルタに限ることはない。
また、一次側差圧計ポートおよび二次側差圧計ポートには、差圧計の一次側計測チューブおよび二次側計測チューブが接続されるが、差圧計はアナログ式のマノスターゲージであってもよいし、デジタル式の差圧計(微差圧計)であってもよい。
【0010】
本発明によれば、フレームに取り付けられた一次側差圧計ポートと、二次側差圧計ポートを備えているので、一次側差圧計ポートに一次側計測チューブを接続し、二次側差圧計ポートに二次側計測チューブを接続することによって、フィルタが収納されるケースに穴加工をする必要がなく、従来のような計測チューブの配管が不要となる。
【0011】
また、本発明の表示部付きフィルタは、
前記差圧計ポート付きフィルタと、
前記差圧計ポート付きフィルタのフレームに取り付けられた差圧計と、
前記差圧計に基端部が接続され、先端部が前記差圧計ポート付きフィルタの一次側差圧計ポートに接続された一次側計測チューブと、
前記差圧計に基端部が接続され、先端部が前記差圧計ポート付きフィルタの二次側差圧計ポートに接続された二次側計測チューブと、
前記フレームに設けられて、前記差圧計の計測値を表示する表示部と、を備えたことを特徴とする
【0012】
前記フィルタが矩形板状に形成されている場合、フィルタの4つの側面にそれぞれフレームが取り付けられるが、これらフレームのうち、作業者が目視可能なフレームに差圧計が取り付けられる。
【0013】
本発明によれば、フィルタに取り付けられたフレームに差圧計が取り付けられ、この差圧計に、先端部が差圧計ポート付きフィルタの一次側差圧計ポートに接続された、一次側計測チューブの基端部が接続されるとともに、先端部が差圧計ポート付きフィルタの二次側差圧計ポートに接続された、二次側計測チューブの基端部が接続され、前記フレームに差圧計の計測値を表示する表示部が設けられているので、フィルタが収納されるケースに穴加工をする必要がなく、従来のような計測チューブの配管が不要となる。そのため、計測チューブの潰れに起因する計測値の不具合を防止できる。
【0014】
また、本発明の前記構成において、少なくとも前記差圧計と、前記表示部とがプリント基板に設けられ、前記プリント基板が前記フレームに取り付けられていてもよい。
【0015】
このような構成によれば、プリント基板をフレームに設けることによって、差圧計と表示部を容易にフレームに取り付けることができる。
【0016】
また、本発明の前記構成において、前記プリント基板に、前記差圧計の計測値を外部に通信可能な通信部が設けられていてもよい。
【0017】
このような構成によれば、差圧計によって計測された計測値を通信部によって外部に通信(送信)できるので、外部に設置された表示器によって、前記計測値を受信して表示できる。したがって、表示部に表示される計測値を目視できない離れた場所に作業者がいても、当該作業者が表示器によって計測値を確認できる。
【0018】
また、本発明の前記構成において、前記通信部がRS485モジュールによって構成されていてもよい。
【0019】
このような構成によれば、通信部がRS485モジュールによって構成されているので、複数の表示部付きフィルタの差圧計をマルチドロップ接続できる。したがって、複数の表示部付きフィルタの表示部に表示される計測値を表示器によって一覧表示して確認して、集中管理することができる。
【0020】
また、本発明の前記構成において、フィルタの目詰まり状況を表示する表示手段としての発光部材を備え、
前記プリント基板に、給電コネクタが設けられ、
前記給電コネクタに、前記発光部材に給電する給電ケーブルが接続されててもよい。
【0021】
このような構成によれば、フィルタの目詰まり状況を、発光部材を直接目視して判断でき、これにより、フィルタの異常発生(目詰まり)に対する迅速な対応が可能となる。
【0022】
また、本発明のファンフィルタユニットは、ファンと、当該ファンを駆動する駆動モータと、前記差圧計ポート付きフィルタと、前記ファン、前記駆動モータおよび前記差圧計ポート付きフィルタが収納されるケースとを備え、
前記ファンの作動によって、前記差圧計ポート付きフィルタより上流側の空気を前記フィルタに送り込んで当該フィルタによって清浄化して、前記フィルタより下流に吹き出すことを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、差圧計ポート付きフィルタが収納されるケースに穴加工をする必要がなく、従来のような計測チューブの配管が不要となる。
【0024】
また、本発明のファンフィルタユニットは、ファンと、当該ファンを駆動する駆動モータと、前記表示部付きフィルタと、前記ファン、前記駆動モータおよび前記表示部付きフィルタが収納されるケースとを備え、
前記ファンの作動によって、前記表示部付きフィルタのフィルタより上流側の空気を前記フィルタに送り込んで当該フィルタによって清浄化して、前記フィルタより下流に吹き出すことを特徴とする。
【0025】
本発明によれば、表示部付きフィルタが収納されるケースに穴加工をする必要がなく、従来のような計測チューブの配管が不要となり、計測チューブの潰れに起因する計測値の不具合を防止できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、フィルタが収納されるケースに穴加工をする必要がなく、従来のような計測チューブの配管が不要となり、計測チューブの潰れに起因する計測値の不具合を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1の実施形態を示すもので、表示部付きフィルタの概略斜視図である。
【
図2】同、表示部付きフィルタの要部の概略断面図である。
【
図3】同、フィルタのフレームに表示部を備えたプリント基板を取り付けた状態を示す要部の概略斜視図である。
【
図4】同、複数の表示部付きフィルタを接続した状態を示すブロック図である。
【
図5】同、外部に設置される表示器の画面の一例を示す図である。
【
図6】同、ファンフィルタユニットを示す概略断面図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態を示すもので、差圧計ポート付きフィルタを外部表示部材とともに示す概略正面図である。
【
図8】従来のフィルタ目詰まりを管理する方法の第1例を説明するための概略断面図である。
【
図9】従来のフィルタ目詰まりを管理する方法の第2例を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明に係る表示部付きフィルタおよびファンフィルタユニットの実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の表示部付きフィルタ100を示す概略斜視図、
図2は表示部付きフィルタ100の要部の概略断面図である。
表示部付きフィルタ100は、差圧計ポート付きフィルタ10と、後述する表示部21を有するプリント基板15とを備えている。
差圧計ポート付きフィルタ10は、フィルタ11と、このフィルタ11に取り付けられたフレーム12とを備えている。
フィルタ10はHEPAフィルタであり、矩形板状に形成されている。フレーム12は、矩形板状のフィルタ10の4つの側面にそれぞれ取り付けられるもので、
図2に示すように、アルミ等の金属によって帯板状に形成されている。なお、フレーム12は樹脂によって形成してもよい。
【0029】
図2に示すように、差圧計ポート付きフィルタ10は、一次側差圧計ポート41と二次側差圧計ポート42とを備えている。
すなわちまず、フレーム12は、矩形板状のフィルタ10の4つの側面にそれぞれ取り付けられるもので、アルミ等の金属や樹脂によって帯板状に形成されている。
4つのフレーム12のうち、1つのフレーム12Aは、横断面略コ字形に形成されており、その上下縁部にフレーム12Aの長手方向に延在する前面部12a,12aを有している。また、フレーム12Aは、前面部12a,12aの間に凹所12bを有しており、この凹所12bの底面に後述するプリント基板15が固定されている。
【0030】
フレーム12Aの上部には一次側差圧計ポート41が設けられ、フレーム12Aの下部には二次側差圧計ポート42が設けられている。一次側差圧計ポート41および二次側差圧計ポート42は、SUS等の金属製や樹脂製の円筒管によって形成されており、フレーム12Aを貫通するようにして固定されている。具体的には、フレーム12Aのフランジ部とウェブ部との交差部近傍において、ウェブ部を貫通するように、かつ、ウェブ部に対して略45度傾斜して、当該ウェブ部に固定されている。
また、一次側差圧計ポート41の一端部は、フィルタ11の空気流入側に開口し、他端部はフレーム12Aの内側に開口している。したがって、一次側差圧計ポート41は、空気流入側と連通している。二次側差圧計ポート42の一端部は、フィルタ11の下側の空気排出側に開口し、他端部はフレーム12Aの内側に開口している。したがって、二次側差圧計ポート42は、空気排出側と連通している。
また、フレーム12Aの幅(上下の幅)は、フィルタ10の厚さより長くなっているので、フィルタ10の上下面(表面)と、フレーム12Aのフランジ部との間には隙間があり、この隙間に、一次側差圧計ポート41の一端部および二次側差圧計ポート42の一端部が開口している。
【0031】
なお、本実施形態では、一次側差圧計ポート41および二次側差圧計ポート42を円筒管によって構成したが、これに代えて例えば、フレーム12Aの上部および下部にそれぞれ貫通孔をウェブ部に対して略45度傾斜させて形成することで、上部の貫通孔を一次側差圧計ポートとし、下部の貫通孔を二次側差圧計ポートとし、上部の貫通孔(一次側差圧計ポート)に後述する一次側計測チューブ31の先端部を挿通し、下部の貫通孔(二次側差圧計ポート)に後述する二次側計測チューブ32の先端部を挿通してもよい。
【0032】
また、フレーム12Aの凹所12bの底面には、プリント基板15が固定されている。
このプリント基板15は、
図3に示すように、矩形板状に形成されており、その幅は凹所12bの幅より小さくなっており、凹所12bの底面にビス16によって固定されている。なお、プリント基板15は、フレーム12Aとの短絡防止のために、フレーム12Aのウェブ部から所定間隔(例えば5mm程度)離間して、当該ウェブ部に固定されている。
プリント基板15には、差圧計20、表示部21、電源通信コネクタ22、通信コネクタ23、通信部24、給電コネクタ25、制御部26等が実装されている。
また、フレーム12Aには、矩形板状の透明な保護カバー板27が前面部12a,12aに固定されて設けられ、当該保護カバー板27によってプリント基板15が保護されている。また、保護カバー板27は透明であるので、この保護カバー板を通して、表示部21を目視して確認できる。
【0033】
差圧計20は、圧力センサICによって構成されており、一次側計測チューブ31の基端部と、二次側計測チューブ32の基端部とが接続されている。一次側計測チューブ31および二次側計測チューブ32はそれぞれシリコンチューブによって形成されている。
そして、一次側差圧計ポート41の他端部に、一次側計測チューブ31の先端部が接続され、二次側差圧計ポート42の他端部に、二次側計測チューブ32の先端部が接続されている。
これによって、差圧計20は、フィルタ11の空気流入側の圧力と空気排出側の圧力との圧力差(差圧値)を計測できる。
この差圧値によって、フィルタ11の目詰まり状況を確認できる。すなわち、フィルタ11が目詰まりすればするほど、差圧値が大きくなるので、この差圧値によってフィルタ11の目詰まり状況を確認できる。
【0034】
表示部21は、LCD(液晶ディスプレイ)を備えた微差圧モニタであり、矩形板状に形成されている。表示部21は、差圧計20によって計測された、空気流入側の圧力と空気排出側の圧力との圧力差(差圧値)を表示可能である。
また、表示部21には、現在の差圧値A(±5Paは0表示)、初期差圧値(工場出荷時 50Pa)、終期差圧値(工場出荷時 300Pa)、現在の差圧値B(±5Pa以内も表示)、0差圧バイアス補正値等を表示可能である。
表示部21には、制御部26を介して差圧計20が接続されており、差圧計20によって計測された空気流入側の圧力値と空気排出側の圧力値との圧力差(差圧値)を制御部26が表示部21に表示する。
【0035】
また、表示部21の下方には、UPスイッチ21a、DOWNスイッチ21b、ENTERスイッチ21cがプリント基板15に実装されている。UPスイッチ21aは、押すことによって上述した「現在の差圧値A」、「初期差圧値」、「終期差圧値」、「現在の差圧値B」、「0差圧バイアス補正値」を、昇順で表示部21に次々と表示し、DOWNスイッチ21bは、押すことによって、「現在の差圧値A」、「初期差圧値」、「終期差圧値」、「現在の差圧値B」、「0差圧バイアス補正値」を降順で表示部21に次々と表示する。また、ENTERスイッチ21cは、3秒長押しにて、0差圧バイアス補正が可能となる。
【0036】
電源通信コネクタ22は、図示しない電源に接続された電源ケーブル22aと、差圧計20によって計測された差圧値をデータ送信する通信ケーブル22bとが接続されるコネクタであり、電源から電源ケーブル22a、電源通信コネクタ22を介して、差圧計20、表示部21、通信部24、制御部26等に給電する。なお、電源ケーブル22a、通信ケーブル22bおよび後述する通信ケーブル23bは、それぞれ2本の導電線によって構成されている。
通信部24は、前記差圧値を、通信ケーブル22bを介して外部にデータ送信する。
図4に示すように、通信ケーブル22bは、外部に設置された表示器30に接続され、データ送信された差圧値は、この表示器30に表示される。
通信コネクタ23は、通信ケーブル23bが接続されるものであり、この通信ケーブル23bが複数の表示部付きフィルタ100に接続され、さらに、表示器30に接続される。
【0037】
通信部24は、差圧計20によって計測された、空気流入側の圧力と空気排出側の圧力との圧力差(差圧値)をデータ送信する。通信部24はプリント基板15の回路によって電源通信コネクタ22および通信コネクタ23と接続されている。したがって、通信部24は、差圧計20によって計測された差圧値を電源通信コネクタ22または通信コネクタ23(
図3参照)、通信ケーブル22bまたは通信ケーブル23bを介して、外部の表示器30(
図4参照)に送信し、表示器30は受信した差圧値を表示する。
【0038】
また、前記通信部24はRS485モジュールによって構成されている。したがって、
図4に示すように、複数の表示部付きフィルタ100は、通信部24、通信コネクタ23(
図3参照)、通信ケーブル23bを介して互いに接続され、さらに外部の表示器30に接続される。つまり、通信部24がRS485モジュールによって構成されているので、複数の表示部付きフィルタ100および表示器30がマルチドロップ接続される。
【0039】
なお、本実施形態では、通信部24をRS485モジュールによって構成して、有線接続したが、プリント基板15に無線による通信部を実装し、無線によって、複数の表示部付きフィルタ100および表示器30を接続してもよい。
【0040】
図5に示すように、表示器30の画面には、複数の表示部付きフィルタ100のそれぞれの差圧計20によって計測された差圧値が表示される。
図5中、「♯1」、「♯2」、「♯3」は、それぞれ表示部付きフィルタ100の整理番号を示す。表示器30の画面には、温度(℃)も表示される。この温度は、例えば、差圧計20内に内蔵された(差圧値の温度補正用に内蔵されている)センサによって計測された温度が表示器30の画面に差圧値とともに表示される。
【0041】
前記給電コネクタ25(
図3参照)は、表示部付きフィルタ100が、フィルタ11の目詰まり状況を表示する表示手段としての発光部材を備えている場合に、当該発光部材35に給電する給電ケーブル25aが接続される。
このような表示部付きフィルタ100を備えたファンフィルタユニット50は、
図6に示すように、ファン51と、当該ファン51を駆動する駆動モータ52と、前記表示部付きフィルタ100と、ファン51、駆動モータ52および表示部付きフィルタ100が収納されるケース53とを備えている。
【0042】
ケース53の上面中央には、空気吸入口54が設けられ、この空気吸入口54にはプレフィルター55が設けられている。また、ケース53の内部には、空気吸入口54に臨ませてファン51が設けられている。このファン51は、駆動モータ52の駆動軸に固定され、この駆動モータ52はケース53内に架設した架台56に固定されている。
【0043】
このような構成のファンフィルタユニット50では、ファン51の作動によって、表示部付きフィルタ100のフィルタ11より上流側の空気をフィルタ11に送り込んで当該フィルタ11によって清浄化して、フィルタ11より下流に吹き出す。
【0044】
また、ファンフィルタユニット50のフィルタ11の空気吹出側表面には、フィルタ11の目詰まり状況を表示する表示手段として表示灯(発光部材)35が設けられている。
図3に示すように、表示部付きフィルタ100のプリント基板15に実装されている給電コネクタ25には、給電ケーブル25aが接続され、この給電ケーブル25aが表示灯35に接続されている。
【0045】
上述したように、表示部付きフィルタ100のフィルタ11の空気流入側の圧力と空気排出側の圧力との圧力差(差圧値)が差圧計20で計測され、表示部21に表示される。
したがって、制御部26は、この差圧値に基づいて、表示灯35に給電し、当該表示灯35を点灯、点滅、消灯させる。
【0046】
例えば、(a)差圧値が0~5Pa以下である場合は、制御部35は差圧が無いと判断して、表示灯35に給電しない。このため、表示灯35は消灯しており、作業者は、フィルタ11に目詰まりが無いことが分かる。
また、(b)差圧値が5Pa以上、初期差圧値(工場出荷時 50Pa)以下である場合は、制御部35は差圧が若干上昇していると判断して、表示灯35が低速点滅するように、当該表示灯35に給電する。これにより、作業者は、フィルタ11が加圧されていることが分かる。
【0047】
また、(c)差圧値が初期差圧値(工場出荷時 50Pa)を超え、終期差圧値(工場出荷時 300Pa)以下である場合は、制御部35は差圧が上昇していると判断して、表示灯35が点滅するように、当該表示灯35に給電する。これにより、作業者は、フィルタ11が正常差圧内であることが分かる。
また、(d)差圧値が終期差圧値(工場出荷時 300Pa)を超えている場合は、制御部35は差圧がかなり上昇していると判断して、表示灯35が高速点滅するように、当該表示灯35に給電する。これにより、作業者は、フィルタ11に目詰まりが生じていることが分かる。
また、表示部付きフィルタ100に警報機を取り付けておき、(d)の場合、制御部26が警報機に警報を発するように指示してもよい。
【0048】
以上のように本実施形態によれば、差圧計ポート付きフィルタ10が、フレーム12Aに取り付けられた一次側差圧計ポート41と、二次側差圧計ポート42を備えているので、一次側差圧計ポート41に一次側計測チューブ31を接続し、二次側差圧計ポート42に二次側計測チューブ32を接続することによって、フィルタ11が収納されるケース53に穴加工をする必要がなく、従来のような計測チューブの配管が不要となる。
【0049】
また、フィルタ11に取り付けられたフレーム12Aに差圧計20が取り付けられ、この差圧計20に、先端部が差圧計ポート付きフィルタ10の一次側差圧計ポート41に接続された、一次側計測チューブ31の基端部が接続されるとともに、先端部が差圧計ポート付きフィルタ10の二次側差圧計ポート42に接続された、二次側計測チューブ32の基端部が接続され、フレーム12Aに差圧計20の計測値を表示する表示部21が設けられているので、フィルタ11が収納されるケース53に穴加工をする必要がなく、従来のような計測チューブの配管が不要となり、計測チューブの潰れに起因する計測値の不具合を防止できる。
【0050】
また、プリント基板15をフレーム12Aに設けることによって、差圧計20と表示部21を容易にフレーム12Aに取り付けることができる。
さらに、差圧計20によって計測された計測値を通信部24によって外部に通信(送信)できるので、外部に設置された表示器30によって、計測値を受信して表示できる。したがって、表示部21に表示される計測値を目視できない離れた場所に作業者がいても、当該作業者が表示器30によって計測値を確認できる。
また、通信部24がRS485モジュールによって構成されているので、複数の表示部付きフィルタ100の差圧計20をマルチドロップ接続できる。したがって、複数の表示部付きフィルタ100の表示部21に表示される計測値を表示器30によって一覧表示して確認することができる。
【0051】
また、ファンフィルタユニット50のフィルタ11の目詰まり況を表示する表示手段としての発光部材(表示灯)35を備え、表示部付きフィルタ100のプリント基板15に、給電コネクタ25が設けられ、給電コネクタ25に、発光部材35に給電する配線が接続されているので、ファンフィルタユニット50のフィルタ11の目詰まり況を、発光部材35を直接目視して判断でき、これにより、フィルタの異常発生(目詰まり)に対する迅速な対応が可能となる。
【0052】
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態の差圧計ポート付きフィルタ10Aと外部表示部材60とを示す概略正面図である。
なお、本実施形態において、第1の実施形態と同一構成は同一符号を付して、その説明および図示を省略する場合もある。
【0053】
本実施形態の差圧計ポート付きフィルタ10Aは、一次側差圧計ポート41Aと二次側差圧計ポート42Aを備えている。
一次側差圧計ポート41Aは、フレーム12Aの凹所12bの底面に固定された支持板61と、この支持板61に設けられた一次側接続部材62aと、この一次側接続部材62aの一端部に接続された一次側計測チューブ31とを備えている。一次側計測チューブ31の先端部は、第1の実施形態と同様に、フレーム12Aを貫通するようにして固定された金属製の円筒管に接続されている。
二次側差圧計ポート42Aは、前記支持板61と、この支持板61に設けられた二次側接続部材62bと、この二次側接続部材62bの一端部に接続された二次側計測チューブ32とを備えている。二次側計測チューブ32の先端部は、第1の実施形態と同様に、フレーム12Aを貫通するようにして固定された金属製や樹脂製の円筒管に接続されている。
【0054】
また、一次側接続部材62aの他端部には、一次側延出チューブ63aが接続され、二次側接続部材62bの他端部には、二次側延出チューブ63bが接続されている。一次側延出チューブ63aおよび二次側延出チューブ63bは、フレーム12Aの外部に引き出されるため、一次側計測チューブ31および二次側計測チューブ32より大径に形成され、強度が確保されている。そして、一次側計測チューブ31と一次側延出チューブ63aとは一次側接続部材62aによって連通した状態で接続され、二次側計測チューブ32と二次側延出チューブ63bとは二次側接続部材62bによって連通した状態で接続されている。
【0055】
外部表示部材60は、フレーム12Aの外部に設置されるもので、矩形板状の支持板65と、この支持板65の表面に固定されたプリント基板15とを備えている。
プリント基板15には、第1の実施の形態と同様に、差圧計20、表示部21、電源通信コネクタ22、通信コネクタ23、通信部24、給電コネクタ25、制御部26等が実装されている。
【0056】
また、支持板65は、その端部に取付板65aを有しており、この取付板65aは支持板65に対して直角に設けられている。
取付板65aには、一次側接続部材66aと二次側接続部材66bとが設けられている。一次側接続部材66aには、前記一次側延出チューブ63aが接続され、二次側接続部材66bには、前記二次側延出チューブ63bが接続されている。
【0057】
また、プリント基板15に実装されている差圧計20には、一次側計測チューブ67aと二次側計測チューブ67bの基端部がそれぞれ接続されている。また、一次側計測チューブ67aの先端部は、一次側接続部材66aに接続され、二次側計測チューブ67bの先端部には、二次側接続部材66bに接続されている。そして、一次側延出チューブ63aと一次側計測チューブ67aとは一次側接続部材66aによって連通した状態で接続され、二次側延出チューブ63bと二次側計測チューブ67bとは二次側接続部材66bによって連通した状態で接続されている。
【0058】
したがって、差圧計20は、フィルタ11(
図2参照)の空気流入側の圧力を、一次側計測チューブ31、一次側接続部材62a、一次側延出チューブ63a、一次側接続部材66a、および一次側計測チューブ67aを介して、計測できる。
同様に、差圧計20は、フィルタ11(
図2参照)の空気排出側の圧力を、二次側計測チューブ32、二次側接続部材62b、二次側延出チューブ63b、二次側接続部材66b、および二次側計測チューブ67bを介して、計測できる。
【0059】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができるのは勿論のこと、以下のような効果を得ることができる。
フレーム12Aに取り付けられた一次側差圧計ポート41Aと、二次側差圧計ポート42Aを備えているので、一次側差圧計ポート41Aに一次側計測チューブ31を接続し、二次側差圧計ポート42Aに二次側計測チューブ32を接続することによって、フィルタ11が収納されるケースに穴加工をする必要がなく、従来のような計測チューブの配管が不要となる。
【0060】
また、ファンフィルタユニットは、天井部等の視認でき難い位置に設置されるが、本実施形態では、差圧計ポート付きフィルタ10Aの外部に外部表示部材60を設置できるので、外部表示部材60の表示部21を容易に視認できる。
また、第1の実施形態では、差圧計20、表示部21、電源通信コネクタ22、通信コネクタ23、通信部24、給電コネクタ25、制御部26等が実装されたプリント基板15をフレーム12Aに取り付ける必要があったが、本実施形態では、プリント基板15を備えた外部表示部材60をフレーム12Aの外部に設置できるので、フレーム12Aにプリント基板15を取り付ける手間を省くことができる。
【0061】
なお、本実施形態では、外部表示部材60を、ファンフィルタユニット用の差圧計ポート付きフィルタ10Aの一次側差圧計ポート41Aと二次側差圧計ポート42Aとに接続するようしたが、例えば、エアーシャワー装置、業務用空気清浄機、クリーンベンチ、クリーンブース等に使用されるHEPAフィルタ等のフィルタに、一次側差圧計ポート41Aと二次側差圧計ポート42Aとを取り付けておき、この一次側差圧計ポート41Aと二次側差圧計ポート42Aとに外部表示部材60を接続してもよい。このようにすれば、各装置や機器のフィルタの目詰まりを外部表示部材60によって管理できる。
また、外部表示部材60に代えて、市販のマノスターゲージやデジタル差圧計でも利用可能である。
【符号の説明】
【0062】
10,10A 差圧計ポート付きフィルタ
11 フィルタ
12A フレーム
15 プリント基板
20 差圧計
21 表示部
24 通信部
25 給電コネクタ
31 一次側計測チューブ
32 二次側計測チューブ
41,41A 一次側差圧計ポート
42,42A 二次側差圧計ポート
35 発光部材
50 ファンフィルタユニット
51 ファン
52 駆動モータ
100 表示部付きフィルタ
【手続補正書】
【提出日】2024-08-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタと、
前記フィルタに取り付けられ、当該差圧ポート付きフィルタを構成するフレームと、
前記フレームに取り付けられ、前記フィルタの空気流入側と連通する一次側差圧計ポートと、
前記フレームに取り付けられ、前記フィルタの空気排出側と連通する二次側差圧計ポートと、を備えたことを特徴とする差圧計ポート付きフィルタ。
【請求項2】
請求項1に記載の差圧計ポート付きフィルタと、
前記差圧計ポート付きフィルタのフレームに取り付けられた差圧計と、
前記差圧計に基端部が接続され、先端部が前記差圧計ポート付きフィルタの一次側差圧計ポートに接続された一次側計測チューブと、
前記差圧計に基端部が接続され、先端部が前記差圧計ポート付きフィルタの二次側差圧計ポートに接続された二次側計測チューブと、
前記フレームに設けられて、前記差圧計の計測値を表示する表示部と、を備えたことを特徴とする表示部付きフィルタ。
【請求項3】
少なくとも前記差圧計と、前記表示部とがプリント基板に設けられ、
前記プリント基板が前記フレームに取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載の表示部付きフィルタ。
【請求項4】
前記プリント基板に、前記差圧計の計測値を外部に通信可能な通信部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の表示部付きフィルタ。
【請求項5】
前記通信部がRS485モジュールによって構成されていることを特徴とする請求項4に記載の表示部付きフィルタ。
【請求項6】
フィルタの目詰まり状況を表示する表示手段としての発光部材を備え、
前記プリント基板に、給電コネクタが設けられ、
前記給電コネクタに、前記発光部材に給電する給電ケーブルが接続されていることを特徴とする請求項3に記載の表示部付きフィルタ。
【請求項7】
ファンと、当該ファンを駆動する駆動モータと、請求項1に記載の差圧計ポート付きフィルタと、前記ファン、前記駆動モータおよび前記差圧計ポート付きフィルタが収納されるケースとを備え、
前記ファンの作動によって、前記差圧計ポート付きフィルタより上流側の空気を前記フィルタに送り込んで当該フィルタによって清浄化して、前記フィルタより下流に吹き出すことを特徴とするファンフィルタユニット。
【請求項8】
ファンと、当該ファンを駆動する駆動モータと、請求項2~6のいずれか1項に記載の表示部付きフィルタと、前記ファン、前記駆動モータおよび前記表示部付きフィルタが収納されるケースとを備え、
前記ファンの作動によって、前記表示部付きフィルタのフィルタより上流側の空気を前記フィルタに送り込んで当該フィルタによって清浄化して、前記フィルタより下流に吹き出すことを特徴とするファンフィルタユニット。