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特開2025-22339複素環を有するビニルスルフィド化合物を含有する光ラジカル重合性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022339
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】複素環を有するビニルスルフィド化合物を含有する光ラジカル重合性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 228/04 20060101AFI20250206BHJP
   C08F 222/00 20060101ALI20250206BHJP
   C07D 263/58 20060101ALI20250206BHJP
   C07D 277/74 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
C08F228/04
C08F222/00
C07D263/58
C07D277/74
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023126795
(22)【出願日】2023-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】321011907
【氏名又は名称】エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152928
【弁理士】
【氏名又は名称】草部 光司
(72)【発明者】
【氏名】丹下 一騎
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AB02Q
4J100AG04Q
4J100AJ01Q
4J100AJ02Q
4J100AJ08Q
4J100AJ09Q
4J100AK32Q
4J100AL03Q
4J100AL04Q
4J100AL05Q
4J100AL08Q
4J100AL09Q
4J100AL10Q
4J100AL11Q
4J100AL62Q
4J100AL63Q
4J100AL66Q
4J100AL67Q
4J100AL75Q
4J100AM02Q
4J100AM15Q
4J100AM19Q
4J100AM21Q
4J100AM23Q
4J100AM24Q
4J100AP01P
4J100AS28Q
4J100BA02Q
4J100BA03Q
4J100BA04Q
4J100BA05P
4J100BA05Q
4J100BA06P
4J100BA06Q
4J100BA08Q
4J100BA14Q
4J100BA15Q
4J100BA31Q
4J100BA34Q
4J100BA42Q
4J100BA51P
4J100BA51Q
4J100BA53P
4J100BA63Q
4J100BB01Q
4J100BC04Q
4J100BC07Q
4J100BC09Q
4J100BC12Q
4J100BC28Q
4J100BC43P
4J100BC43Q
4J100BC44Q
4J100BC49Q
4J100BC53Q
4J100BC54Q
4J100BC80P
4J100BC83P
4J100CA04
4J100CA23
4J100CA31
4J100DA09
4J100DA62
4J100DA63
4J100FA03
4J100FA18
4J100HA53
4J100HC25
4J100HC47
4J100HC61
4J100HC63
4J100HC64
4J100HC69
4J100HC72
4J100HC75
4J100HE20
4J100JA07
4J100JA32
4J100JA33
4J100JA43
(57)【要約】      (修正有)
【課題】光学用途に適している透明な樹脂原料として用いられる光ラジカル重合性組成物であって、硬化性に優れているばかりでなく、低粘度で高屈折率あり、硬化して得られる重合物の屈折率を調整できる光ラジカル重合性組成物を提供することにある。
【解決手段】(A)一般式(1)で表される複素環を有するビニルスルフィド化合物、(B)(メタ)アクリル基を有するラジカル重合性化合物、(C)光ラジカル重合開始剤を含有する光ラジカル重合性組成物であって、前記重合性組成物の屈折率(n)が1.50以上であることを特徴とする、光ラジカル重合性組成物。

(一般式(1)において、Aは酸素原子または硫黄原子を表し、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から6のアルキル基等を表す。)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一般式(1)で表される複素環を有するビニルスルフィド化合物、
(B)(メタ)アクリル基を有するラジカル重合性化合物、
(C)光ラジカル重合開始剤、
を、含有する光ラジカル重合性組成物であって、
当該光ラジカル重合性組成物の25℃における屈折率(n)が1.50以上であることを特徴とする、光ラジカル重合性組成物。
【化1】

(一般式(1)において、Aは酸素原子または硫黄原子を表し、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数6から10のアリール基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数6から10のアリールオキシ基、炭素数1から6のアルキルチオ基、炭素数6から10のアリールチオ基を表し、RとRが互いに結合して飽和又は不飽和の環を形成してもよい。)
【請求項2】
光ラジカル重合性組成物の25℃における粘度が30mPa・s以下であることを特徴とする、請求項1に記載の光ラジカル重合性組成物。
【請求項3】
(B)(メタ)アクリル基を有するラジカル重合性化合物が、単官能(メタ)アクリレート、単官能(メタ)アクリルアミド、多官能(メタ)アクリレート及び多官能(メタ)アクリルアミドからなる群より選択されるいずれか一つ以上のラジカル重合性化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の光ラジカル重合性組成物。
【請求項4】
(C)光ラジカル重合開始剤が、アルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤、ベンゾフェノン系光ラジカル重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤、オキシムエステル系光ラジカル重合開始剤、α-アミノアセトフェノン系光ラジカル重合開始剤、ビイミダゾール系光ラジカル重合開始剤、トリアジン系光ラジカル重合開始剤及びチオキサントン系光ラジカル重合開始剤からなる群より選択されるいずれか一つ以上の光ラジカル重合開始剤であることを特徴とする、請求項1に記載の光ラジカル重合性組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の光ラジカル重合性組成物において、(A)一般式(1)で表される複素環を有するビニルスルフィド化合物の含有量が光ラジカル重合性組成物全量100重量%に対して10重量%以上であることを特徴とする、光ラジカル重合性組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光ラジカル重合性組成物に活性エネルギー線を照射する重合方法。
【請求項7】
照射する活性エネルギー線が350nmから420nmの波長範囲にピーク波長を有することを特徴とする、請求項6に記載の重合方法。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光ラジカル重合性組成物を重合してなる重合物であって、該重合物の25℃における屈折率(n)が1.50以上であることを特徴とする、重合物。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複素環を有するビニルスルフィド化合物を含有する光ラジカル重合性組成物及びその重合物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶や有機ELを用いたディスプレイが多く用いられているが、これらのディスプレイの表面は、何層もの光学フィルムの積層体で覆われており、光取り出しやタッチパネルなどの機能を付与している。また、その基板もガラス基板から樹脂を用いたフレキシブル基板へと移りつつあり、その封止においても、種々のフィルムの積層体が用いられている。これらのディスプレイにおいて、外部からの光の制御や内部から発せられた光の制御は、ディスプレイの品質という点で非常に重要となってくる。
【0003】
一方、これらのフィルムの積層体は、それぞれ光に対する異なる屈折率を有しており、その屈折率の違いにより、様々な特性が発現したり、逆に様々な問題が生じたりしている。例えば、カラーフィルタにおいては、顔料種が異なると画素の屈折率がそれぞれ異なってしまい、オーバーコート層との界面で光の散乱が大きくなってしまい透過光の損失が生じてしまうという問題が生じる。また、フィルムの積層体は一般に粘着組成物で接着されるが、高屈折率材料の接合に一般的なアクリル系粘着剤を用いると、両者の屈折率差に起因して界面で反射が生じることが知られている。そのため、粘着剤の屈折率を調節するための屈折率調整剤が用いられる例が知られている。例えば、特許文献1には、トリアジン環を有する化合物をアクリル系ポリマーに添加して、屈折率1.55以上という高屈折率の粘着剤を開発している。
【0004】
また、ガスバリアフィルムをディスプレイの表面保護として用いると、プラスチック基材、蒸着薄膜層、ガスバリア被覆層と界面が2箇所あるため、干渉光による色ムラが発生し、外観上問題となっている。一般に、二つのフィルムの積層状態において、その屈折率の差が大きい程フィルムの接触面での反射が大きくなり、そのことにより、光取り出し上の問題が生じると考えられる。よって、積層するフィルム間の屈折率差を少なくする方法が検討されている。例えば、タッチパネルなどでは、可視光を透過するITO(IndiumTinOxide)という金属酸化物でパターニングしたフィルムが使用されているが、このITOは無機物であるため有機物に比べて光の反射率が高く、ITO表面と基材フィルム(PET)の反射率が異なるためITOパターンが可視化されるという問題がある。このように、樹脂フィルムは一般に屈折率が低く、フィルムの屈折率を高めるような試みが検討されている。例えば、特許文献2では、トリアジン骨格を有する(メタ) アクリレート化合物と、屈折率調整剤とを含む重合性組成物が開示されており、屈折率調整剤として、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物を用いることにより、硬化後の硬化物の589nmにおける屈折率が1.557以上、1.571以下の硬化物を得ている。このように、既存の重合性組成物の屈折率を高くすることができるような屈折率調整剤が求められている。
【0005】
一般に、フィルムの屈折率とその原料となる重合性組成物の屈折率には正の相関関係にあり、高屈折率の重合物を得るためにはその重合性組成物を構成する重合性化合物が高屈折率であることが必要である。よって、既存の重合性化合物と共重合可能な高屈折率の重合性化合物を添加することにより、屈折率を高く調製できると考えられる。
【0006】
重合性化合物の屈折率を高くする方法としては、分子構造中に芳香環を導入したり、ハロゲン原子(フッ素を除く)や硫黄原子を導入したりすることが既に広く知られている。例えば、分子構造中に芳香環を有する重合性化合物としては、例えば、ベンゼン環のほか、ビフェニル、ナフタレン、フルオレン、アントラセンなどの多環芳香環を有するものが知られている。しかし、分子構造中に単一のベンゼン環を有する重合性化合物では屈折率が十分でない。また、分子構造中にビフェニル、ナフタレン、フルオレン、アントラセンなどの多環芳香環を有する重合性化合物は、高屈折率が期待されるものの、殆どの場合に高粘度液体または結晶固体になるため溶解性などのハンドリング性が低下する問題がある。例えば、特許文献3には、屈折率が高く、かつアッベ数が低い硬化物を得ることができる硬化性組成物として、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレートを含む組成物が開示されている。その中で、9,9-ビス(4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル)フルオレンの屈折率がnD:1.608であって、25℃における粘度が100000mPa・s以上である。
【0007】
更にまた、高い固有屈折率を有する硫黄原子を有する単量体組成物も報告されている。例えば、特許文献4には、硫黄原子を介して芳香族環を導入することで高屈折率化を図っている。特許文献5では、チオ(メタ)アクリレート モノマーを主体とする重合性組成物が開示されており、ビス[(4-メタクリロイルチオ)フェニル] サルファイドなどが開示されている。また、特許文献6には、低粘度、高屈折率でその単独重合体の耐熱性が高い、希釈用の新規な(メタ)アクリル酸エステルとして、メチルチオフェニル基を有する化合物が開示されている。特許文献7では、高屈折率の硬化物を形成可能であって、インクジェット法を適用可能である液状の硬化性インク組成物として、スルフィド化合物と硫黄化合物を含有する(メタ)アクリレート化合物とを用い、金属化合物ナノ結晶として酸化ジルコニウムナノ結晶を用いた重合性組成物が開示されている。
【0008】
さらに、特許文献8には、屈折率が高く、芳香環を有する重合性化合物への溶解性が高く、かつ硬化物の可視光透過率が高い重合性化合物として、縮合環が、ナフタレン環、アントラセン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイミダゾール環、フルオレン環およびフェナントレン環からなる群から選ばれる環を持つ(メタ)アクリル酸エステルが開示されている。そして、特許文献9には、高屈折率対称型(メタ)アクリル酸エステルの製造方法として、アリール基またはヘテロアリール基を有する(メタ)アクリル酸エステルが開示されており、ヘテロアリール基としてメルカプトベンゾチアゾール基を持つ化合物が開示されている。同様に、特許文献10には、硫黄原子含有(メタ)アクリル酸エステルとして、ベンゾチアゾール環を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物が開示されている。しかし、これらの高屈折率を有するアクリルエステルはいずれも粘度が高いという問題を有している。
【0009】
また、特許文献11には、ペンタエリスリトール骨格の四級炭素の4つの分子鎖のうち3つの分子鎖に、芳香環または芳香族複素環が導入されており、残りの一つに(メタ)アクリル基を導入した化合物が開示されている。芳香族複素環としてベンゾオキサゾール環、チエノオキサゾール環、チアゾロオキサゾール環、オキサゾロオキサゾール環、オキサゾロイミダゾール環、オキサゾロピリジン環、オキサゾロピリダジン環、オキサゾロピリミジン環、オキサゾロピラジン環、ナフトオキサゾール環、キノリノオキサゾール環、ジオキサゾロピラジン環、フェノキサジン環、ベンゾチアゾール環、フロチアゾール環、チエノチアゾール環、チアゾロチアゾール環、チアゾロイミダゾール環、チエノチアジアゾール環、チアゾロチアジアゾール環、チアゾロピリジン環、チアゾロピリダジン環、チアゾロピリミジン環、チアゾロピラジン環、ナフトチアゾール環、キノリノチアゾール環、及びフェノチアジン環が開示されている。その中で、チアゾロチアジアゾール環が開示されている。
【0010】
しかし、これらの高屈折率の重合性化合物は、アクリル酸エステルの構造をとるものがほとんどである。アクリル酸エステルとすることにより、透明性が期待でき、高い重合性が期待できる。しかし、その反面、粘度が高くなってしまうという欠点がある。例えば、特許文献12には、光学物品、特に調光フィルムの製造に有用な紫外線で硬化可能な高屈折率モノマーが開示されており、その中で、複素環式(メタ)アクリレートとして、ベンゾチアゾール基を有するメタ)アクリレートなどが開示されている。アクリル酸1,3-ビス(2-メルカプトベンゾチアゾイル)プロパン-2-イルの屈折率が1.629であり、粘度が860cPであり、アクリル酸2-(4-クロロフェノキシ)-1-[(フェニルチオ)メチル]エチルの屈折率が1.5792であり、粘度が352cPであることが記載されている。
【0011】
一方、近年、ディスプレイなどの光学用途でこれらの高屈折の重合性化合物を用いる場合、インクジェットなどの塗布型で用いることが有望視されており、これらの高屈折重合性化合物を含む重合性組成物もインクジェットインクとして、低粘度であることも重要な因子として求められている。例えば、インクジェットインクとしては、30mPa・s以下というような低粘度の重合性組成物が求められており、高屈折率であり、重合性が高く、かつ低粘度である重合性化合物が期待されている。
【0012】
また、ビニルスルフィド基を有する重合性化合物も知られている。特許文献13には、ナノインプリント用組成物として、重合性官能基とジアリールスルフィド骨格を有する化合物が開示されており、重合性官能基として、ビニル基、アリル基、メタクリロイル基、アクリロイル基が開示されている。特許文献14~16には、フェニルビニルスルフィドを含む重合性組成物が開示されている。
【0013】
特許文献17及び18には、プラスチックレンズ材料として2-ビニルチオベンゾチアゾール及びジビニルベンゼン等のラジカル重合性化合物とを有機過酸及び/又はアゾ化合物を用いて、加熱下にラジカル重合することが記載されている。また、特許文献19には、有機エレクトロルミネッセンス材料として2-ビニルチオベンゾチアゾールを含む芳香族ヘテロ環を有する重合性化合物を有機過酸及び/又はアゾ化合物を用いて、加熱下にラジカル重合することが記載されている。いずれも熱ラジカル重合開始剤を用いているもので、本発明とはその組成が異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2023-38116号公報
【特許文献2】特開2012-72316号公報
【特許文献3】特開2019-14767号公報
【特許文献4】特開2020-37693号公報
【特許文献5】特開平9-25321号公報
【特許文献6】特開2017-190326号公報
【特許文献7】特開2021-31669号公報
【特許文献8】特開2018-104696号公報
【特許文献9】特開2012-82145号公報
【特許文献10】特開2023-32499号公報
【特許文献11】特開2017-14213号公報
【特許文献12】特開2005-133071号公報
【特許文献13】特開2022-170092号公報
【特許文献14】特開2022-128911号公報
【特許文献15】国際公開第2018/062196号パンフレット
【特許文献16】特開2021-55051号公報
【特許文献17】特開平2-265907号公報
【特許文献18】特開平4-225007号公報
【特許文献19】特開2000-87027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
光学用途に適している透明な樹脂原料として用いられる光ラジカル重合性組成物であって、硬化性に優れているばかりでなく、低粘度で高屈折率あり、硬化して得られる共重合物の屈折率を調整できる光ラジカル重合性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らが鋭意検討した結果、樹脂原料として特定の構造を有するビニルスルフィド化合物を含有する光ラジカル重合性組成物が、低粘度で且つその屈折率が非常に高く、種々のラジカル重合性化合物と共重合組成物を構成することができ、該共重合組成物は実用的な条件で容易に重合し、高屈折率の重合物を得ることができることを見出し、本発明の完成に至った。
【0017】
第一の発明は、(A)一般式(1)で表される複素環を有するビニルスルフィド化合物、(B)(メタ)アクリル基を有するラジカル重合性化合物、(C)光ラジカル重合開始剤、を含有する光ラジカル重合性組成物であって、当該光ラジカル重合性組成物の25℃における屈折率(n)が1.50以上であることを特徴とする、光ラジカル重合性組成物に存する。
【0018】
【化1】
【0019】
一般式(1)において、Aは酸素原子または硫黄原子を表し、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数6から10のアリール基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数6から10のアリールオキシ基、炭素数1から6のアルキルチオ基、炭素数6から10のアリールチオ基を表し、RとRが互いに結合して飽和又は不飽和の環を形成してもよい。
【0020】
第二の発明は、光ラジカル重合性組成物の25℃における粘度が30mPa・s以下であることを特徴とする、第一の発明に記載の光ラジカル重合性組成物に存する。
【0021】
第三の発明は、(B)(メタ)アクリル基を有するラジカル重合性化合物が、単官能(メタ)アクリレート、単官能(メタ)アクリルアミド、多官能(メタ)アクリレート及び多官能(メタ)アクリルアミドからなる群より選択されるいずれか一つ以上のラジカル重合性化合物であることを特徴とする、第一の発明に記載の光ラジカル重合性組成物に存する。
【0022】
第四の発明は、(C)光ラジカル重合開始剤がアルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤、ベンゾフェノン系光ラジカル重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤、オキシムエステル系光ラジカル重合開始剤、α-アミノアセトフェノン系光ラジカル重合開始剤、ビイミダゾール系光ラジカル重合開始剤及びチオキサントン系光ラジカル重合開始剤からなる群より選択されるいずれか一つ以上の光ラジカル重合開始剤であることを特徴とする、第一の発明に記載の光ラジカル重合性組成物に存する。
【0023】
第五の発明は、第一の発明に記載の光ラジカル重合性組成物において、(A)一般式(1)で表される複素環を有するビニルスルフィド化合物の含有量が光ラジカル重合性組成物全量100重量%に対して10重量%以上であることを特徴とする、光ラジカル重合性組成物に存する。
【0024】
第六の発明は、第一乃至第五の発明のいずれかひとつに記載の光ラジカル重合性組成物に活性エネルギー線を照射する重合方法に存する。
【0025】
第七の発明は、照射する活性エネルギー線が350nmから420nmの波長範囲にピーク波長を有することを特徴とする、第六の発明に記載の重合方法に存する。
【0026】
第八の発明は、第一乃至第五の発明のいずれかひとつに記載の光ラジカル重合性組成物を重合してなる重合物であって、該重合物の25℃における屈折率(n)が1.50以上であることを特徴とする、重合物に存する。
【0027】
本発明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを表し、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル又はメタクリロイルを、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを表す。また、本発明における屈折率とは、特に断らない限り、25℃におけるD線(589nm)に対する屈折率(n)を意味する。さらにまた、本発明における粘度とは、特に断らない限り、E型粘度計を使用して25℃で測定した値を意味する。
【発明の効果】
【0028】
本発明の複素環を有するビニルスルフィド化合物、(メタ)アクリル基を有するラジカル重合性化合物及び光ラジカル重合開始剤を含有する光ラジカル重合性組成物は、低粘度で且つ高屈折率で、実用的な条件で容易に重合し、本発明の光ラジカル重合性組成物を重合することにより非常に高い屈折率を有した重合物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】2-ビニルチオベンゾオキサゾールとトリメチロールプロパントリアクリレートの共重合組成物における2-ビニルチオベンゾオキサゾールの添加割合と組成物の屈折率、粘度の関係を示した図。平滑線はプロットされた各点を滑らかに結んだものである。
図2】2-ビニルチオベンゾチアゾールとトリメチロールプロパントリアクリレートの共重合組成物における2-ビニルチオベンゾチアゾールの添加割合と組成物の屈折率、粘度の関係を示した図。平滑線はプロットされた各点を滑らかに結んだものである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0031】
((A)一般式(1)で表される複素環を有するビニルスルフィド化合物)
本発明の複素環を有するビニルスルフィド化合物は、一般式(1)で表される。
【0032】
【化2】
【0033】
一般式(1)において、Aは酸素原子または硫黄原子を表し、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数6から10のアリール基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数6から10のアリールオキシ基、炭素数1から6のアルキルチオ基、炭素数6から10のアリールチオ基を表し、RとRが互いに結合して飽和又は不飽和の環を形成してもよい。
【0034】
一般式(1)において、R、Rで表される炭素数1から6のアルキル基としては、直鎖アルキル基でもよく分枝のアルキル基でもよい。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、2-メチルブチル基、ネオペンチル基、1-エチルプロピル基、n-ヘキシル基、4-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1-メチルペンチル基、3,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、又は1,2-ジメチルブチル基等が挙げられる。
【0035】
炭素数6から10のアリール基としては、アリール基としては、置換基を有しても良いフェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。炭素数1から6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の直鎖状、分枝鎖状又は環状のアルコキシ基等を挙げることができる。炭素数6から10のアリールオキシ基としては、置換基を有しても良いフェニルオキシ基、トリルオキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられる。炭素数1から6のアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、i-プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、i-ブチルチオ基、n-アミルチオ基、i-アミルチオ基、n-ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基等を挙げることができ、炭素数6から10のアリールチオ基としては、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられる。
【0036】
一般式(1)において、Aが酸素原子である場合はベンゾオキサゾール基を有するビニルスルフィド化合物となり、Aが硫黄原子である場合はベンゾチアゾール基を有するビニルスルフィド化合物となる。
【0037】
一般式(1)におけるAが酸素原子であるベンゾオキサゾール基を有するビニルスルフィド化合物の具体的な例としては、2-ビニルチオベンゾオキサゾール、2-ビニルチオ-5-メチルベンゾオキサゾール、2-ビニルチオ-6-メチルベンゾオキサゾール、2-ビニルチオ-4-メチルベンゾオキサゾール、2-ビニルチオ-5,6-ジメチルベンゾオキサゾール、2-ビニルチオ-ナフト [2,1-d]ベンゾオキサゾール、2-ビニルチオ-ナフト [1,2-d]ベンゾオキサゾール、2-ビニルチオ-5-フェニルベンゾオキサゾール、2-ビニルチオ-5-tert-ブチルベンゾオキサゾール、2-ビニルチオ-4-メトキシベンゾオキサゾール、2-ビニルチオ-5-メトキシベンゾオキサゾール、2-ビニルチオ-6―メトキシベンゾオキサゾール、2-ビニルチオ-6-エトキシベンゾオキサゾール、2-ビニルチオ-4-メチルチオベンゾオキサゾール、2-ビニルチオ-5-メチルチオベンゾオキサゾール、2-ビニルチオ-6-メチルチオベンゾオキサゾール、2-ビニルチオ-6-エチルチオベンゾオキサゾール、2-ビニルチオ-6-フェニルチオベンゾオキサゾールなどが挙げられる。
【0038】
一般式(1)におけるAが硫黄原子であるベンゾチアゾール基を有するビニルスルフィド化合物の具体的な例としては、2-ビニルチオベンゾチアゾール、2-ビニルチオ-5-メチルベンゾチアゾール、2-ビニルチオ-6―メチルベンゾチアゾール、2-ビニルチオ-4-メチルベンゾチアゾール、2-ビニルチオ-5,6-ジメチルベンゾチアゾール、2-ビニルチオ-ナフト[2,1-d]ベンゾチアゾール、2-ビニルチオ-ナフト[1,2-d]ベンゾチアゾール、2-ビニルチオ-5-フェニルベンゾチアゾール、2-ビニルチオ-5-tert-ブチルベンゾチアゾール、2-ビニルチオ-4-メトキシベンゾチアゾール、2-ビニルチオ-5-メトキシベンゾチアゾール、2-ビニルチオ-6-メトキシベンゾチアゾール、2-ビニルチオ-6-エトキシベンゾチアゾール、2-ビニルチオ-4-メチルチオベンゾチアゾール、2-ビニルチオ-5-メチルチオベンゾチアゾール、2-ビニルチオ-6-メチルチオベンゾチアゾール、2-ビニルチオ-6-エチルチオベンゾチアゾール、2-ビニルチオ-6-フェニルチオベンゾチアゾールなどが挙げられる。
【0039】
上記例示した化合物の中でも下記構造式(2)の2-ビニルチオベンゾオキサゾールと構造式(3)の2-ビニルチオベンゾチアゾールが、合成が容易で、屈折率、粘度という点で好ましい。また、低露光量で重合すること、そしてその重合物の透過度が高く、黄色度が低いという点で、一般式(1)におけるAが酸素原子である化合物が好ましく、合成の容易さから構造式(2)の2-ビニルチオベンゾオキサゾールが特に好ましい。
【0040】
【化3】
【0041】
【化4】
【0042】
(合成方法)
一般式(1)の化合物は、公知の方法で合成できる。例えば、下記反応式1に示したように、2-メルカプトベンゾオキサゾール化合物、2-メルカプトベンゾチアゾール化合物と1,2-ジブロモエタン等のジハロゲン化エタンを塩基存在下に反応させ、そののちに塩基存在下に脱ハロゲン化水素することにより、一般式(1)の化合物を合成できる。
【0043】
【化5】
【0044】
反応式1において、Aは酸素原子または硫黄原子を表し、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から6のアルキル基、炭素数6から10のアリール基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数6から10のアリールオキシ基、炭素数1から6のアルキルチオ基、炭素数6から10のアリールチオ基を表し、RとRが互いに結合して飽和又は不飽和の環を形成してもよい。また、Xは、塩素原子または臭素原子を表し、二つあるXは、同一であっても異なっていてもよい。
【0045】
通常は、一般式(4)の化合物とジハロゲン化エタンの反応によってチオール基が置換反応を起こしチオエーテル化合物が生成されるが、その後ほぼ同時にハロゲン化水素が脱離し二重結合を生成し、中間体を単離することなく、目的とする一般式(1)の複素環を有するビニルスルフィド化合物を得ることができる。
【0046】
上記方法により合成された一般式(1)で表される複素環を有するビニルスルフィドは、極めて低粘度で、かつ高屈折率の化合物である。例えば、本発明の複素環を有するビニルスルフィドである2-ビニルチオベンゾオキサゾールは、液状化合物であり、その25℃における粘度は4.2mPa・sと極めて低粘度であり、その屈折率は、1.62と高い屈折率を示す。また、2-ビニルチオベンゾチアゾールも液状化合物であり、その25℃における粘度は7.6mPa・sと極めて低粘度であり、その屈折率は、1.68と非常に高い屈折率を示す。
【0047】
また、本発明の一般式(1)で表される複素環を有するビニルスルフィドは、市販の光ラジカル重合開始剤を用いて重合硬化させることが可能であり、高圧水銀ランプのような光源だけでなく、紫外線LED、半導体レーザというような単一波長で照射エネルギーが弱い光源でも重合硬化する、極めて有用な重合性化合物であり、(メタ)アクリル酸エステルなどの他の重合性化合物との相溶性も極めて高く、混合することにより得られる光ラジカル重合性組成物もまた、粘度が低く保つことができ、得られる重合硬化物は、高屈折率を示す。高屈折率という点においては、2-ビニルチオベンゾチアゾールが好ましい。また、2-ビニルチオベンゾオキサゾールは低露光量で重合し、その重合物は、超高屈折率を示すとともに、高透過率で低YI(黄変度)であることから特に好ましい。
【0048】
((B)(メタ)アクリル基を有するラジカル重合性化合物)
本発明の一般式(1)で表される複素環を有するビニルスルフィド化合物は種々のラジカル重合性化合物と相溶性があり、共重合性組成物を形成できる。例えば、ビニルエーテル、ビニルスルフィド(一般式(1)で表される複素環を有するビニルスルフィドは除く)、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、単官能(メタ)アクリレート、単官能(メタ)アクリルアミド、多官能(メタ)アクリレート及び多官能(メタ)アクリルアミド等又はこれらのオリゴマーが挙げられる。これらラジカル重合性化合物の中でも、Q値0.9以下であるラジカル重合性化合物が好ましく、特に、(メタ)アクリル基を有するラジカル重合性化合物が透過性等の実用性という点で好ましい。そして、これらのラジカル重合性化合物と本発明の複素環を有するビニルスルフィド化合物の混合物である光ラジカル重合性組成物の25℃における粘度が30mPa・s以下となる、ラジカル重合性化合物との組み合わせ及び混合比で用いることが好ましい。
【0049】
(メタ)アクリル基を有するラジカル重合性化合物としては、単官能(メタ)アクリレート、単官能(メタ)アクリルアミド、多官能(メタ)アクリレート及び多官能(メタ)アクリルアミドが好ましい。用いることができる単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0050】
さらに、例えば、水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマー、アミノ基含有(メタ)アクリル系モノマー、アセトアセチル基含有(メタ)アクリル系モノマー、イソシアネート基含有(メタ)アクリル系モノマー、グリシジル基含有(メタ)アクリル系モノマー、芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル系モノマーなども挙げられる。
【0051】
水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミドなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド類、その他、2-アクリロイルオキシエチル2-ヒドロキシエチルフタル酸、N-メチロール(メタ)アクリルアミドなどの1級水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどの2級水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー、2,2-ジメチル2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの3級水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーを挙げることができる。中でもヒドロキシアルキル(C1~C6、直鎖又は分岐鎖)(メタ)アクリレート類が好ましく用いられる。
【0052】
前記のカルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸などのジカルボン酸、などが挙げられ、中でも(メタ)アクリル酸が好ましく用いられる。
【0053】
前記アミノ基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジ-t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノアルキル(メタ)アクリレート類、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのアミノアルキル(C1~C6、直鎖又は分岐鎖)(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。
【0054】
前記アセトアセチル基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、2-(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0055】
前記イソシアネート基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートやそれらのアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0056】
前記グリシジル基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸グリシジル、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、N-2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドグリシジルエーテル、N-メチル-N-2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0057】
また、芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジルフェニル(メタ)アクリレート、p-フェニルベンジルアクリレート、p-t-ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性クレゾール(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキシド変性(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシベンジル(メタ)アクリレート、m-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、クロロベンジル(メタ)アクリレート等のベンゼン環基を有する(メタ)アクリル系モノマー、また、2-ナフトエチル(メタ)アクリレート、2-ナフトキシエチルアクリレート、2-( 4-メトキシ-1-ナフトキシ)エチル(メタ)アクリレート、1-ナフチルメチル(メタ)アクリレート、2-ナフチルメチルアクリレート等のナフタレン環基を有する(メタ)アクリル系モノマー、そしてまた、p-ビフェニル(メタ)アクリレート、エトキシ化-p-ビフェニル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、エトキシ化-o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、等のビフェニル環基を有する(メタ)アクリル系モノマー、そして、フルオレニル(メタ)アクリレート、9-フルオレニルメチル(メタ)アクリレート(9-(メタ)アクリロイルオキシメチルフルオレン)等が挙げられる。ここに例示した化合物以外にも、芳香族炭化水素基として、アズレン環基、アントラセン環基、フェナントレン環基、ピレン環基、クリセン環基、ナフタセン環基、トリフェニレン環基、o-テルフェニル環基、m-テルフェニル環基、p-テルフェニル環基、フルオレン環基などを有する(メタ)アクリル系モノマーも挙げられる。これらの芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル系モノマーは、高屈折率であるが、高粘度である化合物が多く、本発明の一般式(1)で表される複素環を有するビニルスルフィドとの共重合組成物とすることにより、高屈折率であるが、低粘度の光ラジカル重合性組成物とすることができる。
【0058】
単官能(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、N-アルキル(C1~C18、直鎖又は分岐鎖)(メタ)アクリルアミド、N-アルコキシ(C1~C6、直鎖又は分岐鎖)アルキル(C1~C18、直鎖又は分岐鎖)(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシアルキル(C1~C18、直鎖又は分岐鎖)(メタ)アクリルアミド、N、N-ジヒドロキシアルキル(C1~C18、直鎖又は分岐鎖)(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシアルキル(C1~C18、直鎖又は分岐鎖)-N-アルキル(C1~C18、直鎖又は分岐鎖)(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-(ジアルキル(C1~C6、直鎖又は分岐鎖)アミノ)アルキル(C1~C18、直鎖又は分岐鎖)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(C1~C18、直鎖又は分岐鎖)(メタ)アクリルアミド、N-アクリロイルモルフォリン、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。特に、高純度の工業品で入手容易の観点から、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-アクリロイルモルフォリン、ダイアセトンアクリルアミド、N-(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチルアクリルアミドがより好ましい。これらの単官能モノマーは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジテトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7-ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプパントリ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、アクリレートエステル(ジオキサングリコールジアクリレート)、アルコキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アルコキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等のモノマーとオリゴマーが挙げられる。また、市販品で入手容易の観点から、多官能(メタ)アクリレートとしては、例えばSARTOMER社製、商品名CN2203、CN2270、東亜合成社製、商品名M-6100、M-8060、ウレタンアクリレートとしては、例えば日本合成化学社製、商品名UV-3200B、UV-3000B、UV-6640B、UV-3700B、UV-3310B、UV-7000Bや新中村化学工業社製、商品名U-4HA、U-200PA、ダイセル・サイテック社製、商品名EBECRYL245、EBECRYL1259、EBECRYL8210、EBECRYL284、EBECRYL8402、SARTOMER社製、商品名CN944、CN969、CN9002、CN9029、根上工業社製、商品名UN1255、UN-5507、共栄社化学社製、商品名AH-600、UA-306I等を用いることができ、エポキシ(メタ)アクリレートとしては、ダイセル・サイテック社製、商品名EBECRYL1259、EBECRYL605、EBECRYL1606やSARTOMER社製、商品名CN110、CN120、CN153等を使用できる。さらに、樹脂組成物の粘度や取扱いの容易さ等の観点から、ウレタンアクリレートUV-6640BまたはU-200PAがより好ましい。これらの多官能(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
多官能(メタ)アクリルアミドとしては、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、ジアリル(メタ)アクリルアミド、ウレタンジ(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0061】
本発明の光ラジカル重合性組成物において、(メタ)アクリル基を有するラジカル重合性化合物は、高屈折率という点では、芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル系モノマーが好ましいが、一般式(1)で表される複素環を有するビニルスルフィド化合物の屈折率調整剤としての効果としては、屈折率の低い脂肪族の(メタ)アクリル系モノマーとの共重合において、重要となる。
【0062】
(A)一般式(1)で表される複素環を有するビニルスルフィド化合物の含有量は光ラジカル重合性組成物全量100重量%に対して、1重量%以上であることが好ましく、低粘度化、高屈折率化という点で10重量%以上であることがさらに好ましく、20重量%以上であることがさらに好ましい。
【0063】
本発明の光ラジカル重合性組成物において、(A)一般式(1)で表される複素環を有するビニルスルフィド化合物と(B)(メタ)アクリル基を有するラジカル重合性化合物の組成比により、種々の屈折率や粘度を有する組成物を調製できる。所望の屈折率や粘度を得るために、好ましい組成比が選ばれる。例えば、(A)一般式(1)で表される複素環を有するビニルスルフィド化合物として2-ビニルチオベンゾオキサゾールを用い、(B)(メタ)アクリル基を有するラジカル重合性化合物としてトリメチロールプロパントリアクリレートを用いた例で、25℃における粘度が30mPa・s以下の共重合性組成物を調製するには、図1より、2-ビニルチオベンゾオキサゾールの添加量を32重量%以上とすることにより、達成できることがわかる。
【0064】
((C)光ラジカル重合開始剤)
本発明の光ラジカル重合性組成物には、光ラジカル重合開始剤が添加される。光ラジカル重合開始剤とは、光照射を受けてラジカルを発生する化合物、すなわち、光エネルギーを吸収し、分解および/または反応し、ラジカルを発生させるものを指し、熱によってラジカルを発生する化合物、すなわち、熱エネルギーを吸収し、分解してラジカル種を発生する化合物である、例えば、過酸化物系ラジカル重合開始剤、またはアゾ系ラジカル重合開始剤は、本発明の光ラジカル重合開始剤には含まれない。光ラジカル重合開始剤としては、一般に使用されるものであれば、特に制限なく使用可能であり、例えば、アルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤、ベンゾフェノン系光ラジカル重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤、オキシムエステル系光ラジカル重合開始剤、α-アミノアセトフェノン系光ラジカル重合開始剤、ビイミダゾール系光ラジカル重合開始剤、トリアジン系光ラジカル重合開始剤及びチオキサントン系光ラジカル重合開始剤からなる群より選択されるいずれか一つ以上の光ラジカル重合開始剤を用いることができる。
【0065】
アルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2’-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジルメチル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、2-(4-メチルベンジル)-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノンなどが挙げられる。
【0066】
ベンゾフェノン系光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、p-メチルベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、メチルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
【0067】
アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド(商品名「OmniradTPO」IGMGroupB.V.社製)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(商品名「Omnirad819」IGMGroupB.V.社製)等が挙げられる。
【0068】
オキシムエステル系光ラジカル重合開始剤としては、例えば、1,2-オクタンジオン、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-、2-(о-ベンゾイルオキシム)(商品名「IrgacureOXE01」BASF社製、IrgacureはBASF社の登録商標)、エタノン、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-、1-(о-アセチルオキシム)(商品名「IrgacureOXE02」BASF社製)、[8-[[(アセチルオキシ)イミノ][2-(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)フェニル]メチル]-11-(2-エチルヘキシル)-11H-ベンゾ[a]カルバゾール-5-イル]-,(2,4,6-トリメチルフェニル)(商品名「IrgacureOXE03」BASF社製)等が挙げられる。
【0069】
α-アミノアセトフェノン系光ラジカル重合開始剤としては、例えば、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン(商品名「Omnirad907」IGMGroupB.V.社製)、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルフォリノブチロフェノン(商品名「Omnirad369」IGMGroupB.V.社製)、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリノ-4-イル-フェニル)ブタンー1-オン(商品名「Omnirad379」IGMGroupB.V.社製)等が挙げられる。
【0070】
ビイミダゾール系光ラジカル重合開始剤としては、例えば、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(p-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体等が挙げられる。
【0071】
トリアジン系光ラジカル重合開始剤としては、例えば、2-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
【0072】
チオキサントン系光ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン等が挙げられる。
【0073】
本発明で用いることができる、アルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤、ベンゾフェノン系光ラジカル重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤、オキシムエステル系光ラジカル重合開始剤、α-アミノアセトフェノン系光ラジカル重合開始剤、ビイミダゾール系光ラジカル重合開始剤、トリアジン系光ラジカル重合開始剤、チオキサントン系光ラジカル重合開始剤はそれぞれ単独で用いることもできるが、用途等に合わせて、複数種類を合わせて用いることもできる。
【0074】
上記挙げた光ラジカル重合開始剤の中でも、ビイミダゾール系光ラジカル重合開始剤、アルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤およびオキシム系光ラジカル重合開始剤が好ましい。活性という点で、アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤、オキシムエステル系光ラジカル重合開始剤が特に好ましい。
【0075】
光ラジカル重合開始剤の添加量は、光ラジカル重合性組成物に対して、0.1重量%以上、10重量%以下であることが好ましい。
【0076】
(光ラジカル重合増感剤)
光ラジカル重合における光源として、従来、高圧水銀ランプが用いられていたがその消費エネルギーが大きい等の問題から、ランニングコストが安く、自然環境への影響を小さいLED光源を用いた硬化装置が用いられるようになってきている。しかし、このLED光源は、その中心波長が、365nm 、385nm、395nm、405nmというような長波長の光を発するものが用いられ、そして、高圧水銀ランプとは異なり、単一波長の光を発するため照射エネルギーが弱いという問題がある。そのようなLEDランプでは、従来の光ラジカル重合開始剤では、十分に硬化できないことが多く発生している。そのような長波長、単一光のLEDランプに対応するため、光ラジカル重合増感剤をさらに添加することが好ましい。長波長の光を吸収する光ラジカル重合増感剤を添加することにより、光ラジカル重合開始剤のラジカル生成反応を促進させて、ラジカル重合の反応性を向上させることができる。
【0077】
光ラジカル重合増感剤としては、照射波長の光に活性で一般に使用されるものであれば、特に制限なく使用可能であり、例えば、イソプロピルチ オキサントン、ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系増感剤、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系増感剤、9,10-ジエトキシアントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ビスヘプタノイルオキシアントラセンおよび9,10-ビスオクタノイルオキシアントラセン等のアントラセン系増感剤、クマリン、ケトクマリン等のクマリン系増感剤、アクリジンオレンジ、カンファーキノンなどを用いることができる。
【0078】
光ラジカル重合増感剤の添加量は、光ラジカル重合性組成物に対して、0.1重量%以上、10重量%以下であることが好ましい。
【0079】
本発明の光ラジカル重合性組成物には、用いる光ラジカル重合開始剤により、重合促進剤を含有してもよい。重合促進剤としては、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、p-ジメチルアミノ安息香酸-2-エチルヘキシル、p-ジメチルアミノ安息香酸メチル、安息香酸-2-ジメチルアミノエチル、p-ジメチルアミノ安息香酸ブトキシエチルといったアミン化合物があげられる。
【0080】
また、 本発明の光ラジカル重合性組成物には、組成物の安定性を高めるために重合禁止剤を含有してもよい。重合禁止剤の例としては、ヒドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、1,4-ベンゾキノン、tert-ブチルヒドロキノン、及び4-tert-ブチルピロカテコール等からなる群から選択される少なくとも一種の化合物が挙げられる。
【0081】
更に、本発明の光ラジカル重合性組成物には、界面活性剤を含むことができ、界面活性剤としては非イオン性界面活性剤が好ましい。非イオン性界面活性剤を含むことにより、ラジカル重合組成物を基材上に塗布して樹脂膜を得る際の塗布性が良好となり、均一な厚みの塗布膜を得ることができる。非イオン性界面活性剤は、たとえばフッ素基(たとえば、フッ素化アルキル基)もしくはシラノール基を含む化合物、またはシロキサン結合を主骨格とする化合物である。フッ素系界面活性剤またはシリコーン系界面活性剤を含むものを用いることが好ましい。フッ素系界面活性剤としては例えば、DIC(株)製のメガファックF-171、F-173、F-444、F-470、F-471、F-475、F-482、F-477、F-554、F-556、およびF-557、住友スリーエム(株)製のノベックFC4430、及びFC4432等が挙げられるが、これらに限定されない。シリコーン系界面活性剤としては、分子内にシロキサン結合を有する界面活性剤等が挙げられる。具体的には、トーレシリコーンDC3PA、同SH7PA、同DC11PA、同SH21PA、同SH28PA、同SH29PA、同SH30PA、同SH8400(商品名:東レ・ダウコーニング(株)製)、KP321、KP322、KP323、KP324、KP326、KP340、KP341(信越化学工業(株)製)、TSF400、TSF401、TSF410、TSF4300、TSF4440、TSF4445、TSF4446、TSF4452及びTSF4460(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)等が挙げられる。フッ素原子を有するシリコーン系界面活性剤としては、分子内にシロキサン結合及びフルオロカーボン鎖を有する界面活性剤等が挙げられる。具体的には、メガファック(登録商標)R08、同BL20、同F475、同F477及び同F443(DIC(株)製)等が挙げられる。
【0082】
なお、本発明の光ラジカル重合性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、上記以外に、顔料、染料、希釈剤、有機又は無機の充填剤、レベリング剤、界面活性剤、分散剤、消泡剤、増粘剤、難燃剤、表面改質剤、浸透促進剤、吸湿剤、保湿剤、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、安定剤、滑剤、可塑剤等の各種樹脂添加剤を配合してもよい。
【0083】
(重合方法)
本発明の光ラジカル重合性組成物に光を照射したりして重合することにより、硬化物を得ることができる。例えば、光ラジカル重合性組成物に光を照射し重合させ光硬化させる場合、当該光ラジカル重合性組成物をフィルム状に成形して光硬化させることもできるし、塊状に成形して光硬化させることもできる。フィルム状に成形して光硬化させる場合は、液状の当該光ラジカル重合性組成物を例えばポリエステルフィルムなどの基材にバーコーターなどを用いて膜厚5~300ミクロンになるように塗布する。一方、スピンコーティング法やスクリーン印刷法により、さらに薄い膜厚あるいは厚い膜厚にして塗布することもできる。本発明の一般式(1)で表される複素環を有するビニルスルフィド化合物及びその共重合性組成物は低粘度であるので、インクとしてインクジェット印刷に供してもよい。
【0084】
このようにして調製した光ラジカル重合性組成物からなる塗膜又は液滴に、300nmから500nmの波長範囲を含むエネルギー線(紫外線)を1~1000mW/cm程度の強さで光照射することにより、硬化物を得ることができる。用いる光源としては、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ガリウムドープドランプ、ブラックライト、405nm紫外線LED、395nm紫外線LED、385nm紫外線LED、365nm紫外線LED、半導体レーザ、青色LED、白色LED、フュージョン社製のDバルブ、Vバルブ等が挙げられる。特に、405nm紫外線LED、395nm紫外線LED、385nm紫外線LED、375nm紫外線LED、365nm紫外線LEDのような波長が365nm~405nmというような長波長域の波長範囲を含む単一波長の光でも硬化することが特徴であり、中心波長が365nm、375nm、385nm、395nm、405nmの紫外LED又は半導体レーザが照射源として特に好ましい。
【実施例0085】
以下、実施例により本発明の具体的態様をさらに説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0086】
(化合物の同定)
得られた化合物の同定は、以下の機器を用いて測定した。
(1)H-NMR分析:核磁気共鳴装置(NMR)、日本電子社製、型式:JNM ECS 400型 FT NMR Spectorometer)
(2)Massスペクトル:島津製作所社製、質量分析計、型式GCMS-QP2000等を用いて測定した。
【0087】
(化合物の物性測定)
得られた化合物の物性測定
(1)粘度:E型粘度計(東気産業、TVE-35H)
(2)屈折率:屈折率計(測定条件:25℃、n
・液体の場合(1.50≦n≦1.70)
機種名:ERMA社、ER-7MW-H
・液体/フィルム/薄膜の場合(1.30≦n≦1.70)
機種名:アントンパール・ジャパン社、AbbematMw
・薄膜の場合(n>1.70)
機種名:アタゴ社、DR-M4
(3)透過率:SHIMADZU, UV-2600
【0088】
(化合物の粘度測定)
E型粘度計TVE35Hを用いて粘度を測定した。コーンローターは、1°34‘×R24を用い、サンプルカップとコーンローター間のギャップ調整をした後、サンプルカップ中央に1.1mLのサンプルをシリンジを用いて注入した。その後粘度計本体にサンプルカップをセットし、25℃、20rpmの条件でコーンローターを回転させた。その際、粘度が一定となった時の値を粘度値とした。
【0089】
(屈折率測定方法)
液体(1.50≦n≦1.70)の場合、ERMA社製屈折率計ER-7MW-Hを用いて、25℃の条件で測定した。
液体/フィルム/薄膜(1.30≦n≦1.70)の場合、アントンパール・ジャパン社、AbbematMwを用いて、25℃の条件で測定した。
薄膜(n>1.70)の場合、アタゴ社、DR-M4を用いて25℃の条件で測定した。
【0090】
(透過率の測定方法)
ガラス基板上に得た薄膜の430nmにおける透過率を、UV-VIS SPECTROPHOTOMETER(SHIMAZU社製「UV-2600」)を用いて測定した。
【0091】
(YI値の測定方法)
透過率と同じく、UV-VIS SPECTROPHOTOMETER(SHIMAZU社製「UV-2600」)を用いて、カラー測定ソフトを使用してYI値を算出した。
【0092】
(タック・フリー・テスト)
本発明のラジカル重合性組成物が光硬化したかどうかを判定する方法としては、タック・フリー・テスト(指触テスト)がある。すなわち、ラジカル重合性組成物に光を照射すると、硬化して表面のタック(べたつき)がなくなるため、光の照射後に、タック(べたつき)がなくなっているかどうかで硬化したかどうかを確認した。
【0093】
(UV露光機)
機種名:MATSUO, UV-LED CURE M/C,JVC-200-SC-N-POWER
【0094】
[合成実施例1]
3つ口フラスコに2‐メルカプトベンゾオキサゾール(50.00g, 0.331mol)と1,2-ジブロモエタン(124.25g、0.661mol)、4-メチルテトラヒドロピラン(500g)を入れ、室温で攪拌混合した後、70℃まで昇温した。その後、DBU(ジアザビシクロウンデセン、100.69g, 0.661mol)を滴下し、滴下終了してから3時間攪拌した。その後、反応液を常温まで冷やした後、析出した塩と副生物を減圧濾過で除去し、有機層を純水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水・濾過した後、エバポレーターで溶媒を留去した。その後、減圧蒸留を実施し、目的物である2-ビニルチオベンゾオキサゾールを無色透明液体、収量17.1g、収率29%で得た。n=1.62、粘度(25℃):約4.2mPa・s。屈折率、粘度については表3に記載。
【0095】
[合成実施例2]
三つ口フラスコに2-メルカプトベンゾチアゾール(37.29g、0.223mol)と1,2-ジブロモエタン(83.77g、0.446mol)、4-メチルテトラヒドロピラン(186.4g)を入れ、室温で攪拌混合した後、70℃まで昇温した。その後、DBU(ジアザビシクロウンデセン、67.89g、0.446mol)を滴下し、滴下終了してから3時間攪拌した。その後、反応液を常温まで冷やした後、析出した塩と副生物を減圧濾過で除去し、有機層を純水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水・濾過した後、エバポレーターで溶媒を留去した。その後、減圧蒸留を実施し、目的物である2-ビニルチオベンゾチアゾールを淡黄色透明液体、収量9.1g、収率24%で得た。n=1.69、粘度(25℃):約7.6mPa・s。屈折率、粘度については表3に記載。
[実施例1]2-ビニルチオベンゾオキサゾールの光ラジカル重合1
合成実施例1と同様の方法で得た2-ビニルチオベンゾオキサゾール100部に対し、光ラジカル重合開始剤としてOmniradTPOを3部、フッ素系界面活性剤メガファックF-477(メガファックはDIC株式会社の登録商標)を1部添加し、超音波をかけて溶解させた。この光ラジカル重合性組成物をガラス基板上にバーコーターで10μmになるように製膜し、露光機内を窒素で置換後に波長365nmの光を照度100mWで露光量30Jcm照射して硬化させた。露光後に表面のタックを確認したところ、タックはなかった。硬化前の液屈折率は1.62であり、硬化後の屈折率(n)は1.67で、可視光透過率は92%、YI値は3.1であった。結果を表1と2に示す。
【0096】
[実施例2]2-ビニルチオベンゾオキサゾールの光ラジカル重合2
合成実施例1と同様の方法で得た2-ビニルチオベンゾオキサゾール100部に対し、光ラジカル重合開始剤としてOmniradTPOを3部、フッ素系界面活性剤メガファックF-477(メガファックはDIC株式会社の登録商標)を1部添加し、超音波をかけて溶解させた。この光ラジカル重合性組成物をガラス基板上にバーコーターで10μmになるように製膜し、露光機内を窒素で置換後に波長365nmの光を照度100mWで露光量3J/cm照射して硬化させた。露光後に表面のタックを確認したところ、タックはなかった。硬化前の液屈折率は1.62であり、硬化後の屈折率(n)は1.67で、可視光透過率は92%、YI値は3.5であった。結果を表1に示す。
【0097】
[実施例3]2-ビニルチオベンゾオキサゾールの光ラジカル重合3
合成実施例1と同様の方法で得た2-ビニルチオベンゾオキサゾール100部に対し、光ラジカル重合開始剤としてOmniradTPOを3部、フッ素系界面活性剤メガファックF-477(メガファックはDIC株式会社の登録商標)を1部添加し、超音波をかけて溶解させた。この光ラジカル重合性組成物をガラス基板上にバーコーターで10μmになるように製膜し、露光機内を窒素で置換後に波長365nmの光を照度100mWで露光量0.3J/cm照射して硬化させた。露光後に表面のタックを確認したところ、タックはなかった。硬化前の液屈折率は1.62であり、硬化後の屈折率(n)は1.69で、可視光透過率は94%、YI値は2.1であった。結果を表1に示す。
【0098】
[実施例4]2-ビニルチオベンゾオキサゾールの光ラジカル重合4
合成実施例1と同様の方法で得た2-ビニルチオベンゾオキサゾール100部に対し、光ラジカル重合開始剤としてOmniradTPOを3部、フッ素系界面活性剤メガファックF-477(メガファックはDIC株式会社の登録商標)を1部添加し、超音波をかけて溶解させた。この光ラジカル重合性組成物をガラス基板上にバーコーターで10μmになるように製膜し、露光機内を窒素で置換後に波長405nmの光を照度100mWで露光量30J/cm照射して硬化させた。露光後に表面のタックを確認したところ、タックはなかった。硬化前の液屈折率は1.62であり、硬化後の屈折率(n)は1.67で、可視光透過率は94%、YI値は1.9であった。結果を表1に示す。
【0099】
[実施例5]2-ビニルチオベンゾオキサゾールの光ラジカル重合5
合成実施例1と同様の方法で得た2-ビニルチオベンゾオキサゾール100部に対し、光ラジカル重合開始剤としてOmniradTPOを3部、フッ素系界面活性剤メガファックF-477(メガファックはDIC株式会社の登録商標)を1部添加し、超音波をかけて溶解させた。この光ラジカル重合性組成物をガラス基板上にバーコーターで10μmになるように製膜し、露光機内を窒素で置換後に波長405nmの光を照度100mWで露光量3J/cm照射して硬化させた。露光後に表面のタックを確認したところ、タックはなかった。硬化前の液屈折率は1.62であり、硬化後の屈折率(n)は1.67で、可視光透過率は95%、YI値は1.8であった。結果を表1に示す。
【0100】
[実施例6]2-ビニルチオベンゾオキサゾールの光ラジカル重合6
合成実施例1と同様の方法で得た2-ビニルチオベンゾオキサゾール100部に対し、光ラジカル重合開始剤としてOmniradTPOを3部、フッ素系界面活性剤メガファックF-477(メガファックはDIC株式会社の登録商標)を1部添加し、超音波をかけて溶解させた。この光ラジカル重合性組成物をガラス基板上にバーコーターで10μmになるように製膜し、露光機内を窒素で置換後に波長405nmの光を照度100mWで露光量0.3J/cm照射して硬化させた。露光後に表面のタックを確認したところ、タックはなかった。硬化前の液屈折率は1.62であり、硬化後の屈折率(n)は1.68で、可視光透過率は95%、YI値は0.3であった。結果を表1に示す。
【0101】
[実施例7]2-ビニルチオベンゾチアゾールの光ラジカル重合
合成実施例2と同様の方法で得た2-ビニルチオベンゾチアゾール100部に対し、光ラジカル重合開始剤としてOmniradTPOを3部、フッ素系界面活性剤メガファックF-477(メガファックはDIC株式会社の登録商標)を1部添加し、超音波をかけて溶解させた。この光ラジカル重合性組成物をガラス基板上にバーコーターで10μmになるように製膜し、露光機内を窒素で置換後に波長365nmの光を照度100mWで露光量30J/cm照射して硬化させた。露光後に表面のタックを確認したところ、タックはなかった。硬化前の液屈折率は1.68であり、硬化後の屈折率(n)は1.71で、可視光透過率は70%、YI値は15.5であった。結果を表1と2に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
合成実施例1、2及び実施例1から7及び表1より明らかなように、本発明の化合物である2-ビニルチオベンゾオキサゾール及び2-ビニルチオベンゾチアゾールが、25℃の粘度が10mPa・s以下と極めて低粘度であり、365nm、405nmというような長波長の単一波長の光でも容易に重合可能なこと、そして得られた重合物が屈折率(n)が1.67~1.71と超高屈折率であることがわかる。そして、一般式(1)におけるAが酸素原子である2-ビニルチオベンゾオキサゾールを硬化させた重合物では、YI値が3.5~2.1と黄色度が低く、特に、低露光量や405nmという長波長での硬化物においては1.9~0.3と低YI値を示す傾向にあることがわかる。
【0104】
[実施例8]2-ビニルチオベンゾオキサゾールと多官能(メタ)アクリレートとの光ラジカル共重合1
合成実施例1と同様の方法で得た2-ビニルチオベンゾオキサゾール50部とトリメチロールプロパントリアクリラート(TMPTA)を50部を混合し、OmniradTPOを3部、メガファックF-477を1部添加し、超音波をかけて溶解させた。2-ビニルチオベンゾオキサゾールとトリメチロールプロパントリアクリラートの溶解速度は極めて速く、簡単にまじりあい均一な液相となった。その後、調製した光ラジカル重合性組成物をガラス基板上にバーコーターで10μmになるように製膜し、露光機内を窒素で置換後に波長365nmの光を30J/cm照射して硬化させた。露光後に表面のタックを確認したところ、タックはなかった。硬化前の液屈折率は1.55であり、硬化後の屈折率(n)は1.59で、可視光透過率は97%、YI値は1.7であった。結果を表2に示す。
【0105】
[実施例9]2-ビニルチオベンゾチアゾールと多官能(メタ)アクリレートとの光ラジカル共重合1
合成実施例2と同様の方法で得た2-ビニルチオベンゾチアゾール50部とトリメチロールプロパントリアクリラート(TMPTA)を50部を混合し、OmniradTPOを3部、メガファックF-477を1部添加し、超音波をかけて溶解させた。2-ビニルチオベンゾチアゾールとトリメチロールプロパントリアクリラートの溶解速度は極めて速く、簡単にまじりあい均一な液相となった。その後、調製した光ラジカル重合性組成物をガラス基板上にバーコーターで10μmになるように製膜し、露光機内を窒素で置換後に波長365nmの光を30J/cm照射して硬化させた。露光後に表面のタックを確認したところ、タックはなかった。硬化前の液屈折率は1.57であり、硬化後の屈折率(n)は1.62で、可視光透過率は87%、YI値は5.5であった。結果を表2に示す。
【0106】
[比較例1]トリメチロールプロパントリアクリラート(TMPTA)の光ラジカル重合
トリメチロールプロパントリアクリラート(TMPTA)100部に対し、光ラジカル重合開始剤としてOmniradTPOを3部、フッ素系界面活性剤メガファックF-477(メガファックはDIC株式会社の登録商標)を1部添加し、超音波をかけて溶解させた。この光ラジカル重合性組成物をガラス基板上にバーコーターで10μmになるように製膜し、露光機内を窒素で置換後に波長365nmの光を照度100mWで露光量30J/cm照射して硬化させた。露光後に表面のタックを確認したところ、タックはなかった。硬化前の液屈折率は1.47であり、硬化後の屈折率(n)は1.52で、可視光透過率は100%、YIは0.2であった。結果を表2、3に記載した。
【0107】
【表2】
【0108】
実施例1と8及び7と9、そして比較例1並びに表2から明らかなように、本発明の化合物である2-ビニルチオベンゾオキサゾール及び2-ビニルチオベンゾチアゾールが多官能(メタ)アクリレートであるトリメチロールプロパントリアクリラートと共重合組成物を形成し、その共重合組成物の屈折率と本発明の化合物の混合割合との間には加成性があり、所定の割合で混合することにより、重合物の屈折率(n)を1.52~1.71の任意の値に持っていくことができることがわかる。そして、一般式(1)におけるAが酸素原子である2-ビニルチオベンゾオキサゾールを用いた共重合物では、高透過率で低YI値の共重合物を得ることがわかる。
【0109】
[実施例10]2-ビニルチオベンゾオキサゾールと多官能(メタ)アクリレートとの光ラジカル共重合組成物の調製1
合成実施例2と同様の方法で得た2-ビニルチオベンゾオキサゾール90部とトリメチロールプロパントリアクリラート(TMPTA)を10部を混合し、超音波をかけて溶解させた。2-ビニルチオベンゾオキサゾールとトリメチロールプロパントリアクリラートの溶解速度は極めて速く、簡単にまじりあい均一な液相となった。その組成物の屈折率(n)は1.60で粘度は5.1mPa・sであった。結果を表3と図1に記載。
【0110】
[実施例11]2-ビニルチオベンゾオキサゾールと多官能(メタ)アクリレートとの光ラジカル共重合組成物の調製2
合成実施例2と同様の方法で得た2-ビニルチオベンゾオキサゾール50部とトリメチロールプロパントリアクリラート(TMPTA)を50部を混合し、超音波をかけて溶解させた。2-ビニルチオベンゾオキサゾールとトリメチロールプロパントリアクリラートの溶解速度は極めて速く、簡単にまじりあい均一な液相となった。その組成物の屈折率(n)は1.54で粘度は14.4mPa・sであった。結果を表3と図1に記載。
【0111】
[実施例12]2-ビニルチオベンゾオキサゾールと多官能(メタ)アクリレートとの光ラジカル共重合組成物の調製3
合成実施例2と同様の方法で得た2-ビニルチオベンゾオキサゾール10部とトリメチロールプロパントリアクリラート(TMPTA)を90部を混合し、超音波をかけて溶解させた。2-ビニルチオベンゾオキサゾールとトリメチロールプロパントリアクリラートの溶解速度は極めて速く、簡単にまじりあい均一な液相となった。その組成物の屈折率(n)は1.49で粘度は65.3mPa・sであった。結果を表3と図1に記載。
【0112】
[実施例13]2-ビニルチオベンゾチアゾールと多官能(メタ)アクリレートとの光ラジカル共重合組成物の調製1
合成実施例2と同様の方法で得た2-ビニルチオベンゾチアゾール90部とトリメチロールプロパントリアクリラート(TMPTA)を10部を混合し、超音波をかけて溶解させた。2-ビニルチオベンゾチアゾールとトリメチロールプロパントリアクリラートの溶解速度は極めて速く、簡単にまじりあい均一な液相となった。その組成物の屈折率(n)は1.66で粘度は9.3mPa・sであった。結果を表3と図2に記載。
【0113】
[実施例14]2-ビニルチオベンゾチアゾールと多官能(メタ)アクリレートとの光ラジカル共重合組成物の調製2
合成実施例2と同様の方法で得た2-ビニルチオベンゾチアゾール50部とトリメチロールプロパントリアクリラート(TMPTA)を50部を混合し、超音波をかけて溶解させた。2-ビニルチオベンゾチアゾールとトリメチロールプロパントリアクリラートの溶解速度は極めて速く、簡単にまじりあい均一な液相となった。その組成物の屈折率(n)は1.57で粘度は24.8mPa・sであった。結果を表3と図2に記載。
【0114】
[実施例15]2-ビニルチオベンゾチアゾールと多官能(メタ)アクリレートとの光ラジカル共重合組成物の調製3
合成実施例2と同様の方法で得た2-ビニルチオベンゾチアゾール10部とトリメチロールプロパントリアクリラート(TMPTA)を90部を混合し、超音波をかけて溶解させた。2-ビニルチオベンゾチアゾールとトリメチロールプロパントリアクリラートの溶解速度は極めて速く、簡単にまじりあい均一な液相となった。その組成物の屈折率(n)は1.49で粘度は71.6mPa・sであった。結果を表3と図2に記載。
【0115】
【表3】
【0116】
表3と合成実施例1、2と実施例10~15、比較例1より明らかなように、本発明の化合物である2-ビニルチオベンゾオキサゾール又は2-ビニルチオベンゾチアゾールは、多官能(メタ)アクリレートであるトリメチロールプロパントリアクリラートと任意の組成で容易に溶解混合し、共重合組成物を形成する。そして、組成物の屈折率n図1、2から明らかなように、組成比と屈折率との間には加成性が成立し、その組成物の屈折率を調整可能であることがわかる。また、粘度の調整においては、本発明の化合物である2-ビニルチオベンゾオキサゾール又は2-ビニルチオベンゾチアゾールと多官能(メタ)アクリレートであるトリメチロールプロパントリアクリラートの共重合組成物において本発明の化合物である2-ビニルチオベンゾオキサゾール又は2-ビニルチオベンゾチアゾールの添加量における粘度低減効果は大きく、少量の添加で共重合組成物の粘度を大きく低減できる。例えば、2-ビニルチオベンゾオキサゾールとトリメチロールプロパントリアクリレートを用いた例で、25℃における粘度が30mPa・s以下の共重合性組成物を調製するには、図1より、2-ビニルチオベンゾオキサゾールの添加量を32重量%以上とすることにより、達成できることがわかる。

図1
図2