(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022352
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】多層フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/34 20060101AFI20250206BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
B32B27/34
B32B27/32 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023126821
(22)【出願日】2023-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000206473
【氏名又は名称】大倉工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】手塚 友章
(72)【発明者】
【氏名】山本 博志
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK07B
4F100AK07C
4F100AK48A
4F100AL02B
4F100AL07C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CB00C
4F100EH20
4F100GB15
4F100JA04A
4F100JA11A
4F100JA12A
4F100JJ03
4F100JL04
4F100JL11C
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】 本発明は、耐熱性を備えると共にカールが抑制された、非対称構造を有する多層フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】 ポリアミド層及びポリオレフィン層を有し、非対称構成である多層フィルムであって、前記ポリアミド層は、融点が205℃以上の結晶性ナイロンと非晶性ナイロンとからなるポリアミド樹脂組成物を主成分とし、且つ、前記結晶性ナイロンと前記非晶性ナイロンの重量割合が前記結晶性ナイロン:前記非晶性ナイロン=51~99:1~49の割合で含有し、前記ポリオレフィン層は、プロピレン単独重合体またはプロピレンブロック共重合体を主成分として含むことを特徴とする多層フィルム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド層及びポリオレフィン層を有し、非対称構成である多層フィルムであって、
前記ポリアミド層は、融点が205℃以上の結晶性ナイロンと非晶性ナイロンとからなるポリアミド樹脂組成物を主成分とし、且つ、前記結晶性ナイロンと前記非晶性ナイロンの重量割合が前記結晶性ナイロン:前記非晶性ナイロン=51~99:1~49であり
前記ポリオレフィン層は、プロピレン単独重合体またはプロピレンブロック共重合体を主成分として含むことを特徴とする多層フィルム。
【請求項2】
前記結晶性ナイロンが、6ナイロンであることを特徴とする請求項1記載の多層フィルム。
【請求項3】
前記多層フィルムは、共押出フィルムであることを特徴とする請求項1又は2記載の多層フィルム。
【請求項4】
前記ポリアミド樹脂組成物の重量割合が、前記結晶性ナイロン:前記非晶性ナイロン=80~95:5~20であることを特徴とする請求項1又は2記載の多層フィルム。
【請求項5】
前記ポリアミド層及びポリオレフィン層の二層からなることを特徴とする請求項1又は2記載の多層フィルム。
【請求項6】
前記ポリアミド層/接着性樹脂層/前記ポリオレフィン層の三層からなり、前記接着性樹脂層にポリプロピレン系酸変性接着性樹脂を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の多層フィルム。
【請求項7】
前記多層フィルムは、厚みが70μm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の多層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非対称構造を有する多層フィルムにおけるカール防止技術に関する。
【背景技術】
【0002】
包装用や工業用などにおいて、外層側がポリアミド樹脂、内層側がポリオレフィン樹脂よりなる非対称構造の多層フィルムが用いられている。このような多層フィルムは、非対称構造のためカールが発生しやすいことが知られている。カールを防止する方法は、従来から多様な方法が提案されているが、例えば、特許文献1がある。
【0003】
特許文献1には、最外層がポリアミド樹脂、最内層がポリオレフィン系樹脂、両層の間に接着層を設けた非対称構造多層未延伸フィルムを、空冷多層インフレーション法により製造する方法において、該ポリアミド樹脂が、a.結晶性共重合ポリアミド樹脂であるか、または、これとb.非晶性ポリアミド樹脂若しくは他の結晶性共重合ポリアミド樹脂とからなることでカールを防止することができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようなポリアミド樹脂/ポリオレフィン樹脂の多層フィルムは、しばしばプレス成型の貼合用途に使用される場合がある。プレス成型においては、200~210℃程度の加熱工程があり多層フィルムには耐熱性が求められ、特許文献1の多層フィルムは、前述した加熱工程での熱成型に耐えることができず耐熱性が不十分であった。
【0006】
そこで、本発明は、耐熱性を備えると共にカールが抑制された、非対称構造を有する多層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に対し、ポリアミド樹脂/ポリオレフィン樹脂の多層フィルムにおいて、ポリアミド樹脂に、融点が205℃以上のナイロンを使用することで耐熱性を付与できると検討を行ったが、この場合にはカールの抑制が困難であった。そこで、鋭意検討した結果、本発明に至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明の上記課題を解決する為の手段として、
(1)ポリアミド層及びポリオレフィン層を有し、非対称構成である多層フィルムであって、前記ポリアミド層は、融点が205℃以上の結晶性ナイロンと非晶性ナイロンとからなるポリアミド樹脂組成物を主成分とし、且つ、前記結晶性ナイロンと前記非晶性ナイロンの重量割合が前記結晶性ナイロン:前記非晶性ナイロン=51~99:1~49であり、前記ポリオレフィン層は、プロピレン単独重合体またはプロピレンブロック共重合体を主成分として含むことを特徴とする多層フィルム;
(2)前記結晶性ナイロンが、6ナイロンであることを特徴とする(1)に記載の多層フィルム;
(3)前記多層フィルムは、共押出フィルムであることを特徴とする(1)又は(2)に記載の多層フィルム;
(4)前記ポリアミド樹脂組成物の重量割合が、前記結晶性ナイロン:前記非晶性ナイロン=80~95:5~20であることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の多層フィルム;
(5)前記ポリアミド層及びポリオレフィン層の二層からなることを特徴とする(1)乃至(4)にいずれかに記載の多層フィルム;
(6)前記ポリアミド層/接着性樹脂層/前記ポリオレフィン層の三層からなり、前記接着性樹脂層にポリプロピレン系酸変性接着性樹脂を含むことを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の多層フィルム;
(7)前記多層フィルムは、厚みが70μm以下であることを特徴とする(1)乃至(6)のいずれかに記載の多層フィルム;
を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、非対称構造の多層フィルムにおいて、外層側に、融点が205℃以上の結晶性ナイロンを主成分として含むポリアミド層を有することから耐熱性を備え、内層側にポリオレフィン層を有することで多層フィルム同士または他部材と熱融着させることができる。また、ポリアミド層が、結晶性ナイロン:非晶性ナイロン=51~99:1~49のポリアミド樹脂組成物を主成分とし、且つ、ポリオレフィン層が、プロピレン単独重合体またはプロピレンブロック共重合体を主成分として含有することで、カールが低減された多層フィルムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る多層フィルムのカール測定方法において、カット部を示す模式上視図である。
【
図2】本発明に係る多層フィルムのカール測定方法における評価方法を示す説明図である。
【
図3】本発明に係る多層フィルムのカール測定方法におけるカール状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
本発明に係る多層フィルムは、ポリアミド層及びポリオレフィン層を有し、非対称構成である多層フィルムであって、ポリアミド層は、融点が205℃以上の結晶性ナイロンと非晶性ナイロンとからなるポリアミド樹脂組成物を主成分とし、且つ、前記結晶性ナイロンと前記非晶性ナイロンの重量割合が結晶性ナイロン:非晶性ナイロン=51~99:1~49であり、ポリオレフィン層は、プロピレン単独重合体またはプロピレンブロック共重合体を主成分として含むことを特徴とするものである。
尚、「非対称構成である多層フィルム」とは、積層フィルムの外層と内層に使用する樹脂成分が異なる非対称の積層構成であるフィルムのことをいう。
【0012】
本発明に係る多層フィルムは、ポリアミド層及びポリオレフィン層を備え、厚み方向において非対称構成である多層フィルムであれば良く、例えば、ポリアミド層/ポリオレフィン層の2層構成のフィルム、ポリアミド層/中間層/ポリオレフィン層の3層構成のフィルムなど、最外層にポリアミド層、最内層にポリオレフィン層を備える構成が挙げられる。尚、3層以上のフィルム構成であっても良い。
3層以上のフィルム構成としては、ポリアミド層/中間層1/中間層2/ポリオレフィン層、最外層/ポリアミド層/中間層/ポリオレフィン層、ポリアミド層/中間層/ポリオレフィン層/最内層、最外層/ポリアミド層/中間層/ポリオレフィン層/最内層などが挙げられる。
【0013】
本発明に係る多層フィルムは、共押出法で製膜された共押出フィルムであることが好ましい。
共押出フィルムとしては、インフレーション法により製膜した共押出インフレーションフィルムや、T字型のダイを用いキャスト法により製膜した共押出キャストフィルムが挙げられる。共押出インフレーションフィルムとしては、空冷インフレーション法により製膜した共押空冷インフレーションフィルムや、水冷インフレーション法により製膜した共押出水冷インフレーションフィルムが挙げられ、この中でも、共押出空冷インフレーションフィルムが好ましい。
尚、インフレーション法またはキャスト法で得られた未延伸の多層フィルムを、チューブラー延伸やテンター延伸によって延伸フィルムとすることも可能である。
【0014】
本発明に係る多層フィルムは外層側にポリアミド層を備える。ポリアミド層は、ポリアミド樹脂組成物中の結晶性ナイロンが主成分として含有されている。ポリアミド層に、融点が205℃以上の結晶性ナイロンが主成分として含まれていることで、多層フィルムをプレス加工等に用いる際に耐熱性を備え、加工時に溶融することなく使用することができる。
尚、ポリアミド層中におけるポリアミド樹脂組成物の割合は、層全体の50重量%以上、好ましくは80重量%以上、更に好ましくは90重量%以上、特に95重量%以上であることが好ましい。
【0015】
そして、本発明におけるポリアミド層中のポリアミド樹脂組成物は、結晶性ナイロン:非晶性ナイロン=51~99:1~49の重量割合で含有している。
ポリアミド樹脂組成物が、非晶性ナイロンを1~49の割合(重量割合)で含有することで、ポリアミド層及びポリオレフィン層を有し非対称構成である多層フィルムを製膜した場合に、カールの発生を抑制することができる。
結晶性ナイロンと非晶性ナイロンの重量割合は、結晶性ナイロン:非晶性ナイロン=70~97:3~30が好ましくは、更には80~95:5~20、特に85~93:7~15であることが好ましい。
【0016】
結晶性ナイロンは、融点が205℃~270℃であることが好ましく、210℃~250℃であることが耐熱性と製膜性の両点から特に好ましい。
融点が205℃以上の結晶性ナイロンとしては、例えば、6ナイロンや66ナイロンなどが挙げられる。耐熱性と製膜性の観点から特に6ナイロンが好ましい。
【0017】
非晶性ナイロンは、明確な融点を持たないナイロンを意味し、具体的には、ナイロンの結晶融解エンタルピーΔHmが5J/g以下であることをいい、3J/g以下が好ましく、1J/g以下がより好ましい。結晶融解エンタルピーは、JIS K7121及びJIS K7122に準拠して、示差走査熱量測定(DSC)により得られる。
【0018】
非晶性ナイロンとしては、芳香族ジカルボン酸由来の構成単位を2種以上有する非晶性半芳香族ナイロンが好ましく、ジカルボン酸成分として、イソフタル酸由来の構成単位とテレフタル酸由来の構成単位とを有し、ジアミン成分として脂肪族ジアミン由来の構成単位を有するナイロンがより好ましい。
【0019】
非晶性半芳香族ナイロンにおいて、ジカルボン酸由来の構成単位100モル%中、イソフタル酸由来の構成単位の割合は、好ましくは40モル%以上98モル%以下、より好ましくは50モル%以上80モル%以下であり、テレフタル酸由来の構成単位の割合は、好ましくは2モル%以上60モル%以下、より好ましくは20モル%以上50モル%以下である。上記割合は、NMR法により測定できる。
【0020】
非晶性半芳香族ナイロンにおいて、ジカルボン酸由来の構成単位100モル%中、イソフタル酸由来の構成単位とテレフタル酸由来の構成単位との合計割合は、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上、95モル%以上又は98モル%以上である。非晶性半芳香族ナイロンは、必要に応じて、イソフタル酸及びテレフタル酸以外のジカルボン酸(例えばアジピン酸)由来の構成単位を有してもよい。
【0021】
非晶性半芳香族ナイロンは、ジアミン成分としてヘキサメチレンジアミン由来の構成単位を有することが好ましい。非晶性半芳香族ナイロンにおいて、ジアミン由来の構成単位100モル%中、ヘキサメチレンジアミン由来の構成単位の割合は、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上、95モル%以上又は98モル%以上である。非晶性半芳香族ナイロンは、必要に応じて、ヘキサメチレンジアミン以外のジアミン由来の構成単位を有してもよい。
非晶性半芳香族ナイロンは、好ましくはPA6I/6Tである。
【0022】
非晶性半芳香族ナイロンのガラス転移温度(Tg)は、例えば、90℃以上180℃以下、好ましくは95℃以上160℃以下、より好ましくは100℃以上150℃以下である。Tgは、JIS K7121に準拠して、示差走査熱量測定(DSC)により得られる。
【0023】
ポリアミド層には、性能に影響のない範囲で他の樹脂を適宜配合してもよい。
また、ポリアミド層には添加剤を1種又は2種以上含有してもよい。添加剤としては、例えば、架橋剤、アンチブロッキング剤、滑(スリップ)剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、染料及び改質用樹脂が挙げられる。
【0024】
本発明に係る多層フィルムは、内層側に、前記結晶性ナイロンよりも融点の低い、ポリオレフィン樹脂層を備える。内層側にポリオレフィン層を備えることで多層フィルム同士を熱融着させることができたり、多層フィルムと他部材とを熱融着させることができる。
【0025】
本発明においては、ポリオレフィン層として、プロピレン単独重合体またはプロピレンブロック共重合体を主成分として含む。尚、プロピレン単独重合体とプロピレンブロック共重合体とをブレンドしたものであっても良い。
プロピレン単独重合体とは、プロピレンのみの重合体である。プロピレンブロック共重合体とは、プロピレンからなる重合体ブロックと、プロピレン以外のエチレン性不飽和モノマー(例えば、エチレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィン)からなる重合体ブロックとを有する共重合体である。
本発明においては、ポリオレフィン層を、プロピレン単独重合体またはプロピレンブロック共重合体を主成分とすることで、ポリアミド層及びポリオレフィン層を有し、厚み方向において非対称構成である多層フィルムのカールを抑制することができる。
このうち、特にプロピレンブロック共重合体を用いることで、多層フィルムのカールをより低減させることができる。
【0026】
プロピレン単独重合体またはプロピレンブロック共重合体のMFRは、製膜性及び加工適性という観点から、好ましくは0.1g/10分以上50g/10分以下、より好ましくは0.3g/10分以上30g/10分以下である。尚、ポリプロピレンのMFRは、ASTM D1238に準拠して、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定する。
【0027】
ポリオレフィン層には、性能に影響のない範囲で、プロピレン単独重合体およびプロピレンブロック共重合体以外の樹脂を適宜配合してもよい。ポリオレフィン層におけるプロピレン単独重合体およびプロピレンブロック共重合体の合計量は、層全体の50重量%以上、好ましくは80重量%以上、更に好ましくは90重量%以上、特に95重量%以上であることが好ましい。
また、ポリオレフィン層には添加剤を1種又は2種以上含有してもよい。添加剤としては、例えば、架橋剤、アンチブロッキング剤、滑(スリップ)剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、染料及び改質用樹脂が挙げられる。
【0028】
本発明に係る多層フィルムは、ポリアミド層とポリオレフィン層の間に中間層を設けても良い。中間層としては、ポリアミド層とポリオレフィン層との間の密着性を向上できる接着性樹脂を含む接着性樹脂層が好ましい。接着性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、変性ポリオレフィンが挙げられる。変性ポリオレフィンとしては、ポリオレフィンの変性物、特に酸変性物が挙げられる。変性物としては、例えば、マレイン酸及びフマル酸等の不飽和カルボン酸、又はその酸無水物、エステル若しくは金属塩による、ポリオレフィンのグラフト変性物が挙げられる。このうち変性ポリプロピレンが特に好ましい。
【0029】
変性ポリオレフィンのメルトフローレート(MFR)は、製膜性及び加工適性という観点から、好ましくは0.1g/10分以上50g/10分以下、より好ましくは0.3g/10分以上30g/10分以下、さらに好ましくは0.5g/10分以上10g/10分以下、特に好ましくは0.5g/10分以上5.0g/10分以下である。接着性樹脂層は、接着性樹脂を1種又は2種以上含有できる。
【0030】
本発明に係る多層フィルムは、ポリアミド層の外層側に他の層を設けても良く、例えば、耐熱性を付与するコーティング層や、耐熱性を有するポリエチレンテレフタレートからなる樹脂層などが挙げられる。
【0031】
また、本発明に係る多層フィルムは、ポリオレフィン層の内層側に他の層を設けても良く、例えば、ポリプロピレン樹脂よりも融点に低いポリエチレンからなる樹脂層などが挙げられる。
【0032】
本発明に係る多層フィルムの総厚みは、5~100μm、10~80μm、20~70μm、30~50μmであることが好ましい。
また、ポリアミド層の厚みは、1~50μm、3~40μm、5~30μm、10~20μmであることが好ましい。ポリオレフィン層の厚みは、1~50μm、3~40μm、5~30μm、10~20μmであることが好ましい。接着性樹脂層の厚みは、1~50μm、3~40μm、5~30μm、10~20μmであることが好ましい。
また、本発明に係る多層フィルムにおけるポリアミド層とポリオレフィン層との厚み比は、ポリアミド層:ポリオレフィン層=1:2~2:1であることが好ましい。
【0033】
本発明に係る多層フィルムは、少なくとも、多層フィルムの流れ方向に直交する方向(TD方向)において、実施例で記すカール測定方法によるカールが180°以下となることが好ましい。多層フィルムのTD方向におけるカールが抑制されていることで、ロールトゥロール方式による加工を行う際に安定した加工が可能である。
更に、多層フィルムの流れ方向(MD方向)とTD方向の両方において、実施例で記すカール測定方法によるカールが180°以下となることが特に好ましい。
【実施例0034】
以下に、本発明を実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらに限定されるものではない。尚、以下の実施例および比較例におけるカール測定評価、耐熱性評価は次のようにして行った。
【0035】
<カール測定方法>
図1に示すように、多層フィルムを、ポリオレフィン層面を上にした状態で、多層フィルムのMD方向に沿った100mm角の仮想四角形に対する2本の対角線の切れ込みを入れる。該多層フィルムを、温度23℃、湿度50%の環境下に1時間放置した後、
図1に示す、MD方向において対向する試験片(a)と(b)、及び、TD方向において対向する試験片(c)と(d)のカールを測定した。
カールの測定は、試験片のカールが180°以内の場合(
図2参照)と、試験片のカールが180°を超える場合(すなわち試験片の頂点が半周以上丸まった状態、
図3参照)を見分け、試験片のカールが180°以内の場合は、
図2に示すように、分度器を使用して頂点の角度αを測定した。評価基準は、以下の通りである。
(評価基準)
◎:MDまたはTD方向において対向する試験片の両方が、カール角度40°以下
○:MDまたはTD方向において対向する試験片の両方が、カール角度180°以下であり、
MDまたはTD方向において対向する試験片の少なくとも一方が、カール角度40°超180°以下
△:MDまたはTD方向において対向する試験片の少なくとも一方が、カール角度180°超であり、もう一方がカール角度180°以下
×:MDまたはTD方向において対向する試験片の両方が、カール角度180°超
【0036】
<耐熱性評価>
得られた多層フィルムとPET系の不織布を重ね合わせ、200℃で1分間加熱した後、冷間プレス機にて成型した。評価基準は、以下の通りである。
(評価基準)
〇:冷間プレス機の金型に樹脂の付着が無く成型することができた。
×:冷間プレス機の金型に樹脂の付着があった。
【0037】
[実施例1]
ポリアミド層に、表1に示す6ナイロン90重量%と、表1に示す非晶性ナイロン10重量%を混合したポリアミド樹脂組成物、接着性樹脂層に表1に示すプロピレンブロック共重合体50重量%、表1に示すポリプロピレン系酸変性接着性樹脂50重量%の接着性樹脂組成物、ポリオレフィン層に表1に示すプロピレンブロック共重合体100重量%を、環状ダイス温度を230℃~250℃に設定して共押出し空冷インフレーション成形し、多層フィルムを得た。得られた多層フィルムの厚み構成は、ポリアミド層/接着性樹脂層/ポリオレフィン層=20μm/10μm/10mであった。
得られた多層フィルムのカール測定評価、耐熱性評価を行った。結果を表2に示す。
【0038】
[実施例2]
ポリアミド層を、6ナイロン95重量%と、非晶性ナイロン5重量%とした以外は、実施例1と同様にして多層フィルムを得た。得られた多層フィルムのカール測定評価、耐熱性評価の結果を表2に示す。
【0039】
[実施例3]
接着性樹脂層を表1に示すプロピレン単独重合体50重量%と表1に示すポリプロピレン系酸変性接着性樹脂50重量%とし、ポリオレフィン層の樹脂を表1に示すプロピレン単独重合体100重量%とした以外は、実施例1と同様にして多層フィルムを得た。得られた多層フィルムのカール測定評価、耐熱性評価の結果を表2に示す。
【0040】
[比較例1]
接着性樹脂層を表1に示すプロピレンランダム共重合体50重量%と表1に示すポリプロピレン系酸変性接着性樹脂50重量%とし、ポリオレフィン層の樹脂を表1に示すプロピレンランダム共重合体100重量%とした以外は、実施例1と同様にして多層フィルムを得た。得られた多層フィルムのカール測定評価、耐熱性評価結果を表2に示す。
【0041】
[比較例2]
ポリアミド層に、表1に示す6/6,6共重合ナイロン(融点:195℃)90重量%と、表1に示す非晶性ナイロン10重量%を混合したポリアミド樹脂組成物を用い、接着性樹脂層に表1に示す直鎖状低密度ポリエチレン50重量%、表1に示すポリエチレン系酸変性接着性樹脂50重量%の接着性樹脂組成物を用い、ポリオレフィン層に表1に示す直鎖状低密度ポリエチレン100重量%を用い、実施例1と同様の方法で多層フィルムを得た。得られた多層フィルムのカール測定評価、耐熱性評価の結果を表2に示す。
【0042】
[比較例3]
ポリアミド層を、表1に示す6ナイロン90重量%と、表1に示す非晶性ナイロン10重量%とした以外は、比較例2と同様にして多層フィルムを得た。得られた多層フィルムのカール測定評価、耐熱性評価の結果を表2に示す。
【0043】
[比較例4]
接着性樹脂層を、表1に示す低密度ポリエチレン50重量%と、表1に示すポリエチレン系酸変性接着性樹脂50重量%とし、ポリオレフィン層の樹脂を表1に示す低密度ポリエチレン100重量%とした以外は、比較例3と同様にして多層フィルムを得た。得られた多層フィルムのカール測定評価、耐熱性評価の結果を表2に示す。
【0044】
[比較例5]
接着性樹脂層を、表1に示す高密度ポリエチレン50重量%と、表1に示すポリエチレン系酸変性接着性樹脂50重量%とし、ポリオレフィン層の樹脂を表1に示す高密度ポリエチレン100重量%とした以外は、比較例3と同様にして多層フィルムを得た。得られた多層フィルムのカール測定評価、耐熱性評価の結果を表2に示す。
【0045】
【0046】
【0047】
表2の比較例2より、ポリアミド層として、融点が205℃未満の結晶性ナイロンである共重合ナイロンと非晶性ナイロンを使用し、ポリオレフィン層として直鎖状低密度ポリエチレンを用いた多層フィルムは、耐熱性に劣るだけでなく、カール測定評価においても劣るものであった。また、比較例3~5より、ポリアミド層として、融点が205℃以上の6ナイロンと非晶ナイロンを使用することで耐熱性評価は良好なものであったが、ポリオレフィン層として、ポリエチレン樹脂(直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン)を用いた場合は、いずれの場合もカール測定評価で劣るものであった。
更に、比較例1より、ポリアミド層として6ナイロンと非晶ナイロンを用い、ポリオレフィン層としてプロピレンランダム共重合体を用いた場合も、カール測定評価において劣るものであった。
【0048】
一方、実施例1~3より、ポリアミド層として6ナイロンと非晶ナイロンを用い、ポリオレフィン層としてプロピレン単独重合体またはプロピレンブロック共重合体を用いた場合は、耐熱性に優れるとともにカール測定評価においても良好なものであった。
また、実施例1と実施例3のデータを比較すると、ポリオレフィン層としてプロピレンブロック共重合体を用いた場合は、カール測定評価において特に優れるものであった。
更に、実施例1と実施例2のデータを比較すると、ポリアミド層において、6ナイロンと非晶ナイロンの重量割合を、95:5とするよりも、90:10とする方がカール低減に効果があった。