(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022423
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】見え方シミュレーションシステム
(51)【国際特許分類】
G06T 19/00 20110101AFI20250206BHJP
G06F 3/0481 20220101ALI20250206BHJP
【FI】
G06T19/00 A
G06F3/0481
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023126972
(22)【出願日】2023-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 慎二
【テーマコード(参考)】
5B050
5E555
【Fターム(参考)】
5B050AA03
5B050BA08
5B050BA09
5B050CA08
5B050EA26
5B050FA02
5E555AA27
5E555BA02
5E555BB02
5E555BC08
5E555DB53
5E555DC09
5E555DC43
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】客席からの美術セットの見え方をシミュレーションできる見え方シミュレーションシステムを提供する。
【解決手段】実施形態によれば、見え方シミュレーションシステム1は、施設の三次元情報及び美術セットの三次元情報を記憶する記憶部13と、施設の三次元情報と美術セットの三次元情報とを重畳させた重畳情報を生成する重畳部111と、施設における視点を設定する設定部112と、重畳情報に基づいて、視点からの三次元画像を生成する画像生成部113と、三次元画像を表示する表示部20とを含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設の三次元情報及び美術セットの三次元情報を記憶する記憶部と、
前記施設の前記三次元情報と前記美術セットの前記三次元情報とを重畳させた重畳情報を生成する重畳部と、
前記施設における視点を設定する設定部と、
前記重畳情報に基づいて、前記視点からの三次元画像を生成する画像生成部と、
前記三次元画像を表示する表示部と
を備えた
見え方シミュレーションシステム。
【請求項2】
前記設定部は、前記視点を、前記施設の客席に設定する、
請求項1に記載の見え方シミュレーションシステム。
【請求項3】
前記設定部は、前記視点を、前記施設の舞台に設定する、
請求項1に記載の見え方シミュレーションシステム。
【請求項4】
前記視点は、目線の高さ情報を含み、
前記設定部は、属性情報に基づいて、前記目線の高さを設定する、
請求項1に記載の見え方シミュレーションシステム。
【請求項5】
前記記憶部は、演者、照明器具、音響設備、及び撮影機材の少なくとも1つの三次元情報を更に記憶する、
請求項1に記載の見え方シミュレーションシステム。
【請求項6】
前記視点から、前記美術セットの重なり具合による見え方を評価する評価部を更に含む、
請求項1に記載の見え方シミュレーションシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、見え方シミュレーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、劇場に美術セットを配置する場合、事前に現地の視察・見学を行い、劇場内の写真撮影及び寸法測定等を行う。これらの資料及び劇場が準備する図面等を元に美術セットの配置検討が行われている。
【0003】
このような方法を用いた場合、舞台上への美術セットの配置検討は行われるが、実際の観劇者からの視点での美術セットの見え方までは考慮されていない。このため、開演後に観劇者から、「役者が見えない」、「舞台が見えない」、「舞台上の美術セットが見えない」等のクレームを受けることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、客席からの美術セットの見え方をシミュレーションできる見え方シミュレーションシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、見え方シミュレーションシステムは、劇場の三次元情報及び美術セットの三次元情報を記憶する記憶部と、劇場の三次元情報と美術セットの三次元情報とを重畳させた重畳情報を生成する重畳部と、劇場における視点を設定する設定部と、重畳情報に基づいて、視点からの三次元画像を生成する画像生成部と、三次元画像を表示する表示部とを含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、客席からの美術セットの見え方をシミュレーションできる見え方シミュレーションシステムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る見え方シミュレーションシステムの全体構成を示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る見え方シミュレーションシステムに含まれるサーバ装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係る見え方シミュレーションシステムに含まれるサーバ装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係る見え方シミュレーションシステムに含まれるサーバ装置に記憶される3Dモデルデータベースの構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、一実施形態に係る見え方シミュレーションシステムにおける見え方シミュレーションの一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、一実施形態に係る見え方シミュレーションシステムにおける劇場の正面2階席から舞台を見たシミュレーション画像である。
【
図7】
図7は、一実施形態に係る見え方シミュレーションシステムにおける劇場の下手2階席から舞台を見たシミュレーション画像である。
【
図8】
図8は、一実施形態に係る見え方シミュレーションシステムにおける劇場の下手2階席から舞台を見たシミュレーション画像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態の見え方シミュレーションシステム(1)は、施設の三次元情報及び美術セットの三次元情報を記憶する記憶部(13)と、施設の三次元情報と美術セットの三次元情報とを重畳させた重畳情報を生成する重畳部(111)と、施設における視点を設定する設定部(112)と、重畳情報に基づいて、視点からの三次元画像を生成する画像生成部(113)と、三次元画像を表示する表示部(20)とを含む。これにより、見え方シミュレーションシステム(1)は、施設内の任意の視点からの美術セットの見え方をシミュレーションできる。よって、見え方シミュレーションシステム(1)の利用者は、任意の視点からの美術セットの見え方を確認できる。
【0010】
実施形態の見え方シミュレーションシステム(1)の設定部(112)は、視点を、施設の客席に設定する。これにより、見え方シミュレーションシステム(1)は、客席から見た三次元画像を生成できる。よって、見え方シミュレーションシステム(1)の利用者は、座席位置からの美術セットの見え方確認できる。
【0011】
実施形態の見え方シミュレーションシステム(1)の設定部(112)は、視点を、施設の舞台に設定する。これにより、見え方シミュレーションシステム(1)は、舞台から見た三次元画像を生成できる。よって、見え方シミュレーションシステム(1)の利用者は、美術セット裏からの客席の見え方、あるいは楽屋から舞台へ上がった時の舞台上の移動経路等を確認できる。
【0012】
視点は、目線の高さ情報を含み、実施形態の見え方シミュレーションシステム(1)の設定部は、属性情報に基づいて、目線の高さを設定する。これにより、見え方シミュレーションシステム(1)は、属性に応じた目線の高さにおける三次元画像を生成できる。よって、見え方シミュレーションシステム(1)の利用者は、目線の高さによる演劇の見えにくさを把握することができる。
【0013】
実施形態の見え方シミュレーションシステム(1)の記憶部は、演者、照明器具、音響設備、及び撮影機材の少なくとも1つの三次元情報を更に記憶する。これにより、見え方シミュレーションシステム(1)は、更に、演者、照明器具、音響設備、及び撮影機材の少なくとも1つの三次元情報を重畳させた三次元画像を生成できる。よって、見え方シミュレーションシステム(1)の利用者は、演者の見え具合を確認できる。また、見え方シミュレーションシステム(1)の利用者は、照明器具、音響設備、及び撮影機材等の持ち込み設備による演劇の見えにくさを把握することができる。
【0014】
実施形態の見え方シミュレーションシステム(1)は、美術セットの重なり具合による見え方を評価する評価部(114)を更に含む。これにより、見え方シミュレーションシステム(1)は、注目するオブジェクトの見え方を評価(数値化)できる。よって、見え方シミュレーションシステム(1)の利用者は、評価値に基づいて、美術セット等の配置が適切であるか判定できる。
【0015】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
1.見え方シミュレーションシステムの構成
まず、
図1を参照して、見え方シミュレーションシステム1の全体構成の一例について説明する。
図1は、見え方シミュレーションシステム1の全体構成の一例を示す概略構成図である。なお、以下の説明では、劇場の見え方シミュレーションを実行する場合について説明するが、本実施形態の適用場所は劇場に限定されない。見え方シミュレーションシステム1は、ホール、テレビスタジオ、競技場等の施設に美術セット等を配置する場合にも適用できる。
【0017】
図1に示すように、見え方シミュレーションシステム1は、サーバ装置10、1つ以上の表示装置20、演劇情報入力装置30、及び劇場情報入力装置40を含む。サーバ装置10、表示装置20、演劇情報入力装置30、及び劇場情報入力装置40は、劇場内ネットワークNWまたはインターネットを介して接続され、互いの間で情報の送受信が可能となっている。見え方シミュレーションシステム1は、劇場内あるいはインターネット上のクラウドシステムとして提供され得る。なお、
図1の例では、見え方シミュレーションシステム1が2台の表示装置20を含む場合を示しているが、表示装置20は1台以上であればよい。また、見え方シミュレーションシステム1は、演劇情報入力装置30及び劇場情報入力装置40をそれぞれ複数台含み得る。
【0018】
サーバ装置10は、見え方シミュレーションを実行するコンピュータである。サーバ装置10は、劇場(施設)内の任意の視点から観察した劇場(施設)の三次元(3D:Three Dimension)画像に、美術セット等の3D画像を重畳(合成)した三次元のシミュレーション画像(三次元画像)を提供するウェブサーバとして動作し得る。
【0019】
演劇の演目毎に、劇場外から持ち込まれる音響設備、照明器具、及び撮影機材等の設備(以下、「持ち込み設備」と表記する)、美術セット、並びに演者は、異なる。以下、これらをまとめて「演劇セット」と表記する。見え方シミュレーションは、劇場内に演劇セットを配置した状態で、劇場内の任意の視点からの見え方を三次元表示する。
【0020】
見え方シミュレーションシステム1の利用者(以下、単に「ユーザ」と表記する)は、演劇の見え方をシミュレーションする。例えば、ユーザは、演劇セットの配置を検討する際に、見え方シミュレーションを実行して、客席からの演劇及び舞台袖の見え方を確認する。また、例えば、ユーザは、舞台上の美術セットの裏からの客席の見え方、または舞台上での演者の移動経路等を事前に確認する際に、見え方シミュレーションを実行する。
【0021】
表示装置20は、サーバ装置10から提供されるシミュレーション画像の閲覧に用いられるコンピュータである。表示装置20は、ウェブブラウザアプリケーションを実行可能なスマートフォン、タブレット、またはPC(Personal Computer)等である。表示装置20は、シミュレーション画像の表示部及び情報入力部として機能する。
【0022】
ユーザは、表示装置20に視点設定情報を入力する。視点設定情報は、シミュレーション画像を生成する視点を設定するための情報である。表示装置20は、サーバ装置10に入力された視点設定情報を送信する。サーバ装置10は、視点設定情報に基づいて、シミュレーション画像の視点を設定する。表示装置20には、設定された視点から見たシミュレーション画像が表示される。
【0023】
視点設定情報には、劇場内における視点位置(客席または舞台)、視点の向き、視野角、及び属性(男性、女性、または子供等)の情報等が含まれる。例えば、属性情報に基づいて、選択した視点位置における目線の高さが設定される。すなわち、表示装置20には、属性に基づくシミュレーション画像が表示され得る。なお、ユーザは、属性を選択する代わりに、目線の高さ(身長及び座高等)に関する数値を直接入力してもよい。ユーザは、シミュレーション画像を見ながら表示装置20を操作して、視点設定情報を変更することにより、シミュレーション画像の視点を変更できる。
【0024】
また、ユーザは、シミュレーション画像を見ながら表示装置20を操作して、演劇セットの配置を決定し得る。例えば、ユーザは、表示装置20を操作して、美術セットの配置、向き、及び大きさ等を任意に設定(変更)できる。表示装置20は、ユーザの指示(操作)基づいて、演劇セットの配置情報を生成する。表示装置20は、サーバ装置10に、配置情報を送信する。
【0025】
例えば、表示装置20が複数台ある場合、複数の表示装置20は、同じ視点の同期表示、または異なる視点の個別表示が可能なようにサーバ装置10と接続され得る。例えば、見え方シミュレーションシステムとウェブ会議システムとが組み合わされることにより、複数のユーザがシミュレーション画像を共有しながらウェブ会議を実行できる。
【0026】
演劇情報入力装置30は、演劇セットの3Dモデル情報(以下、「演劇情報」と表記する)の入力に用いられるコンピュータである。すなわち、演劇情報入力装置30を介して、サーバ装置10に、演劇情報が入力される。演劇情報入力装置30は、例えば、演劇製作者に用いられる。演劇情報入力装置30は、ウェブブラウザアプリケーションを実行可能なスマートフォン、タブレット、またはPC等である。演劇情報入力装置30は、表示部及び情報入力部として機能する。なお、表示装置20が、演劇情報入力装置30としての機能を有していてもよい。また、サーバ装置10に演劇情報が直接入力されてもよい。
【0027】
劇場情報入力装置40は、劇場の客席、舞台、及び劇場固有の付帯設備(以下、「据え付け設備」と表記する)等の3Dモデル情報(以下、「劇場情報」と表記する)の入力に用いられるコンピュータである。すなわち、劇場情報入力装置40を介して、サーバ装置10に、劇場情報が入力される。劇場情報入力装置40は、例えば、劇場管理者に用いられる。劇場情報入力装置40は、ウェブブラウザアプリケーションを実行可能なスマートフォン、タブレット、またはPC等である。劇場情報入力装置40は、表示部及び情報入力部として機能する。なお、サーバ装置10に劇場情報が直接入力されてもよい。
【0028】
2.サーバ装置のハードウェア構成
次に、
図2を参照して、サーバ装置10のハードウェア構成の一例について説明する。
図2は、サーバ装置10のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0029】
図2に示すように、サーバ装置10は、プロセッサ11、プログラムメモリ12、データメモリ13、通信インタフェース14、入出力インタフェース15、入力装置16、及び出力装置17を含む。プロセッサ11、プログラムメモリ12、データメモリ13、通信インタフェース14、及び入出力インタフェース15は、サーバ装置10内に設けられたバスを介して、互いに送受信可能に接続される。
【0030】
プロセッサ11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。プロセッサ11は、マルチコア/マルチスレッドのものであってよく、複数の処理を並行して実行できる。プロセッサ11は、サーバ装置10の全体を制御する。プロセッサ11は、プログラムメモリ12に記憶されたプログラムを解釈及び実行して、見え方シミュレーションを実行する。
【0031】
プログラムメモリ12は、記憶媒体として、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の随時書込み及び読出しが可能な不揮発性メモリと、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリとを含む。プログラムメモリ12は、プロセッサ11が各種処理を実行するためのプログラムを非一時的な記憶媒体として記憶する。例えば、プログラムメモリ12は、OS(Operating System)や様々なアプリケーションプログラムを記憶する。アプリケーションプログラムの一つとして、見え方シミュレーション実行プログラムが含まれる。
【0032】
データメモリ13は、記憶媒体として、例えば、HDDまたはSSD等の随時書込み及び読出しが可能な不揮発性メモリと、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリとを含む。データメモリ13は、各種処理を行う過程で取得及び作成されたデータ(情報)を記憶する記憶部として用いられる。例えば、データメモリ13には、劇場情報及び演劇情報が記憶される。
【0033】
通信インタフェース14は、ネットワークNWと接続するための有線または無線通信部である。
【0034】
入出力インタフェース15は、入力装置16及び出力装置17とのインタフェースである。入出力インタフェース15は、入力装置16及び出力装置17に接続される。
【0035】
入力装置16は、サーバ装置10の利用者がプロセッサ11に対して指示を入力するためのキーボードやポインティングデバイス等を含む。さらに、入力装置16は、USBメモリ等のメモリ媒体からデータを読み出すためのリーダ、またはディスク媒体からデータを読み出すためのディスク装置を含み得る。
【0036】
出力装置17は、出力データを表示するディスプレイや、それを印刷するプリンタ等を含む。さらに、出力装置17は、音声データや音楽データを出力するスピーカを含み得る。
【0037】
なお、サーバ装置10は、入力装置16及び/または出力装置17を含んでいなくてもよい。この場合、表示装置20、演劇情報入力装置30、または劇場情報入力装置40が、入力装置16及び/または出力装置17として用いられてもよい。
【0038】
表示装置20、演劇情報入力装置30、及び劇場情報入力装置40は、
図2に示したサーバ装置10と同様のハードウェア構成を含み得る。
【0039】
3.サーバ装置の機能構成
次に、
図3を参照して、サーバ装置10の機能構成の一例について説明する。
図3は、サーバ装置10の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【0040】
図3に示すように、サーバ装置10は、機能構成として処理部110を含む。処理部110は、例えば、プロセッサ11がプログラムメモリ12に記憶された見え方シミュレーション実行プログラムを実行することにより、その機能が実現される。処理部110は、見え方シミュレーションを実行するための各種処理を実行する。なお、処理部110は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(field-programmable gate array)、またはDSP(Digital Signal processor)等の集積回路を含む、他の多様な形式で実現されてもよい。
【0041】
データメモリ13は、3Dモデルデータベースとして、劇場3Dモデルデータベース131及び演劇セット3Dモデルデータベース132を記憶する。劇場3Dモデルデータベース131は、複数の劇場の劇場情報を含む。演劇セット3Dモデルデータベース132は、複数の演目の演劇情報を含む。
【0042】
次に、処理部110の内部構成について説明する。
【0043】
処理部110は、舞台・セット重畳部111、視点設定部112、3D画像生成部113、及び見え方評価部114を含む。
【0044】
舞台・セット重畳部111は、劇場情報と演劇情報とを重畳する。より具体的には、舞台・セット重畳部111は、ユーザの指示(演劇セットの配置情報)に基づいて、劇場の3Dモデル上に、演劇セットの3Dモデルを配置した重畳情報を作成する。なお、演劇セットは、舞台上に配置されてもよいし、客席に配置されてもよい。例えば、持ち込み設備(音響設備及び撮影機材等)は、客席に配置される。舞台・セット重畳部111は、ユーザの指示に基づいて、美術セット等の3Dモデルの位置、向き、及びサイズ等を変更し得る。例えば、舞台・セット重畳部111は、演劇の場面毎に、重畳情報を作成する。重畳情報は、データメモリ13に記憶される。舞台・セット重畳部111は、3D画像生成部113に、重畳情報を送信する。
【0045】
視点設定部112は、ユーザの指示(視点設定情報)に基づいて、劇場内における視点(視点位置、視点向き、視野角、及び目線高さ)を設定する。また、視点設定部112は、視点変更機能をする。なお、視点は、複数設定されてもよい。視点位置は、客席であってもよいし、舞台上であってもよい。例えば、視点設定部112は、視点位置が客席である場合、選択された属性に対応する座高に基づく目線の高さを設定する。また、視点設定部112は、視点位置が舞台である場合、選択された属性に対応する身長に基づく目線の高さを設定する。視点設定部112は、3D画像生成部に、視点情報(視点位置、視点向き、視野角、及び目線高さ)を送信する。
【0046】
3D画像生成部113は、3D画像を生成する。より具体的には、3D画像生成部113は、重畳情報及び視点情報に基づいて、視点から見た、三次元のシミュレーション画像を生成する。3D画像生成部113は、出力装置17または表示装置20に、シミュレーション画像を送信する。
【0047】
見え方評価部114は、シミュレーション画像において、注目するオブジェクト(例えば、演者)の見え方を評価する。見え方評価部114は、シミュレーション画像上における注目するオブジェクトと、美術セット等との重なり具合(すなわち、見え方)を数値化する。注目するオブジェクトは、視点によって見え方が異なる。このため、視点によって評価値は異なる。見え方評価部114は、シミュレーション画像毎、すなわち視点毎に評価値を算出し得る。例えば、注目するオブジェクトが美術セット等の裏に隠れて全く見えない状態である場合、評価値は0%である。また、注目するオブジェクトの全体が見える場合(美術セット等の裏に隠れていない場合)、評価値は100%である。例えば、ユーザは、評価値に基づいて、見え方を判定し、演劇セットの配置を変更し得る。
【0048】
なお、見え方評価部114が、評価値に基づいて、見え方を判定してもよい。例えば、評価値が予め設定された判定値以上である場合、見え方評価部114は、見え方は良好であると判定する。他方で、評価値が判定値未満である場合、見え方は不良であると判定する。例えば、ユーザは、判定結果に基づいて、演劇セットの配置を変更し得る。
【0049】
また、見え方評価部114は、例えば、全ての客席における評価値を算出して、評価値のマップを作成してもよい。
【0050】
4.3Dモデルデータベースの構成
次に、
図4を参照して、3Dモデルデータベースの構成の一例について説明する。
図4は、3Dモデルデータベースの構成の一例を示す図である。
【0051】
図4に示すように、データメモリ13(記憶部)は、劇場3Dモデルデータベース131と、演劇セット3Dモデルデータベース132とを含む。本実施形態では、劇場情報(劇場の三次元情報)と演劇情報(演劇の三次元情報)とが別々のデータベースで管理される。
【0052】
劇場3Dモデルデータベース131には、複数の劇場情報が含まれる。各劇場情報は、劇場情報入力装置40を用いて劇場毎に登録される。
図4の例では、A劇場情報311とB劇場情報312とが含まれる。
【0053】
各劇場情報は、劇場躯体情報及び劇場付帯設備情報を含む。劇場躯体情報には、舞台、客席(複数階になる場合は全ての階層、円形配置の場合は全ての場所)、舞台と客席を隔てる壁または客席の手摺等の3Dモデル情報が含まれる。劇場付帯設備情報には、劇場内に設置されている照明器具及び音響設備等の据え付け設備に関する3Dモデル情報が含まれる。これらの情報は、劇場の設計に用いられた三次元CADデータ(BIM(Building Information Modeling)データ)に基づいた情報であってもよいし、劇場内部のレーザー測定等に基づく情報であってもよい。
【0054】
演劇セット3Dモデルデータベース132には、複数の演劇情報が含まれる。各演劇情報は、演劇情報入力装置30を用いて、演目毎に登録される。
図4の例では、A演劇情報321とB演劇情報322とが含まれる。
【0055】
各演劇情報は、美術セット情報、演者情報、及び持ち込み設備情報を含む。美術セット情報には、演劇で用いられる美術セットに関する3Dモデル情報が含まれる。演者情報には、演劇に出演する演者に関する3Dモデル情報が含まれる。例えば、演者情報には、演劇に登場する犬、猫、馬等の動物の情報も含まれる。持ち込み設備情報には、演劇用に持ち込まれた音響設備、照明器具、及び撮影機材等に関する3Dモデル情報が含まれる。これらの情報は、三次元CAD(Computer-Aided Design)により作成されてもよいし、事前に作製されたミニチュアセットまたは実物のセットを、レーザー等の3Dデータ作成機器を用いてスキャンすることにより取得されてもよい。
【0056】
舞台・セット重畳部111には、対応する劇場情報及び演劇情報が送信される。舞台・セット重畳部111は、劇場の3Dモデル上に、演劇セットの3Dモデルを配置した重畳情報を作成し、3D画像生成部113に送信する。より具体的には、例えば、劇場の三次元情報と美術セットの三次元情報とが重畳される。
【0057】
3D画像生成部113では、重畳情報と視点情報とに基づいて、シミュレーション画像が生成される。なお、3D画像生成部113は、劇場情報に基づいて、劇場の3D画像を生成してもよいし、演劇情報に基づいて、演劇セットの3D画像を生成してもよい。
【0058】
5.見え方シミュレーションの流れ
次に、
図5を参照して、見え方シミュレーションの流れの一例について説明する。
図5は、見え方シミュレーションの一例を示すフローチャートである。
【0059】
図5に示すように、まず、ユーザは、表示装置20を操作して、演劇が行われる劇場を選択する(S1)。舞台・セット重畳部111は、劇場3Dモデルデータベース131から選択された劇場の劇場情報を抽出する。
【0060】
ユーザは、表示装置20を操作して、演目を選択する(S2)。舞台・セット重畳部111は、演劇セット3Dモデルデータベース132から選択された演目の演劇情報を抽出する。
【0061】
ユーザは、表示装置20を操作して、劇場内に、演劇セットを配置する(S3)。より具体的には、例えば、ユーザは、表示装置20に表示された劇場の3D画像上に、美術セット、演者、及び持ち込み設備を配置する。表示装置20は、配置された演劇セットの配置情報を生成する。表示装置20は、サーバ装置10に、演劇セットの配置情報を送信する。舞台・セット重畳部111は、配置情報に基づいて、重畳情報を生成する。
【0062】
ユーザは、表示装置20を操作して、視点を設定する(S4)。このとき、ユーザは複数の視点を選択してもよい。すなわち、ユーザは、複数の座席位置からの見え方をシミュレーションし得る。このとき、ユーザは、シミュレーションを行う座席位置として、正面席よりも下手席または上手席等の偏移している席からの見え方を重点的にチェックしてもよい。より具体的には、例えば、ユーザは、表示装置20に表示された劇場の3D画像を参照して、視点位置(例えば、座席)、視点の向き、視野角、及び属性等を選択する。表示装置20は、ユーザの指示(操作)に基づいて、視点設定情報を生成する。表示装置20は、サーバ装置10に、視点設定情報を送信する。視点設定部112は、視点設定情報に基づいて、視点情報を生成する。
【0063】
ユーザは、見え方をシミュレーションする(S5)。より具体的には、3D画像生成部113は、重畳情報及び視点情報に基づいてシミュレーション画像を生成する。ユーザは、シミュレーション画像を確認して演劇及び舞台袖の見え方を確認する。このとき、ユーザは、視点(座席、視線の向き、または目線の高さ等)を変更して見え方を確認してもよい。ユーザは、注目するオブジェクトを選択し得る。見え方評価部114は、視点(座席)からの注目オブジェクトの評価値を算出する。ユーザは、各視点のシミュレーション画像及び評価値に基づいて、見え方の判定を行う。
【0064】
ユーザが、見え方は良好である、と判定した場合(S6_Yes)、見え方シミュレーションは終了する。
【0065】
ユーザが、見え方は不良である、と判定した場合(S6_No)、ユーザは、表示装置20を操作して、演劇セットを移動させる(S7)。より具体的には、例えば、ユーザは、持ち込み設備により舞台が見づらい場合、持ち込み設備の配置を変更する。また、例えば、ユーザは、注目する演者が見えにくい場合、美術セット及び/または演者の配置を変更する。なお、美術セットの向きまたはサイズを変更してもよい。表示装置20は、ユーザの指示に基づいて、サーバ装置10に更新した配置情報を送信する。その後、ステップS4に戻り、視点が再度設定される。
【0066】
なお、
図5の例は、視点位置が座席である場合について説明したが、視点位置は舞台であってもよい。演劇セットは三次元のデータとなるため、美術セットの裏側も正確に記述されている。このため、ユーザは、演者が楽屋から舞台へ上がった時の舞台上の移動経路を把握したり、舞台裏から客席の見え方を確認したりしてもよい。
【0067】
6.見え方シミュレーションの具体例
次に、
図6~
図8を参照して、見え方シミュレーションの具体例について説明する。
図6は、劇場の正面2階席から舞台を見たシミュレーション画像1000である。
図7及び
図8は、劇場の下手2階席から舞台を見たシミュレーション画像1000である。
【0068】
図6に示すように、例えば、劇場には1階席から3階席までが設けられている。劇場の据え付け設備として、複数の照明器具LT1~LT3が設けられている。照明器具LT1は、上手側(
図6の紙面右側)の舞台脇に配置されている。複数の照明器具LT2は、下手側(
図6の紙面左側)の舞台脇に配置されている。複数の照明器具LT3は、舞台天井に配置されている。これらの配置及び個数は任意である。なお、据え付け設備としての音響設備は、説明を簡略化するために省略されている。
【0069】
持ち込み設備として、2つの音響設備SP1及びSP2が、1階席の上手側及び下手側にそれぞれ配置されている。なお、例えば、演劇撮影用の撮影機材または照明器具等の持ち込み設備が客席に配置されてもよい。
【0070】
美術セットとして、舞台上に、家HS及び立木TR1及びTR2が配置されている。
【0071】
家HSの上手側に、演者HMが配置されている。
【0072】
正面席からのシミュレーション画像1000では、据え付け設備及び持ち込み機材等の影響を受けずに、全ての美術セット及び演者を見ることができる。
【0073】
図7に示すように、下手2階席から舞台を見ると、舞台左側は、劇場の壁により死角となる。このため、下手2階席からのシミュレーション画像1000では、立木TR2は、見えない。また、
図7の例では、演者HMは、家HSの後に隠れてしまっている。例えば、演者HMが注目オブジェクトである場合、この席からは、注目オブジェクトが見えにくいことが分かる。この場合、ユーザは、見え方は不良であると判定する。
【0074】
図8に示すように、
図7を用いて説明した見え方シミュレーションの結果から、例えば、家HSの配置を舞台奥に移動させる。これにより、この席からであっても、演者HM、すなわち注目オブジェクトは見える。立木TR2は、注目オブジェクトではないため、ユーザは、見え方は良好であると判定する。
【0075】
このように、ユーザは、見え方シミュレーションを実行することにより、美術セット等の配置を最適化できる。
【0076】
7.本実施形態に係る効果
本実施形態に係る見え方シミュレーションシステム1は、サーバ装置10において、劇場情報(劇場の3Dモデル)と演劇情報(演劇セットの3Dモデル)とを記憶できる。サーバ装置10は、劇場情報と演劇情報とを重畳した重畳情報を生成できる。サーバ装置10は、重畳情報に基づいて、任意の視点から見た三次元のシミュレーション画像を生成できる。サーバ装置10は、表示装置20に三次元のシミュレーション画像を表示させることができる。また、サーバ装置10は、演劇セットの注目するオブジェクトの見え方を評価(数値化)できる。これにより、見え方シミュレーションシステム1は、演劇の見え方をシミュレーションできる。よって、見え方シミュレーションシステム1は、客席からの美術セットの見え方をシミュレーションできる。
【0077】
ユーザは、見え方シミュレーションシステム1を用いて、複数の客席からの演劇の見え方を確認できる。
【0078】
ユーザは、見え方シミュレーションシステム1を用いて、演劇セット(美術セット、演者、及び持ち込み設備)の配置、大きさ、及び向き等を最適化できる。
【0079】
ユーザは、評価値に基づいて、見え方を判定できる。すなわち、ユーザは、評価値に基づいて、演劇セットの配置が適切であるか判定できる。
【0080】
ユーザは、見え方シミュレーションシステム1を用いて、座席位置及び属性(目線の高さ)による演劇の見えにくさを把握することができる。例えば、ユーザは、劇場に据え付けの照明器具及び音響設備、劇場の壁面、または手摺等により観劇にどのような影響(演劇の見えにくさ)が出るか確認できる。また、ユーザは、演劇用に持ち込んだ照明器具、音響設備、撮影機材等の持ち込み設備により観劇にどのような影響が出るか確認できる。これにより、ユーザは、チケット購入者(観劇者)への事前の注意喚起、またはチケット価格の変更を実施できる。
【0081】
ユーザは、美術セットの裏に視点位置を設定して、美術セット裏に配置した演者から客席が見えているか確認できる。また、ユーザは、舞台面に視点位置を設定して、楽屋から舞台へ上がった時の舞台上の移動経路を把握できる。
【0082】
本実施形態によれば、劇場情報と演劇情報とが別々のデータベースで管理される。これにより、同一の舞台構造を繰り返し利用し、異なる演目毎の美術セットを配置しなおすことができる。また、同じ演目を複数の劇場で公演する場合に、劇場に合わせた美術セットの配置の変更ができる。
【0083】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0084】
1…見え方シミュレーションシステム、10…サーバ装置、11…プロセッサ、12…プログラムメモリ、13…データメモリ、14…通信インタフェース、15…入出力インタフェース、16…入力装置、17…出力装置、20…表示装置、30…演劇情報入力装置、40…劇場情報入力装置、110…処理部、111…舞台・セット重畳部、112…視点設定部、113…3D画像生成部、114…見え方評価部、131…劇場3Dモデルデータベース、132…演劇セット3Dモデルデータベース、311…A劇場情報、312…B劇場情報、321…A演劇情報、322…B演劇情報、1000…シミュレーション画像、HM…演者、HS…家、LT1~LT3…照明器具、NW…ネットワーク、SP1、SP2…音響設備、TR1、TR2…立木。