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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002244
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20241226BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20241226BHJP
【FI】
F04B39/00 106Z
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102292
(22)【出願日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】小林 幹生
【テーマコード(参考)】
3H003
5H770
【Fターム(参考)】
3H003AA05
3H003AB04
3H003AC03
3H003AD03
3H003BE00
3H003CF01
5H770AA05
5H770AA07
5H770BA05
5H770QA01
5H770QA02
5H770QA08
5H770QA12
5H770QA22
5H770QA25
5H770QA28
5H770QA31
5H770QA36
(57)【要約】
【課題】電磁ノイズ対策のためのフィルタ部品が大型化したり、フィルタ部品の個数が増加したりした場合であっても、インバータ収容部の投影面積の拡大を抑制することができる電動圧縮機を提供する。
【解決手段】電動圧縮機1において、フィルタ回路部30は、複数の電解コンデンサ51が実装された第1フィルタ回路基板31と、ノーマルモードチョークコイル53及びコモンモードチョークコイル55等が実装された第2フィルタ回路基板33と、を含み、第1フィルタ回路基板31及び第2フィルタ回路基板33は、互いに電気的に接続されていると共に、板状の樹脂部材35を挟んで重ねられた状態でインバータ収容部7に収容されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を回転させるモータ及び前記回転軸の回転によって駆動される圧縮機構を収容するハウジングと、前記ハウジングと一体的に設けられ、開口部を有し、前記モータを駆動するインバータを収容するインバータ収容部と、前記インバータ収容部の前記開口部を閉塞するカバー部材と、を有する電動圧縮機であって、
前記インバータは、前記モータに給電するインバータ回路部と、電磁ノイズを低減するためのフィルタ回路部と、を有し、
前記フィルタ回路部は、少なくとも1つの第1フィルタ部品が実装された第1フィルタ回路基板と、少なくとも1つの第2フィルタ部品が実装された第2フィルタ回路基板と、を含み、
前記第1フィルタ回路基板及び前記第2フィルタ回路基板は、互いに電気的に接続されていると共に、板状の樹脂部材を挟んで重ねられた状態で前記インバータ収容部に収容されている、
電動圧縮機。
【請求項2】
前記少なくとも1つの第1フィルタ部品は前記第1フィルタ回路基板の一方の面に実装され、前記少なくとも1つの第2フィルタ部品は前記第2フィルタ回路基板の一方の面に実装されており、
前記第1フィルタ回路基板の他方の面と前記第2フィルタ回路基板の他方の面とが前記樹脂部材を挟んで対向配置された状態で、前記インバータ収容部に収容されている、
請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項3】
前記樹脂部材は、前記第1フィルタ回路基板と前記第2フィルタ回路基板とを電気的に接続するバスバーを有する、請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項4】
前記樹脂部材は、前記第1フィルタ回路基板と前記第2フィルタ回路基板とを電気的に接続するバスバーを有すると共に、電磁ノイズを遮蔽する遮蔽板を内蔵している、請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項5】
前記樹脂部材は、前記第1フィルタ回路基板の外形及び前記第2フィルタ回路基板の外形の少なくとも一方に対応する外形を有する、請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項6】
前記第1フィルタ回路基板は、熱カシメによって前記樹脂部材の一方の面に固定されており、前記第2フィルタ回路基板は、熱カシメによって前記樹脂部材の他方の面に固定されている、請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項7】
前記第1フィルタ回路基板の前記他方の面には前記少なくとも1つの第1フィルタ部品よりも小型の電子部品が実装され、前記第2フィルタ回路基板の前記他方の面には前記少なくとも1つの第2フィルタ部品よりも小型の電子部品が実装されており、
前記樹脂部材の一方の面には、前記少なくとも1つの第1フィルタ部品よりも小型の電子部品を収容する第1凹部が形成され、前記樹脂部材の他方の面には、前記少なくとも1つの第2フィルタ部品よりも小型の電子部品を収容する第2凹部が形成されている、
請求項2に記載の電動圧縮機。
【請求項8】
前記第1フィルタ回路基板の前記他方の面と前記樹脂部材との間及び前記第2フィルタ回路基板の前記他方の面と前記樹脂部材との間のそれぞれに放熱部材が配置されている、請求項2に記載の電動圧縮機。
【請求項9】
前記フィルタ回路部は、前記第1フィルタ回路基板の前記一方の面上に配置されて前記少なくとも1つの第1フィルタ部品を収容する第1ケース部材と、前記第2フィルタ回路基板の前記一方の面に配置されて前記少なくとも1つの第2フィルタ部品を収容する第2ケース部材と、をさらに含む、請求項2に記載の電動圧縮機。
【請求項10】
前記第1ケース部材内の隙間及び前記第2ケース部材内の隙間が樹脂によって埋められている、請求項9に記載の電動圧縮機。
【請求項11】
前記フィルタ回路部は、前記インバータ収容部内においてボルトによって固定されていると共に、前記第2ケース部材と前記インバータ収容部の底部との間及び前記第1ケース部材と前記カバー部材との間の少なくとも一方に防振部材が介在した状態で前記インバータ収容部の底部と前記カバー部材とによって挟持されている、
請求項9に記載の電動圧縮機。
【請求項12】
前記少なくとも1つの第1フィルタ部品及び前記少なくとも1つの第2フィルタ部品の一方は複数の電解コンデンサを含み、前記少なくとも1つの第1フィルタ部品及び前記少なくとも1つの第2フィルタ部品の他方はノーマルモードチョークコイル及びコモンモードチョークコイルを含む、請求項1~11のいずれか一つの記載の電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動圧縮機の一例が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された電動圧縮機は、車両用空調装置に用いられるインバータ一体型電動圧縮機である。特許文献1に記載された電動圧縮機は、モータが内蔵されたハウジングと、モータを駆動するためのインバータと、ハウジングに設けられたインバータ収容部と、インバータ収容部を閉塞するカバーと、を有する。インバータは、直流電力を三相交流電力に変換するための6個のパワースイッチング素子と、6個のパワースイッチング素子を制御する制御回路が実装されたインバータ制御基板と、フィルタ部品であるコイルやコンデンサなどが実装されたフィルタ回路基板と、を含み、これらがインバータ収容部内に収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-143594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、自動車の電動化に伴う電子制御ユニットの高度化などにより、車両用空調装置に用いられる電動圧縮機においてもさらなる電磁ノイズ対策が求められている。そのような電磁ノイズ対策の一つとして、例えばこれまでよりもインダクタンス値の大きいコイルを採用することが考えられる。しかし、インダクタンス値の大きいコイルは部品サイズが大きい。そのため、単にインダクタンス値の大きいコイルを採用すると、フィルタ回路基板の投影面積の拡大、ひいては、フィルタ回路基板を収容するインバータ収容部の投影面積の拡大を招く。インバータ収容部の投影面積が拡大すると、電動圧縮機の設置場所が制限されたり、インバータ収容部を閉塞するカバーが振動の影響を受けやすくなってカバーの振動に起因する騒音が増大したりするおそれがあるので好ましくない。
【0005】
そこで、本発明は、電磁ノイズ対策のためのフィルタ部品が大型化したり、フィルタ部品の個数が増加したりした場合であっても、インバータ収容部の投影面積の拡大を抑制することができる電動圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によると、電動圧縮機が提供される。提供される電動圧縮機は、回転軸を回転させるモータ及び前記回転軸の回転によって駆動される圧縮機構を収容するハウジングと、前記ハウジングと一体的に設けられ、開口部を有し、前記モータを駆動するインバータを収容するインバータ収容部と、前記インバータ収容部の前記開口部を閉塞するカバー部材と、を有する。前記インバータは、前記モータに給電するインバータ回路部と、電磁ノイズを低減するためのフィルタ回路部と、を有する。前記フィルタ回路部は、少なくとも1つの第1フィルタ部品が実装された第1フィルタ回路基板と、少なくとも1つの第2フィルタ部品が実装された第2フィルタ回路基板と、を含み、前記第1フィルタ回路基板及び前記第2フィルタ回路基板は、互いに電気的に接続されていると共に、板状の樹脂部材を挟んで重ねられた状態で、前記インバータ収容部に収容されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電磁ノイズ対策のためのフィルタ部品が大型化したり、フィルタ部品の個数が増加したりした場合であっても、インバータ収容部の投影面積の拡大を抑制することができる電動圧縮機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る電動圧縮機の概略縦断面図である。
図2】インバータ及びインバータ収容部を示す概略斜視図である。
図3】フィルタ回路部の断面図である。
図4】フィルタ回路部の分解斜視図である。
図5】樹脂部材の斜視図である。
図6】樹脂部材の部分拡大断面図である。
図7】フィルタ回路部の変形例を示す斜視図である。
図8】フィルタ回路部の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。なお、以下の「第1」、「第2」、・・・などの用語は、単に類似の要素を区別するために用いられ、それらが付された要素を限定等するものではない。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る電動圧縮機1の概略縦断面図である。実施形態に係る電動圧縮機1は、インバータを一体に有するインバータ一体型電動圧縮機である。電動圧縮機1は、車両用空調装置に用いられる。つまり、電動圧縮機1は、車両に搭載されて車両用空調装置の冷媒回路の一部を構成し、冷媒を圧縮して吐出するように構成される。
【0011】
電動圧縮機1は、回転軸2と、モータ3と、圧縮機構4と、ハウジング5と、インバータ6と、インバータ収容部7と、カバー部材8と、を有する。
【0012】
回転軸2は、図示省略の軸受によってハウジング5に回転自在に支持されている。モータ3は、三相同期モータ(ブラシレスDCモータ)であり、給電により駆動されて回転軸2を回転させる。圧縮機構4は、例えばスクロール圧縮機構であり、回転軸2の回転によって駆動される。ハウジング5は、円筒状の断面を有し、回転軸2、モータ3及び圧縮機構4を収容する。ハウジング5内において、モータ3及び圧縮機構4は、回転軸2の軸方向に直列に配置されている。
【0013】
インバータ6は、モータ3に給電してモータ3を駆動する。インバータ6は、モータ3に給電するインバータ回路部20と、電磁ノイズを低減するためのフィルタ回路部30と、を有する。インバータ収容部7は、ハウジング5と一体に設けられており、インバータ6を収容する。具体的には、インバータ収容部7は、ハウジング5のモータ3側の端部に設けられている。本実施形態において、インバータ収容部7は、ハウジング5よりも大きな投影面積を有している。インバータ収容部7は、底壁71と、底壁71の周縁から立ち上がる周壁73と、によって形成されており、底壁71に対向する開口部75を有する。そして、インバータ6を構成するインバータ回路部20及びフィルタ回路部30がインバータ収容部7に収容され、インバータ収容部7の開口部75がカバー部材8によって閉塞されている。カバー部材8は、図示省略のボルトによりインバータ収容部7の周壁(ハウジング5の一部でもある。)に固定されている。
【0014】
インバータ収容部7の底壁71には、図示省略の車載バッテリからの直流電力をインバータ6(インバータ回路部20)に供給するためのHVコネクタ(高電圧コネクタ)9が取り付けられている。また、インバータ収容部の底壁71の一部は、ハウジング5内とインバータ収容部7内とを仕切る隔壁77を形成している。
【0015】
ハウジング5には、冷媒をハウジング5内に流入させるための流入口5aと、冷媒をハウジング5から流出されるための流出口5bと、が形成されている。流入口5aは、冷媒をハウジング5内の隔壁77とモータ3との間に流入させるように構成されている。流入口5aからハウジング5内に流入した冷媒は、モータ3を通過して圧縮機構4に至り、圧縮機構4によって圧縮される。そして、圧縮機構4によって圧縮された冷媒が流出口5bから流出するようになっている。
【0016】
流入口5aからハウジング5内に流入する冷媒は、前記車両用空調装置の冷媒回路において膨張弁及び蒸発器を通過した低温のガス冷媒である。したがって、流入口5aからハウジング5内に流入する冷媒によって隔壁77及びモータ3が冷却され得る。
【0017】
図1及び図2を参照してインバータ6についてさらに説明する。図2は、インバータ6及びインバータ収容部7を示す概略斜視図である。上述のように、本実施形態において、インバータ6は、モータ3に給電するインバータ回路部20と、電磁ノイズを低減するためのフィルタ回路部30と、を有する。
【0018】
インバータ回路部20は、前記車載バッテリからHVコネクタ9を介して供給される直流電力を三相交流電力に変換し、隔壁77を貫通して延びる給電線10を介してモータ3(のステータコイル3a)に供給するように構成されている。そのため、インバータ回路部20は、6つのパワースイッチング素子21と、6つのパワースイッチング素子21を制御する制御回路23が実装されたインバータ制御基板25と、を含む。
【0019】
本実施形態において、6個のパワースイッチング素子21は、隔壁77のインバータ収容部7側の面に設置されたシート状の第1放熱部材11上に載置されている。また、6個のパワースイッチング素子21のそれぞれは、アーム部材12によって第1放熱部材11に対して押圧された状態で固定されている(図1参照)。アーム部材12は、ボルト13により、インバータ収容部7内に設けられたアーム取付部14に取り付けられている。
【0020】
インバータ制御基板25には複数(ここでは7つ)の取付孔25aが形成されている。インバータ制御基板25は、図示省略の複数のボルトにより、インバータ収容部7内に設けられた基板取付部15に取り付けられている。本実施形態において、インバータ制御基板25は、カバー部材8の近くに、つまり、6個のパワースイッチング素子21から離隔して配置されている(図1参照)。そのため、6個のパワースイッチング素子21のそれぞれはインバータ制御基板25に向かって延びるリード線、さらに言えば、インバータ制御基板25を貫通して延びるリード線を有する。そして、これらのリード線がインバータ制御基板25に半田付けされることにより、6個のパワースイッチング素子21とインバータ制御基板25とが電気的に接続されている。
【0021】
フィルタ回路部30は、インバータ回路部20とHVコネクタ9との間に配置されている。図3は、フィルタ回路部30の断面図であり、図4は、フィルタ回路部30の分解斜視図である。
【0022】
図1図3及び図4を参照すると、本実施形態において、フィルタ回路部30は、第1フィルタ回路基板31と、第2フィルタ回路基板33と、を含む。
【0023】
第1フィルタ回路基板31の一方の面には、電磁ノイズ対策のための少なくとも1つのフィルタ部品(以下「第1フィルタ部品」という。)が実装されている。第1フィルタ回路基板31の前記一方の面に実装された少なくとも1つの第1フィルタ部品は、比較的大型のフィルタ部品である。前記少なくとも1つの第1フィルタ部品は、同種又は異種の複数のフィルタ部品を含み得る。特に限定されないが、本実施形態においては、複数(ここでは9個)の電解コンデンサ51が前記少なくとも1つの第1フィルタ部品として第1フィルタ回路基板の前記一方の面に実装されている。なお、第1フィルタ回路基板31の前記一方の面は、図1図3及び図4における上面であり、インバータ収容部7に収容されたときにカバー部材8側を向く面である。
【0024】
ここで、図には示されていないが、第1フィルタ回路基板31には前記少なくとも1つの第1フィルタ部品(ここでは電解コンデンサ51)に比べて小型の電子部品も複数実装されている。これら小型の電子部品の少なくとも一部は、第1フィルタ回路基板31の他方の面(図1図3及び図4における下面であり、インバータ収容部7に収容されたときにインバータ収容部7の底部側を向く面である。)に、さらに言えば、第1フィルタ回路基板31の前記他方の面における、複数の電解コンデンサ51の下方の範囲を避けた位置に実装されている。
【0025】
第2フィルタ回路基板33の一方の面には、電磁ノイズ対策のための少なくとも1つのフィルタ部品(以下「第2フィルタ部品」という。)が実装されている。第2フィルタ回路基板33の前記一方の面に実装された少なくとも1つの第2フィルタ部品は、前記少なくとも1つの第1フィルタ部品と同様、比較的大型のフィルタ部品であり、同種又は異種の複数のフィルタ部品を含み得る。特に限定されないが、本実施形態においては、ノーマルモードチョークコイル53、コモンモードチョークコイル55、Xコンデンサ及びYコンデンサが前記少なくとも1つの第2フィルタ部品として第2フィルタ回路基板33の前記一方の面に実装されている。但し、前記Xコンデンサ及び前記Yコンデンサについては図に示されていない。なお、第2フィルタ回路基板33の前記一方の面は、図1図3及び図4における下面であり、インバータ収容部7に収容されたときにインバータ収容部7に底部側を向く面である。
【0026】
ここで、図には示されていないが、第2フィルタ回路基板33には前記少なくとも1つの第2フィルタ部品(ここではノーマルモードチョークコイル53、コモンモードチョークコイル55、前記Xコンデンサ及び前記Yコンデンサ)に比べて小型の電子部品も複数実装されている。これら小型の電子部品の少なくとも一部は、第2フィルタ回路基板33の他方の面(図1図3及び図4における上面であり、インバータ収容部7に収容されたときにカバー部材8側を向く面である。)に、さらに言えば、第2フィルタ回路基板33の他方の面における、ノーマルモードチョークコイル53、コモンモードチョークコイル55、前記Xコンデンサ及び前記Yコンデンサの下方の範囲を避けた位置に実装されている。
【0027】
なお、以下では、前記少なくとも1つの第2フィルタ部品としてのノーマルモードチョークコイル53、コモンモードチョークコイル55、前記Xコンデンサ及び前記Yコンデンサを、単に「ノーマルモードチョークコイル53及びコモンモードチョークコイル55等」ということもある。
【0028】
本実施形態において、第1フィルタ回路基板31及び第2フィルタ回路基板33は、互いに電気的に接続されていると共に、第1フィルタ回路基板31及び第2フィルタ回路基板33が板状の樹脂部材35を挟んで重ねられた状態で、インバータ収容部7に収容されている。具体的には、第1フィルタ回路基板31及び第2フィルタ回路基板33は、互いに電気的に接続されていると共に、第1フィルタ回路基板31の前記他方の面(電解コンデンサ51が実装されていない面)と第2フィルタ回路基板33の前記他方の面(ノーマルモードチョークコイル53及びコモンモードチョークコイル55等が実装されていない面)とが板状の樹脂部材35を挟んで対向するように配置された状態で、インバータ収容部7に収容されている。以下、詳細に説明する。
【0029】
まず、樹脂部材35について説明する。図5は、樹脂部材35の斜視図である。本実施形態において、樹脂部材35は、第1フィルタ回路基板31と第2フィルタ回路基板33とを電気的に接続するための金属製の一対のバスバー351,351と、一対のバスバー351,351を保持する樹脂製の本体部352と、本体部352の内部に配置されて電磁ノイズを遮蔽する金属製の遮蔽板41と、を含む。換言すれば、樹脂部材35は、一対のバスバー351,351を有すると共に、遮蔽板41を内蔵している。具体的には、本実施形態において、樹脂部材35は、一対のバスバー351,351及び遮蔽板41がインサートされた板状の樹脂成形体として形成されている。また、本実施形態において、樹脂部材35は、第1フィルタ回路基板31の外形に対応する外形(略一致する外形)を有して形成されている。
【0030】
樹脂部材35の本体部352は、所定の幅を有する周縁部352aが周縁部352a以外の内側部352bに対して厚さ方向の両側に隆起した断面略H字状の板状に形成されている。つまり、本体部352の両面、すなわち、樹脂部材35の両面は、周縁部352aに対して内側部352bが凹んで形成されている。
【0031】
一対のバスバー351,351は、本体部352の周縁部352aに所定の間隔をあけて配置されている。一対のバスバー351,351のそれぞれは、本体部352の周縁部352aを厚さ方向に貫通しており、周縁部352aから厚さ方向の一方側(図1図3図5における上側)に突出した第1突出部351aと、本体部352の周縁部352aから厚さ方向の他方側(図1図3図5における下側)に突出した第2突出部351bと、を有する。
【0032】
図6は、樹脂部材35の部分拡大断面図であり、バスバー351及びその周辺部を示している。図6に示されるように、本実施形態において、バスバー351は、十字状の端子として形成されている。バスバー351は、第1フィルタ回路基板31と第2フィルタ回路基板33とを電気的に接続するための導電部3511であって、本体部352の周縁部352aを厚さ方向に貫通して延びる導電部3511と、導電部3511に交差して延びると共に本体部352によって保持された被保持部3513と、を有する。そして、導電部3511の一方の端部が第1突出部351aを形成し、導電部3511の他方の端部が第2突出部351bを形成している。
【0033】
より具体的には、本実施形態において、本体部352の周縁部352aには厚さ方向に貫通する貫通孔353が形成されており、この貫通孔353にバスバー351が配置されている。そして、バスバー351の導電部3511は、貫通孔353内を軸方向に延びると共に、一方の端部が第1突出部351aとして貫通孔353の一方側(図6における上側)から突出し、他方の端部が第2突出部351bとして貫通孔353の他方側(図6における下側)から突出している。被保持部3513は、貫通孔353の軸方向に直交する方向に延びると共に、両端部が貫通孔353の周壁に、すなわち、本体部352に埋没しており、これによって、被保持部3513、ひいては、バスバー351が本体部352によって保持されている。
【0034】
つまり、本実施形態において、バスバー351は、被保持部3513の両端部のみが本体部352(すなわち、樹脂部)に埋没しており、それ以外の部分は本体部352から露出している。さらに、本実施形態において、バスバー351の導電部3511は、貫通孔353の周壁、つまり、本体部352に接触していない。
【0035】
また、特に限定されないが、本実施形態において、遮蔽板41は、図4図5中に破線で示されるように、本体部352の内側部352bに概ね対応した外形を有するように形成されている。
【0036】
第1フィルタ回路基板31は、複数の電解コンデンサ51が実装されていない前記他方の面が樹脂部材35の一方の面(図1図3図5における上面)上に載置された状態で樹脂部材35に取り付けられている。より具体的には、第1フィルタ回路基板31は、複数の電解コンデンサ51が実装されていない前記他方の面が樹脂部材35の本体部352の一方の面(図1図3図5における上面)側における周縁部352a上に載置された状態で樹脂部材35に取り付けられている。
【0037】
ここで、樹脂部材35の前記一方の面には、当該一方の面から突出する複数(ここでは4つ)の第1ピン部355が設けられている。具体的には、複数(4つ)の第1ピン部355は、樹脂部材35の本体部352の前記一方の面側の周縁部352a上に周方向に互いに間隔をあけて立設されている。また、第1フィルタ回路基板31の周縁部近傍には、樹脂部材35の複数の第1ピン部355に対応するように複数(複数の第1ピン部355と同数、すなわち、4つ)の第1ピン挿通孔311が形成されている。そして、第1フィルタ回路基板31が樹脂部材35に取り付けられる際に樹脂部材35の複数の第1ピン部355のそれぞれが対応する第1フィルタ回路基板31の第1ピン挿通孔311に挿通され、その後、樹脂部材35の複数の第1ピン部355のそれぞれの先端部が熱カシメされる。これにより、第1フィルタ回路基板31と樹脂部材35とが位置合わせされ、且つ、第1フィルタ回路基板31が樹脂部材35の前記一方の面に固定されている。
【0038】
また、第1フィルタ回路基板31には、樹脂部材35の一対のバスバー351,351に対応する一対の第1バスバー挿通孔313,313が形成されている。そして、第1フィルタ回路基板31が樹脂部材35に取り付けられる際に樹脂部材35の一対のバスバー351,351の第1突出部351aが第1フィルタ回路基板31の一対の第1バスバー挿通孔313,313に挿通され、及び、樹脂部材35の一対のバスバー351,351の第1突出部351aが第1フィルタ回路基板31に半田付けされる。これにより、樹脂部材35の一対のバスバー351,351と第1フィルタ回路基板31とが電気的に接続されている。
【0039】
ここで、上述のように、バスバー351の第1突出部351aは、バスバー351の導電部3511の一部であり、バスバー351の導電部3511は、大部分が貫通孔353内に位置し、且つ、本体部352(樹脂部)に接触していない。また、バスバー351においては、第1突出部351aから離れた位置にある、被保持部3513の両端部のみが本体部352に埋没している。そのため、第1突出部351aが第1フィルタ回路基板31に半田付けされる際の熱が拡散するのが抑制されて半田品質が安定する。また、第1突出部351aが第1フィルタ回路基板31に半田付けされる際の熱によって本体部352が溶融、変形等してしまうことが防止される。
【0040】
第1フィルタ回路基板31の前記他方の面に実装されている上述の小型の電子部品は、樹脂部材35の本体部352の前記一方の面側の内側部352bに収容される。したがって、樹脂部材35(の本体部352)の前記一方の面側の内側部352bが本発明の「第1凹部」に相当する。
【0041】
第2フィルタ回路基板33は、ノーマルモードチョークコイル53及びコモンモードチョークコイル55等が実装されていない前記他方の面が樹脂部材35の他方の面(図1図3図5における下面)上に載置された状態で樹脂部材35に取り付けられている。具体的には、第2フィルタ回路基板33は、ノーマルモードチョークコイル53及びコモンモードチョークコイル55等が実装されていない前記他方の面が樹脂部材35の本体部352の他方の面(図1図3図5における下面)側における周縁部352a上に載置された状態で樹脂部材35に取り付けられている。
【0042】
ここで、樹脂部材35の前記一方の面と同様、樹脂部材35の前記他方の面には、当該他方の面から突出する複数(ここでは4つ)の樹脂製の第2ピン部356が設けられている。但し、図5にはそのうちの2つしか示されていない。具体的には、複数(4つ)の第2ピン部356は、樹脂部材35の本体部352の前記他方の面側の周縁部352a上に周方向に互いに間隔をあけて立設されている。また、第2フィルタ回路基板33の周縁部近傍には、樹脂部材35の複数の第2ピン部356に対応するように複数(複数の第2ピン部356と同数、すなわち、4つ)の第2ピン挿通孔331が形成されている。そして、第2フィルタ回路基板33が樹脂部材35に取り付けられる際に樹脂部材35の複数の第2ピン部356のそれぞれが対応する第2フィルタ回路基板33の第2ピン挿通孔331に挿通され、その後、樹脂部材35の複数の第2ピン部356のそれぞれの先端部が熱カシメされる。これにより、第2フィルタ回路基板33と樹脂部材35とが位置合わせされ、且つ、第2フィルタ回路基板33が樹脂部材35の前記他方の面に固定されている。
【0043】
また、第2フィルタ回路基板33には、樹脂部材35の一対のバスバー351,351に対応する一対の第2バスバー挿通孔333,333が形成されている。そして、第2フィルタ回路基板33が樹脂部材35に取り付けられる際に樹脂部材35の一対のバスバー351,351の第2突出部351bが第2フィルタ回路基板33の一対の第2バスバー挿通孔333,333に挿通され、及び、一対のバスバー351,351の第2突出部351bが第2フィルタ回路基板33に半田付けされる。これにより、樹脂部材35の一対のバスバー351,351と第2フィルタ回路基板33とが電気的に接続されている。さらに言えば、第1フィルタ回路基板31と第2フィルタ回路基板33とが樹脂部材35(の一対のバスバー351、351)を介して電気的に接続されている。
【0044】
ここで、上述のように、バスバー351の第2突出部351bは、バスバー351の導電部3511の一部であり、バスバー351の導電部3511は、大部分が貫通孔353内に位置し、且つ、本体部352(樹脂部)に接触していない。また、バスバー351においては、第2突出部351bから離れた位置にある、被保持部3513の両端部のみが本体部352に埋没している。そのため、第2突出部351bが第2フィルタ回路基板33に半田付けされる際の熱が拡散するのが抑制されて半田品質が安定する。また、第2突出部351bが第2フィルタ回路基板33に半田付けされる際の熱によって本体部352が溶融、変形等してしまうことが防止される。
【0045】
第2フィルタ回路基板33の前記他方の面に実装されている上述の小型の電子部品は、樹脂部材35の本体部352の前記他方の面側の内側部352bに収容される。したがって、樹脂部材35(の本体部352)の前記他方の面側の内側部352bが本発明の「第2凹部」に相当する。
【0046】
以上のようにして、第1フィルタ回路基板31及び第2フィルタ回路基板33が樹脂部材35を介して一体化され、且つ、第1フィルタ回路基板31と第2フィルタ回路基板33とが電気的に接続される。
【0047】
本実施形態において、フィルタ回路部30は、第1ケース部材37と、第2ケース部材39と、をさらに含む。
【0048】
第1ケース部材37は、例えば硬質樹脂から形成されている。第1ケース部材37は、第1フィルタ回路基板31の前記一方の面に取り付けられて第1フィルタ回路基板31の前記一方の面に実装された複数の電解コンデンサ51を収容するように構成されている。
【0049】
本実施形態において、第1ケース部材37は、次のようにして第1フィルタ回路基板31の前記一方の面に取り付けられている。
【0050】
まず、軟化状態又は溶融状態にある所定量の樹脂Rが第1ケース部材37内に充填される。次いで、第1フィルタ回路基板31と第1ケース部材37とが位置合わせされ、第1ケース部材37が第1フィルタ回路基板31の前記一方の面に取り付けられる。第1フィルタ回路基板31と第1ケース部材37とは、第1ケース部材37に設けられた2つの第3ピン部(図には示されていない。)が第1フィルタ回路基板31に形成された第3ピン挿通孔315a及び第1ピン挿通長孔315bに挿通されることで位置合わせされる。その後、第1ケース部材37内に充填された樹脂Rが硬化させられる。これにより、第1ケース部材37が第1フィルタ回路基板31の前記一方の面上に固定される。また、第1ケース部材37内の隙間、つまり、電解コンデンサ51同士の隙間や電解コンデンサ51と第1ケース部材37との隙間が樹脂Rによって埋められる。なお、樹脂Rとしては、耐熱性熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂が用いられるのが好ましい。
【0051】
第2ケース部材39は、第1ケース部材37と同様、例えば硬質樹脂から形成されている。第2ケース部材39は、第2フィルタ回路基板33の前記一方の面に取り付けられて第2フィルタ回路基板33の前記一方の面に実装されたノーマルモードチョークコイル53等を収容するように構成されている。
【0052】
本実施形態において、第2ケース部材39は、第1ケース部材37と同様、次のようにして第2フィルタ回路基板33の前記一方の面に取り付けられている。
【0053】
まず、軟化状態又は溶融状態にある所定量の樹脂Rが第2ケース部材39内に充填される。次いで、第2フィルタ回路基板33と第2ケース部材39とが位置合わせされ、第2ケース部材39が第2フィルタ回路基板33の前記一方の面に取り付けられる。第2フィルタ回路基板33と第2ケース部材39とは、第2ケース部材39に設けられた2つの第4ピン部391が第2フィルタ回路基板33に形成された第4ピン挿通孔335a及び第2ピン挿通長孔335bに挿通されることで位置合わせされる。その後、充填された樹脂Rが硬化させられる。これにより、第2ケース部材39が第2フィルタ回路基板33の前記一方の面上に固定される。また、第2ケース部材39内の隙間、つまり、ノーマルモードチョークコイル53等の部品間の隙間やノーマルモードチョークコイル53等と第2ケース部材39との隙間が樹脂Rによって埋められる。
【0054】
このようにして、第1フィルタ回路基板31及び第2フィルタ回路基板33が樹脂部材35を介して一体化されることに加えて、第1ケース部材37及び第2ケース部材39も一体化される。つまり、本実施形態において、フィルタ回路部30は、第1フィルタ回路基板31と、第2フィルタ回路基板33と、樹脂部材35と、第1ケース部材37と、第2ケース部材39と、を含み、これらが一体化されて形成されている。
【0055】
このようなフィルタ回路部30は、複数のボルト16(図1にはそのうちの1つのみが示されている。)により、インバータ収容部7内に設けられたフィルタ取付部17に取り付けられて固定されている。
【0056】
具体的には、本実施形態において、第1フィルタ回路基板31、第2フィルタ回路基板33、樹脂部材35、第1ケース部材37及び第2ケース部材39のそれぞれには、互いに対応する複数(ここでは4つ)の取付孔が形成されている。すなわち、第1フィルタ回路基板31には4つの第1取付孔317が形成され、第2フィルタ回路基板33には4つの第2取付孔337が形成されている。また、樹脂部材35には4つの第3取付孔357が形成され、第1ケース部材37には4つの第4取付孔371が形成され、第2ケース部材39には4つの第5取付孔393が形成されている。ここで、第3取付孔357、第4取付孔371、及び第5取付孔393は、成形時にインサートされた金属製の円筒スリーブによって形成されてもよい。
【0057】
フィルタ回路部30は、第2ケース部材39がインバータ収容部7の底部側を向いた状態でインバータ収容部7に収容される。そして、第1ケース部材37の第4取付孔371、第1フィルタ回路基板31の第1取付孔317、樹脂部材35の第3取付孔357、第2フィルタ回路基板33の第2取付孔337及び第2ケース部材39の第5取付孔393の順に挿通されたボルト16がフィルタ取付部17に形成されたねじ穴に螺合される。これにより、第1フィルタ回路基板31、第2フィルタ回路基板33、樹脂部材35、第1ケース部材37及び第2ケース部材39がインバータ収容部7内で一体的に固定される。
【0058】
インバータ回路部20及びフィルタ回路部30のインバータ収容部7への設置が完了すると、カバー部材8がインバータ収容部7の周壁73に固定される。
【0059】
ここで、本実施形態においては、フィルタ回路部30がインバータ収容部7に収容される際にシート状の第1防振部材18がインバータ収容部7の底部に設置され、又は、第1防振部材18が第2ケース部材39の外面に取り付けられる。また、フィルタ回路部30がインバータ収容部7に収容される際にシート状の第2防振部材19が第1ケース部材37の外面上に取り付けられ、又は、カバー部材8がインバータ収容部7の周壁に固定される際に第2防振部材19が第1ケース部材37の外面若しくはカバー部材8の内面に取り付けられる。これにより、フィルタ回路部30は、ボルト16によりフィルタ取付部17に取り付けられて固定されることに加えて、第2ケース部材39とインバータ収容部7の底部との間に第1防振部材18が介在し、及び、第1ケース部材37とカバー部材8との間に第2防振部材19が介在した状態で、インバータ収容部7の底部とカバー部材8とによって挟持される。
【0060】
実施形態に係る電動圧縮機1によれば、例えば以下のような効果が得られる。
【0061】
実施形態に係る電動圧縮機1において、フィルタ回路部30は、前記少なくとも1つの第1フィルタ部品としての複数の電解コンデンサ51が実装された第1フィルタ回路基板31と、前記少なくとも1つの第2フィルタ部品としてのノーマルモードチョークコイル53及びコモンモードチョークコイル55等が実装された第2フィルタ回路基板33と、を含む。そして、第1フィルタ回路基板31及び第2フィルタ回路基板33は、互いに電気的に接続されていると共に、板状の樹脂部材35を挟んで重ねられた状態で、インバータ収容部7に収容されている。
【0062】
つまり、本実施形態においては、電磁ノイズ対策用の複数のフィルタ部品(電解コンデンサ51、ノーマルモードチョークコイル53及びコモンモードチョークコイル55等)が2つの回路基板(第1フィルタ回路基板31、第2フィルタ回路基板33)に分散して実装され、これら2つの回路基板(第1フィルタ回路基板31、第2フィルタ回路基板33)は、インバータ収容部7内で樹脂部材35を挟んで例えば上下に配置され得る。そのため、フィルタ部品が大型化したり、フィルタ部品の個数が増加したりした場合であっても、フィルタ回路部30を構成するフィルタ回路基板の投影面積が拡大すること、ひいては、インバータ収容部7の投影面積が拡大することが抑制される。したがって、電動圧縮機1の設置場所が制限されたり、カバー部材8の振動に起因する騒音が増大したりすることも抑制される。また、電解コンデンサ51と、ノーマルモードチョークコイル53及びコモンモードチョークコイル55とが別々の回路基板に実装されているので、これらの間の熱干渉が抑制される。
【0063】
特に、本実施形態において、複数の電解コンデンサ51は第1フィルタ回路基板31の前記一方の面に実装され、ノーマルモードチョークコイル53及びコモンモードチョークコイル55等は第2フィルタ回路基板33の前記一方の面に実装されている。そして、第1フィルタ回路基板31の前記他方の面と第2フィルタ回路基板33の前記他方の面とが樹脂部材35を挟んで対向するように配置された状態でインバータ収容部7に収容されている。そのため、第1フィルタ回路基板31及び第2フィルタ回路基板33がそれぞれ板状の樹脂部材35によって補強された形となって、フィルタ回路基板、ひいては、フィルタ回路部30の耐振性が向上する。
【0064】
また、樹脂部材35は、第1フィルタ回路基板31と第2フィルタ回路基板33とを電気的に接続する金属製の一対のバスバー351,351を有すると共に、電磁ノイズを遮蔽する遮蔽板41を内蔵している。そのため、第1フィルタ回路基板31と第2フィルタ回路基板33とを電気的に接続するための部品等を別途用意する必要がなく、第1フィルタ回路基板31と第2フィルタ回路基板33とのコンパクトで安定した接続構造が実現可能であり、第1フィルタ回路基板31と第2フィルタ回路基板33との間における放射ノイズの干渉に伴う誤動作等も防止される。
【0065】
また、樹脂部材35は、第1フィルタ回路基板31の外形に対応する外形を有する。そのため、樹脂部材35が第1フィルタ回路基板31と第2フィルタ回路基板33との間の絶縁壁として機能し、第1フィルタ回路基板31と第2フィルタ回路基板33との絶縁距離が確保され得る。
【0066】
また、第1フィルタ回路基板31は、熱カシメによって樹脂部材35の前記一方の面に固定され、第2フィルタ回路基板33は、熱カシメによって樹脂部材35の前記他方の面に固定されている。そのため、第1フィルタ回路基板31及び第2フィルタ回路基板33を一体化(モジュール化)することができ、フィルタ部品を2つの回路基板に分散して実装したことによる、フィルタ回路部30のインバータ収容部7への組付け性の低下が抑制される。
【0067】
また、第1フィルタ回路基板31の前記他方の面に実装された小型の電子部品は、樹脂部材35の本体部352の前記一方の面側の凹んだ内側部352bに収容され、第2フィルタ回路基板33の前記他方の面に実装された小型の電子部品は、樹脂部材35の本体部352の前記他方の面側の凹んだ内側部352bに収容される。つまり、樹脂部材35の前記一方の面及び前記他方の面には、それぞれ小型の電子部品を収容する凹部が形成されている。そのため、フィルタ回路部30を構成するフィルタ回路基板の投影面積が拡大すること、ひいては、インバータ収容部7の投影面積が拡大することがさらに効果的に抑制される。また、複数の電解コンデンサ51、ノーマルモードチョークコイル53及びコモンモードチョークコイル55等の小型の電子部品への干渉等も抑制される。
【0068】
また、フィルタ回路部30は、第1フィルタ回路基板31の前記一方の面上に配置されて複数の電解コンデンサ51を収容する第1ケース部材37と、第2フィルタ回路基板33の前記一方の面に配置されてノーマルモードチョークコイル53及びコモンモードチョークコイル55等を収容する第2ケース部材39と、を含む。つまり、複数の電解コンデンサ51が第1ケース部材37によって振動に対して保護され得ると共に、ノーマルモードチョークコイル53及びコモンモードチョークコイル55等が第2ケース部材39によって振動に対して保護され得る。そのため、フィルタ回路部30の耐振性が向上する。
【0069】
また、第1ケース部材37内の隙間及び第2ケース部材39内の隙間が樹脂によって埋められている。そのため、フィルタ回路部30の耐振性がさらに向上すると共に、第1フィルタ回路基板31及び第2フィルタ回路基板33に加えて、さらに第1ケース部材37及び第2ケース部材39も一体化(モジュール化)することができ、フィルタ回路部30のインバータ収容部7への組付け性も向上する。
【0070】
また、フィルタ回路部30は、ボルト16によって固定されていると共に、第2ケース部材39とインバータ収容部7の底部との間に第1防振部材18が介在し、及び、第1ケース部材37とカバー部材8との間に第2防振部材19が介在した状態で、インバータ収容部7の底部とカバー部材8とによって挟持されている。そのため、フィルタ回路部30がインバータ収容部7内でしっかりと固定され、高い耐振性が得られる。
【0071】
なお、上述の実施形態において、ハウジング5とインバータ収容部7とは一体形成されている。但し、これに限られるものではない。インバータ収容部7は、ハウジング5と一体的に設けられていればよく、例えば、ハウジング5とインバータ収容部7とが別体で形成され、これらが組み合わされて一体化されてもよい。
【0072】
また、上述の実施形態では、第1フィルタ回路基板31の前記一方の面に複数の電解コンデンサ51が実装され、第2フィルタ回路基板33の前記一方の面にノーマルモードチョークコイル53及びコモンモードチョークコイル55等が実装されている。しかし、これに限られるものではない。電磁ノイズ対策用の複数のフィルタ部品が第1フィルタ回路基板31と第2フィルタ回路基板33とに分散して実装されていればよい。したがって、例えば上述の実施形態とは逆に、第1フィルタ回路基板31の前記一方の面にノーマルモードチョークコイル53及びコモンモードチョークコイル55等が実装され、第2フィルタ回路基板33の前記一方の面に複数の電解コンデンサ51が実装されてもよい。
【0073】
また、上述の実施形態において、樹脂部材35は、第1フィルタ回路基板31と第2フィルタ回路基板33とを電気的に接続する金属製の一対のバスバー351,351を有すると共に、電磁ノイズを遮蔽する金属製の遮蔽板41を内蔵している。しかし、これに限られるものではない。一対のバスバー351,351及び/又は遮蔽板41が省略されてもよい。一対のバスバー351,351以外の部品によって第1フィルタ回路基板31と第2フィルタ回路基板33とを電気的に接続することが可能であり、電磁ノイズのレベルが比較的低いなど遮蔽板41を必要としない場合があり得るからである。つまり、樹脂部材35は、上述の実施形態における態様以外にも、(1)一対のバスバー351,351を有するが、遮蔽板41を内蔵しない第1態様、(2)遮蔽板41を内蔵するが、一対のバスバー351,351を有しない第2態様、及び、(3)一対のバスバー351,351を有さず、且つ遮蔽板41を内蔵しない第3態様、のいずれかでも実施され得る。
【0074】
また、上述の実施形態において、樹脂部材35は、第1フィルタ回路基板31の外形に対応する外形を有して形成されている。しかし、これに限られるものではない。樹脂部材35は、第1フィルタ回路基板31の外形及び第2フィルタ回路基板33の外形の少なくとも一方の外形に対応する外形(略一致する外形)を有して形成されていればよい。好ましくは、第1フィルタ回路基板31、第2フィルタ回路基板33及び樹脂部材35は、これらの外形が略一致するように形成される。
【0075】
また、上述の実施形態において、フィルタ回路部30は、第2ケース部材39とインバータ収容部7の底部との間及び第1ケース部材37とカバー部材8との間のそれぞれに防振部材が介在した状態で、インバータ収容部7の底部とカバー部材8とによって挟持されている。しかし、これに限られるものではない。フィルタ回路部30は、第2ケース部材39とインバータ収容部7の底部との間及び第1ケース部材37とカバー部材8との間の少なくとも一方に防振部材が介在した状態で、インバータ収容部7の底部とカバー部材8とによって挟持されてもよい。
【0076】
さらに、図7図8に示されるように、フィルタ回路部30において、第1フィルタ回路基板31と樹脂部材35との間にシート状の第2放熱部材43が配置され、及び、第2フィルタ回路基板33と樹脂部材35との間にシート状の第3放熱部材45が配置されてもよい。この場合、好ましくは、第2放熱部材43は、複数の電解コンデンサ51の下方の範囲に位置するように樹脂部材35の本体部352の前記一方の面側における内側部352bに配置され、第3放熱部材45は、ノーマルモードチョークコイル53及びコモンモードチョークコイル55等の下方の範囲に位置するように樹脂部材35の本体部352の前記他方の面側における内側部352bに配置される。このようにすると、電解コンデンサ51が発した熱やノーマルモードチョークコイル53及びコモンモードチョークコイル55等が発した熱が効率よく放熱され得る。
【0077】
以上、本発明の実施形態及びその変形例について説明したが、本発明は、上述の実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいてさらなる変形が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0078】
1…電動圧縮機、2…回転軸、3…モータ、4…圧縮機構、5…ハウジング、6…インバータ、7…インバータ収容部、8…カバー部材、11…第1放熱部材、18…第1防振部材、19…第2防振部材、20…インバータ回路部、21…パワースイッチング素子、23…制御回路、25…インバータ制御基板、30…フィルタ回路部、31…第1フィルタ回路基板、33…第2フィルタ回路基板、35…樹脂部材、37…第1ケース部材、39…第2ケース部材、41…遮蔽板、43…第2放熱部材、45…第3放熱部材、51…電解コンデンサ、53…ノーマルモードチョークコイル、55…コモンモードチョークコイル、317…第1取付孔、337…第2取付孔、351…バスバー、352…本体部、352a…周縁部、352b…内側部、357…第3取付孔、371…第4取付孔、393…第5取付孔、R…樹脂
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8