(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022446
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】駆動装置、位置決め装置
(51)【国際特許分類】
G12B 5/00 20060101AFI20250206BHJP
【FI】
G12B5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127026
(22)【出願日】2023-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】和田 康太郎
(72)【発明者】
【氏名】篠平 大輔
【テーマコード(参考)】
2F078
【Fターム(参考)】
2F078CA04
2F078CA10
2F078CB08
2F078CB15
2F078CC01
2F078CC02
(57)【要約】
【課題】直線駆動と回転駆動を適切に両立させられる駆動装置等を提供する。
【解決手段】アクチュエータ1は、軸方向Tに直線駆動され、当該軸方向Tの周りに回転駆動される被駆動部材2であって、当該軸方向T視の断面が多角形状の角軸部21を備える被駆動部材2と、被駆動部材2における少なくとも角軸部21を直線駆動可能に支持しながら回転駆動される軸受部材3であって、当該角軸部21が貫通する軸方向T視の断面が多角形状の角孔部31を備える軸受部材3と、を備える。角軸部21の外周面と角孔部31の内周面の間には流体軸受が形成され、角孔部31の内周面には、流体軸受を形成する流体が供給される流体軸受溝が形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に直線駆動され、当該軸方向の周りに回転駆動される被駆動部材であって、当該軸方向視の断面が多角形状の角軸部を備える被駆動部材と、
前記被駆動部材における少なくとも前記角軸部を直線駆動可能に支持しながら回転駆動される軸受部材であって、当該角軸部が貫通する前記軸方向視の断面が多角形状の角孔部を備える軸受部材と、
を備え、
前記角軸部の外周面と前記角孔部の内周面の間には流体軸受が形成され、
前記角孔部の内周面には、前記流体軸受を形成する流体が供給される流体軸受溝が形成される、
駆動装置。
【請求項2】
シリンダ部材を備え、
前記被駆動部材は、前記シリンダ部材の内部における流体の圧力によって直線駆動されるピストン部を備える、
請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記軸受部材は、前記シリンダ部材に対して、前記軸方向の周りに回転可能に設けられる、請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記軸受部材を回転駆動するモータを備える、請求項3に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記流体軸受溝は、前記軸方向における前記ピストン部側の一端部が前記シリンダ部材の内部に開放されており、他端部が閉塞されている、請求項2から4のいずれかに記載の駆動装置。
【請求項6】
前記一端部と前記他端部の間で前記軸方向に沿って延びる複数の前記流体軸受溝が並行的に設けられる、請求項5に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記シリンダ部材および前記ピストン部の前記軸方向視の断面は、いずれも円状である、請求項2から4のいずれかに記載の駆動装置。
【請求項8】
前記角軸部の多角形状および前記角孔部の多角形状は、いずれも矩形状である、請求項1から4のいずれかに記載の駆動装置。
【請求項9】
前記流体軸受溝は、前記軸方向に沿って延びる、請求項1から4のいずれかに記載の駆動装置。
【請求項10】
対象物を回転方向に位置決めする位置決め装置であって、
前記対象物が取り付けられ、軸方向に直線駆動され、当該軸方向の周りの前記回転方向に回転駆動される被駆動部材であって、当該軸方向視の断面が多角形状の角軸部を備える被駆動部材と、
前記被駆動部材における少なくとも前記角軸部を直線駆動可能に支持しながら回転駆動される軸受部材であって、当該角軸部が貫通する前記軸方向視の断面が多角形状の角孔部を備える軸受部材と、
を備え、
前記角軸部の外周面と前記角孔部の内周面の間には流体軸受が形成され、
前記角孔部の内周面には、前記流体軸受を形成する流体が供給される流体軸受溝が形成される、
位置決め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、駆動装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体チップを基板上に実装する技術が開示されている。具体的には、半導体チップが下端部に取り付けられたZ方向(鉛直方向)に長尺のツールまたはツールホルダを、当該Z方向に下降させることで下方のステージに支持されている基板上に半導体チップを実装する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、軸状のツールホルダ(17)を支持する静圧空気軸受(18)が、ツールのZ方向の昇降(上下動)のみを許容し、Z軸の周りの回転を禁止するように設けられている。このため、ツールに半導体チップを取り付ける際に生じうる回転位置または回転角度の誤差を適切に補正できない。Z軸の周りの回転も許容するように静圧空気軸受を設けることも可能であるが、このような非接触軸受を採用する構成では、ツールの直線駆動と回転駆動を適切に両立させることが難しい。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みてなされたものであり、直線駆動と回転駆動を適切に両立させられる駆動装置等を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の駆動装置は、軸方向に直線駆動され、当該軸方向の周りに回転駆動される被駆動部材であって、当該軸方向視の断面が多角形状の角軸部を備える被駆動部材と、被駆動部材における少なくとも角軸部を直線駆動可能に支持しながら回転駆動される軸受部材であって、当該角軸部が貫通する軸方向視の断面が多角形状の角孔部を備える軸受部材と、を備える。角軸部の外周面と角孔部の内周面の間には流体軸受が形成され、角孔部の内周面には、流体軸受を形成する流体が供給される流体軸受溝が形成される。
【0007】
本態様では、被駆動部材における角軸部および軸受部材における角孔部の軸方向視の断面が、いずれも多角形状(例えば、略相似)になっている。このような軸受部材が回転駆動されると、その角孔部内の角軸部(すなわち、被駆動部材)も空回りすることなく実質的に一体的に回転駆動される。そして、角孔部を含む軸受部材は、角軸部を含む被駆動部材を直線駆動可能に支持する。ここで、角孔部の内周面に形成される流体軸受溝によって、角軸部の外周面と角孔部の内周面の間に、直線駆動および回転駆動を適切に支持する流体軸受が形成される。
【0008】
本開示の別の態様は、位置決め装置である。この位置決め装置は、対象物を回転方向に位置決めする位置決め装置であって、対象物が取り付けられ、軸方向に直線駆動され、当該軸方向の周りの回転方向に回転駆動される被駆動部材であって、当該軸方向視の断面が多角形状の角軸部を備える被駆動部材と、被駆動部材における少なくとも角軸部を直線駆動可能に支持しながら回転駆動される軸受部材であって、当該角軸部が貫通する軸方向視の断面が多角形状の角孔部を備える軸受部材と、を備える。角軸部の外周面と角孔部の内周面の間には流体軸受が形成され、角孔部の内周面には、流体軸受を形成する流体が供給される流体軸受溝が形成される。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや、これらの表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラム等に変換したものも、本開示に包含される。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、直線駆動と回転駆動を適切に両立させられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】アクチュエータの構成を模式的に示す断面図である。
【
図2】被駆動部材における角軸部およびピストン部のみを抜粋して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、図面を参照しながら、本開示を実施するための形態(以下では実施形態とも表される)について詳細に記述する。記述および/または図面においては、同一または同等の構成要素、部材、処理等に同一の符号を付して重複する記述を省略する。図示される各部の縮尺や形状は、記述の簡易化のために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施形態は例示であり、本開示の範囲を何ら限定するものではない。実施形態において提示される全ての特徴やそれらの組合せは、必ずしも本開示の本質的なものであるとは限らない。実施形態は、便宜的に、それを実現する機能毎および/または機能群毎の構成要素に分解されて提示される。但し、実施形態における一つの構成要素が、実際には別体としての複数の構成要素の組合せによって実現されてもよいし、実施形態における複数の構成要素が、実際には一体としての一つの構成要素によって実現されてもよい。
【0013】
図1は、本開示に係る駆動装置または位置決め装置の実施形態であるアクチュエータ1の構成を模式的に示す断面図である。アクチュエータ1は、被駆動部材2を、図示される直線駆動方向T(
図1における上下方向)に直線駆動し、図示される回転駆動方向Rに回転駆動する駆動装置である。直線駆動方向Tは、例えば、略柱状の被駆動部材2の中心軸の方向であり、以下では軸方向Tとも表される。また、回転駆動方向Rは、直線駆動方向Tまたは軸方向Tの周りの周方向であり、以下では回転方向Rとも表される。以下の説明では、「上」および「下」の語を、軸方向Tでもある
図1における「上」および「下」の方向を表すものとして便宜的に使用する。これらの語は、アクチュエータ1の設置方向または軸方向Tを例えば鉛直方向に限定するものではなく、アクチュエータ1の設置方向または軸方向Tは駆動目的に応じて任意である。
【0014】
アクチュエータ1は、被駆動部材2の下端部に取り付けられる半導体デバイス(典型的には、半導体チップ)等の不図示の対象物を、回転方向Rに位置決めする位置決め装置を構成してもよい。例えば、アクチュエータ1または位置決め装置は、半導体デバイスを回転方向Rにおける所望の回転位置または回転角度に位置決めした上で、被駆動部材2ごと軸方向Tに沿って下降させ、不図示の実装基板等に実装する実装装置(半導体実装装置)を構成するものでもよい。
【0015】
アクチュエータ1は、主に、被駆動部材2と、軸受部材3と、シリンダ部材4と、を備える。後述するように、被駆動部材2は、シリンダ部材4の内部における加圧空気等の流体の圧力によって、軸方向Tに沿って直線駆動される。また、後述するように、被駆動部材2は、モータ9によって回転駆動される軸受部材3を介して、回転方向Rに沿って(すなわち、軸方向Tの周りに)回転駆動される。
【0016】
全体として軸方向Tに沿って長尺の略柱状の被駆動部材2は、
図1における下から上に向かって、角軸部21と、ピストン部22と、センサロッド部23と、を順に備える。
図2は、角軸部21およびピストン部22のみを抜粋して示す斜視図である。
【0017】
角軸部21は、
図1のA-A断面を簡略的に示す
図3(被駆動部材2(角軸部21)および軸受部材3の一部のみが示される)に模式的に示されるように、軸方向T視の断面が多角形状に形成される。角軸部21の多角形状は任意であるが、図示の例では矩形状または正方形状である。軸受部材3は、被駆動部材2における角軸部21が貫通する軸方向T視の断面が多角形状の角孔部31を備える。角孔部31の多角形状は任意であるが、角軸部21の多角形状と略相似であるのが好ましく、図示の例では矩形状または正方形状である。ここで、角軸部21が角孔部31の内部を軸方向Tに貫通できるように、角孔部31の多角形状は角軸部21の多角形状より好ましくは僅かに大きく形成されている。
【0018】
角軸部21の外周面と角孔部31の内周面の間の僅かな隙間(
図3では誇張されて示されている)には、加圧空気等の流体が供給されて流体軸受5が形成される。また、後述されるように、角孔部31の内周面には、加圧空気等の流体が供給される一または複数の流体軸受溝32が形成される。
【0019】
図1において、角軸部21の上方に設けられる一または複数のピストン部22は、シリンダ部材4における円筒状のシリンダ本体41の内部に収容される。シリンダ本体41およびピストン部22(
図2)の軸方向T視の断面は、いずれも円状である。
図2に示されるように、円状断面におけるピストン部22の径またはサイズは、多角形状断面における角軸部21の径またはサイズより有意に大きい。あるいは、断面視(軸方向T視)において、角軸部21の多角形状断面はピストン部22の円状断面に包含される。図示の例では、角軸部21の多角形状断面が、ピストン部22の円状断面に内接している。
【0020】
図1において、円筒状のシリンダ本体41の内部の略円柱状の空間は、ピストン部22によって上下に区画される。シリンダ本体41の内部におけるピストン部22の上方の空間は、ピストン部22(被駆動部材2)の直線駆動のために圧力を制御可能な圧力制御室8である。例えば、不図示の流体給排部によって圧力制御室8内の流体の量を制御することで、当該圧力制御室8内の圧力を制御できる。圧力制御室8に加えてまたは代えて、シリンダ本体41の内部におけるピストン部22の下方の空間が、ピストン部22(被駆動部材2)の直線駆動のために圧力を制御可能な第2圧力制御室81として構成されてもよい。圧力制御室8と同様に、例えば、不図示の流体給排部によって第2圧力制御室81内の流体の量を制御することで、当該第2圧力制御室81内の圧力を制御できる。
【0021】
シリンダ本体41の内部における上方空間である圧力制御室8は、シリンダ部材4における上蓋部42によって上方から実質的に閉塞されている。上蓋部42の下端面421は、ピストン部22の上方移動限界を定めてもよい。また、シリンダ本体41の内部における下方空間である第2圧力制御室81は、軸受部材3によって下方から実質的に閉塞されている。これは、
図1に示されるように、軸受部材3における多角形状の角孔部31の径またはサイズが、円状のピストン部22の径またはサイズより有意に小さいためである。軸受部材3の上端面33は、ピストン部22の下方移動限界を定めてもよい。
【0022】
図1において、ピストン部22の上方に設けられるセンサロッド部23は、ピストン部22の上端面の好ましくは中央から、上方に向かって円柱状または棒状に形成される。シリンダ部材4における上蓋部42には、被測位部としてのセンサロッド部23が挿入される、軸方向Tに沿って長尺の測位穴422が形成されている。そして、測位穴422の好ましくは下端部における内周面には、センサロッド部23に対向して、その軸方向Tにおける位置を測定する測位部としてのセンサコイル423が設けられる。
【0023】
例えば、センサロッド部23の外周面には、軸方向Tに沿って、センサコイル423によって磁気的に検出可能な所定ピッチの磁気スケールが設けられる。センサコイル423による検出値または計数値は、センサロッド部23(すなわち、被駆動部材2全体)の軸方向Tにおける位置または変位を表す。このように、被測位部としてのセンサロッド部23および測位部としてのセンサコイル423によって、角軸部21およびピストン部22を含む被駆動部材2全体の軸方向Tにおける位置を把握できる。
【0024】
以上のように、被駆動部材2は、シリンダ部材4の内部における加圧空気等の流体の圧力によって、軸方向Tに沿って直線駆動される。具体的には、シリンダ部材4におけるシリンダ本体41の内部に収容されるピストン部22が、上方の圧力制御室8および/または下方の第2圧力制御室81における流体の圧力によって軸方向Tに沿って直線駆動される。ピストン部22(被駆動部材2)の軸方向Tにおける最大移動距離(ストローク)は、シリンダ本体41の上端部に設けられる上蓋部42の下端面421(上方移動限界)と、シリンダ本体41の下端部に設けられる軸受部材3の上端面33(下方移動限界)によって定められる。被駆動部材2の軸方向Tにおける位置は、センサロッド部23を測位するセンサコイル423によって把握される。
【0025】
被駆動部材2が軸方向Tに沿って直線駆動される際、被駆動部材2における角軸部21は、軸受部材3における角孔部31の内部を軸方向Tに沿って上下動する。ここで、
図3に示されるように、角軸部21の外周面と角孔部31の内周面の間には、加圧空気等の流体が供給されて流体軸受5が形成されているため、角軸部21は、角孔部31の内周面と実質的に非接触で、軸方向Tに沿って円滑に移動または摺動できる。なお、流体軸受5を形成するための加圧空気等の流体は、例えば前述の第2圧力制御室81を通じて供給されてもよい。このように、軸受部材3における角孔部31は、被駆動部材2における角軸部21を直線駆動可能に支持する。
【0026】
図3に示されるように、角孔部31の内周面には、加圧空気等の流体が供給される一または複数の流体軸受溝32が形成される。また、
図3のB-B断面を簡略的に示す
図4に模式的に示されるように、一または複数の流体軸受溝32は、対向する角軸部21の直線駆動を効果的に支持するために、軸方向T(
図4における上下方向)に沿って延びるのが好ましい。但し、少なくとも一つの流体軸受溝32は、軸方向Tに交差する方向(例えば、
図4における左右方向)に延びていてもよい。また、角孔部31の各内周面(例えば、矩形状断面を有する本実施形態に係る角孔部31は、四つの内周面を有する)に設けられる流体軸受溝32の数は任意であり、
図4に示されるように3個でもよいし、0個でもよいし(少なくとも一つの他の内周面に流体軸受溝32が設けられる)、1個でもよいし、2個でもよいし、4個以上でもよい。
【0027】
図4に模式的に示されるように、角孔部31の各内周面において、一端部としての上端部321と他端部としての下端部322の間で軸方向Tに沿って延びる複数の流体軸受溝32が、並行的または平行的に設けられてもよい。ここで、各流体軸受溝32は、軸方向Tにおけるピストン部22(
図1)側の上端部321が、シリンダ部材4におけるシリンダ本体41(
図1)の内部(または、第2圧力制御室81)に開放されている。このため、第2圧力制御室81内の加圧空気等が、各流体軸受溝32内に効果的に供給されて、流体軸受5が確実に形成される。一方、各流体軸受溝32の軸方向Tにおける下端部322は閉塞されており、各流体軸受溝32内の加圧空気等がシリンダ部材4の外部に漏れないようになっている。
【0028】
これらの流体軸受溝32は、軸受部材3における角孔部31の内周面ではなく、被駆動部材2における角軸部21の外周面に形成されてもよい。しかし、この場合、
図2に示されるように長尺の角軸部21の外周面に、少なくとも被駆動部材2の軸方向Tにおけるストロークの長さに亘って流体軸受溝32を形成する必要がある。これに対して、軸受部材3における角孔部31の内周面に流体軸受溝32を形成する場合は、被駆動部材2の軸方向Tにおけるストロークの長さによらず、
図4に示されるように角孔部31(軸受部材3)の軸方向Tにおける略全長に亘って流体軸受溝32を形成すればよい。また、被駆動部材2における角軸部21の外周面に流体軸受溝32を形成する場合、
図4における下端部322のように加圧空気等を流体軸受溝32および/またはシリンダ部材4の内部に留めることが難しい。これらの点を考慮すると、流体軸受溝32は、
図4に示されるように、軸受部材3における角孔部31の内周面に設けられるのが好ましい。
【0029】
図2に示されるように、以上のような流体軸受溝32と同様の流体軸受溝221、222が、ピストン部22の外周面に設けられてもよい。
【0030】
図示の例における二つのピストン部22のうち、上側の第1ピストン部22の外周面には、上端部が開放されて下端部が閉塞された、軸方向Tに沿って延びる一または複数の第1流体軸受溝221が、周方向に沿って設けられる。ここで、第1流体軸受溝221の上端部は、圧力制御室8に開放されている。このため、圧力制御室8内の加圧空気等が、第1流体軸受溝221内に効果的に供給されて、第1ピストン部22の外周面とシリンダ本体41の内周面の間に流体軸受が確実に形成される。
【0031】
図示の例における二つのピストン部22のうち、下側の第2ピストン部22の外周面には、下端部が開放されて上端部が閉塞された、軸方向Tに沿って延びる一または複数の第2流体軸受溝222が、周方向に沿って設けられる。ここで、第2流体軸受溝222の下端部は、第2圧力制御室81に開放されている。このため、第2圧力制御室81内の加圧空気等が、第2流体軸受溝222内に効果的に供給されて、第2ピストン部22の外周面とシリンダ本体41の内周面の間に流体軸受が確実に形成される。
【0032】
以上のように、各ピストン部22の外周面とシリンダ本体41の内周面の間に形成される各流体軸受は、角軸部21の外周面と角孔部31の内周面の間に形成される流体軸受5と共に、被駆動部材2を直線駆動可能に支持する。
【0033】
続いて、
図1を参照しながら、被駆動部材2を回転方向Rに沿って回転駆動するための機構について説明する。
【0034】
内周面における角孔部31および/または流体軸受5によって被駆動部材2における角軸部21を直線駆動可能に支持する軸受部材3の外周面は、ベルト91を介してモータ9と連結される。ベルト91は、
図1における左端でモータ9の歯車等と噛合し、
図1における右端で軸受部材3の歯車等と噛合することで、モータ9が発生させた回転動力を軸受部材3に伝達する。この結果、軸受部材3が、モータ9によって、回転方向Rに沿って回転駆動される。
【0035】
図3に示されるように、被駆動部材2における角軸部21および軸受部材3における角孔部31の軸方向視の断面が、いずれも多角形状になっている。このような軸受部材3がモータ9によって回転駆動されると、その角孔部31内の角軸部21(すなわち、被駆動部材2)が流体軸受5を介して空回りすることなく実質的に一体的に回転駆動される。
【0036】
なお、
図1に示されるように、軸受部材3の外周面と、シリンダ部材4において下側に突出する突出部43の内周面の間には、転がり軸受等の任意のタイプの回転軸受6が設けられる。回転軸受6のために、モータ9によって一体的に回転駆動される軸受部材3および被駆動部材2が、シリンダ部材4に対して回転方向Rに沿って円滑に回転できる。
【0037】
以上、本開示を実施形態に基づいて説明した。例示としての実施形態における各構成要素や各処理の組合せには様々な変形例が可能であり、そのような変形例が本開示の範囲に含まれることは当業者にとって自明である。
【0038】
なお、実施形態で説明した各装置や各方法の構成、作用、機能は、ハードウェア資源またはソフトウェア資源によって、あるいは、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働によって実現できる。ハードウェア資源としては、例えば、プロセッサ、ROM、RAM、各種の集積回路を利用できる。ソフトウェア資源としては、例えば、オペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【符号の説明】
【0039】
1 アクチュエータ、2 被駆動部材、3 軸受部材、4 シリンダ部材、5 流体軸受、9 モータ、21 角軸部、22 ピストン部、31 角孔部、32 流体軸受溝。