(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022473
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】核酸の抽出方法、組成物、化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/10 20060101AFI20250206BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20250206BHJP
A61K 8/9722 20170101ALI20250206BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20250206BHJP
A61P 17/18 20060101ALI20250206BHJP
A61K 36/05 20060101ALI20250206BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20250206BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20250206BHJP
C12N 1/10 20060101ALN20250206BHJP
C12N 1/12 20060101ALN20250206BHJP
【FI】
C12N15/10 100Z
A61Q17/04
A61K8/9722
A61K8/60
A61P17/18
A61K36/05
A61P17/00
A61K31/7088
C12N1/10
C12N1/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127086
(22)【出願日】2023-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】506141225
【氏名又は名称】株式会社ユーグレナ
(71)【出願人】
【識別番号】523043142
【氏名又は名称】東京核酸合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 充利
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健吾
(72)【発明者】
【氏名】中島 綾香
(72)【発明者】
【氏名】親泊 駿
(72)【発明者】
【氏名】松井 雅章
(72)【発明者】
【氏名】岡本 晃充
【テーマコード(参考)】
4B065
4C083
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4B065AA83X
4B065AA86X
4C083AA111
4C083AA112
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4C086ZA89
4C086ZC02
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4C088AA15
4C088BA08
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(57)【要約】
【課題】微細藻類から核酸を抽出する方法を提供する。
【解決手段】微細藻類を用意する工程と、微細藻類から核酸を抽出する工程と、核酸を抽出する工程で抽出した核酸を精製する工程と、を行い、核酸を抽出する工程では、微細藻類を含む溶液を加熱及び/又は振盪する核酸の抽出方法。微細藻類がユーグレナであるとよい。また、核酸はβ-D-グルコシル-ヒドロキシメチルウラシルを含むとよい。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細藻類を用意する工程と、
前記微細藻類から核酸を抽出する工程と、
前記核酸を抽出する工程で抽出した前記核酸を精製する工程と、を行い、
前記核酸を抽出する工程では、前記微細藻類を含む溶液を加熱及び/又は振盪する核酸の抽出方法。
【請求項2】
前記微細藻類は、ユーグレナである請求項1に記載の核酸の抽出方法。
【請求項3】
前記核酸は、β-D-グルコシル-ヒドロキシメチルウラシルを含む請求項2に記載の核酸の抽出方法。
【請求項4】
微細藻類の核酸を含有し、
化粧料組成物、医薬組成物、食品組成物から選択される組成物。
【請求項5】
前記微細藻類は、ユーグレナである請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記核酸は、β-D-グルコシル-ヒドロキシメチルウラシルを含む請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
化粧料組成物である請求項4乃至6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記化粧料組成物が、日焼け止め用である請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
微細藻類の核酸を有効成分として含有し、日焼け止め用である化粧料組成物。
【請求項10】
前記微細藻類は、ユーグレナである請求項9に記載の化粧料組成物。
【請求項11】
前記核酸は、β-D-グルコシル-ヒドロキシメチルウラシルを含む請求項10に記載の化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸の抽出方法、組成物、化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸は、DNA(デオキシリボ核酸)、RNA(リボ核酸)の総称であり、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)、ウラシル(U)からなる塩基対や、糖、リン酸で形成されている。
【0003】
核酸には、以下に示すような有用性があり、核酸原料の安定供給が求められている。核酸ユニットは、核酸医薬品や核酸分析法を提供するだけでなく、化粧料、サプリメント、生分解性プラスチックの原料にもなる天然素材である。
【0004】
グアニン(G)は、抗酸化剤になる。
グアニン(G)及びアデニン(A)は、紫外線(UVA(日焼け(sun tan)の原因)およびUVB(日焼け(sun burn)の原因)を吸収する。
チミン(T)及びシトシン(C)は、紫外線(UVB、日焼け(sun burn)の原因)を吸収する。
アデニン(A)は、生物の活動エネルギーの「通貨」である。
グアニン(G)も、エネルギーの代謝に必要である。
また、核酸ユニットは、生分解性の繊維を供給することができる。
【0005】
核酸の供給について、以下の問題が例示される。
安心・安全:人の手に触れるものや、口に入れるものは、安心な原料や安全な方法を使って供給されるべきであり、エタノール、食塩、台所洗剤成分の活用による核酸に負荷がかからない精製方法の確立が求められている。
大量な供給源:自然を破壊したり、大きなエネルギーを使ったりすることなく、3R(Reduce(減らす)、Reuse(繰り返し使う)、Recycle(再資源化する))を意識した大量な供給源を利用することが求められている。
核酸資源の安全保障:外国に頼らない安定した核酸資源の入手法の確立が求められている。
【0006】
一方で、食糧、飼料、燃料等としての利用が有望視されている生物資源として、ユーグレナ(属名:Euglena、和名:ミドリムシ)などの微細藻類が注目されている。
特許文献1には、ユーグレナを原料として用いるスフィンゴ脂質の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
藻類産業では、乾燥藻類の商業生産量は年間15,000tであり、毎年450tのDNAを抽出することができる可能性がある。
藻類から効率よく核酸を抽出する方法が望まれていた。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、核酸の抽出方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、微細藻類の核酸を含有する組成物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、微細藻類の核酸を含有する化粧料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、本発明によれば、微細藻類を用意する工程と、前記微細藻類から核酸を抽出する工程と、前記核酸を抽出する工程で抽出した前記核酸を精製する工程と、を行い、前記核酸を抽出する工程では、前記微細藻類を含む溶液を加熱及び/又は振盪する核酸の抽出方法により解決される。
このとき、前記微細藻類は、ユーグレナであるとよい。
このとき、前記核酸は、β-D-グルコシル-ヒドロキシメチルウラシルを含むとよい。
【0010】
また、前記課題は、本発明によれば、微細藻類の核酸を含有し、化粧料組成物、医薬組成物、食品組成物から選択される組成物により解決される。
このとき、前記微細藻類は、ユーグレナであるとよい。
このとき、前記核酸は、β-D-グルコシル-ヒドロキシメチルウラシルを含むとよい。
このとき、前記組成物が化粧料組成物であるとよい。
このとき、前記化粧料組成物が、日焼け止め用であるとよい。
【0011】
また、前記課題は、本発明によれば、微細藻類の核酸を有効成分として含有し、日焼け止め用である化粧料組成物により解決される。
このとき、前記微細藻類は、ユーグレナであるとよい。
このとき、前記核酸は、β-D-グルコシル-ヒドロキシメチルウラシルを含むとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、核酸の抽出方法を提供することができる。
また、本発明によれば、微細藻類の核酸を含有する組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、微細藻類の核酸を含有する化粧料組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】ユーグレナから核酸を抽出する基本操作を示す図である。
【
図3】4℃で1週間静置したサンプルの写真である。
【
図4】(左)電子レンジで加熱後に遠心分離したサンプルの写真である。(右)上清の吸光度測定の結果を示す写真である。
【
図5】(左)60℃で加温した後、遠心分離したサンプルの写真である。(右)60℃で加温した後、4℃で2日間静置したサンプルの写真である。
【
図6】(右)室温で2時間振盪したサンプルの写真である。(左)室温で2時間振盪した後、2日間4℃で静置したサンプルの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、
図1~
図7を参照しながら説明する。
本実施形態は、核酸の抽出方法、微細藻類の核酸を含有する組成物、微細藻類の核酸を含有する化粧料組成物に関するものである。
【0015】
[微細藻類]
本実施形態において、「微細藻類」とは、体長が数μm~数百μmの、人の肉眼では個々の存在が認識できないような微小な藻類を指す。
本実施形態において微細藻類として用いることのできる微細藻類の藻体は、特に限定されるものでなく、公知の微細藻類の藻体を用いることができ、原核生物及び真核生物のいずれであってもよい。
【0016】
微細藻類としては、例えば、ユーグレナ類(Euglenida)、クロレラ、ドナリエラ、ボツリオコッカス等の緑藻類(Chlorophyta)、スピルリナやイシクラゲ等の藍藻類(Cyanobacteria)、オーランチオキトリウム等のラビリンチュラ類(Labyrinthulea)、灰色藻類(Glaucophyta)、紅色藻類(Rhodophyta)、クロララクニオン藻類(Chlorarachniophyta)、クリプト藻類(Cryptophyta)、褐藻類(Phaeophyta)、プリュウロクリシスやエミリアニア等のハプト藻類(Haptophyta)、不等毛藻類(Heterokontophyta)、渦鞭毛藻類(Dinophyta)、クロメラ藻類(Chromerida)、原始紅藻類、珪藻、円石藻、渦鞭毛藻、真眼点藻、黄金色藻等に帰属する微細藻類が挙げられる。微細藻類は帰属分類群が未確定であってもよく、分子系統学的にこれらの分類群に含まれるか、又は近縁関係にあることが示されていればなおよい。
【0017】
<ユーグレナ>
本実施形態において、「ユーグレナ」とは、分類学上、ユーグレナ属(Euglena)に分類される微生物、その変種、その変異種及びユーグレナ科(Euglenaceae)の近縁種を含む。
ここで、ユーグレナ属(Euglena)とは、真核生物のうち、エクスカバータ、ユーグレノゾア門、ユーグレナ藻綱、ユーグレナ目、ユーグレナ科に属する生物の一群である。
【0018】
ユーグレナ属に含まれる種として、具体的には、Euglena chadefaudii、Euglena deses、Euglena gracilis、Euglena granulata、Euglena mutabilis、Euglena proxima、Euglena spirogyra、Euglena viridisなどが挙げられる。
ユーグレナとして、ユーグレナ・グラシリス(E.gracilis),特に、ユーグレナ・グラシリス(E.gracilis)Z株を用いることができるが、そのほか、ユーグレナ・グラシリス(E.gracilis)Z株の変異株SM-ZK株(葉緑体欠損株)や変種のE.gracilis var. bacillaris、これらの種の葉緑体の変異株等の遺伝子変異株、Astasia longa等のその他のユーグレナ類であってもよい。
【0019】
ユーグレナ属は、池や沼などの淡水中に広く分布しており、これらから分離して使用しても良く、また、既に単離されている任意のユーグレナ属を使用してもよい。
ユーグレナ属は、その全ての変異株を包含する。また、これらの変異株の中には、遺伝的方法、たとえば組換え、形質導入、形質転換等により得られたものも含有される。
【0020】
(ユーグレナ藻体)
本実施形態では、ユーグレナ藻体として、遠心分離、濾過又は沈降等によって分離したユーグレナ生細胞をそのまま用いることができる。ユーグレナ生細胞は、培養槽から収穫後そのままの状態で使用することもできるが、水若しくは生理食塩水で洗浄するのが好ましい。また、ユーグレナ藻体が水などの液体に分散した分散液の状態で用いてもよい。本実施形態において、ユーグレナ生細胞を凍結乾燥処理やスプレー乾燥処理して得たユーグレナの乾燥藻体をユーグレナ藻体として用いると好適である。
更に、ユーグレナ生細胞を超音波照射処理や、ホモゲナイズ等の機械処理を行うことにより得た藻体の機械的処理物をユーグレナ藻体として用いてもよい。また、機械的処理物に乾燥処理を施した機械的処理物乾燥物をユーグレナ藻体として用いてもよい。
【0021】
<緑藻類>
本実施形態において、「緑藻類」とは、緑藻植物門(Chlorophyta)に含まれる単細胞生物又は多細胞生物を意味し、クロロフィルによって光合成を行うものを挙げることができる。
本実施形態において、「緑藻類」とは、動物学や植物学の分類で緑藻類に分類される微生物、その変種、その変異種のすべてを含む。
具体的には、緑藻植物門の下位分類となる緑藻網(Class Trebouxiophyceae)、プラシノ藻網(Class Prasinophyceae)、トレボウクシア藻綱(Class Trebouxiophyceae)、アオサ藻綱(Class Ulvophyceae)、ペディノ藻綱(Class Pedinophyceae)、プレウラストルム藻綱(Class Pleurastrophyceae)等が挙げられる。
これらの中で、緑藻網やトレボウクシア藻網として多系統に分類されているクロレラが用いられることが望ましい。また、緑藻網に分類されるヘマトコッカスやクラミドモナスを用いてもよい。
本実施形態において、緑藻類は、その全ての変異株を包含する。また、これらの変異株の中には、遺伝的方法、たとえば組換え、形質導入、形質転換等により得られたものも含有される。
【0022】
(クロレラ)
本実施形態において、「クロレラ(パラクロレラを含む)」とは、主に緑藻植物門、緑藻綱、クロレラ属の淡水性単細胞緑藻類であって、その細胞内にクロロフィルを有し緑色に見える微生物である。
クロレラには、クロレラ属に分類される植物、その変種、その変異種の全てが含まれる。
クロレラ属の植物とは、クロロコッカス目(Chlorococcales)、オオシスティス科(Oocystaceae)に分類される植物である。
クロレラ属の微生物の種としては、プレノイドサ種、エルプソイデア種、ブルガリス種、レギラリス種、ソロキニアナ種等が挙げられる。これらの中で、広く研究に利用されているブルガリス種が用いられることが望ましい。
【0023】
(コッコミクサ)
本実施形態において、「コッコミクサ」とは、クロロコッカム科(Chlorococcaceae)のコッコミクサ(Coccomyxa)属に属する一群の微細藻類のことである。
コッコミクサとしては、例えば、コッコミクサ・ミロール(Coccomyxa minor)又はコッコミクサ・グロエオボトリディフォルミス(Coccomyxa gloeobotrydiformis)等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0024】
(ヘマトコッカス)
本実施形態において、「ヘマトコッカス」とは、緑藻網(Class Trebouxiophyceae)のヘマトコッカス(Haematococcus)属に属する一群の微細藻類のことである。
ヘマトコッカスとしては、例えば、ヘマトコッカス・プルビアリス(H. pluvialis)、ヘマトコッカス・ラクストリス(H. lacustris)、ヘマトコッカス・カペンシス(H. capensis)、ヘマトコッカス・ドロエバケンシ(H. droebakensi)、ヘマトコッカス・ジンバブエンシス(H. zimbabwiensis)等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0025】
(クラミドモナス)
本実施形態において、「クラミドモナス」とは、緑藻網(Class Trebouxiophyceae)のクラミドモナス(Chlamydomonas)属に属する一群の微細藻類のことである。
クラミドモナスとしては、例えば、クラミドモナス・アシンメトリカ(Chlamydomonas asymmetrica)、クラミドモナス・デバリアナ(Chlamydomonas debaryana)、クラミドモナス・モブシー(Chlamydomonas moewusii)、クラミドモナス・ニバリス(Chlamydomonas nivalis)、クラミドモナス・レインハルティ(Chlamydomonas reinhardtii)等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0026】
<藍藻類>
本実施形態において、「藍藻類」とは、藍色細菌門(Cyanobacteria)に含まれる細菌を意味し、藍色細菌(シアノバクテリア)とも呼ばれる真正細菌の1群であり、光合成によって酸素を生み出すという特徴を有する。単細胞で浮遊するもの、少数細胞の集団を作るもの、糸状に細胞が並んだ構造を持つものなどがあり、特に制限されないが、単細胞のものが好ましい。
本実施形態において、「藍藻類」とは、動物学や植物学の分類で藍藻類に分類される微生物、その変種、その変異種のすべてを含む。
藍藻類として、以下に示す属に示すものが例として挙げられるがこれらに限定されるものではない。
例えば、シネコシスティス(Synechocystis)属、ミクロシスティス(Microcystis)属、アルスロスピラ(Arthrospira)属、シアノテセ(Cyanothece)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、アナベナ(Anabaena)属、シネココッカス(Synechococcus)属、サーモシネココッカス(Thermosynechococcus)属、グロイオバクター(Gloeobacter)属、アカリオクロリス(Acaryochloris)属、ノストック(Nostoc)属、トリコデスミウム(Trichodesmium)属、プロクロロン(Prochloron)属、プロクロロコッカス(Prochlorococcus)属等が挙げられる。
本実施形態において、藍藻類は、その全ての変異株を包含する。また、これらの変異株の中には、遺伝的方法、たとえば組換え、形質導入、形質転換等により得られたものも含有される。
【0027】
(スピルリナ)
本実施形態において、「スピルリナ」とは、藍藻類のユレモ目アルスロスピラ属又はネンジュモ目ユレモ科スピルリナ属に属する一群の微細藻類のことである。
スピルリナとしては、例えば、スピルリナ・プラテンシス(Spirulina platensis)、スピルリナ・マキシマ(Spirulina maxima)、スピルリナ・ゲイトレリ(Spirulina geitleri)、スピルリナ・サイアミーゼ(Spirulina siamese)、スピルリナ・メイヤー(Spirulina major)、スピルリナ・サブサルサ(Spirulina subsalsa)、スピルリナ・プリンセプス(Spirulina princeps)、スピルリナ・ラキシシマ(Spirulina laxissima)、スピルリナ・クルタ(Spirulina curta)及びスピルリナ・スピルリノイデス(Spirulina spirulinoides)等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0028】
<ラビリンチュラ類>
本実施形態において、「ラビリンチュラ類」とは、動物学や植物学の分類でラビリンチュラ類に分類される微生物、その変種、その変異種のすべてを含む。
ラビリンチュラ類としては、ラビリンチュラ属(Labyrinthula)、アルトルニア属(Althornia)、アプラノキトリウム属(Aplanochytrium)、イァポノキトリウム属(Japonochytrium)、ラビリンチュロイデス属(Labyrinthuloides)、シゾキトリウム属(Schizochytrium)、ヤブレツボカビ属(Thraustochytrium)、オブロンギチトリウム属(Oblongichytrium)、パリエチキトリウム属(Parietichytrium)、又はウルケニア属(Ulkenia)、オーランチオキトリウム属(Aurantiochytrium)が挙げられ、好ましくはオーランチオキトリウム属に属する微生物であり、特に好ましくはオーランチオキトリウム・リマシナム(Aurantiochytrium limacinum)が挙げられる。
【0029】
<真正眼点藻>
本実施形態において、「真正眼点藻」とは、不等毛植物門(Heterokontophyta)の真正眼点藻綱(Eustigmatophyceae)に含まれる単細胞生物を意味する。
真正眼点藻は、その全ての変異株を包含する。また、これらの変異株の中には、遺伝的方法、たとえば組換え、形質導入、形質転換等により得られたものも含有される。
真正眼点藻としては、ユースチグマトス目(Eustigmatales)のナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属の藻類を用いることができる。
【0030】
[核酸]
本実施形態において、「核酸」とは、微細藻類のDNA(デオキシリボ核酸)およびRNA(リボ核酸)、またはその誘導体(メチル化体、酸化体、2量体)、修飾体(チオリン酸エステル体、チオール化体、リン酸化体、アミノ化体、ビオチン化体、蛍光標識体等)、人工的に作成されたDNAおよびRNAの模倣物(プライマー、非天然型核酸塩基を含む等)を意味する。
【0031】
本実施形態における核酸は、β-D-グルコシル-ヒドロキシメチルウラシル(β-D-Glucosyl-hydroxymethyluracil、CAS登録番号:53910-89-7、β-D-グルコピラノシロキシメチルウラシル(β-D-Glucopyranosyloxymethyluracil)とも言う)を含むものであるとよい。
β-D-グルコシル-ヒドロキシメチルウラシルは、塩基J(Base J)と呼ばれる特殊修飾塩基である。β-D-グルコシル-ヒドロキシメチルウラシルは、DNA中のチミン塩基の修飾によって生合成され、動物性鞭毛虫類中の核DNA及びユーグレナ中に存在するが、他原生動物や後生動物には存在しない。
【0032】
[核酸の抽出方法]
本実施形態の核酸の抽出方法は、微細藻類を用意する工程(ステップS1)と、前記微細藻類から核酸を抽出する工程(ステップS2)と、前記核酸を抽出する工程で抽出した前記核酸を精製する工程(ステップS3)と、を行い、前記核酸を抽出する工程では、前記微細藻類を含む溶液を加熱及び/又は振盪する核酸の抽出方法である。
以下、各工程について、
図1を参照して説明する。
【0033】
(微細藻類を用意する工程)
微細藻類を用意する工程では、核酸を抽出する対象となる微細藻類を用意する(ステップS1)。
原料となる微細藻類としては、核酸の分離・精製の観点から藻体の乾燥品を用いることが好ましいが、これに限定されるものではない。本実施形態において、微細藻類の生細胞を凍結乾燥処理やスプレー乾燥処理して得た乾燥藻体を原料として用いると好適である。
【0034】
また、培養後に、遠心分離、濾過又は沈降等によって回収した微細藻類の生細胞を原料とすることもできる。微細藻類の生細胞は、培養槽から収穫後そのままの状態で使用することもできるが、水若しくは生理食塩水で洗浄するのが好ましい。また、微細藻類の藻体が培養液や水などの液体に分散した分散液の状態で用いてもよい。
更に、微細藻類の細胞を超音波照射処理や、ホモゲナイズ等の機械処理を行うことにより得た藻体の機械的処理物を原料としてもよい。また、機械的処理物に乾燥処理を施した機械的処理物乾燥物を原料としてもよい。
【0035】
(核酸を抽出する工程)
核酸を抽出する工程では、微細藻類を用意する工程で用意した微細藻類から核酸を含有する画分を分離する(ステップS2)。
核酸を抽出する工程では、微細藻類を含む溶液を加熱及び/又は振盪することで、効率的に核酸の抽出を行うことができる。
【0036】
抽出に用いる粉砕液(抽出液)は、微細藻類の種類によって適宜選択すればよい。
破砕液は、例えば、タンパク質分解酵素や界面活性剤を含むものであるとよい。これにより、比較的温和な条件において、細胞壁、細胞膜、核膜などの障壁を破壊することができ、核酸の抽出を容易に行うことができる。
【0037】
タンパク質分解酵素としては、細胞壁、細胞膜および核膜(真核生物の場合)を破壊できる程度のタンパク質分解能力を有するものであれば、特に限定されず、例えば、セリンプロテアーゼに属しているプロテアーゼK、トリプシン、キモトリプシン、スブチリシン等、アスパラギン酸プロテアーゼに属しているペプシン、カテプシンD等、システインプロテアーゼに属しているパパイン、カテプシン、カスパーゼ、カルパイン等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0038】
界面活性剤としては、細胞壁、細胞膜および核膜の破壊に寄与するものであれば特に限定されるものではない。
なお、実施例で示すように、微細藻類がユーグレナである場合の破砕液としては、タンパク質分解酵素を用いずに、台所洗剤及び塩化ナトリウムを含有する溶液を用いることが可能である。
【0039】
加熱は、微細藻類と破砕液の溶液を加熱手段で加熱することで行う。
加熱手段としては、汎用的なヒーターや高周波加熱装置などを用いることができるが時に限定されるものではない。
加熱の温度は、室温(25℃)よりも高い温度であればよく、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上、特に好ましくは60℃以上である。溶液の沸騰や蒸発、核酸の分解や変性を抑制する観点から加熱の温度の上限は100℃未満、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下、さらに好ましくは70℃以下であるとよい。
加熱の時間は、微細藻類から核酸を抽出するのに十分な時間であればよく、微細藻類の量や溶液の量によって適宜調整すればよく、例えば、1分以上、10分以上、30分以上、1時間以上である。
高周波加熱装置を用いる場合には、加熱する溶液の量などに応じて適宜、マイクロ波の出力や時間を調整すればよい。
【0040】
振盪は、微細藻類と破砕液の溶液を振盪することで行う。
このとき、シェーカーや振盪器などの振盪手段を用いることも可能である。
振盪の時間は、微細藻類から核酸を抽出するのに十分な時間であればよく、特に限定されるものではないが、例えば、30分以上、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上である。
振盪を行う際の温度は、特に限定されるものではないが、室温(25℃)で行ってもよいし、加熱と組み合わせて室温(25℃)よりも高い温度、例えば、30℃以上、40℃以上、50℃以上、60℃以上としてもよい。
【0041】
微細藻類を用意する工程で、培養した微細藻類を含む培養液を用意した場合、培養液の遠心分離または単純な沈降、膜濾過等の公知の方法によって微細藻類の藻体を回収して、藻体を洗浄後、公知の乾燥方法(真空凍結乾燥、噴霧乾燥、加熱真空乾燥等)で乾燥することにより微細藻類の藻体乾燥物を分離工程で用いてもよい。また、微細藻類を用意する工程で用意した微細藻類を、超音波破砕機等の公知の粉砕方法で粉砕してもよい。
【0042】
(核酸を精製する工程)
核酸を精製する工程では、前記核酸を抽出する工程で抽出した核酸を精製する(ステップS3)。
具体的には、核酸を抽出する工程で得られた核酸を含む溶液から、核酸以外の物質を除去して、核酸を精製する。
【0043】
核酸を精製する手法は、目的とする核酸を精製することができれば、特に限定されるものではないが、例えば、遠心分離、デカンテーション、層分離、洗浄、適切な分離カラムの使用などが挙げられる。
実施例で示す方法のように、核酸を抽出する工程で得られた核酸を含む溶液を遠心分離して、上清と界面の沈殿物を回収し、エタノールを加えて沈殿させ、析出した核酸をエタノールなどの溶媒で洗浄することも可能である。
【0044】
[用途]
本実施形態の核酸の抽出方法で得られる微細藻類の核酸は、その特性などに応じて様々な用途に適用することが可能である。
例えば、微細藻類の核酸を、化粧料組成物、医薬組成物、食品組成物、例えば、日焼け止めなどの機能性化粧品、サプリメントなどの栄養剤として利用することが可能である。
また、微細藻類の核酸を、生分解性でリサイクル可能なバイオプラスチックの原料、mRNAワクチンなど核酸医薬の原料として、利用することも可能である。
さらに、微細藻類の核酸を、核酸分析法(PCR)などに応用することも可能である。
【0045】
本実施形態の核酸の抽出方法で得られる微細藻類の核酸は、以下に述べるように、抗酸化剤、紫外線吸収剤の有効成分として用いることが可能である。
【0046】
<抗酸化剤>
本実施形態に係る抗酸化剤は、微細藻類の核酸を有効成分として含有する抗酸化剤である。
核酸に含まれるグアニン(G)は抗酸化作用を有するため、微細藻類の核酸を抗酸化剤の有効成分として用いることが可能である。
【0047】
<紫外線吸収剤>
本実施形態に係る紫外線吸収剤は、微細藻類の核酸を有効成分として含有する紫外線吸収剤である。
核酸に含まれるグアニン(G)及びアデニン(A)は、波長320~400nmの紫外線である紫外線A波(UVA)の少なくとも一部を吸収する作用を有する。
核酸に含まれるチミン(T)及びシトシン(C)は、波長280~320nmの紫外線である紫外線B波(UVB)の少なくとも一部を吸収する作用を有する。
したがって、微細藻類の核酸を紫外線吸収剤の有効成分として用いることが可能である。
このとき、ビタミンB2(リボフラビン)を併用すると、UVAの波長範囲を全てカバーでき、吸収エネルギーをグアニンへ吐き出して、また光を吸収できるという効果がある(光増感剤)ためで、リボフラビンなどの紫外線を吸収する光増感剤を添加してもよい。
【0048】
[組成物]
本実施形態に係る微細藻類の核酸を有効成分として含有する抗酸化剤、紫外線吸収剤は、各種添加剤を加え、化粧料組成物、医薬組成物、食品組成物などの組成物として用いることができる。
【0049】
<化粧料組成物>
本実施形態の微細藻類の核酸は、その抗酸化作用などを利用して、化粧料組成物に好適に用いることができる。
本実施形態の微細藻類の核酸は、紫外線吸収作用を有しているため、日焼け止め用の化粧料組成物として用いることが好ましい。
該化粧料組成物は、あらゆる形態の化粧料に適用することができる。例えば、日焼け止め化粧料、ローション、乳液、クリーム、美容液などのスキンケア化粧料、ファンデーション、コンシーラー、化粧下地、口紅、頬紅、アイシャドウ、アイライナーなどのメイクアップ化粧料などに適用することができる。
【0050】
本実施形態に係る化粧料組成物には、微細藻類の核酸に加え、通常化粧料組成物に用いることができる成分を、1種または2種以上自由に選択して配合することが可能である。
例えば、基材、保存剤、乳化剤、着色剤、防腐剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、保湿剤、紫外線吸収剤、香料、防腐防黴剤、体質顔料、着色顔料、アルコール、水などの、化粧品分野で通常使用し得る全ての添加剤を含有させることができる。
【0051】
本実施形態に係る化粧料組成物において、微細藻類の核酸の含有量は特に限定されず、目的に応じて自由に設定することが可能である。
【0052】
<医薬組成物>
本実施形態の微細藻類の核酸は、医薬組成物として利用することができる。
本実施形態の医薬組成物は、抗酸化作用や紫外線吸収作用を有効に発揮できる量の微細藻類の核酸と共に、薬学的に許容される担体や添加剤を配合することにより、当該作用を有する医薬組成物が提供される。当該医薬組成物は、医薬品であっても医薬部外品であってもよい。
当該医薬組成物は、外用的に適用されても、また内用的に適用されても良い。従って、当該医薬組成物は、内服剤、皮下注射、静脈注射、皮内注射、筋肉注射及び/又は腹腔内注射等の注射剤、経粘膜適用剤、経皮適用剤等の製剤形態で使用することができる。
当該医薬組成物の剤型としては、適用の形態により、適当に設定できるが、例えば、液剤、懸濁剤などの液状製剤、軟膏剤、またはゲル剤等の半固形剤、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、粉末剤、散剤などの固形製剤が挙げられる。
【0053】
本実施形態に係る医薬組成物には、薬学的に許容される添加剤を1種または2種以上自由に選択して含有させることができる。
例えば、本実施形態に係る医薬組成物を経口剤に適用させる場合、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、保存剤、着色剤、矯味剤、香料、安定化剤、防腐剤、酸化防止剤等の、医薬製剤の分野で通常使用し得る全ての添加剤を含有させることができる。また、ドラックデリバリーシステム(DDS)を利用して、徐放性製剤等にすることもできる。
【0054】
本実施形態に係る医薬組成物には、微細藻類の核酸以外に、抗酸化作用や紫外線吸収作用があることが知られているその他の物質を1種以上添加することも可能である。
【0055】
<食品組成物>
本実施形態の微細藻類の核酸は、食品にも用いることが可能である。
本実施形態の食品組成物は、食品の分野では、抗酸化作用や紫外線吸収作用を有効に発揮できる有効な量の微細藻類の核酸を食品素材として、各種食品に配合することにより、当該作用を有する食品組成物を提供することができる。
また、微細藻類の核酸を、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、病院患者用食品、サプリメント等と組み合わせて食品組成物を提供することも可能である。
当該食品組成物としては、例えば、調味料、畜肉加工品、農産加工品、飲料(清涼飲料、アルコール飲料、炭酸飲料、乳飲料、果汁飲料、茶、コーヒー、栄養ドリンク等)、粉末飲料(粉末ジュース、粉末スープ等)、濃縮飲料、菓子類(キャンディ(のど飴)、クッキー、ビスケット、ガム、グミ、チョコレート等)、パン、シリアル等が挙げられる。また、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品等の場合、カプセル、トローチ、シロップ、顆粒、粉末等の形状であっても良い。
【0056】
ここで特定保健用食品とは、生理学的機能等に影響を与える保健機能成分を含む食品であって、消費者庁長官の許可を得て特定の保健の用途に適する旨を表示可能なものである。
また栄養機能食品とは、栄養成分(ビタミン、ミネラル)の補給のために利用される食品であって、栄養成分の機能を表示するものである。栄養機能食品として販売するためには、一日当たりの摂取目安量に含まれる栄養成分量が定められた上限値、下限値の範囲内にある必要があり、栄養機能表示だけでなく注意喚起表示等もする必要がある。
また機能性表示食品とは、事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品である。販売前に安全性及び機能性の根拠に関する情報などが消費者庁長官へ届け出られたものである。
【0057】
本実施形態に係る食品組成物には、微細藻類の核酸に加え、通常食品組成物に用いることができる成分を、1種または2種以上自由に選択して配合することが可能である。例えば、各種調味料、保存剤、乳化剤、安定剤、香料、着色剤、防腐剤、pH調整剤などの、食品分野で通常使用し得る全ての添加剤を含有させることができる。
【0058】
本実施形態に係る食品組成物には、微細藻類の核酸以外に、抗酸化作用や紫外線吸収作用があることが知られているその他の物質を1種以上添加することも可能である。
【実施例0059】
以下、具体的実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下の実施例では、微細藻類であるユーグレナから核酸の抽出を行った。
ユーグレナとして、ユーグレナ・グラシリス粉末(ユーグレナ藻体、(株)ユーグレナ製)を用いた。
【0060】
<抽出方法>
図2は、ユーグレナから核酸を抽出する基本操作を示す図である。
ユーグレナ粉末1gに粉砕液(1%台所洗剤(フロッシュ(旭化成ホームプロダクツ(株)))、3M塩化ナトリウム)10mlを加え、加熱や振盪などの操作を加えて核酸の抽出を行った。
遠心分離後に、上清と界面の沈殿物を50mlチューブに回収して、エタノールを加えて沈殿させ、析出した核酸を70%エタノールで洗浄した。
NanoDrop微量分光光度計(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を用いて260nmで核酸溶液の吸光度測定を行った。
得られた波長から核酸の収量を算出し、核酸の純度はA260/A280比によって評価した。
【0061】
<精製方法>
1)核酸の水溶液の体積を見積もった。
2)100%エタノールを核酸水溶液の2.5倍量入れた。
3)均一になるまでよく混ぜた。
4)室温で2~10分間静置した。
5)13,000rpmで15分、4℃あるいは室温で遠心した。
6)上相(水性)をデカンテーションで捨てた。
7)70%エタノールを1ml入れた。
8)チューブの中身を軽く混ぜた。
9)13,000rpmで2分、室温で遠心した。
10)上相(水性)をデカンテーションで捨てた。
11)チューブをペーパータオルの上に逆さに立てて水分を完全に取り除いた。
12)沈殿物を完全に乾燥させた。
【0062】
<核酸の純度の確認>
NanoDrop1000を用いて核酸溶液の260nm(A260)での吸収スペクトルを確認した。
DNAの純度はA260/A280(>1.8)、タンパク質や多糖類の混入によるDNAの純度は、A260/A230(2.0-2.2)での吸光度比を推定することで評価した。
必要に応じてゲル電気泳動でバンドの観察を行った。
【0063】
<収量の計算方法>
260nmの吸光度=1のとき、核酸濃度50μg/mlであることを前提にして、吸光度Lのとき、核酸溶液の濃度=L×50[μg/ml]とした。
1gのユーグレナ粉末を用いた場合の収率は、50×L×c*[μg/1g](c*は希釈率)で計算した。
【0064】
以下、核酸を抽出する工程で検討した条件を示す。
<低温静置>
抽出手順:ユーグレナ粉末(そのままで1g又は微末0.5g)に4℃に冷えた粉砕液10mlを加えて低温4℃で1週間静置した。
図3は、4℃で1週間静置したサンプルの写真である。
【0065】
<電子レンジ加熱>
ユーグレナ粉末1gに粉砕液10mlを加えて5分間室温で静置した。室温で30分間振盪した後、電子レンジ(500W、60秒)で加熱した。室温まで冷却し、4℃で2日間静置または遠心分離(室温、1000rpm、15分)を行った。
図4は、電子レンジで加熱後に遠心分離したサンプルの写真(左)、上清の吸光度測定の結果を示す写真(右)である。
サンプルが数秒の電子レンジ加熱で突沸するために、正確な核酸濃度が得られなかった。
吸光度からは、電子レンジ加熱を行うと高い収率が得られることが推測できた。
【0066】
<ホットプレート加熱>
抽出手順:ユーグレナ粉末1gに60℃の粉砕液10mlを加えて、60℃で40分間、加温静置した。その後、4℃で2日間静置または遠心(室温、10000rpm、15分)を行った。
図5は、60℃で加温した後、遠心分離したサンプルの写真(左)、60℃で加温した後、4℃で2日間静置したサンプルの写真(右)である。
【0067】
<シェーカー震盪>
抽出手順:ユーグレナ粉末1gに粉砕液10mlを加えて、シェーカーを用いて室温で2時間振盪後、2日間4℃静置した。
図6は、室温で2時間振盪したサンプルの写真(右)、室温で2時間振盪した後、2日間4℃で静置したサンプルの写真(左)である。
【0068】
<実験結果>
図7に実験結果を示す。
サンプルNo.1~6と、No.7~14の比較から、加熱や振盪を行った場合に優位に抽出効率が向上したことがわかった。
特に、サンプルNo.8~14の条件では、収率が2mg/g以上を記録した。この値は、ブロッコリーでの値0.08mg/gと比べて非常に高いものであった。
抽出処理に加熱や振盪など操作を加えることで0.1mg/g以上の収率が達成できた。
4℃で2日間静置することで上清との境に白い沈殿が形成されることがわかった。
電子レンジによる加熱処理は高い抽出効果が期待できる。
細胞破壊による抽出では、タンパク質や多糖類の混入が予測される。