(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002249
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】車両の前部構造
(51)【国際特許分類】
B60R 7/06 20060101AFI20241226BHJP
B60R 5/02 20060101ALI20241226BHJP
B60R 21/206 20110101ALI20241226BHJP
【FI】
B60R7/06 G
B60R5/02
B60R21/206
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102299
(22)【出願日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】古谷 啓介
(72)【発明者】
【氏名】石塚 耕三
(72)【発明者】
【氏名】藤井 英明
(72)【発明者】
【氏名】六車 美咲
【テーマコード(参考)】
3D022
3D054
【Fターム(参考)】
3D022BB01
3D022BC16
3D022CA08
3D022CB01
3D022CC03
3D022CD13
3D022CD27
3D054AA08
3D054AA14
3D054FF20
(57)【要約】
【課題】車室側からのトランクへのアクセスを許容しながら車両衝突時に荷物が意図せずに車室内へ移動することを抑制可能な車両の前部構造を提供する。
【解決手段】車両は、フロントトランク12と、グローブボックス11と、連通部13と、ニーエアバッグ15とを備える。フロントトランク12は、車両の前部に配され、荷物を収容可能な収容空間12aを有する。グローブボックス11は、車室の前部に配され、荷物の出し入れが可能な収容空間11a、および後開口部11eを開閉可能な蓋11bを有する。連通部13は、フロントトランク12の収容空間12aとグローブボックス11の収容空間11aとを連通する連通空間13aを有する。ニーエアバッグ15は、車両前部において、グローブボックス11の後開口部11eの周辺でかつ、かつ、展開時に蓋11bが後開口部11eを閉じる位置から開方向への移動を規制可能な位置に配置されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室よりも前方の車両前部に配され、荷物を収容可能なフロント収容空間を有するフロントトランクと、
前記車室の前部に配され、当該車室側から荷物の出し入れが可能な車室側収容空間を有するとともに、前記車室側収容空間における前記車室側の開口を開閉可能な蓋を有する車室側収容部と、
前記フロント収容空間と前記車室側収容空間とを連通する連通空間を有する連通部と、
前記車室の前部に配され、車両衝突時に展開することが可能なエアバッグと
を備え、
前記エアバッグは、前記車室側収容空間における車室側の開口の周辺の位置であって、かつ、展開時に前記蓋が前記開口を閉じた位置から開方向へ移動することを規制可能な位置に配置されている、
車両の前部構造。
【請求項2】
前記蓋は、車幅方向に延びる回転軸を回転中心として車両前後方向に揺動することにより前記開口を開閉し、
前記エアバッグは、前記車室側収容空間における車室側の開口の下方の位置であって、かつ、前記エアバッグの上端が前記蓋の上下方向中央部よりも上方に展開可能な位置に配置されている、
請求項1に記載の車両の前部構造。
【請求項3】
前記エアバッグは、前記エアバッグの上端が前記蓋の上端よりも上方に展開可能な位置に配置されている、
請求項2に記載の車両の前部構造。
【請求項4】
前記連通空間に配置され、前記連通空間の開口断面の少なくとも一部を仕切ることにより前記荷物の移動を制限する閉位置と前記移動の制限を解除する開位置との間で変位可能な縦壁部をさらに備える、
請求項1~3のいずれか1項に記載の車両の前部構造。
【請求項5】
前記縦壁部は、車両前方にのみ開く、
請求項4に記載の車両の前部構造。
【請求項6】
前記車室側収容部は、インストルメントパネルに設けられたグローブボックスである、
請求項1~3のいずれか1項に記載の車両の前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、前部にトランクが設けられてなる車両が開示されている。特許文献1に開示のトランクは、樹脂材料により形成されており、車両前部におけるボンネットの下部に配置されている。ユーザは、ボンネットを開けてトランクに対して物の出し入れを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第102020106560号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示のトランクでは、トランクにアクセスしようとする場合に常に車両を停止させてボンネットを開ける必要があり、不便である。
【0005】
そこで、車両前部に設けられたトランクと車室とを連通する連通部を設けることが考えられる。
【0006】
しかし、単に車両前部に設けられたトランクと車室との間が連通部を通して連通する構造では、車両衝突時にフロントトランクに収納されている荷物が連通部を通して車室内まで移動するおそれがある。
【0007】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、車室側からのトランクへのアクセスを許容しながら車両衝突時に荷物が意図せずに車室内へ移動することを抑制可能な車両の前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る車両の前部構造は、車両の車室よりも前方の車両前部に配され、荷物を収容可能なフロント収容空間を有するフロントトランクと、前記車室の前部に配され、当該車室側から荷物の出し入れが可能な車室側収容空間を有するとともに、前記車室側収容空間における前記車室側の開口を開閉可能な蓋を有する車室側収容部と、前記フロント収容空間と前記車室側収容空間とを連通する連通空間を有する連通部と、前記車室の前部に配され、車両衝突時に展開することが可能なエアバッグとを備え、前記エアバッグは、前記車室側収容空間における車室側の開口の周辺の位置であって、かつ、展開時に前記蓋が前記開口を閉じた位置から開方向へ移動することを規制可能な位置に配置されていることを特徴とする。
【0009】
上記態様に係る車両の前部構造では、車両前部のフロントトランク、車室前部の車室側収容部、およびフロント収容空間と車室側収容空間とを連通する連通空間を有する連通部を備えていることにより、車両の荷室の収納容量を広くしながら車室内外の双方から荷物へアクセスできる収納スペースを確保することが可能である。
【0010】
さらに、車室の前部にエアバッグが上記のように配置されていることにより、車両衝突時にエアバッグが展開した時には、当該エアバッグは、蓋が開口を閉じた位置から開方向へ移動することを規制できる。このため、フロントトランクまたは連通部内の荷物が車両衝突時の衝撃で車両後方側へ移動して車室側収容部の蓋に当たっても、蓋はエアバッグによる移動規制により閉状態を維持するので、車両衝突時に荷物が意図せずに車室側収容部から車両後方へ飛び出て車室内へ移動することを抑制することが可能である。
【0011】
上記態様に係る車両の前部構造において、前記蓋は、車幅方向に延びる回転軸を回転中心として車両前後方向に揺動することにより前記開口を開閉し、前記エアバッグは、前記車室側収容空間における車室側の開口の下方の位置であって、かつ、前記エアバッグの上端が前記蓋の上下方向中央部よりも上方に展開可能な位置に配置されていてもよい。
【0012】
上記のようにエアバッグが配置されていることにより、車両衝突時にエアバッグが展開することにより、車室内の乗員のひざ下部分を当該エアバッグで保護することができる。それとともに、エアバッグ展開時にエアバッグの上端が車室側収容部の蓋の上下方向中央部よりも上方に位置するので、蓋の開方向への移動をさらに抑えることができ、荷物が車室側収容部から車室内に意図せず移動することをさらに抑制することが可能である。
【0013】
上記態様に係る車両の前部構造において、前記エアバッグは、前記エアバッグの上端が前記蓋の上端よりも上方に展開可能な位置に配置されていてもよい。
【0014】
上記のようにエアバッグが配置されていることにより、車室側収容部の蓋の開方向への移動を最小限に抑えることができ、荷物が車室側収容部から車室内に意図せず移動することを確実に抑制することが可能である。
【0015】
上記態様に係る車両の前部構造において、前記連通空間に配置され、前記連通空間の開口断面の少なくとも一部を仕切ることにより前記荷物の移動を制限する閉位置と前記移動の制限を解除する開位置との間で変位可能な縦壁部をさらに備えていてもよい。
【0016】
上記態様に係る車両の前部構造では、車両走行中は閉位置にある縦壁部が連通部内の連通空間の開口断面の少なくとも一部を仕切ることにより荷物の移動を制限することによって荷物の連通空間内の移動を抑制することができる。さらに、車両衝突時にはフロントトランクまたは連通部内の荷物が車両衝突時の衝撃で車両後方側へ移動して車室側収容空間へ向かうことを抑制できるので、車両衝突時に荷物が意図せずに車室内へ移動することをさらに抑制することが可能である。しかも、フロントトランクの荷物を出し入れする際は、縦壁部を閉位置から開位置へ変位させて当該移動の制限を解除することによって連通空間内の荷物の移動を円滑に行うことが可能になる。
【0017】
上記態様に係る車両の前部構造において、前記縦壁部は、車両前方にのみ開いてもよい。
【0018】
上記態様に係る車両の前部構造では、縦壁部は、車両前方にのみ開くので、車両衝突時にはフロントトランクまたは連通部内の荷物が車両衝突時の衝撃で車両後方側へ移動して縦壁部に当たっても縦壁部は閉位置を維持して、荷物が車室側収容空間へ向かうことをさらに抑制することが可能である。
【0019】
上記態様に係る車両の前部構造において、前記車室側収容部は、インストルメントパネルに設けられたグローブボックスであってもよい。
【0020】
上記態様に係る車両の前部構造では、インストルメントパネルに設けられたグローブボックスを車室側収容部として利用することにより、車室内のスペースを有効に活用することが可能になる。また、車室内のレイアウトの変更をすることなく、グローブボックスから連通部を通してフロントトランクにアクセスして荷物を移動することが可能になる。
【発明の効果】
【0021】
上記の各態様に係る車両の前部構造では、車室側からのトランクへのアクセスを許容しながら車両衝突時に荷物が意図せずに車室内へ移動することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1実施形態に係る車両の前部構造を示す模式図である。
【
図2】
図1のII-II線断面を示す断面図であって、グローブボックスの蓋が閉じている状態を示す断面図である。
【
図3】
図2のグローブボックスの蓋およびニーエアバッグ周辺を車両後方から見た図である。
【
図4】
図3のグローブボックスの蓋が開いている状態を示す図である。
【
図5】
図2のニーエアバッグが展開してグローブボックスの蓋の開方向への移動を規制している状態を示す断面図である。
【
図6】第2実施形態に係る車両の前部構造の一部を示す連通部の連通空間を開閉する縦壁部をさらに備えた構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明を例示的に示すものであって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。なお、
図1~2、および
図5において、「FR」は車両前方を示し、さらに、「RR」は車両後方、「RH」は車両右側方、「LH」は車両左側方、「UP」は車両上方、「LO」は車両下方をそれぞれ示す。
【0024】
[第1実施形態]
1.車両1の前部構造の概略
第1実施形態に係る車両1の前部構造に概略について、
図1を用いて説明する。
【0025】
図1に示すように、本実施形態に係る車両1は、ダッシュパネル1cよりも前方の前部1aにフロントトランク12を備える。フロントトランク12は、ボンネット(図示せず)の下方に配されており、荷物の収容が可能な空間を有する。
【0026】
車両1は、ダッシュパネル1cよりも後方の車室1bにインストルメントパネル10を有する。インストルメントパネル10は、車室1bの前方部分において、左右方向に延びるように配されている。インストルメントパネル10には、助手席側部分1dの前方となる部分には、グローブボックス11およびニーエアバッグ15が設けられている。展開前の状態のニーエアバッグ15は、
図2~3に示されるように、グローブボックス11の下方に配置されている。ニーエアバッグ15の具体的な配置については後段で詳細に説明する。
【0027】
グローブボックス11は、車室1b側から荷物の出し入れが可能に構成されている。本実施形態のグローブボックス11は、車室側収容部に該当する。
【0028】
車両1は、フロントトランク12とグローブボックス11との間を繋ぐ連通部13をさらに備える。即ち、本実施形態に係る車両1では、フロントトランク12の収容空間12aとグローブボックス11の収容空間11aとが連通部13により連通されている。
【0029】
2.フロントトランク12およびグローブボックス11と、連通部13との接続構成
フロントトランク12およびグローブボックス11と、連通部13との接続構成について、
図2を用いて説明する。
【0030】
図2に示すように、フロントトランク12は、上方側に開口部12bを有するとともに、後壁12dの下方側に後開口部12eを有する。フロントトランク12の収容空間12aに対しては、開口部12bから荷物の出し入れが可能である。
【0031】
なお、本実施形態では、フロントトランク12の内底面12cは、略水平面で構成されている。内底面12cを水平面で構成することにより、内底面12c上に載置された荷物が前後左右に移動し難い。
【0032】
グローブボックス11は、前方側に前開口部11dを有するとともに、後方側に後開口部11eを有する。この内、後開口部11eは、蓋11bにより開閉可能となっている。
【0033】
蓋11bの下端部は、車幅方向(
図2の紙面垂直方向)に延びる回転軸部11fに回転自在に支持されている。これにより、蓋11bは、
図2に示されるように、回転軸部11fを回転軸として車両前後方向に揺動することにより、後開口部11eを開閉することが可能である。具体的には、蓋11bは、後開口部11eを閉じる閉位置から回転軸部11fを回転軸として車両後方へ旋回することにより開位置へ変位することが可能である。
【0034】
グローブボックス11の収容空間11aは、車両1の前後方向において、前開口部11dと後開口部11eとの間に形成されている。グローブボックス11の内底面11cは、略水平面で構成されている。
【0035】
連通部13は、前後方向に延びる連通空間13aを有し、周囲が壁部で覆われた筒状の構成を有する。連通部13の連通空間13aは、前方側の前開口部13cにおいてフロントトランク12の収容空間12aの後開口部12eに接続され、後方側の後開口部13dにおいてグローブボックス11の収容空間11aの前開口部11dに接続されている。連通部13の内底面13bは、略水平面で構成されており、フロントトランク12の内底面12cおよびグローブボックス11の内底面11cのそれぞれと段差なく接続されるように構成されている。
【0036】
3.ニーエアバッグ15の配置
図1~4に示されるように、ニーエアバッグ15は、車両衝突時に展開することにより、助手席に座る乗員のひざ下の部分およびその周辺を保護することが可能なエアバッグである。ニーエアバッグ15は、車室1bの前部の助手席側部分1dにおけるグローブボックス11の下方に配置されている。
【0037】
具体的には、ニーエアバッグ15は、グローブボックス11の収容空間11aにおける後開口部11eの周辺の位置であって、かつ、
図5に示されるように、ニーエアバッグ15の展開時にグローブボックス11の蓋11bが後開口部11eを閉じた位置から開方向へ移動することを規制可能な位置に配置されている。
【0038】
なお、ここでいう「開方向への移動を規制する」とは、蓋11b完全に閉位置を維持するように規制するだけでなく、荷物が後開口部11eから車室内に移動しない程度に開方向への移動を実質的に規制すればよい。
【0039】
本実施形態のニーエアバッグ15の配置をさらに具体的に言えば、ニーエアバッグ15は、展開時において、ニーエアバッグ15の上端15aが蓋11bの上下方向中央部よりも上方に展開、さらに詳細に言えば、蓋11bの上端11b1よりも上方に展開可能な位置に配置されている。
【0040】
また、ニーエアバッグ15が上記のように配置されていることにより、ニーエアバッグ15の展開時には、ニーエアバッグ15が後開口部11eの車両後方側で上下方向および車幅方向に拡張することにより後開口部11eの少なくとも一部(
図5では後開口部11eの全面)を塞ぐことが可能である。
【0041】
4.効果
本実施形態の車両1の前部構造は、車両1の前部1aのフロントトランク12と、車室1bの前部のグローブボックス11と、フロントトランク12の収容空間12aとグローブボックス11の収容空間11aとを連通する連通空間13aを有する連通部13とを備えている。これにより、車両1の荷室の収納容量を広くしながら車室1b内外の双方から荷物へアクセスできる収納スペースを確保することが可能である。
【0042】
また、本実施形態の車両1の前部構造では、ニーエアバッグ15は、車室1bの前部において、グローブボックス11の収容空間11aにおける後開口部11eの周辺の位置であって、かつ、
図5に示されるように、展開時にグローブボックス11の蓋11bが後開口部11eを閉じた位置から開方向へ移動することを規制可能な位置に配置されている。ニーエアバッグ15がこのように配置されていることにより、車両衝突時にニーエアバッグ15が展開した時には、当該ニーエアバッグ15がグローブボックス11の収容空間11aの後開口部11eの少なくとも一部(
図5では後開口部11eの全面)を塞ぐとともに蓋11bが後開口部11eを閉じた位置から開方向へ移動することを規制できる。
【0043】
このため、フロントトランク12または連通部13内の荷物が車両衝突時の衝撃で車両後方側へ移動してグローブボックス11の蓋11bに当たっても、蓋11bはニーエアバッグ15による移動規制により閉状態を維持するので、車両衝突時に荷物が意図せずにグローブボックス11から車両後方へ飛び出て車室1b内へ移動することを抑制することが可能である。
【0044】
また、蓋11bが車幅方向に延びる回転軸部11fを回転中心として車両前後方向に揺動することにより後開口部11eを開閉する車両1の前部構造において、本実施形態のニーエアバッグ15は、グローブボックス11の収容空間11aにおける後開口部11eの下方の位置であって、かつ、ニーエアバッグ15の上端が蓋11bの上下方向中央部よりも上方に展開可能な位置に配置されている。このようにニーエアバッグ15が配置されていることにより、車両衝突時にニーエアバッグ15が展開することにより、車室1b内の乗員のひざ下部分を当該ニーエアバッグ15で保護することができる。それとともに、ニーエアバッグ15展開時にニーエアバッグ15の上端がグローブボックス11の蓋11bの上下方向中央部よりも上方に位置するので、蓋11bの開方向への移動をさらに抑えることができ、荷物がグローブボックス11から車室内に意図せず移動することをさらに抑制することが可能である。
【0045】
このニーエアバッグ15の配置をさらに詳述すれば、本実施形態のニーエアバッグ15は、ニーエアバッグ15の上端15aが蓋11bの上端11b1よりも上方に展開可能な位置に配置されているので、グローブボックス11の蓋11bの開方向への移動を最小限に抑えることができ、荷物がグローブボックス11から車室内に意図せず移動することを確実に抑制することが可能である。
【0046】
また、上記の実施形態では、本発明の車室側収容部の一例として、インストルメントパネル10に設けられたグローブボックス11が用いられている。インストルメントパネル10に設けられたグローブボックスを車室側収容部として利用することにより、車室1b内のスペースを有効に活用することが可能になる。また、車室1b内のレイアウトの変更をすることなく、グローブボックス11から連通部13を通してフロントトランク12にアクセスして荷物を移動することが可能になる。
【0047】
[第2実施形態]
図6に示される第2実施形態の車両1の前部構造は、
図1~5に示されるグローブボックス11、フロントトランク12、連通部13、およびニーエアバッグ15を備えている点では第1実施形態の前部構造と共通するが、連通部13の連通空間13aを開閉する縦壁部21およびその縦壁部21を開閉操作する押し操作レバー24を備えている点で異なる。
【0048】
縦壁部21は、連通空間13aに配置され、連通空間13aの開口断面の少なくとも一部を仕切ることにより荷物の移動を制限する閉位置と移動の制限を解除する開位置との間で変位可能な構成を有する(なお、開口断面は、連通空間13aの長手方向全体の任意の位置の横断面であり、開口断面には、前開口部13cおよび後開口部13dも含まれる)。
【0049】
具体的には、
図6に示される縦壁部21は、連通空間13aにおけるフロントトランク12の収容空間12aに連通する前開口部13cに配置されている。縦壁部21の上端部は、車幅方向(
図6の紙面垂直方向)に延びる回転軸部25に回転自在に支持されている。これにより、縦壁部21は、回転軸部25を回転軸として車両前後方向に揺動することにより、連通空間13aの前開口部13cの少なくとも一部(本実施形態では前開口部13cの全面)を開閉することが可能である。本実施形態では、縦壁部21は、前開口部13cの全面を閉じることが可能であるが、少なくとも一部、例えば、前開口部13cの天面から荷物に接触可能な範囲まで閉じて荷物の移動を制限できればよく、その場合、縦壁部21の底面付近は開いていてもよい。なお、縦壁部21は、連通空間13aの長手方向において任意の位置、例えば、連通空間13aの長手方向における中間位置(前開口部13cと後開口部13dの間の中間位置)に配置されてもよい。
【0050】
本実施形態では、縦壁部21は、連通空間13aの前開口部13cの全面を開閉可能であるので、縦壁部21の周縁または連通空間13aの前開口部13cの周縁のいずれかにシール部材27が設けられている。シール部材27としては、樹脂またはゴムなどからなる気密性が高い弾性材料用いられ、例えば、エプトシーラー(登録商標)と呼ばれるEPDMゴム発泡体などが好ましい。シール部材27が設けられていることにより、縦壁部21の閉じた状態ではフロントトランク12に収容された荷物の臭気が連通空間13aを通して車室側のグローブボックス11へ到達することを防止できる。また、車両走行中にフロントトランク12内で荷物が意図せずに動くことによって生じる騒音が連通空間13aを通して車室側のグローブボックス11へ到達することも防止できる。
【0051】
図6に示される縦壁部21は、車両前方にのみ開くことにより、閉位置から開位置へ変位することが可能である。縦壁部21が閉位置にあるときには、縦壁部21の下端が連通空間13aの内底面13bを構成する底壁の前端部に当接するので、縦壁部21は車両後方に開くことができず、車両前方のみに開くことが可能である。
【0052】
押し操作レバー24は、連通部13の長手方向に沿って延びるとともに当該長手方向に移動することにより縦壁部21を開閉する操作部材である。押し操作レバー24は、連通部13の長手方向に沿って延びていればよく、連通部13の連通空間13aの内部または外部に設けられていればよい。本実施形態では、押し操作レバー24は、連通空間13aの内部において連通空間13aの天井面に設けられたレバー支持部26によって、押し操作レバー24の長手方向に往復移動自在に支持されている。
【0053】
押し操作レバー24は、グローブボックス11の内部またはその周辺に設けられた操作端部24aと、縦壁部21に連結された連結端部24bとを有する。連結端部24bは、縦壁部21の上部に回転自在に支持されている。
【0054】
第2実施形態の車両1の前部構造では、車両走行中は閉位置にある縦壁部21が連通部13内の連通空間13aの開口断面の少なくとも一部を仕切ることにより荷物の移動を制限することによって荷物の連通空間13a内の移動を抑制することができる。さらに、車両衝突時にはフロントトランク12または連通部13内の荷物が車両衝突時の衝撃で車両後方側へ移動してグローブボックス11の収容空間11aへ向かうことを抑制できるので、車両衝突時に荷物が意図せずに車室1bの内部へ移動することをさらに抑制することが可能である。しかも、フロントトランク12の荷物を出し入れする際は、縦壁部21を閉位置から開位置へ変位させて当該移動の制限を解除することによって連通空間13a内の荷物の移動を円滑に行うことが可能になる。
【0055】
また、第2実施形態の車両1の前部構造では、縦壁部21は、車両前方にのみ開くので、車両衝突時にはフロントトランク12または連通部13内の荷物が車両衝突時の衝撃で車両後方側へ移動して縦壁部21に当たっても縦壁部21は閉位置を維持して、荷物がグローブボックス11の収容空間11aへ向かうことをさらに抑制することが可能である。
【0056】
さらに第2実施形態の車両1の前部構造では、押し操作レバー24を備えているので、乗員が車室1b内で押し操作レバー24の操作端部24aを持って押し操作レバー24を押す操作をすることによって縦壁部21を車両前方側へ開く操作を容易に行うことが可能である。一方、押し操作レバー24を押す操作を止めれば、縦壁部21は自重で閉じることが可能である。したがって、押し操作レバー24によって、縦壁部21開閉操作を容易に行うことが可能である。
【0057】
また、グローブボックス11の蓋11bを開けた状態を維持しながら任意のタイミングで縦壁部21を開閉することが可能であるので、車室1b内の乗員は縦壁部21の開閉状態を確実に確認することが可能である。
【0058】
[変形例]
上記第1実施形態および記第2実施形態では、連通部13の車室1b側の接続対象をグローブボックス11としたが、本発明は、連通部の車室側の接続対象はこれに限定を受けるものではない。インストルメントパネルの上部や下部にグローブボックスとは別の収容部を設け、当該収容部を連通部の接続対象としてもよい。ただし、この場合には、収容部に開閉可能な蓋を設けることが臭いの漏れ出しや荷物の零れ落ちなどを防ぐ観点から必要である。
【0059】
また、上記第1実施形態および第2実施形態では、連通部13の車室1b側の接続対象をグローブボックス11としたため、車室1bの助手席側部分1dに車室側収容部を配置することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、インストルメントパネルにおけるステアリングホイールの前方部分に車室側収容部を設けることや、運転席と助手席との間の前方に車室側収容部を設けることとしてもよい。
【0060】
上記第1実施形態および第2実施形態では、本発明のエアバッグの一例として、車室1bの助手席側部分1dに配置されたグローブボックス11の下方に設けられたニーエアバッグ15を例に挙げて説明したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。本発明におけるエアバッグは、車室の前部において、車室側収容部の車室側収容空間における車室側の開口の周辺の位置であって、かつ、展開時に車室側収容部の蓋が開口を閉じた位置から開方向へ移動することを規制可能な位置に配置されていればよい。このような配置に該当するエアバッグであれば、ニーエアバッグ以外にも、運転席側のエアバッグやグローブボックス上部に配置されたエアバッグも、本発明のエアバッグに含まれる。
【0061】
また、上記第1実施形態および第2実施形態では、車両1の前部1aに1つのフロントトランク12を設けることとしたが、本発明は、車両の前部に複数のフロントトランクを設けることとしてもよい。この場合には、少なくとも1つのフロントトランクに対して連通部を介して車室側収容部と接続しておけばよい。
【符号の説明】
【0062】
1 車両
1a 前部
10 インストルメントパネル
11 グローブボックス(車室側収納部)
12 フロントトランク
12a フロント収容空間
13 連通部
13a 連通空間
15 ニーエアバッグ(エアバッグ)
21 縦壁部(移動制限部)
24 押し操作レバー(操作部材)
27 シール部材