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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002250
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】車両の前部構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 5/02 20060101AFI20241226BHJP
   B60R 7/06 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
B60R5/02
B60R7/06 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102300
(22)【出願日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】古谷 啓介
(72)【発明者】
【氏名】石塚 耕三
(72)【発明者】
【氏名】藤井 英明
(72)【発明者】
【氏名】平岩 愛
(72)【発明者】
【氏名】六車 美咲
【テーマコード(参考)】
3D022
【Fターム(参考)】
3D022BB01
3D022BC16
3D022CA08
3D022CB01
3D022CC03
3D022CD12
(57)【要約】
【課題】車室側からのトランクへのアクセスを許容しながら車両走行中に荷物が意図せずに移動することを抑制可能な車両の前部構造を提供する。
【解決手段】車両は、フロントトランク12とグローブボックス11と連通部13とを備える。フロントトランク12は、車両の前部に配され、荷物を収容可能な収容空間12aを有する。グローブボックス11は、車室の前部に配され、荷物の出し入れが可能な収容空間11aを有するとともに、開口を開閉可能な蓋11bを有する。連通部13は、フロントトランク12の収容空間12aとグローブボックス11の収容空間11aとを連通する連通空間13aを有する。さらに、連通部13の連通空間13aの開口断面、具体的には連通空間13aの前端部の前開口部13cには、連通空間13a内の荷物の移動を制限する移動制限部である縦壁部21が設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室よりも前方の車両前部に配され、荷物を収容可能なフロント収容空間を有するフロントトランクと、
前記車室の前部に配され、当該車室側から荷物の出し入れが可能な車室側収容空間を有するとともに、前記車室側収容空間における前記車室側の開口に対して開閉可能な蓋を有する車室側収容部と、
前記フロント収容空間と前記車室側収容空間とを連通する連通空間を有する連通部と、
前記連通部に設けられ、前記連通空間内の荷物の移動を制限する移動制限部と
を備えていることを特徴とする、
車両の前部構造。
【請求項2】
前記移動制限部は、前記連通空間に配置され、前記連通空間の開口断面の少なくとも一部を仕切ることにより前記荷物の移動を制限する閉位置と前記移動の制限を解除する開位置との間で変位可能な縦壁部である、
請求項1に記載の車両の前部構造。
【請求項3】
前記縦壁部を開閉操作する開閉操作部をさらに備える、
請求項2に記載の車両の前部構造。
【請求項4】
前記開閉操作部は、前記車室側収容部の前記蓋を含み、
前記縦壁部は、前記蓋の開閉動作と連動して開閉する、
請求項3に記載の車両の前部構造。
【請求項5】
前記開閉操作部は、前記連通部の長手方向に沿って延びるとともに当該長手方向に移動することにより前記縦壁部を開閉する操作部材を備え、
前記操作部材は、前記縦壁部に連結された連結端部と、前記車室側収容部の内部またはその周辺に設けられた操作端部とを有する、
請求項3に記載の車両の前部構造。
【請求項6】
前記縦壁部は、閉状態では前記連通空間の開口断面の全面を開閉可能であり、
前記縦壁部が閉じた状態において前記縦壁部の周縁と前記連通空間の内周面との間を閉塞するシール部材をさらに備えている、
請求項2に記載の車両の前部構造。
【請求項7】
前記縦壁部は、閉状態では前記連通空間の開口断面の全面を開閉可能であり、
前記縦壁部は、前記縦壁部が閉じた状態において前記連通空間を車両前後方向における前方側の部分と後方側の部分とに気密的に仕切る、
請求項2に記載の車両の前部構造。
【請求項8】
前記車室側収容部は、インストルメントパネルに設けられたグローブボックスである、
請求項1~7のいずれか1項に記載の車両の前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、前部にトランクが設けられてなる車両が開示されている。特許文献1に開示のトランクは、樹脂材料により形成されており、車両前部におけるボンネットの下部に配置されている。ユーザは、ボンネットを開けてトランクに対して物の出し入れを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第102020106560号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示のトランクでは、トランクにアクセスしようとする場合に常に車両を停止させてボンネットを開ける必要があり、不便である。
【0005】
そこで、車両前部に設けられたトランクを車室に連通する連通部を設けることが考えられる。
【0006】
しかし、単に車両前部に設けられたトランクと車室との間が連通部を通して連通する構造では、車両走行中にフロントトランクに収納されている荷物が連通部を通して車室内まで移動するおそれがある。
【0007】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、車室側からのトランクへのアクセスを許容しながら車両走行中に荷物が意図せずに移動することを抑制可能な車両の前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る車両の前部構造は、車両の車室よりも前方の車両前部に配され、荷物を収容可能なフロント収容空間を有するフロントトランクと、前記車室の前部に配され、当該車室側から荷物の出し入れが可能な車室側収容空間を有するとともに、前記車室側収容空間における前記車室側の開口に対して開閉可能な蓋を有する車室側収容部と、前記フロント収容空間と前記車室側収容空間とを連通する連通空間を有する連通部と、前記連通部に設けられ、前記連通空間内の荷物の移動を制限する移動制限部とを備えていることを特徴とする。
【0009】
上記態様に係る車両の前部構造では、車両前部のフロントトランク、車室前部の車室側収容部、およびフロント収容空間と車室側収容空間とを連通する連通空間を有する連通部を備えていることにより、車両の荷室の収納容量を広くしながら車室内外の双方から荷物へアクセスできる収納スペースを確保することが可能である。
【0010】
さらに、連通部には連通空間内の荷物の移動を制限する移動制限部が設けられているので、フロントトランクまたは連通部に収納された各々の荷物が車両走行中に意図せずに前後方向に移動することを抑制することが可能である。
【0011】
上記態様に係る車両の前部構造において、前記移動制限部は、前記連通空間における前記フロント収容空間の開口断面の少なくとも一部を仕切ることにより前記荷物の移動を制限する閉位置と前記移動の制限を解除する開位置との間で変位可能な縦壁部であってもよい。
【0012】
上記態様に係る車両の前部構造では、車両走行中は閉位置にある縦壁部が連通部内の連通空間の開口断面の少なくとも一部を仕切ることにより荷物の移動を制限することによって荷物の連通空間内の移動を抑制することができるとともに、フロントトランクの荷物を出し入れする際は、縦壁部を閉位置から開位置へ変位させて当該移動の制限を解除することによって連通空間内の荷物の移動を円滑に行うことが可能になる。
【0013】
上記態様に係る車両の前部構造において、前記縦壁部を開閉操作する開閉操作部をさらに備えてもよい。
【0014】
上記態様に係る車両の前部構造では、開閉操作部により、車両の乗員が縦壁部を開閉したいときに、乗員が開閉操作部を用いて縦壁部を開閉操作することにより縦壁部を任意に開閉することが可能になる。
【0015】
上記態様に係る車両の前部構造において、前記開閉操作部は、前記車室側収容部の前記蓋を含み、前記縦壁部は、前記蓋の開閉動作と連動して開閉してもよい。
【0016】
上記態様に係る車両の前部構造では、開閉操作部が車室側収容部の蓋を含んでいるので、車室内に蓋とは別に縦壁部を開閉操作するための操作部材を車室内に設ける必要がなく、車室前部の構成を簡単にすることが可能である。また、縦壁部が蓋の開閉動作と連動して開閉するので、縦壁部の開閉操作を容易に行うことが可能である。
【0017】
さらに、車室側収容部の蓋を開けて荷物を出し入れする際に、蓋の開動作と連動して縦壁部を開くことが可能になり、乗員は荷物を目視しながらフロントトランクまたは連通部における任意の場所に荷物を移動することが可能である。
【0018】
上記態様に係る車両の前部構造において、前記開閉操作部は、前記連通部の長手方向に沿って延びるとともに当該長手方向に移動することにより前記縦壁部を開閉する操作部材を備え、前記操作部材は、前記縦壁部に連結された連結端部と、前記車室側収容部の内部またはその周辺に設けられた操作端部とを有してもよい。
【0019】
上記態様に係る車両の前部構造では、乗員が車室内で操作部材の操作端部を持って操作部材を操作するだけで縦壁部の開閉操作を容易に行うことが可能である。また、車室側収容部の蓋を開けた状態を維持しながら任意のタイミングで縦壁部を開閉することが可能であるので、車室内の乗員は縦壁部の開閉状態を確実に確認することが可能である。
【0020】
上記態様に係る車両の前部構造において、前記縦壁部は、閉状態では前記連通空間の開口断面の全面を開閉可能であり、前記縦壁部が閉じた状態において前記縦壁部の周縁と前記連通空間の内周面との間を閉塞するシール部材をさらに備えていてもよい。
【0021】
上記態様に係る車両の前部構造では、縦壁部が連通部の開口断面の全面を閉じた状態では、シール部材が縦壁部の周縁と連通空間の内周面との間を閉塞するので、フロントトランクまたは連通部の車両前方側の部分に収容された荷物の臭気が連通空間を通って車室内へ到達することを抑制することが可能である。また、車両走行中にフロントトランクまたは連通部の車両前方側の部分に収容された荷物が意図せずに動くことによって生じる騒音が連通空間を通って車室内へ伝達することも抑制することが可能である。
【0022】
上記態様に係る車両の前部構造において、前記縦壁部は、閉状態では前記連通空間の開口断面の全面を開閉可能であり、前記縦壁部は、前記縦壁部が閉じた状態において前記連通空間を車両前後方向における前方側の部分と後方側の部分とに気密的に仕切ってもよい。
【0023】
上記態様に係る車両の前部構造では、縦壁部が連通部の開口断面の全面を閉じた状態では、縦壁部は連通空間を車両前後方向における前方側の部分と後方側の部分とに気密的に仕切るので、フロントトランクまたは連通部の車両前方側の部分に収容された荷物の臭気が連通空間を通って車室内へ到達することを抑制することが可能である。また、車両走行中にフロントトランクまたは連通部の車両前方側の部分に収容された荷物が意図せずに動くことによって生じる騒音が連通空間を通って車室内へ伝達することも抑制することが可能である。
【0024】
上記態様に係る車両の前部構造において、前記車室側収容部は、インストルメントパネルに設けられたグローブボックスであってもよい。
【0025】
上記態様に係る車両の前部構造では、インストルメントパネルに設けられたグローブボックスを車室側収容部として利用することにより、車室内のスペースを有効に活用することが可能になる。また、車室内のレイアウトの変更をすることなく、グローブボックスから連通部を通してフロントトランクにアクセスして荷物を移動することが可能になる。
【発明の効果】
【0026】
上記の各態様に係る車両の前部構造では、車室側からのトランクへのアクセスを許容しながら車両走行中に荷物が意図せずに移動することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1実施形態に係る車両の前部構造を示す模式図である。
図2図1のII-II線断面を示す断面図であって、グローブボックスの蓋および縦壁部が閉じている状態を示す断面図である。
図3図2のグローブボックスの蓋および縦壁部が開いた状態を示す断面図である。
図4】第2実施形態に係る車両の前部構造の一部を示す縦壁部を押しながら開く押しレバーを備えた構造の断面図である。
図5】第3実施形態に係る車両の前部構造の一部を示す縦壁部を引っ張りながら開く引き操作レバーを備えた構造の断面図である。
図6図5の縦壁部およびその周辺部を水平方向に切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明を例示的に示すものであって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。なお、図1~3において、「FR」は車両前方を示し、さらに、「RR」は車両後方、「RH」は車両右側方、「LH」は車両左側方、「UP」は車両上方、「LO」は車両下方をそれぞれ示す。
【0029】
[第1実施形態]
1.車両1の前部構造の概略
第1実施形態に係る車両1の前部構造に概略について、図1を用いて説明する。
【0030】
図1に示すように、本実施形態に係る車両1は、ダッシュパネル1cよりも前方の前部1aにフロントトランク12を備える。フロントトランク12は、ボンネット(図示せず)の下方に配されており、荷物の収容が可能な空間を有する。
【0031】
車両1は、ダッシュパネル1cよりも後方の車室1bにインストルメントパネル10を有する。インストルメントパネル10は、車室1bの前方部分において、左右方向に延びるように配されている。インストルメントパネル10には、助手席側部分1dの前方となる部分にグローブボックス11が設けられている。
【0032】
グローブボックス11は、車室1b側から荷物の出し入れが可能に構成されている。本実施形態のグローブボックス11は、車室側収容部に該当する。
【0033】
車両1は、フロントトランク12とグローブボックス11との間を繋ぐ連通部13をさらに備える。即ち、本実施形態に係る車両1では、フロントトランク12の収容空間12aとグローブボックス11の収容空間11aとが連通部13により連通されている。
【0034】
また、車両1は、連通部13の連通空間13aの開口断面、具体的には連通空間13aにおける車両前方側に開口する前開口部13cを開閉する縦壁部21と、縦壁部21をグローブボックス11の蓋11bの開閉とリンクさせるリンクバー22とを備える。本実施形態の縦壁部21は、フロントトランク12と連通部13との間の移動を制限する移動制限部に該当する。
【0035】
2.フロントトランク12およびグローブボックス11と、連通部13との接続構成
フロントトランク12およびグローブボックス11と、連通部13との接続構成について、図2を用いて説明する。
【0036】
図2に示すように、フロントトランク12は、上方側に開口部12bを有するとともに、後壁12dの下方側に後開口部12eを有する。フロントトランク12の収容空間12aに対しては、開口部12bから荷物の出し入れが可能である。
【0037】
なお、本実施形態では、フロントトランク12の内底面12cは、略水平面で構成されている。内底面12cを水平面で構成することにより、内底面12c上に載置された荷物が前後左右に移動し難い。
【0038】
グローブボックス11は、前方側に前開口部11dを有するとともに、後方側に後開口部11eを有する。この内、後開口部11eは、蓋11bにより開閉可能となっている。
【0039】
蓋11bの下端部は、車幅方向(図2の紙面垂直方向)に延びる回転軸部11fに回転自在に支持されている。これにより、蓋11bは、図2~3に示されるように、回転軸部11fを回転軸として車両前後方向に揺動することにより、後開口部11eを開閉することが可能である。
【0040】
グローブボックス11の収容空間11aは、車両1の前後方向において、前開口部11dと後開口部11eとの間に形成されている。グローブボックス11の内底面11cは、略水平面で構成されている。
【0041】
連通部13は、前後方向に延びる連通空間13aを有し、周囲が壁部で覆われた筒状の構成を有する。連通部13の連通空間13aは、前方側の前開口部13cにおいてフロントトランク12の収容空間12aの後開口部12eに接続され、後方側の後開口部13dにおいてグローブボックス11の収容空間11aの前開口部11dに接続されている。連通部13の内底面13bは、略水平面で構成されており、フロントトランク12の内底面12cおよびグローブボックス11の内底面11cのそれぞれと段差なく接続されるように構成されている。
【0042】
3.縦壁部21、および縦壁部21を開閉する開閉操作部(本実施形態では、蓋11bおよびリンクバー22の組合せ)の構成
図2~3に示されるように、縦壁部21は、車幅方向(図2~3の紙面垂直方向)に延びるように連通部13の前開口部13cに設けられ、連通空間13a内の荷物の移動を制限する移動制限部を構成している。
【0043】
縦壁部21は、連通空間13aに配置されている。具体的には、本実施形態の縦壁部21は、連通空間13aにおけるフロントトランク12の収容空間12aに連通する前開口部13cに配置されている。縦壁部21の下端部は、車幅方向(図2の紙面垂直方向)に延びる回転軸部23に回転自在に支持されている。これにより、縦壁部21は、回転軸部23を回転軸として車両前後方向に揺動することにより、連通空間13aの前開口部13cの少なくとも一部(本実施形態では前開口部13cの全面)を開閉することが可能である。本実施形態では、縦壁部21は、前開口部13cの全面を閉じることが可能であるが、少なくとも一部、例えば、前開口部13cの底面から下半分を閉じて荷物の移動を制限できればよく、その場合、縦壁部21の上側は開いていてもよい。
【0044】
本実施形態では、縦壁部21は、連通空間13aの前開口部13cの全面を開閉可能であるので、縦壁部21の周縁または連通空間13aの前開口部13cの周縁のいずれかに後述のシール部材27(図4~6参照)を設けてもよい。その場合、縦壁部21の閉じた状態ではフロントトランク12に収容された荷物の臭気が連通空間13aを通して車室側のグローブボックス11へ到達することを防止できる。また、車両走行中にフロントトランク12内で荷物が意図せずに動くことによって生じる騒音が連通空間13aを通して車室側のグローブボックス11へ到達することも防止できる。
【0045】
本実施形態の車両の前部構造は、縦壁部21を開閉操作する開閉操作部を備える。開閉操作部は、グローブボックス11の蓋11bと、蓋11bと縦壁部21とをリンク結合するリンクバー22とから構成されている。
【0046】
リンクバー22は、連通部13の連通空間13aの内部または外部において連通部13の長手方向に延びている。リンクバー22の後端部22aは、グローブボックス11の蓋11bの上部に回転自在に連結されている。リンクバー22の前端部22bは、縦壁部21の上部に回転自在に連結されている。これにより、縦壁部21は、リンクバー22を介して蓋11bとリンク結合されているので、蓋11bの開閉動作と連動して開閉することが可能である。具体的には、車両1の乗員がグローブボックス11の蓋11bを開けたときには、リンクバー22によって縦壁部21の上部は車両後方へ引かれることにより、縦壁部21が車両後方へ倒れながら開くことが可能である。一方、蓋11bを閉じたときには、リンクバー22によって縦壁部21の上部が車両前方へ押されることにより、縦壁部21が車両前方へ起立しながら閉じることが可能である。
【0047】
リンクバー22は、連通空間13aの内部または外部に少なくとも1本あればよく、連通空間13aの形状や大きさによって2本以上配置してもよい。
【0048】
4.効果
本実施形態の車両1の前部構造は、車両1の前部1aのフロントトランク12と、車室1bの前部のグローブボックス11と、フロントトランク12の収容空間12aとグローブボックス11の収容空間11aとを連通する連通空間13aを有する連通部13とを備えている。これにより、車両1の荷室の収納容量を広くしながら車室1b内外の双方から荷物へアクセスできる収納スペースを確保することが可能である。
【0049】
さらに、連通部13には連通空間13a内の荷物の移動を制限する移動制限部である縦壁部21が設けられているので、フロントトランク12または連通部13に収納された各々の荷物が車両走行中に意図せずに前後方向に移動することを抑制することが可能である。
【0050】
なお、本発明における移動制限部は、上記の縦壁部21だけでなく、連通空間13a内の荷物の制限できるものであればよく、連通部13の内周面から連通空間13a内に突出する凸部や棒状体なども本発明の移動制限部に含まれる。
【0051】
また、本実施形態の移動制限部は、連通空間13aにおけるフロントトランク12の収容空間12aに連通する連通空間13a(本実施形態では、連通空間13aの前開口部13c)に配置され、連通空間13aの開口断面の少なくとも一部を仕切ることにより荷物の移動を制限する閉位置と前記移動の制限を解除する開位置との間で変位可能な縦壁部21である(なお、開口断面は、連通空間13aの長手方向全体の任意の位置の横断面であり、開口断面には、前開口部13cおよび後開口部13dも含まれる)。したがって、車両走行中は縦壁部21が連通部13内の連通空間13aの開口断面の少なくとも一部(本実施形態では前開口部13cの全面)を閉じることによって荷物の連通空間13a内の意図しない移動を抑制することができる。一方、フロントトランク12の荷物を出し入れする際は、縦壁部21を開くことによって当該移動の抑制を解除することによって連通空間13a内の荷物の移動を円滑に行うことが可能になる。
【0052】
なお、縦壁部21は、連通空間13aの開口断面の少なくとも一部を仕切ればよいので、連通空間13aの前端部の前開口部13c以外の任意の位置、例えば、連通空間13aの長手方向における前開口部13cから後開口部13dまでの間の任意の位置に配置されていてもよい。また、縦壁部21は、連通空間13aの開口断面の少なくとも一部を仕切って荷物の移動を制限できればよいので、例えば、連通空間13aの開口断面(例えば前開口部13c)の最も低い位置から高さ方向に開口断面の1/10~1/2程度を閉じるような構成であってもよい。
【0053】
さらに、本実施形態の車両1の前部構造は、縦壁部21を開閉操作する開閉操作部であるグローブボックス11の蓋11bおよびリンクバー22の組合せをさらに備える。したがって、開閉操作部である蓋11bおよびリンクバー22の組合せにより、車両1の乗員が縦壁部21を開閉したいときに、乗員が開閉操作部(すなわち、蓋11bおよびリンクバー22)を用いて縦壁部21を開閉操作することにより縦壁部21を任意に開閉することが可能になる。
【0054】
さらに、本実施形態では、開閉操作部がグローブボックス11の蓋11bを含んでいるので、車室1b内に蓋11bとは別に縦壁部を開閉操作するための操作部材を車室1b内に設ける必要がなく、車室1bの前部の構成を簡単にすることが可能である。また、縦壁部21が蓋11bの開閉動作と連動して開閉するので、縦壁部21の開閉操作を容易に行うことが可能である。
【0055】
さらに、グローブボックス11の蓋11bを開けて荷物を出し入れする際に、蓋11bの開動作と連動して縦壁部21を開くことが可能になり、乗員は荷物を目視しながらフロントトランク12または連通部13における任意の場所に荷物を移動することが可能である。
【0056】
なお、本実施形態では、縦壁部21が蓋11bの開閉動作と連動して開閉すればよいので、上記のように、蓋11bの開動作と連動して縦壁部21を開く態様だけでなく、蓋11bの開動作と連動して縦壁部21を閉じるような態様であってもよい。この場合、蓋11bの閉動作と連動して縦壁部21を開くようにすればよい。このような態様では、蓋11bおよび縦壁部21のいずれか一方が開き、他方が閉じているので、フロントトランク12の収容空間12aと車室1bが連通する状態を防ぐことができ、収容空間12a内の臭気が車室1b内へ流入することを抑制することが可能である。
【0057】
また、上記の実施形態では、本発明の車室側収容部の一例として、インストルメントパネル10に設けられたグローブボックス11が用いられている。インストルメントパネル10に設けられたグローブボックスを車室側収容部として利用することにより、車室1b内のスペースを有効に活用することが可能になる。また、車室1b内のレイアウトの変更をすることなく、グローブボックス11から連通部13を通してフロントトランク12にアクセスして荷物を移動することが可能になる。
【0058】
また、図1~3に示される車両1の前部構造では、縦壁部21は、閉状態では連通空間13aの開口断面の全面を開閉可能であり、かつ、縦壁部21は、縦壁部21が閉じた状態において連通空間13aを車両前後方向における前方側の部分と後方側の部分とに気密的に仕切る(例えば、後述のシール部材27を用いて気密的に仕切る)ようにしてもよい。
【0059】
この構成では、縦壁部21が連通部13の開口断面の全面を閉じた状態では、縦壁部21は連通空間13aを車両1前後方向における前方側の部分と後方側の部分とに気密的に仕切るので、フロントトランク12または連通部13の車両1前方側の部分に収容された荷物の臭気が連通空間13aを通って車室1b内へ到達することを抑制することが可能である。また、車両1走行中にフロントトランク12または連通部13の車両1前方側の部分に収容された荷物が動くことによって生じる騒音が連通空間13aを通って車室1b内へ伝達することも抑制することが可能である。
【0060】
なお、本発明における開閉操作部は、上記の蓋11bを含む構成だけでなく、蓋11bとは別に、以下の第2~3実施形態のように操作部材(図4の押し操作レバー24または図5の引き操作レバー28)を設けてもよい。
【0061】
[第2実施形態]
図4に示されるように、第2実施形態の車両1の前部構造では、図1~3に示されるグローブボックス11、フロントトランク12、および連通部13を備えている点では第1実施形態の前部構造と共通するが、開閉操作部として蓋11bとは別に押し操作レバー24を備えている点で大きく異なる。
【0062】
すなわち、第2実施形態の車両1の前部構造では、開閉操作部は、連通部13の長手方向に沿って延びるとともに当該長手方向に移動することにより縦壁部21を開閉する操作部材として押し操作レバー24を備える。押し操作レバー24は、連通部13の長手方向に沿って延びていればよく、連通部13の連通空間13aの内部または外部に設けられていればよい。本実施形態では、押し操作レバー24は、連通空間13aの内部において連通空間13aの天井面に設けられたレバー支持部26によって、押し操作レバー24の長手方向に往復移動自在に支持されている。
【0063】
押し操作レバー24は、グローブボックス11の内部またはその周辺に設けられた操作端部24aと、縦壁部21に連結された連結端部24bとを有する。連結端部24bは、縦壁部21の上部に回転自在に支持されている。図4の縦壁部21の上端部は車幅方向(図4の紙面垂直方向)に延びる回転軸部25に回転自在に支持されている。操作端部24aは、例えば、グローブボックス11の内部に収容されている。もしくは、操作端部24aは、グローブボックスの11の周辺であって、車室内の乗員が操作端部24aを持って操作可能な位置に備えられていても良い。
【0064】
図4に示される押し操作レバー24を備えた車両1の前部構造では、乗員が車室1b内で押し操作レバー24の操作端部24aを持って押し操作レバー24を押す操作をすることによって縦壁部21を車両前方側へ開く操作を容易に行うことが可能である。一方、押し操作レバー24を押す操作を止めれば、縦壁部21は自重で閉じることが可能である。したがって、押し操作レバー24によって、縦壁部21開閉操作を容易に行うことが可能である。
【0065】
また、グローブボックス11の蓋11bを開けた状態を維持しながら任意のタイミングで縦壁部21を開閉することが可能であるので、車室1b内の乗員は縦壁部21の開閉状態を確実に確認することが可能である。
【0066】
また、図4に示される車両1の前部構造では、縦壁部21は、閉状態では連通空間13aの前開口部13cの全面を開閉可能である。
【0067】
さらに、図4に示される車両1の前部構造は、縦壁部21が閉じた状態において縦壁部21の周縁と連通空間13aの内周面、本実施形態では前開口部13cの開口縁との間を全周に亘って閉塞するシール部材27を備えている。シール部材27としては、樹脂またはゴムなどからなる気密性が高い弾性材料用いられ、例えば、エプトシーラー(登録商標)と呼ばれるEPDMゴム発泡体などが好ましい。
【0068】
なお、図4に示される縦壁部21は、閉状態では連通空間13aの前開口部13cの代わりに連通空間13a内部に配置され、連通空間13aの長手方向の途中の位置の開口断面の全面を開閉可能であってもよい。この場合、シール部材27は、縦壁部21が閉じた状態において縦壁部21の周縁と連通空間13aの内周面との間を閉塞するように配置すればよい。
【0069】
図4に示される車両1の前部構造では、縦壁部21が連通部13の連通空間3aの開口断面(本実施形態では前開口部13c)の全面を閉じた状態では、シール部材27が縦壁部21の周縁と前開口部13cの開口縁との間を閉塞するので、フロントトランク12または連通部13の車両1前方側の部分に収容された荷物の臭気が連通空間13aを通って車室1b内へ到達することを抑制することが可能である。また、車両1の走行中にフロントトランク12または連通部13の車両前方側の部分に収容された荷物が動くことによって生じる騒音が連通空間13aを通って車室1b内へ伝達することも抑制することが可能である。
【0070】
なお、シール部材27は、縦壁部21の周縁および連通空間13aの内周面のうちのいずれか一方に設けられていればよい。
【0071】
また、図4に示される車両1の前部構造においても、縦壁部21は、閉状態では連通空間13aの開口断面の全面を開閉可能であり、かつ、縦壁部21は、縦壁部21が閉じた状態において連通空間13aを車両前後方向における前方側の部分と後方側の部分とに気密的に仕切る(例えば、前述のシール部材27を用いて気密的に仕切る)ようにしてもよい。
【0072】
この構成では、縦壁部21が連通部13の開口断面の全面を閉じた状態では、縦壁部21は連通空間13aを車両1前後方向における前方側の部分と後方側の部分とに気密的に仕切るので、フロントトランク12または連通部13の車両1前方側の部分に収容された荷物の臭気が連通空間13aを通って車室1b内へ到達することを抑制することが可能である。また、車両1走行中にフロントトランク12または連通部13の車両1前方側の部分に収容された荷物が動くことによって生じる騒音が連通空間13aを通って車室1b内へ伝達することも抑制することが可能である。
【0073】
[第3実施形態]
また、図5に示されるように、開閉操作部として上記第2実施形態の押し操作レバー24の代わりに引き操作レバー28を備えていてもよい。
【0074】
すなわち、第3実施形態の車両1の前部構造では、開閉操作部は、連通部13の長手方向に沿って延びるとともに当該長手方向に移動することにより縦壁部21を開閉する操作部材として引き操作レバー28を備える。引き操作レバー28は、連通部13の長手方向に沿って延びていればよく、連通部13の連通空間13aの内部または外部に設けられていればよい。本実施形態では、引き操作レバー28は、連通空間13aの内部において連通空間13aの天井面に設けられたレバー支持部29によって、引き操作レバー28の長手方向に往復移動自在に支持されている。
【0075】
引き操作レバー28は、グローブボックス11の内部またはその周辺に設けられた操作端部28aと、縦壁部21に連結された連結端部28bとを有する。連結端部28bは、縦壁部21の上部に回転自在に支持されている。図5の縦壁部21の上端部は車幅方向(図5の紙面垂直方向)に延びる回転軸部25に回転自在に支持されている。操作端部28aは、例えば、グローブボックス11の内部に収容されている。
【0076】
図5に示される引き操作レバー28を備えた車両1の前部構造では、乗員が車室1b内で引き操作レバー28の操作端部28aを持って引き操作レバー28を引く操作をすることによって縦壁部21を車両後方側へ開く操作を容易に行うことが可能である。一方、引き操作レバー28を引く操作を止めれば、縦壁部21は自重で閉じることが可能である。したがって、引き操作レバー28によって、縦壁部21開閉操作を容易に行うことが可能である。
【0077】
また、グローブボックス11の蓋11bを開けた状態を維持しながら任意のタイミングで縦壁部21を開閉することが可能であるので、車室1b内の乗員は縦壁部21の開閉状態を確実に確認することが可能である。
【0078】
図5に示される車両1の前部構造では、縦壁部21は、車両後方側へ開く構成であるので、シール部材27の配置については、縦壁部21の下端部では、縦壁部21の下端部または連通空間13aの底面のいずれかにシール部材27を配置すればよい。
【0079】
また、図6に示される縦壁部21の閉状態の水平断面図を見れば、縦壁部21の車両前方側の面の両側縁は、連通部13における前開口部13cの車幅方向両側の一対のL字状のフレーム部分13eに当接する。したがって、シール部材27は、縦壁部21の車両前方側の面の両側縁または一対のL字状のフレーム部分13eのいずれかに配置すればよい。
【0080】
[他の実施形態]
本発明における縦壁部を開閉操作する開閉操作部の他の態様として、上記の第1実施形態の蓋11b、ならびに第2実施形態の押し操作レバー24および第3実施形態の引き操作レバー28のような操作部材以外にも、ワイヤやケーブルなどの操作部材、またはソレノイドなどの電気的な操作機構なども本発明の開閉操作部に含まれる。
【0081】
[変形例]
上記第1実施形態から上記第3実施形態では、連通部13の車室1b側の接続対象をグローブボックス11としたが、本発明は、連通部の車室側の接続対象はこれに限定を受けるものではない。インストルメントパネルの上部や下部にグローブボックスとは別の収容部を設け、当該収容部を連通部の接続対象としてもよい。ただし、この場合には、収容部に開閉可能な蓋を設けることが臭いの漏れ出しや荷物の零れ落ちなどを防ぐ観点から必要である。
【0082】
また、上記第1実施形態から上記第3実施形態では、連通部13の車室1b側の接続対象をグローブボックス11としたため、車室1bの助手席側部分1dに車室側収容部を配置することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、インストルメントパネルにおけるステアリングホイールの前方部分に車室側収容部を設けることや、運転席と助手席との間の前方に車室側収容部を設けることとしてもよい。
【0083】
また、上記第1実施形態から上記第3実施形態では、車両1の前部1aに1つのフロントトランク12を設けることとしたが、本発明は、車両の前部に複数のフロントトランクを設けることとしてもよい。この場合には、少なくとも1つのフロントトランクに対して連通部を介して車室側収容部と接続しておけばよい。
【符号の説明】
【0084】
1 車両
1a 前部
10 インストルメントパネル
11 グローブボックス(車室側収納部)
12 フロントトランク
12a フロント収容空間
13 連通部
13a 連通空間
21 縦壁部(移動制限部)
24 押し操作レバー(操作部材)
24a 操作端部
24b 連結端部
27 シール部材
28 引き操作レバー(操作部材)
28a 操作端部
28b 連結端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6