(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002252
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】加熱乾燥物及び加熱乾燥物の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 19/00 20160101AFI20241226BHJP
【FI】
A23L19/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102302
(22)【出願日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】520107995
【氏名又は名称】株式会社北斎
(71)【出願人】
【識別番号】523239527
【氏名又は名称】合同会社ホワイトベア
(71)【出願人】
【識別番号】309015019
【氏名又は名称】地方独立行政法人青森県産業技術センター
(74)【代理人】
【識別番号】100218280
【弁理士】
【氏名又は名称】安保 亜衣子
(74)【代理人】
【識別番号】100108914
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 壯兵衞
(74)【代理人】
【識別番号】100173864
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 健治
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 努
(72)【発明者】
【氏名】吉田 太香子
(72)【発明者】
【氏名】中村 充滋
(72)【発明者】
【氏名】能登谷 典之
(72)【発明者】
【氏名】山谷 祥史
(72)【発明者】
【氏名】小倉 拓也
(72)【発明者】
【氏名】阿部 美菜子
【テーマコード(参考)】
4B016
【Fターム(参考)】
4B016LE01
4B016LE02
4B016LG14
4B016LP01
4B016LP03
4B016LP05
4B016LP08
(57)【要約】
【課題】従来技術と比較して手間をかけずに短時間で製造可能であり、グアニル酸が生の状態より増加した、保存性の高いキノコ類の加熱乾燥物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】加熱乾燥物は、5'-グアニル酸が生の状態よりも2~10倍多く含まれ、その製造方法は、キノコ類の子実体を破砕して破砕物を製造する工程と、破砕物を摩砕して摩砕物を製造する工程と、摩砕物を薄く延ばし、130~140℃で加熱乾燥する工程とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キノコ類の加熱乾燥物であって、
該加熱乾燥物に含まれる5'-グアニル酸の高速液体クロマトグラフィー法で測定した重量が、前記キノコ類の生の状態よりも2~10倍多いことを特徴とする加熱乾燥物。
【請求項2】
前記キノコ類がシイタケ属に属することを特徴とする請求項1に記載の加熱乾燥物。
【請求項3】
前記シイタケ属に属する前記キノコ類の柄のみを原料とすることを特徴とする請求項2に記載の加熱乾燥物。
【請求項4】
完成時点における性状が、シート状又は粉末状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の加熱乾燥物。
【請求項5】
キノコ類の加熱乾燥物であって、
該加熱乾燥物に含まれる5'-グアニル酸の高速液体クロマトグラフィー法で測定した含量が、前記加熱乾燥物の乾燥重量100g当たり21~103mgであることを特徴とする加熱乾燥物。
【請求項6】
前記キノコ類がシイタケ属に属し、前記5'-グアニル酸の前記含量が26~103mgであることを特徴とする請求項5に記載の加熱乾燥物。
【請求項7】
キノコ類の子実体を破砕して破砕物を製造する工程と、
前記破砕物を摩砕して摩砕物を製造する工程と、
前記摩砕物を薄く延ばし、130~140℃で加熱乾燥する工程と
を含むことを特徴とする、加熱乾燥物の製造方法。
【請求項8】
前記摩砕物を前記加熱乾燥に用いるまでの保存時間が、160分間を超えないことを特徴とする請求項7に記載の加熱乾燥物の製造方法。
【請求項9】
前記子実体の柄のみを原料とすることを特徴とする、請求項7又は8に記載の加熱乾燥物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理原料として使用可能なキノコ類の加熱乾燥物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シイタケ等に代表されるキノコ類の旨味成分のひとつに、ヌクレオチド構造を有する「5’-グアニル酸(以下において単に「グアニル酸」とも言う。)」が挙げられる。旨味成分であるグアニル酸は、生や乾燥状態のキノコ類にはほとんど含まれず、加熱調理過程によって生成し、増加することが知られている。グアニル酸を抽出する方法として、例えば、乾燥シイタケを一晩水に浸漬した後、緩やかに加熱する手法は常法である。乾燥シイタケを水に浸漬することで、グアニル酸の原料であるリボ核酸を十分に抽出し、リボ核酸をグアニル酸へと変化させるヌクレアーゼの働きを妨げない温度で加熱を行うことにより、旨み成分のグアニル酸を増加させる仕組みである。乾燥シイタケを5℃で5時間水に浸漬することで、抽出されるリボ核酸量が最大となり、これを80℃以下で20分間加熱することで、得られるグアニル酸も最大となるとの結果も報告されている(非特許文献1参照。)。
【0003】
上述したように、旨味成分であるグアニル酸をより多く抽出しようとした場合、長時間の工程と手間を要する。特許文献1においては、生シイタケ又は水戻しした乾燥シイタケから得られたペーストを密閉した環境で90℃以上に加熱してペースト状の加工食品を製造する従来技術が記載されている。特許文献1においては、極めて簡単な方法で、シイタケの旨味成分であるグアニル酸とアミノ酸を著しく増加させることに成功した旨、記載されている。しかし特許文献1に記載の従来技術においては、密閉するという手間がかかる。また、特許文献1に記載の従来技術で完成するのはペースト状食品であり、保存に注意が必要で、かつ、調理への適用範囲が限られるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】澤田崇子、「きのこの調理-シイタケを中心に-」日本調理科学会誌、Vol.36 No.3 pp146-152 2003年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点を解消するためになされたものであって、本発明の目的は、グアニル酸が生の状態より増加した、保存性の高いキノコ類の加熱乾燥物及び従来技術と比較して手間をかけずに短時間でキノコ類の加熱乾燥物が製造可能な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、キノコ類の加熱乾燥物であって、この加熱乾燥物に含まれる5'-グアニル酸(C10H14N5O8P)の高速液体クロマトグラフィー法で測定した重量が、キノコ類の生の状態よりも2~10倍多いことを特徴とする加熱乾燥物であることを要旨とする。
【0008】
本発明の第2の態様は、キノコ類の加熱乾燥物であって、この加熱乾燥物に含まれる5'-グアニル酸の高速液体クロマトグラフィー法で測定した含量が、加熱乾燥物の乾燥重量100g当たり21~103mgであることを特徴とする加熱乾燥物であることを要旨とする。
【0009】
本発明の第3の態様は、キノコ類の子実体を破砕して破砕物を製造する工程と、その破砕物を摩砕して摩砕物を製造する工程と、その摩砕物を薄く延ばし、130~140℃で加熱乾燥する工程とを含むことを特徴とする、加熱乾燥物の製造方法であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、グアニル酸が生の状態より増加した保存性の高いキノコ類の加熱乾燥物、及び従来技術と比較して手間をかけずに短時間で、キノコ類の加熱乾燥物が製造可能である加熱乾燥物の製造方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る加熱乾燥物の製造工程を示す図である。
【
図2】実施例1及び比較例1~4のグアニル酸含量を示すグラフである。
【
図3】実施例2及び比較例5~8のグアニル酸含量を示すグラフである。
【
図4】実施例3~6のグアニル酸含量を示すグラフである。
【
図5】実施例7~9及び比較例9~11のグアニル酸含量を示すグラフである。
【
図6】市販の乾燥シイタケ(産地別)のグアニル酸含量を示す表である。
【
図7】シイタケの温風乾燥物の温度別・部位別のグアニル酸含量を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。以下に示す本発明の実施形態及び実施例は、あくまで本発明の技術的思想を具体化するための方法等を例示するものであって、下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
(実施形態)
本発明の実施形態に係る加熱乾燥物は、キノコ類の加熱乾燥物であって、加熱乾燥物に含まれる5'-グアニル酸(C10H14N5O8P)が、高速液体クロマトグラフィー法で測定した乾燥重量で比較すると、生の状態よりも2~10倍多く含まれる。また、本発明の実施形態に係る加熱乾燥物は、キノコ類の加熱乾燥物であって、加熱乾燥物に含まれる5'-グアニル酸の高速液体クロマトグラフィー法で測定した含量が、加熱乾燥物の乾燥重量100g当たり21~103mgである。グアニル酸(略称:GMP、IUPAC名:グアノシン-5'-リン酸)は、キノコ類に広く含まれる旨味成分である。グアニル酸の前駆体の一つであるリボ核酸が、キノコ類に含まれるヌクレアーゼによる酵素反応により変化してグアニル酸となる。よって、生の状態、即ち、加熱や乾燥等の加工を施していない未加工状態のキノコ類自体には、グアニル酸はほとんど含まれないか、極めて少量である。実施形態に係る加熱乾燥物は、乾燥状態であればシート状、フレーク状、粉末状等、あらゆる性状をとることができる。
【0014】
実施形態に係る加熱乾燥物について、キノコ類は特定の菌類の子実体(胞子形成のために作り出される複雑な構造)のことを指す。本明細書におけるキノコ類の種類については、グアニル酸を生成するキノコ類であればいずれの分類群でもよく、担子菌門や子嚢菌門等に属するキノコ類を広く含む。
【0015】
実施形態に係る加熱乾燥物が対象とするキノコ類のうち、例えば担子菌門としては、限定されるものではないが、ハラタケ目、ヒダナシタケ目、ホコリタケ目、ヒメノガステル目、タマチョレイタケ目又はキクラゲ目等を含む。ハラタケ目としては、ハラタケ科、キシメジ科、ヒラタケ科、スエヒロタケ科、イグチ科、オウギタケ科、オニイグチ科、オキナタケ科、テングタケ科、ナヨタケ科、フウセンタケ科、カンゾウタケ科、ヌメリガサ科、ベニタケ科、モエギタケ科、又はイッポンシメジ科等が挙げられる。ヒダナシタケ目としては、マンネンタケ科、サンゴハリタケ科、カノシタ科、多孔菌科、サルノコシカケ科、ミヤマトンビマイタケ科、シロソウメンタケ科、エゾハリタケ科、又はハナビラタケ科等、ホコリタケ目としては、ホコリタケ科等、ヒメノガステル目としては、ショウロ科等、タマチョレイタケ目としては、トンビマイタケ科等、キクラゲ目としては、ヒメキクラゲ科等が挙げられる。
【0016】
実施形態に係る加熱乾燥物が対象とするキノコ類のうち、例えば、ハラタケ科としては、ハラタケ、シロオオハラタケ、ツクリタケ、ザラエノハラタケ、ウスキモリノカサ、又はタヌキノチャブクロ(以上、ハラタケ属)、ササクレヒトヨタケ(ササクレヒトヨタケ属)、カラカサタケ(カラカサタケ属)、又はオニタケ(キツネノカラカサタケ属)等が挙げられる。キシメジ科としては、ハタケシメジ、又はホンシメジ(シメジ属)、ブナシメジ(シロタモギタケ属)、マツタケ、ミネシメジ、アイシメジ、シロシメジ、ケショウシメジ、又はシモフリシメジ(キシメジ属)、シイタケ(シイタケ属)、エノキタケ(エノキタケ属)、ホテイシメジ、カヤタケ、又はヒメシロタモギタケ(カヤタケ属)、ナラタケ、キツブナラタケ、ナラタケモドキ、オニナラタケ、又はクロゲナラタケ(ナラタケ属)、スギエダタケ(スギエダタケ属)、フチドリツエタケ(ツエタケ属)、モリノカレバタケ、又はアマタケ(モリノカレバタケ属)、カワムラフウセンタケ、又はムラサキアブラシメジモドキ(フウセンタケ属)、オドタケ(ヒメヒロヒダタケ属)、カクミノシメジ(シメジ属)、マツカサシメジ(マツカサキノコ属)、又はヌメリツバタケモドキ(ツエタケ属)等が挙げられる。ヒラタケ科としては、ヒラタケ、タモギタケ、エリンギ、オオヒラタケ、クロアワビタケ、ヒマラヤヒラタケ、又はタマシロノタケ(ヒラタケ属)が挙げられる。スエヒロタケ科として、スエヒロタケ(スエヒロタケ属)等が挙げられる。イグチ科としては、オオウラベニイロガワリ、又はムラサキヤマドリタケ(ヤマドリタケ属)が挙げられる。オウギタケ科として、オウギタケ(オウギタケ属)等が挙げられる。オニイグチ科としては、オオキノボリイグチ(キクバナイグチ属)等が挙げられる。オキナタケ科としては、ヤナギマツタケ、ツチナメコ、又はフミヅキタケ(フミヅキタケ属)等が挙げられる。テングタケ科としては、ガンタケ、又はカバイロツルタケ(テングタケ属)等が挙げられる。ナヨタケ科としては、ムササビタケ、又はイタチタケ(以上、ナヨタケ属)、ヒトヨタケ(以上、ヒトヨタケ属)、又はササクレヒトヨタケ(ササクレヒトヨタケ属)等が挙げられる。フウセンタケ科としては、ショウゲンジ(フウセンタケ属)、ナガエノスギタケ(ワカフサタケ属)等が挙げられる。カンゾウタケ科としては、カンゾウタケ(カンゾウタケ属)等が挙げられる。ヌメリガサ科としては、アカヤマタケ(アカヤマタケ属)、サクラシメジ(ヌメリガサ属)、又はオトメノカサ(オトメノカサ属)等が挙げられる。ベニタケ科としては、アイタケ(ベニタケ属)、又はアカモミタケ(チチタケ属)等が挙げられる。モエギタケ科としては、サケツバタケ(モエギダケ属)、ナメコ、又はヌメリスギタケモドキ(スギタケ属)、又はクリタケ(クリタケ属)等が挙げられる。イッポンシメジ科としては、ウラベニホテイシメジ(イッポンシメジ属)等が挙げられる。トンビマイタケ科としては、マイタケ等が挙げられる。
【0017】
実施形態に係る加熱乾燥物が対象とするキノコ類のうち、例えば子嚢菌門としては、限定されるものではないが、チャワンタケやアミガサタケ等を含むチャワンタケ目、セイヨウショウロ等を含むセイヨウショウロ目等が挙げられる。
【0018】
実施形態に係る加熱乾燥物の製造方法は、
図1に示すように、ステップS101における、キノコ類の子実体を破砕して破砕物を製造する工程、ステップS103における、ステップS101の破砕物を摩砕して摩砕物を製造する工程、ステップS105における、ステップS103の摩砕物を薄く延ばし、130~140℃で加熱乾燥する工程を含む。
【0019】
実施形態に係る加熱乾燥物の製造方法のステップS101において、原料のキノコ類の子実体を洗浄し、フードプロセッサー等で約5mm四方の大きさのコールスロー状となるまで破砕し、キノコ類の子実体の破砕物を得る。原料のキノコ類の子実体として、子実体の傘部分のみ、又は、柄部分のみ等、部位ごとに分けて用いることも可能である。なお、子実体の傘部分とは、子実体の可食部のうち「傘」の形状である部位を指し、子実体の柄部分とは、子実体の可食部のうち傘部分以外の茎を指す。
【0020】
実施形態に係る加熱乾燥物の製造方法のステップS103において、キノコ類の子実体の破砕物を、摩砕機等で更に微細に摩砕し、キノコ類の子実体の摩砕物を得る。摩砕工程に摩砕機を用いる場合は、せん断や摩擦により粉砕する石臼式を採用してもよいし、その他の様式の摩砕機でもよい。石臼式摩砕機を用いる場合は、クリアランスは0.02mm~0.04mm程度が好ましい。また、摩砕工程には乳鉢の原理を利用した擂潰機を用いてもよい。
【0021】
実施形態に係る加熱乾燥物の製造方法のステップS105において、キノコ類の子実体の摩砕物を薄く延ばし、130~140℃で加熱乾燥機等で加熱乾燥させる。加熱乾燥工程の加熱乾燥機として、ドラムドライヤーを用いることができる。ドラムドライヤーを用いる場合は、ボトムフィード式又はトップフィード式のシングルドラムドライヤーでもよいし、内転式又は外転式のダブルドラムドライヤーでも、その他であってもよい。キノコ類の子実体の摩砕物を薄く延ばしながら加熱乾燥させるには、効率の観点からは、加熱乾燥機としてダブルドラムドライヤーが好ましい。ダブルドラムドライヤーを用いる場合は、ドラムの間隙は0.3~0.7mm程度が好ましく、より好ましくは0.5mm程度である。加熱乾燥機としてドラムドライヤーを用いる場合は、ドラム表面にシート状又は粉末状等の実施形態に係る加熱乾燥物が形成される。摩砕処理完了から加熱乾燥処理開始までの時間(摩砕物の保存時間)は、キノコ類の加熱乾燥物のグアニル酸含量をより多く確保する観点からは、160分間以内であることが好ましい。
【0022】
実施形態に係加熱乾燥物の製造方法のステップS105の後工程において、実施形態に係る加熱乾燥物を更に加工してもよい。実施形態に係る加熱乾燥物の完成時点において、シート状であればフレーク状や粉末状等へ、粉末状であればフレーク状やシート状等へ、他の性状にする加工を施すことが可能である。また、実施形態に係る加熱乾燥物を液体と混合し、液状物に加工してもよい。
【0023】
実施形態に係る加熱乾燥物の製造方法においては、密閉等の特別な工程を経ることなく開放空間で製造することができるため、手間がより少なく、より短時間で加熱乾燥物を得ることができる。実施形態に係る加熱乾燥物は含有水分が極めて少ないシート状又は粉末状であるため、常温でも保存性がよく、保存中の化学変化も起こらないため、グアニル酸をはじめとした含有成分の変動もない、優れた保存食品ともなる。実施形態に係る加熱乾燥物においては、生の未加工状態の原料より、グアニル酸が2~10倍に増加している。実施形態に係る加熱乾燥物の乾燥重量100g当たり、グアニル酸は21~103mg含まれる。実施形態に係る加熱乾燥物がシイタケの加熱乾燥物の場合は、実施形態に係る加熱乾燥物の乾燥重量100g当たりグアニル酸は26~103mg含まれ、市販の乾燥シイタケ(
図6参照。)と比較すると、約6倍~23倍にグアニル酸が増加する。実施形態に係る加熱乾燥物を調理に用いる場合は、実施形態に係る加熱乾燥物中のグアニル酸量は既に十分であるため、グアニル酸を生成したり増加させたりする特別な工程は不要となり、実施形態に係る加熱乾燥物をそのまま調理に用いることが可能である。従来の乾燥シイタケの場合、通常は5℃程度の低温の水に数時間浸漬してグアニル酸の前駆体となるリボ核酸を抽出し、更に80℃以下で数十分間加熱することにより、グアニル酸をより多く生成できるが、実施形態に係る加熱乾燥物においては、これらのような手間のかかる工程は一切不要となるのである。
【0024】
実施形態に係る加熱乾燥物の製造方法においては、キノコ類、とりわけシイタケの柄部分のみでもグアニル酸を増加させることができる。
図7及び8は、シイタケの各乾燥粉砕物(乾燥部位、乾燥時の温風温度条件は
図7及び8に記載)に水を加え、グアニル酸を生成・増加させる従来のプロセスのひとつ、即ち、5℃において5時間静置し、60℃において30分間加熱するという方法で得られた各溶液サンプルのグアニル酸含量の測定結果を示す。
図7及び8に示すように、シイタケの傘部分と柄部分とを比較すると、グアニル酸の前駆体となる核酸は、元々傘部分の方に多く含まれることが分かった。また、
図7及び8において、乾燥時の温風温度別の結果を比較すると、シイタケの傘部分においては60℃より80℃において乾燥させた方がグアニル酸抽出量が多いが、シイタケの柄部分においては乾燥時の温風温度によらず、グアニル酸抽出量は少ないままであった。しかし、実施形態に係る加熱乾燥物の製造方法においては、シイタケの柄部分のみでも、グアニル酸を生の状態より約2倍にまで増加させることができる。
【0025】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、これは単に例示の目的で述べるものであり、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0026】
= 試験1:シイタケの部位ごとのグアニル酸定量 =
(サンプル調製)
実施例1の原料のキノコ類としてシイタケ(ワークキャンパス大鰐より入手)の傘部分のみを用意し、洗浄し、室温にて、フードプロセッサーで約5mm四方の大きさとなるまで破砕し、実施例1のシイタケの破砕物を得た。
【0027】
次に、実施例1のシイタケの破砕物を、室温にて、摩砕機(増幸産業株式会社製、MKZA10-10J)で更に微細に摩砕し、実施例1のシイタケの摩砕物を得た。摩砕機のクリアランスは0.04mmで、1回摩砕処理を行った。
【0028】
続いて、実施例1のシイタケの摩砕物を、ダブルドラムドライヤー(ジョンソンボイラ株式会社製、JM-T-P型)で加熱乾燥させ、シート状の実施例1のシイタケの加熱乾燥物(実施例1のサンプル)を得た。加熱乾燥の条件を、ドラム間隙0.5mm、蒸気圧2kgf/cm2、回転速度1.5~2.5rpmに設定したところ、ドラム表面温度は135℃となった。
【0029】
実施例2の原料のキノコ類として、実施例1の原料と同様のシイタケの柄部分のみを用意し、洗浄し、室温にて、フードプロセッサーで約5mm四方の大きさとなるまで破砕し、実施例2のシイタケの破砕物を得た。
【0030】
次に、実施例2のシイタケの破砕物を、室温にて、実施例1で使用した摩砕機で更に微細に摩砕し、実施例2のシイタケの摩砕物を得た。摩砕機のクリアランスは0.04mmで、2回摩砕処理を行った。
【0031】
続いて、実施例2のシイタケの摩砕物を、実施例1で使用したダブルドラムドライヤーで加熱乾燥させ、シート状の実施例2のシイタケの加熱乾燥物(実施例2のサンプル)を得た。加熱乾燥の条件は、実施例1と同様であった。
【0032】
比較例1の原料のキノコ類として、実施例1の原料と同様のシイタケの傘部分のみを用意し、洗浄し、凍結乾燥後、ミルサーで粉砕して、比較例1のシイタケの未加工粉砕物(比較例1のサンプル)を得た。
【0033】
比較例2の原料のキノコ類として、実施例1の原料と同様のシイタケの傘部分のみを用意し、洗浄し、室温にて、フードプロセッサーで約5mm四方の大きさとなるまで破砕し、比較例2のシイタケの破砕物を得た。その後、凍結乾燥後、ミルサーで粉砕して、比較例2のシイタケの破砕後粉砕物(比較例2のサンプル)を得た。
【0034】
比較例3の原料のキノコ類として、実施例1の原料と同様のシイタケの傘部分のみを用意し、洗浄し、室温にて、フードプロセッサーで約5mm四方の大きさとなるまで破砕し、比較例3のシイタケの破砕物を得た。次に、比較例3のシイタケの破砕物を、室温にて、実施例1で使用した摩砕機で更に微細に摩砕し、比較例3のシイタケの摩砕物を得た。摩砕機のクリアランスは0.04mmで、1回摩砕処理を行った。その後、凍結乾燥後、ミルサーで粉砕して、比較例3のシイタケの摩砕後粉砕物(比較例3のサンプル)を得た。
【0035】
比較例4の原料のキノコ類として、実施例1の原料と同様のシイタケの傘部分のみを洗浄し、60℃において、6時間温風乾燥し、一晩室温で静置した後、2時間仕上げ乾燥後、15分間送風を行い、比較例4のシイタケの温風乾燥物を得た。その後、比較例4のシイタケの温風乾燥物をミルサーで粉砕し、比較例4のシイタケの温風乾燥粉砕物(比較例4のサンプル)を得た。
【0036】
比較例5の原料のキノコ類として、実施例1の原料と同様のシイタケの柄部分のみを洗浄し、凍結乾燥後、ミルサーで粉砕して、比較例5のシイタケの未加工粉砕物(比較例5のサンプル)を得た。
【0037】
比較例6の原料のキノコ類として、実施例1の原料と同様のシイタケの柄部分のみを用意し、洗浄し、室温にて、フードプロセッサーで約5mm四方の大きさとなるまで破砕し、比較例6のシイタケの破砕物を得た。その後、凍結乾燥後、ミルサーで粉砕して、比較例6のシイタケの破砕後粉砕物(比較例6のサンプル)を得た。
【0038】
比較例7の原料のキノコ類として、実施例1の原料と同様のシイタケの柄部分のみを用意し、洗浄し、室温にて、フードプロセッサーで約5mm四方の大きさとなるまで破砕し、比較例7のシイタケの破砕物を得た。次に、比較例7のシイタケの破砕物を、室温にて、実施例1で使用した摩砕機で更に微細に摩砕し、比較例7のシイタケの摩砕物を得た。摩砕機のクリアランスは0.04mmで、2回摩砕処理を行った。その後、凍結乾燥後、ミルサーで粉砕して、比較例7のシイタケの摩砕後粉砕物(比較例7のサンプル)を得た。
【0039】
比較例8の原料のキノコ類として、実施例1の原料と同様のシイタケの柄部分のみを洗浄し、60℃において、6時間温風乾燥し、一晩室温で静置した後、2時間仕上げ乾燥後、15分間送風を行い、比較例8のシイタケの温風乾燥物を得た。その後、比較例8のシイタケの温風乾燥物をミルサーで粉砕し、比較例8のシイタケの温風乾燥粉砕物(比較例8のサンプル)を得た。
【0040】
(グアニル酸定量)
実施例1及び実施例2、並びに、比較例1~比較例8のサンプルについて、それぞれ1g精秤し、100mMリン酸緩衝液(pH2.5)20mLで60分間超音波抽出後、残渣を含め25mLに定容し、3,000rpmで10分間遠心分離後、上清を0.45μmメンブレンフィルターでろ過し、実施例1及び実施例2、並びに、比較例1~比較例8のグアニル酸定量サンプルとした。
【0041】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法により、調製した各グアニル酸定量サンプルのグアニル酸含量を測定した。定量は、5'-Guanylic acid(製品コードOR-4665、富士フィルム和光純薬社)36.32mgを超純水で溶解し、100mLに定容後、0.45μmメンブレンフィルターでろ過したものを1mMのグアニル酸標準液とし、これを希釈して分析を行い、作成した検量線によりグアニル酸含量を算出した。
HPLC環境は以下の通りとした。
・カラム:C30(Develosil RPAQUEOUS-AR,野村化学,5μm,φ4.6×250mm)
・カラム温度:35℃
・移動相A:100mMリン酸バッファー(pH 2.5)
・移動相B:アセトニトリル/水=90/10(v/v)
・検出:UV(256nm)
HPLCのグラジエント条件は以下の通り設定した。
・流速:1.0mL/分
・0→5分:A 100% B 0%
・5→25分:A 100% B 0% → A 92.5% B 7.5%
・25→30分:A 92.5% B 7.5% → A 90% B 10%
【0042】
実施例1及び実施例2、並びに、比較例1~比較例8のグアニル酸定量サンプルの各グアニル酸含量の平均値(n=2)は、表1及び
図2、
図3に記載の通りである。シイタケの傘部分のみを原料に用いた実施例1のサンプルにおいては、シイタケの傘部分の未加工サンプルである比較例1のサンプルと比較し、グアニル酸含量は10.5倍に増加することが分かった。シイタケの柄部分のみを原料に用いた実施例2のサンプルにおいては、シイタケの傘部分の未加工サンプルである比較例5のサンプルと比較し、グアニル酸含量は2倍に増加することが分かった。また、実施例1及び実施例2のサンプルの製造工程のうち、破砕工程及び摩砕工程を経るのみでは、比較例2、比較例3、比較例6及び比較例7のサンプルのグアニル酸含量の結果に示すように、グアニル酸含量は増加しないことが分かった。更に、産地別の市販の乾燥シイタケのグアニル酸含量も同様に測定したところ、
図6に示す通りの結果となり、市販の乾燥シイタケのグアニル酸含量の平均値は乾燥重量100g当たり4.4mgであることが分かった。実施例1及び実施例2のサンプルのグアニル酸含量は、それぞれ、市販の乾燥シイタケのグアニル酸含量の平均値の9.6倍、6.0倍であることが分かった。
【表1】
【0043】
= 試験2:摩砕後の保存時間別のグアニル酸定量 =
(サンプル調製)
実施例3の原料のキノコ類として、実施例1の原料と同様のシイタケを用意し、洗浄し、室温にて、フードプロセッサーで約5mm四方の大きさとなるまで破砕し、実施例3のシイタケの破砕物を得た。次に、実施例3のシイタケの破砕物を、室温にて、実施例1で使用した摩砕機で更に微細に摩砕し、実施例3のシイタケの摩砕物を得た。摩砕機のクリアランスは0.04mmで、2回摩砕処理を行った。摩砕処理の直後(0分経過後)に、実施例3のシイタケの摩砕物を、実施例1で使用したダブルドラムドライヤーで加熱乾燥させ、シート状の実施例3のシイタケの加熱乾燥物(実施例3のサンプル)を得た。加熱乾燥の条件は、実施例1と同様であった。
【0044】
実施例4の原料のキノコ類として、実施例1の原料と同様のシイタケを用意し、洗浄し、室温にて、フードプロセッサーで約5mm四方の大きさとなるまで破砕し、実施例4のシイタケの破砕物を得た。次に、実施例4のシイタケの破砕物を、室温にて、実施例1で使用した摩砕機で更に微細に摩砕し、実施例4のシイタケの摩砕物を得た。摩砕機のクリアランスは0.04mmで、2回摩砕処理を行った。摩砕処理から1時間(60分)経過後に、実施例4のシイタケの摩砕物を、実施例1で使用したダブルドラムドライヤーで加熱乾燥させ、シート状の実施例4のシイタケの加熱乾燥物(実施例4のサンプル)を得た。加熱乾燥の条件は、実施例1と同様であった。
【0045】
実施例5の原料のキノコ類として、実施例1の原料と同様のシイタケを用意し、洗浄し、室温にて、フードプロセッサーで約5mm四方の大きさとなるまで破砕し、実施例5のシイタケの破砕物を得た。次に、実施例5のシイタケの破砕物を、室温にて、実施例1で使用した摩砕機で更に微細に摩砕し、実施例5のシイタケの摩砕物を得た。摩砕機のクリアランスは0.04mmで、2回摩砕処理を行った。摩砕処理から2時間40分(160分)経過後に、実施例5のシイタケの摩砕物を、実施例1で使用したダブルドラムドライヤーで加熱乾燥させ、シート状の実施例5のシイタケの加熱乾燥物(実施例5のサンプル)を得た。加熱乾燥の条件は、実施例1と同様であった。
【0046】
実施例6の原料のキノコ類として、実施例1の原料と同様のシイタケを用意し、洗浄し、室温にて、フードプロセッサーで約5mm四方の大きさとなるまで破砕し、実施例6のシイタケの破砕物を得た。次に、実施例6のシイタケの破砕物を、室温にて、実施例1で使用した摩砕機で更に微細に摩砕し、実施例6のシイタケの摩砕物を得た。摩砕機のクリアランスは0.04mmで、2回摩砕処理を行った。摩砕処理から3時間30分(210分)経過後に、実施例6のシイタケの摩砕物を、実施例1で使用したダブルドラムドライヤーで加熱乾燥させ、シート状の実施例6のシイタケの加熱乾燥物(実施例6のサンプル)を得た。加熱乾燥の条件は、実施例1と同様であった。
【0047】
(グアニル酸定量)
実施例3~実施例6のサンプルについて、実施例1のサンプルから実施例1のグアニル酸定量サンプルを調製した場合と同様に、それぞれ実施例3~実施例6のグアニル酸定量サンプルを調製した。HPLC法により、調製した各グアニル酸定量サンプルのグアニル酸含量を測定した。定量に係る検量線、HPLC環境及びグラジエント条件は、実施例1のグアニル酸定量サンプルのグアニル酸含量測定と同様にして測定した。
【0048】
実施例3~実施例6のグアニル酸定量サンプルの各グアニル酸含量の平均値(n=3)は、表2及び
図4に記載の通りである。実施例3~実施例5のサンプルの各グアニル酸含量の結果から、少なくとも摩砕後の保存時間が0~160分間の範囲では、グアニル酸含量が増加していくことが分かった。実施例6のサンプルのグアニル酸含量の結果から分かるように、摩砕後の保存時間が210分間の場合は、それより短い保存時間の場合と比較して、グアニル酸含量が大きく減少することが分かった。また、実施例3~実施例6のサンプルのグアニル酸含量は、それぞれ、市販の乾燥シイタケのグアニル酸含量の平均値(
図6参照。)の14.7倍、20.0倍、23.4倍、2.8倍であることが分かった。
【表2】
【0049】
= 試験3:キノコ類の種類別のグアニル酸定量 =
(サンプル調製)
実施例7の原料のキノコ類としてエノキタケを用意し、洗浄し、室温にて、フードプロセッサーで約5mm四方の大きさとなるまで破砕し、実施例7のエノキタケの破砕物を得た。次に、実施例7のエノキタケの破砕物を、室温にて、実施例1で使用した摩砕機で更に微細に摩砕し、実施例7のエノキタケの摩砕物を得た。摩砕機のクリアランスは0.04mmで、1回摩砕処理を行った。摩砕処理の直後に、実施例7のエノキタケの摩砕物を、実施例1で使用したダブルドラムドライヤーで加熱乾燥させ、シート状の実施例7のエノキタケの加熱乾燥物(実施例7のサンプル)を得た。加熱乾燥の条件は、実施例1と同様であった。
【0050】
実施例8の原料のキノコ類としてエリンギを用意し、洗浄し、室温にて、フードプロセッサー約5mm四方の大きさとなるまで破砕し、実施例8のエリンギの破砕物を得た。次に、実施例8のエリンギの破砕物を、室温にて、実施例1で使用した摩砕機で更に微細に摩砕し、実施例8のエリンギの摩砕物を得た。摩砕機のクリアランスは0.04mmで、1回摩砕処理を行った。摩砕処理の直後に、実施例8のエリンギの摩砕物を、実施例1で使用したダブルドラムドライヤーで加熱乾燥させ、シート状の実施例8のエリンギの加熱乾燥物(実施例8のサンプル)を得た。加熱乾燥の条件は、実施例1と同様であった。
【0051】
実施例9の原料のキノコ類としてマイタケを用意し、洗浄し、室温にて、フードプロセッサーで約5mm四方の大きさとなるまで破砕し、実施例9のマイタケの破砕物を得た。次に、実施例9のマイタケの破砕物を、室温にて、実施例1で使用した摩砕機で更に微細に摩砕し、実施例9のマイタケの摩砕物を得た。摩砕機のクリアランスは0.04mmで、1回摩砕処理を行った。摩砕処理の直後に、実施例9のマイタケの摩砕物を、実施例1で使用したダブルドラムドライヤーで加熱乾燥させ、シート状の実施例9のマイタケの加熱乾燥物(実施例9のサンプル)を得た。加熱乾燥の条件は、実施例1と同様であった。
【0052】
比較例9の原料のキノコ類として、実施例7と同様のエノキタケを用意し、洗浄し、凍結乾燥後、ミルサーで粉砕して、比較例9のエノキタケの未加工粉砕物(比較例9のサンプル)を得た。
【0053】
比較例10の原料のキノコ類として、実施例8と同様のエリンギを用意し、洗浄し、凍結乾燥後、ミルサーで粉砕して、比較例10のエリンギの未加工粉砕物(比較例10のサンプル)を得た。
【0054】
比較例11の原料のキノコ類として、実施例9と同様のマイタケを用意し、洗浄し、凍結乾燥後、ミルサーで粉砕して、比較例11のマイタケの未加工粉砕物(比較例11のサンプル)を得た。
【0055】
(グアニル酸定量)
実施例7~実施例9、及び、比較例9~比較例11のサンプルについて、実施例1のサンプルから実施例1のグアニル酸定量サンプルを調製した場合と同様に、それぞれ実施例7~実施例9、及び、比較例9~比較例11のグアニル酸定量サンプルを調製した。HPLC法により、調製した各グアニル酸定量サンプルのグアニル酸含量を測定した。定量に係る検量線、HPLC環境及びグラジエント条件は、実施例1のグアニル酸定量サンプルのグアニル酸含量測定と同様にして測定した。
【0056】
実施例7~実施例9、及び、比較例9~比較例11のグアニル酸定量サンプルの各グアニル酸含量の平均値(n=3)は、表3及び
図5に記載の通りである。エノキタケを原料に用いた実施例7のサンプルにおいては、エノキタケの未加工サンプルである比較例9のサンプルと比較し、グアニル酸含量は2.8倍に増加することが分かった。エリンギを原料に用いた実施例8のサンプルにおいては、エリンギの未加工サンプルである比較例10のサンプルと比較し、グアニル酸含量は4倍に増加することが分かった。マイタケを原料に用いた実施例9のサンプルにおいては、マイタケの未加工サンプルである比較例11のサンプルと比較し、グアニル酸含量は3.5倍に増加することが分かった。
【表3】
【0057】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は実施形態及び実施例によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替の実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0058】
本明細書においては、実施形態、複数の実施例、その他の実施形態で説明したそれぞれの技術的思想を互いに組み合わせることも可能である。本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当と解釈しうる、特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。