(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022549
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】決定システム及び決定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 9/36 20060101AFI20250206BHJP
【FI】
G01N9/36 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127234
(22)【出願日】2023-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 清美
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智久
(72)【発明者】
【氏名】寺田 尚平
(72)【発明者】
【氏名】石田 剛
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴之
(72)【発明者】
【氏名】崎山 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 雅浩
(72)【発明者】
【氏名】栗城 潤也
(57)【要約】
【課題】複合材中の固体無機物又は固体有機物の少なくとも一方の含有率を決定可能な決定システムを提供する。
【解決手段】決定システム100は、有機物又は無機物のうちの一方の固体物により構成される母材中に、他方の固体物により構成される内在物が配置される複合材に対する、前記母材又は前記内在物のうちの少なくとも一方の含有率の決定に影響を与えるとともに前記複合材に関する指標を受け付ける受付部1と、前記指標と前記含有率とを関連付けたデータベース21と、受付部1が受け付けた指標と、に基づいて、前記含有率を決定する決定部3と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物又は無機物のうちの一方の固体物により構成される母材中に、他方の固体物により構成される内在物が配置される複合材に対する、前記母材又は前記内在物のうちの少なくとも一方の含有率の決定に影響を与えるとともに前記複合材に関する指標を受け付ける受付部と、
前記指標と前記含有率とを関連付けたデータベースと、前記受付部が受け付けた指標と、に基づいて、前記含有率を決定する決定部と、を備える
ことを特徴とする決定システム。
【請求項2】
前記指標が入力される入力装置を備え、
前記入力装置を通じて入力された前記指標が前記受付部によって受け付けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の決定システム。
【請求項3】
前記複合材の質量を測定する質量測定装置と、
前記複合材の体積を測定する体積測定装置と、を備え、
前記質量測定装置によって測定された質量と、前記体積測定装置によって測定された体積とが、前記指標として前記受付部によって受け付けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の決定システム。
【請求項4】
複数の前記複合材を整列させる整列装置を備え、
前記質量測定装置は、前記整列装置によって整列された、それぞれの前記複合材の質量を測定し、
前記体積測定装置は、前記整列装置によって整列された、それぞれの前記複合材の体積を測定する
ことを特徴とする請求項3に記載の決定システム。
【請求項5】
前記複合材をプレスするプレス装置を備え、
前記体積測定装置は、前記プレス装置によってプレスされた前記複合材の体積を測定する
ことを特徴とする請求項3に記載の決定システム。
【請求項6】
複数の前記複合材を含む集合体から、所定大きさ以上の前記複合材を分離する分離装置を備え、
前記質量測定装置は、前記分離装置によって分離された前記複合材の質量を測定し、
前記体積測定装置は、前記分離装置によって分離された前記複合材の体積を測定する
ことを特徴とする請求項3に記載の決定システム。
【請求項7】
複数の前記複合材を含む集合体から、前記有機物の種類又は前記無機物の種類のうちの少なくとも一方の種類が共通する前記複合材を分別する分別装置を備え、
前記質量測定装置は、前記分別装置によって分別された前記複合材の質量を測定し、
前記体積測定装置は、前記分別装置によって分別された前記複合材の体積を測定する
ことを特徴とする請求項3に記載の決定システム。
【請求項8】
前記決定部が決定した含有率に基づいて、前記母材又は前記内在物の少なくとも一方を所望となる含有率にするように、前記母材又は前記内在物の少なくとも一方を、前記含有率を決定した前記複合材に追加する追加装置を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の決定システム。
【請求項9】
前記指標は、前記複合材の密度、又は、前記複合材の密度に影響を与える前記複合材の物性、のうちの少なくとも一方を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の決定システム。
【請求項10】
前記物性は、前記複合材の大きさ、前記複合材の質量、前記母材又は内在物のうちの少なくとも一方の構成材料、のうちの少なくとも何れか1つを含む
ことを特徴とする請求項9に記載の決定システム。
【請求項11】
決定した前記複合材の含有率と、前記含有率を決定した前記複合材の実際の含有率、又は、前記含有率を決定した前記複合材から製造される部材の実際の含有率と、とから前記含有率を学習し、前記データベースを修正する学習部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の決定システム。
【請求項12】
前記決定部が決定した含有率に基づいて、前記母材及び前記内在物の含有率が所望の含有率になるように、前記母材又は前記内在物の少なくとも一方を、前記含有率を決定した前記複合材に追加する追加装置と、
前記追加装置によって前記母材又は前記内在物の少なくとも一方を追加した前記複合材を用いて、有機物と無機物とを含む部材を新たに製造する製造装置と、を備え、
前記学習部は、新たに製造された前記部材における実際の前記含有率に基づいて、前記データベースを修正する
ことを特徴とする請求項11に記載の決定システム。
【請求項13】
前記学習部は、前記製造装置が製造した前記部材の焼成前後の質量又は比重のうちの少なくとも一方の測定によって実際の前記含有率を決定する
ことを特徴とする請求項12に記載の決定システム。
【請求項14】
前記学習部は、前記製造装置が製造した前記部材の実際の前記含有率を、前記決定部を通じて決定する
ことを特徴とする請求項12に記載の決定システム。
【請求項15】
前記学習部は、前記製造装置が製造した前記部材の機械的特性を測定することによって実際の前記含有率を決定する
ことを特徴とする請求項12に記載の決定システム。
【請求項16】
前記学習部は、前記製造装置が製造した前記部材の熱物性を測定することによって実際の前記含有率を決定する
ことを特徴とする請求項12に記載の決定システム。
【請求項17】
前記学習部は、前記製造装置が製造した前記部材の溶融時における前記部材の流動性を測定することによって実際の前記含有率を決定する
ことを特徴とする請求項12に記載の決定システム。
【請求項18】
前記学習部は、前記製造装置が製造した前記部材の成型前後の収縮率を測定することによって実際の前記含有率を決定する
ことを特徴とする請求項12に記載の決定システム。
【請求項19】
前記学習部は、前記製造装置が製造した前記部材の電気特性を測定することによって実際の前記含有率を決定する
ことを特徴とする請求項12に記載の決定システム。
【請求項20】
有機物又は無機物のうちの一方の固体物により構成される母材中に、他方の固体物により構成される内在物が配置される複合材に対する、前記内在物の含有率の決定に影響を与えるとともに前記複合材に関する指標を受け付ける受付ステップと、
前記指標と前記含有率とを関連付けたデータベースと、前記受付ステップで受け付けた指標と、に基づいて、前記含有率を決定する決定ステップと、を含む
ことを特徴とする決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、決定システム及び決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、これまで廃棄されていた製品、材料等を資源として再利用して循環させるサーキュラーエコノミへの転換が急速に進んでいる。このような中で、リサイクル材料の利活用が重要な位置づけとなっており、特に様々な製品に広く使用されているプラスチックのリサイクル率を向上することが求められている。このようなプラスチックの中には、強度を向上するために、ガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維を複合した、繊維強化プラスチック(FRP)も多く使用されている。リサイクル率向上のためには、このような複雑な部材についてもリサイクルを実現することが好ましい。
【0003】
FRPに代表される複合材では、含有物の充填率が複合材の強度、収縮性等の材料特性に大きな影響を与える。このため、製品では、無機繊維の含有率(充填率)を適切に管理した上で,製品設計を行うことが好ましい。
【0004】
特許文献1の要約書には「FRP廃材を平均径0.1~30mmの大きさに破砕する工程、これに熱可塑性樹脂バインダ-を加えて混合し混練機に充填する工程、混練機の高速回転による摩擦熱にて混練溶融する工程、溶融物をプラスチック成形品を形成する金型内に充填する工程、加圧下に溶融物を硬化させる工程、からなることを特徴とするFRPリサイクル成形品の製法。」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
有機物と無機物とにより構成される複合材は、例えば、母材としての固体有機物中に、内在物としての固体無機物が内在する。例えば、樹脂中にガラス繊維が内在する複合材は、ガラス繊維強化樹脂(GFRP)である。複合材における固体無機物の含有率(含有量)は、複合材が使用される装置、部材等によって様々である。従って、リサイクルのために回収された複合材における例えば固体無機物の含有率を非破壊で決定できれば、リサイクルされた複合材から得られる固体無機物の量を把握できるため、複合材のリサイクルを促進できる。これらの点は、母材としての固体無機物中に、内在物としての固体有機物が内在する複合材についても同様である。
本開示が解決しようとする課題は、複合材中の固体無機物又は固体有機物の少なくとも一方の含有率を決定可能な決定システム及び決定方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の決定システムは、有機物又は無機物のうちの一方の固体物により構成される母材中に、他方の固体物により構成される内在物が配置される複合材に対する、前記母材又は前記内在物のうちの少なくとも一方の含有率の決定に影響を与えるとともに前記複合材に関する指標を受け付ける受付部と、前記指標と前記含有率とを関連付けたデータベースと、前記受付部が受け付けた指標と、に基づいて、前記含有率を決定する決定部と、を備えることを特徴とする。その他の解決手段は発明を実施するための形態において後記する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、複合材中の固体無機物又は固体有機物の少なくとも一方の含有率を決定可能な決定システム及び決定方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の決定システムを示すブロック図である。
【
図2】本開示の決定システムにより含有率を決定可能な複合材の断面図である。
【
図3】本開示の決定システムで作成可能な回帰式の例を示すグラフである。
【
図4】本開示の決定システムが決定した含有率と実際の含有率との相関を示すグラフである。
【
図5】本開示の決定システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図6】本開示の決定方法を示すフローチャートである。
【
図7】別の実施形態に係る決定システムを示すブロック図である。
【
図8】別の実施形態に係る決定システムを示すブロック図である。
【
図9】別の実施形態に係る決定システムを示すブロック図である。
【
図10】別の実施形態に係る決定システムを示すブロック図である。
【
図11】別の実施形態に係る決定システムを示すブロック図である。
【
図12】別の実施形態に係る決定システムを示すブロック図である。
【
図13】別の実施形態に係る決定システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本開示を実施するための形態(実施形態と称する)を説明する。以下の一の実施形態の説明の中で、適宜、一の実施形態に適用可能な別の実施形態の説明も行う。本開示は以下の一の実施形態に限られず、異なる実施形態同士を組み合わせたり、本開示の効果を著しく損なわない範囲で任意に変形したりできる。また、同じ部材については同じ符号を付すものとし、重複する説明は省略する。更に、同じ機能を有するものは同じ名称を付すものとする。図示の内容は、あくまで模式的なものであり、図示の都合上、本開示の効果を著しく損なわない範囲で実際の構成から変更したり、図面間で一部の部材の図示を省略したり変形したりすることがある。また、同じ実施形態で、必ずしも全ての構成を備える必要はない。
【0011】
図1は、本開示の決定システム100を示すブロック図である。例えば家電製品、工業製品等の構成材料として使用された、有機物と無機物とにより構成される複合材50は、リサイクルさることが好ましい。しかし、複合材50に含まれる例えば無機材の含有率は、回収された複合材50の由来(例えば製品の種類、製品の製造会社、製品の販売会社等)によって大きく異なり得る。また、回収された複合材50が、例えば回収時期、回収地域等に応じてロット毎に区分される場合、ロット間でも、例えば無機材の含有率が大きく異なり得る。このため、回収した複合材50を使用して別の部材(例えば新たな複合材50)を製造する際、回収した複合材50の例えば無機材の含有率を把握できれば、新たな部材50における含有率を所望のものにすることができる。そこで、本開示の決定システム100は、有機物と無機物とにより構成される複合材50(
図2)中の、無機物(有機物でもよい)の含有率を非破壊で決定(推測)する。
【0012】
決定システム100では、例えば、データベース21(後記)に基づき、有機物又は無機物の一方の含有率(例えば百分率)が決定される。そして、決定された一方の含有率を、全体(含有率が百分率で表される場合には100%)から減算することで、他方の含有率を決定できる。
【0013】
本開示の例では、決定システム100は、複合材50において、有機物(母材51。
図2)中に内在する無機物(内在物52。
図2)の含有率を決定する。以下、一例として、単に「含有率」というときは、特に断らない限り、有機物中に内在する無機物の、複合材50における含有率をいうものとする。そして、特に断らない限り、以下の含有率に関する記載は、樹脂以外の内在物52、母材51、又は複合材50のうちの何れか1つに対しても同様に適用できるものとする。
【0014】
図2は、本開示の決定システムにより含有率を決定可能な複合材50の断面図である。複合材50では、母材51中に内在物52が配置される。母材51は、有機物又は無機物のうちの一方の固体物により構成される。従って、母材51は、固体の有機物(固体有機物)又は固体の無機物(固体無機物)により構成される。内在物52は、有機物又は無機物のうちの他方の固体物により構成される。従って、内在物52は、固体の有機物又は固体の無機物のうち、母材51とは異なる材料により構成される。
【0015】
母材51及び内在物52の組み合わせとしては、母材51は例えば樹脂(熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等)であり、内在物52は例えば無機繊維(炭素繊維、ガラス繊維等)である。また、当該組み合わせとしては、母材51はセラミックであり、内在物52は例えば樹脂である。ただし、当該組み合わせはこれらの例に限定されない。
【0016】
図1に戻って、決定システム100は、受付部1と、記憶部2と、決定部3と、表示部5と、制御部6とを備える。更に、決定システム100は、入力装置30を備える。なお、決定システム100は、全ての構成要素が一体に構成されたものでもよく、少なくとも一部の構成要素が別体に構成されてもよい。別体に構成される場合、構成要素同士は、有線又は無線で接続でき、更にはネットワークを介して接続されてもよい。例えば、決定システム100は、記憶部2を遠隔地のサーバ(不図示)に備え、決定部3は、遠隔地のサーバに格納されたデータベース21(後記)に接続するようにしてもよい。
【0017】
受付部1は、複合材50(
図2)に対する、母材51(
図2)又は内在物52(
図2)のうちの少なくとも一方の含有率の決定に影響を与える指標を受け付けるものである。指標は、更に、複合材50に関する指標である。本開示の例では、上記のように、指標は、例えば無機物により構成される内在物52の含有率の決定に影響を与える指標である。
【0018】
指標は、例えば、複合材50の密度、又は、複合材50の密度に影響を与える複合材50の物性、のうちの少なくとも一方を含む。これらのうちの少なくとも一方を含むことで、母材51又は内在物52のうちの少なくとも一方の含有率を決定できる。
【0019】
中でも、指標は、密度を含むことが好ましい。含有率と密度とは相関するため、密度を含むことで、含有率を決定できる。具体的には例えば、密度が有機物よりも大きな無機物を含む複合材50の場合、無機物の含有率が高いほど、複合材50の全体の密度も大きくなる。従って、詳細は後記するが、含有率と密度とを予め関連付けておくことで、密度から含有率を決定できる。特に、密度は、複合材50の質量及び大きさ(寸法)に基づいて容易に決定できる。このため、含有率を容易に決定できる。
【0020】
また、密度に影響を与える複合材50の物性は、複合材50の大きさ、複合材50の質量、母材51又は内在物52のうちの少なくとも一方の構成材料、のうちの少なくとも何れか1つを含むことが好ましい。これらは複合材50の密度に影響を与える。即ち、例えば、内在物52の含有量が同じである場合、複合材50が大きいほど内在物52の含有率は低下する。また、例えば、仮に複合材50が内在物52を含まないと仮定した場合、複合材50の大きさと母材51の構成材料とから、複合材50の質量を推測できる。しかし、実際には内在物52が含まれるため、推測した質量と実際の質量との間には違いが生じる。従って、当該違いに基づいて、含有率を決定できる。これらのようにして、密度を決定しなくても、含有率を決定できる。
【0021】
入力装置30には、当該指標が入力される。従って、入力装置30を通じて入力された指標が受付部1によって受け付けられる。このようにすることで、例えば作業員が実測した指標等を入力装置30を通じて入力できる。入力装置30は、例えば、何れも不図示のキーボード、マウス、タッチパネル等により構成される。ただし入力装置30は例えばI/F1004(
図5)を兼ねてもよく、遠隔地に配置された複合材50に関する指標がネットワーク(不図示)を介して入力されるようにしてもよい。
【0022】
記憶部2は、データベース21を記憶したものである。データベース21は、指標(例えば密度)と含有率とを関連付けたものである。データベース21は、例えば、含有率が既知の複合材50について例えば任意の方法で指標と含有率とを関連付けることで、予め作成できる。以下、指標が密度、母材51がポリプロピレン、内在物52がガラス繊維である場合を例に、データベース21の作製方法が説明される。
【0023】
複合材50は、例えば長さ1mm~30mm程度の棒状を有するチップ、フレーク、ペレット等の各形状に破砕された破材として処理されることが好ましい。以下、このように破砕した複合材50の集合体を破材群という。破材は、例えば破砕機による破砕により得られる。ただし、本開示の決定システム100では、単一の複合材50(破材でもよく、破材以外の部材でもよい)における含有率を決定してもよい。また、集合体を構成する複合材50は、破砕により得られる破材でもよく、破材でなくてもよい。
【0024】
関連付け(例えば相関)は、破材群の平均密度ρ(破材群全体の密度)と含有率Vfとについて行われる。まず、任意に取得した複合材50の集合体の質量mが、電子天秤等により測定される。また、含有率は、回収された複合材50が使用されていた部位(即ち複合材50の由来)によって大きく異なる。そこで、破材は、単一の由来ではなく、複数の由来であることが好ましい。
【0025】
破材群には、破砕した例えば棒状のチップ等が複数(多数)含まれる。破材群の体積Vが、例えば3次元形状測定機、xyz軸方向にそれぞれ配置された合計3台のカメラ等により測定される。次に、破材群が燃焼炉等に収容されて燃焼された後、残留したガラス繊維の質量mfが測定される。ガラス繊維の質量比での含有率wfは式(1)によって算出できる。mは、破材群の質量である。
【0026】
【0027】
質量mの測定から式(1)を用いた算出迄を、異なる複数の破材群について行うことで、破材群の平均密度ρと、含有率wfとの相関データが取得される。破材は、これらに限定されずあくまで一例であるが、ポリプロピレン等の樹脂であるマトリックス(樹脂マトリックス)と、無機繊維(ガラス繊維等)等の無機物とにより構成される。この樹脂マトリックスの密度をρm、ガラス繊維の密度をρfとした場合、破材群の平均密度ρと含有率wfとの関係は式(2)~(4)で表される。
【0028】
【0029】
破材群の別によらず、ガラス繊維の密度ρfは大きく変わらない。このため、一般的なガラス繊維の密度ρf(2.6g/cm3)に固定すると、未知数はρmのみとなる。上記方法で作成した相関データを用いて、最小二乗法等の最適化手法によりρmを求めることで、ρとwfとの相関関係を表す回帰式を作成できる。そして、作成した回帰式に、新たに測定した破材群の平均密度ρを代入することで、新たな破材群の含有率wfを決定(推測)できる。平均密度ρは、破材群の総質量m及び体積Vと、下記式(5)とから、算出できる。算出された平均密度ρは記憶部2に記憶される。
【0030】
【0031】
図3は、本開示の決定システム100で作成可能な回帰式の例を示すグラフである。横軸は平均密度ρ、縦軸は含有率wfである。白抜きの三角形で示すプロットは、上記方法で決定した平均密度ρ及び含有率wf(即ち教師データ)であり、実線で示すグラフは、当該教師データから作成された回帰式である。白抜きの丸で示すプロットは、回帰式を作成後、上記方法で追加で決定した平均密度ρ及び含有率wfである。追加で決定した平均密度ρ及び含有率wfは、回帰式によく乗っていることがわかる。
【0032】
なお、データベース21は、
図2に示す回帰式等の数式の他にも、例えば表、グラフ等等の任意の形態で構成できる。
【0033】
図1に戻って、データベース21は、例えば、母材51又は内在物52のそれぞれの構成成分が共通するもの同士を更に関連付けて構成されてもよい。例えば、同じ種類の樹脂(例えば名称が同じ樹脂)を母材51とする複合材50について、様々な構成材料を有する内在物52と含有率とを関連付けてもよい。このようにすることで、データベース21の精度を向上できる。
【0034】
決定部3は、データベース21と、受付部1が受け付けた指標と、に基づいて、含有率を決定するものである。決定した含有率は、表示部5を通じて、表示装置32に表示される。表示装置32は、例えば、デイスプレイ、タブレット等である。また、決定した含有率は、制御部6を通じて、任意の制御対象装置31に出力される。制御対象装置31は、例えば、決定システム100によって決定された含有率に基づき制御される装置である。
【0035】
図4は、本開示の決定システム100が決定した含有率と実際の含有率との相関を示すグラフである。横軸は実際の含有率(実験値)、縦軸は本開示の決定システム100が決定した含有率(推測値)である。丸で示すプロットは、傾き1の直線上によく乗っている。各プロットについて近似直線を作成したところ、R
2値は0.97であり、精度が高いことが分かった。従って、決定システム100により、複合材50を非破壊で含有率を精度よく推測できることがわかった。
【0036】
図5は、本開示の決定システム100のハードウェア構成を示すブロック図である。決定システム100は、例えばCPU(Central Processing Unit)1001、RAM(Random Access Memory)1002、ROM(Read Only Memory)1003、I/F(Inter Face)1004、バス1005等を備えて構成される。CPU1001、RAM1002、ROM1003及びI/F1004は、例えばバス1005を介して接続される。決定システム100は、ROM1003に格納されている所定の制御プログラム(例えば本開示の決定方法)がRAM1002に展開され、CPU1001によって実行されることにより具現化される。決定システム100における各種機器(後記の質量測定装置7、制御対象装置31等)、外部のネットワーク等との信号及び情報の授受は、ハードウェア的にはI/F1004を通じて行われる。
【0037】
図6は、本開示の決定方法を示すフローチャートである。
図6に示すフローは、例えば上記決定システム100によって実行できる。そこで、
図6の説明は、適宜
図1を参照しながら行う。また、
図6に示すフローでは、一例として、上記指標は密度である。
【0038】
ステップS1では、複合材50の質量及び体積のデータが受け付けられる。受付は、受付部1に対して行われる。従って、ステップS1は、複合材50に対する内在物52の含有率の決定に影響を与えるとともに複合材50に関する指標(質量及び体積)を受け付ける受付ステップである。受け付けられる指標である質量及び体積は、どのような方法で測定されたものでもよい。また、受け付けられる指標は、単一の複合材50に関する指標でもよく、複数の複合材50の集合体(即ち破材群)に関する指標でもよい。
【0039】
ステップS2では、決定部3は、複合材50の質量(破材群においては総質量)及び体積をもとに、複合材50の密度(破材群においては平均密度)を算出する。密度は、破材群の場合には例えば上記式(5)を用いて算出できる。
【0040】
ステップS3(決定ステップ)では、決定部3は、データベース21と、ステップS1で受け付けた指標とに基づいて、複合材50における内在物52の含有率を決定する。データベース21は、平均密度ρと内在物52の含有率とを関連付けたものである。決定される含有率は、単一の複合材50における含有率でもよく、複数の複合材50の集合体(即ち破材群)における含有率(平均的な含有率)でもよい。
【0041】
ステップS4では、決定された含有率は、表示装置32及び制御対象装置31に出力される。表示装置32への出力は、表示部5によって実行される。制御対象装置31への出力は、制御部6によって実行される。
【0042】
本開示によれば、従来使用されていた、燃焼後の残留物の質量に基づいて含有率を実測するという手法と比べて、非破壊かつ簡便、短時間に母材51又は内在物52の少なくとも一方の含有率を決定できる。これにより、例えば、複合材50が複数のロットに分けて準備され、そのロット毎に含有率がばらつく場合でも、それぞれのロットで燃焼された含有率を実測する必要が無い。そして、それぞれのロットで含有率(同一ロット内での平均的な含有率)を決定することで、決定の手間を削減できる。また、非破壊で決定できるため、生産ライン上に決定システム100を組み込むことができる。これにより、リアルタイムに含有率を把握でき、適宜添加物の添加量等の調整、含有率毎の分別等を実行できる。
【0043】
また、複合材50は、リサイクルのために回収された複合材50である必要は無く、含有率未知の複合材50であればよい。含有率未知の複合材50としては、例えば、所望含有率になるように所定製造条件で新たに複合材50を製造した場合において、製造場所(例えば製造環境)、製造ロット、製造誤差、製造装置の経年劣化等により、含有率が所望の含有率にならない可能性がある。そこで、新たに製造した複合材50の含有率を、本開示の決定システム100によって非破壊で決定できる。
【0044】
図7は、別の実施形態に係る決定システム100を示すブロック図である。決定システム100は、上記
図1に示した決定システム100において、更に、質量測定装置7及び体積測定装置8を備える。質量測定装置7は、複合材50の質量を測定するものである。質量測定装置7としては、ロードセル式、電磁式、音叉振動式等の任意の方式の装置を採用できる。質量測定装置7は、個別の装置でもよい。質量測定装置7は、複合材50の質量を連続的に決定するラインに組み込まれることで、質量がリアルタイムに測定されることが好ましい。
【0045】
体積測定装置8は、複合材50の体積を測定するものである。体積測定装置8としては、アルキメデス法、菜種置換法、気体置換法、レーザを使用する方式、三次元カメラを使用する方式、センサを使用する方式等の任意の方式の装置を採用できる。体積測定装置8は、個別の装置でもよい。体積測定装置8は、複合材50の体積を連続的に決定するラインに組み込まれることで、体積がリアルタイムに測定されることが好ましい。体積測定装置8は、例えば、当該ラインを構成するベルトコンベアの上部に設置できる。体積をより精度よく測定するため、複合材50を載置した台座を回転させる、複合材50を裏返す等の機構が備えられてもよい。
【0046】
図7に示す決定システム100では、質量測定装置7によって測定された質量と、体積測定装置8によって測定された体積とが、指標として受付部1によって受け付けられる。これにより、複合材50の質量及び体積を、含有率を決定するシステムの一部として効率よく取得できる。
【0047】
図8は、別の実施形態に係る決定システム100を示すブロック図である。決定システム100は、上記
図7に示した決定システム100において、更に、整列装置9を備える。整列装置9は、複数の複合材50を整列させるものである。整列装置9は、例えば、破砕した複合材50の集合体である破材を例えば一列に整列させる。整列は、例えば、複数の複合材50を単一の複合材50に分けて、複合材50毎に整列してもよく、一部(少なくとも2つ)の複合材50を抜き出して、抜き出した複合材50群毎に整列してもよい。
【0048】
整列装置9としては、例えば、振動を用いる方式、ライン上に組み込む場合にベルトコンベア上に仕切りを設けて、仕切りを通過させることにより揃える方式等の任意の方式を採用できる。更に、ベルトコンベアの高さ方向に仕切りを設けて複合材50の高さを揃える機構を備えることが好ましい。
【0049】
図8に示す決定システム100では、質量測定装置7は、整列装置9によって整列された、それぞれの複合材50の質量を測定する。体積測定装置8は、整列装置9によって整列された、それぞれの複合材50の体積を測定する。これにより、整列装置9によって体積の測定に影響のある複合材50の重なりを解消でき、体積の測定精度を向上できる。
【0050】
図9は、別の実施形態に係る決定システム100を示すブロック図である。決定システム100は、上記
図7に示した決定システム100において、更に、プレス装置10を備える。プレス装置10は、複合材50をプレスするものである。プレス装置10としては、例えば、油圧プレス、ホットプレス等の任意の方式を採用できる。プレスは、複合材50を所定厚さになる圧力でプレスすることが好ましい。即ち、プレスは、それぞれの複合材50の厚さが一定になるように実行することが好ましい。これにより、プレス後の厚さを実測しなくても、プレス後の複合材50の厚さを把握できる。
【0051】
図9に示す決定システム100では、体積測定装置8は、プレス装置10によってプレスされた複合材50の体積を測定する。プレス前には複合材50の内部、裏面等に空洞、凹凸があっても、プレスによってこれらを解消できる。このため、体積の測定精度を向上できる。また、上記のように、それぞれの複合材50を所定の厚さにプレスすることで、例えば2次元カメラにより取得した上方からの写真及び画像解析によって面積を求めることで、体積をより簡便に測定できる。
【0052】
図10は、別の実施形態に係る決定システム100を示すブロック図である。決定システム100は、上記
図7に示した決定システム100において、更に、分離装置11を備える。分離装置11は、複数の複合材50を含む集合体(例えば破材群)から、所定大きさ以上の複合材50を分離するものである。分離装置11は、例えば所定大きさの目開きを有する篩等であるが、これに限られない。篩上に複数の複合材50を載せて振動させることで、所定大きさ以上の複合材50を分離できる。所定大きさは、これに限られないが例えば1mm以上であり、1mm以上の大きさを有する複合材50を分離することが好ましい。これにより、微少なゴミ、破片、異物等を除去できる。
【0053】
図10に示す決定システム100では、質量測定装置7は、分離装置11によって分離された複合材50の質量を測定する。体積測定装置8は、分離装置11によって分離された複合材50の体積を測定する。これにより、ある程度の大きさを有する複合材50を用いて密度及び含有率を決定でき、測定誤差を小さくできるため、密度及び含有率の決定精度を向上できる。
【0054】
図11は、別の実施形態に係る決定システム100を示すブロック図である。決定システム100は、上記
図7に示した決定システム100において、更に、分別装置12を備える。分別装置12は、複数の複合材50を含む集合体(例えば破材群)から、有機物の種類又は無機物の種類のうちの少なくとも一方の種類が共通する複合材50を分別するものである。有機物の種類は、例えば、樹脂の種類(構成成分)等であり、例えば構成モノマーが共通する樹脂が分別される。また、無機物の種類は、例えば、無機繊維の種類、セラミックを構成する金属元素の種類等である。種類が共通するか否かの判別は、例えば、赤外吸収分光法(IR)、原子吸光法等の任意の方式を用いて実行できる。
【0055】
図10に示す決定システム100では、質量測定装置7は、分別装置12によって分別された複合材50の質量を測定する。体積測定装置8は、分別装置12によって分別された複合材50の体積を測定する。このような決定システム100によれば、複合材50が例えば樹脂、金属元素等毎の共通性に基づいて分別される。このため、指標と含有率とのデータベース21を作成した複合材50の種類とは共通しない複合材50を除外できる。これにより、含有率の推測精度を向上できる。
【0056】
図12は、別の実施形態に係る決定システム100を示すブロック図である。決定システム100は、上記
図7に示した決定システム100において、更に、追加装置13を備える。追加装置13は、決定部3が決定した含有率に基づいて、母材51及び内在物52の含有率が所望の含有率になるように、母材51又は内在物52の少なくとも一方を、含有率を決定した複合材50に追加するものである。追加される母材51、内在物52としては、それぞれ、例えば、新たな樹脂材料、バージン繊維材等である。
【0057】
追加装置13を備えることで、決定した含有率から、目的の含有率を有する目的部材を効率よく製造できる。ここでいう目的部材は、新たな複合材50でもよく、複合材50以外の別の部材でもよい。
【0058】
図13は、別の実施形態に係る決定システム100を示すブロック図である。決定システム100は、上記
図12に示した決定システム100において、更に、製造装置14及び学習部15を備える。製造装置14は、追加装置13によって母材51又は内在物52の少なくとも一方を追加した複合材50を用いて、有機物と無機物とを含む部材(不図示)を新たに製造するものである。製造の具体的な方法は特に制限されず、新たに製造される部材の種類に応じて適宜決定すればよい。新たに製造される部材は、複合材50でもよく、複合材50以外の部材でもよい。
【0059】
新たに製造される部材が例えば複合材50である場合、製造方法は以下のように例示される。含有率を決定した複合材50には、上記のように、新たに製造される複合材50の含有率が所望になるように、母材51又は内在物52の少なくとも一方が追加される。そして、母材51又は内在物52の少なくとも一方が追加された複合材50の全体を例えば溶融混錬することで内在物52を好ましくは一様に分散させ、冷却することで、新たな複合材50を製造できる。
【0060】
学習部15は、決定した複合材50の含有率と、含有率を決定した複合材50の実際の含有率、又は、含有率を決定した複合材50から製造される部材の実際の含有率と、から含有率を学習し、データベース21を修正するものである。本開示の決定システム100による含有率の決定は、例えば実測により作成されたデータベース21に基づくため、ある程度高精度に実行できる。しかし、学習部15を備えることで、決定された含有率を用いて製造された部材の含有率を用いて、データベース21に格納された情報(相関等の関連付け)を修正(更新)できる。これにより、データベース21を用いた決定精度を更に向上できる。
【0061】
学習の方法は、特に制限されず、例えば、教師あり学習、教師無し学習、強化学習等の任意の機械学習等を使用できる。また、学習の方法は、機械学習に限定されず、例えば実測された含有率を用いて、上記データベース21の作成方法と同様の方法により、データベース21を再構築してもよい。
【0062】
図13に示す決定システム100では、学習部15は、含有率を決定した複合材50から製造される部材の実際の含有率を用いて、データベース21を修正する。このようにすることで、新たな部材(複合材50等)を製造しながらデータベース21を修正できるため、修正のための作業を削減できる。また、新たな部材の製造量が増えるほど新たな部材の実際の含有率に関するデータも増えるため、データベース21の精度をより向上できる。
【0063】
データベース21を修正する具体的方法は特に制限されない。例えば、決定した含有率に基づき、母材51又は内在物52の少なくとも一方を、含有率を決定した複合材50に追加する場合、決定した含有率が実際の含有率と大きく異なることがある。この場合、新たに製造された部材における含有率が所望の含有率から大きく異なる。そこで、学習部15は、所望の含有率と実際の含有率との相違(ズレ)を小さくする(好ましくは0)にするように、データベース21を修正する。即ち、差分に基づき、データベース21を修正できる。
【0064】
また、修正は、例えば、新たに製造された部材の物性(例えば上記指標)に基づいて実行されてもよい。具体的には、新たに製造された部材における含有率が所望の含有率であれば、新たに製造された部材の物性はある程度精度よく推測できる。しかし、実際の含有率が異なれば、物性も異なることが推測される。そこで、このような物性の相違(差分)を(ズレ)を小さくする(好ましくは0)にするように、データベース21を修正することができる。
【0065】
なお、データベース21の修正が好ましいものの、データベース21の修正に代えて、又は、修正とともに、新たな部材について実測された新たな含有量に基づき、例えば、母材51又は内在物52の少なくとも一方の追加量を変更してもよい。また、新たな部材について実測された新たな含有量に基づき、例えば、新たな部材の製造条件を変更してもよい。
【0066】
実際の含有率の測定は、例えば、データベース21の作成のために測定した含有率の測定方法を採用できる。ただし、測定は、以下の内容の少なくとも何れかによって実行されることが好ましい。
【0067】
幾つかの実施形態では、学習部15は、製造装置14が製造した部材の焼成前後の質量又は比重のうちの少なくとも一方の測定によって実際の含有率を決定する。これにより、含有率に影響を与える質量又は比重の少なくとも一方を用いて、データベース21を修正できる。中でも、部材の焼成により有機物が除去され、無機物が残存する。このため、焼成前後の質量変化により、含有率を決定できる。また、焼成前後の比重の変化についても同様である。
【0068】
幾つかの実施形態では、学習部15は、製造装置14が製造した部材の実際の含有率を、決定部3を通じて決定する。このようにすることで、含有率を簡便に決定できる。
【0069】
幾つかの実施形態では、学習部15は、製造装置14が製造した部材の機械的特性を測定することによって実際の含有率を決定する。例えば無機物の含有率が異なれば、部材の機械的特性も変化する。例えば、機械的強度に優れる無機物を含む複合材50では、無機物の含有率が高いほど、複合材50の機械的強度が高くなる。そこで、含有率と機械的特性とを関連付けておくことで、部材の機械的特性に基づいて部材中の含有率を決定できる。機械的特性は、これらに限定されないが、例えば、弾性率、引張強度、曲げ強度、衝撃値、硬さ等の少なくとも1つである。
【0070】
幾つかの実施形態では、学習部15は、製造装置14が製造した部材の熱物性を測定することによって実際の含有率を決定する。上記機械的特性と同様に、例えば無機物の含有率が異なれば、部材の熱物性も変化する。例えば、熱物性に優れる無機物を含む複合材50では、無機物の含有率が高いほど、複合材50の熱物性が優れる。そこで、含有率と熱物性とを関連付けておくことで、部材の熱物性に基づいて部材中の含有率を決定できる。熱物性は、これらに限定されないが、例えば、熱伝導率、熱拡散率、線膨張係数等の少なくとも1つである。
【0071】
幾つかの実施形態では、学習部15は、製造装置14が製造した部材の溶融時における部材の流動性(溶融時流動性)を測定することによって実際の含有率を決定する。上記機械的特性と同様に、例えば無機物の含有率が異なれば、部材の溶融時流動性も変化する。例えば、溶融時流動性に優れる有機物を含む複合材50では、有機物の含有率が高い(即ち無機物の含有率が低い)ほど、複合材50の溶融時流動性が優れる。そこで、含有率と溶融時流動性とを関連付けておくことで、溶融時流動性に基づいて部材中の含有率を決定できる。溶融時流動性は、これらに限定されないが、例えば、粘度、メタルフローレート等の少なくとも1つである。
【0072】
幾つかの実施形態では、学習部15は、製造装置14が製造した部材の成型前後の収縮率を測定することによって実際の含有率を決定する。上記機械的特性と同様に、例えば無機物の含有率が異なれば、部材の成型前後の収縮率も変化する。例えば、収縮率が高い無機物を含む複合材50では、無機物の含有率が高いほど、複合材50の成型前後の収縮率が大きくなる。このため、含有率と収縮率との間には、ある程度の相関性が認められる。そこで、含有率と収縮率とを関連付けておくことで、成型前後の収縮率の変化に基づいて部材中の含有率を決定できる。収縮率は、例えば、成型前後の寸法変化に基づいて決定できる。
【0073】
幾つかの実施形態では、学習部15は、製造装置14が製造した部材の電気特性を測定することによって実際の含有率を決定する。上記機械的特性と同様に、例えば無機物の含有率が異なれば、部材の電気特性も変化する。例えば、電気特性に優れる無機物を含む複合材50では、無機物の含有率が高いほど、複合材50の電気特性に優れる。このため、含有率と電気特性との間には、ある程度の相関性が認められる。そこで、含有率と電気特性とを関連付けておくことで、部材の電気特性の変化に基づいて部材中の含有率を決定できる。電気特性は、例えば、導電率、比誘電率である。
【符号の説明】
【0074】
1 受付部
10 プレス装置
100 決定システム
11 分離装置
12 分別装置
13 追加装置
14 製造装置
15 学習部
2 記憶部
21 データベース
3 決定部
30 入力装置
31 制御対象装置
32 表示装置
5 表示部
50 複合材
51 母材
52 内在物
6 制御部
7 質量測定装置
8 体積測定装置
9 整列装置