(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022557
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】繊維強化樹脂の製造方法、繊維強化樹脂の製造システム、及び、構造物
(51)【国際特許分類】
B29B 7/00 20060101AFI20250206BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20250206BHJP
B29B 9/04 20060101ALI20250206BHJP
B29B 17/04 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
B29B7/00 ZAB
C08J3/20 B CER
C08J3/20 CEZ
B29B9/04
B29B17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127246
(22)【出願日】2023-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】島田 遼太郎
(72)【発明者】
【氏名】中土 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 漢
(72)【発明者】
【氏名】石田 剛
(72)【発明者】
【氏名】崎山 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴之
(72)【発明者】
【氏名】寺門 和宏
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 雅浩
(72)【発明者】
【氏名】栗城 潤也
【テーマコード(参考)】
4F070
4F201
4F401
【Fターム(参考)】
4F070AA15
4F070AB08
4F070AB16
4F070AB26
4F070AD02
4F070AD04
4F070AE01
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4F070FB09
4F201AA04
4F201AA11
4F201AA45
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4F201AA50
4F201AB25
4F201AH42
4F201AM02
4F201AM14
4F201AR12
4F201BA01
4F201BA02
4F201BC01
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4F201BD04
4F201BK74
4F201BL05
4F201BL25
4F401AA09
4F401AA10
4F401AA11
4F401AD08
4F401BA13
4F401CA14
4F401CA78
4F401DB01
4F401DC04
4F401FA07Y
4F401FA20Z
(57)【要約】
【課題】所望の物性を達成可能な繊維強化樹脂の製造方法を提供する。
【解決手段】繊維強化樹脂の製造方法は、回収工程S1と、洗浄工程S2と、破砕工程S3と、均質化工程S4と、ペレット化工程S5と、検査工程S6と、第1決定工程S7と、第2決定工程S8と、混合工程S9と、製造工程S10とを含む。これらのうち、検査工程S6は、使用済みの繊維強化樹脂に含まれる繊維の状態である繊維状態を検査する工程である。混合工程S9は、繊維状態に応じた所定比率で、使用済みの前記繊維強化樹脂と、母材樹脂と、バージン材である原料繊維と、を混合する工程である。製造工程S10は、混合工程S9で得られた混合物を用いて、再生された繊維強化樹脂である再生繊維強化樹脂を製造する工程である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済みの繊維強化樹脂に含まれる繊維の状態である繊維状態を検査する検査工程と、
前記繊維状態に応じた所定比率で、使用済みの前記繊維強化樹脂と、母材樹脂と、バージン材である原料繊維と、を混合する混合工程と、
前記混合工程で得られた混合物を用いて、再生された繊維強化樹脂である再生繊維強化樹脂を製造する製造工程と、を含む
ことを特徴とする繊維強化樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記混合工程では、使用済みの前記繊維強化樹脂を成型したペレットと、前記母材樹脂のペレットと、前記原料繊維を樹脂中に含むペレットと、が混合される
ことを特徴とする請求項1に記載の繊維強化樹脂の製造方法。
【請求項3】
使用済みの前記繊維強化樹脂の粉砕及び成型により、使用済みの前記繊維強化樹脂により構成されるペレットを製造するペレット化工程を含み、
前記混合工程では、前記ペレット化工程で製造された前記ペレットが混合される
ことを特徴とする請求項2に記載の繊維強化樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記再生繊維強化樹脂への要求品質を満たすように、前記再生繊維強化樹脂での繊維含有率と、前記再生繊維強化樹脂における全繊維に対する原料繊維の割合と、を含む条件を決定する第1決定工程と、
前記第1決定工程で決定された前記条件に基づいて、前記混合工程での使用済みの前記繊維強化樹脂と、前記母材樹脂と、前記原料繊維と、の混合比率を決定する第2決定工程と、を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の繊維強化樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記再生繊維強化樹脂は、繊維長500μm以下の第1繊維と、繊維長1000μm以上の第2繊維とを含む
ことを特徴とする請求項4に記載の繊維強化樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記第1決定工程では、前記再生繊維強化樹脂への要求品質と、前記繊維含有率と、前記割合と、を関連付けたデータベースを用いて、所望とする前記要求品質に対応する、前記繊維含有率及び前記割合を決定する
ことを特徴とする請求項4に記載の繊維強化樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記繊維状態は、使用済みの前記繊維強化樹脂に含まれる前記繊維の含有率を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の繊維強化樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記母材樹脂は、再生された熱可塑性樹脂を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の繊維強化樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記混合工程では、更に、エラストマが混合される
ことを特徴とする請求項1に記載の繊維強化樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記エラストマは、ペレット状を有する
ことを特徴とする請求項9に記載の繊維強化樹脂の製造方法。
【請求項11】
前記エラストマは、ポリプロピレン-ポリエチレンエラストマを含む
ことを特徴とする請求項9に記載の繊維強化樹脂の製造方法。
【請求項12】
前記エラストマは、水素添加エチレン-ブタジエン-スチレンエラストマを含む
ことを特徴とする請求項9に記載の繊維強化樹脂の製造方法。
【請求項13】
前記エラストマは、少なくとも表面が酸変性されたエラストマを含む
ことを特徴とする請求項9に記載の繊維強化樹脂の製造方法。
【請求項14】
使用済みの繊維強化樹脂に含まれる繊維の状態である繊維状態を検査する検査装置と、
前記繊維状態に応じた所定比率で、使用済みの前記繊維強化樹脂と、母材樹脂と、バージン材である原料繊維と、を混合する混合装置と、
前記混合装置で得られた混合物を用いて、再生された繊維強化樹脂である再生繊維強化樹脂を製造する製造装置と、を備える
ことを特徴とする繊維強化樹脂の製造システム。
【請求項15】
使用済みの繊維強化樹脂に含まれる繊維の状態である繊維状態を検査する検査工程と、
前記繊維状態に応じた所定比率で、使用済みの前記繊維強化樹脂と、母材樹脂と、バージン材である原料繊維と、を混合する混合工程と、
前記混合工程で得られた混合物を用いて、再生された繊維強化樹脂である再生繊維強化樹脂を製造する製造工程と、を含む製造方法により得られた成型品を備える
ことを特徴とする構造物。
【請求項16】
前記成型品は、洗濯機、掃除機、冷蔵庫、加熱調理器、又は空気調和機の少なくとも1種の構造物を構成する部品である
ことを特徴とする請求項15に記載の構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、繊維強化樹脂の製造方法、繊維強化樹脂の製造システム、及び、構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化樹脂のリサイクルが試みられている。繊維強化樹脂のリサイクルに関する技術として、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1の要約書には「ガラス繊維強化熱可塑性樹脂を再溶融混練して、再生する方法において、(A)再生用ガラス繊維強化熱可塑性樹脂、(B)非再生熱可塑性樹脂、および(C)非再生ガラス繊維の配合量をそれぞれa、b、c重量部としたとき、a+b+c=100、a>0、b>0、c≧0、a/(b+c)<0.8を満足し、かつ、(A)再生用ガラス繊維強化熱可塑性樹脂を(B)非再生熱可塑性樹脂が溶融状態である工程に供給することを特徴とするガラス繊維強化熱可塑性樹脂のリサイクル方法。」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
繊維強化樹脂は、例えば使用されていた製品、製品中での使用部位等に応じて、異なる繊維含有率、異なる繊維長等を有する。このため、繊維強化樹脂における繊維の状態である繊維状態(繊維含有率、繊維長、繊維長分布等)は、例えば回収された使用済みの繊維強化樹脂によって異なる。しかし、特許文献1に記載の技術では、繊維状態を考慮せずに所定比率で、使用済み熱可塑性樹脂、被災性熱可塑性樹脂、及び非再生ガラス繊維が混合される(段落0014)。従って、使用済みの繊維強化樹脂を用いて新たに製造された繊維強化樹脂(再生繊維強化樹脂)の物性が所望の物性にならない可能性がある。
本開示が解決しようとする課題は、所望の物性を達成可能な繊維強化樹脂の製造方法、繊維強化樹脂の製造システム、及び、構造物の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の繊維強化樹脂の製造方法は、使用済みの繊維強化樹脂に含まれる繊維の状態である繊維状態を検査する検査工程と、前記繊維状態に応じた所定比率で、使用済みの前記繊維強化樹脂と、母材樹脂と、バージン材である原料繊維と、を混合する混合工程と、前記混合工程で得られた混合物を用いて、再生された繊維強化樹脂である再生繊維強化樹脂を製造する製造工程と、を含む。その他の解決手段は発明を実施するための形態において後記する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、所望の物性を達成可能な繊維強化樹脂の製造方法、繊維強化樹脂の製造システム、及び、構造物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の繊維強化樹脂の製造方法を示すフローチャートである。
【
図2】再生繊維強化樹脂への要求品質と、繊維含有率と、割合と、を関連付けたデータベースの一例を示す図である。
【
図3】エラストマの効果を検証するための実験結果を示す図である。
【
図5】使用済み繊維強化樹脂に由来する第1繊維を使用せず、バージン材由来の第2繊維のみを使用した繊維強化樹脂の電子顕微鏡写真である。
【
図6】
図5に示す繊維強化樹脂における繊維長分布を示すグラフである。
【
図7】含まれる繊維のうち、使用済み繊維強化樹脂に由来する第1繊維が40質量%、バージン材に由来する第2繊維が60質量%である再生繊維強化樹脂の電子顕微鏡写真である。
【
図8】
図7に示す再生繊維強化樹脂における繊維長分布を示すグラフである。
【
図9】バージン材由来の第2繊維を使用せず、使用済み繊維強化樹脂に由来する第1繊維のみを使用した再生繊維強化樹脂における繊維長分布を示すグラフである。
【
図10】本開示の繊維強化樹脂の製造システムを示す系統図である。
【
図11】制御装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本開示を実施するための形態(実施形態と称する)を説明する。以下の一の実施形態の説明の中で、適宜、一の実施形態に適用可能な別の実施形態の説明も行う。本開示は以下の一の実施形態に限られず、異なる実施形態同士を組み合わせたり、本開示の効果を著しく損なわない範囲で任意に変形したりできる。また、同じ部材については同じ符号を付すものとし、重複する説明は省略する。更に、同じ機能を有するものは同じ名称を付すものとする。図示の内容は、あくまで模式的なものであり、図示の都合上、本開示の効果を著しく損なわない範囲で実際の構成から変更したり、図面間で一部の部材の図示を省略したり変形したりすることがある。また、同じ実施形態で、必ずしも全ての構成を備える必要はない。
【0009】
図1は、本開示の繊維強化樹脂(以下、適宜「FRP」という)の製造方法(以下、単に本開示の製造方法という)を示すフローチャートである。本開示の製造方法は、使用済みのFRP(以下、適宜「使用済みFRP」という)を使用して、新たなFRPを製造する方法である。使用済みFRPを用いて新たに製造されるFRPは、使用済みFRPと区別するため、以下においては便宜のため、再生繊維強化樹脂(以下、適宜「再生FRP」という)ということがある。使用済みFRP及び再生FRPは、何れも、FRPの一形態である。製造は、適宜、使用済みFRPに含まれていた樹脂と同種の樹脂(母材樹脂。例えば再生した樹脂)と、使用済みFRPに含まれていた繊維と同種の繊維(原料繊維。例えばバージン材)とを更に使用して行われる。
【0010】
本開示の製造方法は、回収工程S1と、洗浄工程S2と、破砕工程S3と、均質化工程S4と、ペレット化工程S5と、検査工程S6と、第1決定工程S7と、第2決定工程S8と、混合工程S9と、製造工程S10とを含む。本開示の製造方法は、例えば、後記の製造システム100(
図10)を用いて実行できる。
【0011】
回収工程S1は、例えば廃品回収場等から、使用済みFRPを回収する工程である。FRPは、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、天然由来繊維(セルロースナノファイバ等)等の繊維で強化した樹脂である。樹脂は例えば熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂である。使用済みFRPは、例えば、洗濯機等の白物家電、車両、産業機械等の構造物で使用されていたものであるが、特に制限されない。
【0012】
使用済みFRPに含まれる繊維の量は、例えば、回収された使用済みFRPのロット、FRPにより構成されていた成型品、当該成型品の製造メーカ、当該製品の製造時期等によって異なる。そこで、詳細は後記するが、本開示の製造方法は、回収したFRPに含まれる繊維量が決定される。そして、決定した繊維量に基づいて、再生FRPの製造に使用される使用済みFRPの使用量が決定される。回収される使用済みFRPの形態は、使用済みFRPで構成された成型品の形態そものでもよく、成型品を適宜破砕したものでもよい。
【0013】
洗浄工程S2は、回収工程S1で回収された使用済みFRPを洗浄する工程である。洗浄は、適宜、例えば大きさ、種類等の項目別に分別された使用済みFRPに対して行われてもよい。洗浄は、例えば、水、有機溶剤(アルコール等)等の任意の洗浄液を用いて実行できる。
【0014】
破砕工程S3は、洗浄工程S2で洗浄した使用済みFRPを破砕する工程である。破砕により、フレーク状の使用済みFRPが得られる。破砕の程度は任意であるが、例えば、後記するペレット化可能な程度に破砕することが好ましく、例えば1mm~5mmの大きさ(最も長い部分の長さ)を有するように破砕することができる。また、破砕は、例えば、回収した使用済みFRPのロット毎(例えば回収時期毎、回収場所毎等)に実行できる。
【0015】
均質化工程S4は、破砕工程S3で得られたロット毎のフレークを、例えばロットを跨いで混合する工程である。上記のように、使用済みFRPのロット毎に、繊維の含有量が異なり易い。そこで、異なるロットのフレークを混合し、所定量毎に秤量し直すことで、繊維量の大きなばらつきを低減し、フレークの均質化を実行できる。本開示では、均質化により繊維量の大きなばらつきを抑制したうえで、更に、後記する検査工程S6でペレットの繊維状態(繊維量等)が検査される。
【0016】
ペレット化工程S5は、使用済みFRPの粉砕及び成型により、使用済みFRPにより構成されるペレットを製造する工程である。ペレット化工程S5では、均質化工程S4で均質化したフレークの成型(造粒)により、使用済みFRPのペレットが得られる。ペレットは、例えば、直径が5mm~1cm程度、高さが1cm~2cm程度の円柱状を有するが、ペレットの形状はこれに限定されない。
【0017】
検査工程S6は、使用済みFRPに含まれる繊維の状態である繊維状態を検査する工程である。検査工程S6では、ペレット化工程S5で得られたペレットの検査により、ペレットの繊維状態が把握される。ここで把握された繊維状態(後記の含有率等)は、後記の第2決定工程S8で使用される。
【0018】
繊維状態は、使用済みFRPに含まれる繊維の含有率を含む。従って、検査工程S6で繊維状態を検査することで、例えば、単位質量(単位個数でもよい)あたりのペレットに含まれる繊維量である繊維の含有率を決定できる。なお、繊維状態は、例えば繊維長、繊維長分布。繊維の曲がり具合等でもよく、繊維の含有率に限定されない。
【0019】
繊維の含有率等の繊維状態の決定方法は特に制限されず、例えばペレットを破壊(例えば燃焼)して含有率を実測する方法のほか、例えば以下に示すような、非破壊の決定方法によっても決定できる。
【0020】
使用済みFRPを構成する樹脂としては、FRPにより構成されていた製品、当該製品におけるFRPの使用部位、FRPの用途、当該製品のメーカ、等によって多少異なるが、ある程度樹脂の種類が想定できる。また、使用済みFRPにおける樹脂の種類は、例えば分析装置を用いた非破壊の方法を用いて、繊維の含有率を決定するよりも容易に決定できる。従って、使用済みFRPに含まれる樹脂の物性、種類等はある程度推測でき、含有率ほど大きくばらつくことは少ない。このため、FRPに含まれる樹脂の密度を容易に把握できる。
【0021】
一方で、FRPには繊維が含まれるから、FRPの密度は、当該FRPと全く同じ大きさの樹脂の密度とは繊維の分だけ異なる。そして、含有率と密度とは相関するため、密度を把握できることで、含有率を決定できる。具体的には例えば、密度が樹脂よりも大きな繊維を含む場合、繊維の含有率が高いほど、FRPの全体の密度も大きくなる。従って、含有率とFRPの密度とを予め関連付けておくことで、FRPの密度から含有率を決定できる。また、FRPの密度は、FRPの質量及び大きさ(寸法)に基づいて容易に決定できる。このため、使用済みFRPにおける含有率を非破壊で容易に決定できる。
【0022】
なお、含有率は、上記のように非破壊で検査することが好ましい。しかし、例えばロット毎に例えば燃焼試験等を行って樹脂を燃焼除去し、残った繊維量を実測することで、含有率を決定してもよい。
【0023】
第1決定工程S7は、使用済みFRPを使用して製造される再生FRPへの要求品質を満たすように、再生FRPでの繊維含有率Vfと、再生FRPにおける全繊維に対する原料繊維(バージン材)の割合φvと、を含む条件を決定する工程である。従って、繊維含有率Vf及び割合φvは、例えば洗濯機等の構造物20(後記)で使用される成型品(使用済みFRPを使用しない現行のFRPで構成)の目標品質(目標スペック)に応じて決定される。再生FRPでの繊維含有率Vfは、再生FRPにおいて、使用済みFRPに含まれていた繊維と、新たに使用するバージン材である繊維(原料繊維)とである全繊維(繊維全体)の含有率である。割合φvは、当該全繊維のうち、バージン材である原料繊維が占める割合である。
【0024】
図2は、再生FRPへの要求品質と、繊維含有率Vfと、割合φvと、を関連付けたデータベース11の一例を示す図である。データベース11は、
図2の例ではグラフGであるが、例えば表、関数等でもよい。繊維含有率Vfの単位は例えば質量%、割合Vfの単位は例えば無次元である。データベース11は、例えば、樹脂毎及び繊維毎に作成されることが好ましい。
【0025】
データベース11では、水平方向に、繊維含有率Vfと、割合φvを1から引いた値(1-φv)との両軸が直交して延在する。また、これらの軸に直交するように鉛直方向に、再生FRPの要求品質に関する軸が延在する。要求品質は数値化可能な指標である。点Pは、使用済みFRPを含まない場合(即ち、再生FRPにおいて、全繊維に対する原料繊維の割合φvが1の場合)である。点Qは、二点鎖線で示す水平面S上に点Pとともに含まれる。点Pと点Qとは、同じ値の要求品質を有する。従って、点Qは、一般的なFRPの要求品質(点P)と同程度の要求品質を有する再生FRPの品質である。点Qは、グラフGと水平面Sとの交点ともいえる。
【0026】
グラフGは、繊維含有率Vfと、割合φvとの組み合わせを変えてFRPを実際に作成し、FRPへの要求品質毎に試験(実験)を行うことで作成したものである。要求品質は、以下で説明する引張強度のほか、例えば、引張伸び、曲げ強度、曲げ弾性率、衝撃強度(例えば室温、氷点下等)、熱変形温度、メルトフローレート、ねじ閉めトルク等の機会特定が挙げられる。データベース11は、例えば、要求品質の種類毎に作成できる。
【0027】
本開示の製造方法により製造された再生FRPは、所望の用途への使用が予定される。従って、用途に応じて、再生FRPへの要求品質も異なる。例えば高い引張強度が要求される用途に再生FRPが使用される場合、再生FRPへの要求品質として、所定以上の引張強度が要求される。
【0028】
どの程度の引張強度が要求されるかは、使用済みFRPを使用しない一般的なFRP(バージン材の樹脂及び繊維を使用)を用いて決定できる。ここで決定されるのは、点Pの位置である。この決定により、高さ方向に延在する要求品質における位置(高さ位置)が決定されるから、水平面Sの高さ方向位置が決定される。そして、決定した水平面SとグラフGとの交点である点Qの位置を決定することで、点Qに対応する繊維含有率Vf及び割合φvを決定できる。
【0029】
図1に戻って、第1決定工程S7では、再生FRPへの要求品質と、繊維含有率Vfと、割合Vfと、を関連付けたデータベース11(
図2)を用いて、所望とする要求品質に対応する、繊維含有率Vf及び割合Vfが決定される。データベース11を用いることで、要求品質を達成可能な繊維含有率Vf及び割合Vfを決定でき、要求品質を満たす再生FRPを製造できる。
【0030】
第2決定工程S8は、第1決定工程S7で決定された条件(繊維含有率Vf及び割合Vf)に基づいて、混合工程S9での使用済みFRPと、母材樹脂と、バージン材である原料繊維と、の混合比率を決定する工程である。
【0031】
上記のように、検査工程S6において、使用済みFRPの含有率が決定される。そして、再生FRPにおける全繊維の目標含有率である繊維含有率Vfと、再生FRPにおける全繊維に対する原料繊維の割合φvとの差分が、使用済みFRPに含まれていた繊維(再生繊維)の量である。このため、上記第1決定工程S7において繊維含有率Vf及び割合φvが決定されることで、決定した含有率で繊維を含む使用済みFRPの例えばペレットの使用量を決定できる。これにより、混合工程S9での使用済みFRPと母材樹脂と原料繊維との混合比率を決定できる。
【0032】
混合工程S9は、繊維状態(例えばペレット中の繊維の含有率)に応じた所定比率で、使用済みFRPと、母材樹脂と、バージン材である原料繊維と、を混合する工程である。混合条件は特に制限されないが、樹脂及び適宜エラストマ(後記)を溶融でき、樹脂、エラストマ及び繊維を混錬できる条件が好ましい。混合される使用済みFRPは、本開示の例では、検査工程S6で繊維の含有率を決定したペレットである。混合工程S9で使用される母材樹脂は、例えば、ペレット状を有する。更に、原料繊維は、例えば、ペレット状の母材樹脂に予め練り込んだマスターバッチの形態とすることが好ましい。ただし、原料繊維は、母材樹脂とは分離した形態で、混合されてもよい。
【0033】
バージン材である原料繊維の使用量は、再生FRPに含まれる繊維全体に対して、40質量%以下であることが好ましい。この範囲にすることで、再生FRPに含まれる長繊維の量を相対的に減少できる。長繊維が多いと再生FRPの収縮率及び膨張率が大きくなる傾向になるため、長繊維の量を相対的に減少させることで、収縮率及び膨張率の過度の増大を抑制できる。
【0034】
混合工程S9では、使用済みの前記FRPを成型したペレットと、母材樹脂のペレット(例えばマスターバッチ)と、原料繊維を樹脂(例えば母材樹脂と同種の樹脂)中に含むペレット(例えばマスターバッチ)と、が混合される。従って、混合工程S9では、上記ペレット化工程S5で製造されたペレットが混合される。これにより、原料繊維を全体に分散させ易くでき、混合むらを抑制できる。また、母材樹脂及び原料繊維もペレットの形状で混合されることで、全ての原料が乾燥状態で混合(ドライブレンド)される。これにより、使用済みFRP、母材樹脂及び原料繊維の各使用量を独立して調整できるため、所望の物性を有する再生FRPを製造し易くできる。
【0035】
混合工程S9で混合される母材樹脂は、再生された熱可塑性樹脂(例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレンテレフタレート等)を含むことが好ましい。使用済みFRP及び再生FRPは、何れも同種の樹脂を含む。そして、これらに含まれる樹脂は熱可塑性樹脂であり、中でも、再生された熱可塑性樹脂であることが好ましい。再生された熱可塑性樹脂を含むことで、バージン材の熱可塑性樹脂の使用量を削減でき、再生FRPにおける再生材量の使用割合を向上できる。再生された熱可塑性樹脂は、母材樹脂のペレットに含まれてもよく、繊維を含む樹脂ペレットに含まれてもよい。
【0036】
混合工程S9では、更にエラストマが混合されることが好ましい。エラストマは高い弾性力を有する。一方で、使用済みFRPに由来する繊維長は短く脆いため、例えば耐衝撃強度等の物性が、長繊維を含む場合よりも低下し得る。そこで、エラストマを使用することで、再生FRPの弾性力を高め、このように低下した物性(衝撃強度)等を回復できる。
【0037】
混合されるエラストマは、ペレット状を有することが好ましい。ペレット状のエラストマを混合することで、再生FRPの全体にエラストマが分散し易くなり、再生FRPの局所的な物性変化を抑制できる。ペレットの形状は、例えば、高さが2mm~3mm、直径1mm~2mmの柱状にすることができる。
【0038】
エラストマの使用量は、再生FRPの全体に対して、例えば1.5質量%以上15質量%以下、好ましくは2.5質量%以上15質量%以下にできる。
【0039】
エラストマの種類は1種のみでもよく2種以上でもよい。エラストマは、ポリプロピレン-ポリエチレンエラストマを含むことが好ましい。ポリプロピレン-ポリエチレンエラストマは汎用されているため、ポリプロピレン-ポリエチレンエラストマを使用することで、再生FRPの製造コストを削減できる。
【0040】
エラストマは、水素添加エチレン-ブタジエン-スチレンエラストマを含むことが好ましい。水素添加エチレン-ブタジエン-スチレンエラストマは、二重結合部分に水素添加がされているため、再生FRPに混合した後でもエラストマ中の二重結合を起点とするエラストマの劣化を抑制できる。
【0041】
エラストマは、少なくとも表面が酸変性されたエラストマを含むことが好ましい。再生FRPにおいて、エラストマは、繊維に対し、エラストマの表面で接触する。このため、エラストマ表面の酸が繊維に作用し、繊維表面の劣化を回復できる。これにより、エラストマと繊維との接合強度が向上し、再生FRPの耐久性を向上できる。酸変性の方法は特に制限されないが、例えばマレイン酸等の酸をエラストマの少なくとも表面に作用させることで実行できる。
【0042】
図3は、エラストマの効果を検証するための実験結果を示す図である。
図3に示すグラフは、エラストマ(ポリプロピレン-ポリエチレンエラストマ、エクソンモービル社製Vistamaxx)の添加の有無によりFRPの物性がどのように変化したのかを示すグラフである。実施例1~3は、参考例1における各物性の値を1とする相対値で示した。
【0043】
実線(参考例1)は、FRPにおける全繊維に対する原料繊維(バージン材)の割合φvが1(即ち使用済みFRPを含まない)のFRPの結果である。間隔が広い破線(実施例1)は、割合φvが0.75であり、かつ、エラストマを含まないFRPの結果である。間隔が狭い破線(実施例2)は、割合φvが0.75であり、かつ、エラストマの含有量が、FRPの全体に対して2.5質量%であるFRPの結果である。点線(実施例3)は、割合φvが0.75であり、かつ、エラストマの含有量が、FRPの全体に対して10質量%であるFRPの結果である。
【0044】
実験は、6つの物性について行った。物性は、引張降伏点強度、引張破断点延び、曲げ強度、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度(23℃、-10℃)である。引張降伏点強度及び引張破断点延びはASTM D638に準拠して測定した。曲げ強度及び曲げ弾性率はASTM D790に準拠して測定した。アイゾット衝撃強度(23℃、-10℃)は、ASTM D256に準拠して測定した。
【0045】
図3に示すように、エラストマを使用した実施例2、3は、エラストマを使用しない実施例1よりも、例えばアイゾット衝撃強度(23℃、-10℃)で上回った。従って、エラストマを使用することで、耐衝撃強度を向上できることがわかった。また、実施例2、3は、引張破断点延びについても、実施例1より向上していた。
【0046】
図1に戻って、製造工程S10(成型工程)は、混合工程S9で得られた混合物を用いて、再生されたFRPである再生FRPを製造する工程である。製造の具体的方法は特に制限されないが、例えば、混合工程S9で得られた混合物を射出成型機(不図示)に供給し、射出成型を用いた成型により、再生FRPからなる成型品21(
図4)を得ることができる。ただし、混合工程S9で得られた混合物を冷却して固化するだけで再生FRPが製造できるため、成型は必須ではない。また、成型の具体的方法も、射出成型機に限定されず、押出成型等の任意の成型方法を利用できる。
【0047】
図4は、本開示の構造物20を示す斜視図である。構造物20は、本開示の製造方法により得られた成型品21を備える。
図4の例では、構造物20は洗濯機(洗濯乾燥機)であり、成型品21はベローズである。ベローズには洗濯槽内の洗濯物が接触するため、高い耐衝撃性能が要求される。このため、ベローズは例えばFRPで構成される。
【0048】
成型品21は、使用済みFRPに由来する繊維及び樹脂を含む。特に繊維については、使用済みFRPの回収過程、本開示の製造方法における各工程(破断、混練等)において、繊維長、繊維長分布、曲げの程度等の変化が意図せず生じる。このため、最終産物である成型品21における物性(繊維長等)を規定できない。そこで、成型品21を表現するため、成型品21は、製造方法により特定される。
【0049】
構造物20は洗濯機に、成型品21はベローズに限定されない。例えば、成型品21は、上記洗濯機のほか、掃除機、冷蔵庫、加熱調理器、又は空気調和機の少なくとも1種の構造物20を構成する部品であることが好ましい。これらは家庭等から大量に廃棄される製品であるため、使用済みFRPを回収し易い。そこで、回収し易い使用済みFRPから得られた再生FRPを、再度これらの製品に使用することで、材料を循環利用できる。
【0050】
成型品21は、上記のように本開示の製造方法により得られるものであり、使用済みの樹脂及び繊維を含む。このため、いずれもバージン材である樹脂及び繊維を使用した成型品と比べて、見た目が異なり易い。そこで、成型品21は、構造物20の使用中に使用者の目に入り難い、又は、使用者が意識して視ないような部位に配置されることが好ましい。これにより、通常のFRPとは異なり得る見た目(外観)に起因する使用者への不安感の発生を抑制できる。
【0051】
再生FRPは、使用済みFRPに由来する第1繊維と、原料繊維であるバージン材由来の第2繊維とを含む。第1繊維と第2繊維との各繊維長を比較すると、破砕等を経ることで繊維長を制御できない第1繊維の方が、第2繊維よりも短い傾向にある。従って、再生FRPにおける繊維長分布が特徴的である。
【0052】
図5は、使用済みFRPに由来する第1繊維を使用せず、バージン材由来の第2繊維のみを使用したFRP(一般的なFRP、従来のFRP)の電子顕微鏡写真である。
図5は、FRPを破断し、破断面を撮影することで得られた画像である。繊維に起因する性能を樹脂に付与することで得られるFRPの性能発揮のためには、繊維長はある程度長くなる(例えば500μm以上)。このため、
図5に示すように、白色で示される、ある程度長い繊維が、破断面に突出(露出)している。
【0053】
図6は、
図5に示すFRPにおける繊維長分布を示すグラフ(頻度分布図)である。横軸は繊維長であり、例えば「~500μm」の項目は、1μm~500μmの長さを有する繊維を意味する。頻度が大きいほど、FRPにおける含有量が多いことを意味する。縦軸は頻度(検出頻度)である。頻度は、例えばFRPの樹脂を燃焼、任意の溶媒に溶解する等して除去した後、残存する繊維長を例えば実測することで測定できる。これらの点は、後記の
図8、
図9において同様である。
【0054】
図6に示すように、501μm~1000μm(項目でいえば「~1000μm」)の繊維が最も多く、次いで、1μm~500μm(項目でいえば「~500μm」)の繊維が多かった。更に、1001μm~1500μm、及び1501μm~2000μmの繊維も存在していた。
【0055】
図7は、含まれる繊維のうち、使用済みFRPに由来する第1繊維が40質量%、バージン材に由来する第2繊維が60質量%である再生FRPの電子顕微鏡写真である。撮影方法は上記
図5と同様である。しかし、上記
図5と比べて、破断面に突出している繊維の長さが有意に短くなったことがわかる。即ち、上記
図5では、紙面手前側に突出する白い棒状の繊維が多数確認できるが、
図7では、そのような繊維は殆ど確認できない。
【0056】
図8は、
図7に示す再生FRPにおける繊維長分布を示すグラフである。再生FRPでは、1μm~500μm(項目でいえば「~500μm」)の繊維が最も多く、次いで、501μm~1000μm(項目でいえば「~1000μm」)の繊維が多かった。更に、1001μm~1500μm、及び1501μm~2000μmの繊維も存在していた。従って、最も多い繊維長の範囲が、上記の
図6とは異なっていた。
【0057】
図9は、バージン材由来の第2繊維を使用せず、使用済みFRPに由来する第1繊維のみを使用した再生FRPにおける繊維長分布を示すグラフである。上記
図6及び
図8とは異なり、1001μmを超える繊維は検出されなかった。即ち、再生FRPに含まれる繊維長は1000μm以下であり、中でも、1μm以上500μm以下の繊維長を有する繊維が多かった。特に、201μm以上300μm以下(項目でいえば「~300μm」)の繊維が最も多かった。
【0058】
上記
図6、
図8、
図9に示すように、使用済みFRPを使用することで(
図8、
図9)、使用済みFRPを使用しない場合と比べて(
図6)、繊維長500μm以下の分布が有意に増えることがわかった。一方で、バージン材由来の第2繊維を使用することで(
図8)、第2繊維を使用しない場合と比べて(
図9)、再生FRPにおいて繊維長1000μm以上の繊維が残存することもわかった。従って、FRPにおいて、繊維長500μm以下の第1繊維と、繊維長1000μm以上の第2繊維とが混在していれば、そのFRPは、再生FRPであるとわかる。即ち、再生FRPは、繊維長500μm以下の第1繊維と、繊維長1000μm以上の第2繊維とを含む。
【0059】
図10は、本開示のFRPの製造システム100を示す系統図である。製造システム100は、使用済みFRPを使用して、新たなFRPを製造するシステムである。本開示の製造方法(
図1)は、製造システム100によって実行できる。
【0060】
製造システム100は、回収装置1と、洗浄装置2と、破砕装置3と、均質化装置4と、ペレット化装置5と、検査装置6と、混合装置9と、製造装置10とを備える。また、製造システム100は制御装置13を備え、制御装置13はデータベース11及び演算制御部12を備える。製造システム100は、バージン材である原料繊維を貯留するタンク14と、タンク14から混合装置9に供給する原料繊維量を調整する調整機構15とを備える。なお、タンク14には、タンク17に貯留された樹脂と同種の樹脂中に繊維を含むペレットの状態で、原料繊維が貯留される。製造システム100は、樹脂(例えば再生された熱可塑性樹脂)を貯留するタンク17と、タンク17から混合装置9に供給する樹脂量を調整する調整機構16とを備える。製造システム100は、混合装置9に供給する使用済みFRPの量を調整する調整機構18を備える。
【0061】
回収装置1は、例えば廃品回収場等から、使用済みFRPを回収する装置である。回収装置1は例えばベルトコンベア等の搬送装置を備える。回収装置1は、回収工程S1(
図1)を実行する。洗浄装置2は、回収装置1で回収されたFRPを洗浄する装置である。洗浄装置2は、洗浄工程S2(
図1)を実行する。破砕装置3は、洗浄装置2で洗浄したFRPを破砕する装置である。破砕装置3は、破砕工程S3(
図1)を実行する。均質化装置4は、破砕装置3で得られたロット毎のフレークを混合する装置である。均質化装置4は、均質化工程S4(
図1)を実行する。
【0062】
ペレット化装置5は、使用済みFRPの粉砕及び成型により、使用済みFRPにより構成されるペレットを製造する装置である。ペレット化装置5は、ペレット化工程S5(
図1)を実行する。検査装置6は、使用済みFRPに含まれる繊維の状態である繊維状態を検査する装置である。検査装置6により、例えば、使用済みFRPにより構成されるペレット中の例えば繊維の含有率Vxが決定される。決定されたVxは、演算制御部12に入力される。検査装置6は、検査工程S6(
図1)を実行する。
【0063】
混合装置9は、繊維状態に応じた所定比率で、使用済みFRPと、母材樹脂と、バージン材である原料繊維と、を混合する装置である。
図10の例では、混合装置9において、使用済みFRPの混合比率はx(-)、原料繊維の混合比率はy(-)、樹脂の混合比率はz(-)である。x、y、zは、データベース11から読み出された繊維含有率Vf及び割合φvを用いて、演算制御部12によって決定される。混合装置9は、混合工程S9(
図1)を実行する。製造装置10は、混合装置9で得られた混合物を用いて、再生されたFRPである再生FRPを製造する装置である。製造装置10は、製造工程S10(
図1)を実行する。
【0064】
制御装置13(中でも演算制御部12)は、第1決定工程S7及び第2決定工程S8を実行する。従って、制御装置13は、データベース11を用いて、再生FRPへの要求品質を満たすように、再生FRPでの繊維含有率Vf(質量%)と、FRPにおける全繊維に対する原料繊維の割合φv(-)と、を含む条件を決定する。また、制御装置13は、決定された当該条件に基づいて、上記のように、混合装置9での使用済みFRPと、母材樹脂と、原料繊維との混合比率(x、y、z)を決定する。
【0065】
検査装置6で決定した使用済みFRPにおける繊維含有率をVx(質量%)、原料繊維を含む母材樹脂(例えばペレット。マスターバッチ)における繊維含有率をVy(質量%)とすると、下記の式(1)~(3)が成立する。
【0066】
x=(1-φv)×Vf/Vx …式(1)
y=φv×Vf/Vy …式(2)
z=1-(x+y) …式(3)
【0067】
混合比率xを算出する式(1)は、割合φvと繊維含有率Vfと繊維含有率Vxとの関係式である。混合比率yを算出する式(2)は、割合φvと繊維含有率Vfと繊維含有率Vyとの関係式である。繊維含有率Vyは、原料繊維を含む母材樹脂の作製時に決定できる。混合比率zを算出する式(3)は、混合比率xと混合比率yとの関係式である。
【0068】
従って、制御装置13は、例えばデータベース11及び式(1)~(3)を用いて、混合比率x、y、zを決定する。そして、制御装置13は、混合比率がx、y、zになるように、調整機構15,16,18を制御する。
【0069】
図11は、制御装置13のハードウェア構成を示すブロック図である。制御装置13は、例えばCPU(Central Processing Unit)1001、RAM(Random Access Memory)1002、ROM(Read Only Memory)1003、I/F(Inter Face)1004、バス1005等を備えて構成される。CPU1001、RAM1002、ROM1003及びI/F1004は、例えばバス1005を介して接続される。制御装置13は、ROM1003に格納されている所定の制御プログラム(例えば本開示の決定方法、本開示の製造方法)がRAM1002に展開され、CPU1001によって実行されることにより具現化される。制御装置13と各種機器(サーバ等)、外部のネットワーク等との信号及び情報の授受は、ハードウェア的にはI/F1004を通じて行われる。
【0070】
本開示の製造方法及び製造システム100によれば、例えばデータベース11を用いて、再生FRPへの要求品質に対応する繊維含有率Vf及び割合φvを決定できる。これにより、決定した繊維含有率Vf及び割合φvに基づいて、使用済みFRP、母材樹脂及びバージン材である原料繊維の各混合比率x,y,zを決定できる。そして、混合比率x,y,zに沿って各材料を混合すればよく、使用済みFRPの繊維含有率がばらつく場合であっても、再生FRPの物性(品質)を所望の物性(品質)に容易に達成できる。
【符号の説明】
【0071】
1 回収装置
10 製造装置
100 製造システム
11 データベース
12 演算制御部
13 制御装置
14 タンク
15 調整機構
16 調整機構
17 タンク
18 調整機構
2 洗浄装置
3 破砕装置
4 均質化装置
5 ペレット化装置
6 検査装置
9 混合装置
S1 回収工程
S10 製造工程
S2 洗浄工程
S3 破砕工程
S4 均質化工程
S5 ペレット化工程
S6 検査工程
S7 第1決定工程
S8 第2決定工程
S9 混合工程