(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022560
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】堆積物移動装置
(51)【国際特許分類】
E02B 7/20 20060101AFI20250206BHJP
C02F 11/00 20060101ALI20250206BHJP
E02B 8/02 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
E02B7/20 106
C02F11/00 Z ZAB
E02B8/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127249
(22)【出願日】2023-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000231198
【氏名又は名称】日本国土開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100136261
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 俊成
(72)【発明者】
【氏名】奥田 誠
(72)【発明者】
【氏名】上村 将生
(72)【発明者】
【氏名】大平 薫乃
(72)【発明者】
【氏名】梶川 咲
【テーマコード(参考)】
2D019
4D059
【Fターム(参考)】
2D019AA48
4D059AA09
4D059BE16
4D059BF17
4D059BK11
4D059BK17
4D059BK21
4D059CA14
4D059CB01
4D059CB04
4D059CB27
4D059CC10
4D059DA04
4D059DA05
4D059DA66
4D059DB31
4D059DB40
4D059EA03
4D059EB03
(57)【要約】
【課題】効率よく堆積物を移動させる。
【解決手段】堆積物移動装置は、本体部と、前記本体部に振動を与える第1振動装置と、前記第1振動装置の振動を制御して、前記本体部上に堆積した堆積物を前記本体部上で移動させる制御装置と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
前記本体部に振動を与える第1振動装置と、
前記第1振動装置の振動を制御して、前記本体部上に堆積した堆積物を前記本体部上で移動させる制御装置と、を備えた堆積物移動装置。
【請求項2】
前記本体部上に堆積した前記堆積物に関する情報を検出する第1検出部を備え、
前記制御装置は、前記第1検出部の検出結果に基づいて前記第1振動装置の振動を制御する、請求項1に記載の堆積物移動装置。
【請求項3】
前記本体部の上方に設けられ、所定の粒径以上の物体の前記本体部上への堆積を抑制する網状部材を備えた請求項1に記載の堆積物移動装置。
【請求項4】
前記網状部材に振動を与える第2振動装置を備えた請求項3に記載の堆積物移動装置。
【請求項5】
前記網状部材上に堆積した前記堆積物に関する情報を検出する第2検出部を備え、
前記制御装置は、前記第2検出部の検出結果に基づいて前記第2振動装置の振動を制御する、請求項4に記載の堆積物移動装置。
【請求項6】
前記網状部材上に堆積した前記堆積物を回収する回収装置を備えた、請求項4に記載の堆積物移動装置。
【請求項7】
前記第1振動装置は、前記本体部上の前記堆積物を前記本体部の所定領域に向けて移動させる振動を前記本体部に与える、請求項1~6のいずれか一項に記載の堆積物移動装置。
【請求項8】
前記本体部は、傾斜面を有し、前記傾斜面の下端部近傍の領域が前記所定領域である、請求項7に記載の堆積物移動装置。
【請求項9】
前記所定領域に移動した前記堆積物に外力を付与して、該堆積物を前記本体部上から移動させる外力付与装置を備えた請求項8に記載の堆積物移動装置。
【請求項10】
前記外力付与装置は、前記所定領域に移動した前記堆積物に対して流体を放出する、請求項9に記載の堆積物移動装置。
【請求項11】
前記所定領域に堆積した前記堆積物に関する情報を検出する第3検出部を備え、
前記制御装置は、前記第3検出部の検出結果に基づいて前記外力付与装置を制御する、請求項9に記載の堆積物移動装置。
【請求項12】
本体部と、
前記本体部の上方に設けられ、所定の粒径以上の物体の前記本体部上への堆積を抑制する網状部材と、
前記本体部上に堆積した堆積物に外力を付与して、該堆積物を前記本体部上から移動させる外力付与装置と、を備えた堆積物移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、堆積物移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダムの貯水池(ダム湖)には上流の河川から土砂が流入して堆積し、堆積物(堆砂)となるため、経時的に貯水池の貯水容量が減少する。また、ダム湖の上流域では河床上昇により洪水リスクが増大し、下流域では河川からの土砂供給量の低下により河床低下や海岸線の後退などの問題が生じている。そのため、ダム湖の堆積物は、例えば、ダムに設けられた排砂バイパストンネルや排砂口(排砂ゲート)を介して下流域に排出されている。
【0003】
従来、浚渫船を利用したダムの排砂設備や、ダム湖底に堆積した堆砂を掻き集めて排砂ゲート近くに集積するダム堆砂の集積装置が知られている(例えば、特許文献1、2等参照)。また、水位差を利用した動力を用いない排砂技術も知られている(例えば、非特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-226301号公報
【特許文献2】特開2015-135056号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】“水力発電土木施設のリニューアル技術(増補改訂版)”,第1章P56-64,[online],2015年09月,一般社団法人日本建設業連合会,[令和5年7月20日検索],インターネット<URL:https://www.nikkenren.com/publication/fl.php?fi=378&f=1-6.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のような浚渫船を利用する技術は、ピンポイントで堆砂を除去する方法であるため、効率が悪い。また、上記特許文献2の技術では、1回の掻き集め動作で掻き集められる堆砂の量に限りがあり、効率が悪い。また、非特許文献1に記載されている技術は、円形管(パイプ)を利用してダム内の堆砂を吸引し、排砂するため、ダム内において円形管を適宜移動させるなどの必要があり、効率が悪い。
【0007】
1つの側面では、本発明は、効率よく堆積物を移動させることが可能な堆積物移動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様では、堆積物移動装置は、本体部と、前記本体部に振動を与える第1振動装置と、前記第1振動装置の振動を制御して、前記本体部上に堆積した堆積物を前記本体部上で移動させる制御装置と、を備える。
【0009】
第2の態様では、堆積物移動装置は、本体部と、前記本体部の上方に設けられ、所定の粒径以上の物体の前記本体部上への堆積を抑制する網状部材と、前記本体部上に堆積した堆積物に外力を付与して、該堆積物を前記本体部上から移動させる外力付与装置と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
効率よく堆積物を移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、堆積物移動装置が設けられるダム湖の縦断面図である。
【
図2】
図2(a)は、堆積物移動装置を模式的に示す斜視図であり、
図2(b)は、堆積物移動装置から網状部材を取り外した状態を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、堆積物移動装置を上方(+Z方向)から見た状態を示す平面図である。
【
図4】
図4は、堆積物誘導部として、X軸方向に沿って凹凸が形成された蛇腹状の部材を採用した例を示す図である。
【
図5】
図5は、堆積物移動装置の制御系を概略的に示すブロック図である。
【
図6】
図6は、制御装置による処理を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、
図6のステップS12の詳細処理を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、
図6のステップS16の詳細処理を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、
図6のステップS20の詳細処理を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、処理システムの構成を概略的に示す図である。
【
図11】
図11は、処理システムの制御系を概略的に示す図である。
【
図12】
図12は、中央制御装置の処理を示すフローチャート(その1)である。
【
図13】
図13は、中央制御装置の処理を示すフローチャート(その2)である。
【
図14】
図14は、中央制御装置の処理を示すフローチャート(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、一実施形態について、
図1~
図14に基づいて詳細に説明する。
【0013】
(堆積物移動装置100について)
図1は、一実施形態に係る堆積物移動装置100が設けられるダム湖10の縦断面図である。ダム湖10には、堤体12が設けられている。堤体12には、放水路14と、排砂水路16が設けられている。放水路14には、放水ゲート18が開閉可能に設けられ、排砂水路16には、排砂ゲート20が開閉可能に設けられている。放水ゲート18と排砂ゲート20は、ダム制御装置22によって開閉制御される。ダム制御装置22は、ダム湖の貯水量や作業員による操作情報等に基づいて放水ゲート18の開閉を制御し、放水ゲート18が閉状態にある場合にはダム湖水は放水路14から放水されず、放水ゲート18が開状態になると、放水路14からダム湖水が放水される。また、ダム制御装置22は、作業員による操作情報等に基づいて排砂ゲート20の開閉を制御し、排砂ゲート20が閉状態から開状態になると、排砂水路16近傍に溜まった排砂がダム湖水とともに排砂水路16を介してダム湖外に排出されるようになっている。なお、本実施形態では、
図1の紙面内左右方向をX軸方向、
図1の紙面直交方向をY軸方向、紙面内上下方向をZ軸方向とする。また、
図1の座標系の矢印方向が+(プラス)方向、その逆が-(マイナス)方向である。
【0014】
ダム湖10の湖底には、
図1において破線にて示すように、堆積物移動装置100が設置される。堆積物移動装置100は、ダム湖10の湖底に堆積する堆積物を排砂水路16(排砂ゲート20)の近傍に移動させる装置である。以下、堆積物移動装置100の構成について詳細に説明する。
【0015】
図2(a)は、堆積物移動装置100を模式的に示す斜視図である。また、
図2(b)は、堆積物移動装置100から網状部材32を取り外した状態を模式的に示す斜視図である。また、
図3は、堆積物移動装置100を上方(+Z方向)から見た状態を示す平面図である。なお、
図3においては、図示の便宜上、網状部材32が破線にて示されている。
【0016】
図2(a)、
図2(b)に示すように、堆積物移動装置100は、ダム湖10の湖底に設けられる本体部30と、本体部30の上方に設けられる網状部材32と、本体部30に接続された吸水ポンプ34及び放水ポンプ36と、を備える。
【0017】
本体部30は、断面略U字状でX軸方向に延びる堆積物格納部40と、堆積物格納部40の上端部に設けられた板状の堆積物誘導部42A,42Bと、を有する。堆積物誘導部42A,42Bは、XY面に対して傾斜した傾斜面を有している。なお、本実施形態では、堆積物誘導部42Aの傾斜面のXY面に対する角度と、堆積物誘導部42Bの傾斜面のXY面に対する角度と、をほぼ一致させているが、これに限定されるものではない。ダムの形状に応じて、堆積物を誘導しやすくするために、堆積物誘導部42Aの傾斜面のXY面に対する角度と、堆積物誘導部42Bの傾斜面のXY面に対する角度と、は異ならせてもよい。
【0018】
堆積物誘導部42A,42Bは、ポリ塩化ビニル、プラスチック、金属等を材料とする平板状の部材である。堆積物誘導部42A,42Bは、ダム湖10に流入し、網状部材32の網目を通過した物体(堆積物)を傾斜面にて受ける。傾斜面に載った堆積物は、堆積物の自重により傾斜面を滑ったり転がったりすることで、堆積物格納部40に向かって移動する(誘導される)。
【0019】
なお、堆積物誘導部42A,42Bは、
図2(a)、
図2(b)では、平板状の部材となっているが、これに限られるものではない。例えば、堆積物誘導部42A(42B)としては、
図4に示すように、X軸方向に沿って凹凸が形成された蛇腹状の部材を採用してもよい。これにより、堆積物誘導部42A(42B)上の堆積物と堆積物誘導部42A(42B)の傾斜面との接触面積を小さくすることができるので、摩擦抵抗が減り、傾斜面に沿って堆積物が滑り落ちやすくなる(又は転がり落ちやすくなる)。なお、蛇腹の方向(凹凸が並ぶ方向)は、X軸方向以外の方向であってもよい。堆積物誘導部42A,42Bとして蛇腹状の部材を採用する場合、蛇腹状の部材は、平板状部材を機械加工して蛇腹状に変形させたものであってもよいし、複数の短冊状の部材を組み合わせて組み立てたものであってもよく、製造コストや重量、搬送性や収納性などを考慮して、適宜選択することができる。なお、堆積物誘導部42A(42B)は、表面に多数の突起が形成された板状部材であってもよい。
【0020】
堆積物誘導部42Aは、
図2(b)、
図3に示すように、ワイヤー44A、44Bを介して、ダム湖10の湖底に設置された支持柱46A、46Bによって支持されている。また、堆積物誘導部42Bは、ワイヤー44C、44Dを介して、ダム湖10の湖底に設置された支持柱46C、46Dによって支持されている。なお、ワイヤー44Aと、支持柱46Aとの間には、ワイヤー44Aの張力を計測するための第1張力計測装置48Aと、ワイヤー44Aを介して堆積物誘導部42Aを振動させる第1振動装置50Aと、が設けられている。同様に、ワイヤー44B~44Dと、支持柱46B~46Dとの間には、第1張力計測装置48B~48Dと、第1振動装置50B~50Dと、が設けられている。
【0021】
第1張力計測装置48A、48Bは、ワイヤー44A,44Bにかかる張力を計測することで、間接的に、堆積物誘導部42Aに堆積した堆積物の重量を測定する。また、第1張力計測装置48C、48Dは、ワイヤー44C,44Dにかかる張力を計測することで、間接的に、堆積物誘導部42Bに堆積した堆積物の重量を測定する。第1張力計測装置48B~48Dの計測結果は、制御装置90(
図5参照)に送信される。
【0022】
第1振動装置50A,50Bは、ワイヤー44A,44Bを介して堆積物誘導部42Aに振動を与え、堆積物誘導部42Aの傾斜面に沿った堆積物の移動を促進する。第1振動装置50C,50Dは、ワイヤー44C,44Dを介して堆積物誘導部42Bに振動を与え、堆積物誘導部42Bの傾斜面に沿った堆積物の移動を促進する。制御装置90は、第1張力計測装置48A~48Dの計測結果に基づいて、第1振動装置50A~50Dが発生する振動の大きさや振動させる時間を制御する。なお、堆積物格納部40と、堆積物誘導部42A,42Bと、の間は非接触であるものとする。したがって、堆積物誘導部42A,42Bの振動は堆積物格納部40には伝達しないようになっている。ただし、これに限らず、堆積物誘導部42A,42Bと堆積物格納部40とが固定されており、本体部30が一体的に振動してもよい。第1振動装置50A~50Dの振動方向は、例えばZ軸方向であるものとする。ただし、これに限らず、第1振動装置50A~50Dの振動方向はZ軸方向以外の方向であってもよい。
【0023】
堆積物格納部40は、本体部30の所定領域(本実施形態では、Y軸方向中央部かつ下端部)に設けられている。堆積物格納部40は、金属やコンクリート等を材料としており、堆積物を一定量収容できるようになっている。堆積物格納部40の-X側の端部は、
図1の排砂水路16(排砂ゲート20)の近傍に位置しており、ダム湖10の湖底に設置される。
図2では堆積物格納部40の上面の形状をフラットにしているが前述したような蛇腹形状としてもよく、堆積物を移動しやすくするために、X方向やY方向に沿って傾斜を持たせるようにしてもよい。
【0024】
堆積物格納部40の上面又は堆積物格納部40の下面(ダム湖10の湖底との間)には、堆積物格納部40内に収容された堆積物の重量を計測するための重量計測装置52が設けられている(
図3のグレーで塗りつぶした箇所参照)。重量計測装置52の計測結果は、制御装置90(
図5)に送信される。
【0025】
網状部材32は、本体部30の上方に設置されており、本体部30全体を覆った状態となっている。網状部材32は、ダム湖10へ流入する堆積物を、網目よりも大きな物体(礫や流木など)と、網目より小さな物体(礫や砂など)とに篩別し、網目より小さな物体を本体部30に送るためのものである。網状部材32は、金属や不織布、ポリエチレンなどを材料とする。網状部材32の網目の大きさは、本体部30に送るべき物体(礫や砂など)の粒径に応じて適宜変更することができる。
【0026】
網状部材32の四隅部は、4本の支持柱46A~46Dそれぞれに接続されている。ここで、網状部材32の四隅部と、4本の支持柱46A~46Dの間には、第2張力計測装置54A~54Dと、第2振動装置56A~56Dと、が設けられている。
【0027】
第2張力計測装置54A~54Dは、網状部材32にかかる張力を計測することで、間接的に、網状部材32に堆積した礫や流木などの重量を測定する。第2張力計測装置54A~54Dの計測結果は、制御装置90(
図5)に送信される。
【0028】
第2振動装置56A~56Dは、網状部材32に振動を与え、網状部材32による篩別を促進する。また、振動により、網状部材32上にある礫などに付着している砂を剥離させたり、土の塊を粉砕したりすることができる。制御装置90は、第2張力計測装置54A~54Dの計測結果に基づいて、第2振動装置56A~56Dが発生する振動の大きさや振動させる時間を制御する。第2振動装置56A~56Dの振動方向は、例えばZ軸方向であるものとする。ただし、これに限らず、第2振動装置56A~56Dの振動方向はZ軸方向以外の方向であってもよい。
【0029】
吸水ポンプ34と放水ポンプ36とは連結されており、吸水ポンプ34が周囲の水(及び周囲の堆積物)を吸入し、放水ポンプ36から、堆積物格納部40に対して水(及び堆積物)を放出する。放水ポンプ36による水(及び堆積物)の放出方向は、+X方向から-X方向に進む方向である。吸水ポンプ34の吸入口の先端部分をテーパー状とすることで、吸入する水(及び堆積物)を圧縮し、放水ポンプ36から放出する際のエネルギーを高めることができる。これにより、堆積物格納部40内に存在する堆積物を-X方向に運搬しやすくことができる。制御装置90は、重量計測装置52による計測結果に基づいて、吸水ポンプ34及び放水ポンプ36を制御する。なお、本実施形態では、吸水ポンプ34及び放水ポンプ36により、堆積物格納部40内の堆積物に対して外力を付与する外力付与装置としての機能が実現されている。
【0030】
図5は、堆積物移動装置100の制御系を概略的に示すブロック図である。
図5に示すように、堆積物移動装置100は、制御装置90を有する。制御装置90は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有する。制御装置90には、第1張力計測装置48A~48D、第1振動装置50A~50D、第2張力計測装置54A~54D、第2振動装置56A~56D、重量計測装置52、吸水ポンプ34、放水ポンプ36が接続されている。また、制御装置90には、通信装置92が接続されている。通信装置92は、
図1のダム制御装置22と通信し、排砂ゲート20の開閉情報を取得する。また、通信装置92は、後述するクレーンやクレーン車と通信可能となっている。
【0031】
(制御装置90による堆積物移動装置100の制御について)
次に、制御装置90による堆積物移動装置100の制御方法について、
図6~
図9のフローチャートに沿って説明する。
図6は、制御装置90による処理を示すフローチャートであり、
図7~
図9は、
図6のステップS12、S16,S20の詳細処理を示すフローチャートである。
【0032】
図6の処理が開始されると、まず、ステップS10において、制御装置90は、第2張力計測装置54A~54Dの計測値を参照して、網状部材32上の堆積物の重量が第1の重量以上であるか否かを判断する。第1の重量は、網状部材32の大きさや材質、支持柱46A~46Dの耐荷重、後述するクレーンやクレーン車の耐荷重などに基づいて定められ、例えば2000kg(2t)などであるものとする。制御装置90は、第2張力計測装置54A~54Dの計測値と、網状部材32上の堆積物の重量との関係を示すテーブルや関係式などを保持しており、上記判断において、これらテーブルや関係式などを利用するものとする。このステップS10の判断が肯定された場合には、ステップS12に移行する。
【0033】
ステップS12に移行すると、制御装置90は、網状部材32上の堆積物を回収する処理を実行する。網状部材32上に堆積物が溜まると、ダム湖10に流入してくる堆積物が本体部30上に移動するのを妨げてしまうため、網状部材32上の堆積物が所定以上になった段階で回収することとしている。このステップS12においては、
図7のフローチャートに沿った処理が実行される。
【0034】
(ステップS12の処理)
図7のステップS12の処理が開始されると、まず、ステップS122において、制御装置90は、所定時間の間、第2振動装置56A~56Dを制御して、網状部材32を振動させる。この網状部材32の振動により、網状部材32上にある網目よりも大きな礫や流木などに付着している砂を剥離させたり、土の塊を粉砕したりすることができ、網目よりも小さな礫や砂を本体部30上になるべく多く移動させることができる。所定時間は、予め行ったシミュレーションの結果や、実際に振動させた網状部材32近傍の状態を経時的に観察した結果などに基づいて定めることができる。なお、制御装置90は、網状部材32上の堆積物の重量などに応じて、第2振動装置56A~56Dの振動数や振動させる時間を増減させてもよい。
【0035】
次いで、ステップS124において、制御装置90は、ダム湖10近傍に設置されたクレーン又はダム湖10近傍に停車しているクレーン車に対して、通信装置92を介して、網状部材32の引き上げ及び荷下ろしを指示する。作業員は、当該指示を確認すると、クレーンやクレーン車を操作して、網状部材32をダム湖10内から引き上げる作業を実行する。なお、網状部材32を引き上げる際には、作業者は、網状部材32を支持柱46A~46Dから取り外す作業を予め行うものとする。作業員は、引き上げた網状部材32から礫や流木などを荷下ろしし、網状部材32をダム湖10内に戻す。作業員は、これらの作業が完了した段階で、クレーンやクレーン車から制御装置90に対して回収作業完了情報を送信する。
【0036】
なお、網状部材32を自動的に引き上げ、荷下ろしする自動回収装置(ウィンチ等を含む)が別途設けられている場合には、制御装置90は、当該自動回収装置に対して網状部材32の引き上げと荷下ろしの指示を出す。自動回収装置は、この指示に応じて、網状部材32上から礫や流木などを回収し、回収が完了すると回収作業完了情報を制御装置90に対して送信する。
【0037】
次いで、ステップS126において、制御装置90は、回収作業完了情報を受信したか否かを判断する。このステップS126の判断が否定されている間は、ステップS126の判断を繰り返す。一方、ステップS126の判断が肯定されると、
図7の全処理を終了し、
図6のステップS10に戻る。
【0038】
図6に戻り、ステップS10の判断が否定された場合(網状部材32上に堆積物が然程堆積していない場合)には、制御装置90は、ステップS14に移行する。
【0039】
ステップS14に移行すると、制御装置90は、重量計測装置52の計測値を参照して、堆積物格納部40内の堆積物の重量が第2の重量以上か否かを判断する。第2の重量は、例えば10000kg(10t)などとすることができるが、堆積物格納部40の容量を考慮して、第2の重量の値は適宜変更することができる。制御装置90は、重量計測装置52の計測値と、堆積物格納部40に格納されている堆積物の重量との関係を示すテーブルや関係式などを保持しており、上記判断において、これらテーブルや関係式などを利用するものとする。このステップS14の判断が肯定された場合には、ステップS16に移行する。
【0040】
ステップS16に移行すると、制御装置90は、吸水ポンプ34及び放水ポンプ36を制御して、堆積物格納部40に格納された堆積物に外力を付与し、吹き飛ばす処理を実行する。堆積物格納部40にある程度以上の堆積物が溜まった段階で、堆積物格納部40内の堆積物を排砂水路16近傍に移動させることにより、堆積物を移動させる回数を減らし、作業の効率化を図ることができる。このステップS16においては、
図8のフローチャートに沿った処理が実行される。
【0041】
(ステップS16の処理)
図8のステップS16の処理が開始されると、まず、ステップS162において、制御装置90は、吸水ポンプ34及び放水ポンプ36を作動させる。これにより、吸水ポンプ34が周囲の水や堆積物を吸入し、放水ポンプ36が-X方向に向けて水や堆積物を噴出することで、堆積物格納部40に-X方向の水流を発生させる。この水流による外力を受けて、堆積物格納部40内の堆積物が-X方向に移動し始め、排砂水路16近傍に集まる。
【0042】
ステップS162の後は、ステップS164において、制御装置90は、所定時間経過するまで待機する。所定時間は、例えば1分などである。制御装置90は、所定時間経過した後は、ステップS166に移行する。
【0043】
ステップS166に移行すると、制御装置90は、吸水ポンプ34及び放水ポンプ36を停止させる。その後は、
図6のステップS14に戻る。なお、制御装置90は、放水ポンプ36から噴出される水や堆積物の速度(外力の大きさ)や上記所定時間を、堆積物格納部40内の堆積物の重量に応じて適宜変更してもよい。
【0044】
なお、ステップS164に代えて、制御装置90は、重量計測装置52の計測値をモニタし、計測値が予め定めた値よりも小さくなったか否かを判断してもよい。この場合、堆積物格納部40内の堆積物が少なくなったタイミングで、ステップS166に移行することになる。
【0045】
図6に戻り、ステップS14の判断が否定されると、ステップS18に移行し、制御装置90は、第1張力計測装置48A~48Dを参照して、堆積物誘導部42A.42B上に堆積した堆積物の重量が第3の重量以上か否かを判断する。第3の重量は、例えば1000kg(1t)などであるものとする。制御装置90は、第1張力計測装置48A~48Dの計測値と、堆積物誘導部42A.42B上に存在する堆積物の重量との関係を示すテーブルや関係式などを保持しており、上記判断において、これらテーブルや関係式などを利用するものとする。このステップS18の判断が肯定された場合には、ステップS20に移行する。
【0046】
ステップS20に移行すると、制御装置90は、堆積物誘導部42A,42Bの振動により堆積物を移動させる処理を実行する。堆積物誘導部42A,42B上に第3の重量以上の堆積物が堆積していることは、堆積物誘導部42A.42Bの一部に堆積物が引っ掛かり、堆積物が堆積物格納部40に誘導されにくい状態となっている可能性が高い。したがって、制御装置90は、堆積物誘導部42A,42Bを振動させることで、堆積物誘導部42A、42Bの一部に引っ掛かっている堆積物を強制的に堆積物格納部40に誘導する。このステップS20においては、
図9のフローチャートに沿った処理が実行される。
【0047】
(ステップS20の処理)
図9のステップS20の処理が開始されると、まず、ステップS202において、制御装置90は、第2張力計測装置54A~54Dの計測値に基づいて、第2振動装置56A~56Dの振動数を決定する。制御装置90は、第2張力計測装置54A~54Dの計測値と、第2振動装置56A~56Dの振動数の設定値との関係を示すテーブルや関係式などを保持しており、振動数の決定の際には、これらテーブルや関係式などを利用するものとする。制御装置90は、第2張力計測装置54A~54Dの計測値が大きいほど振動数として大きな値を設定する。
【0048】
次いで、ステップS204において、制御装置90は、第2振動装置56A~56DをステップS202で決定した振動数で作動させる。これにより、堆積物誘導部42A,42Bが振動し、堆積物誘導部42A,42B上の堆積物が堆積物格納部40内に誘導される。
【0049】
次いで、ステップS206において、制御装置90は、所定時間経過するまで待機する。所定時間は、例えば1分などである。制御装置90は、所定時間経過した後は、ステップS208に移行する。なお、制御装置90は、第2張力計測装置54A~54Dの計測値に基づいて、所定時間の長さを変更してもよい。
【0050】
ステップS208に移行すると、制御装置90は、第2振動装置56A~56Dを停止させる。その後は、
図6のステップS14に戻る。ステップS20の後にステップS14に戻るのは、ステップS20を経ることにより、堆積物誘導部42A,42B上の堆積物が堆積物格納部40に誘導され、堆積物格納部40内に堆積物が第2の重量以上溜まることもあるからである。
【0051】
なお、ステップS206に代えて、制御装置90は、第2張力計測装置54A~54Dの計測値をモニタし、計測値が予め定めた値よりも小さくなったか否かを判断してもよい。この場合、堆積物誘導部42A,42B上の堆積物が少なくなったタイミングで、ステップS208に移行することになる。
【0052】
図6に戻り、ステップS18の判断が否定された場合には、制御装置90は、ステップS22に移行する。ステップS22において、制御装置90は、排砂ゲート20が開状態であるか否かを判断する。ステップS22の判断は、通信装置92に対し、ダム制御装置22から排砂ゲート20が開状態になったという情報が送られてきたときに肯定される。
【0053】
ステップS22の判断が肯定され、ステップS24に移行すると、制御装置90は、堆積物移動装置100上の堆積物を排砂水路16近傍へ強制的に移動させる。具体的には、制御装置90は、第1振動装置50A~50Dを作動させることで、堆積物誘導部42A,42Bを振動させるとともに、第2振動装置56A~56Dを作動させることで、網状部材32を振動させる。また、制御装置90は、吸水ポンプ34と放水ポンプ36を作動させる。これにより、堆積物移動装置100上の移動可能な堆積物を、排砂水路16近傍になるべく多く集積させることができ、排砂水路16からなるべく多くの堆積物をダム湖10外に排出できるようになる。なお、制御装置90は、一定時間上述した状態を維持し、その後、ステップS10に戻る。なお、制御装置90は、第1振動装置50A~50Dと、第2振動装置56A~56Dとの少なくとも一方の作動を行わずに吸水ポンプ34と放水ポンプ36の作動により堆積物を排砂水路16に向けて移動すれば、堆積物の移動にかかるエネルギーを抑制することができる。
【0054】
なお、ステップS22の判断が否定された場合には、ステップS24を経ずにステップS10に戻る。ステップS10に戻った後は、上述した処理を繰り返し実行する。
【0055】
なお、
図6のステップS10においては、制御装置90は、網状部材32上の堆積物の重量に基づいて、網状部材32上の堆積物を回収するか否かを判断する場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、制御装置90が、ダム湖10の放水ゲート18が開状態になったという情報(放水状態になったという情報)をダム制御装置22から受信した場合に、ステップS10の判断が肯定されるようにしてもよい。放水時にはダム湖10に浮いている物体(ゴミや流木など)が放水路14近傍に集まるため、ステップS12の作業を効率的に行うことが可能になる。また、例えば、ステップS12の実施判断を、気候条件や災害の発生等を基準にして行ってもよい。例えば気象庁のwebサイト等から台風が近づいているという情報を取得した場合に、ステップS12を行うこととしてもよい。これにより、台風が来る前に網状部材32上の堆積物を回収しておくことで、台風によってダム湖10に流入してくる堆積物により網状部材32が破損するのを抑制することができる。また、例えば、所定時間ごとに(定期的に)、ステップS12を実行するようにしてもよい。このようにすることで、第2張力計測装置54A~54Dの設置を省略することができる。また、例えば、作業員が目視によりステップS12の実施時期を決めてもよい。
【0056】
なお、ステップS14においては、制御装置90は、堆積物格納部40内の堆積物の重量に基づいて、堆積物格納部40内の堆積物を移動させるか否か(ステップS16を行うか否か)を判断する場合について説明したが、これに限られるものではない。上記ステップS12の場合と同様、放水ゲート18の状態や、気象条件や災害の発生有無に基づいてステップS16の実施タイミングを判断してもよいし、定期的に又は作業員の判断に応じてステップS16を実施することとしてもよい。例えば放水ゲート18が開状態のときにステップS16を実行すれば、放水により発生する水流により、効率的に堆積物格納部40内の堆積物を移動させることができる。また、台風が来る前に堆積物格納部40内の堆積物を移動させておくことで、台風が過ぎた後に堆積物格納部40に堆積物が溜まり過ぎるのを抑制することができる。また、定期的に又は作業員の判断に応じてステップS16を行うこととすれば、第1張力計測装置48A~48Dの設置を省略することができる。
【0057】
また、ステップS20についても、ステップS16と同様であり、放水ゲート18の状態や、気象条件や災害の発生有無に基づいてステップS20の実施タイミングを判断してもよいし、定期的に又は作業員の判断に応じてステップS20を行うこととしてもよい。
【0058】
なお、排砂水路16からダム湖10の外側に排出された堆積物(堆砂)は回収され、ダム湖10の近傍に集積される。また、ダム湖10の近傍に集積された堆積物(堆砂)は、後述する処理システム200において適宜処理される。
【0059】
(堆積物移動装置100の変形例)
なお、
図2(a)の堆積物移動装置100においては、4本の支持柱46A~46Dが設けられている場合について説明したが、これに限らず、支持柱の本数は、4本以外であってもよい。例えば、本体部30や網状部材32の大きさに応じて、6本、8本、…と増やしてもよいし、逆に本数を減らしてもよい。また、堆積物誘導部42Aを支持する支持柱と、堆積物誘導部42Bを支持する支持柱の本数が異なっていてもよいし、支持柱の配置はX軸やY軸に対して対称でなくてもよい。
【0060】
なお、網状部材32は、複数あってもよく、複数の網状部材32がZ軸方向に重なる多層構造になっていてもよい。多層構造の場合、+Z側に位置する網状部材32ほど網目を大きくする。これにより、各網状部材32において回収される堆積物の大きさを異ならせることができる。なお、網状部材32は、本体部30の全体を覆っていなくてもよく、本体部30の一部のみ(例えば堆積物格納部40のみ)を覆っていてもよい。
【0061】
なお、
図2(a)の堆積物移動装置100は、網状部材32上の堆積物の重量を計測する第2張力計測装置54A~54D、堆積物誘導部42A,42B上の堆積物の重量を計測する第1張力計測装置48A~48D、堆積物格納部40内の堆積物の重量を計測する重量計測装置52を有することとしたが、これに限られるものではない。例えば、第2張力計測装置54A~54Dに代えて、網状部材32を撮影するカメラを設けてもよい。この場合、カメラの画像に基づいて網状部材32上の堆積物の量や状態を機械学習等の手法を用いて検出し、制御装置90は、この検出結果に基づいて、
図6のステップS12を実行するか否かを判断してもよい。なお、カメラに限らず、その他の装置を用いて、網状部材32の状態を検出(モニタ)してもよい。同様に、堆積物誘導部42A,42Bの表面の状態や、堆積物格納部40内の状態をカメラ等によりモニタし、制御装置90は、これらのモニタ結果に基づいて、
図6のステップS16、S20を実行するか否かを判断してもよい。
【0062】
なお、
図2(a)の堆積物移動装置100においては、堆積物格納部40内の堆積物に対して放水ポンプ36から水や堆積物を噴出して外力を与え、堆積物格納部40内の堆積物を排砂水路16近傍に移動させる場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、堆積物格納部40内の堆積物に対して、その他の外力を付与することで、堆積物格納部40内の堆積物を排砂水路16近傍に移動させることとしてもよい。その他の外力としては、水以外の流体(空気など)の力であってもよいし、機械的な力(堆積物格納部40内を移動する移動装置の力など)であってもよい。また、その他の外力としては、例えば、第1振動装置50A~50Dと、第2振動装置56A~56Dなどのように振動を与えるものでもよく、進行性の進行波を与えるものでもよい。
【0063】
なお、
図2(a)、
図2(b)においては、堆積物格納部40が本体部30のY軸方向中央に設けられている場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、堆積物格納部40が本体部30のY軸方向の端部に設けられていてもよい。すなわち、本体部30は、堆積物誘導部42A,42Bの一方を省略したような形状を有していてもよい。
【0064】
(堆積物の処理システム200について)
次に、ダム湖10から回収された堆積物(排砂水路16からダム湖10外に排出された堆積物(堆砂))の処理システム200について、
図10~
図14に基づいて詳細に説明する。
【0065】
図10は、処理システム200の構成を概略的に示す図である。また、
図11には、処理システム200の制御系が概略的に示されている。
【0066】
図10に示すように、処理システム200は、漏斗状タンク202と、篩別装置203と、粉砕機208と、ベルトコンベア210と、電気分解装置212と、水素貯蔵タンク214と、フィルタプレス216と、回転式破砕混合装置(ツイスター)220と、添加剤投入装置222と、を備える。
【0067】
漏斗状タンク202は、ホッパとも呼ばれ、ダム湖10から回収された堆砂Sを収容するタンクであり、篩別装置203に対し、堆砂Sを一定量ずつ連続的に供給する。なお、堆砂Sは、砂や泥、砂礫、軟岩などを含んでおり、液体(ダム湖水)と固体が混合したものである。なお、篩別装置203に対して一定量ずつ連続的に堆砂Sを供給できる装置であれば、漏斗状タンク202以外の装置を用いてもよい。
【0068】
篩別装置203は、上下方向に2段に配置された篩目の異なる、2つの篩(第1篩204A、第2篩204B)と、受け部205と、を有する。第1篩204A及び第2篩204Bとしては、例えば、ステンレス製大型振動ふるい機を用いることができ、第1篩204A及び第2篩204Bは、
図11の篩駆動装置230により駆動される。篩駆動装置230は、
図11の中央制御装置290により制御される。
【0069】
第1篩204Aは、堆砂Sを第1の粒径(粒径250mm)以上の篩上(堆砂S1と呼ぶ)と、第1の粒径未満の篩下に篩別する。第2篩204Bは、第1篩204Aの篩下を第2の粒径(粒径2mm)以上(及び第1の粒径未満)の篩上(堆砂S2と呼ぶ)と、第2の粒径未満(粒径2mm未満)の篩下に篩別する。第2篩204Bの篩下(堆砂S3と呼ぶ)は、受け部205に収容される。なお、堆砂S2、S3は、回転式破砕混合装置220による処理に適した粒径(許容最大粒径よりも小さな粒径)の堆砂である。また、堆砂S3は、電気分解装置212による処理に適した粒径の堆砂である。なお篩別装置203は、所定の粒径(第2の粒径未満)の堆砂S3を選別する選別工程を実行しているともいえる。なお、上記第1の粒径や第2の粒径の値は、回転式破砕混合装置220や電気分解装置212の性能等に応じて適宜変更することができる。
【0070】
第1篩204Aの篩上(堆砂S1)は、粉砕機208に送られる。一方、第2篩204Bの篩上(堆砂S2)は、ベルトコンベア210に送られる。また、第2篩204Bの篩下(堆砂S3)は、電気分解装置212又はベルトコンベア210に送られる。ここで、受け部205には、第1バルブ206Aと、第2バルブ206Bが設けられており、第1バルブ206Aが開状態のときには、堆砂S3が電気分解装置212に送られるようになっており、第2バルブ206Bが開状態のときには、堆砂S3がベルトコンベア210に送られるようになっている。第1バルブ206A、第2バルブ206Bの開閉制御は、電気分解装置212において電気分解が実施されているか否かに基づいて、
図11の中央制御装置290が行う。なお、電気分解装置212に堆砂S3を送る際には、例えば不図示のベルトコンベアや不図示の搬送パイプ及び搬送ポンプなどが用いられるものとする。
【0071】
粉砕機208は、堆砂S1を粉砕して、回転式破砕混合装置220に適した粒径の堆砂S4(例えば第1の粒径(粒径250mm)未満の堆砂)を生成する。粉砕機208において生成した堆砂S4は、ベルトコンベア210に送られる。なお、堆砂S4は、篩別装置203に再度投入されてもよい。
【0072】
電気分解装置212は、堆砂S3(固体)と水(液体)を収容可能な外形が円柱型のタンクと、タンクの中央に設けられた陽極と、タンクの内周面近傍に設けられた陰極と、タンク内を攪拌する攪拌翼と、を備える。また、電気分解装置212は、
図11に示すように、タンク内の含水率を測定する含水率測定センサ232と、タンク内に給水する給水装置234と、電気分解装置212の陽極、陰極に電圧を掛けたり、攪拌翼を制御する電気分解制御装置236と、を備える。
【0073】
電気分解装置212は、水を含む堆砂S3(スラリー)がタンク内に収容された状態で電気分解工程を開始し、所定時間(例えば、1時間)経過後に電気分解を終了する(すなわち、バッチ式である)。なお、この所定時間は、タンク内の堆砂S3と水(スラリー)から十分な量の水素を得るための時間である。したがって、タンクの容量、タンク内に収容された堆砂S3や水の量に応じて、所定時間は適宜変更してもよい。本実施形態では、電気分解装置212で電気分解を行っている所定時間(例えば、1時間)の間は、篩別装置203において篩別される堆砂S3を電気分解装置212に送ることができなくなるため、上記所定時間の間は、ベルトコンベア210に堆砂S3を送るようにしている。なお、所定時間は、上述したように、電気分解に要する時間に基づいて定めてもよいが、これに代えて、所定時間を回転式破砕混合装置220の処理状況に応じて定めてもよい。例えば、回転式破砕混合装置220において処理されている堆砂が少ない場合には、電気分解を早めに終了して、電気分解装置212内の堆砂を回転式破砕混合装置220に送るようにしてもよい。
【0074】
ここで、堆砂S3には、土砂だけではなく、植物片や動物片等の堆積物、及び多様な微生物など(内容物という)が含まれている。このため、堆砂S3と水を電気分解することで、上記内容物の中の炭水化物からも水素を取り出すことができると考えられる。また、微生物に電気エネルギーを与えることで、水素発生を活性化させる働きをすると考えられる。したがって、堆砂S3と水を電気分解することで、単に水を電気分解する場合よりも多くの水素を取り出すことができると考えられる。
【0075】
なお、水を電気分解したときの反応式は、次式のようになる。
2H2O→2H2+O2
【0076】
また、炭水化物を電気分解したときの反応式は、次式のようになる。
(CH2O)n-X→mH2+Y
【0077】
電気分解装置212で発生した水素は回収され、水素貯蔵タンク214に貯蔵される。なお、水素貯蔵タンク214に代えて、水素吸蔵合金に水素を吸蔵させてもよい。
【0078】
中央制御装置290は、電気分解装置212が電気分解を行う前に、含水率測定センサ232を用いて、タンク内のスラリーの含水率を測定する。この測定の結果、含水率が予め定めた値(基準値)よりも低い場合には、含水率が基準値になるように、中央制御装置290は、給水装置234からタンク内に水を供給する。なお、含水率測定センサ232としては、TDR法、ADR法などの測定方法を利用する公知のセンサを用いることができる。
【0079】
一方、電気分解後においては、スラリーの含水率が例えば5~30%程度になっており、流動性が低く、搬送しにくい状態になっている場合がある。したがって、中央制御装置290は、電気分解後においても、含水率測定センサ232を用いて、タンク内のスラリーの含水率を測定する。そして、含水率の値が流動性が低いことを示す範囲内である場合には、給水装置234からタンク内に水を供給し、スラリーの流動性を高めるようにする。これにより、電気分解装置212とフィルタプレス216とを繋ぐパイプを用いて、タンク内のスラリー(堆砂S4と呼ぶ)をフィルタプレス216に搬送しやすくすることができる。なお、タンク内に付着した堆砂を洗い流すため、給水装置234からは、タンクの内壁に沿って水を供給することが好ましい。なお、給水装置234から供給する水は純水であってもよいが、水道水やダム湖の水であってもよい。なお、タンクへのスラリーの付着を防止するため、粘性のある物体の付着を防止する材料、例えば、特許6513272号に記載の粘着等防止剤などをタンクの内面に塗布してもよい。
【0080】
なお、堆砂S3を電気分解する場合に限らず、特開2021-190394号公報に開示されているような、電力により泥から水素を生成する水素生成装置を用いて、堆砂S3から水素を生成することとしてもよい。
【0081】
水素貯蔵タンク214は、電気分解により発生した水素を貯蔵する。水素貯蔵タンク214に貯蔵された水素は、燃料電池において利用することができる。例えば、処理システム200がダム湖10の近傍にある場合には、ダム湖10の放水ゲート18や排砂ゲート20を開閉する際に、燃料電池の電力を用いることができる。また、クレーンやクレーン車を燃料電池の電力を用いて駆動することができる。また、前述した堆積物移動装置100を燃料電池の電力を用いて駆動することとしてもよい。また、台風前などにおいて、水素貯蔵タンク214に水素を貯蔵しておくことにより、非常用電源用に水素を利用することが可能となる。
【0082】
フィルタプレス216は、電気分解後の堆砂S5を加圧濾過する加圧濾過工程を実行し、圧搾、乾燥する装置である。電気分解装置212からフィルタプレス216への堆砂S5の搬送には、
図11に示すポンプ238が用いられる。ポンプ238は、中央制御装置290により制御される。フィルタプレス216は、濾板、濾布、濾枠を有し、堆砂S5(スラリー)は、濾布と濾板に挟まれた濾枠に流し込まれ、圧搾、乾燥が行われる。フィルタプレス216は、
図11のフィルタプレス制御装置240の制御の下、圧搾、乾燥を実行する。そして、堆砂S5の含水率が、回転式破砕混合装置220において処理するための適正含水率である、例えば20~50%、好ましくは40%になった段階で、フィルタプレス制御装置240は、圧搾、乾燥を終了する。なお、中央制御装置290は、堆砂S5の含水率が適正含水率になったか否かを、加圧濾過開始後の経過時間から判断してもよいし、不図示の水分センサの検出値から判断してもよい。
【0083】
フィルタプレス216において、圧搾、乾燥が終了すると、フィルタプレス216から圧搾、乾燥後の堆砂S6が排出され、ベルトコンベア210上に送られる。
【0084】
ベルトコンベア210は、ベルトコンベア210に送られてきた堆砂S2、S3、S4、S6を回転式破砕混合装置220に搬送する。
【0085】
回転式破砕混合装置220は、堆砂を改良して有効利用するために用いられる装置である。回転式破砕混合装置220は、堆砂の破砕、細粒化を行い、均質に分散させる処理工程を実行する。また、回転式破砕混合装置220には、必要に応じて、添加剤投入装置222から、添加剤(生石灰、消石灰などの石灰系固化材や、普通セメント、高炉セメントなどのセメント系固化材、あるいは高分子材料からなる土質改良材、天然繊維、樹脂からなる化学繊維など)も投入される。添加剤が投入された場合、回転式破砕混合装置220は、堆砂と添加剤を混合して改良土とすることで、改良土の性状や強度などを調整する。なお、回転式破砕混合装置220としては、例えば、特許7074934号、特許7137025号、特許7261941号などに開示されている装置を用いることができる。なお、回転式破砕混合装置220において堆砂が投入されるドラム(固定ドラムや回転ドラム)へのスラリーの付着を防止するため、粘性のある物体の付着を防止する材料、例えば、特許6513272号に記載の粘着等防止剤などをドラムの内面に塗布してもよい。
【0086】
添加剤投入装置222は、回転式破砕混合装置220に対して添加剤を投入する装置である。添加剤投入装置222には、
図11に示す添加剤投入量調整装置242が設けられている。この添加剤投入量調整装置242は、中央制御装置290の指示の下、添加剤の投入量を調整する。
【0087】
中央制御装置290は、ベルトコンベア210の近傍に設けられたスキャナ218から得た情報に基づいて、添加剤投入量調整装置242を制御する。ここで、スキャナ218は、LiDAR(Light Detection And Ranging)やカメラなどであり、ベルトコンベア210上の堆砂の量(すなわち、回転式破砕混合装置220に投入される堆砂の量)を測定する。なお、スキャナ218に代えて、ベルトコンベア210上の堆砂の重量を測定する重量計を用いてもよい。
【0088】
(中央制御装置290の処理について)
以下、中央制御装置290の処理について、
図12~
図14のフローチャートに沿って、その他図面を適宜参照しつつ詳細に説明する。
図12は、中央制御装置290の処理を示すフローチャート(その1)であり、
図13は、中央制御装置290の処理を示すフローチャート(その2)であり、
図14は、中央制御装置290の処理を示すフローチャート(その3)である。なお、
図12~
図14の処理は、同時並行的に実行される。
【0089】
(
図12の処理について)
図12の処理が開始される前提として、漏斗状タンク202には堆砂Sが収容されており、篩別装置203、粉砕機208、ベルトコンベア210、回転式破砕混合装置220が駆動を開始した状態であるものとする。
【0090】
図12の処理が開始されると、まず、ステップS300において、中央制御装置290は、篩別装置203の第1バルブ206Aを開き、第2バルブ206Bを閉じる。すなわち、篩別装置203において篩別された堆砂S3が電気分解装置212に送られるようにする。この状態では、篩別装置203において篩別された堆砂S1が粉砕機208に送られ、粉砕機208において粉砕され排出された堆砂S4がベルトコンベア210を介して回転式破砕混合装置220に送られる。また、篩別装置203において篩別された堆砂S2もベルトコンベア210を介して回転式破砕混合装置220に送られる。
【0091】
次いで、ステップS302において、中央制御装置290は、堆砂S3が電気分解装置212のタンクに所定量投入されるまで待機する。所定量投入されたか否かは、不図示のカメラや重量センサなどの各種センサを用いて検出すればよい。タンク内に所定量の堆砂が投入されると、中央制御装置290は、ステップS304に移行する。
【0092】
ステップS304に移行すると、中央制御装置290は、篩別装置203の第2バルブ206Bを開き、第1バルブ206Aを閉じる。すなわち、篩別装置203において篩別された堆砂S3がベルトコンベア210を介して回転式破砕混合装置220に送られるようにする。
【0093】
次いで、ステップS306において、中央制御装置290は、電気分解装置212の含水率測定センサ232の測定値をモニタし、堆砂S3を含むスラリーの含水率が適正であるかを判断する。このステップS306の判断が否定された場合には、ステップS308に移行し、中央制御装置290は、給水装置234から電気分解装置212のタンク内のスラリーに向けて給水を行う。その後は、ステップS306の判断が肯定されるまで、ステップS308を繰り返し、ステップS306の判断が肯定されると、ステップS310に移行する。
【0094】
ステップS310に移行すると、中央制御装置290は、電気分解制御装置236に指示を出し、電気分解装置212による電気分解を実行させる。電気分解により生成された水素は、水素貯蔵タンク214に貯蔵される。なお、電気分解装置212による電気分解には、前述のように所定時間(例えば1時間)を要する。したがって、ステップS310を開始してから所定時間後に、中央制御装置290は、ステップS312に移行する。
【0095】
ステップS312に移行すると、中央制御装置290は、電気分解装置212の含水率測定センサ232の測定値をモニタし、電気分解後の堆砂(スラリー)の含水率が搬送するのに適正であるかを判断する。このステップS312の判断が否定された場合には、ステップS314に移行し、中央制御装置290は、給水装置234から電気分解装置212のタンク内のスラリーに向けて給水を行う。その後は、ステップS312の判断が肯定されるまで、ステップS314を繰り返し、ステップS312の判断が肯定されると、ステップS316に移行する。
【0096】
ステップS316に移行すると、中央制御装置290は、ポンプ238を制御して、フィルタプレス216へ堆砂S5を搬送する(搬送工程を実行する)。ステップS316の処理が行われた後は、中央制御装置290は、ステップS300に戻り、上述した処理を繰り返し実行する。
【0097】
(
図13の処理について)
図13の処理が開始されると、中央制御装置290は、まずステップS400において、電気分解装置212からフィルタプレス216に対し堆砂S5が搬送されるまで待機する。すなわち、
図12のステップS316の処理が実行されるまで待機する。その後、
図12のステップS316の処理が実行されると、中央制御装置290は、ステップS402に移行する。
【0098】
ステップS402に移行すると、中央制御装置290は、フィルタプレス制御装置240に指示を出し、堆砂S5の圧搾、乾燥を開始する。
【0099】
次いで、ステップS404において、中央制御装置290は、堆砂S5の含水率が、回転式破砕混合装置220において処理するための適正含水率になるまで待機する。堆砂S5の含水率が適正含水率になると、中央制御装置290は、ステップS406に移行する。
【0100】
ステップS406に移行すると、中央制御装置290は、フィルタプレス制御装置240に指示を出し、圧搾、乾燥を終了する。そして、中央制御装置290は、フィルタプレス制御装置240に指示を出し、圧搾、乾燥後の堆砂S6をベルトコンベア210上に排出させる。
【0101】
ステップS406の後は、ステップS400に戻る。その後は、上述した
図13の処理が繰り返し実行される。
【0102】
(
図14の処理について)
図14の処理が開始されると、中央制御装置290は、まずステップS500において、スキャナ218を用いて、ベルトコンベア210上の堆砂量をモニタする。
【0103】
次いで、ステップS502において、中央制御装置290は、ベルトコンベア210上の堆砂量に基づいて、添加剤の投入量の調整が必要か否かを判断する。例えば、中央制御装置290は、堆砂量と、添加剤の適正投入量と、の関係を記録したテーブルを保持しているものとし、当該テーブルを用いて、スキャナ218から得られるベルトコンベア210上の堆砂量に対応する添加剤の適正投入量を特定する。そして、中央制御装置290は、適正投入量と、現在の添加剤の投入量とが異なる場合に、調整が必要と判断する。
【0104】
ステップS502の判断が否定された場合(調整が不要な場合)には、ステップS500に戻る。これに対し、ステップS502の判断が肯定された場合(調整が必要な場合)には、ステップS504に移行する。
【0105】
ステップS504に移行すると、中央制御装置290は、添加剤投入量調整装置242に指示を出し、添加剤の投入量を調整する。すなわち、添加剤投入装置222から投入される添加剤の量を適正投入量に調整する。
【0106】
ステップS504の処理が行われた後は、ステップS500に戻る。その後は、上述した
図14の処理が繰り返し実行される。
【0107】
本実施形態においては、処理システム200において、
図12~
図14の処理が実行されることで、堆砂Sを含むスラリーを効率的に処理することができる。
【0108】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によると、堆積物移動装置100は、本体部30と、本体部30に振動を与える第1振動装置50A~50Dと、第1振動装置50A~50Dの振動を制御して、本体部30上に堆積した堆積物を本体部30上で移動させる制御装置90と、を備える。これにより、本体部30に堆積した堆積物を第1振動装置50A~50Dの振動により、適切な位置に移動させることができる。ここで、第1振動装置50A~50Dは、本体部30の堆積物誘導部42A,42Bに振動を与えることで、本体部30の堆積物格納部40内に堆積物を移動させる。これにより、本体部30上に落ちてきた堆積物を堆積物格納部40に集めることが可能である。また、堆積物誘導部42A,42Bは、傾斜面を有するため、第1振動装置50A~50Dの振動により、堆積物誘導部42A,42Bの傾斜面に沿って効率的に堆積物を移動させることができる。また、放水ポンプ36は、堆積物格納部40内に集まった堆積物に対して、水や堆積物を噴出して外力を与え、堆積物を堆積物移動装置100外(排砂水路16近傍)に移動させるので、堆積物を排砂水路16から効率的に排出することができる。
【0109】
また、本実施形態によると、堆積物移動装置100は、本体部30上に堆積した堆積物の重量を検出する第1張力計測装置48A~48Dを備えており、制御装置90は、第1張力計測装置48A~48Dの計測値に基づいて第1振動装置50A~50Dの振動を制御する。これにより、本体部30上の堆積物の量が多くなったタイミングで、堆積物を本体部30上で移動させることができる。
【0110】
また、本実施形態では、堆積物移動装置100は、本体部30の上方に設けられ、所定の粒径以上の物体の本体部30上への堆積を抑制する網状部材32を備えている。これにより、所定の粒径以上の物体を本体部30上に堆積させないようにすることができる。
【0111】
また、本実施形態では、堆積物移動装置100は、網状部材32に振動を与える第2振動装置56A~56Dを備えている。これにより、第2振動装置56A~56Dの振動によって、網状部材32上にある礫などに付着している砂を剥離させたり、土の塊を粉砕したりすることができる。
【0112】
また、本実施形態では、堆積物移動装置100は、網状部材32上に堆積した堆積物の重量を計測する第2張力計測装置54A~54Dを備えており、制御装置90は、第2張力計測装置54A~54Dの計測値に基づいて第2振動装置56A~56Dの振動を制御する。これにより、適切なタイミングで、第2振動装置56A~56Dを振動させることができる。
【0113】
また、本実施形態では、堆積物移動装置100は、堆積物格納部40に集まった堆積物の重量を計測する重量計測装置52を備えており、制御装置90は、重量計測装置52の計測結果に基づいて吸水ポンプ34及び放水ポンプ36を制御する。これにより、適切なタイミングで、吸水ポンプ34及び放水ポンプ36を動作させることができる。
【0114】
また、本実施形態では、クレーンやクレーン車が、網状部材32上に堆積した堆積物を回収する。これにより、網状部材32上に堆積した堆積物が、粒径が小さい物体の網状部材32の下方への移動を邪魔しないようにすることができる。
【0115】
また、本実施形態においては、処理システム200は、堆砂と水との混合物であるスラリーのうち少なくとも水を電気分解し、電気分解後の堆砂に対して破砕と混合との少なくとも一方を行う。これにより、電気分解により水素を生成できるとともに、電気分解後の堆砂を改良土として有効利用することができる。
【0116】
また、本実施形態では、処理システム200は、電気分解された後のスラリーを加圧濾過し、圧搾、乾燥し、その後に、回転式破砕混合装置220を用いて破砕・混合を行う。これにより、回転式破砕混合装置220における適正含水率とされたスラリー(堆砂)を回転式破砕混合装置220において処理することができる。
【0117】
また、本実施形態の処理システム200は、電気分解後のスラリーをフィルタプレス216に搬送する前に、スラリーの含水率に応じてスラリーに対して給水装置234を用いて給水を行う。これにより、電気分解装置212からフィルタプレス216にスラリーを搬送しやすくすることができる。
【0118】
また、本実施形態の処理システム200は、電気分解前のスラリーの含水率に応じてスラリーに対して給水装置234を用いて給水を行う。これにより、電気分解装置212において効率よく電気分解することができる。
【0119】
また、本実施形態の処理システム200は、所定の粒径以下の堆砂を篩別し、篩別された堆砂を電気分解に用いるので、適切な粒径の堆砂を電気分解に用いることができる。
【0120】
また、本実施形態の処理システム200は、スキャナ218を用いて、ベルトコンベア210上の堆砂の量を検出し、検出結果に基づく量の添加剤を回転式破砕混合装置220に投入する。これにより、回転式破砕混合装置220に適切な量の添加剤を投入することができる。
【0121】
なお、上記実施形態では、堆砂と水の混合物であるスラリーを加圧濾過して、圧搾、乾燥した後に、当該スラリーから得られた水を電気分解してもよい。このようにしても、電気分解を経て水素を得ることができるとともに、圧搾、乾燥した堆砂を改良土にするなどして有効活用することができる。
【0122】
なお、上記実施形態では、回転式破砕混合装置220が、破砕と混合の両方を行う場合について説明したが、これに限らず、回転式破砕混合装置220は破砕と混合のいずれか一方のみを行うこととしてもよい。
【0123】
なお、上記実施形態では、篩別装置203で篩別された堆砂S3のみを電気分解に用いる場合について説明したが、これに限らず、堆砂S1やS2を電気分解に用いることとしてもよい。
【0124】
なお、上記実施形態では、ダム湖10の湖底に1つの堆積物移動装置100が設けられる場合について説明したが、これに限らず、
図15に示すように、ダム湖10の湖底に複数の堆積物移動装置100を設けてもよい。この場合、
図15の左上(又は右上)の堆積物移動装置100が移動した堆積物を、
図15の左下(右下)の堆積物移動装置100の吸水ポンプ34が吸入して、放水ポンプ36から噴出するようにすればよい。
【0125】
なお、上記実施形態では、堆積物移動装置100がダム湖10の湖底に設けられている場合について説明したが、これに限らず、堆積物移動装置100は、地上に設置されてもよい。例えば、堆積物移動装置100は、崖下に設置してもよい。この場合、崖からの落下物(礫や砂など)が堆積物移動装置100上に落ちるため、網状部材32により篩別され、大きさが小さい落下物は、本体部30の堆積物格納部40に集積するようになる。そして、堆積物格納部40に集積された落下物に対して外力(例えば液体や気体などの流体など)を付与することで、落下物を堆積物移動装置100の外部に移動させることができる。
【0126】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0127】
30 本体部
32 網状部材
34 吸水ポンプ(外力付与装置の一部)
36 放水ポンプ(外力付与装置の一部)
48A~48D 第1張力計測装置(第1検出部)
50A~50D 第1振動装置
52 重量計測装置(第3検出部)
54A~54D 第2張力計測装置(第2検出部)
56A~56D 第2振動装置
90 制御装置
100 堆積物移動装置