(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022595
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】車両制御装置、車両制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B60W 30/16 20200101AFI20250206BHJP
【FI】
B60W30/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127315
(22)【出願日】2023-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】519373914
【氏名又は名称】株式会社J-QuAD DYNAMICS
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】市瀬 茂徳
(72)【発明者】
【氏名】徳持 大輔
(72)【発明者】
【氏名】杉山 竜巳
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA02
3D241CE02
3D241CE03
3D241CE05
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DC01Z
3D241DC25Z
(57)【要約】
【課題】走行時のエネルギー消費を低減可能なように追従制御を実施可能な車両制御装置を提供する。
【解決手段】プロセッサ61は、アダプティブクルーズコントロールの定速走行中に先行車を検出すると、当該先行車が高効率車であるか否かを判断する。高効率車は、走行速度の安定度、電費、燃費、エコ運転度といった、走行に伴うエネルギー効率の良し悪しを示す指標が所定の省エネルギー条件を充足する車両である。プロセッサ61は先行車が高効率車である場合には、ドライバへの許可を取ることなく、追従制御を開始する。一方、先行車が高効率車ではない場合には、ドライバに追従するか否かを問い合わせる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先行車の情報を受信する受信部(64)と、
前記先行車に追従するように自車両を走行させる制御である追従制御を実施可能に構成された制御部(61)と、を備え、
前記制御部は、
前記先行車の前記情報に基づいて、前記先行車が、走行時のエネルギー効率に関する所定の省エネルギー条件を満たすか否か判断し、
前記先行車が前記省エネルギー条件を満たすと判断した場合に前記追従制御を行うように構成されている車両制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御装置であって、
前記制御部は、
前記先行車が前記省エネルギー条件を満たす場合には、ドライバの意思を問い合わせることなく、自動的に前記追従制御を開始する一方、
前記先行車が前記省エネルギー条件を満たさない場合には、車線変更を実施するか、又は、前記追従制御を実施するか否かを前記ドライバに問い合わせる処理を実施する車両制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両制御装置であって、
前記制御部は、前記先行車が前記省エネルギー条件を満たさない場合、通知装置を用いて、前記追従制御を行うことを推奨しない情報をドライバに通知するための処理を実行するように構成されている車両制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車両制御装置であって、
前記制御部は、前記先行車が前記省エネルギー条件を満たす場合、通知装置を用いて、前記追従制御を行うことを推奨する情報をドライバに通知するための処理を実行するように構成されている車両制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の車両制御装置であって、
前記受信部は、入力装置を介して、ドライバが前記追従制御を許容することを示す信号を受信するよう構成されており、
前記制御部は、
前記先行車が前記省エネルギー条件を満たし、かつ、前記追従制御を許容する信号を前記受信部が受信している場合、前記制御部は前記追従制御を行うように構成されている車両制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載の車両制御装置であって、
前記省エネルギー条件は、前記先行車の走行にかかるエネルギー消費を抑えるように前記先行車の走行が前記先行車に搭載されている制御装置によって自動制御されている状態であることを含む、車両制御装置。
【請求項7】
請求項1に記載の車両制御装置であって、
前記省エネルギー条件は、前記先行車の現在の走行にかかるエネルギー効率の度合いを示す省エネルギー運転度が所定値以上であることを含む、車両制御装置。
【請求項8】
請求項1に記載の車両制御装置であって、
前記省エネルギー条件は、前記先行車のエネルギー消費履歴に基づく平均エネルギー効率が所定値以上であることを含む、車両制御装置。
【請求項9】
請求項1に記載の車両制御装置であって、
前記省エネルギー条件は、前記先行車の車速が所定の速度範囲内にあることを含む、車両制御装置。
【請求項10】
請求項1に記載の車両制御装置であって、
前記省エネルギー条件は、直近一定時間以内における前記先行車の加速度の最大値が所定範囲に収まっていることを含む、車両制御装置。
【請求項11】
請求項1に記載の車両制御装置であって、
前記受信部は、自車両の前方を走る複数の他車両の情報を受信するように構成されており、
前記制御部は、
前記他車両の前記情報に基づいて、走行にかかるエネルギー効率の度合いを示すパラメータである省エネルギー運転度を前記他車両ごとに決定し、
前記自車両の前方に複数の前記他車両が存在する場合、前記制御部は、複数の前記他車両のうち、前記省エネルギー条件を満たし且つ前記省エネルギー運転度が最も高い前記他車両である最高効率車に対して前記自車両を追従させるように構成されている、車両制御装置。
【請求項12】
請求項11に記載の車両制御装置であって、
前記制御部は、
前記自車両の走行車線を自動的に変更する制御である車線変更制御を実施可能に構成されており、
前記最高効率車と前記自車両との走行車線が異なる場合、前記自車両と前記最高効率車との走行車線が一致するように前記車線変更制御を行う、車両制御装置。
【請求項13】
請求項1に記載の車両制御装置であって、
前記自車両の走行車線上において前記自車両よりも前方に複数の他車両が存在する場合、前記受信部は、複数の前記他車両のうち先頭を走行している先頭車の情報を取得し、
前記制御部は、
前記先頭車が前記省エネルギー条件を満たすか否か判断し、
前記先頭車が前記省エネルギー条件を充足する場合には、前記追従制御を実施することを特徴とする車両制御装置。
【請求項14】
請求項1に記載の車両制御装置であって、
前記受信部は、前記先行車の前記情報を、前記先行車、路側機、又はサーバとの無線通信により取得することを特徴とする車両制御装置。
【請求項15】
請求項1に記載の車両制御装置であって、
前記受信部は前記先行車の前記情報を、前記自車両に備えられた外界センサ(51)から取得することを特徴とする車両制御装置。
【請求項16】
コンピュータに、
先行車の情報を取得することと、
前記先行車の前記情報に基づいて前記先行車が走行時のエネルギー効率に関する所定の省エネルギー条件を満たすか否か判断することと、
前記先行車が前記省エネルギー条件を満たす場合に、前記先行車に追従するように自車両を走行させる制御である追従制御を行うことと、を実行させるための命令を含む車両制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、先行車へ追従して走行するか否かを判断可能な車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
先行車へ追従して走行するように自車両の速度を自動調整する制御は、アダプティブクルーズコントロール又は先行車追従制御として知られている。特許文献1には、ふらつきの抑制を目的として、先行車の形状に基づいて、先行車追従制御における設定を変更する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、先行車追従制御に際し、走行時のエネルギー消費を抑制する方法については検討されていない。仮に減速と加速を頻繁に繰り返す他車両に自車両が追従すると、自車両のエネルギー効率が劣化しうる。
【0005】
本開示は、上記の着眼点に基づいて成されたものであり、その目的の1つは、走行時のエネルギー消費を低減可能なように追従制御を実施可能な車両制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示される車両制御装置は、先行車の情報を受信する受信部(64)と、先行車に追従するように自車両を走行させる制御である追従制御を実施可能に構成された制御部(61)と、を備え、制御部は、先行車の情報に基づいて、先行車が、走行時のエネルギー効率に関する所定の省エネルギー条件を満たすか否か判断し、先行車が省エネルギー条件を満たすと判断した場合に追従制御を行うように構成されている。
【0007】
また、ここに開示される車両制御プログラムは、コンピュータに、先行車の情報を取得することと、先行車の情報に基づいて先行車が走行時のエネルギー効率に関する所定の省エネルギー条件を満たすか否か判断することと、先行車が省エネルギー条件を満たす場合に、先行車に追従するように自車両を走行させる制御である追従制御を行うことと、を実行させるための命令を含む。
【0008】
上記の装置/プログラムによれば、自車両は、先行車が省エネルギー条件を充足する場合に、追従制御を行うように作動する。よって、減速と加速を頻繁に繰り返すなど、エネルギー効率が悪い他車両に自車両を追従させるおそれを低減できる。すなわち、走行時のエネルギー消費を低減可能なように追従制御を実施可能となる。
【0009】
なお、特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】自車両が先行車に追いついた際の車両制御装置の作動例を示すフローチャートである。
【
図5】先行車への追従を開始する際に表示する画像の一例を示す図である。
【
図6】手動運転中における車両制御装置の作動例を示すフローチャートである。
【
図7】設定車速に応じて先行車に追従するか否かを変更する処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について図を用いて説明する。本開示は、以下の実施形態に限定されない。以下に開示される構成は、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施されてよい。種々の変形例は、技術的な矛盾が生じない範囲において適宜組み合わせて実施されてよい。本開示には、複数の変形例を組み合わせてなる、明示しない構成も含まれる。以下の説明においては、同一の機能を有する部材に対しては、同一の名称又は同一の符号を付し、その具体的説明を省略することがある。構成の一部のみに言及している場合、他の部分については他の箇所に記載の説明が適用されてよい。
【0012】
本開示が適用された交通システムの全体像を示す図である。交通システムは、
図1に示すように、自車両1に加えて、他車両2、路側機3、及びサーバ4を含む。自車両1は、以下に述べる車載システム5が搭載された車両である。他車両2は、自車両1以外の車両である。他車両2にも、車載システム5と実質的に同一の機能を有するシステムが搭載されていて良い。路側機3及びサーバ4は任意の要素であって省略されて良い、本開示では自車両1と他車両2をまとめて車両とも記載する。
【0013】
本開示では、自車両1の前方を走行している1つ又は複数の他車両2を前方車両とも記載する。前方車両には、先行車2Aに限らず、側方前方車2B、先頭車2Cなどが含まれうる。先行車2Aは、エゴレーンを走行する前方車両の中で、自車両1から最も近い車両を意味する。つまり、先行車2Aは、自車両1から見て目の前を走行している他車両2に相当する。エゴレーンとは、道路において自車両1が走行しているレーンを意味する。エゴレーンは、自車線又は自車走行レーンと呼ぶこともできる。側方前方車2Bは、隣接レーンを走行する前方車両のうち、自車両1から最も近い車両である。隣接レーンは、エゴレーンに隣接するレーンである。先頭車2Cは、先行車2Aが属する車群の先頭を走行する他車両2を意味する。
【0014】
上記のように自車両の前方には斜め前方も含まれる。また、自車両の前方は、自車前方において自車両1から所定距離以内となる範囲と解されて良い。ここでの所定距離は、150m、200、又は250mなどであってよい。自車両の前方とする範囲は、車速に応じて変更されてよい。自車両の前方は、自車両1が所定時間(3秒又は4秒)以内に到達可能な範囲であってもよい。
【0015】
自車両1と他車両2は、狭域通信を実施可能に構成されている。本開示における狭域通信とは、無線基地局を介さずに、装置同士が直接的に行う無線通信を指す。狭域通信は、実質的な通信可能距離が150mや250m程度となる所定の無線通信規格に準拠した通信である。狭域通信の規格は、IEEE802.11p規格に対応するDSRC(Dedicated Short Range Communications)、WAVE(Wireless Access in Vehicular Environment)、セルラーV2X(PC5/SideLink)など、任意のものを採用可能であってよい。IEEE(登録商標)は、Institute of Electrical and Electronics Engineersの略であり、米国電気電子学会を意味する。車両同士の直接的な無線通信は車車間(V2V:Vehicle-to- Vehicle)通信とも称される。
【0016】
自車両1及び他車両2は、狭域通信にて、車両状態メッセージを定期的にブロードキャストするように構成されていてよい。車両状態メッセージは、送信元の状態を示すメッセージである。車両状態メッセージは、送信元情報、送信時刻、現在位置、進行方向、走行速度、加速度、操舵角、ウィンカー/ワイパー作動状態などを含んでいてよい。車両状態メッセージは、ETSI TS 102 637-2に定められたCAM(Cooperative Awareness Message)又はSAE J 2735に定められたBSM(Basic Safety Message)であってもよい。
【0017】
また、自車両1及び他車両2は、狭域通信にて、エネルギー効率を示すデータであるエネルギー効率データを定期的に送信してよい。エネルギー効率データは、一定距離を走行する際のエネルギーの消費度合い、換言すれば、走行時のエネルギー効率を示すデータである。エネルギー効率データは、単独の通信パケットとして送信されていても良いし、上述の車両状態メッセージに含まれていても良い。エネルギー効率データの詳細については別途後述する。
【0018】
路側機3は、道路沿いに配置されている無線通信設備である。路側機3は、交通インフラストラクチャの一部と解されてよい。路側機3は、RSU(Road Side Unit)とも称される。路側機3は、車両と狭域通信を実施可能に構成されている。車両と路側機3との直接的な無線通信は路車間(V2I:Vehicle-to-Infrastructure)通信とも呼ばれうる。
【0019】
路側機3は、他車両2から受信したデータを自車両1に転送するように構成されていて良い。路側機3は、自車両1の周りに存在する他車両2の情報を自車両1に送信してよい。また、路側機3は、車両から受信したデータをサーバ4に送信するとともに、サーバ4から受信したデータを自車両1に送信するように構成されていて良い。
【0020】
サーバ4は、自車両1の外部に配置されたサーバである。サーバ4は、自車両1とセルラー通信を実施可能に構成されていてよい。セルラー通信は、LTE(Long Term Evolution)、4G、又は5Gなどに準拠した無線通信である。セルラー通信は、携帯電話回線を利用した通信と解されて良い。サーバ4は、各車両の走行状態を収集し、車両ごとの省エネ運転度を評価してよい。省エネ運転度については後述する。サーバ4は、自車両1の前方に位置する他車両2の省エネ運転度を示すデータセットを、自車両1に配信するように構成されていて良い。
【0021】
サーバ4は、上記の省エネ運転度の算出及び配信にかかる処理を路側機3と連携して実施しても良い。サーバ4は、路側機3を介して車両ごとの走行状態を収集して良い。加えて、サーバ4は、自車両1の前方に位置する他車両2の省エネ運転度を示すデータセットを、路側機3を介して自車両1に配信しても良い。なお、省エネ運転度を評価し配信する機能は、路側機3が備えていても良い。
【0022】
以下では、自車両1が電気自動車である場合について説明する。もちろん、自車両1は、エンジン車、ハイブリッド車、又は燃料電池車であってもよい。電気自動車は、駆動源としてモータのみを備える車両である。エンジン車は駆動源としてエンジンのみを備える車両である。ハイブリッド車は、駆動源としてエンジンとモータの両方を備える車両である。
【0023】
<車載システム5の全体構成について>
車載システム5は、
図2に示す種々の構成を備える。すなわち、車載システム5は、外界センサ51、車両状態センサ52、無線通信部53、表示装置54、入力装置55、走行アクチュエータ56、及び車両制御装置60を備える。
【0024】
車両制御装置60は、外界センサ51などといった上記装置/センサのそれぞれと車内ネットワークを介して相互通信可能に接続されていてよい。車内ネットワークは、車両内に構築されている通信ネットワークである。車内ネットワークの規格は、Controller Area Network(CANは登録商標)、Ethernet(登録商標)、又はFrexRay(登録商標)などであってよい。一部の装置/センサは車両制御装置60と専用の信号線によって直接的に接続されていてもよい。装置同士の接続形態は適宜変更可能である。
【0025】
外界センサ51は、自車両1の外に存在する物体を検出するセンサである。外界センサ51は、自車両1の周辺環境をセンシングするセンサと解されてよい。外界センサ51は、周辺監視センサ、物体検出センサ、又は自立センサと言い換えられてよい。
【0026】
外界センサ51は、所定の検出対象物の存在及びその位置を検出するように構成されている。検出対象物には、歩行者及び他車両2といった、移動体が含まれていてよい。外界センサ51は、周辺監視カメラ、ミリ波レーダ、LiDAR(Light Detection and Ranging/Laser Imaging Detection and Ranging)、又はソナーであってよい。
【0027】
車載システム5は、複数の外界センサ51を備えていてよい。車載システム5は、外界センサ51として、それぞれ撮影方向が異なる複数の周辺監視カメラと、複数のミリ波レーダとを備えていてよい。周辺監視カメラは、自車両1の外側の所定方向を撮像するように配置されている車載カメラである。周辺監視カメラは、ディープラーニングを適用した識別器を用いて、撮影映像から検出対象として登録されている物体を検出及び識別する。外界センサ51は、道路標識、信号機などの立体構造物を検出可能に構成されていて良い。
【0028】
外界センサ51は、検出結果データを車両制御装置60に出力する。検出結果データは、物体の検出結果、すなわち、検出物ごとの位置、移動速度、移動方向、及び種別を示すデータであってよい。なお、検出物の識別(認識)にかかる処理の一部は、車両制御装置60が実施可能に構成されていてもよい。車両制御装置60は、外界センサ51から入力される観測データに基づいて、検出物の位置、移動速度、移動方向、及び種別の何れかを特定する処理を実施しても良い。車載システム5内における機能配置は適宜変更されてよい。観測データとは、カメラが生成する映像/画像データや、LiDARが生成する3次元点群データ、ミリ波レーダ/ソナーが取得する反射波の受信データなどを意味する。
【0029】
車両状態センサ52は、自車両1の状態に関する情報を検出するセンサである。車両状態センサ52には、車速センサ、加速度センサ、ブレーキペダルセンサ、アクセルペダルセンサ、及びシフトセンサが含まれてよい。車速センサは、自車両1の走行速度を検出するセンサである。加速度センサは、自車両1に作用する加速度を検出するセンサである。加速度センサは、縦加速度と横加速度を検出可能に構成されていてよい。縦加速度は、車体の前後方向に作用する加速度である。横加速度は車体の左右方向に作用する加速度である。
【0030】
ブレーキペダルセンサは、ブレーキペダルの踏込量を検出するセンサである。アクセルペダルセンサは、アクセルペダルの踏込量を検出するセンサである。ブレーキペダル/アクセルペダルの踏込量は、ドライバがブレーキペダル/アクセルペダルを踏み込んでいる量を意味する。踏込量はストローク量とも呼ばれうる。踏込量は、角度/圧力などで表現されて良い。本開示ではアクセルペダルとブレーキペダルをまとめてペダル類とも記載することがある。シフトセンサはシフトポジションを示す信号を出力するセンサである。車両状態センサ52は、方向指示器やワイパーセンサを含んでいて良い。車両状態センサ52は、検出結果を示すデータを車両制御装置60に出力する。車載システム5が備えるセンサの種類は適宜設計されればよく、上述した全てのセンサを備えている必要はない。
【0031】
無線通信部53は、自車両1が外部装置と無線通信を実施するための装置である。外部装置には、他車両2、路側機3、及びサーバ4の一部又は全部が含まれてよい。無線通信部53は、狭域通信を実施可能に構成されている。無線通信部53は、狭域通信用のアンテナ、送受信回路、及び通信コントローラを含む。送受信回路は、変調及び復調にかかる信号処理を行う回路である。通信コントローラは、狭域通信にかかる処理を実行するマイクロコンピュータである。
【0032】
無線通信部53は、他車両2から受信したデータを車両制御装置60に出力する。また、無線通信部53は、車両制御装置60から受信したデータを他車両2又は路側機3に向けて送信する。無線通信部53は、他車両2から送信されたエネルギー効率データを受信して車両制御装置60に提供する。また、無線通信部53は、車両制御装置60からの入力データに基づいて、自車両1のエネルギー効率データを他車両2又は路側機3に向けて送信しうる。
【0033】
また、無線通信部53は、セルラー通信を実施可能に構成されていてよい。無線通信部53は、セルラー通信用のアンテナ、送受信回路、及びコントローラを含んでいて良い。さらに、無線通信部53は、セルラーV2Xを実施するように構成されていても良い。
【0034】
表示装置54は、画像を表示する装置である。表示装置54は、インストゥルメントパネルに設けられたディスプレイであってよい。表示装置54は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイを用いて実現されうる。表示装置54は車両制御装置60から入力される信号に応じた画像を表示する。
【0035】
入力装置55は、車載システム5に対するドライバの指示操作を受け付けるための装置である。入力装置55は、ステアリングスイッチであってもよいし、表示装置54に積層されたタッチパネルであってもよい。ステアリングスイッチは、ステアリングホイールのスポーク部に設けられたスイッチである。車載システム5は、複数種類のデバイスを入力装置55として備えていて良い。
【0036】
入力装置55は、ドライバの操作に対応する電気信号である操作信号を車両制御装置60に出力する。操作信号は、ドライバの操作内容を示す情報を含む。車載システム5は、入力装置55を介して、車両制御装置60の動作モードの変更にかかる指示を受け付ける。動作モードの変更にかかる指示には、運転支援の開始及び終了にかかる指示も含まれる。本開示では、運転支援の開始を指示する操作信号を支援開始指示信号とも記載する。また、運転支援の終了を指示する操作信号を支援終了指示信号とも記載する。運転支援の開始及び終了を指示するためのスイッチは、別々に設けられていても良いし、同一のスイッチであってもよい。
【0037】
車載システム5は、ドライバの各種指示を、音声認識によって取得可能に構成されていても良い。マイクなどの音声入力にかかるデバイスも入力装置55に含めることができる。なお、表示装置54と車両制御装置60との間には、HCU(HMI Control Unit)が介在していても良い。HCUは、ドライバへの情報通知を統合的に制御する装置である。
【0038】
走行アクチュエータ56は、自車両1を走行させるためのアクチュエータである。走行アクチュエータ56には、ブレーキアクチュエータ、パワートレイン、及び操舵アクチュエータなどが含まれる。操舵アクチュエータには、EPS(Electric Power Steering)モータであってよい。パワートレインは、モータ、インバーター、トランスアクスルを含む電動ユニットであってよい。エンジン車やハイブリッド車におけるパワートレインは、電子スロットル、エンジン、変速機を含むユニット/システムと解されて良い。モータジェネレータも走行アクチュエータ56の1つと解されて良い。
【0039】
車両制御装置60は、外界センサ51の検出結果などをもとに走行アクチュエータ56を制御することにより、運転操作の一部をドライバの代わりに実行する装置である。車両制御装置60は、運転支援機能を提供する運転支援ECU(Electronic Control Unit)と解されて良い。なお、車両制御装置60と走行アクチュエータ56との間には、操舵制御を行う操舵ECUや、加減速制御を行うパワーユニット制御ECU、及びブレーキECU等、他のECUが介在していてもよい。
【0040】
車両制御装置60は、コンピュータを含む。すなわち、車両制御装置60は、プロセッサ61、メモリ62、ストレージ63、通信インターフェース64、及びこれらを接続するバス等を備える。メモリ62は書き換え可能な揮発性の記憶媒体である。メモリ62は、RAM(Random Access Memory)であってよい。ストレージ63は、フラッシュメモリなどといった書き換え可能な不揮発性である。ストレージ63には、プロセッサ61によって実行されるプログラムである車両制御プログラムが格納されている。プロセッサ61が車両制御プログラムを実行することは、車両制御方法が実行されることに相当する。プロセッサ61が制御部に相当し、通信インターフェース64が受信部に相当する。
【0041】
車両制御装置60は、ユーザ操作に基づいて運転支援機能が有効化されている場合、運転支援としての制御を実行する。ここでの制御は処理と言い換えられてもよい。車両制御装置60は、運転支援として、ACC(Adaptive Cruise Control)と、LTC(Lane Trace Control)を実行するように構成されていても良い。
【0042】
ACCは、走行環境及びドライバに設定されている走行速度の目標値(以降、設定車速)に応じて、自車両1の走行速度を自動調整する制御である。ACCにおいて、車両制御装置60は先行車2Aが存在しない場合には自車両1を設定車速で定速走行させる。また、ACCにおいて、車両制御装置60は、先行車2Aが存在する場合には追従制御を実施する。追従制御は、先行車2Aと自車両1との車間距離を一定とするように、設定車速に応じた速度範囲内において、自車両1の走行速度を自動調整する制御である。追従制御は、自車両1が先行車2Aに追従するように走行させる制御と解されて良い。追従制御を実施している状態を本開示では追従走行状態とも称する。また、自車両1を設定車速で定速走行させている状態を本開示では定速走行状態とも称する。ACC実行中、車両制御装置60は定速走行状態と追従走行状態とを取りうる。
なお、先行車2Aが存在しない場合とは、外界センサ51で先行車2Aが検出されていない場合と解されて良い。設定車速は、予め設定された速度範囲内でユーザによって設定されてよい。ACCにおける先行車2Aとの車間距離の目標値(つまり目標車間距離)は、設定車速に応じて決定されて良い。車両制御装置60は、車間距離の設定を3段階~4段階で変更可能に構成されていて良い。目標車間距離は、車間時間の概念で決定されてよい。設定車速及び目標車間距離は、入力装置55から入力される操作信号をもとに変更されてよい。ドライバが指定した設定車速及び目標車間距離の値は、ストレージ63に保存され、次回以降は自動的に読み出されて良い。
【0043】
LTCは、外界センサ51で検出されるレーンの位置情報に基づいて、エゴレーンの中心を自車両1が走行するように操舵角を常に自動制御することである。なお、車両制御装置60は、LTCの代わりに又はLTCに加えて、運転支援としてLTA(Lane Tracing Assist)を実行するように構成されていてもよい。LTAは、外界センサ51で検出されるレーンの位置情報に基づいて自車両1がエゴレーンから逸脱しないように操舵を支援する制御である。LTAは、自車両1がエゴレーンを逸脱しそうになったときにのみ、エゴレーンの中心に向かう方向に操舵力を付与する機能であって良い。
【0044】
その他、車両制御装置60は、運転支援機能が有効化されている状態においてドライバからの追い越し指示が入力された場合には、先行車2Aを追い抜くための車線変更を自動的に実行するよう構成されていてよい。自動的な車線変更は、目標レーンの空きスペースを認識した上で、当該空きスペースに向けて自車両1を横移動させることと解されて良い。追い越し指示は、所定のスイッチを押すことであってもよいし、方向指示器を作動させることであってもよい。自動的な車線変更が車線変更制御に相当する。
【0045】
車両制御装置60は、上記の運転支援を行う際の動作モードとして、通常モードと、省エネモードとを有する。省エネモードは、通常モードよりも、走行にかかるエネルギーロスが小さくなるように、換言すれば、エネルギー効率が高まるように、加速及び減速(つまり速度調整)を行うモードである。省エネは省エネルギーの略である。省エネモードは、通常モードよりも緩やかに加速及び減速を行うモードであってよい。省エネモード時、車両制御装置60は、通常モード時よりも車間距離を長めにとるよう構成されていてよい。また、自車両1が電気自動車である場合、省エネモード時、車両制御装置60はなるべく回生ブレーキにて減速を行うように構成されていて良い。省エネモードは、節電モード、或いは、パワーセービングモードと言い換えられて良い。
【0046】
車両制御装置60は、入力装置55から入力される操作信号に基づいて、運転支援機能の作動状態を切り替える。運転支援機能が無効化されている車両制御装置60の状態を、以降では休止モードとも称する。休止モードは、車両制御装置60が何もしない状態であってもよいし、注意対象の通知のみを行うモードであってもよい。また、休止モードは、外界センサ51の出力信号に基づいて衝突被害軽減制動(AEB:Autonomous Emergency Braking)を実施可能な状態であってよい。AEBは、衝突予測時間(TTC:Time To Collision)が所定値以下の物体が存在することに基づいて自車両1を強制的に減速させることである。
【0047】
また、車両制御装置60は、運転支援機能が有効化されている場合、操作信号に基づいて、通常モードと省エネモードとを切り替える。車両制御装置60は、運転支援機能の作動状態を示す画像を表示装置54に表示する。
【0048】
<車両制御装置の機能について>
車両制御装置60は、車両制御プログラムを実行することによって実現される機能部として
図3に示す機能部を備える。すなわち車両制御装置60は、データ取得部F1、環境認識部F2、モード制御部F3、自車効率評価部F4、判断部F5、確認部F6、及び追従制御部F7を有する。
【0049】
データ取得部F1は、運転支援を実施するための多様な情報を受信する構成である。データ取得部F1は、外界センサ51からセンシングデータ(つまり検出結果)を取得する。センシングデータには、移動体、地物、及び障害物といった、自車周辺に存在する物体についてのデータが含まれる。データ取得部F1は、外界センサ51から先行車2Aや、側方前方車2Bの情報を取得しうる。各検出物のデータは、検出物の位置、移動速度、及びその種別又は大きさを含んでいてよい。地物にかかるセンシングデータは、車線区画線、及び、道路端の検出結果にかかるデータを含んでいてよい。車線区画線のデータは、位置データだけでなく線種(実線又は破線)を示すデータを含んでいてもよい。また、データ取得部F1は、車両状態センサ52から、自車両1の走行速度及び加速度などといった、車両の状態を示すデータを取得する。
【0050】
さらに、データ取得部F1は、無線通信部53との協働により、外部装置から送信されたデータを取得する。データ取得部F1は、前方車両から車車間通信にて送信されてきたエネルギー効率データや走行状態メッセージを取得しうる。データ取得部F1は、路側機3やサーバ4から前方車両の情報を受信しても良い。
【0051】
データ取得部F1は、入力装置55からの信号に基づき、車載システム5に対するドライバの操作なども取得する。データ取得部F1は、運転支援の開始及び終了にかかる指示信号を入力装置55から取得する。データ取得部F1が逐次取得する種々のデータは、メモリ62等といった一時記憶媒体に保存され、環境認識部F2や判断部F5などによって利用される。
【0052】
環境認識部F2は、データ取得部F1が取得したデータに基づいて、自車両1の走行環境を認識する。環境認識部F2は、センサフュージョン処理により、自車両1の走行環境を認識してもよい。センサフュージョン処理は、周辺監視カメラとミリ波レーダといった、複数の外界センサ51の検出結果を所定の重みで統合する処理である。
【0053】
走行環境には、道路の曲率や、車線数、エゴレーン番号、天候、路面状態、交通量、ゲート地点までの残り距離などが含まれる。エゴレーン番号は、道路におけるエゴレーンの位置、換言すれば、自車両1の左側又は右側に存在する他のレーンの数を示す番号である。エゴレーン番号は、左の道路端を基準として表現されて良い。
【0054】
走行環境には、車両周辺に存在する物体の位置や、種別、移動速度なども含まれる。環境認識部F2は、データ取得部F1が取得した多様なデータに基づき、前方車両の位置及び挙動を認識する。例えば環境認識部F2は、外界センサ51及び(又は)無線通信部53の受信データに基づいて先行車2Aの走行速度及び加速度を定期的に取得する。環境認識部F2は、先行車2Aに限らず、側方前方車2B及び(又は)先頭車2Cについての情報を、外界センサ51及び(又は)無線通信部53の受信データに基づいて特定及び更新してよい。
【0055】
モード制御部F3は、データ取得部F1が受信した操作信号に基づいて車両制御装置60の動作モードを制御する。モード制御部F3は、入力装置55から支援開始指示信号が入力された場合には、動作モードを休止モードから通常モードまたは省エネモードへ切り替える。以下における運転支援実行中とは、運転支援機能が有効化されている状態、すなわち、車両制御装置60が通常モード又は省エネモードで動作している状態と解されて良い。また、以下における手動運転中とは、運転支援(主としてACC)が停止している状態、つまり車両制御装置60が休止モードである状態と解されて良い。
【0056】
支援開始指示信号を受信した場合に、車両制御装置60が通常モードで動作するか省エネモードで動作するかは、所定の設定画面を介してドライバによって事前設定されていてよい。ストレージ63には、支援開始直後の動作モードを通常モードとするか、省エネモードとするかを示す動作設定データが登録されていて良い。
【0057】
もちろん、モード制御部F3は、開始指示信号を受信した場合にはいったん通常モードで動作するように構成されていても良い。モード制御部F3は、通常モードで動作中において、車載バッテリの電力残量が所定値未満となったこと、或いは、省エネモードに切り替えるための操作信号を受信したことに基づいて、動作モードを通常モードから省エネモードに切り替えて良い。車両制御装置60は車載バッテリの出力電圧に基づいて電力残量を示すデータを取得可能に構成されていてよい。その他、モード制御部F3は、運転支援実行中において、ドライバによるオーバーライド操作が検知された場合には、動作モードを休止モードに切り替えてよい。オーバーライド操作とは、ペダル類の踏み込みであってよい。
【0058】
自車効率評価部F4は、自車両1の走行にかかるエネルギー効率を評価する構成である。エネルギー効率は、電費又は燃費で表現されて良い。電費は、WLTC(Worldwide harmonized Light duty driving Test Cycle)方式で算出されてもよいし、EPA(Environmental Protection Agency)方式で算出されても良い。電費及び燃費は、一定時間当り又は一定距離当りの平均値(平均燃費又は平均電費)であって良い。電費又は燃費が平均エネルギー効率に相当する。
【0059】
もちろん、エネルギー効率は、燃費/電費以外のパラメータを用いて表現されてもよい。エネルギー効率を表すデータとして自車効率評価部F4は、エコ運転度を算出するように構成されていてもよい。エコ運転度は、一定距離を走行する際のエネルギーの消費度合い、換言すれば、走行にかかるエネルギー効率を示すパラメータと解されて良い。エコ運転度が高いほど、エネルギー効率が良いことを意味する。速度が不安定であるほど、ブレーキアクチェータの駆動頻度が多いほど、エコ運転度は低下しうる。エコ運転度は、100点を満点とするスコアで表現されても良いし、レベルで表現されてもよい。自車効率評価部F4は、加速度の時系列データや、ペダル類の操作履歴、速度の安定性などに基づいてエコ運転度を算出して良い。エコ運転度は、任意の方法で算出されて良い。さらに、自車効率評価部F4は、エネルギー効率を表すデータとして、走行速度の変化幅を示すデータを生成してもよい。走行速度の変化幅は、一定時間以内における速度の最大値と最小値の差であって良い。
【0060】
本実施形態の自車両1は、他車両2と車車間通信にてエネルギー効率データを共有する。エネルギー効率データは、自身のエネルギー効率を直接的に又は間接的に示すデータである。自車両1は、エネルギー効率データを狭域通信で定期的に送信する。他車両2もまた、自車両1と同様に、エネルギー効率データを定期的に生成及び送信する。なお、自車両1は、路側機3又はサーバ4から、他車両2(主として前方車両)のエネルギー効率データを受信しても良い。
【0061】
前述の通り、エネルギー効率は、電費(燃費)、或いは、エコ運転度で表現されて良い。エネルギー効率データが電費の情報を含む場合、エネルギー効率データは、電費の算出方法を示すコードを含んでいて良い。各車両は、電費又は燃費を定期的に計算し、最新の電費又は燃費を示すデータをエネルギー効率データとして送信して良い。
【0062】
エネルギー効率データは、エネルギー効率を受信車両が判断するためのデータとして、走行速度の変化幅、速度履歴データ、加速度履歴データ、ブレーキ履歴データ、及び、アクセル履歴データの一部又は全部を含んでいてもよい。速度履歴データは、直近一定時間以内における走行速度の時系列データであってよい。走行速度の変化幅は、走行速度の履歴を代表的に(端的に)表すデータに相当する。加速度履歴データは、車両に作用した加速度の時系列データであってよい。加速度履歴データは、一定時間以内に観測された加速度の最大値、最小値、平均値、又は中央値を示すデータであってもよい。加速度履歴データは、加速度の平均値又は中央値に対する、最大値又は最小値の差である加速度振幅値を含んでいてもよい。加速度履歴データは、減速度の履歴を含んでいても良い。また、加速度の履歴と減速度の履歴は分けられていても良い。加速や減速が少ないこと、つまり加速度が安定していることは、エネルギー効率が高いことを示す。
【0063】
ブレーキ履歴データは、直近一定時間以内におけるブレーキペダルの踏込量の時系列データであってよい。ブレーキ履歴データは、直近一定時間以内におけるブレーキペダルの踏み込み量の最大値、合計値、又は踏み込みの頻度などを含んでいて良い。加速よりも減速のほうがエネルギー損失は大きい。減速操作が少ないことは、エネルギー効率が高いことを示す。アクセルペダルの操作履歴は、上記ブレーキペダルの操作履歴と同様であってよい。各車両は、任意のエネルギー効率を示すデータを生成し、狭域通信で他の装置に送信して良い。
【0064】
その他、送信元が走行速度の自動制御にかかるモード、つまりACCの動作モードとして、通常モードと省エネモードを備える場合、エネルギー効率データは省エネモードで走行中か否かを示すデータを含んでいて良い。
【0065】
判断部F5は、無線通信部53の受信データ又は外界センサ51の検出結果に基づいて、先行車2Aが省エネルギー条件(以降、省エネ条件)を充足しているかを判断する構成である。先行車2Aが省エネ条件を充足していると判定することは、先行車2Aが高効率車と判定することに相当する。高効率車は、走行にかかるエネルギー効率が良い車両を意味する。高効率車は省エネ運転車と言い換えられて良い。省エネ条件は、後述の通りエネルギー効率の観点から自車両1が追従するべき他車両2であるか否かを区別する条件、つまりエネルギー効率の観点における追従条件と解されて良い。
【0066】
判断部F5は、先行車2Aの加速度又は減速度の最大値が許容加速度より小さい場合に、先行車2Aは省エネルギー条件を充足していると判定してよい。許容加速度は、先行車2Aが省エネ条件を充足しているか否かを判断するための閾値パラメータである。許容加速度は、燃費/電費の観点から事前に設定された一定値であってよい。また、許容加速度は、自車両1の直近所定時間以内における加速度/減速度の最大値であってもよい。
【0067】
また、先行車2Aの走行速度が許容速度未満の場合、先行車2Aは省エネ条件を充足すると判定してもよい。速度が低いほど、走行抵抗が低減できる。よって速度が許容速度未満である場合には上記の通り、省エネ条件を充足すると判断してよい。許容速度は、一定の値(例えば80km/h)であってよい。許容速度は、自車両1の車両モデルに応じて変更されてよい。自車両1の車両モデルがセダンやクーペといった空気抵抗を受けにくいモデルの場合には、ワゴンやミニバンのように空気抵抗を受けやすいモデルの場合に比べて、許容速度は高め(例えば90km/h)に設定されていて良い。
【0068】
判断部F5は、自車両1の走行履歴と先行車2Aの走行履歴とを比較し、両者の類似度が一定値以上である場合、又は、先行車2Aのほうが自車両1よりもエネルギー効率が良い走行している場合に、先行車2Aは省エネルギー条件を充足していると判定してよい。エネルギー効率がよい走行とは、走行速度の変動が小さい走行、或いは、ブレーキ回数が少ない走行と解されて良い。判断部F5は、自車両1よりも先行車2Aのほうが速度の変化幅が小さい場合、又は、先行車2Aの走行速度の変化幅が所定値未満である場合に、先行車2Aは省エネ条件を充足していると判定して良い。
【0069】
車両制御装置60は、先行車2Aの走行速度や加速度といった走行状態を示すデータは、エネルギー効率データ又は走行状態メッセージとして先行車2Aから無線通信で受信してよい。また車両制御装置60は、外界センサ51のセンシングデータから、上記データを取得して良い。
【0070】
また、判断部F5は、先行車2Aの電費/燃費が所定の閾値以上である場合に、先行車2Aが省エネ条件を充足すると判断してよい。さらに、判断部F5は、先行車2Aのエコ運転度が所定値以上である場合に、先行車2Aは省エネ条件を充足すると判断してよい。判断部F5は、先行車2Aが省エネモードでACC実行中である場合に、先行車2Aは省エネ条件を充足すると判定して良い。先行車2Aが省エネモードでACC実行中である場合が、先行車2Aの走行にかかるエネルギー消費を抑えるように先行車2Aの走行が先行車2Aに搭載されている制御装置によって自動制御されている状態に相当する。上記状態は、先行車2Aが、省エネモードを備えるACC装置、つまり車両制御装置60に相当する制御装置を備え、且つ、省エネモードが有効化されている状態と解されて良い。
【0071】
車両制御装置60は、先行車2Aの電費/燃費、エコ運転度、ACCの具体的な動作モードなどを、エネルギー効率データとして無線通信で取得してよい。もちろん、車両制御装置60は、省エネ条件にかかる上記の判断材料を、先行車2Aから直接受信するのではなく、路側機3やサーバ4を介して受信してもよい。また、路側機3又はサーバ4が、先行車2Aが省エネ条件を充足するか否かを判断し、その判断結果を自車両1に通知しても良い。
【0072】
判断部F5は、先行車2Aが省エネ条件を充足するか否かを判断するときと同様の方法にて、側方前方車2Bや先頭車2Cに関しても、省エネ条件を充足するか否かを判断してよい。判断部F5が複数の前方車両が存在する場合、複数の前方車両のそれぞれに対して省エネ条件を充足するか否かを判断してよい。
【0073】
また、判断部F5は、複数の前方車両が検出されている場合、それぞれに対して省エネルギー運転度(以降、省エネ運転度)を算出してよい。省エネ運転度は、走行にかかるエネルギー効率の高さを示すパラメータである。判断部F5は、他車両2のエコ運転度を無線通信で受信できた場合には、当該エコ運転度を省エネ運転度として採用しても良い。ただし、他車両2ごとにエコ運転度の算出式が異なることも想定される。これに対し、省エネ運転度は、車両制御装置60に登録されている所定の算出式で計算される、エコ運転度に対応するパラメータと解されて良い。
【0074】
判断部F5は、複数の前方車両のうち、省エネモードでACC実行中の車両を最高効率車と判断してよい。最高効率車は、前方車両の中で最もエネルギー効率が高い車を指す。換言すれば、最高効率車は、省エネ運転度が最も高い車両である。
【0075】
なお、複数の前方車両の中に、省エネモードでACC実行中の車両が存在しない場合、判断部F5は、エコ運転度が最も高い車両を最高効率車と判断して良い。また、判断部F5は、ACCの動作モード及びエコ運転度の観点では最高効率車を決定できなかった場合には、電費又は燃費が最もよい車両を最高効率車と判断して良い。なお、前方車両の中に、ハイブリッド車又はエンジン車が含まれている場合、判断部F5は、燃費は所定の変換式を用いて電費に変換した上で最高効率車を決定して良い。その他、判断部F5は、直近一定時間以内における速度の変化幅が最も小さい車両、或いは、ブレーキ回数が最も少ない車両を最高効率車と判断してもよい。
【0076】
確認部F6は、運転支援実行中かつ先行車2Aが省エネ条件を満たさない場合に、ドライバに対して、先行車2Aに追従して走行するか否かを問い合わせる処理(以降、意思確認処理)を実行する構成である。確認部F6は、問い合わせの結果を示すデータを追従制御部F7に通知する。なお、確認部F6は、先行車2Aに追従しない場合の選択肢として、(1)追い越し(車線変更)を実施する、(2)手動運転に切り替える、といった複数の選択肢をドライバに提示しても良い。手動運転に切り替えることは、運転支援機能を停止することに相当する。意思確認処理は、表示装置54及び入力装置55といった車載HMI(Human Machine Interface)を用いて実施されて良い。問い合わせに対するドライバの回答は入力装置55を介して取得されてよい。
【0077】
追従制御部F7は、先行車2Aに追従するように自車両1を自動走行させるための制御を実施する構成である。追従制御部F7は、意思確認処理の結果、ドライバが追い越しを希望していることを示す回答を取得した場合には、追い越しのための自動的な車線変更を開始するように構成されていて良い。
【0078】
また、片側2車線以上の道路を走行中であって、側方前方車2Bのほうが先行車2Aよりも省エネ運転度が高い場合、側方前方車2Bが走行しているレーンへと車線変更を実施するように構成されていても良い。追従制御部F7は、最高効率車と自車両1との走行車線が異なる場合、自車両1と最高効率車の走行車線が一致するように車線変更を実施して良い。
【0079】
<作動例>
ここでは運転支援実行中における車両制御装置60の作動について、
図4に示すフローチャートを用いて説明する。
図4に示すフローチャートは、ACCにおける定速走行中、定期的に(例えば250ミリ秒毎)実行されてよい。
【0080】
図4に示すフローチャートは一例として、ステップS101~S111を含む。以下のステップの実行主体としてのプロセッサ61との記載は、車両制御装置60、或いは、文脈に即してデータ取得部F1、環境認識部F2、モード制御部F3、自車効率評価部F4、判断部F5、確認部F6、又は追従制御部F7に置き換えられてよい。
【0081】
ステップS101は、プロセッサ61が種々のデータを取得するステップである。プロセッサ61は、ステップS101において、外界センサ51のセンシングデータや、車両状態センサ52の検出結果、無線通信部53の受信データなどを取得する。なお、ステップS101に相当する処理は、本フローとは独立して定期的に(例えば100ミリ秒ごとに)或いは随時実行されて良い。ステップS101は、メモリ62に保存されている(つまり取得済みの)データを読み出すステップであっても良い。
【0082】
ステップS102は、ステップS101で取得又は読みだしたデータをもとに、先行車2Aが存在するか否かを判定するステップである。先行車2Aが存在しない場合(S102 NO)、プロセッサ61は、設定されている設定車速での定速走行のための制御を継続する(S111)。一方、先行車2Aが存在する場合、ステップS102は肯定判定されて、処理はステップS103に進む。
【0083】
ステップS103以降の処理は、例えばACCの定速走行中において前を走っていた車に追いついたときの処理と解されてよい。エゴレーン上において外界センサ51の検出範囲外を走行していた他車両2と自車両1との距離が縮まり、当該他車両2が外界センサ51の検出範囲内に入った場合、ステップS102は肯定判定されうる。また、自車両1の前に、隣接レーンから別の他車両2が入ってきた場合にもステップS102は肯定判定されてよい。
【0084】
ステップS103はプロセッサ61が先行車2Aのエネルギー効率データを無線通信で受信済みであるか否かを判定するステップである。先行車2Aについてのエネルギー効率データを受信済みである場合にはステップS103は肯定されて処理はステップS105に進む。一方、先行車2Aについてのエネルギー効率データを未受信である場合にはステップS103は否定判定されて、処理はステップS104に進む。
【0085】
ステップS104は、プロセッサ61が先行車2Aを対象とする効率評価処理を実行するステップである。効率評価処理は、外界センサ51が検出する先行車2Aの速度及び加速度の時系列データに基づいて、先行車2Aの走行にかかるエネルギー効率を評価する処理である。ステップS104は、先行車2Aが省エネ条件を充足するか否かを判断可能となる数の速度及び加速度のサンプルが集まるよう、一定時間継続されうる。ステップS104を実行中は、プロセッサ61は一時的に自車両1を先行車2Aに追従走行させてよい。効率評価処理は、一定時間、先行車2Aの挙動をモニタリングすることにより、速度の安定性や省エネ運転度を評価することを含んでいて良い。
【0086】
なお、効率評価処理を実行中において、先行車2A、路側機3、又はサーバ4(以降、先行車2A等)から先行車2Aのエネルギー効率データを受信した場合、プロセッサ61は効率評価処理を中断し、処理をステップS105に進めてよい。
【0087】
ステップS105は、受信済みの先行車2Aのエネルギー効率データ、又は、効率評価処理の結果に基づいて、先行車2Aが省エネ条件を充足しているか否かをプロセッサ61が判定するステップである。プロセッサ61は、先行車2Aが省エネモードのACCを実行中である場合、エコ運転度が所定値以上である場合、又は速度の変化幅が所定値未満である場合に、先行車2Aは省エネ条件を充足すると判定してよい。プロセッサ61は、先行車2Aが上記の多様な条件の1つ又は複数を充足する場合に、先行車2Aが省エネ条件を充足していると判定して良い。
【0088】
先行車2Aが省エネ条件を充足する場合(S105 YES)、処理はステップS106に進む。ステップS106は、プロセッサ61は先行車2Aを対象とする追従走行を開始するステップである。ステップS106が完了すると、処理はステップS107に進む。ステップS107はプロセッサ61が、表示装置54に追従通知画像を表示するステップであって良い。追従通知画像は、先行車追従中であること、及び、先行車2Aがエネルギー効率のよい走行をする車両(つまり高効率車両)であることを示す画像であってよい。追従通知画像は、
図5に示すように高効率車を示す画像要素E1と、自車両1を示す画像要素E2と、車線を示す区画線E3を含んでいてよい。先行車2Aが高効率車であることは、葉を模した画像要素E11などを用いて表現されて良い。
【0089】
このように先行車2Aが高効率車である場合にはドライバに追従するか否かの確認をすることなく、自動的に追従走行を開始する。これにより、ドライバに煩わしさを与えるおそれ低減できる。
【0090】
一方、先行車2Aが省エネ条件を充足しない場合(S106 NO)、処理はステップS108に進む。ステップS108は意思確認処理を実行するステップである。プロセッサ61は、ステップS108にて所定の通知音の出力とともに、表示装置54に所定の確認画像を表示する。確認画像は、エネルギー効率が良くない先行車2Aに追従してよいかを問い合わせるメッセージを含む画像であって良い。確認画像は、エネルギー効率の観点から追従走行を推奨しないことを示すテキスト又はアイコン画像を含んでいてよい。確認画像は、選択肢として、追従を許可するボタンと、追い越しを指示するボタンと、ACC(運転支援)を終了させるボタンと含んでいてよい。ここでのボタンは、画像要素や選択肢と解されて良い。プロセッサ61は、メッセージ画像表示中におけるドライバによるタッチパネル操作、ステアリングスイッチ操作、又は音声入力に基づいて、ドライバの回答を取得可能に構成されていて良い。
【0091】
なお、プロセッサ61は、メッセージ画像表示後においてドライバが方向指示器を作動させたことに基づいて自動的な追い越し指示が入力されたと判断するよう構成されていても良い。また、プロセッサ61は、メッセージ画像表示後においてドライバがアクセルペダル又はブレーキペダルを踏み込んだことに基づいて運転支援の終了指示が入力されたと判断するよう構成されていても良い。メッセージ画像を表示してから一定時間が経過してもドライバからの回答が得られない場合、プロセッサ61は先行車2Aに追従する許可が得られたと判断するように構成されていても良い。
【0092】
意思確認処理に対するドライバの応答として、先行車2Aに追従する許可が得られた場合(S109 YES)、プロセッサ61はステップS106~S107を実行する。一方、意思確認処理に対するドライバの応答として、先行車2Aに追従する許可が得られなかった場合(S109 NO)、処理はステップS110に進む。ステップS110は、プロセッサ61がドライバの指示に応じた制御を実行するステップである。例えば追い越し指示が入力された場合、プロセッサ61は追い越しのための車線変更を自動的に実行するための処理を開始する。また、運転支援の終了指示が入力された場合、プロセッサ61は車両制御装置60の動作モードを休止モードに移行させてよい。
【0093】
車両制御装置60は、先行車2Aに追いついた場合だけでなく、追従走行中においても、先行車2Aの省エネ運転度を定期的に評価し、その評価結果に基づいてステップS105~S110を実施して良い。その場合のステップS106は追従状態を継続することであってよい。プロセッサ61は、先行車2Aが省エネ条件を充足しなくなったことに基づいて追従走行状態を終了するか、又は、意思確認処理を実行するように構成されていて良い。
【0094】
また、車両制御装置60は、休止モード時においては、
図6に示す追従開始提案処理を実行して良い。追従開始提案処理は、運転支援(主としてACC)の開始を提案する処理である、追従開始提案処理は、
図6に示すようにステップS201~S206を含んでいて良い。プロセッサ61は、手動運転中、定期的に(例えば500ミリ秒毎)に追従開始提案処理を開始して良い。
【0095】
ステップS201~S205は前述のステップS101~S105と同様であるため説明は省略する。なお、手動運転中において先行車2Aが存在しない場合には(S202 NO)、本フローを終了してよい。ステップS205は、手動運転中において先行車2Aが省エネ条件を充足するか否かを、外部装置からの受信データ又は外界センサ51のセンシングデータに基づいて判定するステップである。先行車2Aが省エネ条件を充足する場合(S205 YES)、プロセッサ61は、運転支援を有効化することを提案する(S206)。当該提案は、先行車2Aが高効率車であることを通知することを含んでいて良い。このような構成によれば、先行車2Aが高効率車であることを条件に、自車両1のACCが開始されやすくなる。その結果、ドライバの利便性と自車両1のエネルギー効率が向上しうる。
【0096】
一方、手動運転中において先行車2Aが省エネ条件を充足しない場合(S205 NO)、プロセッサ61は何も提案せずに本フローを終了してよい。なお、先行車2Aが省エネ条件を充足しない場合(S205 NO)、プロセッサ61は、車線変更すること、或いは、先行車2Aを追い越すことを提案しても良い。低効率車の後ろを走行している場合には、手動運転中であっても低効率車の挙動の影響を受けて、自車両1のエネルギー効率が低下しうるためである。先行車2Aの省エネ運転度が所定値未満と判定した場合に、追い越し等を提案する構成によれば、自車両1の省エネ運転度を高めることができる。
【0097】
<効果>
以上の構成によれば、ドライバの意思に反して、エネルギー効率が良くない態様で走行する車両(以降、低効率車)に自車両1を追従走行させるおそれを低減できる。これにより、先行車2Aの挙動につられて自車両1の電費/燃費を改善が低下することを低減できる。また、以上の構成によれば、自車両1は、優先的に高効率車に追従走行するため、電費/燃費を向上させることができる。その際、プロセッサ61自身は、電費を向上させるための複雑な演算及び制御は実施する必要はない。プロセッサ61は、先行車2Aの挙動を再現するだけでよい。よって、本開示の構成によれば、プロセッサ61/車載システム5の性能が低くても、自車両1をエネルギー効率のよい態様で走らせることが可能となりうる。
【0098】
<変形例>
以上では、先行車2Aが省エネ条件を充足する場合(S105 YES)、ドライバの意思を確認することなく、追従走行を開始するケースを述べたが、プロセッサ61の作動はこれに限定されない。他の実施形態においては、プロセッサ61は意思確認処理を実施しても良い。先行車2Aが省エネ条件を満たす場合、プロセッサ11は表示装置54に先行車に追従走行することを推奨する画像を表示しても良い。
【0099】
また、省エネ条件を充足する他車両2に追いついた場合に、自動的に追従走行を開始するか否かは、所定の設定画面を介してドライバによって事前登録されていてもよい。つまり、車両制御装置60は、運転支援実行中において省エネ条件を充足する他車両2に追いついた際のシステム応答を、ドライバが事前登録可能に構成されていて良い。省エネ条件を充足する他車両2に追いついた場合に、自動的に追従走行を開始することが事前登録されている状態も、追従制御を許容する信号を受信部が受信済みの場合に含まれる。
【0100】
また、車両制御装置60は、運転支援実行中において省エネ条件を充足しない他車両2に追いついた際のシステム応答を、ドライバが事前登録可能に構成されていて良い。省エネ条件を充足しない他車両2に追いついた場合、当該他車両2に追従するか、追い越すか、手動運転に切り替えるか否かは、所定の設定画面を介してドライバによって事前登録されていてもよい。プロセッサ61はプリセットされた応答方針に従って動作してよい。
【0101】
プロセッサ61は、設定車速に基づいて、自車両1の速度を制御する。ここで先行車2Aが高効率車であっても、先行車2Aの速度が設定車速よりも著しく低い場合、当該先行車2Aに追従するように自車両1を走行させると、ドライバの利便性が低下しうる。そのような事情から、プロセッサ61は先行車2Aの速度に応じてシステム応答を変更してもよい。
【0102】
例えばプロセッサ61は、先行車2Aが省エネ条件を充足する場合(
図7 S301 YES)、先行車2Aの速度と自車両1の設定車速との差である速度差が所定の許容範囲以内か否かを判断してよい(S302)。速度差にかかる許容範囲は、車両制御装置60の設計者によって設計されていても良いし、ドライバに登録されていても良い。許容範囲は10km/hや15km/hであってよい。速度差が許容範囲内である場合(S302 YES)、プロセッサ61は、追従走行を開始してよい(S303)。一方、先行車2Aが省エネ条件を充足しない場合(S301 NO)、又は、速度差が許容範囲外である場合(S302 NO)、プロセッサ61は意思確認処理を実施して良い(S304)。S304以降においては、プロセッサ61は意思確認処理に対するドライバの回答に応じた処理を実施して良い。なお、先行車2Aが省エネ条件を充足するが速度差が許容範囲外である場合における意思確認処理では、速度は遅いが電費/燃費が向上することを通知してもよい。
【0103】
先行車2Aが省エネ条件を充足するが速度差が許容範囲外である場合におけるシステム応答は、設定画面を介してドライバが事前に登録可能であってよい。例えばストレージ64には、入力装置55及び設定画面を介して、先行車2Aが省エネ条件を充足するが速度差が許容範囲外である場合の応答方針を示すデータが登録されていてよい。応答方針としては、システムに意思確認処理を実施させるか、意思確認なく追従走行を開始させるか、又は意思確認なく追い越しを開始させるかの何れかが登録されていてよい。プロセッサ61は、事前に登録された応答方針データに従って作動して良い。
【0104】
設定車速は、車両の走行にかかるドライバの考え方/嗜好が反映されている場合がある。すなわち設定車速が比較的小さい場合、ドライバは、移動時間よりもエネルギー効率を優先させたいといった考えを持っている可能性がある。一方、設定車速が相対的に大きい場合には、エネルギー効率よりも移動時間の短縮を重要視している可能性が高い。そのような着想から、プロセッサ61は、設定車速が所定値(例えば100km/h)以上である場合には、省エネ条件を充足するか否かの判断を省略するように構成されていてよい。先行車2Aが高効率車か否かの判断を省略する設定においては、プロセッサ61は速度差に基づいて先行車2Aに追従するか追い越すかを決定して良い。上述した実施形態及び変形例は、設定車速が所定値未満である場合のみ実施するようにプロセッサ61は構成されていても良い。
【0105】
本開示は、自動運転を実施可能な車両に適用されても良い。車両制御装置60は自動運転機能を提供するECU(いわゆる自動運行装置)であってよい。上記のACC又は運転支援は、自動運転と置き換えられてよい。自動運転も、走行速度を自動調整することを含むためである。プロセッサ61は、自動運転中において先行車2Aに追いついたときにステップS103~S110の処理を実施して良い。自動運転中においてはステップS108~S110の処理は、ドライバの意思を確認することなく、自動的に先行車2Aを追い越す制御を開始するものであってよい。
【0106】
なお、本開示の「自動運転」が指すレベルは、米国自動車技術会(SAE International)が定義するレベル3相当であってもよいし、レベル4以上であってもよい。レベル3は、運行設計領域(ODD:Operational Design Domain)内においてシステムが全ての運転タスクを実行する一方、緊急時にはシステムからユーザに操作権限が移譲されるレベルを指す。ODDは、走行位置が自動車専用道路内であることといった、自動運転を実行可能な条件を規定するものである。レベル3は、ドライバがシステムからの要求に基づいて運転操作を引き継ぐ必要があるレベルに相当する。自動車専用道路とは、高速道路などといった、歩行者及び自転車の進入が禁止されている道路を意味する。レベル4は、対応不可能な道路、極限環境等の特定状況下を除き、システムが全ての運転タスクを実施可能なレベルと解することができる。レベル5は、あらゆる環境下でシステムが全ての運転タスクを実施可能なレベルである。
【0107】
プロセッサ61は、先行車2Aではなく、先頭車2Cが省エネ条件を充足する場合に、先行車2Aに追従するように構成されていてもよい。一時的に先行車2A自体のエネルギー効率が高くなくとも、先行車2Aのエネルギー効率は先頭車2Cの影響を受けて改善していくことが期待できる。長期的な観点からは、先行車2Aのエネルギー効率は先頭車2Cと同様になりうる。そのような事情から、プロセッサ61は先頭車2Cのエネルギー効率に応じて先行車2Aに追従するか否かを決定して良い。特に、先行車2Aの省エネ運転度が不明であって且つ先頭車2Cが高効率車であることを路側機3等から取得済みである場合には、上記思想に基づき自車両1を先行車2Aに追従させてよい。
【0108】
<付言>
本開示に示す種々のフローチャートは何れも一例であって、フローチャートを構成するステップの数や、処理の実行順は適宜変更可能である。各フローチャートに示す制御は矛盾のない範囲で組み合わせて/並列的に実行されてよい。取得、判定、検出、生成、及び算出といった表現は相互に言い換えられて良い。或る装置が或るデータを取得することには、当該装置が他の装置/センサから入力された信号を元に当該データを生成することも含まれる。
【0109】
本開示に記載の装置、システム、並びにそれらの手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウェア論理回路を用いて実現されてもよい。本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。プロセッサは、CPUや、MPU、GPU、DFP(Data Flow Processor)など、任意の演算コアであってよい。プロセッサ61が備える機能の一部又は全部は、ハードウェアとして実現されても良い。プロセッサ61が備える機能の一部又は全部は、システムオンチップ(SoC:System-on-Chip)、IC(Integrated Circuit)、及びFPGA(Field-Programmable Gate Array)の何れかを用いて実現されていてもよい。
【0110】
コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションを含む。コンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体(non- transitory tangible storage medium)に記憶されていてよい。コンピュータプログラムの記録媒体は、HDD(Hard-disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等、多様な媒体であってよい。
【符号の説明】
【0111】
1 自車両1、2A 先行車、5 車載システム、51 外界センサ、53 無線通信部、54 表示装置、55 入力装置、60 車両制御装置、61 プロセッサ(制御部)、62 メモリ、63 ストレージ、64 通信インターフェース(受信部)