(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022609
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】電池パックとその抵抗溶接方法および抵抗溶接装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/516 20210101AFI20250206BHJP
H01M 50/505 20210101ALI20250206BHJP
H01M 50/522 20210101ALI20250206BHJP
H01M 50/503 20210101ALI20250206BHJP
H01M 50/512 20210101ALI20250206BHJP
H01M 50/545 20210101ALI20250206BHJP
H01M 50/56 20210101ALI20250206BHJP
H01M 50/588 20210101ALI20250206BHJP
H01M 50/593 20210101ALI20250206BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20250206BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20250206BHJP
H01M 10/643 20140101ALI20250206BHJP
H01M 10/655 20140101ALI20250206BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20250206BHJP
H01M 50/213 20210101ALI20250206BHJP
B23K 11/14 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
H01M50/516
H01M50/505
H01M50/522
H01M50/503
H01M50/512
H01M50/545
H01M50/56
H01M50/588
H01M50/593
H01M10/613
H01M50/55 201
H01M10/643
H01M10/655
H01M50/204 401H
H01M50/213
B23K11/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127335
(22)【出願日】2023-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】596008817
【氏名又は名称】ナグシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100167977
【弁理士】
【氏名又は名称】大友 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100225026
【弁理士】
【氏名又は名称】古後 亜紀
(74)【代理人】
【識別番号】100230248
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 圭二
(72)【発明者】
【氏名】浅田 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】和田 圭司
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5H031AA00
5H031KK01
5H040AA01
5H040AA28
5H040AS07
5H040AT01
5H040AT06
5H040AY06
5H040DD03
5H040JJ03
5H040LL01
5H043AA05
5H043AA09
5H043BA19
5H043CA03
5H043CA21
5H043DA03
5H043FA04
5H043FA23
5H043FA40
5H043GA23
5H043GA26
5H043HA16F
5H043JA01F
5H043JA02F
(57)【要約】
【課題】各電池に対して小型化かつ有効な冷却が可能で、電池パックの構成の自由度を向上できる、電池パックとその抵抗溶接方法および装置を提供する。
【解決手段】複数の缶状電池1を、正極3を上向きに各缶底5を同一面となるように径方向に並べて、正極同士と、当該正極同士の溶接と同一方向で缶上部の周縁部2の負極同士とが、それぞれ板状の銅製または銅合金製の連結部材7、8により抵抗溶接されて、缶底側を電気的接続に使用することなく各電池1同士が電気的に接続される。負極同士を連結する第1連結部材7に、周縁部の負極2の溶接個所に溶接電流Aを集中させて溶接エネルギを抑制するプロジェクション14と、プロジェクション14からの溶接電流Aを遮断して発熱を抑制するスリット15とが形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の缶状電池を、各上蓋の正極を上向きに各缶底を同一面となるように径方向に並べて、前記正極同士と、当該正極同士の溶接と同一方向で缶上部の周縁部の負極同士とが、それぞれ板状の銅製または銅合金製の連結部材により抵抗溶接されて、各缶底側を電気的接続に使用することなく各電池同士が電気的に接続される電池パックの抵抗溶接装置であって、
前記負極同士を連結する第1連結部材に、前記負極の周縁部の溶接個所に溶接電流を集中させて溶接エネルギを抑制するプロジェクションと、前記プロジェクションからの溶接電流を遮断して発熱を抑制するスリットとが形成されている、電池パックの抵抗溶接装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記負極同士を連結する第1連結部材が、前記正極を露出させる孔部と、前記負極の周縁部を覆う環状部とが複数形成されて、当該環状部同士がそれぞれ連結された形状を有し、前記環状部に径方向に延びる複数のプロジェクションが形成され、前記プロジェクションの径方向先端位置に前記径方向と交差する方向に延びるスリットが形成されている、電池パックの抵抗溶接装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記正極同士を連結する第2連結部材には、前記正極の溶接個所に溶接電流を集中させるプロジェクションと、当該連結部材を通る不要な無効分流を小さくするスリットとが形成されている、電池パックの抵抗溶接装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記負極同士が連結された後、前記負極の第1連結部材と前記正極の第2連結部材とを絶縁させる絶縁用セパレータを介して前記正極同士が連結される、電池パックの抵抗溶接装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載された抵抗溶接装置で形成された電池パックであって、
同一平面上に並べられて露出された各電池の缶底に、当該缶底を直接冷却する冷却材が設けられている電池パック。
【請求項6】
複数の缶状電池を、各上蓋の正極を上向きに各缶底を同一面となるように径方向に並べて、缶上部の周縁部の負極に、当該負極の溶接個所に溶接電流を集中させて溶接エネルギを抑制するプロジェクションと、前記プロジェクションからの溶接電流を遮断して発熱を抑制するスリットとが形成されている板状の銅製または銅合金製の第1連結部材を乗せる第1ステップ、
前記第1連結部材を前記電池周縁部に抵抗溶接して各負極同士を電気的に接続した後に、当該第1連結部材に、負極の前記第1連結部材と正極の第2連結部材とを絶縁させる絶縁用セパレータを乗せる第2ステップ、
前記絶縁用セパレータに、前記正極の溶接個所に溶接電流を集中させるプロジェクションと、当該連結部材を通る不要な無効分流を小さくするスリットとが形成されている板状の銅製または銅合金製の第2連結部材を乗せる第3ステップ、および
前記第2連結部材を前記負極の溶接と同一方向に前記正極に抵抗溶接して各正極同士を電気的に接続して、各缶底側を電気的接続に使用することなく各電池同士を電気的に接続する第4ステップ、
を含む電池パックの抵抗溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池と連結部材を抵抗溶接して、各電池を電気的に接続する電池パックとその抵抗溶接方法および抵抗溶接装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、円筒形リチウムイオン電池のような缶状電池を複数並べたものと、これらを覆う板状の連結部材(リード板、タブ)とを抵抗溶接してそれぞれ電気的に接続する組電池(電池パック)が知られている(例えば、特許文献1)。ここで、抵抗溶接とは、一対の溶接電極を金属材料に当てて、加圧しながら大電流を短時間流して、金属の抵抗発熱を利用し、ナゲット(合金層)を生成して溶融接続するものである。
【0003】
近年、電気自動車(EV)等に使用される電池パックでは、高出力が必要とされ、連結部材がニッケル(Ni)製から、さらに導電率が高く(電気抵抗が低く)、熱伝導率が高い銅(Cu)または銅合金製へ移行される傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような電池パックを使用する際、充放電時において電池自体が発熱し、この発熱を抑えるために空冷または水冷方式で冷却を行う。しかし、電池と電池の間にはセパレート用ケースで覆われていたり、缶底が連結部材(タブ)で隠れているので、電池を直接冷却することができないことから、冷却機器が大型化したり、有効な冷却が困難となる場合があった。
【0006】
また、従来の電池パックでは、電池の正極(上蓋)と負極(缶底)のそれぞれに連結部材を溶接する必要があるため、各缶状電池の上下側両方を連結に使用する関係上、電池パックの構成の自由度が低いという課題もあった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決して、各電池に対して小型化かつ有効な冷却が可能で、電池パックの構成の自由度を向上できる、電池パックとその抵抗溶接方法および抵抗溶接装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る電池パックの抵抗溶接装置は、複数の缶状電池を、各上蓋の正極を上向きに各缶底を同一面となるように径方向に並べて、前記正極同士と、当該正極同士の溶接と同一方向で缶上部の周縁部の負極同士とが、それぞれ板状の銅製または銅合金製の連結部材により抵抗溶接されて、各缶底側を電気的接続に使用することなく各電池同士が電気的に接続されるものであって、
前記負極同士を連結する第1連結部材に、前記電池周縁部の溶接個所に溶接電流を集中させて溶接エネルギを抑制するプロジェクションと、前記プロジェクションからの溶接電流を遮断して発熱を抑制するスリットとが形成されている。
【0009】
この構成によれば、複数の缶状電池が正極を上向きに各缶底を同一面となるように径方向に並べられており、缶上部の周縁部の負極同士を連結する第1連結部材に、当該溶接個所に溶接電流を集中させて溶接エネルギを抑制するプロジェクションと、プロジェクションからの溶接電流を遮断して発熱を抑制するスリットとが形成されて、缶底側を電気的接続に使用することなく各電池同士が電気的に接続されるので、各缶底を直接冷却に使用することにより各電池に対して小型化かつ有効な冷却が可能で、かつ正極側でのみ電気的接続が可能となり、電池パックの構成の自由度を向上できる。
【0010】
好ましくは、前記負極同士を連結する第1連結部材が、前記正極を露出させる孔部と、前記周縁部の負極を覆う環状部とが複数形成されて、当該環状部同士がそれぞれ連結された形状を有し、前記環状部に径方向に延びる複数のプロジェクションが形成され、前記プロジェクションの径方向先端位置に前記径方向と交差する方向に延びるスリットが形成されている。この場合、環状部に形成された径方向に延びる複数のプロジェクションにより溶接エネルギが抑制され、スリットにより溶接電流が遮断され発熱が抑制されるので、周縁部が抵抗溶接で焼き切れることなく負極同士を電気的に接続される。これにより、缶底側を直接冷却に使用することができるから小型化かつ有効な冷却が可能となり、電池パックの構成の自由度を向上できる。
【0011】
好ましくは、前記正極同士を連結する第2連結部材には、前記正極の溶接個所に溶接電流を集中させるプロジェクションと、当該連結部材を通る不要な無効分流を小さくするスリットとが形成されている。この場合、抵抗溶接に際して不要な無効分流を小さくするとともに、電池パックにした場合に、電池間の有効な電流経路を大きく確保することができる。
【0012】
また好ましくは、前記負極同士が連結された後、前記負極の第1連結部材と前記正極の第2連結部材とを絶縁させる絶縁用セパレータを介して前記正極同士が連結される。この場合、絶縁用セパレータにより負極の第1連結部材と正極の第2連結部材とを確実に絶縁することができる。
【0013】
本発明に係る電池パックは、前記抵抗溶接装置で形成されたものであって、 同一平面上に並べられて露出された各電池の缶底に、当該缶底を直接冷却する冷却材が設けられている。この場合、各電池の缶底を冷却材により直接冷却することができるので、小型化かつ有効な冷却が可能で、電池パックの構成の自由度を向上できる。
【0014】
本発明に係る電池パックの抵抗溶接方法は、複数の同一電池を、各上蓋の正極を上向きに各缶底を同一面となるように径方向に並べて、缶上部の周縁部の負極に、前記周縁部の溶接個所に溶接電流を集中させて溶接エネルギを抑制するプロジェクションと、前記プロジェクションからの溶接電流を遮断して発熱を抑制するスリットとが形成されている板状の銅製または銅合金製の第1連結部材を乗せる第1ステップ、
前記第1連結部材を前記周縁部に抵抗溶接して各負極同士を電気的に接続した後に、当該第1連結部材に、前記負極の第1連結部材と前記正極の第2連結部材とを絶縁させる絶縁用セパレータを乗せる第2ステップ、
前記絶縁用セパレータに、前記正極の溶接個所に溶接電流を集中させるプロジェクションと、当該連結部材を通る不要な無効分流を小さくするスリットとが形成されている板状の銅製または銅合金製の第2連結部材を乗せる第3ステップ、および
前記第2連結部材を前記負極の溶接と同一方向に前記正極に抵抗溶接して各正極同士を電気的に接続して、各缶底を電気的接続に使用することなく各電池同士を電気的に接続する第4ステップ、
を含む。
【0015】
この構成によれば、複数の缶状電池が正極を上向きに各缶底を同一面となるように径方向に並べられており、負極同士を連結する第1連結部材に、電池周縁部の溶接個所に溶接電流を集中させて溶接エネルギを抑制するプロジェクションと、プロジェクションからの溶接電流を遮断して発熱を抑制するスリットとが形成されて、各缶底側を電気的接続に使用することなく各電池同士が電気的に接続されるので、缶底側を直接冷却に使用することにより小型化かつ有効な冷却が可能で、電池パックの構成の自由度を向上できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、複数の缶状電池が正極を上向きに各缶底を同一面となるように径方向に並べられており、周縁部の負極同士を連結する第1連結部材に、当該溶接個所に溶接電流を集中させて溶接エネルギを抑制するプロジェクションと、プロジェクションからの溶接電流を遮断して発熱を抑制するスリットとが形成されて、缶底側を電気的接続に使用することなく各電池同士が電気的に接続されるので、各缶底を直接冷却に使用することにより小型化かつ有効な冷却が可能で、かつ正極側でのみ電気的接続が可能となり、電池パックの構成の自由度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】(A)は本発明の電池パックの抵抗溶接装置に使用される缶状電池の一例を示す斜視図、(B)はその一部縦断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る電池パックの抵抗溶接装置を示す正面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る電池パックの抵抗溶接装置を示す正面図である。
【
図4】本発明における負極同士を連結する第2連結部材の一例を示す平面図である。
【
図5】本発明における組立後の電池パックの一例を示す一部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1(A)は本発明の電池パックの抵抗溶接装置に使用される缶状の電池1の一例を示す斜視図、(B)はその一部縦断面図を示す。
図1(A)のように、この電池1は上蓋(トップキャップ)凸部3が正極(+)で、缶上部の周縁部(電池の肩)2および缶底5が負極(-)になっている。
図1(B)のように、缶底5と周縁部2は電池1の外装缶4を介して接続されて、負極(-)を形成している。正極(+)と負極(-)間には封止用パッキン6が設けられている。本発明では、この周縁部2の負極(-)を抵抗溶接する。
【0019】
この例では、複数の同一缶状電池1を、各上蓋の正極(+)3を上向きにして各正極(+)3と各缶底5とがそれぞれ同一面となるように径方向に並べる。そして、周縁部(電池の肩)2の各負極(-)同士が板状の第1連結部材(タブ)7により、電池凸部3の各正極(+)同士が板状の第2連結部材(タブ)8により、それぞれ同一の溶接方向で抵抗溶接されて、つまり正極側だけで各電池1の連結を集約できるので、従来のように各缶底5の負極(-)を電気的接続に使用することなく、各電池1同士が電気的に接続される。
【0020】
缶状の電池1は例えば円筒型リチウムイオン電池であり、板状の第1、第2連結部材7、8は、例えば銅または銅合金製である。なお、銅よりも導電率の低いニッケル製を使用してもよい。
【0021】
図2は、本発明の一実施形態に係る電池パックの抵抗溶接装置における負極2と第1連結部材7を溶接する状態を示す正面図である。
図3は、同装置における正極3と第2連結部材8を溶接する状態を示す正面図である。
【0022】
図2のように、一対の溶接電極10、11が図示しない溶接用電源から電力供給されて、一対の溶接電極10、11のそれぞれが例えば電池1の周縁部(負極)2の対向する一対の溶接個所に第1連結部材7における電池1の負極2と反対側の外面に接触されて、溶接電極10、11間が通電されて溶接電流Aが流れる。
【0023】
各負極同士を連結する第1連結部材7に、周縁部(負極)2の溶接個所に溶接電流Aを集中させて溶接エネルギを最小限に抑制するプロジェクション14と、プロジェクション14からの溶接電流Aを遮断して発熱を抑制するスリット15とが形成されている。溶接電流Aは、このプロジェクション14を通るように強制的に誘導されることにより、第1連結部材7と電池1の負極2間に抵抗発熱によるナゲット(合金層)Nが形成されて、電池1の負極2が第1連結部材7に抵抗溶接される。そして、他の電池1の負極2も同様に抵抗溶接されて、各電池1の負極2間が第1連結部材7を介して接続される。
【0024】
すなわち、
図4に示すように、第1連結部材7は、後述する第2連結部材8による溶接のために正極3を露出させておく孔部16と、周縁部の負極2を覆う環状部17とが複数形成されて、環状部17同士がそれぞれ連結された形状を有し、環状部17に径方向に延びる複数、例えば対向する一対のプロジェクション14が形成され、プロジェクション14の径方向の先端位置に径方向と交差、例えば直交する方向に延びるスリット15が形成されている。
【0025】
溶接用電源には、例えば大容量コンデンサを有し、短時間で大電流を流す高エネルギ型の溶接電源が使用される。これにより、電池1の封止用パッキン6(
図1(B))は溶接個所の直下にあっても、前記プロジェクション14およびスリット15の効果と相俟って、これを安全に保護することができ、安全な漏液の回避が可能となる。
【0026】
図3のように、一対の溶接電極10、11が図示しない溶接用電源から電力供給されて、一対の溶接電極10、11のそれぞれがスリット22を跨いで第2連結部材8における電池1の正極3と反対側の外面に接触されて、溶接電極10、11間が通電されて、溶接電流A1が流れる。
【0027】
第2連結部材8は、
図8のように、各正極3の溶接個所を覆って接するように設けられた溶接部18と、この溶接部18に接続された環状部19とが複数形成されて、環状部19同士がそれぞれ連結された形状を有する。溶接部18には、各電池1の正極3の溶接個所ごとに、スリット22を挟んで隣接する他方の電池に向かってそれぞれ例えば2個、合計4個のプロジェクション21が形成されている。
【0028】
図3の溶接電流A1は、このプロジェクション21を通るように強制的に誘導されることにより、第2連結部材8と電池1の正極3間に抵抗発熱によるナゲット(合金層)Nが形成されて、電池1の正極3が第2連結部材8に抵抗溶接される。そして、他の電池1の正極3も同様に抵抗溶接されて、各電池1の正極3間が第2連結部材8を介して接続される。
【0029】
この例では、
図8の溶接部18は孔形成されて環状部19から溶接部位が凹篏しており、溶接部18における溶接部位のスリット22は段部を経て環状部19に連通している。各スリット22は、環状部19において一方の電池1と他方の電池1の間で互いに反対向けに傾斜して略平行に離間した状態で延びて、この電池1、1間の中間位置を超えて、一方の電池1から他方の電池1の溶接個所側の近傍まで至る形状を有している。
【0030】
このように、各スリット22は、略平行に離間した状態でオーバーラップさせているので、このオーバーラップさせた長さ分だけ、不要な電極10から第2連結部材8を通り電極11に流れる電流(無効分流)を小さくすることができる。また、電池パックにした場合に、各スリット22の互いに反対向けに傾斜して略平行に離間させた形状により、各電池1の正極間の電流は、各スリット22の間を斜め方向に流れて、その電流経路を阻害されることなく有効に大きく確保されることができる。
【0031】
こうして、各電池1の負極2同士が第1連結部材7により、正極3同士が第2連結部材8によりそれぞれ抵抗溶接されて、各電池1同士を電気的に接続して電池パック7が形成される。
【0032】
図5は、組立後の電池パック20の一例を示す一部縦断面図である。
図5のように、各電池1の負極2同士が第1連結部材7により、正極3同士が第2連結部材8によりそれぞれ抵抗溶接されて、各電池1同士が電気的に接続して電池パック20が形成される。負極2の第1連結部材7と正極3の第2連結部材8とは絶縁用セパレータ9により絶縁される。
図9のように、絶縁用セパレータ9は、プロジェクション14およびスリット15の形成されていない第1連結部材7とほぼ同様の外形を有する。
【0033】
図5の各電池1の缶底5には、これを直接冷却する冷却材23が設けられている。この場合、各電池1の缶底5を冷却材23により直接冷却することができるので、小型化かつ有効な冷却が可能で、かつ正極側でのみ電気的接続が可能となり、電池パック20の構成の自由度を向上できる。
【0034】
図6~
図9は、本発明の電池パックの抵抗溶接装置の動作を示す斜視図である。
図6は第1ステップ(工程1)を示すもので、この第1ステップでは、複数の同一缶状電池1を、各正極3を上向きに各缶底5を同一面となるように径方向に並べて、周縁部の負極2に、当該溶接個所に溶接電流Aを集中させて溶接エネルギを抑制するプロジェクション14と、プロジェクション14からの溶接電流を遮断して発熱を抑制するスリット15とが形成されている板状の銅製または銅合金製の第1連結部材7を乗せる。
【0035】
図7は第2ステップ(工程2)を示すもので、第1連結部材7を周縁部の負極2に抵抗溶接して各負極同士を電気的に接続した後に、当該第1連結部材7に、負極2の第1連結部材7と正極3の第2連結部材8とを絶縁させる絶縁用セパレータ9を乗せる。
【0036】
図8は第3ステップ(工程3)を示すもので、絶縁用セパレータ9に、正極3の溶接個所に溶接電流A1を集中させるプロジェクション21と、当該連結部材を通る不要な無効分流を小さくするスリット22とが形成されている板状の銅製または銅合金製の第2連結部材8を乗せる。
【0037】
図9は第4ステップ(工程4)を示すもので、第2連結部材8を負極2の溶接と同一方向に正極3に抵抗溶接して各正極同士を電気的に接続して、各缶底側を電気的接続に使用することなく各電池1同士を電気的に接続する。
【0038】
このように、本発明は、複数の缶状電池1が正極3を上向きに各缶底5を同一面となるように径方向に並べられており、缶上部の周縁部2の負極同士を連結する第1連結部材7に、当該溶接個所に溶接電流Aを集中させて溶接エネルギを最小限に抑制するプロジェクション14と、プロジェクション14からの溶接電流Aを遮断して発熱を抑制するスリット15とが形成されて、缶底側を電気的接続に使用することなく各電池1同士が電気的に接続されるので、各缶底5を直接冷却に使用することにより小型化かつ有効な冷却が可能で、かつ正極側でのみ電気的接続が可能となり、電池パック20の構成の自由度を向上できる。
【0039】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
1:電池
2:負極(缶上部の周縁部)
3:正極(凸部)
5:缶底
7:第1連結部材
8:第2連結部材
10、11:溶接電極
14:プロジェクション
15:スリット
16:孔部
17:環状部
20:電池パック
21:プロジェクション
22:スリット
A、A1:溶接電流