(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022636
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】電力増幅装置
(51)【国際特許分類】
H03F 1/02 20060101AFI20250206BHJP
H03F 3/68 20060101ALI20250206BHJP
H03F 3/21 20060101ALN20250206BHJP
【FI】
H03F1/02 188
H03F3/68 220
H03F3/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127406
(22)【出願日】2023-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芦田 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】滝本 健介
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA21
5J500AA41
5J500AC02
5J500AC21
5J500AC52
5J500AC81
5J500AC92
5J500AF10
5J500AF16
5J500AH06
5J500AH09
5J500AH10
5J500AH19
5J500AH29
5J500AH35
5J500AK02
5J500AK12
5J500AK42
5J500AK55
5J500AM01
5J500AM02
5J500AM08
5J500AM13
5J500AM14
5J500AM19
5J500AQ04
5J500AT01
5J500CK06
5J500CK07
5J500LV08
(57)【要約】
【課題】電力増幅装置の小型化を図る。
【解決手段】本開示の電力増幅装置は、表面を有する基板と、キャリアアンプとピークアンプを有し、表面に設けられた集積回路と、キャリアアンプに接続するキャリア用バランと、ピークアンプに接続するピーク用バランと、表面に設けられた表面実装部品と、を備えている。キャリアアンプとピークアンプは、それぞれ一対の差動アンプである。基板は、積層方向に配置された複数の絶縁層を有している。表面には、表面実装部品がはんだ付けされる電極が設けられている。積層方向から視て、集積回路の第1平面方向の一方には、第2平面方向に順に並ぶキャリア用バラン、電極及びピーク用バランが配置されている。キャリア用バランとピーク用バランのうち一方は、表面を構成する絶縁層よりも第1積層方向に配置された絶縁層に設けられ、かつ積層方向から視て少なくとも一部が電極と重なっている。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を有する基板と、
キャリアアンプとピークアンプを有し、前記表面に設けられた集積回路と、
前記キャリアアンプに接続するキャリア用バランと、
前記ピークアンプに接続するピーク用バランと、
前記表面に設けられた表面実装部品と、
を備え、
前記キャリアアンプと前記ピークアンプは、それぞれ一対の差動アンプであり、
前記集積回路と前記基板とが配置される方向を積層方向とし、
前記積層方向のうち前記集積回路から視て前記基板が配置される方向を第1積層方向とし、
前記表面と平行な一方向を第1平面方向とし、
前記表面と平行であり、かつ前記第1平面方向と交差する方向を第2平面方向とし、
前記基板は、前記積層方向に配置された複数の絶縁層を有し、
前記表面には、前記表面実装部品がはんだ付けされる電極が設けられ、
前記積層方向から視て、前記集積回路の前記第1平面方向の一方には、前記第2平面方向に順に並ぶ前記キャリア用バラン、前記電極及び前記ピーク用バランが配置され、
前記キャリア用バランと前記ピーク用バランのうち一方は、前記表面を構成する前記絶縁層よりも前記第1積層方向に配置された前記絶縁層に設けられ、かつ前記積層方向から視て少なくとも一部が前記電極と重なっている
電力増幅装置。
【請求項2】
表面を有する基板と、
キャリアアンプとピークアンプを有し、前記表面に設けられた集積回路と、
前記キャリアアンプに接続するキャリア用バランと、
前記ピークアンプに接続するピーク用バランと、
前記表面に設けられた表面実装部品であるインダクタと、
を備え、
前記キャリアアンプと前記ピークアンプは、それぞれ一対の差動アンプであり、
前記集積回路と前記基板とが配置される方向を積層方向とし、
前記積層方向のうち前記集積回路から視て前記基板が配置される方向を第1積層方向とし、
前記表面と平行な一方向を第1平面方向とし、
前記表面と平行であり、かつ前記第1平面方向と交差する方向を第2平面方向とし、
前記基板は、前記積層方向に配置された複数の絶縁層を有し、
前記キャリア用バランは、それぞれ巻き線の中心線が前記積層方向に延在する一次側キャリア用バランと二次側キャリア用バランを有し、
前記一次側キャリア用バランと前記二次側キャリア用バランは、一方が前記表面に設けられ、他方が前記表面を構成する前記絶縁層よりも前記第1積層方向に配置された前記絶縁層に設けられ、
前記ピーク用バランは、それぞれ巻き線の中心線が前記積層方向に延在する一次側ピーク用バランと二次側ピーク用バランを有し、
前記一次側ピーク用バランと前記二次側ピーク用バランは、一方が前記表面に設けられ、他方が前記表面を構成する前記絶縁層よりも前記第1積層方向に配置された前記絶縁層に設けられ、
前記積層方向から視て、前記集積回路の前記第1平面方向の一方には、前記第2平面方向に順に並ぶ前記キャリア用バラン、前記インダクタ及び前記ピーク用バランが配置され、
前記インダクタの巻き線の中心線は前記第2平面方向に延在している
電力増幅装置。
【請求項3】
表面を有する基板と、
キャリアアンプとピークアンプを有し、前記表面に設けられた集積回路と、
前記キャリアアンプに接続するキャリア用バランと、
前記ピークアンプに接続するピーク用バランと、
前記表面に設けられた表面実装部品であるインダクタと、
を備え、
前記キャリアアンプと前記ピークアンプは、それぞれ一対の差動アンプであり、
前記集積回路と前記基板とが配置される方向を積層方向とし、
前記積層方向のうち前記集積回路から視て前記基板が配置される方向を第1積層方向とし、
前記表面と平行な一方向を第1平面方向とし、
前記表面と平行であり、かつ前記第1平面方向と交差する方向を第2平面方向とし、
前記基板は、前記積層方向に配置された複数の絶縁層を有し、
前記積層方向から視て、前記集積回路の前記第1平面方向の一方には、前記第2平面方向に順に並ぶ前記キャリア用バラン、前記インダクタ及び前記ピーク用バランが配置され、
前記キャリア用バランは、それぞれ巻き線の中心線が前記積層方向に延在し、互いに異なる前記絶縁層に設けられた一次側キャリア用バランと二次側キャリア用バランを有し、
前記ピーク用バランは、それぞれ巻き線の中心線が前記積層方向に延在し、互いに異なる前記絶縁層に設けられたする一次側ピーク用バランと二次側ピーク用バランを有し、
前記キャリア用バランと前記ピーク用バランのうち一方は、前記表面を構成する前記絶縁層よりも前記第1積層方向に配置された前記絶縁層に設けられ、
前記インダクタの巻き線の中心線は前記第2平面方向に延在している
電力増幅装置。
【請求項4】
前記キャリア用バランと前記ピーク用バランのうち他方は、前記表面を構成する前記絶縁層よりも前記第1積層方向に配置された前記絶縁層に設けられている
請求項1に記載の電力増幅装置。
【請求項5】
前記表面実装部品は、調整回路用部品であることを特徴とする請求項1又は請求項4に記載の電力増幅装置。
【請求項6】
前記調整回路用部品は、コンデンサであることを特徴とする請求項5に記載の電力増幅装置。
【請求項7】
前記キャリア用バランと前記ピーク用バランのうち他方は、前記表面を構成する前記絶縁層よりも前記第1積層方向に配置された前記絶縁層に設けられている
請求項3に記載の電力増幅装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力増幅装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力増幅装置の一つとして、差動ドハティ(Doherty)回路を有する差動増幅装置をある。差動ドハティ回路は、キャリアアンプとピークアンプとが並列に接続されている。キャリアアンプは、入力信号の電力レベルにかかわらず動作する。ピークアンプは、入力信号の電力レベルが小さい場合はオフとなり、大きい場合にオンとなる。また、差動ドハティ回路は、キャリアアンプに接続するキャリア用バラン(Balun)と、ピークアンプに接続するピーク用バランと、調整回路(調整回路用部品)と、を有している。また、基板上のレイアウトに関し、キャリアアンプとピースアンプを有する集積回路の一側面に隣接してキャリア用バランとピーク用バランが配置されている。つまり、キャリア用バランとピーク用バランは、互いに隣り合った状態で配置されている。そのほか、基板の表面には、調整回路用部品などの表面実装部品が取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、キャリア用バランとピーク用バランとの間隔が小さいと、キャリア用バランとピーク用バランとが電磁気的に干渉する。この結果、特性劣化を引き起こす可能性がある。このような理由から、キャリア用バランとピーク用バランは、所定の距離以上、離隔している。そして、キャリア用バランとピーク用バランとの間はデッドスペースになっており、電力増幅装置の大型化を招いている。よって、、このデッドスペースを利用した電力増幅装置の小型化が望まれている。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、小型化された電力増幅装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面の電力増幅装置は、表面を有する基板と、キャリアアンプとピークアンプを有し、前記表面に設けられた集積回路と、前記キャリアアンプに接続するキャリア用バランと、前記ピークアンプに接続するピーク用バランと、前記表面に設けられた表面実装部品と、を備えている。前記キャリアアンプと前記ピークアンプは、それぞれ一対の差動アンプである。前記集積回路と前記基板とが配置される方向を積層方向とする。前記積層方向のうち前記集積回路から視て前記基板が配置される方向を第1積層方向とする。前記表面と平行な一方向を第1平面方向とする。前記表面と平行であり、かつ前記第1平面方向と交差する方向を第2平面方向とする。前記基板は、前記積層方向に配置された複数の絶縁層を有している。前記表面には、前記表面実装部品がはんだ付けされる電極が設けられている。前記積層方向から視て、前記集積回路の前記第1平面方向の一方には、前記第2平面方向に順に並ぶ前記キャリア用バラン、前記電極及び前記ピーク用バランが配置されている。前記キャリア用バランと前記ピーク用バランのうち一方は、前記表面を構成する前記絶縁層よりも前記第1積層方向に配置された前記絶縁層に設けられ、かつ前記積層方向から視て少なくとも一部が前記電極と重なっている。
【0007】
本開示の一側面の電力増幅装置は、表面を有する基板と、キャリアアンプとピークアンプを有し、前記表面に設けられた集積回路と、前記キャリアアンプに接続するキャリア用バランと、前記ピークアンプに接続するピーク用バランと、前記表面に設けられた表面実装部品であるインダクタと、を備えている。前記キャリアアンプと前記ピークアンプは、それぞれ一対の差動アンプである。前記集積回路と前記基板とが配置される方向を積層方向とする。前記積層方向のうち前記集積回路から視て前記基板が配置される方向を第1積層方向とする。前記表面と平行な一方向を第1平面方向とする。前記表面と平行であり、かつ前記第1平面方向と交差する方向を第2平面方向とする。前記基板は、前記積層方向に配置された複数の絶縁層を有している。前記キャリア用バランは、それぞれ巻き線の中心線が前記積層方向に延在する一次側キャリア用バランと二次側キャリア用バランを有している。前記一次側キャリア用バランと前記二次側キャリア用バランは、一方が前記表面に設けられ、他方が前記表面を構成する前記絶縁層よりも前記第1積層方向に配置された前記絶縁層に設けられている。前記ピーク用バランは、それぞれ巻き線の中心線が前記積層方向に延在する一次側ピーク用バランと二次側ピーク用バランを有している。前記一次側ピーク用バランと前記二次側ピーク用バランは、一方が前記表面に設けられ、他方が前記表面を構成する前記絶縁層よりも前記第1積層方向に配置された前記絶縁層に設けられている。前記積層方向から視て、前記集積回路の前記第1平面方向の一方には、前記第2平面方向に順に並ぶ前記キャリア用バラン、前記インダクタ及び前記ピーク用バランが配置されている。前記インダクタの巻き線の中心線は前記第2平面方向に延在している。
【0008】
本開示の一側面の電力増幅装置は、表面を有する基板と、キャリアアンプとピークアンプを有し、前記表面に設けられた集積回路と、前記キャリアアンプに接続するキャリア用バランと、前記ピークアンプに接続するピーク用バランと、前記表面に設けられた表面実装部品であるインダクタと、を備える。前記キャリアアンプと前記ピークアンプは、それぞれ一対の差動アンプである。前記集積回路と前記基板とが配置される方向を積層方向とする。前記積層方向のうち前記集積回路から視て前記基板が配置される方向を第1積層方向とする。前記表面と平行な一方向を第1平面方向とする。前記表面と平行であり、かつ前記第1平面方向と交差する方向を第2平面方向とする。前記基板は、前記積層方向に配置された複数の絶縁層を有する。前記積層方向から視て、前記集積回路の前記第1平面方向の一方には、前記第2平面方向に順に並ぶ前記キャリア用バラン、前記インダクタ及び前記ピーク用バランが配置される。前記キャリア用バランは、それぞれ巻き線の中心線が前記積層方向に延在し、互いに異なる前記絶縁層に設けられた一次側キャリア用バランと二次側キャリア用バランを有する。前記ピーク用バランは、それぞれ巻き線の中心線が前記積層方向に延在し、互いに異なる前記絶縁層に設けられたする一次側ピーク用バランと二次側ピーク用バランを有する。前記キャリア用バランと前記ピーク用バランのうち一方は、前記表面を構成する前記絶縁層よりも前記第1積層方向に配置された前記絶縁層に設けられている。前記インダクタの巻き線の中心線は前記第2平面方向に延在している。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、電力増幅装置が小型化される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態の電力増幅装置の全体的な回路構成を示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の電力増幅回路の高周波信号の電力と、検波回路が出力する信号と、の関係の一例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の電力増幅回路の、検波回路と、ドライブレベル検出回路と、の一具体例を示す図である。
【
図4】
図4は、第5の実施の形態の電力増幅回路の、検波回路と、ドライブレベル検出回路と、の一具体例の等価回路を示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の電力増幅回路の高周波信号の電力と、ピークアンプに与えられるバイアス電圧と、の関係の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の電力増幅装置のドハティ回路の回路構成を示す図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態の電力増幅装置において基板の表面を平面視した図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態の電力増幅装置において第2絶縁層のレイアウトを説明するための図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態の電力増幅装置において第3絶縁層のレイアウトを説明するための図である。
【
図11】
図11は、第1変形例の電力増幅装置の基板の表面を示す平面図である。
【
図12】
図12は、第2変形例の電力増幅装置のドハティ回路の回路構成を示す図である。
【
図13】
図13は、第2変形例の電力増幅装置において基板の表面を平面視した図である。
【
図14】
図14は、第2変形例の電力増幅装置において第2絶縁層のレイアウトを説明するための図である。
【
図15】
図15は、第2変形例の電力増幅装置において第3絶縁層のレイアウトを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示の電力増幅装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態により本開示が限定されるものではない。各実施の形態は例示であり、異なる実施の形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもない。第3変形例以降では第1実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0012】
最初に電力増幅装置100の全体構成を説明し、その後に差動ドハティ回路の詳細を説明する。また、本開示の電力増幅装置100は、キャリアアンプとピークアンプのそれぞれが一対の差動アンプ13a、13b、17a、17bで構成されるが(
図6参照)、電力増幅装置100の全体構成の説明を簡単にするため、一対の差動アンプでなく、シングルエンドタイプのキャリアアンプ13とピークアンプ17を用いた例を挙げて説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の電力増幅装置の全体的な回路構成を示す図である。電力増幅装置100は、電力増幅回路1を備える。電力増幅回路1は、増幅器2と、バイアス回路3と、ドハティ増幅回路10と、を含む。ドハティ増幅回路10は、分波器11と、初段(ドライバ段)のキャリアアンプ12と、最終段(パワー段)のキャリアアンプ13と、バイアス回路14と、バイアス回路15と、初段(ドライバ段)のピークアンプ16と、最終段(パワー段)のピークアンプ17と、バイアス回路18、バイアス回路19と、結合器40と、制御回路21と、調整回路60と、を含む。
【0014】
制御回路21は、検波回路22と、ドライブレベル検出回路26と、を含む。ドハティ増幅回路10の段数は、2段としたが、本開示はこれに限定されない。ドハティ増幅回路10の段数は、1段であってもよいし、3段以上であってもよい。
【0015】
バイアス回路3は、増幅器2にバイアスを与える。増幅器2に、高周波信号RF(Radio-Frequency。)が入力される。高周波信号RFinの周波数は、例えば数GHz程度である。増幅器2は、入力した高周波信号RFinを増幅させる。そして、増幅器2は、増幅した高周波信号RF1を分波器11に出力する。なお、以下で、高周波信号RFを単に信号RFと称する場合がある。
【0016】
分波器11は、90°ハイブリッド回路である。90°ハイブリッド回路は、高周波信号RF1を、互いに位相が略90°異なる高周波信号RF2とRF5に分け、高周波信号RF2をキャリアアンプ12に出力し、高周波信号RF5をピークアンプ16に出力する。なお、「略90°」とは、90°の位相のみではなく、45°以上135°以下の位相をも含むものとする。なお、高周波信号RF2の位相は、高周波信号RF5より90°遅れている。高周波信号RF2の電力と高周波信号RF5の電力は、同じである。
【0017】
バイアス回路14は、キャリアアンプ12にバイアスを与える。バイアス回路15は、キャリアアンプ13にバイアスを与える。キャリアアンプ12は、高周波信号RF2を増幅した高周波信号RF3をキャリアアンプ13に出力する。キャリアアンプ13は、高周波信号RF3を増幅した高周波信号RF4を結合器40に出力する。
【0018】
バイアス回路18は、ピークアンプ16にバイアスを与える。バイアス回路19は、ピークアンプ17にバイアスを与える。ピークアンプ16は、高周波信号RF5を増幅した高周波信号RF6をピークアンプ17に出力する。ピークアンプ17は、高周波信号RF6を増幅した高周波信号RF7を結合器40に出力する。
【0019】
結合器40は、高周波信号RF4と高周波信号RF7とを結合する。また、結合器40は、高周波信号RF7の位相を90°遅らせて高周波信号RF4と結合する。また、調整回路60は、キャリアアンプ13とピークアンプ17のそれぞれの出力端と、電力増幅回路1の出力端子と、の間のインピーダンスを整合させる回路である。結合器40と調整回路60の詳細については後述する。
【0020】
ドライブレベル検出回路26は、キャリアアンプ13が出力する高周波信号RF4に基づいて、キャリアアンプ13のドライブレベル(動作レベル)を表す信号S1を、検波回路22に出力する。
【0021】
検波回路22には、高周波信号RFinと、信号S1と、が入力される。本開示は、検波回路22には、高周波信号RFinに代えて、高周波信号RF1が入力されてもよし、高周波信号RF2が入力されてもよい。
【0022】
検波回路22は、高周波信号RFinと信号S1に基づいて、バイアス回路18と19を制御する信号S2をバイアス回路18と19に出力する。そして、バイアス回路18は、信号S2に基づいて、ピークアンプ16にバイアスを与える。バイアス回路19は、信号S2に基づいて、ピークアンプ17にバイアスを与える。つまり、検波回路22は、高周波信号RFinと信号S1に基づいて、ピークアンプ16とピークアンプ17のバイアスを制御している。
【0023】
図2は、第1実施形態の電力増幅回路の高周波信号の電力と、検波回路が出力する信号と、の関係の一例を示す模式図である。
図2において、横軸は、高周波信号RFinの電力を表し、縦軸は、検波回路22が出力する信号S2を表す。
【0024】
検波回路22は、信号S1に応じて、信号S2の立ち上がり点を異ならせる。なお、この信号S2の立ち上がり点を閾値と称することがある。波形31は、キャリアアンプ13のドライブレベルが相対的に低い場合の、高周波信号RFinの電力と信号S2との関係を示す。波形32は、キャリアアンプ13のドライブレベルが相対的に中間の場合の、高周波信号RFinの電力と信号S2との関係を示す。波形33は、キャリアアンプ13のドライブレベルが相対的に高い場合の、高周波信号RFinの電力と信号S2との関係を示す。
【0025】
検波回路22は、キャリアアンプ13のドライブレベルが相対的に低い場合、波形31に示すように、高周波信号RFinの電力が値Aになったら、信号S2を立ち上げる。検波回路22は、高周波信号RFinの電力が値A以上の範囲では、高周波信号RFinの電力が大きいほど、信号S2を大きくする。
【0026】
検波回路22は、キャリアアンプ13のドライブレベルが相対的に中間の場合、波形32に示すように、高周波信号RFinの電力が値B(B<A)になったら、信号S2を立ち上げる。検波回路22は、高周波信号RFinの電力が値B以上の範囲では、高周波信号RFinの電力が大きいほど、信号S2を大きくする。
【0027】
検波回路22は、キャリアアンプ13のドライブレベルが相対的に高い場合、波形33に示すように、高周波信号RFinの電力が値C(C<B)になったら、信号S2を立ち上げる。検波回路22は、高周波信号RFinの電力が値C以上の範囲では、高周波信号RFinが大きいほど、信号S2を大きくする。
【0028】
検波回路22は、キャリアアンプ12、13が飽和してしまう主原因である、大きな電力の高周波信号RFinが入力された場合に、信号S2をバイアス回路18、19に出力することにより、バイアス回路18、19にピークアンプ16、17を起動させる。これにより、キャリアアンプ12、13は、基本的には飽和しない。
【0029】
ここで重要なのが、検波回路22の応答速度である。検波回路22は、高周波信号RFinを検知するので、従来技術においてキャリアアンプが飽和したことを検知する場合と比べて、格段に高速に応答できる。従って、検波回路22は、高周波信号RFinの電力が短時間で上昇した場合であっても、即座に応答して、バイアス回路18、19にピークアンプ16、17を起動させ、キャリアアンプ12、13を瞬間的にも飽和させることはない。
【0030】
一方で、温度やその他周辺環境が変化した場合(例えば、極低温でキャリアアンプ12、13の利得が上昇した場合等)は、キャリアアンプ12、13が、高周波信号RFinの電力が小さくても飽和してしまうことがあり得る。検波回路22は、そのような場合にも対応できるように、キャリアアンプ12、13のドライブレベルを表す信号S1を検知し、キャリアアンプ12、13が飽和に近い場合には、高周波信号RFinの電力が小さくても、直ぐにピークアンプ16、17を起動させる。
【0031】
検波回路22は、高周波信号RFinを検知するので、キャリアアンプ12、13のドライブレベルを検知するのに時間を要したとしても、キャリアアンプ12、13を飽和させることなく、バイアス回路18、19にピークアンプ16、17を起動させることができる。これにより、ドハティ増幅回路10は、高周波信号RFoutの品質の低下を抑制できる。
【0032】
検波回路22は、高周波信号RFinに応じてフィードフォワード的に動作し、信号S1に応じてフィードバック的に動作すると考えることもできる。なお、本実施形態では、バイアス回路18とバイアス回路19を制御する信号S2をバイアス回路18とバイアス回路19のそれぞれに出力しているが、本開示は、バイアス回路18とバイアス回路19の一方にのみ信号S2を出力するようになっていてもよい。
【0033】
(検波回路及びドライブレベル検出回路の一具体例)
図3は、第1実施形態の電力増幅回路の、検波回路と、ドライブレベル検出回路と、の一具体例を示す図である。
図3では、検波回路22にバイアスを与えるための回路要素も合わせて示している。なお、
図3に示すローパスフィルタ25A、バイアス回路18、19は、省略されていてもよい。ローパスフィルタ25Aは、良好な差動信号が得られる場合等は、省略可能である。バイアス回路18、19は、バイアス供給対象トランジスタ(増幅トランジスタ)が小さい場合等は、省略可能である。
【0034】
検波回路22は、トランジスタQDE1及びQDE2と、抵抗RDEE1及びRDEE2と、を含む。
【0035】
本開示では、各トランジスタは、バイポーラトランジスタとするが、本開示はこれに限定されない。バイポーラトランジスタは、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(Heterojunction Bipolar Transistor:HBT)が例示されるが、本開示はこれに限定されない。トランジスタは、例えば、電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)であってもよい。トランジスタは、複数の単位トランジスタを電気的に並列接続した、マルチフィンガートランジスタであってもよい。単位トランジスタとは、トランジスタが構成される最小限の構成を言う。
【0036】
トランジスタQDE1のコレクタは、電源電位Vccに電気的に接続されている。トランジスタQDE1のエミッタは、抵抗RDEE1の一端に電気的に接続されている。つまり、トランジスタQDE1及び抵抗RDEE1は、エミッタフォロワ接続されている。トランジスタQDE1及び抵抗RDEE1が、第1エミッタフォロワ回路22aを構成する。
【0037】
検波回路22は、第1エミッタフォロワ回路22aに代えて、ソースフォロワ回路を含んでもよい。
【0038】
トランジスタQDE2のコレクタは、電源電位Vccに電気的に接続されている。トランジスタQDE2のエミッタは、抵抗RDEE2の一端に電気的に接続されている。つまり、トランジスタQDE2及び抵抗RDEE2は、エミッタフォロワ接続されている。トランジスタQDE2及び抵抗RDEE2が、第2エミッタフォロワ回路22bを構成する。
【0039】
検波回路22は、第2エミッタフォロワ回路22bに代えて、ソースフォロワ回路を含んでもよい。
【0040】
抵抗RDEE1の他端と抵抗RDEE2の他端とは、電気的に接続されている。第1エミッタフォロワ回路22aの出力電流と、第2エミッタフォロワ回路22bの出力電流と、の和が、検波回路22の出力電流I1である。
【0041】
抵抗RDEBB、RDEB1及びRDEB2、並びに、トランジスタQDE5、QDE6及びQDE7は、トランジスタQDE1及びQDE2のベースに、バイアス電圧を与える。
【0042】
抵抗RDEBBの一端と、抵抗RDEB1の一端と、抵抗RDEB2の一端とは、電気的に接続されている。
【0043】
抵抗RDEBBの他端は、トランジスタQDE7のコレクタ及びベースに、電気的に接続されている。つまり、トランジスタQDE7は、ダイオード接続されている。トランジスタQDE7のエミッタは、トランジスタQDE6のコレクタ及びベースに、電気的に接続されている。つまり、トランジスタQDE6は、ダイオード接続されている。トランジスタQDE6のエミッタは、トランジスタQDE5のコレクタ及びベースに、電気的に接続されている。つまり、トランジスタQDE5は、ダイオード接続されている。トランジスタQDE5のエミッタは、基準電位GNDに電気的に接続されている。基準電位GNDは、接地電位が例示されるが、本開示はこれに限定されない。
【0044】
抵抗RDEBBの一端、抵抗RDEB1の一端及び抵抗RDEB2の一端には、バイアス電流BIAS1が入力される。抵抗RDEBB、トランジスタQDE7、トランジスタQDE6及びトランジスタQDE5は、一定の電圧を生じる。この電圧が、抵抗RDEB1を介して、トランジスタQDE1のベースに入力されると共に、抵抗RDEB2を介して、トランジスタQDE2のベースに入力される。
【0045】
トランジスタQDE3及びQDE4の各々は、トランジスタQDE5とカレントミラー接続されている。トランジスタQDE3のコレクタは、トランジスタQDE1のベースに電気的に接続されている。これにより、トランジスタQDE3は、トランジスタQDE1のベース電流を調整可能である。トランジスタQDE4のコレクタは、トランジスタQDE2のベースに電気的に接続されている。これにより、トランジスタQDE4は、トランジスタQDE2のベース電流を調整可能である。
【0046】
トランジスタQDE1のベース及びトランジスタQDE2のベースには、高周波信号RFinを差動信号に変換した高周波信号IN1及びIN2が、夫々入力される。高周波信号IN1及びIN2は、例えば、高周波信号RFinをバランに入力することにより、得ることができる。
【0047】
抵抗RDEE1の他端及び抵抗RDEE2の他端は、定電流回路24に電気的に接続されている。定電流回路24は、トランジスタQDE11を含む。定電流回路24は、検波回路22の電流バイアス回路である。
【0048】
ドライブレベル検出回路26は、抵抗RMO1、RMO2、RMO3、RMO4及びRMO5と、トランジスタQMO1、QMO2、QMO4、QMO5、QMO6及びQMO7と、コンデンサCMO1と、を含む。
【0049】
なお、本説明では、キャリアアンプ13(
図1参照)は、一対の差動アンプ(差動増幅器)であるものとし、一対の差動信号を構成する高周波信号RF71及びRF72を出力するものとする。
【0050】
トランジスタQMO1のエミッタには、高周波信号RF71が入力される。トランジスタQMO1のエミッタは、キャリアアンプ13内の一方の増幅器の出力端子(出力トランジスタのコレクタ又はドレイン)に電気的に接続されることが例示される。
【0051】
トランジスタQMO2のエミッタには、高周波信号RF72が入力される。トランジスタQMO2のエミッタは、キャリアアンプ13内の他方の増幅器の出力端子(出力トランジスタのコレクタ又はドレイン)に電気的に接続されることが例示される。
【0052】
トランジスタQMO1のベース及びトランジスタQMO2のベースは、ノードN3に電気的に接続されている。トランジスタQMO1のコレクタ及びトランジスタQMO2のコレクタは、ノードN4に電気的に接続されている。
【0053】
抵抗RMO1、RMO2及びRMO3、並びに、トランジスタQMO4は、ノードN3に電圧を与える。つまり、抵抗RMO1、RMO2及びRMO3、並びに、トランジスタQMO4は、トランジスタQMO1のベース及びトランジスタQMO2のベースに、バイアスを与える。
【0054】
抵抗RMO3の一端は、電源電位Vccに電気的に接続されている。抵抗RMO3の他端は、ノードN3、トランジスタQMO4のコレクタ及び抵抗RMO1の一端に、電気的に接続されている。抵抗RMO1の他端は、トランジスタQMO4のベース及び抵抗RMO2の一端に、電気的に接続されている。トランジスタQMO4のエミッタ及び抵抗RMO2の他端は、基準電位GNDに電気的に接続されている。抵抗RMO1及びRMO2、並びに、トランジスタQMO4は、一定の電圧を生じる。この電圧が、ノードN3の電圧となる。
【0055】
抵抗RMO4及びRMO5、並びに、トランジスタQMO6及びQMO7は、ノードN4に電圧を与える。つまり、抵抗RMO4及びRMO5、並びに、トランジスタQMO6及びQMO7は、トランジスタQMO1のコレクタ及びトランジスタQMO2のコレクタに、バイアスを与える。
【0056】
抵抗RMO5の一端は、電源電位Vccに電気的に接続されている。抵抗RMO5の他端は、トランジスタQMO6のコレクタ及びベースに、電気的に接続されている。つまり、トランジスタQMO6は、ダイオード接続されている。トランジスタQMO6のエミッタは、トランジスタQMO7のコレクタ及びベースに、電気的に接続されている。つまり、トランジスタQMO7は、ダイオード接続されている。トランジスタQMO7のエミッタは、基準電位GNDに電気的に接続されている。抵抗RMO4の一端は、抵抗RMO5の他端、及び、トランジスタQMO6のコレクタ及びベースに、電気的に接続されている。抵抗RMO4の他端は、ノードN4に電気的に接続されている。トランジスタQMO6及びQMO7は、一定の電圧を生じる。この電圧が、抵抗RMO4を介して、ノードN4の電圧となる。
【0057】
トランジスタQMO5のコレクタ及びベースは、ノードN4に電気的に接続されている。つまり、トランジスタQMO5は、ダイオード接続されている。トランジスタQMO5のエミッタは、コンデンサCMO1の一端に、電気的に接続されている。コンデンサCMO1の他端は、基準電位GNDに電気的に接続されている。
【0058】
トランジスタQMO5は、信号S1をエミッタから出力する。つまり、本実施形態では、トランジスタQMO5のエミッタ電圧が、信号S1に相当する。コンデンサCMO1は、信号S1の高周波成分をシャントし、平滑化させる。
【0059】
抵抗RMO1、RMO2及びRMO3、並びに、トランジスタQMO4は、おおよそ一定の電圧を出力できれば良く、定電圧源に置き換えて考えることができる。抵抗RMO5、並びに、トランジスタQMO6及びQMO7は、おおよそ一定の電圧を出力できれば良く、定電圧源に置き換えて考えることができる。トランジスタQMO5は、おおよそ一定の電圧降下を生じれば良く、定電圧源に置き換えて考えることができる。
【0060】
ローパスフィルタ25Bは、抵抗RLPFと、コンデンサCLPFと、を含む。
【0061】
抵抗RLPFの一端は、トランジスタQMO5のエミッタに電気的に接続されている。抵抗RLPFの他端は、コンデンサCLPFの一端に電気的に接続されている。コンデンサCLPFの他端は、基準電位GNDに電気的に接続されている。
【0062】
抵抗RLPFの他端及びコンデンサCLPFの一端は、トランジスタQDE11のベースに電気的に接続されている。ローパスフィルタ25Bは、信号S1を低域通過させて、トランジスタQDE11のベースに出力する。
【0063】
ローパスフィルタ25Aは、コンデンサCenvを含む。コンデンサCenvの一端は、抵抗RDEE1の他端、抵抗RDEE2の他端及びトランジスタQDE11のコレクタに電気的に接続されている。コンデンサCenvの他端は、基準電位GNDに電気的に接続されている。
【0064】
コンデンサCenvは、検波回路22の出力電流I1と、トランジスタQDE11のコレクタ電流I2と、の差によって充電又は放電される。コンデンサCenvの電圧が、信号S2である。コンデンサCenvは、信号S2の高周波成分(例えば、キャリア周波数信号成分)を基準電位GNDに終端して除去し、低周波成分だけを通過させる。これにより、コンデンサCenvは、後段のバイアス回路18及び19、並びに、バイアス供給対象トランジスタ(増幅トランジスタ)に適切にバイアスが掛かるようにできる。
【0065】
バイアス回路18は、トランジスタQ
DE8、Q
DE9及びQ
DE10を含む。なお、バイアス回路19(
図1参照)の回路構成は、バイアス回路18の回路構成と同様であるので、説明を省略する。
【0066】
トランジスタQDE9は、ダイオード接続されている。トランジスタQDE9のコレクタ及びベースは、コンデンサCenvの一端に電気的に接続されている。トランジスタQDE9のエミッタは、トランジスタQDE8のコレクタ及びベースに電気的に接続されている。トランジスタQDE8は、ダイオード接続されている。トランジスタQDE8のエミッタは、基準電位GNDに電気的に接続されている。トランジスタQDE9及びQDE8には、コンデンサCenvの電圧に応じた電流が流れる。
【0067】
トランジスタQDE10のコレクタは、電源電位Vccに電気的に接続されている。トランジスタQDE10のベースは、トランジスタQDE9のコレクタ及びベースに電気的に接続されている。トランジスタQDE10のエミッタ電圧が、バイアス電圧BIAS16(BIAS17)として、ピークアンプ16(17)に出力される。
【0068】
図4は、第5の実施の形態の電力増幅回路の、検波回路と、ドライブレベル検出回路と、の一具体例の等価回路を示す図である。
図4の定電圧源V
MO1は、
図3の抵抗R
MO1、R
MO2及びR
MO3、並びに、トランジスタQ
MO4に相当する。
図4の定電圧源V
MO2は、
図3の抵抗R
MO5、並びに、トランジスタQ
MO6及びQ
MO7に相当する。
図4の定電圧源V
MO3は、
図3のトランジスタQ
MO5に相当する。
【0069】
(ドライブレベル検出回路の動作)
図4の等価回路を参照しながら、ドライブレベル検出回路26の動作を説明する。
【0070】
一般的に、最終段のキャリアアンプ13の出力端子電圧は、バイアス電圧を中心として高周波信号の電圧振幅で振動している。最終段のキャリアアンプ13が飽和するとき、高周波信号の電圧振幅が大きくなってバイアス電圧とほぼ同等となる状況が発生する。その状況において、高周波信号の振動周期の中で、出力端子電圧が0Vに近づく瞬間が発生する。その瞬間は、増幅作用が得られていない瞬間であり、増幅器の飽和という現象に結び付く。
【0071】
本実施形態の回路は、この飽和の原理を利用し、キャリアアンプ13のドライブレベルを検知する。
【0072】
具体的には、高周波信号RF71及びRF72の周期の内で、高周波信号RF71及びRF72の電圧が、定電圧源VMO1の電圧からトランジスタQMO1及びQMO2の閾値電圧分の電圧降下を差し引いた電圧よりも低くなった期間だけ、トランジスタQMO1及びQMO2がオン状態になる。
【0073】
キャリアアンプ13が飽和に対し十分余裕をもって動作しているとき、トランジスタQMO1及びQMO2は、オン状態になる期間がないので、コレクタ電流が流れない。そのため、抵抗RMO4は、電流が流れないので、電圧降下を生じない。従って、信号S1は、定電圧源VMO2の電圧から定電圧源VMO3の電圧を差し引いた電圧となる。
【0074】
一方、高周波信号RF71及びRF72の振幅が大きくなると、トランジスタQMO1及びQMO2は、オン状態になる期間が発生するので、コレクタ電流が流れる。そのため、抵抗RMO4は、電流が流れるので、電圧降下を生じる。
【0075】
高周波信号RF71及びRF72の振幅が更に大きくなると、トランジスタQMO1及びQMO2は、オン状態になる期間が長くなるので、より多くのコレクタ電流が流れる。そのため、抵抗RMO4は、より多くの電流が流れるので、より大きな電圧降下を生じる。
【0076】
従って、信号S1は、キャリアアンプ13のドライブレベルが高くなるにつれて、高周波信号RF71及びRF72が小信号時の電圧から抵抗RMO4での電圧降下分だけ下がった電圧となる。
【0077】
次に、検波回路22の動作について説明する。
【0078】
トランジスタQDE1は、高周波信号IN1がトランジスタQDE1の閾値電圧以上の場合にオン状態になり、エミッタ電流を出力する。トランジスタQDE2は、高周波信号IN2がトランジスタQDE2の閾値電圧以上の場合にオン状態になり、エミッタ電流を出力する。
【0079】
つまり、高周波信号IN1及びIN2の振幅が大きい(高周波信号RFinの電力が大きい)ほど、検波回路22の出力電流は大きくなる。また、高周波信号IN1及びIN2の振幅が小さい(高周波信号RFinの電力が小さい)ほど、検波回路22の出力電流は小さくなる。
【0080】
一方、先に説明したように、信号S1は、キャリアアンプ13のドライブレベルが相対的に高い場合(飽和に近い場合)、相対的に低い電圧となり、キャリアアンプ13のドライブレベルが相対的に低い場合(増幅率が低減している場合)、相対的に高い電圧となる。
【0081】
つまり、キャリアアンプ13のドライブレベルが相対的に高い(飽和に近い)ほど、トランジスタQDE11のコレクタ電流I2が小さくなる。また、キャリアアンプ13のドライブレベルが相対的に低い(増幅率が低減している)ほど、トランジスタQDE11のコレクタ電流I2が大きくなる。
【0082】
以上を総合すると、コンデンサCenvの電圧は、キャリアアンプ13のドライブレベルが相対的に高い(飽和に近い)ほど、高くなりやすくなる。また、コンデンサCenvの電圧は、キャリアアンプ13のドライブレベルが相対的に低い(増幅率が低減している)ほど、高くなりづらくなる。また、コンデンサCenvの電圧は、高周波信号RFinの電力が大きいほど、高くなりやすくなる。また、コンデンサCenvの電圧は、高周波信号RFinの電力が小さいほど、高くなりづらくなる。
【0083】
図5は、第1実施形態の電力増幅回路の高周波信号の電力と、ピークアンプに与えられるバイアス電圧と、の関係の一例を示す図である。
図5において、横軸は、高周波信号RFinの電力を表し、縦軸は、バイアス回路18(19)からピークアンプ16(17)に与えられるバイアス電圧BIAS
16(BIAS
17)を表す。
【0084】
波形34は、キャリアアンプ13のドライブレベルが相対的に低い場合の、バイアス電圧BIAS16(BIAS17)の変化を示す。波形35は、キャリアアンプ13のドライブレベルが相対的に中間の場合の、バイアス電圧BIAS16(BIAS17)の変化を示す。波形36は、キャリアアンプ13のドライブレベルが相対的に高い場合の、バイアス電圧BIAS16(BIAS17)の変化を示す。
【0085】
検波回路22は、波形36に示すように、キャリアアンプ13のドライブレベルが相対的に高い場合、高周波信号RFinの電力が低くてもピークアンプ16及び17を立ち上げることができる。逆に、検波回路22は、波形34に示すように、キャリアアンプ13のドライブレベルが相対的に低い場合、高周波信号RFinの電力が高くなるまで、ピークアンプ16及び17の立ち上がりを遅らせることができる。
【0086】
従って、キャリアアンプ13のドライブレベルが相対的に高い状態(飽和に近い状態)の場合に、高周波信号RFinの電力が低くてもピークアンプ16及び17を立ち上げることができるように、定電流回路24の電流が少なくなるようにすればよい。逆に、キャリアアンプ13のドライブレベルが相対的に低い場合は、高周波信号RFinの電力が大きくなるまでピークアンプ16及び17を立ち上げる必要が無いので、定電流回路24の電流が多くなるようにすればよい。つまり、定電流回路24に入力される電圧BIAS2は、キャリアアンプ13のドライブレベルに相補的に変化する電圧とすれば、回路全体として目的の動作が達成できる。
【0087】
検波回路22の応答は、次の理由により、速くなる。
【0088】
第1に、第1エミッタフォロワ回路22aと、第2エミッタフォロワ回路22bとが、差動動作する。従って、エミッタフォロワ回路がシングルエンド動作する場合と比較してコンデンサCenvの容量を小さくできる。これにより、コンデンサCenvでの遅延を小さくできるので、信号S2の変化が速くなる。つまり、検波回路22の応答は、速くなる。
【0089】
第2に、エミッタフォロワ回路は、大きな電流を出力できる回路である。従って、第1エミッタフォロワ回路22a及び第2エミッタフォロワ回路22bの各々は、大きな電流を出力できる。つまり、検波回路22は、大きな出力電流I1を出力できる。これにより、検波回路22は、コンデンサCenvを高速に充電できる。つまり、検波回路22の立ち上がり応答は、速くなる。
【0090】
第3に、トランジスタQDE11は、定電流(コレクタ電流I2)により、コンデンサCenvを放電できる。従って、トランジスタQDE11は、コンデンサCenvを高速に放電できる。つまり、検波回路22の立ち下がり応答は、速くなる。
【0091】
図6は、第1実施形態の電力増幅装置のドハティ回路の回路構成を示す図である。次に第1実施形態のドハティ増幅回路10の詳細を説明する。
図6に示すように、電力増幅装置100のドハティ増幅回路10は、2つの分波器30A、30Bと、一対の差動アンプ13a、13bと、一対の差動アンプ17a、17bと、結合器40(キャリア用バラン41、ピーク用バラン51)と、調整回路60と、負荷(アンテナ)70と、を有している。
【0092】
分波器30Aは、キャリアアンプ12(
図1も参照)から出力された高周波信号RF3(
図1参照)を分けて一対の差動アンプ13a、13bに出力する。分波器30Bは、は、ピークアンプ16(
図1も参照)から出力された高周波信号R6(
図1参照)を分けて一対の差動アンプ17a、17bに出力する。
【0093】
一対の差動アンプ13a、13bは、キャリアアンプ13(
図1参照)を構成している。一対の差動アンプ17a、17bは、ピークアンプ17(
図1参照)を構成している。本開示では、差動アンプの種類について特に限定されないが、例えばヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT:Heterojunction Bipolar Trnsistor)等のバイポーラトランジスタ、又はMOSFET(Metal-oxide-semiconductor Field Effect Transistor)などの電界効果トランジスタであってもよい。
【0094】
結合器40は、キャリア用バラン41とピーク用バラン51を有している。キャリア用バラン41は、1次側キャリア用バラン42と、1次側キャリア用バラン42と磁気結合する2次側キャリア用バラン43と、を有している。1次側キャリア用バラン42の両端は、一対の差動アンプ13a、13bに接続している。1次側キャリア用バラン42の中点42aには、電源電位Vccが供給される。
【0095】
ピーク用バラン51は、1次側ピーク用バラン52と、1次側ピーク用バラン52と磁気結合する2次側ピーク用バラン53と、を有している。1次側ピーク用バラン52の両端は、一対の差動アンプ17a、17bに接続している。1次側ピーク用バラン52の中点52aには、電源電位Vccが供給される。
【0096】
2次側ピーク用バラン53の一端は、基準電位GNDと接続している。2次側ピーク用バラン53の他端は、2次側キャリア用バラン43の一端に接続している。これにより、2次側キャリア用バラン43と2次側ピーク用バラン53が直列に接続する。
【0097】
第1実施形態の調整回路60は、コンデンサ62を有している。コンデンサ62は、本実施形態の調整回路用部品であり、かつ表面実装部品に相当する。2次側キャリア用バラン43の他端は、負荷(アンテナ)70に接続している。また、コンデンサ62は、一端が2次側キャリア用バラン43の一端に接続し、他端が基準電位GNDに接続し、2次側ピーク用バラン53と並列に接続されている。
【0098】
本実施形態によれば、1次側ピーク用バラン52から2次側ピーク用バラン53に入力した高周波信号RF7(
図1参照)の位相は、コンデンサ62により90°遅れる。そして、高周波信号RF7は、2次側キャリア用バラン43に入力された高周波信号RF4(
図1参照)と結合される。また、結合した高周波信号RFout(
図1参照)が負荷(アンテナ)70から電磁波として出力される。次に、第1実施形態の電力増幅装置100のレイアウトについて説明する。
【0099】
図7は、第1実施形態の電力増幅装置において基板の表面を平面視した図である。
図8は、第1実施形態の電力増幅装置において第2絶縁層のレイアウトを説明するための図である。
図9は、第1実施形態の電力増幅装置において第3絶縁層のレイアウトを説明するための図である。
【0100】
図7に示すように、電力増幅装置100は、基板101を有している。基板101を平面視すると、矩形状となっている。つまり、基板101の表面102は、長方形状となっている。また、表面102は、一対の短辺102aと、一対の長辺102bと、を有している。
【0101】
以下、表面102と平行な平面方向において、短辺102aと平行な方向を第1平面方向Xと称する。第1平面方向Xと平行であり、長辺102bと平行な方向(第1平面方向Xと交差する方向)を第2平面方向Yと称する。なお、本開示は、第1平面方向Xと第2平面方向Yは、直交している例に限定されず、交差していてもよい。
【0102】
基板101の表面102には、集積回路90が取り付けられる。集積回路90は、HBT(Heterojunction Bipolar Transistor)である。また、集積回路90は、分波器30A、30Bと一対の差動アンプ13a、13b、17a、17b(
図6参照)の各機能を有している。
【0103】
以下、集積回路90と基板101が配置される方向を積層方向と称する。また、積層方向のうち集積回路90から視て基板101が配置される方向を第1積層方向と称し、第1積層方向の反対方向を第2積層方向と称する。
【0104】
図7から
図9に示すように、基板101は、多層基板であり、積層方向に配置された複数の絶縁層を有している。以下、複数の絶縁層のうち第2積層方向から順に配置される3つの絶縁層を、第1絶縁層110(
図7参照)、第2絶縁層120(
図8参照)、第3絶縁層130(
図9参照)と称する。また、第1絶縁層110の第2積層方向の面が表面102を構成している。
【0105】
基板101の各絶縁層には、パターン形成により形成された導電層が設けられている。以下で説明する電極、配線及びバラン(キャリア用バラン41、ピーク用バラン51)は、導電層により構成される。なお、図面において、導電層の範囲を分かり易くするため、導電層にハッチングを付している。
【0106】
図7に示すように、表面102(第1絶縁層110)に1次側ピーク用バラン52が設けられている。
図8に示すように、第2絶縁層120に1次側キャリア用バラン42と2次側ピーク用バラン53とが設けられている。
図9に示すように、第3絶縁層130に2次側キャリア用バラン43が設けられている。なお、各バランは、積層方向から視てC字状に形成されている。
【0107】
図7に示すように、表面102(第1絶縁層110)には、導電層として電極111、112、113、114が設けられている。電極111、112、113、114は、第2平面方向Yに間隔を空けながら配置されている。また、電極111、112、113、114は、集積回路90と重なる範囲に配置され、集積回路90の出力端子(不図示)と接続している。これにより、電極111に、差動アンプ13a(
図6参照)から出力された信号が入力する。電極112には、差動アンプ13b(
図6参照)から出力された信号が入力する。電極113には、差動アンプ17a(
図6参照)から出力された信号が入力する。電極114には、差動アンプ17b(
図6参照)から出力された信号が入力する。
【0108】
電極113、114には、1次側ピーク用バラン52の両端部に接続している。また、電極111、112は、第1平面方向Xに延在する配線117、118の一端と接続している。配線117、118の他端には、層間接続導体111a、112aが設けられている。
図8に示すように、層間接続導体111a、112aは、第2絶縁層120に延在し、1次側キャリア用バラン42の両端と接続している。なお、各図において、層間接続導体を見易くするため、白抜き(ハッチングなし)とする。
【0109】
また、表面102(第1絶縁層110)には、配線115が設けられている。また、配線115には、電源電位Vcc(
図7で不図示。
図6参照)が印可されている。なお、配線115に印可される電源電位Vccは基板101外で生成された外部電圧でもよく、本開示は特に限定されない。1次側ピーク用バラン52は、結合点(中点52a)を介して、配線115と接続される。1次側キャリア用バラン42は、結合点(中点42a)および層間接続導体116aを介して配線115と接続される。これにより、1次側ピーク用バラン52および1次側キャリア用バラン42には電源電位Vccが供給される。
【0110】
図8に示すように、2次側ピーク用バラン53の一端53aには、層間接続導体127が設けられている。層間接続導体127は、4層目以下の絶縁層(不図示)に延在し、基準電位GNDに接続している。2次側ピーク用バラン53の他端53bには、層間接続導体131が設けられている。
図9に示すように、層間接続導体131は、第3絶縁層130に延在し、2次側キャリア用バラン43の一端43aに接続している。以上から、2次側ピーク用バラン53と2次側キャリア用バラン43は、直列に接続している。また、2次側キャリア用バラン43の他端43bは、特に図示しないが、負荷(アンテナ)70と接続している。
【0111】
図7に示すように、表面102(第1絶縁層110)には、第1平面方向Xに間隔を空けて配置された電極160、161が設けられている。電極160、161には、調整回路用部品であるコンデンサ62(
図6参照)が重ねられ、はんだ付けされている。また、電極160、161には、層間接続導体160a、161aが設けられている。
図9に示すように、層間接続導体160aは、第2絶縁層120まで延在し、基準電位GNDに接続している。また、層間接続導体161aは、第2絶縁層120に延在し、2次側ピーク用バラン53の他端53bと接続している。これにより、コンデンサ62と2次側ピーク用バラン53とが並列に接続している。
【0112】
以上、第1実施形態によれば、
図7から
図9に示すように、積層方向から視て、各バラン(キャリア用バラン41、ピーク用バラン51)は、集積回路90に対し、第1平面方向X1の一方に配置されている。また、各バラン(キャリア用バラン41、ピーク用バラン51)は、互いに第2平面方向Yに離隔して配置され、電磁気的に干渉しないようになっている。
【0113】
図10は、
図7の一部を拡大した拡大図である。また、
図10に示すように、積層方向から視て、調整回路用部品の1つであるコンデンサ62は、キャリア用バラン41とピーク用バラン51の間に配置されている。つまり、本実施形態では、従来デットスペースとなった領域がコンデンサ62の配置スペースとして利用されている。このため、基板101の表面102において、コンデンサ62を配置するスペースを別途設ける必要がなくなり、電力増幅装置100が小型化している。
【0114】
また、1次側ピーク用バラン52と電極160、161は、離隔しており、その距離はL1となっている。これは、コンデンサ62を電極160、161に接合するはんだが1次側ピーク用バラン52に接続しないようにするためである。
【0115】
なお、仮に1次側キャリア用バラン42を基板101の表面102に配置するとした場合、同様の理由から、仮想線L2(電極160、161からの距離がL1の仮想線)よりも電極160、161と離れた方向に配置する必要がある。つまり、1次側キャリア用バラン42と1次側ピーク用バラン52を基板101の表面102に配置した場合、1次側キャリア用バラン42と1次側ピーク用バラン52との間隔は小さくてもL3となる。
【0116】
一方で、本実施形態では、1次側キャリア用バラン42は、基板101の表面102(第1絶縁層110)に設けられていない。つまり、コンデンサ62を電極160、161に接合するはんだが1次側キャリア用バラン42に接続する可能性がない。このため、仮想線L2を超えて、1次側キャリア用バラン42を1次側ピーク用バラン52寄りに配置することができる。
【0117】
また、積層方向から視て、キャリア用バラン41は、電極161と重なっている。つまり、本実施形態のキャリア用バラン41とピーク用バラン51の間隔は、1次側キャリア用バラン42と1次側ピーク用バラン52の両方を基板101に配置した場合の間隔L3よりも、距離L4分だけ小さい。このため、電力増幅装置100が小型化している。
【0118】
以上、第1実施形態について説明した。次に、第1実施形態の一部を変形させた変形例について説明する。なお、以下の説明では、第1実施形態との相違点に絞って説明する。
【0119】
(第1変形例)
図11は、第1変形例の電力増幅装置の基板の表面を示す平面図である。
図11に示すように、第1変形例の電力増幅装置100Aは、キャリア用バラン41だけでなく、ピーク用バラン51も表面102よりも第1積層方向に絶縁層に設けられている点で、第1実施形態と相違する。つまり、第1変形例では、1次側ピーク用バラン52が第2絶縁層120に設けられ、2次側ピーク用バラン53が第3絶縁層130に設けられている。
【0120】
以上、第1変形例であっても、第1実施形態と同様にの電力増幅装置100Aの小型化が達成される。なお、第1変形例では、積層方向から視て、ピーク用バラン51は、電極161と重なっていないが、本開示は、キャリア用バラン41と同じように、電極161と重なっていてもよく、これによれば、より小型化を図れるため好ましい。
【0121】
以上、第1実施形態及び第1変形例について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、第1実施形態では、2つのバランのうち1つのバランが表面102に設けられた例を説明したが、この表面102に設けられたバランは、第1実施形態で示したピーク用バラン51に限定されず、キャリア用バラン41であってもよい。
【0122】
また、本開示はは、調整回路60(コンデンサ62)の代わりに、差動アンプ17a、17bから出力された高周波信号の位相を90°遅らせるλ/4変成器を備えていてもよい。
【0123】
また、第1実施形態では、調整回路用部品(コンデンサ62)がデットスペースに配置されているが、本開示は、調整回路用部品以外の部品であってもよい。つまり、表面102に搭載される表面実装部品であれば特に問わない。以下、デッドスペースに表面実装部品を配置した例を説明する。
【0124】
(第2変形例)
図12は、第2変形例の電力増幅装置のドハティ回路の回路構成を示す図である。
図12に示すように、第2変形例の電力増幅装置100Bのドハティ増幅回路10は、インダクタ54を有している点で第1実施形態1と相違する。インダクタ54は、電源電位Vccと1次側ピーク用バラン52の中点52aとの間に介在している。また、インダクタ54は、基板101の表面102に実装された表面実装部品である。以下、レイアウトの詳細を説明する。
【0125】
図13は、第2変形例の電力増幅装置において基板の表面を平面視した図である。
図14は、第2変形例の電力増幅装置において第2絶縁層のレイアウトを説明するための図である。
図15は、第2変形例の電力増幅装置において第3絶縁層のレイアウトを説明するための図である。
【0126】
図13に示すように、第2変形例の電力増幅装置100Bは、1次側キャリア用バラン42が基板101の表面102(第1絶縁層110)に設けられている点で、第1実施形態と相違する。
図14に示すように、第2変形例の電力増幅装置100Bは、2次側キャリア用バラン43が第2絶縁層120に設けられている点で、第1実施形態と相違する。
【0127】
また、積層方向から視て、1次側キャリア用バラン42と1次側ピーク用バラン52の間に、インダクタ54が配置されている。インダクタ54は、電極171、172にはんだ付けされている。なお、1次側キャリア用バラン42及び1次側ピーク用バラン52は、それぞれ、インダクタ54が接合する電極171、172と重なっていない点で、第1実施形態と相違する。
【0128】
また、コンデンサ62は、インダクタ54に対し、第1平面方向Xの一方に配置されている。コンデンサ62は、電極163、164に、はんだ付けされている。
【0129】
図14に示すように、2次側ピーク用バラン53の一端53aは、層間接続導体140により基準電位GNDと接続している。2次側ピーク用バラン53の他端53bは、第2平面方向Yに延在する配線141を介して、2次側キャリア用バラン43の一端43aと接続している。また、2次側キャリア用バラン43の他端43bは、特に図示しないが、負荷(アンテナ)70と接続している。
【0130】
図12に示すように、第2絶縁層120には、2次側キャリア用バラン43と2次側ピーク用バラン53との間に配置された電極142が設けられている。電極142は、電源電位Vccと接続している。電極142は、第3絶縁層130と第1絶縁層に延在する層間接続導体143が設けられている。
図15に示すように、層間接続導体143は、第3絶縁層130に設けられた配線144の一端と接続している。配線144の他端は、第1絶縁層110に延在する層間接続導体145と接続している。
図13に示すように、層間接続導体145は、1次側キャリア用バラン42の中点42aと接続する電極146と接続している。これにより、1次側キャリア用バラン42の中点42aに電源電位Vccが供給される。
【0131】
図13に示すように、層間接続導体143は、第1絶縁層110の電極171と接続している。電極172には、層間接続導体172aが設けられている。
図15に示すように、層間接続導体172aは、第3絶縁層130に延在し、配線147の一端と接続している。配線147の他端は、層間接続導体148と接続している。また、
図13に示すように、層間接続導体148は、第1絶縁層110まで延在し、1次側ピーク用バラン52の中点52aと接続する電極149と接続している。これにより、1次側ピーク用バラン52の中点52aに電源電位Vccが供給される。
【0132】
図15に示すように、第3絶縁層130には、基準電位GNDに接続する電極165が設けられている。電極165は、層間接続導体166が設けられている。
図13に示すように、層間接続導体166は、第1絶縁層110に延在し、コンデンサ62と接合する電極164に接続している。電極163には、層間接続導体167が設けられている。
図14に示すように、層間接続導体167は、第2絶縁層120に延在し、配線141に接続している。よって、コンデンサ62と2次側ピーク用バラン53が並列に接続している。
【0133】
図16は、
図15のXVI-XVI線で切った断面の模式図である。
図16に示すように、インダクタ54は、第2平面方向Yに延在する中心線(不図示)を中心とする巻き線である。このため、インダクタ54の内部を通過する磁界の向き(
図16の矢印M1を参照)は第2平面方向Yとなっている。一方で、
図16に示すように、キャリア用バラン41及びピーク用バラン51の内部を通過する磁界の向き(
図16の矢印M2を参照)は積層方向である。
【0134】
以上、第3変形例によれば、従来デットスペースとなっている領域にインダクタ54が配置されており、電力増幅装置100Bが小型化している。また、
図16に示すように、キャリア用バラン41及びピーク用バラン51の磁界と、インダクタ54の磁界の磁界は直交している。このため、キャリア用バラン41及びピーク用バラン51は、それぞれインダクタ54と磁気結合し難い。また、インダクタ54の磁界がシールド効果を発揮し、キャリア用バラン41とピーク用バラン51のそれぞれの磁界が干渉し難い。
【0135】
なお、第3変形例では、基板101の表面102に、キャリア用バラン41(1次側キャリア用バラン42)とピーク用バラン51(1次側ピーク用バラン52)のそれぞれが設けられているが、本開示は、キャリア用バラン41(1次側キャリア用バラン42)とピーク用バラン51(1次側ピーク用バラン52)のうち一方が基板101の表面102に設けられるようになっていてもよい。つまり、キャリア用バラン41とピーク用バラン51のうち一方は、表面102を構成する第1絶縁層110よりも第1積層方向に配置された絶縁層に設けられていてもよい。さらには、キャリア用バラン41とピーク用バラン52のうち他方も、表面102を構成する第1絶縁層110よりも第1積層方向に配置された絶縁層にに設けられていてもよい。つまり、、キャリア用バラン41とピーク用バラン51の両方が第1絶縁層110になく、第2絶縁層120以下の絶縁層に設けられていてもよい。
【0136】
なお、本開示は、以下のような構成の組み合わせであってもよい。
(1)
表面を有する基板と、
キャリアアンプとピークアンプを有し、前記表面に設けられた集積回路と、
前記キャリアアンプに接続するキャリア用バランと、
前記ピークアンプに接続するピーク用バランと、
前記表面に設けられた表面実装部品と、
を備え、
前記キャリアアンプと前記ピークアンプは、それぞれ一対の差動アンプであり、
前記集積回路と前記基板とが配置される方向を積層方向とし、
前記積層方向のうち前記集積回路から視て前記基板が配置される方向を第1積層方向とし、
前記表面と平行な一方向を第1平面方向とし、
前記表面と平行であり、かつ前記第1平面方向と交差する方向を第2平面方向とし、
前記基板は、前記積層方向に配置された複数の絶縁層を有し、
前記表面には、前記表面実装部品がはんだ付けされる電極が設けられ、
前記積層方向から視て、前記集積回路の前記第1平面方向の一方には、前記第2平面方向に順に並ぶ前記キャリア用バラン、前記電極及び前記ピーク用バランが配置され、
前記キャリア用バランと前記ピーク用バランのうち一方は、前記表面を構成する前記絶縁層よりも前記第1積層方向に配置された前記絶縁層に設けられ、かつ前記積層方向から視て少なくとも一部が前記電極と重なっている
電力増幅装置。
(2)
表面を有する基板と、
キャリアアンプとピークアンプを有し、前記表面に設けられた集積回路と、
前記キャリアアンプに接続するキャリア用バランと、
前記ピークアンプに接続するピーク用バランと、
前記表面に設けられた表面実装部品であるインダクタと、
を備え、
前記キャリアアンプと前記ピークアンプは、それぞれ一対の差動アンプであり、
前記集積回路と前記基板とが配置される方向を積層方向とし、
前記積層方向のうち前記集積回路から視て前記基板が配置される方向を第1積層方向とし、
前記表面と平行な一方向を第1平面方向とし、
前記表面と平行であり、かつ前記第1平面方向と交差する方向を第2平面方向とし、
前記基板は、前記積層方向に配置された複数の絶縁層を有し、
前記キャリア用バランは、それぞれ巻き線の中心線が前記積層方向に延在する一次側キャリア用バランと二次側キャリア用バランを有し、
前記一次側キャリア用バランと前記二次側キャリア用バランは、一方が前記表面に設けられ、他方が前記表面を構成する前記絶縁層よりも前記第1積層方向に配置された前記絶縁層に設けられ、
前記ピーク用バランは、それぞれ巻き線の中心線が前記積層方向に延在する一次側ピーク用バランと二次側ピーク用バランを有し、
前記一次側ピーク用バランと前記二次側ピーク用バランは、一方が前記表面に設けられ、他方が前記表面を構成する前記絶縁層よりも前記第1積層方向に配置された前記絶縁層に設けられ、
前記積層方向から視て、前記集積回路の前記第1平面方向の一方には、前記第2平面方向に順に並ぶ前記キャリア用バラン、前記インダクタ及び前記ピーク用バランが配置され、
前記インダクタの巻き線の中心線は前記第2平面方向に延在している
電力増幅装置。
(3)
表面を有する基板と、
キャリアアンプとピークアンプを有し、前記表面に設けられた集積回路と、
前記キャリアアンプに接続するキャリア用バランと、
前記ピークアンプに接続するピーク用バランと、
前記表面に設けられた表面実装部品であるインダクタと、
を備え、
前記キャリアアンプと前記ピークアンプは、それぞれ一対の差動アンプであり、
前記集積回路と前記基板とが配置される方向を積層方向とし、
前記積層方向のうち前記集積回路から視て前記基板が配置される方向を第1積層方向とし、
前記表面と平行な一方向を第1平面方向とし、
前記表面と平行であり、かつ前記第1平面方向と交差する方向を第2平面方向とし、
前記基板は、前記積層方向に配置された複数の絶縁層を有し、
前記積層方向から視て、前記集積回路の前記第1平面方向の一方には、前記第2平面方向に順に並ぶ前記キャリア用バラン、前記インダクタ及び前記ピーク用バランが配置され、
前記キャリア用バランは、それぞれ巻き線の中心線が前記積層方向に延在し、互いに異なる前記絶縁層に設けられた一次側キャリア用バランと二次側キャリア用バランを有し、
前記ピーク用バランは、それぞれ巻き線の中心線が前記積層方向に延在し、互いに異なる前記絶縁層に設けられたする一次側ピーク用バランと二次側ピーク用バランを有し、
前記キャリア用バランと前記ピーク用バランのうち一方は、前記表面を構成する前記絶縁層よりも前記第1積層方向に配置された前記絶縁層に設けられ、
前記インダクタの巻き線の中心線は前記第2平面方向に延在している
電力増幅装置。
(4)
前記キャリア用バラン及び前記ピーク用バランの他方は、前記表面を構成する前記絶縁層よりも前記第1積層方向に配置された前記絶縁層に設けられている
(1)に記載の電力増幅装置。
(5)
前記表面実装部品は、調整回路用部品であることを特徴とする(1)又は(4)に記載の電力増幅装置。
(6)
前記調整回路用部品は、コンデンサであることを特徴とする(5)に記載の電力増幅装置。
(7)
前記キャリア用バランと前記ピーク用バランのうち他方は、前記表面を構成する前記絶縁層よりも前記第1積層方向に配置された前記絶縁層に設けられている(3)に記載の電力増幅装置。
【符号の説明】
【0137】
1 電力増幅回路
10 ドハティ増幅回路
12、13 キャリアアンプ
13a、13b、17a、17b 差動アンプ
16、17 ピークアンプ
21 制御回路
22 検波回路
26 ドライブレベル検出回路
40 結合器
41 キャリア用バラン
42 1次側キャリア用バラン
43 2次側キャリア用バラン
51 ピーク用バラン
52 1次側ピーク用バラン
53 2次側ピーク用バラン
54 インダクタ
60 調整回路
62 コンデンサ
100、100A、100B 電力増幅装置
101 基板
102 表面
110 第1絶縁層
120 第2絶縁層
130 第3絶縁層
160、161 電極