(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002269
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】樹脂の回収方法
(51)【国際特許分類】
C08J 11/06 20060101AFI20241226BHJP
C08J 11/08 20060101ALI20241226BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20241226BHJP
C08J 3/12 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
C08J11/06 ZAB
C08J11/06 CES
C08J11/08 CET
C08J5/18
C08J3/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102327
(22)【出願日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150072
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 賢司
(74)【代理人】
【識別番号】100185719
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】小池 明日香
(72)【発明者】
【氏名】木林 達也
(72)【発明者】
【氏名】中尾 宰
【テーマコード(参考)】
4F070
4F071
4F401
【Fターム(参考)】
4F070AA15
4F070AA18
4F070AB11
4F070AB26
4F070DA41
4F070DA55
4F070DB10
4F071AA20
4F071AA22
4F071AF30
4F071BB06
4F071BB07
4F071BC01
4F401AA10
4F401AA11
4F401AD02
4F401AD07
4F401BA13
4F401BB12
4F401CA27
4F401CA46
4F401CA50
4F401EA46
4F401EA56
(57)【要約】
【課題】特定の種類の樹脂成分を高純度で回収することができる樹脂の回収方法を提供する。
【解決手段】ここでの樹脂の回収方法は、比重が1未満の第1樹脂成分と、比重が第1樹脂成分より大きい第2樹脂成分とを含有する樹脂製のフィルム、及び、当該樹脂製のフィルムが装着された樹脂製の容器の少なくとも一方を出発原料として用意することと、出発原料を粉砕し、多数の粉砕片を生成することと、多数の粉砕片から比重分離により、第1樹脂成分及び第2樹脂成分を含有する、比重が1未満の粉砕片を回収することと、比重が1未満の粉砕片から溶剤分離により、第1樹脂成分を回収することとを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
比重が1未満の第1樹脂成分と、比重が前記第1樹脂成分より大きい第2樹脂成分とを含有する樹脂製のフィルム、及び、当該樹脂製のフィルムが装着された樹脂製の容器の少なくとも一方を出発原料として用意することと、
前記出発原料を粉砕し、多数の粉砕片を生成することと、
前記多数の粉砕片から比重分離により、前記第1樹脂成分及び前記第2樹脂成分を含有する、比重が1未満の粉砕片を回収することと、
前記比重が1未満の粉砕片から溶剤分離により、前記第1樹脂成分を回収することと
を含む、樹脂の回収方法。
【請求項2】
前記出発原料及び前記多数の粉砕片の少なくとも一方からインキ層を除去すること
をさらに含み、
前記比重が1未満の粉砕片を回収することは、前記インキ層が除去された前記多数の粉砕片から比重分離により、前記比重が1未満の粉砕片を回収することを含む、
請求項1に記載の樹脂の回収方法。
【請求項3】
前記第1樹脂成分を回収することは、
前記比重が1未満の粉砕片を溶剤に浸漬し、前記第1樹脂成分及び前記第2樹脂成分の一方が溶解した溶液を生成することと、
前記溶液と、前記比重が1未満の粉砕片のうち前記溶剤に溶け残った残留物であって、前記第1樹脂成分及び前記第2樹脂成分の他方を含有する残留物とを分離することと
を含む、請求項1又は2に記載の樹脂の回収方法。
【請求項4】
前記溶液には、前記第2樹脂成分が溶解しており、前記残留物は、前記第1樹脂成分を含有する、
請求項3に記載の樹脂の回収方法。
【請求項5】
前記第1樹脂成分を回収することは、
前記比重が1未満の粉砕片を溶剤に浸漬し、前記第1樹脂成分及び前記第2樹脂成分が溶解した溶液を生成することと、
前記溶液から、前記第1樹脂成分及び前記第2樹脂成分の一方を析出させ、回収した後、前記第1樹脂成分及び前記第2樹脂成分の他方を析出させ、回収することと
を含む、請求項1又は2に記載の樹脂の回収方法。
【請求項6】
前記第1樹脂成分は、ポリオレフィン系樹脂である、
請求項1又は2に記載の樹脂の回収方法。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の樹脂の回収方法により回収された前記第1樹脂成分を原料の少なくとも一部として用いて、樹脂製のフィルムを製造すること
を含む、フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂の回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、飲料、医薬品、医療品、化学品、化粧品、トイレタリー、工業用品等の様々な分野で、樹脂製のフィルム及び容器が広く利用されている。近年、このような樹脂成形品から樹脂材料を再生原料として回収するリサイクル技術の開発が盛んである。例えば、特許文献1では、樹脂製のフィルムラベルを個片化し、これらの個片を比重分離する。より具体的には、比重が1未満のオレフィン系の個片を水面に浮かせ、比重が1を超えるスチレン系やエステル系等の個片を水中に沈降させて、これらを分別回収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、リサイクル対象の樹脂成形物において、多種類の樹脂が混合又は積層されている場合がある。このような場合、特許文献1の方法では、特定の種類の樹脂成分を高純度で回収することが難しくなり得る。例えば、個片としての比重が1未満であれば、比重が1を超えるスチレン系やエステル系等の樹脂を含有する個片であったとしても、当該個片はオレフィン系の樹脂として回収されてしまう。反対に、個片としての比重が1を超えるようであれば、比重が1未満のオレフィン系の樹脂を含む個片であったとしても、当該個片はオレフィン系の樹脂として回収することはできず、スチレン系やエステル系等の樹脂として回収されてしまう。つまり、特許文献1のような比重分離の方法では、ある種類の樹脂材料を回収しようとしたときに、別の種類の樹脂材料が不純物として多く混入する虞がある。
【0005】
本発明の目的は、特定の種類の樹脂成分を高純度で回収することができる樹脂の回収方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
項1.比重が1未満の第1樹脂成分と、比重が前記第1樹脂成分より大きい第2樹脂成分とを含有する樹脂製のフィルム、及び、当該樹脂製のフィルムが装着された樹脂製の容器の少なくとも一方を出発原料として用意することと、
前記出発原料を粉砕し、多数の粉砕片を生成することと、
前記多数の粉砕片から比重分離により、前記第1樹脂成分及び前記第2樹脂成分を含有する、比重が1未満の粉砕片を回収することと、
前記比重が1未満の粉砕片から溶剤分離により、前記第1樹脂成分を回収することと
を含む、樹脂の回収方法。
【0007】
項2.前記出発原料及び前記多数の粉砕片の少なくとも一方からインキ層を除去すること
をさらに含み、
前記比重が1未満の粉砕片を回収することは、前記インキ層が除去された前記多数の粉砕片から比重分離により、前記比重が1未満の粉砕片を回収することを含む、
項1に記載の樹脂の回収方法。
【0008】
項3.前記第1樹脂成分を回収することは、
前記比重が1未満の粉砕片を溶剤に浸漬し、前記第1樹脂成分及び前記第2樹脂成分の一方が溶解した溶液を生成することと、
前記溶液と、前記比重が1未満の粉砕片のうち前記溶剤に溶け残った残留物であって、前記第1樹脂成分及び前記第2樹脂成分の他方を含有する残留物とを分離することと
を含む、項1又は2に記載の樹脂の回収方法。
【0009】
項4.前記溶液には、前記第2樹脂成分が溶解しており、前記残留物は、前記第1樹脂成分を含有する、
項3に記載の樹脂の回収方法。
【0010】
項5.前記第1樹脂成分を回収することは、
前記比重が1未満の粉砕片を溶剤に浸漬し、前記第1樹脂成分及び前記第2樹脂成分が溶解した溶液を生成することと、
前記溶液から、前記第1樹脂成分及び前記第2樹脂成分の一方を析出させ、回収した後、前記第1樹脂成分及び前記第2樹脂成分の他方を析出させ、回収することと
を含む、項1又は2に記載の樹脂の回収方法。
【0011】
項6.前記第1樹脂成分は、ポリオレフィン系樹脂である、
項1から5のいずれかに記載の樹脂の回収方法。
【0012】
項7.項1から6のいずれかに記載の樹脂の回収方法により回収された前記第1樹脂成分を原料の少なくとも一部として用いて、樹脂製のフィルムを製造すること
を含む、フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、特定の種類の樹脂成分を高純度で回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る樹脂の回収方法を含む、フィルムの製造方法の流れを説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る樹脂の回収方法を含む、フィルムの製造方法について説明する。
【0016】
<1.概要>
図1に、本発明の一実施形態に係る樹脂の回収方法を含む、フィルムの製造方法の流れを示すフローチャートを示す。
図1には、フローチャートに含まれる各工程S101~S106が実施される様子を模式的に示す図も併せて示す。この方法によれば、少なくとも樹脂製のフィルム10を含む出発原料1から、回収対象の樹脂成分F1が回収され、回収された樹脂成分F1から再生フィルム4が製造される。樹脂成分F1は、比重が1未満の樹脂成分(第1樹脂成分)である。樹脂成分F1の回収に際し、出発原料1は、比重分離の工程S104と、さらに溶剤分離の工程S105を経る。このような工程が実施されることにより、出発原料1に含有される樹脂成分F1が高純度で回収される。
【0017】
また、本実施形態では、出発原料1から、樹脂成分F1とは異なる種類の樹脂成分F2が別途回収される。樹脂成分F2は、比重が樹脂成分F1より大きい樹脂成分(第2樹脂成分)である。樹脂成分F2も、溶剤分離の工程S105を経て樹脂成分F1から分離されることにより、高純度で回収される。以下、各工程S101~S106の詳細について説明する。
【0018】
<2.フィルムの製造方法の詳細>
<2-1.出発原料の用意(S101)>
まず、工程S101では、出発原料1が用意される。出発原料1は、リサイクルされる樹脂成形品であり、製品として使用済みのもの、未使用品、製造過程における端材や不良品等の廃棄品、廃棄過程における中間処理品等とすることができる。つまり、出発原料1は、市場に流通して消費者が使用した後に回収されたポストコンシューマ材料であってもよいし、消費者に渡る前のプレコンシューマ材料であってもよい。
【0019】
出発原料1としては、樹脂製のフィルム10が用意される。このとき、フィルム10の単体が用意されてもよいし、フィルム10が装着された樹脂製の容器11が用意されてもよいし、これらが混在したものが用意されてもよい。すなわち、いずれにせよ、出発原料1は、樹脂製のフィルム10を含む。これに限定されないが、フィルム10は、フィルムラベルとすることができる。また、容器11は、このようなフィルム10がラベルとして装着されたポリエチレンテレフタレート(PET)を主成分とするボトル(PETボトル)とすることができる。単体として用意されるフィルム10は、事前にこのような容器11から取り外されたフィルムラベルであってもよい。容器11は、容器本体だけでなく、キャップ及びキャップのリング部分等の容器本体の付属品11Bを含み得る。
【0020】
出発原料1に含まれるフィルム10は、典型的には熱可塑性樹脂を主成分とする。フィルム10は、熱収縮性であってもよいし、熱収縮性でなくてもよい。フィルム10は、積層フィルムであっても、単層フィルムであってもよい。フィルム10は、樹脂成分以外の成分を含有していてもよい。フィルム10は、アルミニウム等の金属成分、アンチブロッキング剤、添加剤等を含有し得る。添加剤の例としては、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、蛍光増白剤等が挙げられる。フィルム10がフィルムラベルである場合、当該フィルム10は、通常、インク等の着色成分を有するインキ層を有する。フィルムラベルでない場合であっても、フィルム10は、インキ層を有し得る。
【0021】
出発原料1には、多種類のフィルム10が含まれ得るが、少なくとも、樹脂成分F1,F2を含有するフィルム10Aが含まれる。これに限定されないが、本実施形態のフィルム10Aは、樹脂成分F1を主成分とする。主成分とは、全体の中で最も含有量(重量パーセント)が多い種類の成分である。樹脂成分F1は、典型的には熱可塑性樹脂である。樹脂成分F2も、典型的には熱可塑性樹脂である。フィルム10Aは、樹脂成分F1,F2を混合した層を有していてもよいし、樹脂成分F1,F2をそれぞれ含有する複数の層を有していてもよい。フィルム10Aは、樹脂成分F1,F2以外のその他の成分を含有していてもよい。その他の成分は、樹脂成分F1,F2以外の樹脂成分であってもよいし、これに代えて又は加えて、樹脂以外の成分であってもよい。
【0022】
樹脂成分F1は、比重が1未満である。樹脂成分F2は、樹脂成分F1よりも比重が大きく、これに限定されないが、典型的には比重が1より大きい。これに限定されないが、本実施形態の説明では、樹脂成分F1がポリオレフィン系樹脂であり、樹脂成分F2がポリスチレン系樹脂である場合が例示される。ポリオレフィン系樹脂の例としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、石油樹脂等が挙げられる。樹脂成分F1は、このような樹脂を1種単独又は複数種類含有することができる。ポリスチレン系樹脂の例としては、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体、スチレン-アクリル系共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体が挙げられる。樹脂成分F2は、このような樹脂を1種単独又は複数種類含有することができる。ポリスチレン系樹脂である樹脂成分F2の比重は、1.03~1.06となり得る。
【0023】
<2-2.粉砕(S102)>
続く工程S102では、工程S101で用意された出発原料1が粉砕され、それにより、多数の粉砕片20が生成される。粉砕方法は、特に限定されず、出発原料1の種類に応じて適宜選択することができ、公知の粉砕機、破砕機、裁断機等を適宜使用することができる。粉砕片20の各片のサイズは特に限定されない。ただし、フィルム10の粉砕片20の面積は、500mm2以下が好ましく、300mm2以下がより好ましく、200mm2以下がさらに好ましく、100mm2以下が特に好ましい。
【0024】
粉砕片20には、フィルム10の粉砕片20が含まれる。このうち、フィルム10Aの粉砕片20を、符号20Aで示し、フィルム10A以外のフィルム10の粉砕片20を、符号20Bで示す。出発原料1に容器11が含まれる場合には、粉砕片20には、さらに容器11の粉砕片20も含まれる。このうち、容器本体の粉砕片20を、符号20Cで示し、キャップ及びキャップのリング部分等の付属品11Bの粉砕片20を、符号20Dで示す。
【0025】
出発原料1にフィルム10が装着された容器11が含まれる場合、粉砕工程S102により、フィルム10の大部分が容器11から剥離される。その結果、工程S102では、フィルム10の粉砕片20と容器11の粉砕片20とが、分離された状態で得られる。従って、フィルム10の粉砕片20を容器11の粉砕片20から選別し、フィルム10の粉砕片20のみを後述の脱墨工程S103に送ることもできる。これに限定されないが、選別の方法としては、例えば、フィルム10の粉砕片20を風力により吹き飛ばす方法や、振動により収集する方法がある。
【0026】
<2-3.脱墨(S103)>
続く工程S103では、工程S102で生成された多数の粉砕片20が脱墨(洗浄)され、粉砕片20からインキ層が除去される。インキ層は、少なくとも一部のフィルム10の粉砕片20に含まれ得る。なお、容器11の粉砕片20にも、インキ層が含まれ得るが、容器11が上述したようなPETボトルである場合には、通常含まれない。以下、工程S103を経た粉砕片20を、粉砕片21と示す。粉砕片21は、粉砕片20がインキ層を含む場合には、インキ層が除去された粉砕片20である。粉砕片21のうち、フィルム10A由来の粉砕片21を、符号21Aで示し、フィルム10A以外のフィルム10由来の粉砕片21を、粉砕片21Bで示す。また、工程S103を経た容器11本体由来の粉砕片21を、符号21Cで示し、工程S103を経た付属品11B由来の粉砕片21を、符号21Dで示す。
【0027】
インキ層の除去方法は、特に限定されず、一例として、粉砕片20を洗浄液に浸漬する方法がある。この場合、インキ層が洗浄液に溶解し、又は粉砕片20から剥離される等して、粉砕片20から除去される。粉砕片20を洗浄液に浸漬させつつ、洗浄液を適宜加温及び/又は攪拌することにより、インキ層を効率よく除去することができる。その他、公知のフィルム洗浄装置(脱墨装置)を用いて、インキ層を除去することもできる。
【0028】
インキ層を有さないフィルム10Aの粉砕片21Aは、比重が1未満である。フィルム10Aは、本実施形態では、比重が1未満の樹脂成分F1を主成分とするからである。一方で、インキ層を有するフィルム10Aの粉砕片20Aは、インキ層を有さない粉砕片21Aよりも比重が大きいことがあり、比重が1未満とは限らず、比重が1を超えることもある。通常、インキ層は、比重が1を超えることが多いからである。例えば、白インキとして用いられる酸化チタンは、比重が3.9~4.1である。よって、このようなインキ層を除去する脱墨工程S103により、次の比重分離工程S104において、フィルム10A由来の粉砕片21Aを、これより比重の大きい粉砕片21から効率的に分離することが可能になる。
【0029】
<2-4.比重分離(S104)>
続く工程S104では、比重分離により、多数の粉砕片21から比重が1未満の粉砕片21が回収される。ここでは、多数の粉砕片21のうち、比重が1未満の粉砕片21が、これより比重の大きい粉砕片21から分離され、回収される。
【0030】
比重分離の方法としては、特に限定されないが、液体による分離方法、風力による分離方法等がある。簡易かつ正確な分離が可能であるという点では、水による比重分離が好ましい。具体的には、
図1に示すように、水40の中に粉砕片21を投入すると、比重が1未満の粉砕片21が水面に浮上し、比重が1より大きい粉砕片21は水中に沈降する。以下、比重が1未満の粉砕片21を、符号21Lで示し、比重が1より大きい粉砕片21を、符号21Hで示す。以上の方法によれば、比重が1未満の粉砕片21Lである、フィルム10A由来の粉砕片21Aが水面に浮上する。また、比重が1未満の粉砕片21が他にも存在する場合には、これらも同様に水面に浮上する。一方、比重が1より大きい残りの粉砕片21Hは、水中に沈降する。これにより、比重が1未満の粉砕片21Lと、比重が1より大きい粉砕片21Hとを分別して回収することができる。
【0031】
比重が1未満の粉砕片21Lとしては、上記の通り、主にフィルム10A由来の粉砕片21Aが想定される。また、付属品11B由来の粉砕片21Dは、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂から形成されることも多い。すなわち、付属品11B由来の粉砕片21Dは、フィルム10A由来の粉砕片21Aと同じ種類の軽量の樹脂を主成分とし得る。このような場合、粉砕片21Dは、比重が1未満の粉砕片21Lとなり得、フィルム10A由来の粉砕片21Aとともに回収され得る。一方、比重が1より大きい粉砕片21Hとしては、フィルム10A以外のフィルム10の粉砕片21Bが想定される。このような粉砕片21Bは、比重が1より大きいポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等を主成分とし得る。また、比重が1より大きい粉砕片21Hとしては、比重が1より大きいPETを主成分とする容器11本体由来の粉砕片21Cが想定される。
【0032】
なお、付属品11B由来の粉砕片21Dがフィルム10A由来の粉砕片21Aととともに回収された場合には、両者はまとめて、次工程S105に送られる。あるいは、両者をさらに分別し、フィルム10A由来の粉砕片21Aのみを、次工程S105に送ることもできる。これに限定されないが、分別の方法としては、例えば、フィルム10A由来の粉砕片21Aを風力により吹き飛ばす方法や、振動により収集する方法がある。
【0033】
<2-5.溶剤分離(S105)>
続く工程S105では、溶剤分離により、工程S104で回収された比重が1未満の粉砕片21Lから、比重が1未満の樹脂成分F1が回収される。粉砕片21Lに含まれる、フィルム10A由来の粉砕片21Aは、樹脂成分F1,F2を含有し、本実施形態では、比重が1未満のポリオレフィン系樹脂である樹脂成分F1を主成分とする。工程S105では、粉砕片21Aに含有される樹脂成分F1が、粉砕片21Aに含有される樹脂成分F2から分離され、回収される。
【0034】
具体的には、比重が1未満の粉砕片21Lを溶剤30に浸漬し、粉砕片21Lに含有される樹脂成分F2を溶剤30に溶解させる。例えば、タンクに溶剤30を貯め、その中に粉砕片21Lを投入する。工程S105では、溶剤30を適宜加温及び/又は攪拌することにより、樹脂成分F2を効率よく溶解させることができる。
【0035】
本実施形態の樹脂成分F2は、ポリスチレン系樹脂である。この場合、溶剤30の好ましい例として、キシレン、トルエン、エチルベンゼン、ベンゼン、メシチレン等の芳香族系溶媒、リモネン、ピネン等の環状テルペン系溶媒、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキサン等の環状エーテル系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の環状脂肪族系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等の酢酸エステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒等が挙げられる。溶剤30には、これらの溶媒うち、1種類の溶媒のみを含めてもよいし、複数種類の溶媒を混合して含めてもよい。また、溶剤30の温度は、30℃以下が好ましく、20℃以下がさらに好ましい。
【0036】
以上により、溶液31が生成される。溶液31には、粉砕片21Lに含有される成分のうち、溶剤30に溶解した溶解成分、すなわち、主として樹脂成分F2が含まれる。また、溶液31中には、残留物32が沈殿又は浮遊した状態で混在している。残留物32は、粉砕片21Lに含有される成分のうち、溶剤30に溶け残った不溶成分、すなわち、主として樹脂成分F1を含有する。
【0037】
その後、溶液31と、残留物32とが分離される。分離の方法は、特に限定されないが、好ましい例として、濾過を挙げることができる。この場合、フィルタを通過した溶液31が濾液として回収され、フィルタを通過できなかった残留物32が濾物として回収される。
【0038】
さらにその後、溶液31から樹脂成分F2を析出させる。例えば、溶液31に貧溶媒を投入する、あるいは貧溶媒に溶液31を投入することにより、効率よく樹脂成分F2を析出させることができる。これに限定されないが、貧溶媒としては、例えばエタノールを用いることができる。貧溶媒を使用することに代えて又は加えて、溶液31を冷却することで、樹脂成分F2を結晶化させて析出させることもできる。このときの溶液31の温度は、10℃以下が好ましく、0℃以下がより好ましい。そして、その後、濾過等を行い、生成された樹脂成分F2の析出物を溶剤30から分離し、回収する。また、その他の方法として、溶液31を加熱して溶剤30を蒸発させることにより、樹脂成分F2を析出させてもよい。その際、減圧下で加熱して、効率よく溶剤30を蒸発させてもよい。
【0039】
以上により、樹脂成分F1と、樹脂成分F2とが分離回収される。すなわち、比重分離工程S104では樹脂成分F1から分離することができなかった樹脂成分F2が、溶剤分離工程S105により、樹脂成分F1から分離される。その結果、高純度の樹脂成分F1が回収される。回収された樹脂成分F1は、適宜乾燥及び/又は洗浄した後、次工程S106に送られる。樹脂成分F2も同様に、適宜乾燥及び/又は洗浄した後、次工程S106に送られる。
【0040】
<2-6.フィルムの製造(S106)>
続く工程S106では、工程S105で回収された樹脂成分F1を原料の少なくとも一部として用いて、樹脂製の再生フィルム4が製造される。本実施形態では、工程S105で回収された樹脂成分F2も、再生フィルム4の原料に使用される。
【0041】
樹脂成分F1,F2は、再生フィルム4へと加工される。再生フィルム4の加工方法としては、公知の成膜方法を利用することができる。例えば、樹脂成分F1,F2を押出機に供給し、これらを押出機内で加熱溶融した後、ダイスから押し出す押出成形を行ってもよい。このとき、共押出しすることにより、積層フィルムを製造することができる。再生フィルム4は、成形後、適宜延伸される。なお、樹脂成分F1,F2はそれぞれ、取り扱い性を向上させる観点から、ペレット、粉体、造粒物等の形態の再生樹脂原料に加工されてもよく、その後、そのような形態の再生樹脂原料を再生フィルム4へ加工してもよい。造粒物とは、ペレットのように原料を加熱溶融した後、固めたものではなく、粉末状の原料を加熱溶融することなく、圧縮して固めた塊である。造粒物は、典型的には不透明な塊である。なお、粉体又は造粒物の形状の再生樹脂原料は、ペレットの形状の再生樹脂原料よりも、加工時に加熱溶融等の過剰な熱履歴を経ていない分、熱劣化が抑制され得る。
【0042】
樹脂成分F1,F2のペレットへの加工は、例えば、公知の樹脂ペレット製造機を用いて行うことができる。例えば、残留物32の態様の樹脂成分F1、及び/又は樹脂成分F2の析出物を押出機に供給し、これを押出機内で加熱溶融した後、ダイスから押し出し、押し出された材料を適当な形状にカットすることにより製造することができる。
【0043】
樹脂成分F1,F2の粉体への加工は、例えば、樹脂成分F1,F2の析出物を乾燥させることにより行うことができる。乾燥には、公知の乾燥機を用いることができ、例えば、流動層乾燥機のような熱風乾燥機、遠赤外線乾燥機、マイクロ波乾燥機等を好ましく用いることができる。なお、樹脂成分F1の析出物は、例えば、樹脂成分F1を溶解可能な溶剤に残留物32を浸漬して、樹脂成分F1が溶解した溶液を生成し、溶液から樹脂成分F1を析出させることにより得ることができる。
【0044】
樹脂成分F1,F2の造粒物への加工は、例えば、公知の造粒機を用いて行うことができる。例えば、樹脂成分F1,F2の析出物を真空状態で撹拌しながら乾燥させることにより、造粒物を生成することもできる。造粒機へは、樹脂成分F1,F2の析出物又は粉体を投入することができる。このとき、造粒前又は造粒中に樹脂成分F1,F2の析出物又は粉体を乾燥させる、或いは造粒後に造粒物を乾燥させることが好ましい。ここでの乾燥にも、公知の乾燥機を用いることができ、例えば、流動層乾燥機のような熱風乾燥機、遠赤外線乾燥機、マイクロ波乾燥等機を好ましく用いることができる。
【0045】
再生フィルム4は、樹脂成分F1,F2(上述した形態の再生樹脂原料であってもよい)のみを用いて、又は樹脂成分F1,F2(上述した形態の再生樹脂原料であってもよい)に加えてその他の原料も用いて製造することができる。なお、その他の原料は、樹脂であっても、樹脂以外の原料であってもよく、又はその両方を含むものであってもよい。その他の原料としては、バージン樹脂原料を用いることができる。再生フィルム4は、単層フィルムであっても、積層フィルムであってもよい。再生フィルム4は、熱収縮性であってもよいし、熱収縮性でなくてもよい。
【0046】
再生フィルム4は、樹脂成分F1,F2を含有する樹脂層に、インキ層を積層したものであってもよい。インキ層の積層方法は、特に限定されず、例えば、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷、スクリーン印刷等の方法を採用することができる。また、インキ層には、適宜、オーバーコート層が積層されてもよい。
【0047】
以上のような再生フィルム4は、任意の用途に使用することができる。再生フィルム4は、水平リサイクルも可能であり、フィルム10Aと同様に再生されてもよい。再生フィルム4は、容器11と同様の容器(例えば、PETボトル)に、フィルムラベルとして装着することができる。容器への装着時には、再生フィルム4を加熱して熱収縮させることにより、容器に密着させることができる。
【0048】
<3.特徴>
上記実施形態では、多数の粉砕片21の中から、比重分離により、比重が1未満の粉砕片21Lが分離回収される。しかし、比重が1未満の粉砕片21Lには、比重が1未満の樹脂成分F1が多く含まれるものの、異なる樹脂成分F2も混在している。そこで、続く溶剤分離により、粉砕片21Lに含まれる樹脂成分F1が、樹脂成分F2から分離回収される。その結果、比重が1未満の樹脂成分F1を高純度に回収する循環を実現することができる。また、樹脂成分F1よりも比重の大きい樹脂成分F2も、樹脂成分F1から分離されるため、高純度に回収することができる。
【0049】
<4.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。
【0050】
<4―1>
上記実施形態では、樹脂成分F1,F2は、同じフィルム(再生フィルム4)の原料として再利用されたが、それぞれ別のフィルムの原料として再利用されてもよい。また、上記実施形態では、樹脂成分F1,F2は、いずれもフィルムへと再生されたが、再生品はフィルムに限られず、少なくとも一方を、フィルム以外の任意の樹脂成形品へ再生してもよい。また、工程S104で分離される、粉砕片21Lよりも比重の大きい粉砕片21(粉砕片21Hを含む)も別途回収し、フィルム等の任意の樹脂成形品へ再生してもよい。
【0051】
<4―2>
上記実施形態では、出発原料1を粉砕した後で、粉砕片20を脱墨した。しかしながら、出発原料1を脱墨し、出発原料1からインキ層を除去した後で、粉砕してもよい。また、フィルム10Aの粉砕片20Aの比重が1未満であれば、脱墨工程S103は、比重分離工程S104の後に実施されてもよい。また、出発原料1を脱墨しつつ、同時に粉砕してもよい。以上の通り、脱墨工程S103は、出発原料1又は粉砕片20、あるいはその両方に対して実施することができる。あるいは、粉砕片20にインキ層が含まれない場合の他、フィルム10Aの粉砕片20Aの比重が1未満であれば、粉砕片20にインキ層が含まれる場合であっても、脱墨工程S103は、適宜省略することができる。
【0052】
<4―3>
上記実施形態では、比重が1未満の樹脂成分F1をポリオレフィン系樹脂とし、これよりも比重の大きい樹脂成分F2をポリスチレン系樹脂とする例を挙げた。しかしながら、樹脂成分F1,F2の種類は、この例に限定されない。例えば、樹脂成分F2を、ポリアミド系樹脂、又はポリエステル系樹脂とすることもできる。ポリアミド系樹脂の例としては、ナイロン6系樹脂、ナイロン66系樹脂、ナイロン12系樹脂等の脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、非晶質ポリアミド、ポリアミドエラストマーが挙げられる。ポリエステル系樹脂の例としては、PET、ポリエチレンナフタレートが挙げられる。樹脂成分F2がポリアミド系樹脂である場合、溶剤30の好ましい例として、エチレングリコール系の、脂肪族環状アルコール、脂肪族アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオールを挙げることができる。樹脂成分F2がポリエステル系樹脂である場合、溶剤30の好ましい例として、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶剤を挙げることができる。
【0053】
<4―4>
上記実施形態では、溶液31に樹脂成分F2が溶解しており、残留物32が樹脂成分F1を含有するものとした。しかしながら、溶剤分離工程S105において、樹脂成分F1を溶解可能な溶剤30を用いて樹脂成分F1が溶解した溶液31を生成し、このような溶液31と、樹脂成分F2を含有する残留物32とを分離するようにしてもよい。
【0054】
<4-5>
以上の通り、溶剤分離工程S105としては、粉砕片21Lを溶剤30に浸漬して樹脂成分F1,F2の一方が溶解した溶液31を生成し、このような溶液31と、溶剤30に溶け残った樹脂成分F1,F2の他方を含有する残留物32とを分離する方法が考えられる。しかしながら、溶剤分離工程S105は、このような態様に限定されない。例えば、上記実施形態と同じく、樹脂成分F1がポリオレフィン系樹脂であり、樹脂成分F2がポリスチレン系樹脂である場合において、以下の態様が考えられる。すなわち、ポリオレフィン系樹脂は、上記実施形態で例示した溶剤30に低温では溶解しないが、高温では溶解する。そこで、両樹脂成分F1,F2を高温条件下で共に溶剤30に溶解させた後、そのような溶液を冷却し、ポリオレフィン系樹脂を析出させて回収する。続いて、ポリオレフィン系樹脂が除去された溶液をさらに冷却し、そのような溶液から、上記実施形態と同様に、ポリスチレン系樹脂を析出させて回収する。このように、粉砕片21Lを溶剤30に浸漬し、樹脂成分F1,F2の両方が溶解した溶液を生成し、そのような溶液から樹脂成分F1,F2を段階的に析出させ、段階的に回収することにより、樹脂成分F1と樹脂成分F2とを分離してもよい。この場合において、樹脂成分F1を析出させた後、樹脂成分F2を析出させることもできるし、樹脂成分F2を析出させた後、樹脂成分F1を析出させることもできる。
【0055】
<4-6>
出発原料1は、上記方法で製造された再生樹脂原料及び再生品(再生フィルム4を含む)であってもよい。つまり、本発明は、バージン樹脂を主原料とする製品から再生樹脂原料及び再生品を再生する場面にも適用可能であるが、このような再生樹脂原料及び再生品からさらに再生樹脂原料及び再生品を再生する場面にも適用可能である。つまり、何度も繰り返し、樹脂原料を循環させることができる。
【実施例0056】
<5.実施例>
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0057】
上記実施形態に係る方法により、実施例1~3及び比較例に係るフィルムを製造した。まず、出発原料として、以下の3種類の熱収縮性フィルム1~3を用意した。フィルム1~3の厚みは全て35μmであった。また、フィルム1~3の原料は全てバージン樹脂であった。なお、PSはポリスチレン、PPは、ポリオレフィン(PO)の一種である、ポリプロピレンである。
フィルム1:PS系樹脂からなる単層フィルム 比重1.05
フィルム2:PP系樹脂からなる単層フィルム 比重0.91
フィルム3:PS系樹脂(3μm)/PP系樹脂(29μm)/PS系樹脂(3μm)からなる3層フィルム 比重0.97
【0058】
フィルム1~3が混在したものを出発原料として、上記実施形態と同様の工程S102,S104~S106を実施した。具体的には、出発原料を裁断機で裁断し、粉砕片を得た(工程S102:粉砕工程)。次に、タンクに水を溜め、そこに得られた粉砕片を投入し、攪拌後静置し、水に浮いたものを回収した(工程S104:比重分離工程)。ここで、水に浮いたものを比重分離片と呼ぶ。なお、比重分離片は、主として比重1未満のフィルム2,3由来の粉砕片である。
【0059】
次に、この比重分離片の一部に対し、溶剤分離工程(S105)を実施した。具体的には、タンクに溶剤(リモネン)を溜め、そこに比重分離片を投入して攪拌し、PS系樹脂が溶解した溶液を得た。これらの操作は25℃で行った。また、得られた溶液を濾紙で濾し、濾液と残留物とを分離した。なお、ここでの残留物は、主としてフィルム2,3由来のPP系樹脂からなる。また、貧溶媒(イソプロピルアルコール)の中に濾液を投入することで、主としてフィルム3由来のPS系樹脂を析出させた。
【0060】
次に、フィルム製造工程S106を実施した。具体的には、析出させたPS系樹脂を乾燥させた後、造粒機にて造粒物へと加工した。一方、分離した残留物は、十分に乾燥させた後、押出機で加熱溶融混錬し、ペレットに成形した。そして、このようにして回収したPS系樹脂の造粒物(リサイクルPS)及びPP系樹脂のペレット(リサイクルPO)に加え、別途用意したPS系バージン樹脂材料(バージンPS)及びPP系バージン樹脂材料(バージンPO)を用いて、表1に示す実施例1~3の熱収縮性フィルムを製造した。また、比重分離片と、別途用意したバージンPS及びバージンPOとを用いて、表1に示す比較例の熱収縮性フィルムを製造した。実施例1~3及び比較例のフィルムは、表1の通りの層構成とし、全て3層構造とした。また、実施例1~3及び比較例のいずれも、層厚比は、表層:中間層:裏層=1:9:1とし、フィルムの厚みは35μmとした。各層の原料も、表1の通りであり、複数の原料名が記載されている層は、それらの原料を混合した混合層とした。このような混合層において、リサイクルPS、リサイクルPO又は比重分離片の添加量は、その層を構成する原料の20wt%とした。
【表1】
【0061】
なお、実施例1~3及び比較例のフィルムは、以下のように成形した。PS系樹脂を投入した押出機は160~240℃に設定し、PP系樹脂を投入した押出機は170~240℃に設定した。そして、押出機からTダイで押出した後に、50℃~140℃に設定した横延伸機にて横方向に5倍延伸を行った。
【0062】
次に、実施例1~3及び比較例のフィルムのヘイズを測定した。また、参考例として、リサイクル樹脂が含まれない上記フィルム3のヘイズも測定した。その結果を、表1に示す。なお、ヘイズは、JIS Z7136に準ずる方法により、ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH5000)を用いて測定した。なお、ヘイズとしては、4つの試験片を用いて4回測定し、その平均値を算出した。
【0063】
表1の結果からは、リサイクル樹脂を含む実施例1~3のフィルムは、同じくリサイクル樹脂(比重分離片)を含む比較例のフィルムよりも、ヘイズが小さく、透明度が高いことが分かった。また、実施例1~3のフィルムは、バージン樹脂のみからなる参考例のフィルムと比較して、劣化が小さいことも分かった。以上より、上記実施形態に係る樹脂の回収方法の優位性が確認された。