(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022690
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】ゴム組成物中の成分の定量方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/44 20060101AFI20250206BHJP
G01N 25/20 20060101ALI20250206BHJP
G01N 5/04 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
G01N33/44
G01N25/20 G
G01N5/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024010003
(22)【出願日】2024-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2023127055
(32)【優先日】2023-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木挽 洋佑
(72)【発明者】
【氏名】久保 晴香
(72)【発明者】
【氏名】木村 拓也
【テーマコード(参考)】
2G040
【Fターム(参考)】
2G040AA03
2G040AB11
2G040BA02
2G040BA24
2G040CA02
2G040CA16
2G040CA22
2G040DA02
2G040EA01
2G040EC08
2G040GC01
2G040ZA02
(57)【要約】
【課題】定量性を確保しつつ、被定量成分の汎用性に優れたゴム組成物中の成分の定量方法を提供すること。
【解決手段】ゴム組成物中の成分の定量方法であって、有機溶剤を使用して、ゴム組成物から抽出成分を含有する抽出液を得る抽出工程と、抽出液から有機溶剤を留去することにより、抽出成分の濃縮物を得る濃縮工程と、濃縮物の熱重量分析を行って、熱重量曲線を得る熱分析工程と、熱重量曲線から、定量する成分に対応する減量割合を読み取る定量工程とを少なくとも有するゴム組成物中の成分の定量方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム組成物中の成分の定量方法であって、
有機溶剤を使用して、前記ゴム組成物から抽出成分を含有する抽出液を得る抽出工程と、前記抽出液から前記有機溶剤を留去することにより、前記抽出成分の濃縮物を得る濃縮工程と、前記濃縮物の熱重量分析を行って、熱重量曲線を得る熱分析工程と、前記熱重量曲線から、定量する成分に対応する減量割合を読み取る定量工程とを少なくとも有することを特徴とするゴム組成物中の成分の定量方法。
【請求項2】
定量する成分が不揮発性成分である請求項1に記載のゴム組成物中の成分の定量方法。
【請求項3】
前記不揮発性成分が炭化水素樹脂である請求項2に記載のゴム組成物中の成分の定量方法。
【請求項4】
前記濃縮工程において前記ゴム組成物中の全量を100質量%としたときの前記濃縮物の抽出量の割合をα(質量%)とし、
前記熱分析工程の後、さらに前記熱重量曲線を微分することにより高温領域で重量減少する成分を特定し、前記定量工程において、高温領域での前記成分の重量減少の割合をβ(質量%)としたとき、
前記ゴム組成物中に配合された前記成分の配合量の割合γ(質量%)を、下記式(2):
γ=α×β/100 (2)
に基づき算出する請求項1に記載のゴム組成物中の成分の定量方法。
【請求項5】
前記熱分析工程を実施する雰囲気が不活性気体雰囲気である請求項1に記載のゴム組成物中の成分の定量方法。
【請求項6】
高温領域で重量減少する前記成分に対応する熱重量曲線の微分曲線のピークトップ温度が250℃以上である請求項4に記載のゴム組成物中の成分の定量方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物中の成分の定量方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴム組成物は、例えば空気入りタイヤなどの多くのゴム製品で使用される。ゴム製品の性能把握や改良のために、ゴム製品に含まれる成分の量を定量する技術は重要である。
【0003】
下記特許文献1では、ゴム組成物中の成分の定量方法であり、定量対象成分がゴム成分と混練される成分であり、標準試料を含むゴム組成物の溶媒抽出液を乾固した溶媒抽出物を熱分解ガスクロマトグラフ質量分析計により分析して得られたクロマトグラムにおける標準試料に由来するピークのピーク面積と定量対象成分に由来するピークのピーク面積との比に基づいて定量する定量方法が記載されている。
【0004】
下記特許文献2では、複数の樹脂成分と無機粉末とを含むペースト中の各樹脂成分の含有量を個別に定量する定量方法であって、前記ペーストと有機溶媒を混合し、前記複数の樹脂成分を溶解させる溶解工程と、前記溶解工程で得られた溶液から前記無機粉末を分離し、前記複数の樹脂成分を含む樹脂溶液を形成する分離工程と、前記樹脂溶液を熱分解ガスクロマトグラフィで測定し、各樹脂成分の熱分解により生じる各樹脂成分に固有の熱分解生成物のピーク面積値をそれぞれ求める測定工程と、各樹脂成分について、含有量と固有の熱分解生成物のピーク面積値との相関を示す検量線に基づき、前記測定工程で求めたピーク面積値から前記ペースト中の含有量を算出する定量工程と、前記分離工程と前記測定工程との間に、前記樹脂溶液を、前記有機溶媒の沸点以上、前記複数の樹脂成分の熱分解温度以下の温度で加熱し、乾燥させて、前記有機溶媒を揮発させ、前記複数の樹脂成分を含む乾固物を形成する乾燥工程と、を有し、前記測定工程では、前記乾固物を熱分解ガスクロマトグラフィで測定する、樹脂成分の定量方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6665629号公報
【特許文献2】特許第6950494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らが鋭意検討したところ、上記従来技術の定量方法では、被定量成分の情報(化学構造やコントロール測定時の挙動)などが事前に分かっていないと正確に定量できないため、被定量成分が限られることが判明した。したがって、上記従来技術の定量方法では、被定量成分の汎用性に関し、さらなる改良の余地があることが判明した。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、定量性を確保しつつ、被定量成分の汎用性に優れたゴム組成物中の成分の定量方法を提供することにある。
【0008】
上記課題は下記の如き構成により解決し得る。すなわち本発明は、ゴム組成物中の成分の定量方法であって、有機溶剤を使用して、前記ゴム組成物から抽出成分を含有する抽出液を得る抽出工程と、前記抽出液から前記有機溶剤を留去することにより、前記抽出成分の濃縮物を得る濃縮工程と、前記濃縮物の熱重量分析を行って、熱重量曲線を得る熱分析工程と、前記熱重量曲線から、定量する成分に対応する減量割合を読み取る定量工程とを少なくとも有することを特徴とするゴム組成物中の成分の定量方法(1)に関する。
【0009】
上記ゴム組成物中の成分の定量方法(1)において、定量する成分が不揮発性成分であるゴム組成物中の成分の定量方法(2)が好ましい。
【0010】
上記ゴム組成物中の成分の定量方法(2)において、前記不揮発性成分が炭化水素樹脂であるゴム組成物中の成分の定量方法(3)が好ましい。
【0011】
上記ゴム組成物中の成分の定量方法(1)~(3)いずれかにおいて、前記濃縮工程において前記ゴム組成物中の全量を100質量%としたときの前記濃縮物の抽出量の割合をα(質量%)とし、前記熱分析工程の後、さらに前記熱重量曲線を微分することにより高温領域で重量減少する成分を特定し、前記定量工程において、高温領域での前記成分の重量減少の割合をβ(質量%)としたとき、前記ゴム組成物中に配合された前記成分の配合量の割合γ(質量%)を、下記式(2):
γ=α×β/100 (2)
に基づき算出するゴム組成物中の成分の定量方法(4)が好ましい。
【0012】
上記ゴム組成物中の成分の定量方法(1)~(4)いずれかにおいて、前記熱分析工程を実施する雰囲気が不活性気体雰囲気であるゴム組成物中の成分の定量方法(5)が好ましい。
【0013】
上記ゴム組成物中の成分の定量方法(4)または(5)において、高温領域で重量減少する前記成分に対応する熱重量曲線の微分曲線のピークトップ温度が250℃以上であるゴム組成物中の成分の定量方法(6)が好ましい。
【発明の効果】
【0014】
特に空気入りタイヤに使用されるゴム組成物中には、炭化水素樹脂などの不揮発性成分が配合されることが多く、ゴム製品の性能把握や改良のために、ゴム製品に含まれる成分の量、特には炭化水素樹脂などの不揮発性成分の量を定量する技術は重要である。ここで、炭化水素樹脂などの不揮発性成分などを溶媒抽出により抽出し、その抽出量に基づき配合量を特定する技術も存在するが、抽出成分には所望の成分以外にも老化防止剤やオイルなどの他の成分も多く混入するため、かかる技術では所望の成分の量の特定が正確にできないなどの問題が存在した。
【0015】
一方、本発明においては、有機溶剤を使用して、ゴム組成物から抽出成分を含有する抽出液を得る抽出工程を実施した後、抽出液から有機溶剤を留去することにより、抽出成分の濃縮物を得る(濃縮工程)。そしてさらに、濃縮物の熱重量分析を行って、熱重量曲線を得る熱分析工程と、熱重量曲線から、定量する成分に対応する減量割合を読み取る定量工程とを少なくとも有する。これにより、従来技術に比して、所望の成分の量をより正確に定量することができる。
【0016】
特に本発明においては、濃縮工程においてゴム組成物中の全量を100質量%としたときの濃縮物の抽出量の割合をα(質量%)とし、熱分析工程の後、さらに熱重量曲線を微分することにより高温領域で重量減少する成分を特定し、定量工程において、高温領域での成分の重量減少の割合をβ(質量%)としたとき、ゴム組成物中に配合された成分の配合量の割合γ(質量%)を、下記式(2):
γ=α×β/100 (2)
に基づき算出した場合、所望の成分の量をさらに正確に定量することができる。なお、熱重量曲線の微分曲線において、被定量成分に対応するピークのピークトップ温度が250℃以上である成分である場合、より正確に定量できるため好ましい。
【0017】
本発明は所望の成分として、不揮発性成分、特には炭化水素樹脂の量を定量する場合、従来技術に比して被定量成分の汎用性が高いため好ましい。
【0018】
なお、本発明はゴム組成物として加硫後のゴム組成物(加硫ゴム)の成分を定量する場合、不揮発性成分、特には炭化水素樹脂の量を定量する際に定量性が高まるため好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】有機溶剤としてクロロホルムを使用してゴム組成物を抽出し、得た抽出成分の濃縮物の熱重量分析結果(熱重量曲線)の一例を示す図
【
図2】本発明に係る定量方法および従来技術である抽出法に関し、定量結果(質量%)と実際の配合量(質量%)との関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明はゴム組成物中の成分の定量方法に関し、(i)有機溶剤を使用して、ゴム組成物から抽出成分を含有する抽出液を得る抽出工程と、(ii)抽出液から有機溶剤を留去することにより、抽出成分の濃縮物を得る濃縮工程と、(iii)濃縮物の熱重量分析を行って、熱重量曲線を得る熱分析工程と、(iv)熱重量曲線から、定量する成分に対応する減量割合を読み取る定量工程とを少なくとも有する。以下に各工程について説明する。
【0021】
(i)抽出工程
抽出工程では、有機溶剤を使用して、ゴム組成物、より好適には加硫後のゴム組成物から抽出成分を含有する抽出液を得る。有機溶剤としては、ゴム組成物の抽出に通常使用される溶媒、具体的には例えばクロロホルム、1,2-ジクロロエタン、トルエン、アセトン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、2-プロパノール、酢酸エチルなどが挙げられる。これらの中でも、本発明においてはクロロホルムを使用することが好ましい。有機溶剤を使用して、ゴム組成物から抽出成分を含有する抽出液を得る条件は特に限定されるものではないが、後の濃縮工程をより簡易に行う観点から、さらにはより定量精度をより高める観点から、有機溶剤50~200mlに対し、ゴム組成物を0.5~3.0gの割合で抽出工程を行うことが好ましい。また、ゴム組成物を有機溶媒で抽出する際の条件は特に限定されるものではなく、例えばソックスレー抽出法などにより実施可能である。ソックスレーの抽出時間として、4~8時間程度が例示可能である。
【0022】
(ii)濃縮工程
抽出工程の後、抽出液から有機溶剤を留去することにより、抽出成分の濃縮物を得る(濃縮工程)。抽出液を濃縮する方法は限定されるものではなく、例えば抽出液を減圧乾燥することにより、有機溶剤を留去する方法が挙げられる。
【0023】
従来技術である抽出法では、抽出工程および濃縮工程を経て、抽出した成分の量(濃縮物の抽出量)を実際にゴム組成物中に配合された配合量と見做す。一方、本発明に係るゴム組成物中の成分の定量方法では、さらに以下の熱分析工程および定量工程で得た情報に基づき、抽出した成分の量よりもさらに正確に、実際の配合量に近い配合量を導き出すことができる。以下に、熱分析工程および定量工程について説明する。
【0024】
(iii)熱分析工程
熱分析工程では、濃縮物の熱重量分析(Thermogravimetric Analysis(以下、単に「TGA」ともいう)を行って、熱重量曲線を得る。
図1に、有機溶剤としてクロロホルムを使用してゴム組成物を抽出し、得た抽出成分の濃縮物の熱重量分析結果(熱重量曲線)の一例を示す。
図1中、横軸は加熱経過時間(Time(kmin))を示す。右縦軸は熱重量損失(TG(%))を示す。曲線Aは熱重量曲線を示し、加熱経過時間(Time)が0.000のとき熱重量損失(TG)が0.0であり、加熱に伴い徐々に重量損失が進み、加熱経過時間(Time)が0.800を経過したあたりから熱重量損失(TG)が略一定(-99.3%)となっている。内側の左縦軸は加熱温度(Temp(℃))を示す。曲線Bは加熱曲線を示し、加熱経過時間(Time)が0.000のとき約100℃であり、最終的に600℃まで昇温した曲線となっている。外側の左縦軸は時間当たりの熱重量損失(DTG(μg/min))を示す。また、曲線Cは、熱重量曲線(曲線A)の微分曲線を示し、加熱経過時間(Time)が0.400~0.500の間、0.600~0.700の間に2つの極大ピークを有する。
【0025】
本発明においては、定量する成分が酸化することを防止し、より正確に熱重量損失を測定する見地から、熱分析工程を実施する雰囲気が不活性気体雰囲気であることが好ましい。
【0026】
(iv)定量工程
定量工程では、熱分析工程で得られた熱重量曲線から、定量する成分に対応する減量割合を読み取る。本発明において好適には、定量工程において、高温領域での成分の重量減少の割合(β(質量%))を読み取る。以下に、本発明において定量する成分が、熱重量曲線の微分曲線におけるピークトップ温度が250℃以上である不揮発性成分である場合を例に挙げて説明する。熱分析工程で得た熱重量曲線の微分曲線は2つの極大ピークを有するが、そのうち高温側の極大ピークは、不揮発性成分の重量損失が進行していることを示す。一方、低温側の極大ピークは他の低温揮発成分、例えば加硫ゴム中の有機配合剤の重量損失が進行していることを示す。つまり、この図が示す例では、2つの極大ピークの重なり合いを考慮し、286.5℃から441.9℃までに重量損失した割合が、高温領域での不揮発性成分の重量減少の割合(β(質量%))となる。
【0027】
なお、ゴム組成物、特には加硫後のゴム組成物中の成分の定量方法において、濃縮物の熱重量分析を行って熱重量曲線を得る熱分析工程を備える、ゴム組成物中の成分の定量方法は、本発明者らが知り得る限りでは、本発明者らが初めて見出したものである。
【0028】
特に本発明では、濃縮工程においてゴム組成物中の全量を100質量%としたときの濃縮物の抽出量の割合をα(質量%)とし、熱分析工程の後、さらに熱重量曲線を微分することにより高温領域で重量減少する成分を特定し、定量工程において、高温領域での成分の重量減少の割合をβ(質量%)としたとき、ゴム組成物中に配合された成分の配合量の割合γ(質量%)を、下記式(2):
γ=α×β/100 (2)
に基づき算出すると、不揮発性成分の定量性に優れるため好ましい。
【0029】
本発明においてゴム組成物、より好適には加硫後のゴム組成物中に含有される成分であって、定量する成分としては、熱重量曲線の微分曲線におけるピークトップ温度が250℃以上である成分であることが好ましい。定量する成分が、熱重量曲線の微分曲線におけるピークトップ温度が250℃以上である成分である場合、より正確に定量できるため好ましい。このような成分としては、不揮発性成分であると言え、不揮発性成分は炭化水素樹脂であることが好ましい。
【実施例0030】
以下に、この発明の実施例を記載してより具体的に説明する。
【0031】
まず、ゴム組成物として表1に記載の配合比である配合No.1~配合No.7を準備した。表1に記載の各成分の情報は以下のとおりである。
・SBR;商品名「HPR840」、ENEOSマテリアル社製
・BR;商品名「BR730」、ENEOSマテリアル社製
・CB;商品名「ダイヤブラック N339」、三菱ケミカル社製
・シリカ;商品名「ニップシール AQ」、日本シリカ工業社製
・Cp剤;商品名「NXT SILANE」、Momentive Performance Materials社製
・加工助剤;商品名「AFLUX 16」、ランクセス社製
・Wax;商品名「OZOACE-2701」、日本精蝋社製
・ステアリン酸;商品名「ステアリン酸 N-50」、日油社製
・亜鉛華;商品名「酸化亜鉛 2種」、堺化学工業社製
・6PPD;商品名「ノクラック 6C」、大内新興化学工業社製
・TMDQ;商品名「ANTIOXIDANT TMQ」、Kemai Chemical社製
・不揮発性成分(炭化水素樹脂)
(i)C9-C5樹脂(TGA測定時の重量減少開始微分ピークトップ温度(367℃));商品名「ペトロタック 90」、東ソー社製
(ii)テルペン樹脂(TGA測定時の重量減少開始微分ピークトップ温度(360℃));商品名「Sylvatraxx4150」、Kraton Chemical社製
(iii)スチレン樹脂(TGA測定時の重量減少開始微分ピークトップ温度(368℃));商品名「Sylvatraxx4401」、Kraton Chemical社製
・DPG;商品名「ソクシノール D-G」、住友化学工業社製
・CBS;商品名「ノクセラー CZ-G」、大内新興化学工業社製
・硫黄;商品名「油処理150メッシュ粉末硫黄」、鶴見化学工業社製
【0032】
【0033】
表1中、「炭化水素樹脂の実際の配合量(質量%)」は、加硫後のゴム組成物の全量を100質量%としたときの、不揮発性成分(炭化水素樹脂)である「C9-C5樹脂」、「テルペン樹脂」、および「スチレン樹脂」の合計配合量(質量%)である。
【0034】
まず、従来技術である、抽出量に基づく定量方法(
図2中「抽出法」)も基づき、配合No.1~配合No.7中の不揮発性成分(炭化水素樹脂)の配合量を定量した。具体的には、クロロホルム(有機溶剤)を使用して、配合No.1~配合No.7の加硫後のゴム組成物から抽出成分を含有する抽出液を得(抽出工程)、抽出液からクロロホルムを留去することにより、抽出成分の濃縮物を得た(濃縮工程)。抽出成分の濃縮物の量(質量%)に基づき定量した、不揮発性成分(炭化水素樹脂)の配合量を、表1中の「抽出量に基づく定量方法(
図2中「抽出法」)に基づき定量した炭化水素樹脂の配合量の定量結果(質量%)」の欄に示す。
【0035】
次に、本発明に係る定量方法(
図2中「本発明」)に基づき配合No.1~配合No.7中の不揮発性成分(炭化水素樹脂)の配合量を定量した。具体的には、クロロホルム(有機溶剤)を使用して、配合No.1~配合No.7の加硫後のゴム組成物から抽出成分を含有する抽出液を得(抽出工程)、抽出液からクロロホルムを留去することにより、抽出成分の濃縮物を得た(濃縮工程)。抽出成分の濃縮物の量に基づき定量した、不揮発性成分(炭化水素樹脂)の配合量(濃縮物の抽出量の割合)をα(質量%)とした。なお、前記α(質量%)は、前記抽出法に基づき定量した炭化水素樹脂の配合量の定量結果(質量%)と同じである。次に、濃縮物の熱重量分析を行って、熱重量曲線を得(熱分析工程)、熱重量曲線から、定量する成分に対応する減量割合を読み取った(定量工程)。熱分析工程の後、さらに熱重量曲線を微分することにより高温領域で重量減少する成分を特定し、定量工程において、高温領域での成分の重量減少の割合をβ(質量%)とし、α×βにより、不揮発性成分(炭化水素樹脂)の配合量の割合γ(質量%)を求めた。結果を表1中、「本発明に係る定量方法(
図2中「本発明」)に基づき定量した
炭化水素樹脂の配合量の定量結果=γ=α×β/100」の欄に示す。
【0036】
図2に本発明に係る定量方法および従来技術である抽出法に関し、定量結果と実際の配合量との関係を示す。表1および
図2に記載のとおり、抽出法では、配合No.1~配合No.7のゴム組成物の加硫ゴムのいずれでも、炭化水素樹脂の実際の配合量に比して、配合量が多めに定量されていることがわかる。一方、本発明に係る定量方法では、配合No.1~配合No.7のゴム組成物の加硫ゴムのいずれでも、炭化水素樹脂の実際の配合量(質量%)に近い成分量が導き出せており、本発明に係る定量方法が、定量性に優れた加硫後のゴム組成物中の成分の定量方法であることが理解できる。