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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002272
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】試料採取容器
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/04 20060101AFI20241226BHJP
   G01N 33/48 20060101ALN20241226BHJP
【FI】
G01N1/04 H
G01N1/04 J
G01N33/48 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102330
(22)【出願日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】500272347
【氏名又は名称】DICプラスチック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】菊地 久士
(72)【発明者】
【氏名】須崎 正士
【テーマコード(参考)】
2G045
2G052
【Fターム(参考)】
2G045CB04
2G045HA06
2G045HA13
2G045HA14
2G052AA28
2G052AA35
2G052AD12
2G052BA18
2G052CA04
2G052CA16
2G052DA12
2G052DA23
2G052DA27
(57)【要約】
【課題】より多くの試料を定量化して採取できる試料採取容器を提供する。
【解決手段】一面に構成された容器開口15と、容器開口15から入れられた試料を収容試料6として収容する収容部16と、収容試料の一部を押出試料として排出する排出口11と、排出口11を閉塞する容器シール12と、を備える容器本体10と、容器開口15を閉塞する蓋体30であって、排出口11から押出試料を押し出す押出部材が挿入される挿入口31と、挿入口31を閉塞する蓋シール32と、を備えた蓋体30と、を備え、蓋体30は、収容試料の一部を押出試料として区別し収容する筒状部36を備え、筒状部36は、挿入口31から挿入された押出部材が挿入されることで、押出試料が排出口11から排出されるように構成されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に構成された容器開口と、前記容器開口から入れられた試料を収容試料として収容する収容部と、前記収容試料の一部を押出試料として排出する排出口と、前記排出口を閉塞する容器シールと、を備える容器本体と、
前記容器開口を閉塞する蓋体であって、前記排出口から前記押出試料を押し出す押出部材が挿入される挿入口と、前記挿入口を閉塞する蓋シールと、を備えた前記蓋体と、を備え、
前記容器本体及び前記蓋体の何れか一方の部材は、前記収容試料の一部を前記押出試料として区別し収容する筒状部を備え、
前記筒状部は、前記挿入口から挿入された前記押出部材が挿入されることで、前記押出試料が前記排出口から排出されるように構成されている
試料採取容器。
【請求項2】
前記筒状部は、前記蓋体が備え、
前記容器本体は、底壁に立設された、内側に前記排出口が位置するガイドリブを備える
請求項1に記載の試料採取容器。
【請求項3】
前記容器本体は、前記底壁に立設された外側リブを備え、
前記外側リブは、前記ガイドリブよりも外側に、前記ガイドリブよりも背高に構成されている
請求項2に記載の試料採取容器。
【請求項4】
前記筒状部は、前記筒状部内に構成された押出空間と、前記収容部の空間とを繋ぐ貫通部を備える
請求項1に記載の試料採取容器。
【請求項5】
前記容器本体は、前記底壁と、周壁と、を備え、
前記蓋体は、蓋壁と、蓋周壁と、を備え、
前記筒状部の高さは、前記蓋周壁の先端が前記周壁の先端に当接した状態において、前記筒状部の先端が前記ガイドリブの先端に対して離間した状態となる高さである
請求項2に記載の試料採取容器。
【請求項6】
前記筒状部の先端及び前記ガイドリブの先端の少なくとも一方の端部は、前記筒状部の前記ガイドリブの内側への進入をガイドするガイド部を備える
請求項2に記載の試料採取容器。
【請求項7】
前記蓋体は、前記容器本体に対してネジ作用により締め込まれる
請求項1乃至請求項6のうち何れか1項に記載の試料採取容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料採取容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトを含む動物から排泄される糞便等の試料は、検査にあたって、定量的に採取した試料を衛生的に保存及び輸送することが望まれる。例えば、特許文献1には、試料採取容器として、採便器が記載されている。この採便器は、採便棒と、容器本体と、を備えている。採便棒は、一側に把持部を備えているとともに、他側に棒部を備えている。そして、棒部の先端部には、採便部が設けられている。採便部は、貫通孔、溝部等で構成されている。この採便部は、0.2mg乃至0.8mg程度の便を採取できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5424416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、検査において、定量化された、更に多量の試料(例えば20倍~50倍程度)が必要な場合もある。しかしながら、特許文献1のような採便器の構成では、多量の試料を収容することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための試料採取容器は、一面に構成された容器開口と、前記容器開口から入れられた試料を収容試料として収容する収容部と、前記収容試料の一部を押出試料として排出する排出口と、前記排出口を閉塞する容器シールと、を備える容器本体と、前記容器開口を閉塞する蓋体であって、前記排出口から前記押出試料を押し出す押出部材が挿入される挿入口と、前記挿入口を閉塞する蓋シールと、を備えた前記蓋体と、を備える。前記容器本体及び前記蓋体の何れか一方の部材は、前記収容試料の一部を前記押出試料として区別し収容する筒状部を備える。前記筒状部は、前記挿入口から挿入された前記押出部材が挿入されることで、前記押出試料が前記排出口から排出されるように構成されている。
【0006】
上記構成によれば、容器本体に試料を収容してから、蓋体で容器本体の容器開口を閉塞する。この際に、筒状部内には、収容試料の一部である押出試料が収容される。収容試料は、試料採取容器に収容された状態で輸送等される。収容試料を取り出す際には、押出部材が挿入口を通じて筒状部内に挿入される。すると、筒状部内の押出試料は、押出部材によって、排出口から排出される。したがって、押出試料は、筒状部に収容されることで、定量化されたものとなる。
【0007】
上記試料採取容器において、前記筒状部は、前記蓋体が備え、前記容器本体は、底壁に立設された、内側に前記排出口が位置するガイドリブを備える構成としてもよい。上記構成によれば、容器開口を蓋体で閉塞する際に、筒状部がガイドリブによってガイドされることで、先端を円滑に排出口に近接させることができる。
【0008】
上記試料採取容器において、前記容器本体は、前記底壁に立設された外側リブを備え、前記外側リブは、前記ガイドリブよりも外側に、前記ガイドリブよりも背高に構成されていてもよい。上記構成によれば、外側リブがガイドリブより背高であることから、ガイドリブの内側に収容試料が自ずと寄せられ、当該領域で収容試料の量が増加する。したがって、容器開口を蓋体で閉塞する過程で筒状部に収容される押出試料は、筒状部内に隙間なく収容される。これにより、排出口からは、定量化された押出試料を排出できる。
【0009】
上記試料採取容器において、前記筒状部は、前記筒状部内に構成された押出空間と、前記収容部の空間とを繋ぐ貫通部を備える構成としてもよい。上記構成によれば、貫通部は、容器開口を蓋体で閉塞する過程で筒状部に収容試料の一部が他の試料と区別されて押出試料として収容される際に、押し出される筒状部内の空気が外部へ流れる。したがって、押出試料は、筒状部内に隙間なく収容される。これにより、排出口からは、定量化された押出試料を排出できる。
【0010】
上記試料採取容器において、前記容器本体は、前記底壁と、周壁と、を備え、前記蓋体は、蓋壁と、蓋周壁と、を備え、前記筒状部の高さは、前記蓋周壁の先端が前記周壁の先端に当接した状態において、前記筒状部の先端が前記ガイドリブの先端に対して離間した状態となる高さとしてもよい。上記構成によれば、蓋周壁の先端と周壁の先端との位置合わせをしてから容器開口を蓋体で閉塞することができる。すなわち、筒状部とガイドリブの位置がずれている状態で、無理に容器開口を蓋体で閉塞する誤操作を防ぐことができる。
【0011】
上記試料採取容器において、前記筒状部の先端及び前記ガイドリブの先端の少なくとも一方の端部は、前記筒状部の前記ガイドリブの内側への進入をガイドするガイド部を備える構成としてもよい。上記構成によれば、筒状部の先端及びガイドリブの先端の少なくとも一方の端部がガイド部を備えることで、容器開口を蓋体で閉塞する際に、筒状部がガイドリブの内側に進入し易くなる。
【0012】
上記試料採取容器において、前記蓋体は、前記容器本体に対してネジ作用により締め込まれる構成としてもよい。上記構成によれば、容器本体に対して蓋体がねじ作用で締め込まれることで、容器開口をしっかりと閉塞できる。これにより、試料採取容器は、気密性に優れたものとなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、より多くの試料を定量化して採取できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態において、試料採取容器の蓋体側から見た斜視図である。
図2図2は、実施形態において、試料採取容器の容器本体側から見た斜視図である。
図3図3は、実施形態において、試料採取容器の容器本体の断面斜視図である。
図4図4は、実施形態において、試料採取容器の蓋体の断面斜視図である。
図5図5は、実施形態において、容器本体に試料を入れた状態を示す断面図である。
図6図6は、実施形態において、容器本体の容器開口を蓋体で閉塞した状態を示す断面図である。
図7図7は、実施形態において、容器本体に対して蓋体がずれた状態の断面図である。
図8図8は、実施形態において、試料採取容器の挿入口に押出部材を挿入する状態を示す斜視図である。
図9図9は、実施形態において、試料採取容器の挿入口に押出部材を挿入して試料を押し出している状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明が適用された試料採取容器について図面を参照して説明する。
〔全体構成〕
図1及び図2に示すように、試料採取容器1は、例えば動物用の採便容器である。具体的に、試料採取容器1は、牛、豚等の畜産業のために飼養されている産業動物の糞便を試料として採取するための容器である。このような用途で用いる試料採取容器1は、ヒトから排泄される糞便を臨床検査試料として採取し保存するための採便器よりも多量の糞便を収容する容器である。そして、試料採取容器1は、試料を定量化して排出することができる。
【0016】
試料採取容器1は、容器本体10と、蓋体30と、を備えている。容器本体10及び蓋体30の各々は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ABS、アクリル樹脂等の合成樹脂による成形部品である。容器本体10は、底面中央に排出口11を備えている。排出口11は、本実施形態では円形である。排出口11は、試料が排出される開口である。排出口11は、容器シール12によって閉塞されている。容器シール12は、例えばピールフィルムで構成されている。容器シール12は、排出口11よりも大きい閉塞部12aと、ツマミとなるタブ12bと、を備えたプルタブである。
【0017】
なお、容器シール12は、アルミニウム、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の材料をベースとしたフィルム、又はそれらの複合素材フィルムである。なお、容器本体10の内部に臨む面は、試料と接する面であるため、撥水コーティングが施された面である。そして、このフィルムは容器本体にヒートシールにより底壁13の外面に貼り付けられている。なお、容器シール12は、接着剤によって貼り付けてもよい。
【0018】
蓋体30は、上面中央に、挿入口31を備えている。挿入口31は、本実施形態では円形である。挿入口31は、押出部材2が挿入される開口である。挿入口31は、蓋シール32によって閉塞されている。蓋シール32は、押出部材2で容易に開裂可能なピアスフィルムで構成されている。蓋シール32は、アルミニウム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンをベースとしたフィルム、又はそれらの複合素材フィルムである。このフィルムはヒートシールにより蓋体30に貼り付けられている。なお、蓋シール32は、接着剤によって貼り付けてもよい。
【0019】
〔容器本体〕
図3に示すように、容器本体10は、有底筒状の容器である。容器本体10は、底壁13と、周壁14と、を備えている。底壁13は、円板であって、底面を構成する。底壁13は、中央に、貫通孔で構成された排出口11が構成されている。周壁14は、底壁13の外周に立設された円筒壁である。容器本体10は、周壁14の先端が同じ高さで揃っており、円形の容器開口15を構成している。また、底壁13及び周壁14で囲まれた空間は、容器開口15と連続した試料を収容する収容部16を構成している。周壁14の外周面は、フランジ17を備えている。周壁14の外周面であってフランジ17の上側は、螺旋状の突部で構成されたネジ部18を備えている。
【0020】
底壁13の内面において、排出口11の周囲には、ガイドリブ21が設けられている。ガイドリブ21は、環状のリブである。ガイドリブ21で囲まれた空間の底面には、排出口11が位置する。ガイドリブ21の先端は、周壁14の先端より低い高さに位置する。ガイドリブ21の内側の空間には、蓋体30が備える筒状部36が挿入される。ガイドリブ21の内面であって、先端部分は、容器側ガイド部21aを備えている。容器側ガイド部21aは、傾斜面で構成されている。傾斜面は、先端に向う程、肉厚が薄くなるように構成されている。これにより、ガイドリブ21の先端で構成される開口は、容器側ガイド部21aによって下側より先端側が拡径して構成されることで、筒状部36が挿入され易くなる。
【0021】
底壁13の内面において、ガイドリブ21の外側には、外側リブ22を備えている。外側リブ22は、ガイドリブ21に対して離間している。また、外側リブ22は、周壁14に対しても離間している。外側リブ22の先端は、周壁14の先端とガイドリブ21の先端との間に位置する。なお、ガイドリブ21は、外側リブ22に対して内側リブである。外側リブ22は、好ましくは外側リブ22と同心円のリブである。
【0022】
図5に示すように、周壁14における底壁13の内面から先端までの高さを(H1)、ガイドリブ21における底壁13の内面から先端までの高さを(H2)、外側リブ22における底壁13の内面から先端までの高さを(H3)としたとき、
(H2)<(H3)<(H1)
の関係を有している。したがって、収容部16において、周壁14の先端、外側リブ22の先端、ガイドリブ21の先端とを繋ぐと、排出口11の上側が最深部となるすり鉢形状となる。したがって、試料は、排出口11が位置する中央部分ほど試料が多く収容される。
【0023】
〔蓋体〕
図4に示すように、蓋体30は、蓋壁33と、蓋周壁34と、を備えている。蓋壁33は、円板であって、上面を構成する。蓋壁33は、中央に、貫通孔で構成された挿入口31が構成されている。蓋壁33は、容器開口15を閉塞する部分である。蓋周壁34は、蓋壁33の外周に立設された円筒壁である。蓋体30は、蓋周壁34の先端が同じ高さで揃っている。蓋周壁34の内周面は、螺旋状の凹凸部で構成されたネジ形状35を備えている。ネジ形状35は、ネジ部18に対応している。蓋周壁34の先端は、蓋体30が容器開口15を閉塞しネジ作用で締め込まれたとき、フランジ17に近接する。また、蓋体30が容器開口15を閉塞しネジ作用で締め込まれたとき、蓋壁33の内面には、周壁14の先端が近接する。蓋周壁34の外面は、滑り止めとなる凹凸34aが形成されている。周壁14の高さ方向に延びる凹凸であって、周回方向に設けられている。
【0024】
なお、蓋体30は、2回転から3回転程度の回転数で、ネジ作用によって、容器本体10に締め込まれる。ネジ部18及びネジ形状35は、蓋体30の回転操作性の低下を抑えるべく、回転数が2回転から3回転程度の回転数となるように設定されている。
【0025】
蓋壁33の内面において、挿入口31の周囲には、筒状部36が設けられている。筒状部36は、例えば円筒形状を有している。筒状部36の上端は、挿入口31であり、下端は、排出口11と対向する出口である。筒状部36の内部は、試料が充填される押出空間37である。押出空間37内の試料が押出試料であり、押出部材2によって排出口11から押し出される。
【0026】
筒状部36は、先端(下端)から基端(上端)に亘って貫通部としてのスリット38を備えている。スリット38は、直線形状を有しており、相対する位置に複数設けられている。また、スリット38は、周回方向に、互いに平行に複数設けられている。容器開口15を蓋体30で閉塞する過程で収容試料の一部は、筒状部36内に、他の試料と区別されて押出試料として収容される。この際に、スリット38は、押出空間37内の空気が外部に押し出される。これにより、筒状部36内には、押出試料が隙間なく十分充填される。そして、筒状部36の内部には、挿入口31から挿入された押出部材2が挿入される。筒状部36の内径(D3)は、押出部材2が挿入可能な寸法であり、例えば排出口11の直径(D4)及び挿入口31の直径(D5)と同じである(図5参照)。
【0027】
筒状部36の外面であって、先端部分は、蓋側ガイド部36aを備えている。蓋側ガイド部36aは、傾斜面で構成されている。傾斜面は、先端に向う程、肉厚が薄くなるように先細りに構成されている。これにより、筒状部36の先端部分は、蓋側ガイド部36aによって先細り形状となっているので、ガイドリブ21の内側に挿入され易くなる。
【0028】
筒状部36の外径(D1)は、ガイドリブ21の内径(D2)よりも小さい((D1)<(D2))。そして、筒状部36の外周面とガイドリブ21の内周面との間には、隙間39が構成される。容器開口15を蓋体30で閉塞する過程で、筒状部36は、ガイドリブ21の内側に挿入される。この際、ガイドリブ21の内側にある収容試料は、筒状部36の先端に押されながら筒状部36の内外に移動して行く。隙間39は、筒状部36の先端で押された収容試料が筒状部36の基端側に移動する通路となる(図6参照)。
【0029】
蓋壁33の内面から筒状部36の先端までの高さ(H4)は、蓋体30が容器開口15を閉塞し締め込まれた際、底壁13の内面との間に当接せず、若干の隙間が形成される程度の高さである。この隙間は、隙間39と連続する隙間である。すなわち、蓋壁33の内面から筒状部36の先端までの高さ(H4)を、周壁14における底壁13の内面からの高さ(H1)と比較すると、
(H4)<(H1)
となる。
【0030】
なお、蓋壁33の内面から筒状部36の先端までの高さ(H4)を、周壁14における底壁13の内面からの高さ(H1)、ガイドリブ21における底壁13の内面からの高さ(H2)、外側リブ22における底壁13の内面からの高さ(H3)と比較すると、
(H2)<(H3)<(H4)<(H1)
となる。
【0031】
また、容器本体10におけるガイドリブ21の先端から周壁14の先端までの高さ(H5)と、蓋体30における蓋周壁34の先端から筒状部36の先端までの高さ(H6)とを比較すると、
(H6)<(H5)
となる。したがって、容器開口15に対して蓋体30の位置が合っていないとき、すなわち周壁14の先端と蓋周壁34の先端が当接してしまっているとき、筒状部36の先端は、ガイドリブ21の先端に対して非接触となる(図7参照)。
【0032】
〔実施形態の作用〕
〔試料採取時〕
以上のように構成された試料採取容器1は、容器本体10に蓋体30がネジ作用で締め込まれた状態で、試料を採取する使用者は使用する。未使用の試料採取容器1において、容器本体10の排出口11は、容器シール12で閉塞されている。蓋体30の挿入口31も、蓋シール32によって閉塞されている。例えば、産業動物の糞便を試料として採取するときには、容器本体10と蓋体30とを分離する。そして、容器本体10の収容部16には、匙のような採便器具を用いて、容器開口15から収容部16に試料が入れられる。ここでの試料は、水様便のような液状のものではなく、軟便乃至硬便である。
【0033】
図5に示すように、容器本体10に試料が入れるとき、収容試料6は、ガイドリブ21の内側において、底壁13の位置まで入れられる。また、その周囲において、収容試料6は、ガイドリブ21の先端に支持されるとともに、外側リブ22の先端に支持される。収容部16において、収容試料6は、中央から外周に向う程、試料の収容量が減少する。
【0034】
図6に示すように、この後、蓋体30は、筒状部36が容器本体10のガイドリブ21の内側に位置するように容器本体10に締め込まれる。蓋体30が容器本体10に対して完全に締め込まれた状態は、蓋周壁34の先端がフランジ17に当接した状態である。
【0035】
ここで、ガイドリブ21の内側には、多くの収容試料6が位置している。当該領域に位置する収容試料6は、筒状部36の内部に隙間なく収容試料6を収容するのに十分な量である。したがって、収容試料6の一部を押出試料7として筒状部36の内部に隙間なく収容することが可能となる。また、蓋体30が容器本体10に締め込まれる過程で、筒状部36の内部には、順次、収容試料6が収容されて行く。筒状部36の内部に収容試料6が入り込んで行く中で、筒状部36の中の空気は、スリット38を通じて筒状部36の外部に流出する。また、ガイドリブ21の内側にある筒状部36の中に入りきらない余剰試料は、筒状部36の先端に押され、隙間39を通じて筒状部36の基端側(蓋壁33側)に移動する。これにより、収容試料の一部である押出試料7は、筒状部36の内部に隙間なく収容が可能となる。試料採取容器1は、図6の状態で、保存され、検査機関まで輸送される。
【0036】
ここで、試料は、一般に不透明であることが多い。容器本体10は、試料が収容されていることで、ガイドリブ21の位置及び外側リブ22の位置を目視確認することが困難である。図7に示すように、このような状態は、容器開口15に対して蓋体30の位置が合っていない状態であり、かつ周壁14の先端と蓋周壁34の先端が当接してしまっている状態である。このような場合、筒状部36の先端は、ガイドリブ21の先端に対して非接触となる。したがって、筒状部36とガイドリブ21の位置がずれている状態で、無理に容器開口15を蓋体30で閉塞する誤操作を防ぐことができる。
【0037】
仮に、(H6)>(H5)の場合は、ガイドリブ21の先端に筒状部36の先端が当たることになる。この場合、無理に蓋体30が容器本体10に対して押し込まれると、筒状部36の先端は、ガイドリブ21の先端に強い力で押されることになる。その結果、筒状部36の先端及びガイドリブ21の先端の少なくとも何れか破損するおそれが生じてしまう。本実施形態では、このような事象の発生を抑えることができる。
【0038】
〔検査時〕
図8に示すように、検査機関等には、押出部材2が用意されている。押出部材2は、軸部3と、フランジ4と、を備えている。軸部3は、一端3aが挿入口31への挿入端であって、かつ筒状部36の内部にある押出試料7を押し出す押出端である。軸部3の一端3aは、容器シール12を開裂できるように錐体形状を有している。軸部3の他端は、フランジ4が設けられている。軸部3の直径は、筒状部36の内部を挿通可能な直径であり、例えば筒状部36の内径(D2)とほぼ同じである。また、軸部3の基端から先端までの長さは、挿入口31から挿入し排出口11から突出する長さである。例えば、軸部3の長さは、容器本体10に蓋体30が締め込まれた状態において、底壁13の外面から蓋壁33の外面までの高さ(H7)よりも長い(図9参照)。
【0039】
フランジ4は、外径が挿入口31の直径よりも大きい。軸部3が挿入口31を通じて筒状部36に挿入された際のストッパである。フランジ4は、軸部3の挿入端が排出口11より突出したとき、蓋壁33の上面に当接する。このような押出部材2は、手動で押出作業をするとき、単品である。また、検査装置に用いる場合、検査装置には、複数の押出部材2が配設されている。これに対応して、試料採取容器1は、検査装置の支持台に複数支持されている。そして、支持台に支持された複数の試料採取容器1の挿入口31には、同時に押出部材2が挿入される。
【0040】
図9に示すように、検査を行うとき、先ず、排出口11を閉塞している容器シール12は、底壁13から剥離される。そして、押出部材2は、一端3aから蓋シール32に押し当てられ開裂される。連続して、軸部3は、筒状部36の内部に進入する。そして、筒状部36の内部にある押出試料7が排出口11から分析器などの容器に排出される。
【0041】
〔実施形態の効果〕
(1-1)容器本体10に収容試料6を収容してから、蓋体30で容器本体10の容器開口15を閉塞する。この際に、筒状部36の内部には、収容試料6の一部である押出試料7が収容される。収容試料6を取り出す際には、押出部材2が挿入口31を通じて筒状部36の内部に挿入される。すると、筒状部36の内部の押出試料7は、押出部材2によって、排出口11から排出される。したがって、押出試料7は、筒状部36に収容されることで、定量化されたものとなる。
【0042】
(1-2)容器開口15を蓋体30で閉塞する際に、筒状部36がガイドリブ21によってガイドされることで、筒状部36の先端を円滑に排出口11に近接させることができる。
【0043】
(1-3)外側リブ22がガイドリブ21より背高であることから、ガイドリブ21の内側に収容試料6が自ずと寄せられ、当該領域で収容試料6の量が増加する。したがって、容器開口15を蓋体30で閉塞する過程で筒状部36に収容される押出試料7は、筒状部36の内部に隙間なく収容される。これにより、排出口11からは、定量化された押出試料を排出できる。
【0044】
(1-4)スリット38は、容器開口15を蓋体30で閉塞する過程で筒状部36に収容試料6の一部が他の収容試料6と区別されて押出試料7として収容される際に、押し出される筒状部36の内部の空気が外部へ流れる。したがって、押出試料7は、筒状部36の内部に隙間なく収容される。これにより、排出口11からは、定量化された押出試料7を排出できる。
【0045】
(1-5)容器開口15に対して蓋体30の位置が合っていない状態では、周壁14の先端と蓋周壁34の先端が当接しすることで、筒状部36の先端は、ガイドリブ21の先端に対して非接触となる。したがって、筒状部36とガイドリブ21の位置がずれている状態で、無理に容器開口15を蓋体30で閉塞する誤操作を防ぐことができる。
【0046】
(1-6)筒状部36は、蓋側ガイド部36aを備え、ガイドリブ21は、容器側ガイド部21aを備えている。したがって、容器開口15を蓋体30で閉塞する際に、筒状部36がガイドリブ21の内側に進入し易くなる。
【0047】
(1-7)試料採取容器1は、容器本体10に対して蓋体30がネジ作用で締め込まれることで、容器開口15をしっかりと閉塞できる。これにより、試料採取容器1は、気密性に優れたものとなる。
【0048】
〔変形例〕
なお、試料採取容器1は、更に、以下のように適宜変更して実施することもできる。試料採取容器1は、上記実施の形態以外に、例えば以下に示される変形例、及び相互に矛盾しない少なくとも二つの変形例を組み合わせた形態としてもよい。
【0049】
・蓋体30を容器本体10にネジ作用で締め込む場合において、容器本体10に対する蓋体30の回転数は、3回転以上であってもよい。
また、蓋体30は、容器本体10に対してネジ作用で締め込まれるものでなくてもよい。例えば、容器本体10は、フランジ17より上側の部分からネジ部18を省略する。蓋周壁34の内面からもネジ形状35を省略する。そして、フランジ17より上側の筒部分に蓋体30を圧入する構成であってもよい。
【0050】
・筒状部36の先端がガイドリブ21の内側に円滑に進入できるのであれば、容器側ガイド部21a及び蓋側ガイド部36aの何れか一方を省略してもよい。
・筒状部36における、先端(下端)から基端(上端)に亘って形成されるスリット38の本数は、2本に限定されるものではなく、1本でもよいし、また、周回方向に等間隔に3本以上設けられていてもよい。例えば、スリット38は、十字形状をなすように4本設けてもよい。
【0051】
・筒状部36に貫通部を設ける場合、スリット38ではなく、他の形状の貫通部であってもよい。例えば、貫通部としては、円形、三角形、四角形等の多角形の貫通孔であってもよい。
【0052】
・筒状部の高さ(H4)は、蓋周壁34の先端が周壁14の先端に当接した状態において、筒状部36の先端がガイドリブ21の先端に対して離間した状態となる高さでなくてもよい。
【0053】
・容器本体10において、外側リブ22を省略してもよい。例えば、容器本体10の外径が小さい場合は、ガイドリブ21と周壁14との間隔が小さくなることから、外側リブ22を省略することができる。
【0054】
・容器本体10の外径が更に小さい場合は、ガイドリブ21も省略してもよい。容器本体10の直径が小さければ、筒状部36の内部には、収容試料6の一部が押出試料7に収容可能だからである。
【0055】
・挿入口31の形状は、円形に限定されるものではなく、楕円や、三角形、四角形等の多角形であってもよい。また、排出口11の形状も、円形に限定されるものではなく、楕円や、三角形、四角形等の多角形であってもよい。
【0056】
・容器シール12は、容器本体10の内部に臨む面の撥水コーティングを省略してもよい。
容器シール12は、ピールフィルムではなく、ピアスフィルムで構成してもよい。蓋シール32は、ピアスフィルムではなく、ピールフィルムで構成してもよい。容器シール12がピアスフィルムの場合、ピアスフィルムは、押出試料の押圧力で開裂される。
【0057】
・筒状部36は、蓋体30の蓋壁33に設けるのではなく、容器本体10の底壁13が備えるようにしてもよい。この場合、ガイドリブ21が筒状部として機能する。ガイドリブ21は、その内径は、筒状部36の内径のように、押出部材2の軸部3の直径に対応するように設定される。
【0058】
・試料としては、牛、豚の糞便以外に、鶏糞等であってもよい。すなわち、試料は、産業動物の糞便に限定されるものではない。また、産業動物の糞便の場合、試料は、多数の産業動物の糞便が集められた場所で採取されたものであってもよい。更に、試料としては犬、猫等のペットの糞尿でもよいし、ヒトの便であってもよい。更に、試料としては、川底、湖底、海底等に沈殿したヘドロ、養殖魚を養殖するいけすや飼育槽の底に沈殿した排泄物等であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…試料採取容器
2…押出部材
3…軸部
3a…一端
4…フランジ
6…収容試料
7…押出試料
10…容器本体
11…排出口
12…容器シール
13…底壁
14…周壁
15…容器開口
16…収容部
18…ネジ部
21…ガイドリブ
22…外側リブ
30…蓋体
31…挿入口
32…蓋シール
33…蓋壁
34…蓋周壁
36…筒状部
37…押出空間
38…スリット
39…隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9