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特開2025-22750樹脂組成物、歯科材料及びマウスガード
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022750
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】樹脂組成物、歯科材料及びマウスガード
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/00 20060101AFI20250206BHJP
   C08L 23/26 20250101ALI20250206BHJP
   A61K 6/887 20200101ALI20250206BHJP
   A61K 6/833 20200101ALI20250206BHJP
   A63B 71/08 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
C08L23/00
C08L23/26
A61K6/887
A61K6/833
A63B71/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024090852
(22)【出願日】2024-06-04
(31)【優先権主張番号】P 2023125761
(32)【優先日】2023-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】解江 諒平
(72)【発明者】
【氏名】的石 かおり
(72)【発明者】
【氏名】小杉 洋子
【テーマコード(参考)】
4C089
4J002
【Fターム(参考)】
4C089AA20
4C089BA14
4C089BA16
4C089BD19
4C089BE01
4J002BB032
4J002BB051
4J002BB151
4J002BB152
4J002BB171
4J002BB212
4J002DJ006
4J002DL006
4J002EF057
4J002EG027
4J002EG037
4J002EH057
4J002FB076
4J002FD016
4J002FD020
4J002FD050
4J002FD060
4J002FD080
4J002FD090
4J002FD100
4J002FD130
4J002FD140
4J002FD150
4J002FD160
4J002FD170
4J002FD180
4J002FD202
4J002FD207
4J002GB01
4J002GC00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】変色が抑制された樹脂組成物、歯科材料、及びマウスガードを提供する。
【解決手段】α-オレフィンポリマーと、銀及び亜鉛からなる群から選択される少なくとも1つの金属成分が担持された無機化合物と、を含み、37℃におけるショアA硬度が5~90である樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素からなるα-オレフィンポリマーと、銀及び亜鉛からなる群から選択される少なくとも1つの金属成分が担持された無機化合物と、を含み、37℃におけるショアA硬度が5~90である樹脂組成物。
【請求項2】
前記無機化合物は、アルミノケイ酸塩及びリン酸塩ガラスからなる群から選択される1つ以上の化合物を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記無機化合物の含有量は、前記樹脂組成物の全量に対して、0.01質量%~15質量%である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
分散剤をさらに含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記分散剤の含有量は、前記樹脂組成物の全量に対して、0.01質量%~5質量%である、請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記分散剤は、脂肪酸、脂肪酸塩、脂肪酸エステル、変性ポリオレフィン、及びワックス類からなる群から選択される1つ以上の化合物を含む、請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記分散剤が以下の一般式(1)で表される化合物を含む、請求項4に記載の樹脂組成物。
【化1】

一般式(1)中、Rは、炭素数7~22の炭化水素基であり、Rは、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子又は置換基を有してもよい炭化水素基であり、nは1~3であり、
が水素原子又はアルカリ金属原子である場合、nは1であり、
がアルカリ土類金属原子である場合、nは2であり、
が置換基を有してもよい炭化水素基である場合、nは1~3である。
【請求項8】
前記Rは、炭素数12~20のアルキル基である、請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記変性ポリオレフィンを含み、
前記樹脂組成物全体に対する、前記変性ポリオレフィン中の不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸の誘導体に由来する構造の割合が、0.000001質量%~0.25質量%である、請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
歯科材料用である、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
マウスガード作製用である、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む歯科材料。
【請求項13】
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含むマウスガード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂組成物、歯科材料及びマウスガードに関する。
【背景技術】
【0002】
ボクシング、ラグビー、アメリカンフットボールなどの激しい動作を伴うスポーツでは、歯列や口腔内軟組織を保護するため、及び、脳への衝撃を緩和するため、一般にマウスガードと呼ばれる(マウスピースなどとも呼ばれる)保護具が広く用いられている。
【0003】
従来、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)製のマウスガードなどが知られていたが、衝撃吸収性が低い、咬合力が加わることで破損しやすいなどの問題があったため、種々のマウスガードが開発されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位とからなる4-メチル-1-ペンテン・プロピレン共重合体と、熱可塑性樹脂とを含む組成物が、衝撃吸収性に優れ、従来のものよりも薄く、軽量化でき装着感の良いマウスガード用シート及びマウスガード(主に、スポーツ用マウスガード)の製造に利用できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-40136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マウスガード等の歯科用製品においては、抗菌性が求められることがある。
抗菌性を付与するためには、一般的に銀等の抗菌剤を樹脂組成物に加えることが知られている。しかし、抗菌剤を加えることで、樹脂組成物を成形してなる歯科材料が変色する場合がある。
【0007】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、変色が抑制された樹脂組成物、歯科材料、及びマウスガードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段は以下の態様を含む。
<1> 炭化水素からなるα-オレフィンポリマーと、銀及び亜鉛からなる群から選択される少なくとも1つの金属成分が担持された無機化合物と、を含み、37℃におけるショアA硬度が5~90である樹脂組成物。
<2> 前記無機化合物は、アルミノケイ酸塩及びリン酸塩ガラスからなる群から選択される1つ以上の化合物を含む、<1>に記載の樹脂組成物。
<3> 前記無機化合物の含有量は、前記樹脂組成物の全量に対して、0.01質量%~15質量%である、<1>又は<2>に記載の樹脂組成物。
<4> 分散剤をさらに含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<5> 前記分散剤の含有量は、前記樹脂組成物の全量に対して、0.01質量%~5質量%である、<4>に記載の樹脂組成物。
<6> 前記分散剤は、脂肪酸、脂肪酸塩、脂肪酸エステル、変性ポリオレフィン、及びワックス類からなる群から選択される1つ以上の化合物を含む、<4>又は<5>に記載の樹脂組成物。
<7> 前記分散剤が以下の一般式(1)で表される化合物を含む、<4>~<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
【0009】
【化1】
【0010】
一般式(1)中、Rは、炭素数7~22の炭化水素基であり、Rは、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子又は置換基を有してもよい炭化水素基であり、nは1~3であり、
が水素原子又はアルカリ金属原子である場合、nは1であり、
がアルカリ土類金属原子である場合、nは2であり、
が置換基を有してもよい炭化水素基である場合、nは1~3である。
<8> 前記Rは、炭素数12~20のアルキル基である、<7>に記載の樹脂組成物。
<9> 変性ポリオレフィンを含み、
前記樹脂組成物全体に対する、前記変性ポリオレフィン中の不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸の誘導体に由来する構造の割合が、0.000001質量%~0.25質量%である、<4>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<10> 歯科材料用である、<1>~<9>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<11> マウスガード作製用である、<1>~<9>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<12> <1>~<9>のいずれか1つに記載の樹脂組成物を含む歯科材料。
<13> <1>~<9>のいずれか1つに記載の樹脂組成物を含むマウスガード。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、変色が抑制された樹脂組成物、歯科材料、及びマウスガードを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
本開示において、特定の無機化合物は、銀担持ゼオライト、亜鉛担持ゼオライト、銀・亜鉛担持ゼオライト、銀担持ジルコニウム化合物、亜鉛担持ジルコニウム化合物又は銀・亜鉛担持ジルコニウム化合物と読み替えてもよい。
【0013】
〔樹脂組成物〕
本開示の樹脂組成物は、炭化水素からなるα-オレフィンポリマーと、銀及び亜鉛からなる群から選択される少なくとも1つの金属成分が担持された無機化合物(以下、「特定の無機化合物」とも称する。)と、を含み、37℃におけるショアA硬度が5~90であ
る。これにより、樹脂組成物の変色が抑制される。特に、特定の無機化合物を用いることで銀単体を用いた場合と比較して、黒変等の変色が抑制できる。また、特定の無機化合物を用いることで銀単体を用いた場合と比較して、抗菌性効果を同程度以上に維持しやすい。
【0014】
本開示の樹脂組成物の用途は特に限定されない。例えば、歯科材料用、マウスガード作製用などの用途に本開示の樹脂組成物を用いてもよい。
【0015】
本開示の樹脂組成物では、37℃におけるショアA硬度が5~90である。ショアA硬度の値が前述の数値範囲であることで、樹脂組成物の強度及び加工性、マウスガードとした際の噛み心地等に優れる。
ショアA硬度は、樹脂組成物から厚さ4mmの試験片を作製し、当該試験片を用いJIS K6253に準拠して測定される値である。
【0016】
本開示の樹脂組成物では、37℃におけるショアA硬度は、10~80であってもよく、20~70であってもよく、30~60であってもよい。
【0017】
樹脂組成物の強度及び加工性、マウスガードとした際の噛み心地等の観点から、本開示の樹脂組成物では、23℃におけるショアA硬度は、30~100であってもよく、40~90であってもよく、50~80であってもよい。
【0018】
(α-オレフィンポリマー)
本開示の樹脂組成物は、炭化水素からなるα-オレフィンポリマーを含む。炭化水素からなるα-オレフィンポリマーとは、炭素原子と水素原子のみからなるα-オレフィンポリマーを意味する。言い換えると、炭化水素からなるα-オレフィンポリマーとは、炭素原子と水素原子以外の原子で変性されていないα-オレフィンポリマーを意味する。以下、本開示における「炭化水素からなるα-オレフィンポリマー」を単に「α-オレフィンポリマー」とも称する。
【0019】
α-オレフィンポリマーは、エチレンに由来する構成単位、プロピレンに由来する構成単位、炭素数が4以上のオレフィンに由来する構成単位等を含む単独重合体又は共重合体であれば、特に限定されない。
例えば、α-オレフィンポリマーの構成単位となる炭素数が2~7の重合成分としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン等が挙げられ、α-オレフィンポリマーの構成単位となる炭素数が8以上の重合成分としては、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等が挙げられる。
【0020】
α-オレフィンポリマーは、樹脂組成物における37℃におけるショアA硬度を90以下に調整する観点から、α-オレフィン共重合体であることが好ましい。
α-オレフィン共重合体とは、2種以上のα-オレフィン骨格を有する共重合成分が共重合された共重合体を示す。
【0021】
α-オレフィン骨格を有する共重合成分としては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等のα-オレフィンが挙げられる。
【0022】
α-オレフィン共重合体の例としては、エチレンに由来する構成単位を主成分とする共重合体、プロピレンに由来する構成単位を主成分とする共重合体等が挙げられる。α-オレフィン共重合体の具体例としては、エチレン・プロピレン共重合体、プロピレンと4-メチルペンテン-1の共重合体、エチレン・オクテン共重合体等が挙げられる。
α-オレフィン共重合体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0023】
α-オレフィン共重合体は、交互共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体及びランダム共重合体のいずれであってもよい。
【0024】
α-オレフィンポリマーに含まれるα-オレフィン共重合体の含有量は、α-オレフィンポリマー全量に対して、50質量%~100質量%であることが好ましく、70質量%~100質量%であることがより好ましく、90質量%~100質量%であることがさらに好ましい。
【0025】
α-オレフィンポリマーは、樹脂組成物における37℃におけるショアA硬度を90以下に調整する観点から、低密度ポリエチレン等のポリエチレン単独重合体を含まないか、その量が少ないことが好ましい。例えば、ポリエチレン単独重合体の含有量は、α-オレフィンポリマー全量に対して、30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、0質量%であることが特に好ましい。
【0026】
α-オレフィン共重合体の含有量は、樹脂組成物の全量に対して、70質量%~100質量%であることが好ましく、80質量%~100質量%であることがより好ましく、90質量%~100質量%であることがさらに好ましく、95質量%~100質量%であることが特に好ましい。
【0027】
α-オレフィン共重合体は、2種以上のα-オレフィンのみからなる共重合体であってもよい。
樹脂組成物の変色を好適に抑制する観点から、α-オレフィン共重合体は、2種以上のα-オレフィンのみからなる共重合体であることが好ましい。
α-オレフィン共重合体を構成するα-オレフィン以外の重合性モノマーの割合は、α-オレフィン共重合体の全構成単位に対して、20質量%以下であってもよく、10質量%以下であってもよく、0質量%~5質量%であってもよい。
【0028】
α-オレフィン共重合体は、合成品であってもよく、市販品であってもよい。
α-オレフィン共重合体が合成品である場合、α-オレフィン共重合体は、チーグラー・ナッタ系触媒、メタロセン系触媒などの従来公知の触媒の存在下に、モノマーを気相法、バルク法、スラリー法、溶液法などの従来公知の重合法により重合あるいは共重合させることにより調製することができる。
α-オレフィン共重合体の市販品としては、例えば、タフマー(登録商標、三井化学社製)、Vistamaxxシリーズ(エクソンモービルケミカル社製)、Engageシリーズ(ダウ・ケミカル社製)等が挙げられる。
【0029】
α-オレフィンポリマーの重量平均分子量(Mw)は、例えば、50000~1000000であってもよく、80000~800000であることが好ましく、100000~500000であることがより好ましい。本開示において、重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で算出ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるものであり、ポリスチレン換算された質量平均分子量(Mw)を意味する。
【0030】
(特定の無機化合物)
本開示の樹脂組成物は、銀及び亜鉛からなる群から選択される少なくとも1つの金属成分が担持された無機化合物(特定の無機化合物)を含む。特定の無機化合物は、銀及び亜鉛の少なくとも一方を担持した無機化合物であれば特に限定されない。特定の無機化合物は、銀のみが担持された無機化合物であってもよく、亜鉛のみが担持された無機化合物であってもよく、銀と亜鉛のみが担持された無機化合物であってもよく、銀及び亜鉛の少なくとも一方と、銀及び亜鉛以外の成分とが担持された無機化合物であってもよい。
特定の無機化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
銀及び亜鉛の少なくとも一方が担持される無機化合物の形状は特に限定されず、例えば、粒子状であってもよい。
銀及び亜鉛の少なくとも一方が担持される無機化合物の形状は、金属成分の担持性等の観点から、多孔性構造を有する粒子であることが好ましい。
【0032】
銀及び亜鉛の少なくとも一方が担持される無機化合物としては、特に限定されず、例えば、アルミノケイ酸塩(ゼオライト等)、シリカゲル、ケイ酸塩ガラス、リン酸塩ガラス(リン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム等)、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、粘土鉱物、セラミック等が挙げられる。
粘土鉱物としてはカオリン、モンモリロナイト、タルク等が挙げられる。
銀及び亜鉛の少なくとも一方が担持される無機化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
銀及び亜鉛の少なくとも一方が担持される無機化合物に対して銀イオン、亜鉛イオン等をイオン交換反応により担持させることで特定の無機化合物を得ることができる。
【0034】
特定の無機化合物は、抗菌性、金属成分の担持性等の観点から、ケイ素含有化合物及びジルコニウム含有化合物からなる群から選択される1つ以上の化合物を含むことが好ましい。
【0035】
ケイ素含有化合物としては、ケイ素元素を含むものであれば特に限定されず、例えば、アルミノケイ酸塩(ゼオライト等)、シリカゲル、ケイ酸塩ガラス、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等が挙げられる。
中でも、ケイ素含有化合物は、ゼオライトを含むことが好ましく、特定の無機化合物としては、銀担持ゼオライト、亜鉛担持ゼオライト、銀・亜鉛担持ゼオライト等が好ましい。
ゼオライトに含まれるケイ素含有化合物としては、例えば、二酸化ケイ素、アルミノシリケート等が挙げられる。
【0036】
ゼオライト(アルミノケイ酸塩)は、天然ゼオライトであってもよく、合成ゼオライトであってもよい。ゼオライトとしては、具体的には、A型ゼオライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、T型ゼオライト、高シリカゼオライト、ソーダライト、モルデナイト、アナルサイム、クリノプチロライト、チャバサイト、エリオナイト等が挙げられる。
【0037】
ゼオライトは、例えば、以下の式(1)で表される化合物であってもよい。
XM2/nO・Al・YSiO・ZHO・・・(1)
式(1)中、Mは銀、ナトリウム等の元素であり、X、Y及びZは各成分のモル比であり、nはMの原子価である。
【0038】
ジルコニウム含有化合物としては、ジルコニウム元素を含むものであれば特に限定されず、例えば、リン酸ジルコニウム、二酸化ジルコニウム等が挙げられる。
【0039】
銀及び亜鉛の少なくとも一方が担持される無機化合物は、リン酸ジルコニウム、リン酸化物、リン酸カルシウム等のリン化合物を含んでいてもよい。特に、リン化合物は、リン酸塩ガラスであることが好ましい。さらに無機化合物がジルコニウム含有化合物を含むこと(特に、リン酸ジルコニウムを含むこと)が好ましい。
【0040】
特定の無機化合物がジルコニウム含有化合物を含む場合、特定の無機化合物は、銀担持ジルコニウム化合物、亜鉛担持ジルコニウム化合物又は銀・亜鉛担持ジルコニウム化合物を含んでいてもよい。
【0041】
特定の無機化合物は、抗菌性、金属成分の担持性等の観点から、アルミノケイ酸塩及びリン酸塩ガラスからなる群から選択される1つ以上の化合物を含むことが好ましい。
【0042】
特定の無機化合物は、抗菌性に優れ、硫黄成分による変色が抑制される。本開示の樹脂組成物において、特定の無機化合物の含有量が多くなると、例えば、曲げ強度等の物性値が低下するおそれがあり、特定の無機化合物の含有量が少なくなると、変色の抑制効果をより発揮できる。これらの観点では、特定の無機化合物の含有量は少ない方が好ましく、一方で抗菌性を発揮するためには特定の無機化合物の含有量が多い方が好ましい。すなわち、特定の無機化合物がより少量で抗菌性を発揮できることができれば、変色抑制効果を高めつつ、曲げ強度等の物性値の低下を抑制することができる。この観点においては、本開示における特定の無機化合物は、アルミノケイ酸塩(ゼオライト等)が好ましい。
【0043】
特定の無機化合物中の銀量は、0.1質量%~5、0質量%が好ましく、0.3質量%~3.0質量%がより好ましい。また特定の無機化合物中の亜鉛量は、5.0質量%~30質量%が好ましく、10質量%~20質量%がより好ましい。
【0044】
特定の無機化合物が粒子状である場合、当該粒子の体積平均粒子径(D50)は、例えば、0.1μm~20μmであってもよく、0.5μm~15μmであってもよく、1.0μm~12μmであってもよく、3.0μm~12μmであってもよい。
粒子の体積平均粒子径(D50)は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
【0045】
特定の無機化合物の含有量は、抗菌性の観点及び特定の無機化合物の過剰使用抑制の観点から、樹脂組成物の全量に対して、0.01質量%~15質量%であることが好ましく、0.1質量%~15質量%であることがより好ましく、0.5質量%~10質量%であることがさらに好ましく、1質量%~8質量%であることが特に好ましい。
【0046】
特定の無機化合物の含有量は、抗菌性の観点及び特定の無機化合物の過剰使用抑制の観点から、α-オレフィンポリマー100質量部に対して、0.01質量部~20質量部であることが好ましく、0.01質量部~10質量部であることがより好ましく、0.1質量部~8質量部であることがさらに好ましく、0.5質量部~5質量部であることが特に好ましい。
【0047】
(分散剤)
本開示の樹脂組成物は、分散剤をさらに含むことが好ましい。これにより、水分が存在する条件下での経時による樹脂組成物の変色が抑制される傾向にある。
【0048】
分散剤は、脂肪酸、脂肪酸塩、脂肪酸エステル、変性ポリオレフィン及びワックス類からなる群から選択される1つ以上の化合物を含むことが好ましい。
【0049】
脂肪酸としては、炭素数11~23の高級脂肪酸が好ましく、炭素数13~21の高級脂肪酸がより好ましい。脂肪酸は、飽和脂肪酸であってもよく、不飽和脂肪酸であってもよく、樹脂組成物の変色を抑制する観点から、飽和脂肪酸が好ましい。
特に、α-オレフィンポリマーの構成単位となる重合成分に、α-オレフィンポリマーの構成単位となる炭素数が2~7の重合成分が含まれる場合、樹脂組成物の変色を抑制する観点から、分散剤は、飽和脂肪酸が好ましく、あるいは、炭素数11~23の高級脂肪酸が好ましく、炭素数13~21の高級脂肪酸がより好ましい。
他方、α-オレフィンポリマーの構成単位となる重合成分に、α-オレフィンポリマーの構成単位となる炭素数が8以上の重合成分(好ましくは炭素数8~12の重合成分)が含まれる場合、分散剤は、炭素数8~25の高級脂肪酸(飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸のいずれであってもよい)が好ましい。
【0050】
脂肪酸塩としては、脂肪酸のナトリウム塩等の脂肪酸のアルカリ金属塩、脂肪酸のマグネシウム塩、脂肪酸のカルシウム塩等の脂肪酸のアルカリ土類金属塩、脂肪酸の亜鉛塩などが挙げられる。
脂肪酸塩を構成する脂肪酸としては、前述の脂肪酸が挙げられる。
【0051】
脂肪酸エステルとしては、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレン脂肪酸エステル等のポリオキシアルキレン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、前述の脂肪酸が挙げられる。
【0052】
変性ポリオレフィンとしては、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の誘導体、ジアミン、カルボジイミド等により変性されたポリオレフィンが挙げられる。変性ポリオレフィンは、不飽和カルボン酸及び不飽和カルボン酸の誘導体からなる群から選択される1つ以上により変性されたポリオレフィンが好ましい。なお、本開示における変性ポリオレフィンは、上述のα-オレフィンポリマーを含まない。
【0053】
変性ポリオレフィンを構成するポリオレフィンは、エチレンに由来する構成単位、プロピレンに由来する構成単位、炭素数が4以上のオレフィンに由来する構成単位等を含む単独重合体又は共重合体であれば、特に限定されない。変性ポリオレフィンを構成するポリオレフィンは、プロピレンに由来する構成単位を含むことが好ましく、プロピレンとそれ以外のモノマーとのα-オレフィン共重合体であることが好ましい。プロピレンと共重合されるオレフィンとしては、例えば、エチレン、炭素数4~20のα-オレフィンが挙げられ、好ましくは、エチレン及び炭素数4~10のα-オレフィンである。プロピレンとそれ以外のモノマーとのα-オレフィン共重合体のうち、プロピレンに由来する構成単位の含有量は、50モル%以上100モル%未満であることが好ましい。
【0054】
変性ポリオレフィンの製造方法としては、特に限定されず、まずはチーグラー・ナッタ触媒、メタロセン系触媒等の周知の触媒を用いた方法で変性対象となるポリオレフィンを製造し、製造したポリオレフィンに対して、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の誘導体等の変性する原料を用いて、溶液法、溶融混練法等、公知のグラフト重合法により変性ポリオレフィンを製造してもよい。
【0055】
変性ポリオレフィンにおいて変性対象となるα-オレフィン共重合体は、交互共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体及びランダム共重合体のいずれであってもよい。
【0056】
変性ポリオレフィンを変性する不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸の誘導体としては、カルボキシ基を1つ以上有する不飽和化合物、カルボキシ基を有する化合物とアルキルアルコールとのエステル、R-CO-O-CO-R’(R及びR’は、それぞれ独立に炭化水素基である。)で表される構造を有する不飽和化合物、-CO-O-CO-で表される構造を1分子中に1つ以上有する不飽和化合物等が挙げられる。不飽和化合物に含まれる不飽和基としては、例えば、ビニル基、ビニレン基、不飽和環状炭化水素基等が挙げられる。不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸の誘導体は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。不飽和カルボン酸の誘導体は、不飽和であっても飽和であってもよい。不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸の誘導体としては、マレイン酸、ナジック酸等の不飽和ジカルボン酸、これらの無水物等が挙げられる。不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸の誘導体は、不飽和ジカルボン酸、不飽和カルボン酸の無水物が好ましく、マレイン酸、ナジック酸、これらの酸無水物がより好ましく、無水マレイン酸がさらに好ましい。
【0057】
変性ポリオレフィン中の不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸の誘導体に由来する構造の割合は、変性ポリオレフィン全体に対して、0.01質量%~5質量%であることが好ましく、0.05質量%~3.5質量%であることがより好ましい。特に、ポリオレフィンが無水マレイン酸により変性されている場合、無水マレイン酸由来の構造の割合が上記の範囲内であることが好ましい。
本開示において、不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸の誘導体とは、不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸の誘導体の一方、あるいは、不飽和カルボン酸及び不飽和カルボン酸の誘導体の合計を意味する。
【0058】
変性対象となるポリオレフィンは、プロピレン由来の構成単位を50mol%~100mol%含有することが好ましい。
【0059】
ポリオレフィンを不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸の誘導体で変性して変性ポリオレフィンを作製する方法としては、特に限定されず、溶液法、溶融混練法等を用いてもよい。
【0060】
変性ポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)は、50000~1000000であることが好ましく、100000~700000であることがより好ましい。
【0061】
本開示の樹脂組成物が変性ポリオレフィンを含む場合、本開示の樹脂組成物全体に対する、変性ポリオレフィン中の不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸の誘導体に由来する構造の割合は、0.000001質量%~0.25質量%が好ましい。
【0062】
ワックス類としては、ポリオレフィン系ワックス、パラフィン系ワックス等が挙げられる。これらのうち、ポリオレフィン系ワックスが特に好ましい。なお、本開示におけるポリオレフィン系ワックスは、上述のα-オレフィンポリマー、変性ポリオレフィンを含まず、α-オレフィンポリマー及び変性ポリオレフィン以外のポリオレフィンである。
【0063】
ポリオレフィン系ワックスとしては、エチレン単独重合体、エチレンと炭素数が3以上のα-オレフィンとの共重合体、プロピレン単独共重合体及びプロピレンとエチレンまたは炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体等が挙げられる。
【0064】
ポリオレフィン系ワックスの重量平均分子量は、1000~30000であることが好ましく、5000~20000であることがより好ましく、8000~15000であることがさらに好ましい。
【0065】
分散剤は以下の一般式(1)で表される化合物を含むことが好ましい。
【0066】
【化2】
【0067】
一般式(1)中、Rは、炭素数7~22の炭化水素基であり、Rは、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子又は置換基を有してもよい炭化水素基であり、nは1~3であり、
が水素原子又はアルカリ金属原子である場合、nは1であり、
がアルカリ土類金属原子である場合、nは2であり、
が置換基を有してもよい炭化水素基である場合、nは1~3である。
nが2又は3の場合、複数のRは同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0068】
は、炭素数7~22の炭化水素基であり、樹脂組成物の変色を抑制する観点から、炭素数10~20のアルキル基が好ましく、炭素数12~20のアルキル基がより好ましい。特に、α-オレフィンポリマーの構成単位の重合成分に、α-オレフィンポリマーの構成単位となる炭素数が2~7の重合成分が含まれる場合は、樹脂組成物の変色を抑制する観点から、炭素数12~20のアルキル基がより好ましい。
例えば、Rは、炭素数15~17のアルキル基であってもよい。
他方、α-オレフィンポリマーの構成単位の重合成分に、α-オレフィンポリマーの構成単位となる炭素数が8以上の重合成分が含まれる場合は、Rは、炭素数7~24の炭化水素基が好ましく、α-オレフィンポリマーの構成単位となる炭素数が8~12の重合成分が含まれる場合は、Rは、炭素数10~24のアルキル基が好ましい。
【0069】
におけるアルカリ金属原子としては、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子等が挙げられる。
におけるアルカリ土類金属原子としては、マグネシウム原子、カルシウム原子等が挙げられる。
置換基を有してもよい炭化水素基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等の置換基を有する炭化水素基が挙げられる。
置換基を有してもよい炭化水素基としては、ヒドロキシ基を有する炭化水素基から少なくとも1つ以上のヒドロキシ基を除いた残基であってもよく、例えば、グリセリンから1つ~3つのヒドロキシ基を除いた残基であってもよい。
【0070】
一般式(1)で表される化合物としては、例えば、
ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等の脂肪酸、
これら脂肪酸のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などの脂肪酸のアルカリ金属塩、これら脂肪酸のマグネシウム塩、カルシウム塩などの脂肪酸のアルカリ土類金属塩、
これら脂肪酸のグリセリンモノエステル、
これら脂肪酸のグリセリンジエステル、
これら脂肪酸のグリセリントリエステル
などが挙げられる。
【0071】
分散剤の含有量は、樹脂組成物の全量に対して、0.01質量%~5質量%であることが好ましく、0.03質量%~3質量%であることがより好ましく、0.05質量%~1質量%であることがさらに好ましい。
【0072】
(その他の成分)
本開示の樹脂組成物は、α-オレフィンポリマー、特定の無機化合物及び分散剤以外のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、α-オレフィンポリマー以外のポリマー成分、有機フィラー、無機フィラー(特定の無機化合物を除く)等のフィラー、特定の無機化合物以外の抗菌成分、軟化剤、各種耐候安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、核剤、滑剤、顔料、染料、老化防止剤、塩酸吸収剤、無機又は有機の充填剤、有機系又は無機系発泡剤、架橋剤、共架橋剤、架橋助剤、粘着剤、難燃剤、離型剤等の添加剤が挙げられる。
【0073】
〔歯科材料〕
本開示の歯科材料は、前述の本開示の樹脂組成物を含む。歯科材料は、歯科用途に用いられるものであれば特に限定されず、樹脂組成物の成形物、マウスガード用シートなどが挙げられる。
例えば、本開示の樹脂組成物を、押出成形、カレンダー成形、プレス成形、射出成形、真空成形、圧空成形、真空圧空成形等の任意の成形法によりシート状に成形することでマウスガード用シートを製造できる。
【0074】
〔マウスガード〕
本開示のマウスガードは、本開示の樹脂組成物を含む。
本開示のマウスガードは、例えば、本開示の樹脂組成物の成形体からなる本開示のマウスガード用シートを用いて製造できる。
本開示のマウスガードは、材料が本開示の樹脂組成物又はマウスガード用シートである点を除けば、従来のマウスガードと同様の方法により、例えば国際公開第2002/98521号パンフレット、特開2010-131181に記載の方法により製造することができる。より具体的には、前記マウスガード用シートを、軟化するまで加熱し、歯列模型又は顎模型に沿わせてマウスガードを製造する方法、歯列模型又は顎模型を用いて凹型の型を作成し、その中に前記樹脂組成物を注入してマウスガードを製造する方法などにより、マウスガードを製造することができる。
【実施例0075】
以下、本開示の実施例を示すが、本開示は以下の実施例によって制限されるものではない。
【0076】
〔実施例1~26及び比較例1~4〕
実施例1~26及び比較例1~4では、表1に示す配合比(質量部)にて各化合物を混練した樹脂組成物を用い、以下に示すようにして試験片を作製した。
各実施例及び比較例にて使用した各成分は以下の通りである。
-α-オレフィンポリマー-
ポリマー1:エチレン・プロピレン共重合体 (エクソンモービル社製 VISTAMAXX 6202)、重量平均分子量(Mw):207000
ポリマー2:プロピレンと4-メチルペンテン-1の共重合体、重量平均分子量(Mw):390000
ポリマー3:エチレン・オクテン共重合体(ダウ・ケミカル社製 Engage8200)、重量平均分子量(Mw):158000
-無機化合物又は無機材料-
無機化合物1:銀担持リン酸塩ガラス
無機化合物2:銀担持ゼオライト
無機材料:銀
-分散剤-
分散剤1:ステアリン酸
分散剤2:ステアリン酸マグネシウム
分散剤3:ラウリン酸ナトリウム
分散剤4:モノステアリン酸グリセロール
分散剤5:ジステアリン酸グリセロール
分散剤6:ポリオレフィン系ワックス(エチレン単独重合体)、重量平均分子量(Mw):13400
分散剤7:ポリオレフィン系ワックス(エチレン・プロピレン共重合体)、三井化学社製 420P)、重量平均分子量(Mw):14700
分散剤8:変性ホモポリプロピレン(無水マレイン酸に由来する構造の量(グラフト変性量)0.5質量%))
【0077】
(合成例1)
<分散剤6のポリオレフィン系ワックスの合成>
攪拌装置、窒素導入管、コンデンサーを備えた1.5Lステンレス製熱分解装置に、高圧法低密度ポリエチレン(MFR[190℃,2.16kg]=20g/10min,密度917kg/m)200g入れ、充分に窒素置換した。次に、窒素を流入したまま熱分解装置を430℃まで昇温し、ポリエチレンを溶融した後、攪拌を開始した。ポリエチレンの温度が所定温度に達してから75分加熱して熱分解を実施した。その後、熱分解装置を常温まで冷却し分散剤6のポリオレフィン系ワックス(熱分解品)を得た。
【0078】
〔重量平均分子量(Mw)〕
α-オレフィンポリマーの重量平均分子量(Mw)は、液体クロマトグラフ:Waters製ALC/GPC 150-C plus型(示唆屈折計検出器一体型)を用い、カラムとして東ソー株式会社製GMH6-HT×2本及びGMH6-HTL×2本を直列接続し、移動相媒体としてo-ジクロロベンゼンを用い、流速1.0ml/分、140℃で測定した。
得られたクロマトグラムを、公知の方法によって、標準ポリスチレンサンプルを使用した検量線を用いて解析することで、Mwを算出した。1サンプル当たりの測定時間は60分であった。
【0079】
[試験片の作製]
小型混練機(MC15、DSM社製)により、着色評価で使用する試験片の組成に該当する各化合物を混練し押し出すことでストランドを作製した。無機化合物及び分散剤は、それぞれ試験片質量に対し、3質量%及び0.1質量%の割合で混合した。200℃において二軸スクリューを用い回転数100ppmの条件で、混練を3分間行った後、ストランドとして押し出した。
ストランドを水冷ペレタイザー(KM-100H L120、カツミック社製)により裁断し、試験片組成のペレットを作製した。
試験片組成のペレットをシリコン製の型に敷き詰め、マイクロ波成形装置(M150、D-MEC社製)により熱溶融し、プレス機(FP7、モリタ東京製作所製)によりプレスしながら冷却することで試験片を作製した。マイクロ波成型条件は、昇温速度2℃/minで最高到達温度160℃まで昇温し、160℃にて10分間保持した。
試験片作製過程で得られる各組成物(ストランド、ペレット、試験片)は、真空乾燥保管を行うことによって吸湿を抑制した。
【0080】
[ショアA硬度測定]
ショアA硬度(JIS K6253に準拠)の測定では、厚さ4mmの試験片を測定試料として用い、押針接触後15秒後の目盛りを読み取った。
測定は、37℃、室温(23℃)の両方で行った。
その結果、実施例1~26の樹脂組成物の各試験片の37℃におけるショアA硬度は全て30~65の範囲内であった。
また、実施例1~26の樹脂組成物の各試験片の23℃におけるショアA硬度は全て60~80の範囲内であった。
【0081】
[樹脂成型直後の着色評価]
試験片(7cm×7cm×4mm)の試験片作製直後の着色について、分光色差計(SD3000、ミツワフロンテック社製)により評価した。各試験片につき3ヵ所測定し、その平均値を色差ΔEの算出に使用した。色差ΔEの算出方法は以下の通りである。
なお、本試験で用いた無加工試験片とは樹脂組成のみの試験片に該当する。
ΔE=〔(ΔL)+(Δa)+(Δb)1/2
ΔE:無加工試験片と評価試験片との色差
ΔL:無加工試験片のL値(明度)と評価試験片のL値との差
Δa:無加工試験片のa値(赤系から緑系の色の変化)と評価試験片のa値との差
Δb:無加工試験片のb値(黄系から青系の色の変化)と評価試験片のb値との差
上記の方法で算出した色差ΔEの値を使用し、以下の基準で着色を評価した。
A:ΔEが1.0以上8.0未満
B:ΔEが8.0以上15.0未満
C:ΔEが15.0以上25.0未満
結果を表1に示す。
【0082】
[水浸漬時の経時的な着色評価]
試験片(7cm×7cm×4mm)を超純水に浸漬させ、室温にて静置し0日目、30日目に試験片を取り出し、分光色差計(SD3000、ミツワフロンテック社製)により経時的な着色を定量化した。各試験片につき3か所測定し、その平均値を色差ΔEの算出に使用した。色差ΔEの算出方法は前述の[樹脂成型直後の着色評価]に記載の方法と同様である。
また、着色評価も[樹脂成型直後の着色評価]に記載の方法と同様の基準で行った。
結果を表2に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
特定の無機化合物を使用した実施例1~5では、銀を使用した比較例1~4よりも着色評価が良好であった。
さらに、特定の無機化合物を使用した実施例6~26では、30日経過後であっても着色評価が維持されやすく、特に分散剤を使用した実施例6~24及びポリマー3を使用した実施例26では、30日経過後であっても着色評価に変化がみられなかった。