(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022757
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】ガスタービンにおける翼形部の解離及び損傷を防止するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
F01D 5/28 20060101AFI20250206BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20250206BHJP
F04D 29/38 20060101ALI20250206BHJP
C23F 13/02 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
F01D5/28
F01D25/00 Q
F01D25/00 L
F04D29/38 F
C23F13/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024101004
(22)【出願日】2024-06-24
(31)【優先権主張番号】18/358,413
(32)【優先日】2023-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 8, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジュンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ブレズナック、ジェフリー エム.
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー、ジョン シー.
(57)【要約】
【課題】ガスタービンの翼形部の解離及び損傷を防止するためのシステム及び方法
【解決方法】
本願は、ガスタービンの翼形部の解離及び損傷作用を防止及び制限するための交換可能なガルバニック保護アノードシステムを提供し、タービン部品は犠牲材料で覆われている。交換可能なアノードのガルバニック保護層は、アルミニウムなどの犠牲材料を含んでいてもよく、材料は基板に耐食性を提供する。さらに、ガルバニック保護層は、犠牲材料の導電性を高め、交換可能なアノードの耐食性をさらに向上させるための犠牲導電材料インサートを含んでいてもよい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンの腐食及びタービン作用を低減するためのタービン保護システムであって、当該タービン保護システムが、
圧縮機と係合する1以上の翼形部であって、ブレード、プラットフォーム、ダブテール及び基部を備える1以上の翼形部と、
翼形部に取り付けられた1以上のアノードと
を備えており、前記1以上のアノードの少なくとも1つが、
腐食に対するガルバニック保護をもたらすように構成された、アノードと翼形部の間に配置された犠牲材料
を含んでいる、タービン保護システム。
【請求項2】
前記1以上のアノードが、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、リチウム又はこれらの組合せを含む、請求項1に記載のタービン保護システム。
【請求項3】
前記犠牲材料上にコートされた導電性材料をさらに備える、請求項1に記載のタービン保護システム。
【請求項4】
前記導電性材料が、青銅、鉄、真鍮又はこれらの合金を含む、請求項3に記載のタービン保護システム。
【請求項5】
前記1以上のアノードが、1以上の翼形部に離脱可能に取り付けられる、請求項1に記載のタービン保護システム。
【請求項6】
前記アノードがプラットフォームに取り付けられる、請求項1に記載のタービン保護システム。
【請求項7】
前記アノードが基部に取り付けられる、請求項1に記載のタービン保護システム。
【請求項8】
前記犠牲材料が、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム又はこれらの組合せを含む、請求項1に記載のタービン保護システム。
【請求項9】
ガスタービン翼形部の腐食を低減する方法であって、当該方法が、
圧縮機の翼形部の表面に犠牲材料を取り付け、
犠牲材料にアノードを取り付ける
ことを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、ガスタービンエンジンに関するものであり、さらに具体的には、ガスタービンの翼形部の解離及び損傷作用を防止及び制限するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、従来、圧縮機セクションとタービンセクションの2つのセクションで構成される。圧縮機セクションは、空気その他の適切なガスを取り込んで、その体積を圧縮する。タービンセクションは、ガスタービンの圧縮機セクションからの圧縮空気の流れを燃料の流れと混合して、高温の燃焼ガスを発生させる。タービンセクションのタービンは、燃焼器から高温燃焼ガスの流れを受け、ガスからエネルギーを抽出して、圧縮機を駆動し、発電機などの外部負荷に動力を出力する。圧縮機セクションでは、中心シャフトの周りに多数の翼形部が接続されており、中心シャフトの回転によって、圧縮機に引き込まれる周囲空気を翼形部で圧縮することができる。例えば、圧縮機セクションに約19段の圧縮機翼形部セクションが存在することがある。
【0003】
ガスタービンエンジンのアイドリング時又は一定動作していないとき、圧縮機セクションの翼形部、ケーシング及びその他の部品の表面で水が凝縮することがある。こうした凝縮水は通例腐食性元素を含んでおり、水は腐食を促進する電解質として機能する。このように、圧縮機部品上に水及び腐食性元素が溜まり絶えず接触することによって、部品、さらに具体的には翼形部の腐食が開始される。この腐食は、ピットすなわち「孔食」の形態で現れ、圧縮機の全体的気流特性に劇的な影響を与えかねない。これらの腐食ピットの深さは約20mmにもなることが多々あり、破壊面又は破壊線を生じ、解離(つまり、翼形部の全部又は一部が剥離することによる破壊)の可能性が高まりかねない。1枚の翼形部の解離は、1枚又は数枚の他の翼形部の破壊の原因となることが多く、これらの翼形部はガスタービンから放出され、近くの人に怪我をさせるおそれがある。ガスタービンの使用時又は非アイドリング時のガスタービン内の振動は、多くの場合、亀裂進展器として機能し、そのためピットに起因する問題を悪化させかねない。翼形部の解離の深刻さを考えると、これらの翼形部は、それ以上の壊滅的な問題を生じないように、全体として交換しなければならないことが多々ある。
【0004】
凝縮及び/又は腐食性元素に起因する孔食を低減又は解消する従前の試みは、上流吸気に焦点を当てていた。これらの解決策は、概して、翼形部での凝縮水が純水に近くなるように、空気中の不純物を除去するための空気ろ過を伴うものであった。しかし、これらのエアフィルタは高価で寿命が短い。
【0005】
腐食ピットを最小限に抑える別の既存の方法は、翼形部のガルバニック保護である。このガルバニック保護層は、基板を腐食環境から保護するのに役立ち、ガルバニック保護層と鋼基板の間の導電性経路を確保するのに役立つ。かかるガルバニック保護層は、アルミニウム又は他の導電性材料などの犠牲材料で作ることができる。従来、このガルバニック保護層は、個々の翼形部の表面全体に皮膜として塗工されていた。しかし、ガルバニック保護層皮膜は、表面仕上げ自体が皮膜に窪み又はギャップを形成して翼形部の表面を粗くしてしまうおそれがあるので、時間経過とともに表面仕上げを劣化させ、圧縮機の全体的な効率を低下させるおそれがある。さらに、この皮膜を修復するには、各翼形部のあらゆる部分を検査してガルバニック保護層皮膜の損傷の大きさ及び場所を特定する必要があるので、費用及び時間がかかる。
【0006】
そこで、上述の技術的課題の1以上を解決するため、ガスタービン翼形部の表面でのピットの発生を低減又は解消するための改良腐食防止剤が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
ガルバニック保護皮膜による劣化の緩和は、犠牲材料で作られた交換可能なアノードを使用することによって達成できる。これらのアノードは、様々な形状をとることができ、圧縮機の効率低下及び基板の仕上げの低下を伴わずに、タービン部品の特定の場所に配置して、耐食性を向上させることができる。さらに、凝縮水をアノードに適切に導いて効率的な腐食防止システムを作成するため、個々の翼形部並びに全体としての翼形部の各段について、形状、配向及び設計に変更することができる。このガルバニック保護層は、孔食その他腐食に起因するの損傷作用に対するタービン部品の耐性を向上させ、アノードはガルバニック保護層に起因する表面仕上げの劣化を防ぎ、翼形部その他のタービン部品がメンテナンス又は交換までに安全に機能する期間を延ばすことができる。
【0008】
本出願及びその成果としての特許の上記その他の特徴及び改良点については、図面及び特許請求の範囲と併せて以下の詳細な説明を参照することによって当業者には明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
以下、添付の図面を参照して、詳細な説明を記載する。なお、同一の符号は、同一又は同様のものを示すことがある。様々な実施形態は、図面に示すもの以外の構成要素及び/又は部品を利用してもよく、幾つかの構成要素及び/又は部品が様々な実施形態に存在しなくてもよい。図中の構成要素及び/又は部品は、必ずしも縮尺通りではない。本開示全体を通して、文脈に応じて、単数形及び複数形で示す用語は互換的に使用し得る。
【
図1】圧縮機、燃焼器、タービン、外部負荷を含むガスタービンエンジンの概略図。
【
図2】
図1のガスタービンエンジンで使用し得る圧縮機の概略図。
【
図3】
図1のガスタービンエンジンのタービン及び/又は
図2の圧縮機に使用し得る翼形部の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、一般に、腐食及びタービン損傷作用を低減するためのガスタービン及びタービン保護システムに関する。幾つかの例では、タービン保護システムは、圧縮機と係合する1以上の翼形部を含む。本明細書で用いる「翼形部」とは、空気が翼形部の表面を通過するときに揚力を発生させるように構成された空力体である。ガスタービンの圧縮機は、通例、「ロータブレード」と「ステータベーン」の両方の形態で数十枚の圧縮機ブレードを備えており、これらの圧縮機ブレードは、通例、空気を圧縮するための「翼形」部分と、翼形部を圧縮機シャフトに結合するための「ベース」部分とに分離されている。ただし、簡潔のため、本明細書では、「翼形部」という用語は、ロータ又はステータのいずれかの圧縮機翼形部全体を示すために用いられる。ロータブレード及びステータベーンは、圧縮機を通る所望の気流特性に応じて形状が変化し得るが、本明細書に記載の保護システムは、あらゆる形状のロータ又はステータに実装し得る。
【0011】
幾つかの実施形態では、1以上の翼形部は、ブレード、プラットフォーム、ダブテール及び基部を含む。翼形部の「ブレード」は、翼形部が圧縮機の一部として動作しているときに空気を圧縮する特徴的な翼形部分である。翼形部の「基部」又は根元は、通例、湾曲した継手によって特徴付けられ、ブレードがプラットフォームに結合する翼形部の部分を表す。翼形部の「プラットフォーム」は、一般に、翼形部面を横切る空気流路の半径方向内側境界を画成する。圧縮機ディスク上に多数の翼形部を一緒に配置すると、各翼形部のプラットフォームは滑らかな円筒形の表面に近づく。翼形部の「ダブテール」は、翼形部を圧縮機ディスクに接合するように構成され、その名の由来となったダブテール形状は、圧縮機ディスクに翼形部を固定するように構成されており、圧縮機が回転すると、ダブテールは圧縮機ディスク内で高い圧力に付されてしっかりと嵌合する。
【0012】
幾つかの実施形態では、タービン保護システムは、翼形部に取り付けられた1以上のアノードを含む。アノードは、特定のタービン及び/又は翼形部の腐食防止の必要性に応じて、プラットフォーム、基部、ダブテール又はブレードを含む翼形部の任意の適切な部分に取り付けることができる。幾つかの実施形態では、1以上のアノードは、腐食に対するガルバニック保護をもたらすように構成された犠牲材料を含む。犠牲材料は、アノードと翼形部の間に配置し得る。幾つかの実施形態では、アノードは、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、リチウム又はこれらの組合せから形成される。
【0013】
幾つかの実施形態では、犠牲材料は、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム又はそれらの組合せから形成される。特定の理論に束縛されるものではないが、アルミニウム、亜鉛、マグネシウムのような犠牲材料を含めると、翼形部自体ではなく犠牲材料の腐食が促進されると思料される。アノード材料を含むことにより、腐食抑制特性を損なうことなく犠牲材料を大幅に小型化できるという予想外の知見が得られた。例えば、従来の腐食防止技術では、翼形部全体を犠牲材料で皮膜する。アノードを含むことにより、翼形部の空力表面に影響を与えずに、腐食が翼形部ではなく犠牲材料で選択的に起こるようにさらに促進し得る。アノードが翼形部の表面内部に(すなわち、翼形部材料に代えて)組み込まれる実施形態では、アノードは、アノードが埋め込まれた翼形部、プラットフォーム、ダブテール又は他の圧縮機部品の部分と同じ質量を有する。
【0014】
幾つかの実施形態では、タービン保護システムは、犠牲材料とアノードとの間の犠牲材料上にコートされた導電性材料をさらに含む。幾つかの実施形態では、導電性材料は、青銅、鉄、真鍮又はそれらの合金を含む。特定の理論に束縛されるものではないが、犠牲材料に導電性材料を含めると、アノードが犠牲材料の腐食を促進する能力が高まると思料される。
【0015】
幾つかの実施形態では、導電性材料は、接着剤、ネジ又はボルトなどの機械的固定手段の使用を介して取り付けられるか、或いは犠牲材料とともにアノードの一部として製造される。この導電性材料は、犠牲材料と同じ又は異なる厚さ及び/又は形状であってもよい。特定の理論に束縛されるものではないが、犠牲材料とは異なる形状又は異なる厚さの導電性材料を有すると、水を犠牲材料に導く際の効果を高めることができることがあると思料される。幾つかの実施形態では、導電性材料は、犠牲層の上に取り付けられ、チャネル、溝、ギャップ又は穴を有するように成形される。他の実施形態では、導電性材料は、犠牲材料の下に取り付けられる。犠牲層の下に導電性材料を含めると、犠牲層が腐食し始めたときに、導電性材料が凝縮水中の腐食性元素のアノード引力を補うことができるため、腐食防止効果の持続時間が長くなる可能性がある。
【0016】
幾つかの実施形態では、アノードは、翼形部に離脱可能に取り付けられる。離脱可能に取り付けることのできる1以上のアノードでタービン保護システムを形成することによって、翼形部の腐食を低減又は実質的に排除するため、翼形部上の任意の特定の位置に1以上のアノードを追加することができるという予想外の知見が得られた。さらに、アノードは、計画的なダウンタイムの期間など、都合のよいときにいつでも取り外すことができ、犠牲材料を完全に腐食させる必要はなく、アノードがいつでも最適な腐食防止の程度を保持できることを保証する。
【0017】
幾つかの実施形態では、アノードは接着剤を用いて取り付けられる。幾つかの実施形態では、接着剤としては、エポキシ、ポリウレタン、シアノアクリレート、嫌気性接着剤、シリコーン又はアクリル接着剤が挙げられる。例えば、アノードの部分をエポキシで被覆し、アノードの上面がプラットフォームの表面と同じ高さに収まるようにプラットフォームにはめ込む。さらに、幾つかの実施形態では、最初に接着剤を圧縮機部品の表面に塗工することが好ましいことがある。幾つかの他の実施形態では、アノードの一部は、接着剤の塗工をガイドするように構成された溝又はチャネルを有するように設計される。他の実施形態では、接着剤は工業用テープである。例えば、粘着剤は、ポリイミドテープ又は自己融着性シリコーンテープを含んでいてもよい。
【0018】
幾つかの実施形態では、アノードは、溝又はチャネルに接続するノッチ付き突起を介して翼形部又は他の圧縮機部品に取り付けられる。例えば、アノードは、矩形形状を有する小さな突起を備えてもよく、翼形部は、アノード上の突起と相補的な形状を有する空洞内の開口を備えていて、突起を開口に挿入して、確実に接続できる空洞内の二次位置まで、移動、回転又は並進させてもよい。他の実施形態では、突起は、矩形、正方形、角度付き又は台形である。幾つかの実施形態では、アノード上に複数の突起があり、翼形部上に複数の開口及び空洞があり、その結果、すべての突起が開口と整列する。幾つかの実施形態では、様々な開口及び突起は、アノードが対応する開口内に配置し得るように、同じ形状を有する。他の実施形態では、各アノードは、アノードが翼形部上の特定の位置で防食効果を生じさせるように成形及び/又は大きさ決定されるときなど、ちょうど1つの対応する開口部に挿入されるように構成された固有の突起を有する。
【0019】
幾つかの実施形態では、アノードは、ねじ付き部品を介して翼形部又は他の圧縮機部品に取り付けられる。幾つかの実施形態では、アノードは、雄ねじ又は雌ねじ部、平行ねじ、テーパねじ又はマルチスタートねじを含んでおり、翼形部又は他の圧縮機部品は、ねじ山システムの相補的な部分を含む。アノード及び圧縮機部品に螺合システムを含めることにより、システムは、アノードを取り付け及び取り外しのより簡単な方法を提供することができる。幾つかの実施形態では、異なるアノードは、異なるねじタイプ又はねじサイズを有してもよく、ねじ山は、翼形部又は他の圧縮機部品上の特定の位置におけるアノードの取り付けに特異的である。幾つかの実施形態では、ねじ付き部品は、耐振動性ねじである。幾つかの実施形態では、ねじ山部品は、圧縮機部品又はアノードのいずれかのねじ山に塗工される接着剤などのねじゆるみ止め剤と組み合わされる。幾つかの実施形態では、幾つかのアノードは、翼形部に固定する突起/開口手段を有し、一方、幾つかのアノードは、螺合手段を用いて取り付けられる。
【0020】
幾つかの実施形態では、アノードは、磁気接続を使用して翼形部又は他の圧縮機部品に取り付けられる。幾つかの実施形態では、磁気接続は、2以上の永久磁石を含んでおり、磁石としては、ネオジム鉄ホウ素、サマリウムコバルト、アルニコ又はセラミック/フェライト磁石を挙げることができる。幾つかの実施形態では、磁気接続は、1以上の一時的磁石を含む。例えば、軟鉄装置などの一時的磁石を、アノードに取り付けてもよく、翼形部又は他の圧縮機部品に取り付けられた別の一時的、恒久的又は電磁気的磁石と係合してもよい。幾つかの実施形態では、磁気接続は電磁石を含む。幾つかの実施形態では、翼形部又は他の圧縮機部品内に含まれるソレノイドを使用して、磁性部品を含むアノードを取り付けてもよい。
【0021】
幾つかの実施形態では、アノードは、翼形部、プラットフォーム、ダブテール又は他の圧縮機部品の一部となるように機械加工される。翼形部又は他の圧縮機部品の製造工程にアノードの形成及び取り付けを組み込むことにより、アノードの設置が大幅に簡素化し得る。
【0022】
幾つかの実施形態では、アノードは、異なる材料の複数の層から構成される。例えば、アノードは、非犠牲材料からなる基層と、犠牲材料を含む最上層とを含んでいてもよい。基層を含めることにより、アノードは、翼形部又は他の圧縮機部品に、より容易に取り付けることができる。例えば、基層は、アノードが簡単に離脱できるように取り付けられるようにするために、翼形部又はプラットフォーム内で係合するノッチを有するように機械加工してもよい。基層は、接着剤成分、雌ねじポート、雄ねじポート、カーボンプレート又は別の適切な取り付け方法を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、アノード内に異なる犠牲材料の複数の層がある。特定の理論に束縛されるものではないが、異なる犠牲材料の2以上の層を有するアノードは、腐食速度を遅くすることができる可能性があると思料される。例えば、最上層はアルミニウムを含んでいてもよく、最下層はマグネシウムを含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、層は、同一又は異なる厚さ及び/又は形状のものであってもよい。幾つかの実施形態では、アノードの有効性を高めるため導電性材料の層をアノードに追加してもよい。例えば、導電層を、最上層と最下層との間に配置してもよい。別の例では、導電層を、最上層及び最下層の両方の上に配置してもよい。別の例では、導電層を、最上層の上だけに配置してもよい。この導電層は、犠牲材料層と同じ又は異なる厚さ及び/又は形状であってもよい。
【0023】
幾つかの実施形態では、ガスタービンの圧縮機セクションの翼形部、ケーシング、プラットフォーム、タービン又は他の部分は、水をアノードに向けるように成形され又は水をアノードに向けるように構成された形状の特徴を含んでいてもよい。水をアノードに導くように圧縮機セクションの部品を賦形することによって、タービンは、翼形部及び非アノード部品から水をより効果的に遠ざけ、これらの部品が腐食する危険性をさらに低減することができる。例えば、翼形部などの部品は、圧縮機の全体的性能及び有効性に影響を与えないが、凝縮水を1以上のアノードに導くのを促進するように刻まれたチャネルを有していてもよい。これらのチャネルは、翼形部が二次プロセスによって製造された後に追加してもよいし、或いはチャネルは、製造プロセス中に翼形部に機械加工してもよい。幾つかの実施形態では、これらのチャネル又は部品から水を導く他の形態は、異なるアノード配置のために特別に設計し得る。例えば、それぞれが異なるアノードに水を導く異なるチャネルが存在してもよい。幾つかの実施形態では、圧縮機の翼形部段内の異なる翼形部は、異なるチャネルを有する。翼形部段内の異なる翼形部に対して異なる方向に水を導くことにより、チャネルは重力をより適切に使用して水をアノードに導くことができる。上述の通り、タービンのアイドル時は非運転時に、すなわち翼形部が回転していないときに、水が凝縮して腐食が起こるおそれがある。したがって、タービンの非運転時に中心シャフトから水平に角度が付いた翼形部は、水をプラットフォームのアノードに向かって斜めに向けるチャネルを使用する場合があるが、中心シャフトから下向きに角度が付けられている翼形部は、翼形部の先端のアノードに向かって水を下向きに向けるチャネルを使用できる。
【0024】
幾つかの実施形態では、アノードは、翼形部、ダブテール、プラットフォーム又は他の圧縮機部品の特定の部分に収まるサイズ及び形状とし得る。例えば、アノードは、円形、長方形、台形、正方形、三角形、ひし形又は同等の形状である上面を有してもよい。アノードを様々な形状とサイズにすることで、各部品の形状、角度、位置及びサイズが異なるため、アノードを様々な圧縮機部品により効果的に取り付けることができる。幾つかの実施形態では、アノードは、プラットフォームの曲率に合致するために、複数のレベルの仰角を有する。幾つかの実施形態では、アノードは、溝、チャネル又は他の表面設計を有する。アノードの表面にテクスチャを含めることによって、アノードは、犠牲材料がより容易に、より正確なパターンで腐食するので、幾つかの実施形態では有効性を高め得る。
【0025】
幾つかの実施形態では、アノードは翼形部の先端に取り付けられる。翼形部の先端にアノードを含めることで、翼形部は重力の影響を利用して水をアノードに導くことができる。アイドリング時又はシャットダウン時、一部の翼形部は中心シャフトから下向きであり、それゆえ、幾つかの実施形態では、翼形部の先端にアノードを有することが好ましい。
【0026】
幾つかの実施形態では、翼形部、プラットフォーム、ダブテール又は他の圧縮機部品の異なる位置に取り付けられた複数のアノードがある。複数のアノード位置を含めることにより、アノードは、翼形部又は部品上の水をより効果的に犠牲材料に向けることができる。さらに、場合によっては、ガスタービンがアイドリング又は停止しているときに、翼形部が中心シャフトから離れた異なる方向を異なる時間に指し示すことがある。したがって、水が近接及び方向に基づいてより好ましいアノードに向けられるように、翼形部又は他の圧縮機部品に沿った異なる位置にアノードを有することが好ましい場合がある。
【0027】
幾つかの実施形態では、アノードは、圧縮機のケーシングの内側に取り付けられている。一部の圧縮機には、ケーシングと常に接触している翼形部が含まれているか、翼形部とケーシングの間の間隔が十分に小さく、水がブレードの先端からアノードに接触する。特に理論に束縛されるものではないが、圧縮機のケーシング内部にアノードを取り付けることで、凝縮水が翼形部の先端に溜まったり、翼形部の先端から圧縮機のケーシング内部に移動したりする場合に、より効率的な腐食防止が可能になると思料される。
【0028】
以下、図面を参照するが、図面を通して同様の部材には同様の符号を付した。
図1は、本発明で使用し得るガスタービンエンジン100の概略図を示す。ガスタービンエンジン100は圧縮機102を含む。圧縮機102は、流入する空気104の流れを圧縮する。圧縮機102は、圧縮空気104の流れを複数の燃焼器缶106に送る。燃焼器缶106は、空気104の圧縮流と燃料108の加圧流とを混合し、混合気に点火して高温の燃焼ガス110の流れを生じる。燃焼器缶106は1個しか示していないが、ガスタービンエンジン100は、周方向配列などに配置された任意の数の燃焼器缶106を含んでいてもよい。或いは、燃焼器106は、アニュラ型燃焼器であってもよい。燃焼ガス110の流れは、次いでタービン112に送られる。燃焼ガス110の流れはタービン112を駆動して機械的仕事を生じる。タービン112で発生する機械的仕事は、ロータシャフト114を介して圧縮機102及び発電機などの外部負荷116を駆動する。
【0029】
ガスタービンエンジン100は、天然ガス、各種の合成ガス、液体燃料及び/又は他の種類の燃料及びそれらのブレンドを使用し得る。ガスタービンエンジン100は、例えば限定されるものではないが、7シリーズ又は9シリーズのヘビーデューティガスタービンエンジンなどを始めとして、General Electric社(米国ニューヨーク州スケネクタディ)から提供される多種多様なガスタービンエンジンのいずれであってもよく、単純サイクル又はコンバインドサイクル発電システムの一部であってもよい。ガスタービンエンジン100は、異なる構成のものであってもよく、他の種類の部品を使用してもよい。他のタイプのガスタービンエンジンも本発明で使用し得る。複数のガスタービンエンジン、他のタイプのタービン及び他のタイプの発電設備も本発明で一緒に使用し得る。
【0030】
図2は、圧縮機200の一例を示す。圧縮機200は、ロータ/ステータ段とも呼ばれる多数の圧縮機段を含んでおり、軸流圧縮機流路202が通っている。ロータ段及びステータ段の正確な数は、エンジニアリング設計の選択の問題であり、図に示す段数よりも多くても少なくてもよい。任意の数のロータ及びステータ段を設けれことができる。
【0031】
圧縮機200の各段は、ロータホイール206に取り付けられた多数の周方向に離間した多数のロータブレード204と、静止圧縮機ケース210に取り付けられた多数の周方向に離間したステータベーン208とを含むことができる。ロータホイール206の各々は、後方ドライブシャフト212に取り付けてもよく、後方ドライブシャフト212は、エンジンのタービンセクションに接続し得る。ロータブレード及びステータベーンが、圧縮機200の流路202内に存在し得る。圧縮機流路202を通る空気流の方向は、
図2の略左から右に流れる。本願では、他の部品及び他の構成も使用し得る。
【0032】
圧縮機のロータブレード204は、空気流に運動エネルギーを与えて、所望の圧力上昇をもたらす。ロータブレード204の直ぐ後に、圧縮機ステータベーン208の段があってもよい。ただし、一部の設計では、ステータベーンがロータブレードの前にある場合がある。ロータブレード及びステータベーンの両方が空気流を回転させ、空気流速度を遅くし(それぞれの翼形部の基準フレームで)、空気流の静圧を上昇させる。通例、軸流圧縮機には、複数のロータ/ステータステージが配置され、所望の吐出量と入口圧力の比率を達成する。各ロータブレード及びステータベーンは、本明細書に記載されるような翼形部を含んでおり、これらの翼形部は、しばしば「根元」、「基部」又は「ダブテール」として知られる適切な取付け構成によって、ロータホイール又はステータケースに固定することができる。加えて、圧縮機200はまた、入口案内翼(IGV)214、可変ステータベーン(VSV)216及び出口又は排気案内翼(EGV)218を含んでいてもよい。これらのブレード及びベーンのすべては、圧縮機流路202を通過する媒体(例えば、空気)に作用する翼形部を有する。したがって、
図2に記載のブレード及びベーンのすべての翼形部は、湿気や腐食の結果として孔食の影響を受けやすい場合がある。本願では、他の部品及び他の構成も使用し得る。
【0033】
図3は、ロータブレード、ステータベーン、可変ステータベーン及び/又は出口又は排気案内翼のうちの1以上において
図2の圧縮機に組み込まれ得る例示的なロータブレード又は翼形部300を示す。翼形部300は、軸方向前方の前縁302から軸方向後方の後縁304まで及び半径方向内側の基部又は根元306から半径方向外側の先端308まで延在している。翼形部300は、ガス経路の半径方向内側境界を画成するプラットフォーム310を含む。翼形部300は、ダブテール312も含む。図示した翼形部300は、プラットフォーム310上に位置するアノード314、並びにダブテール312上のアノード314も含む。
【0034】
本明細書に記載の方法及び装置の変形及び変形は、前述の詳細な説明から当業者には明らかであろう。かかる変形及び変形は、添付の特許請求の範囲内に収まることを意図している。上記は、本出願の特定の実施形態にのみ関係し、多数の変更及び修正が、本開示の一般的な精神及び範囲から逸脱することなく、当業者によって本明細書で行われ得ることは明らかである。
【0035】
本開示の具体的な実施形態が記載されてきたが、他の多くの変更例及び代替的な実施形態が本開示の範囲内である。例えば、特定のデバイス又は部品に関して説明された機能性のいずれも、別のデバイス又は部品によって実行してもよい。さらに、特定のデバイス特性が説明されている間、開示の実施形態は、多数の他のデバイス特性に関係し得る。さらに、実施形態は、構造的特徴及び/又は方法論的行為に特有の言語で説明されているが、開示は、必ずしも説明された特定の特徴又は行為に限定されるものではないことを理解されたい。むしろ、特定の特徴及び行為は、実施形態を実施する例示的な形態として開示される。とりわけ、「できる」、「できた」、「かもしれない」又は「してもよい」などの条件付き言語は、特に別段の記載がない限り又は使用される文脈内で別様に理解されない限り、一般に、特定の実施形態は、特定の特徴、要素及び/又はステップを含んでいてもよいが、他の実施形態は含み得ないことを伝えることを意図している。したがって、かかる条件付き言語は、一般に、特徴、要素及び/又はステップが、1以上の実施形態に何らかの形で必要とされることを暗示することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0036】
100 ガスタービンエンジン
102 圧縮機
104 空気
106 燃焼器
108 燃料
110 燃焼ガス
112 タービン
114 ロータシャフト
116 外部負荷
300 翼形部
302 前縁
304 後縁
306 基部
308 先端
310 プラットフォーム
312 ダブテール
314 アノード
【外国語明細書】