(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022792
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】トレッド用ゴム組成物及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20250206BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20250206BHJP
C08L 45/00 20060101ALI20250206BHJP
C08L 93/04 20060101ALI20250206BHJP
C08L 15/00 20060101ALI20250206BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K3/04
C08L45/00
C08L93/04
C08L15/00
B60C1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024120409
(22)【出願日】2024-07-25
(31)【優先権主張番号】P 2023126556
(32)【優先日】2023-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】額賀 英幸
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131AA03
3D131AA04
3D131AA05
3D131AA06
3D131AA07
3D131AA08
3D131AA09
3D131AA11
3D131AA12
3D131AA14
3D131AA19
3D131BB01
3D131BB03
3D131BB05
3D131BB10
3D131BC02
3D131BC08
3D131BC33
4J002AC011
4J002AC112
4J002AC113
4J002AF024
4J002BK004
4J002DA036
4J002DJ017
4J002FD016
4J002FD017
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】耐摩耗性と低転がり抵抗性とのバランス、及び、サステナブル材料の比率に優れたトレッド用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】上記課題を解決するべく、本発明は、ゴム成分と、樹脂と、カーボンブラックと、を含むトレッド用ゴム組成物であって、前記樹脂は、テルペン系樹脂及びロジン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含有し、前記カーボンブラックは、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド吸着比表面積(CTAB)が130m2/g以上、ヨウ素吸着量(IA)(mg/g)に対する前記CTAB(m2/g)の比(CTAB/IA)が0.92以上1.06以下、且つ、水素放出量が3500質量ppm以上4800質量ppm以下であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分と、樹脂と、カーボンブラックと、を含むトレッド用ゴム組成物であって、
前記樹脂は、テルペン系樹脂及びロジン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含有し、
前記カーボンブラックは、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド吸着比表面積(CTAB)が130m2/g以上、ヨウ素吸着量(IA)(mg/g)に対する前記CTAB(m2/g)の比(CTAB/IA)が0.92以上1.06以下、且つ、水素放出量が3500質量ppm以上4800質量ppm以下であることを特徴とする、トレッド用ゴム組成物。
【請求項2】
前記樹脂の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して0.5~20質量部であることを特徴とする、請求項1に記載のトレッド用ゴム組成物。
【請求項3】
前記ゴム成分が、イソプレン骨格ゴムを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のトレッド用ゴム組成物。
【請求項4】
前記カーボンブラックのCTABが、135m2/g以上150m2/g以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のトレッド用ゴム組成物。
【請求項5】
前記ゴム成分が、ブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムからなる群から選択される少なくとも一種をさらに含有することを特徴とする、請求項3に記載のトレッド用ゴム組成物。
【請求項6】
前記ブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムからなる群から選択される少なくとも一種が、変性されていることを特徴とする、請求項5に記載のトレッド用ゴム組成物。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のトレッド用ゴム組成物を含むことを特徴とする、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッド用ゴム組成物及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、空気入りタイヤは、複数の性能を同時に満たし得る高い性能を有することが要求される。なかでも、トレッドのようなタイヤ用部材には、タイヤの転がり抵抗を抑えつつ、耐摩耗性等に優れることが強く望まれる。ただし、これらの性質は二律背反の関係にあることから、現在まで多くの試行錯誤が行われている。
例えば、タイヤのトレッドに適用するゴム組成物(以下、「トレッド用ゴム組成物」という。)においては、補強用充填剤の一つとしてカーボンブラックが用いられることが多いが、一般にカーボンブラックの含有量を増加させると、タイヤの補強性が高まるため、耐摩耗性を向上できるものの、タイヤの転がり抵抗は悪化する傾向にある。
【0003】
そのため、耐摩耗性と低転がり抵抗との両立を目的として、例えば特許文献1には、ジエン系ゴムと、シリカ及びカーボンブラックからなるシリカリッチの補強剤とを含むゴム組成物に、所定量のポリスチレン-ビニルイソプレントリブロック共重合体を配合する技術が開示されている。
また、特許文献2には、所定の変性剤で変性されてなる比較的高シス含量のブタジエン系重合体と、窒素吸着比表面積が100m2/gを超えるカーボンブラックとを組み合わせる技術が開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2の技術については、いずれも耐摩耗性と低転がり抵抗性との高度なバランスの点、特に、低転がり抵抗性を良好に保持する点で、改良の余地があった。
【0005】
さらに、昨今、社会の持続可能性(サステナビリティ)の観点から、タイヤに使用される各種部材についても、生物資源(バイオマス資源)由来の材料や、再生資源(リサイクル資源)由来の材料といった、所謂、サステナブル材料を使用することも求められており、サステナブル材料の使用率(以下、「サステナブル材料の比率」と呼ぶことがある。)を高めるための技術の開発も望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-010781号公報
【特許文献2】特開2011-219612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そのため、本発明は、耐摩耗性と低転がり抵抗性とのバランス、及び、サステナブル材料の比率に優れたトレッド用ゴム組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、耐摩耗性と低転がり抵抗性とのバランス、及び、サステナブル材料の比率に優れたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ゴム成分と、樹脂と、カーボンブラックと、を含むトレッド用ゴム組成物について、上記課題を解決するべく鋭意研究を行った。そして、テルペン系樹脂及びロジン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を特定量含有させることによって、ゴム組成物について、現在使用されている化石資源由来の材料をサステナブル材料へ置き換えた場合でも、優れた低転がり抵抗性を実現できること、さらに、カーボンブラックについて、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド吸着比表面積(CTAB)とヨウ素吸着量(IA)の比率や水素放出量の適正化を図ることによって、耐摩耗性と低転がり抵抗性とのバランスをより高めることができることを見出した。
【0009】
即ち、本発明の要旨構成は、以下の通りである。
[1]ゴム成分と、樹脂と、カーボンブラックと、を含むトレッド用ゴム組成物であって、
前記樹脂は、テルペン系樹脂及びロジン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含有し、
前記カーボンブラックは、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド吸着比表面積(CTAB)が130m2/g以上、ヨウ素吸着量(IA)(mg/g)に対する前記CTAB(m2/g)の比(CTAB/IA)が0.92以上1.06以下、且つ、水素放出量が3500質量ppm以上4800質量ppm以下であることを特徴とする、トレッド用ゴム組成物。
上記[1]に記載の本発明のトレッド用ゴム組成物は、耐摩耗性と低転がり抵抗性とのバランス、及び、サステナブル材料の比率を向上させることが可能である。
【0010】
[2]前記樹脂の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して0.5~20質量部であることを特徴とする、[1]に記載のトレッド用ゴム組成物。
上記[2]に記載の本発明のトレッド用ゴム組成物は、耐摩耗性と低転がり抵抗性とのバランスをより高めることが可能である。
【0011】
[3]前記ゴム成分が、イソプレン骨格ゴムを含むことを特徴とする、[1]又は[2]に記載のトレッド用ゴム組成物。
上記[3]に記載の本発明のトレッド用ゴム組成物は、耐摩耗性と低転がり抵抗性とのバランスをより高めることが可能である。
【0012】
[4]前記カーボンブラックのCTABが、135m2/g以上150m2/g以下であることを特徴とする、[1]~[3]のいずれかに記載のトレッド用ゴム組成物。
上記[4]に記載の本発明のトレッド用ゴム組成物は、耐摩耗性と低転がり抵抗性とのバランスをより高めることが可能である。
【0013】
[5]前記ゴム成分が、ブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムからなる群から選択される少なくとも一種をさらに含有することを特徴とする、[3]に記載のトレッド用ゴム組成物。
上記[5]に記載の本発明のトレッド用ゴム組成物は、耐摩耗性と低転がり抵抗性とのバランスをより高めることが可能である。
【0014】
[6]前記ブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムからなる群から選択される少なくとも一種が、変性されていることを特徴とする、[5]に記載のトレッド用ゴム組成物。
上記[5]に記載の本発明のトレッド用ゴム組成物は、耐摩耗性と低転がり抵抗性とのバランスをより高めることが可能である。
【0015】
[7][1]~[6]のいずれかに記載のトレッド用ゴム組成物を含むことを特徴とする、タイヤ。
上記[7]に記載の本発明のタイヤは、耐摩耗性と低転がり抵抗性とのバランス、及び、サステナブル材料の比率に優れる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、耐摩耗性と低転がり抵抗性とのバランス、及び、サステナブル材料の比率に優れたトレッド用ゴム組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、耐摩耗性と低転がり抵抗性とのバランス、及び、サステナブル材料の比率に優れたタイヤを提供することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。
なお、本明細書に記載されている化合物は、部分的に、又は全てが化石資源由来であってもよく、植物資源等の生物資源由来であってもよく、使用済タイヤ等の再生資源由来であってもよい。また、化石資源、生物資源、再生資源のいずれか2つ以上の混合物由来であってもよい。
【0018】
また、本明細書において、「サステナブル材料の比率」とは、対象とする材料中の、生物資源(バイオマス資源)由来の成分と、再生資源(リサイクル資源)由来の成分と、の総質量割合である。
【0019】
本明細書において、前記生物資源(バイオマス資源)とは、生物由来のカーボンニュートラルな有機資源を指し、例えば、デンプンやセルロース等の形で蓄えられたもの、植物を食べて成育する動物の体や、植物や動物を加工して得た製品等が包含され、化石資源(石油、石炭、天然ガス等)を除く資源である。該生物資源は、可食であってもよいし、非可食であってもよいが、食料と競合せず、また、資源の有効利用の観点からは、非可食であることが好ましい。
【0020】
前記生物資源の具体例としては、例えば、セルロース系作物(パルプ、ケナフ、麦藁、稲藁、古紙、製紙残渣等)、木材、木炭、堆肥、生ゴミ、植物油カス、水産物残渣、家畜排泄物、食品廃棄物、排水汚泥、天然ゴム、綿花、油脂(パーム油、ヒマシ油、綿実油、大豆油、アマニ油、菜種油、ヤシ油、落花生油、トール油、コーン油、コメ油、紅花油、ゴマ油、オリーブ油、向日葵油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油、ココナッツ油等)、炭水化物系作物(トウモロコシ、小麦、米、籾殻、米ぬか、古米、イモ類、そば、キャッサバ、サゴヤシ、サトウキビ等)、バガス(即ち、サトウキビの搾汁後の残渣)、大豆、おから、精油(松根油、オレンジ油、ユーカリ油等)、パルプ黒液、藻類等が挙げられる。前記生物資源としては、これらを処理したもの(即ち、生物資源由来物質)を利用することもできる。処理方法としては、例えば、微生物、植物、動物、及びこれらの組織培養体等の働きを利用した生物学的処理方法;酸、アルカリ、触媒、熱エネルギー、光エネルギー等を利用した化学的処理方法;微細化、圧縮、マイクロ波処理、電磁波処理等の物理的処理方法;等が挙げられる。また、前記生物資源としては、前記生物資源や前記処理を行った生物資源から、抽出、精製したもの(即ち、生物資源由来物質)を利用することもできる。例えば、前記生物資源から精製した糖類、タンパク質、アミノ酸、脂肪酸、脂肪酸エステル等を利用することもできる。前記糖類としては、生物資源由来の、スクロース、グルコース、トレハロース、フルクトース、ラクトース、ガラクトース、キシロース、アロース、タロース、グロース、アルトロース、マンノース、イドース、アラビノース、アピオース、マルトース、セルロース、デンプン、キチン等が挙げられる。前記タンパク質としては、生物資源由来で、アミノ酸(好ましくはL-アミノ酸)が連結してできた化合物が挙げられ、ジペプチド等のオリゴペプチドも包含される。前記アミノ酸としては、生物資源由来の、バリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニン、リジン、アスパラギン、グルタミン、フェニルアラニン等が挙げられ、これらの中でも、バリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニン、フェニルアラニンが好ましい。該アミノ酸は、L-アミノ酸でも、D-アミノ酸でもよいが、天然における存在量が多く、入手容易性の観点から、L-アミノ酸が好ましい。前記脂肪酸としては、生物資源由来の、酪酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。前記脂肪酸エステルとしては、植物油、動物油、生物資源由来の油脂の改質物等が挙げられる。これら生物資源には、種々の材料、不純物が混入していてもよい。
【0021】
本明細書において、前記再生資源(リサイクル資源)とは、一度使用され、又は使用されずに収集され、若しくは廃棄された製品を再生(リサイクル)して得た資源を指す。例えば、再生資源としては、使用済タイヤ等の使用済ゴム製品を再生(リサイクル)して得た資源等が挙げられる。
【0022】
なお、再生資源(リサイクル資源)由来の素材を入手する手段として、回収されたタイヤなどのゴム製品について、「解体・ダウンサイジング」の工程が実施されてよく、また本実施形態のゴム組成物を用いて製造されたタイヤなどのゴム製品について、さらに「解体・ダウンサイジング」の工程が実施されてもよい。
解体・ダウンサイジングは、タイヤ等のゴム製品を破砕し、材料毎に分離する一連の工程である。解体・ダウンサイジングは、さらに「分離」、「切断」、「はつり」、「破砕」、「粉砕」の工程を、この順に実施してよい。
分離は、ゴム製品を材料(ゴムと金属など)毎に分離する工程である。切断は、ゴム製品を部位(トレッドとサイドウォールなど)毎に断片に切断する工程である。はつりは、ゴム製品を削る又は穴をあける工程である。破砕は、ゴム製品を数インチレベルのチップ状に破砕する工程である。粉砕は、ゴム製品を顆粒状に粉砕する工程である。
【0023】
前記分離の手法としては、引き抜き、誘導加熱、パンチカット、磁気分離、切断分離、機械的分離、冷却、ウォータージェットを挙げることができる。引き抜きは、フックなどを用いてビードをひっかけてタイヤから引き抜く手法である。誘導加熱は、誘導加熱により、ビード等の金属とゴムの接着力を低減し、金属とゴムを分離する手法である。パンチカットは、ビード周辺のタイヤのサイドウォールに一連の重なり合うパンチカット(穴あけ)を行うことで、タイヤからビードを除去する手法である。磁気分離は、磁力を活用してビード等の金属をゴムから分離する手法である。切断分離は、ブレード、カッター刃、ナイフ又は回転フライス盤等を用いて、ビード等の金属とゴムを切断分離する手法である。機械的分離は、分離するのに十分な機械力を加えて、金属とゴムを分離する手法である。冷却は、液体窒素などを用いて冷却し、ゴムを脆化してから分離する手法である。ウォータージェットは、高圧で水を噴射することで、ゴムと金属を分離する手法である。
【0024】
前記切断の手法としては、回転ブレード、ブレード・カッター、L字ナイフ、ウォータージェット、空気圧切断を挙げることができる。回転ブレードは、回転したブレード(刃、丸鋸なども含む)を対象物に当てることで切断する手法である。ブレード・カッターは、ブレード又はカッター刃を用いて切断する手法である。L字ナイフは、L字型のナイフを用いて切断する手法である。ウォータージェットは、高圧で水(砂が含まれた水を含む)を噴射することで切断する手法である。空気圧切断は、圧縮された空気を利用し、切断する手法である。
【0025】
前記はつりの手法としては、パンチカット、ヤスリを挙げることができる。パンチカットは、パンチブレードを用いて穴をあける手法である。ヤスリは、ヤスリを使ってタイヤを削る手法である。
【0026】
前記破砕の手法としては、回転ブレード、ブレード・カッター、切断ホイールを挙げることができる。回転ブレードは、回転したブレード(刃、丸鋸なども含む)を対象物に当てることで破砕する手法である。ブレード・カッターは、ブレード又はカッター刃を用いて破砕する手法である。切断ホイールは、ホイール状の破砕部品に切断刃を配置し、それを対象物に当てることによって破砕する手法である。
【0027】
前記粉砕の手法としては、ローラーミル、ピンミル、ウォータージェットを挙げることができる。ローラーミルは、ローラーの遠心力による圧縮力と、ローラー回転による剪断力が重なった「すりつぶし摩砕作用」により粉砕する手法である。ピンミルは、数十本のピンを向かい合った2枚の円板表面につけ、高速回転させることで粉砕する手法である。ウォータージェットは、高速で水を噴射し、対象物に衝突させることで粉砕する手法である。
【0028】
さらに、前記分離については、分離対象物に応じて、以下の分離手法が選択されてよい。分離対象物が金属の場合に、磁気分離、「引き抜き、剥離、引き裂き」、溶融、圧壊、パンチング、高圧ジェット、切断・切削、沈殿、遠心分級が選択されてよい。磁気分離は、磁力を用いて金属とゴムを分離する。引き抜き、剥離、引き裂きは、ビードワイヤ等の金属を引き抜いて、引きはがして、引き裂いて、ゴムから分離する。溶融は、加振溶融、加熱水蒸気、誘導加熱を含む。加振溶融は、超音波などでタイヤを加振し、溶融させながら金属部材を分離する。加熱水蒸気は、加熱水蒸気を吹き付けてゴムを溶融し、金属コードを分離する。誘導加熱は、電磁誘導によりタイヤを加熱し、金属コードを分離する。圧壊は、ローラーなどでタイヤを圧壊することで、金属コードをゴムから分離する。パンチングは、ビードの周囲のタイヤのサイドウォールに円周パターンで一連の重なり合うパンチングカットを作成することによって、タイヤから金属コードを除去する。高圧ジェットは、水などを用いて高圧で吹き付けて、金属とゴムを分離する。切断・切削は、機械的に切断・切削して金属部分とゴム部分を分離する。沈殿は、160℃を超える温度で数時間~数十時間水溶性ポリオールに入れ、底に沈殿したゴムとワイヤを分離する。遠心分級は、風力分級の一種であり、遠心力を用いて金属とゴムを分離する。
【0029】
前記分離対象物が繊維の場合には、篩分け、振動式スクリーン、溶融、風力分級、遠心分級、重力分級、摩擦、「引き抜き、剥離、引き裂き」、高圧ジェット、静電分離、機械的熱制御、切断・切削が選択されてよい。篩分けは、篩を用いて繊維とゴムを分離する。振動式スクリーンは、篩を上下に振動することで篩分けを行う。溶融は、加熱水蒸気、誘導加熱を含む。加熱水蒸気は、加熱水蒸気を吹き付けてゴムを溶融し、金属コードを分離する。誘導加熱は、電磁誘導によりタイヤを加熱し、金属コードを分離する。風力分級は、粒子の流体力学的挙動(遠心力、重力、慣性力等)の違いを利用して繊維とゴム粉を分離する。遠心分級は、風力分級の一種であり、遠心力を用いて繊維とゴムを分離する。重力分級は、風力分級の一種であり、重力を用いて繊維とゴムを分離する。摩擦は、タイヤに圧力を加えて摩擦を発生させ、繊維から凝集物を形成し、篩などにより凝集物とゴム顆粒を分離する。引き抜き、剥離、引き裂きは、繊維補強部分を引き抜いて、引きはがして、引き裂いて、ゴムから分離する。高圧ジェットは、水などを用いて高圧で吹き付けて、繊維とゴムを分離する。静電分離は、静電気力を用いて粒子を帯電させ、その帯電量又は電界強度の違いにより繊維とゴムを分離する。機械的熱制御は、制御された熱条件下で、繊維強化要素からゴムを分離する。切断・切削は、機械的に切断・切削して繊維部分とゴム部分を分離する。
【0030】
前記分離対象物がシーラントの場合には、固体化後の機械的減摩、加工助剤の使用が選択されてよい。固体化後の機械的減摩は、液体窒素などを用いて固体化した後、機械的減摩によりシーラント層を除去する。加工助剤の使用は、水又は石鹸溶液を用いてシーラント層を除去する。
【0031】
前記分離対象物が樹脂の場合には、圧壊、切断、溶融、剥離が選択されてよい。圧壊は、ローラーなどでタイヤを圧壊することで、樹脂をゴムから分離する。切断は、ゴム層と樹脂の境界面に沿って切断し、樹脂を分離する。溶融は、加振溶融を含む。加振溶融は、超音波などでタイヤを加振し、溶融させながら樹脂を分離する。剥離は、加熱により未発泡ゴムを発泡させ、ゴムと樹脂部材の間に剥離力を作用させ、ゴムから樹脂部材を剥離する。
【0032】
<トレッド用ゴム組成物>
【0033】
本発明のトレッド用ゴム組成物(以下、単に「ゴム組成物」ということもある。)を構成する成分について、以下に説明する。
本発明のトレッド用ゴム組成物は、タイヤのトレッド部に用いられるトレッド用ゴム組成物であって、ゴム成分と、樹脂と、カーボンブラックと、を含む。
【0034】
(ゴム成分)
本発明のゴム組成物は、ゴム成分を含み、該ゴム成分が、組成物にゴム弾性をもたらす。該ゴム成分は、サステナブル材料の比率が30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることがより一層好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0035】
前記ゴム成分としては、前記生物資源由来のゴム、及び前記再生資源由来のゴムが好ましい。
ここで、前記生物資源由来のゴムを構成するモノマー成分100mol%中の生物資源由来のモノマー成分の割合は、50mol%以上が好ましく、70mol%以上がより好ましく、80mol%以上がさらに好ましく、90mol%以上がより一層好ましく、95mol%以上が特に好ましく、100mol%であってもよい。
また、前記再生資源由来のゴムを構成するモノマー成分100mol%中の再生資源由来のモノマー成分の割合は、50mol%以上が好ましく、70mol%以上がより好ましく、80mol%以上がさらに好ましく、90mol%以上がより一層好ましく、95mol%以上が特に好ましく、100mol%であってもよい。
【0036】
前記ゴム成分は、架橋に寄与する成分であり、通常、重量平均分子量(Mw)が1万以上であり、好ましくは5万以上、より好ましくは15万以上、さらに好ましくは20万以上であり、また、好ましくは500万以下、より好ましくは200万以下、より好ましくは150万以下、さらに好ましくは130万以下である。
なお、本明細書において、ゴム成分の重量平均分子量(Mw)は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0037】
前記ゴム成分としては、ジエン系ゴムが好ましく、また、該ジエン系ゴムとしては、イソプレン系ゴム、及びブタジエン系ゴムが好ましい。ここで、イソプレン系ゴムとは、モノマー単位としてイソプレン由来の単位を含むゴムを指し、また、ブタジエン系ゴムとは、モノマー単位としてブタジエン由来の単位を含むゴムを指す。
【0038】
前記イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、合成イソプレンゴム(IR)、改質天然ゴム(改質NR)、変性天然ゴム(変性NR)、変性合成イソプレンゴム(変性IR)等が挙げられる。天然ゴム(NR)としては、例えば、RSS#3、TSR20(例えば,SIR20やSTR20)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。天然ゴム(NR)の起源は、特に限定されず、例えば、パラゴムノキ由来、グアユール由来、ロシアタンポポ由来のもの等が挙げられる。合成イソプレンゴム(IR)としては、特に限定されず、例えば、IR2200等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等が挙げられる。変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等が挙げられる。変性IRとしては、エポキシ化合成イソプレンゴム、水素添加合成イソプレンゴム、グラフト化合成イソプレンゴム等が挙げられる。これらイソプレン系ゴムは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、イソプレン系ゴムとしては、NRが好ましい。
【0039】
前記イソプレン系ゴムは、サステナブル材料の比率が30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることがより一層好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
前記イソプレン系ゴムのサステナブル材料の比率を前記範囲内とするためには、天然ゴム(NR)を使用したり、生物資源由来のイソプレンや再生資源由来のイソプレンをモノマー成分として合成されたポリマーを使用することが好ましい。この際、合成されたポリマーは、生物資源由来のモノマーの単独重合体であってもよいし、再生資源由来のモノマーの単独重合体であってもよいし、生物資源由来のモノマーと再生資源由来のモノマーとの共重合体であってもよいし、生物資源由来のモノマー及び/又は再生資源由来のモノマーと化石資源(石油等)由来のモノマーとの共重合体であってもよい。
【0040】
前記ブタジエン系ゴムとしては、ブタジエンゴム(BR)、芳香族ビニル化合物-ブタジエン共重合体ゴム(例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR))等が挙げられる。ここで、ブタジエン系ゴムの原料となるブタジエンは、生物資源由来又は再生資源由来であることが好ましい。
【0041】
前記ブタジエンゴム(BR)としては、例えば、高シス含量のブタジエンゴム、低シス含量のブタジエンゴム、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するブタジエンゴム等が挙げられる。前記ブタジエンゴム(BR)としては、市販品を利用することができ、該ブタジエンゴムの市販品としては、UBEエラストマー(株)、株式会社ENEOSマテリアルズ、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品が挙げられる。これらブタジエンゴムは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
前記芳香族ビニル化合物-ブタジエン共重合体ゴム(例えば、SBR)としては、例えば、乳化重合芳香族ビニル化合物-ブタジエン共重合体ゴム(例えば、乳化重合スチレン-ブタジエンゴム(E-SBR))、溶液重合芳香族ビニル化合物-ブタジエン共重合体ゴム(例えば、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(S-SBR))等が挙げられる。前記芳香族ビニル化合物-ブタジエン共重合体ゴムにおいて、芳香族ビニル化合物(芳香族ビニルモノマー)としては、例えば、スチレン、ビニルナフタレン、ジビニルナフタレン等が挙げられる。これら芳香族ビニル化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、スチレンが好ましく、生物資源由来のスチレン、及び再生資源由来のスチレンが特に好ましい。即ち、芳香族ビニル化合物-ブタジエン共重合体ゴムとしては、SBRが好ましい。なお、前記スチレンは、置換基を有していてもよい。前記芳香族ビニル化合物-ブタジエン共重合体ゴムとしては、市販品を利用することができ、該市販品としては、旭化成(株)、株式会社ENEOSマテリアルズ、日本ゼオン(株)、住友化学(株)等の製品が挙げられる。これら芳香族ビニル化合物-ブタジエン共重合体ゴムは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
前記ブタジエン系ゴムは、サステナブル材料の比率が30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることがより一層好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
前記ブタジエン系ゴムのサステナブル材料の比率を前記範囲内とするためには、例えば、生物資源由来のブタジエン、再生資源由来のブタジエン、生物資源由来の芳香族ビニル化合物(例えば、生物資源由来のスチレン)、再生資源由来の芳香族ビニル化合物(例えば、再生資源由来のスチレン)をモノマー成分として合成されたポリマーを使用すればよい。この際、合成されたポリマーは、生物資源由来のモノマーの単独重合体であってもよいし、再生資源由来のモノマーの単独重合体であってもよいし、生物資源由来のモノマーと再生資源由来のモノマーとの共重合体であってもよいし、生物資源由来のモノマー及び/又は再生資源由来のモノマーと化石資源(石油等)由来のモノマーとの共重合体であってもよい。なお、生物資源(バイオマス資源)由来のブタジエンゴム(B-BR)、生物資源由来の芳香族ビニル化合物-ブタジエン共重合体ゴム(例えば、生物資源(バイオマス資源)由来のスチレン-ブタジエンゴム(B-SBR))には、ブタジエン等を従来法に従って重合して得たゴムだけではなく、微生物、植物、動物、及びこれらの組織培養体(以下、「微生物等」とも呼ぶ。)による反応や酵素反応により得られたゴムも包含される。
【0044】
また、前記ゴム成分全体のサステナブル材料の比率を前記範囲内とするためには、ゴム成分として、天然ゴム(NR)を使用したり、生物資源由来のモノマー成分や再生資源由来のモノマー成分をモノマー成分として合成されたポリマーを使用することが好ましい。
【0045】
また、前記ゴム成分は、上述したゴム成分の中でも、少なくとも前記イソプレン骨格ゴムを含有することが好ましい。ゴム組成物の耐摩耗性及び低転がり抵抗性をより高めることができるためである。
さらに、前記ゴム成分は、前記イソプレン骨格ゴムに加えて、ブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムからなる群から選択される少なくとも一種をさらに含有することが好ましい。耐摩耗性と低転がり抵抗性とのバランスをより向上できるためである。
【0046】
一般に、タイヤ用ゴム組成物の素材(ゴム及びそのモノマー、充填剤、樹脂等)は、その製造に大規模な製造装置を要するため、通常、特定地域の大工場で生産され、原料及び製品の保管、輸送に多くのエネルギーを要する。これに対して、生物資源(バイオマス資源)由来の素材は、各地域の農産物、森林等に由来し、また、微生物の発酵、触媒反応により小規模でも製造できるため、各地域の生産物や廃棄物を活用することで、原料の輸送及び保管に要するエネルギーを削減でき、さらには製造した素材のタイヤ工場への輸送及び保管に要するエネルギーも削減でき、環境に優しい。また、再生資源(リサイクル資源)由来の素材は、例えば、使用済みタイヤを、ダウンサイジング、解体、熱分解して、ゴム、充填剤、スチールコード等、タイヤを構成する材料を取り出すことで入手できる。その他にも、生物資源又は生物資源の処理物を脱硫して、当該生物資源又は生物資源の処理物から硫黄含有物質を取り除く脱硫工程と、該脱硫工程で発生した脱硫処理残渣から硫黄を回収する回収工程と、回収した硫黄を加硫用硫黄に加工する加工工程と、を含む方法(例えば、特願2022-140390に記載の方法)等により、生物資源又は生物資源の処理物から硫黄を得ることができ、各種廃棄物や使用済み物品からタイヤ用ゴム組成物の素材を入手することができる。このように、サステナブル材料(生物資源由来の素材や、再生資源由来の素材)を用いることで、ライフサイクル全体における二酸化炭素排出量(LCCO2)の削減、ライフサイクル全体におけるエネルギー消費量(LCE)の削減、ライフサイクル全体で発生するコスト(LCC)の削減、化石資源の使用量削減等、タイヤ製造において総合的に環境負荷を低減できる。
【0047】
また、前記ゴム組成物を製造する際の、生物資源、再生資源、化石資源(例えば、化石資源由来のモノマー成分)の供給状況及び/又は市場の要求(例えば、生物資源の食料としての需要)に応じて、生物資源由来のモノマー成分、再生資源由来のモノマー成分、及び化石資源由来のモノマー成分の比率を適宜選択して、生物資源由来のモノマー成分、再生資源由来のモノマー成分、及び化石資源由来のモノマー成分を重合することにより、従来の合成ゴムを用いた場合と同等の性能を有するサステナブル材料(生物資源由来の素材や、再生資源由来の素材)由来のゴムを得ることができる。なお、再生資源由来のモノマー成分を用いる場合は、該モノマーの製造工程上の理由から、化石資源由来のモノマー成分と分けることが困難な場合もある。その場合は、マスバランスの考え方を採用することで、環境に対する影響を評価することができる。
【0048】
前記ゴム成分全体中の各モノマー単位(例えば、イソプレンに由来する単位、ブタジエンに由来する単位、芳香族ビニル化合物に由来する単位)の比率は、適用先の部材等に応じて、適宜調整することができる。該ゴム成分全体中の各モノマー単位の比率は、例えば、上述のイソプレン系ゴム、ブタジエン系ゴムを適宜組み合わせることで調整できる。また、ブタジエンに由来する単位中のシス結合単位の比率についても、適用先の部材等に応じて適宜調整することができる。
なお、本明細書において、「モノマー単位」とは、ポリマーの構成単位を意味し、「イソプレンに由来する単位」とは、モノマーであるイソプレンに基づいて構成されるポリマー中の構成単位(天然ゴム中のイソプレン単位も含む)を意味し、「ブタジエンに由来する単位」とは、モノマーであるブタジエンに基づいて構成されるポリマー中の構成単位を意味し、芳香族ビニル化合物に由来する単位とは、モノマーである芳香族ビニル化合物に基づいて構成されるポリマー中の構成単位を意味する。
また、本明細書において、各モノマー単位の比率は、NMRにより測定される。
【0049】
前記ゴム成分は、上述のイソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、芳香族ビニル化合物-ブタジエン共重合体ゴム(例えば、SBR)の他にも、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム(SIBR)等のジエン系ゴムを含んでもよい。これらゴム成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
前記ゴム成分には、変性により、カーボンブラック、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基が導入されていてもよい。該官能基としては、アミノ基、アミド基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、シリル基、アルコキシシリル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基等が挙げられ、また、これら官能基は、置換基を有していてもよい。これら官能基は、1種単独でゴム成分に導入してもよいし、2種以上を組み合わせてゴム成分に導入してもよい。これらの中でも、アミノ基、アルコキシ基、及びアルコキシシリル基が好ましく、アミノ基の水素原子が炭素数1~6のアルキル基で置換された置換アミノ基、炭素数1~6のアルコキシ基、及び炭素数1~6のアルコキシシリル基がさらに好ましい。
【0051】
前記官能基は、例えば、該官能基を有する化合物(変性剤)を前記ゴム成分と反応させることで導入できる。該官能基は、シリカやカーボンブラックといった充填剤に対して相互作用性を有する変性官能基であり、例えば、含窒素官能基、含ケイ素官能基、含酸素官能基等が挙げられる。含窒素官能基を有する化合物(変性剤)としては、アミノ基含有化合物等が挙げられ、含ケイ素官能基を有する化合物(変性剤)としては、ハロゲン化ケイ素、ヒドロカルビルオキシシラン化合物等が挙げられ、含酸素官能基を有する化合物(変性剤)としては、アルコキシ基含有化合物、アルキレンオキシド基含有化合物、トリアルキルシリロキシ基含有化合物等が挙げられる。より具体的には、国際公開第2016/194316号、国際公開第2019/117256号に記載の化合物等が挙げられる。これら変性剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
また、前記ゴム成分が、前記ブタジエンゴム及び前記スチレンブタジエンゴムからなる群から選択される少なくとも一種を含有する場合には、これらのゴムが変性されていることが好ましい。
後述するカーボンブラックの分散性がより高まる結果、より優れた耐摩耗性と庭転がり抵抗性とのバランスを得ることができるためである。
【0053】
前記ブタジエンゴム及び前記スチレンブタジエンゴムからなる群から選択される少なくとも一種のゴム成分は、1種以上の炭素及び水素以外の原子を有する官能基で変性されている。カーボンブラックと化学的に結合することで優れた補強性を発現するので、耐摩耗性をより向上させることができる。
【0054】
また、前記変性されているブタジエンゴム及び前記スチレンブタジエンゴムからなる群から選択される少なくとも一種のゴム成分は、上記官能基を、末端に有してもよく、主鎖に有してもよい。また、前記変性されているブタジエンゴム及び前記スチレンブタジエンゴムからなる群から選択される少なくとも一種のゴム成分は、例えば、ブタジエンゴム(無変性ブタジエンゴム)を変性剤で変性させることにより、得ることができる。
【0055】
さらに、炭素及び水素以外の原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、半金属原子及び金属原子等が挙げられ、上記官能基はこれらより選ばれる1種以上の原子を有することが好ましい。また、半金属原子としては、ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン及びテルル等が挙げられるが、これらの中でも、ホウ素、ケイ素及びゲルマニウムから選ばれる1種以上の原子がより好ましく、ケイ素が特に好ましい。さらにまた、金属原子としては、スズ、チタン、ジルコニウム、ビスマス及びアルミニウム等が挙げられるが、これらの中でも、スズ及びチタンから選ばれる1種以上の原子がより好ましく、スズが特に好ましい。
【0056】
なお、前記サステナブル材料(生物資源由来の素材や、再生資源由来の素材)由来のゴムは、例えば、生物資源由来のモノマー成分や、再生資源由来のモノマー成分を用い、必要に応じて、化石資源由来のモノマー成分を用いて、従来の化石資源由来の合成ゴムの製造方法と同様にして製造することができる。また、前記サステナブル材料由来のゴム(特には、生物資源由来のゴム)は、微生物等による反応や酵素反応により得ることもできる。
【0057】
上述の生物資源から生物資源由来ゴムを調製する方法については、例えば、特開2022-179158号公報に記載の方法を用いることができる。例えば、モノマー成分として生物資源から得られたブタジエンを用いることで、生物資源(バイオマス資源)由来のブタジエンゴム(B-BR)を得ることができ、また、モノマー成分として生物資源から得られたスチレンと、生物資源から得られたブタジエンを用いることで、生物資源(バイオマス資源)由来のスチレン-ブタジエンゴム(B-SBR))を得ることができる。ここで、生物資源からB-BR、B-SBRを得る方法としては、人工的に重合する方法の他、生体内で重合する方法、生物由来酵素で重合する方法等が挙げられる。得られるB-BR、B-SBRの分子量、分岐、ミクロ構造等は、目的のタイヤ性能に応じて、公知の方法に従って重合条件を変更することにより適宜調整することができる。
【0058】
前記生物資源から得られたブタジエンとしては、アルキルアルコール類(好ましくはエタノール、及びブタノール、より好ましくはブタノール)由来のブタジエン、アルケン類(好ましくはエチレン)由来のブタジエン、不飽和カルボン酸類(好ましくはチグリン酸)由来のブタジエンを好適に使用できる。また、これらのブタジエンを2種以上組み合わせて用いてもよい。
また、前記生物資源から得られたスチレンとしては、植物(好ましくはマンサク科、エゴノキ科、キョウチクトウ科に属する植物、より好ましくはフウ属、エゴノキ属、ニチニチソウ属に属する植物、さらに好ましくはモミジバフウ、エゴノキ、ニチニチソウ)により得られたスチレン、微生物(好ましくはペニシリウム属、エシェリキア属に属する微生物、より好ましくはP.citrinum、形質転換されたE.coli)により得られたスチレンを好適に使用できる。また、これらのスチレンを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0059】
昨今、バイオエタノール、バイオエチレン等を中心としたバイオマスコンビナートが計画されているが、バイオエタノール及びバイオエチレンは、生物資源として、主に糖類及び/又はセルロース類を用いて製造され、タンパク質、脂質、アミノ酸等の他の生物資源を有効に活用できない。さらに、糖類は、食料と競合し、セルロース類の過度の利用は、森林伐採に繋がる。そのため、種々の生物資源の供給状況の他、再生資源の供給状況、化石資源の供給状況、及び市場の要求(例えば、バイオマス資源の食料としての需要)に応じて、前記生物資源由来のモノマー成分として、生物資源由来のモノマー成分を複数種使用したり、生物資源由来のモノマー成分と再生資源由来のモノマー成分と化石資源由来のモノマー成分とを併用し、さらにこれらのモノマー成分の比率を適宜調整して使用することが好ましい。これにより、1種類の生物資源に頼ることなく、糖、タンパク質、脂質等、幅広い生物資源や、再生資源を有効に活用でき、また、サステナブル材料由来のゴムを安定的に供給でき、さらには、製造時の状況に応じて環境に配慮することもできる。
なお、生物資源由来のモノマー成分を複数種類使用する場合には、異なる生物資源に由来するモノマー成分、即ち、異なる生物資源から得られたモノマー成分を使用することが好ましい。具体的には、生物資源由来のブタジエンとして、由来が異なる複数種類の生物資源由来のブタジエンの混合物を使用すること、及び/又は、生物資源由来のスチレンとして、由来が異なる複数種類の生物資源由来のスチレンの混合物を使用することが好ましい。これにより、複数種類の生物資源を有効活用できる。
【0060】
(樹脂)
本発明のトレッド用ゴム組成物は、さらにテルペン系樹脂及びロジン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含む。前記樹脂を含有することによって、本発明のトレッド用ゴム組成物の加工性を向上できることに加え、タイヤに適用した際のWet性能も高めることができる。
加えて、前記ゴム成分がスチレンブタジエンゴムを含有する場合には、相溶性が高まるため、樹脂及び後述するカーボンブラックの分散性が向上し、より優れた、耐摩耗性と低転がり抵抗性とのバランスを得ることができる。
さらに、含有する樹脂の軟化点の違いによって、ゴム組成物の貯蔵弾性率E‘とtanδのバランスを制御することもできる。
【0061】
前記テルペン系樹脂は、松属の木からロジンを得る際に同時に得られるテレビン油、或いはこれから分離した重合成分を配合し、フリーデルクラフツ型触媒を用いて重合して得られる固体状の樹脂であり、β-ピネン樹脂、α-ピネン樹脂等がある。また、テルペン系樹脂には、テルペン-芳香族化合物系樹脂も包含され、該テルペン-芳香族化合物系樹脂としては、代表例としてテルペン-フェノール樹脂、スチレン-テルペン樹脂等が挙げられる。該テルペン-フェノール樹脂は、テルペン類と種々のフェノール類とを、フリーデルクラフツ型触媒を用いて反応させたり、或いはさらにホルマリンで縮合する方法で得ることができる。また、前記スチレン-テルペン樹脂は、スチレンとテルペン類とを、フリーデルクラフツ型触媒を用いて反応させることで得ることができる。原料のテルペン類としては、特に制限はなく、α-ピネンやリモネン等のモノテルペン炭化水素が好ましく、α-ピネンを含むものがより好ましく、α-ピネンが特に好ましい。
【0062】
前記ロジン系樹脂としては、天然樹脂ロジンとして、生松ヤニやトール油に含まれるガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン等があり、また、変性ロジン、ロジン誘導体、変性ロジン誘導体として、例えば、重合ロジン、その部分水添ロジン;グリセリンエステルロジン、その部分水添ロジンや完全水添ロジン;ペンタエリスリトールエステルロジン、その部分水添ロジンや重合ロジン;等が挙げられる。
【0063】
また、前記樹脂は、上述したテルペン系樹脂、テルペン-芳香族化合物系樹脂及びロジン系樹脂の他にも、C5系樹脂、C5-C9系樹脂、C9系樹脂、シクロペンタジエン系樹脂、芳香族系樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、クマロン-インデン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂等を含むことができる。これら樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これら樹脂の中でも、C5系樹脂、C5-C9系樹脂、C9系樹脂、シクロペンタジエン系樹脂及び芳香族系樹脂が好ましい。C5系樹脂、C9系樹脂、C5-C9系樹脂、シクロペンタジエン系樹脂は、耐摩耗性及び低燃費性をバランス良く向上させることができる。また、芳香族系樹脂は、グリップ性能、耐摩耗性及びゴム強度をバランス良く向上させることができる。
【0064】
さらに、前記樹脂は、水素添加されていてもよく、即ち、水素添加樹脂(水添樹脂)であってもよい。また、前記樹脂には、変性により、カーボンブラック、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基が導入されていてもよい。該官能基としては、アミノ基、アミド基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、シリル基、アルコキシシリル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基等が挙げられる。
【0065】
前記C5系樹脂としては、石油化学工業のナフサの熱分解によって得られるC5留分を(共)重合して得られる脂肪族系石油樹脂が挙げられる。C5留分には、通常1-ペンテン、2-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン、3-メチル-1-ブテン等のオレフィン系炭化水素、2-メチル-1,3-ブタジエン、1,2-ペンタジエン、1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,2-ブタジエン等のジオレフィン系炭化水素等が含まれる。
【0066】
前記C5-C9系樹脂とは、C5-C9系合成石油樹脂を指し、C5-C9系樹脂としては、例えば、石油由来のC5-C11留分を、AlCl3、BF3等のフリーデルクラフツ触媒を用いて重合して得られる固体重合体が挙げられ、より具体的には、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、インデン等を主成分とする共重合体等が挙げられる。C5-C9系樹脂としては、C9以上の成分の少ない樹脂が、ゴム成分との相溶性の観点から好ましい。ここで、「C9以上の成分が少ない」とは、樹脂全量中のC9以上の成分が50質量%未満、好ましくは40質量%以下であることをいうものとする。
【0067】
前記C9系樹脂とは、C9系合成石油樹脂を指し、例えばAlCl3やBF3等のフリーデルクラフツ型触媒を用い、C9留分を重合して得られる固体重合体を指す。C9系樹脂としては、例えば、インデン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等を主成分とする共重合体等が挙げられる。
【0068】
前記シクロペンタジエン系樹脂は、モノマー単位としてシクロペンタジエン系モノマー由来の単位を含む樹脂を指す。該シクロペンタジエン系樹脂としては、シクロペンタジエン系モノマーの単独重合体、2種以上のシクロペンタジエン系モノマーの共重合体、シクロペンタジエン系モノマーと他のモノマーとの共重合体等が挙げられる。ここで、シクロペンタジエン系モノマーとしては、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン等が挙げられ、これらの中でも、ジシクロペンタジエンが好ましく、即ち、前記シクロペンタジエン系樹脂としては、ジシクロペンタジエン系樹脂が好ましい。該ジシクロペンタジエン系樹脂は、例えば、AlCl3やBF3等のフリーデルクラフツ型触媒等を用い、ジシクロペンタジエンを重合して得られる樹脂を指す。ジシクロペンタジエン系樹脂としては、ジシクロペンタジエンの単独重合体、ジシクロペンタジエンと芳香族系モノマーとの共重合体、ジシクロペンタジエンとC9留分(ビニルトルエン、インデン等)との共重合体等が挙げられる。
【0069】
前記芳香族系樹脂は、モノマー単位として芳香族系モノマー由来の単位を含む樹脂を指す。該芳香族系樹脂としては、芳香族系モノマーの単独重合体、2種以上の芳香族系モノマーの共重合体、芳香族系モノマーと他のモノマーとの共重合体等が挙げられる。ここで、芳香族系モノマーとしては、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブチルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン、p-フェニルスチレン等のスチレン系モノマー;フェノール、アルキルフェノール、アルコキシフェノール等のフェノール系モノマー;ナフトール、アルキルナフトール、アルコキシナフトール等のナフトール系モノマー;等が挙げられる。
【0070】
前記樹脂は、軟化点が30℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることがより好ましく、110℃より高いことがより好ましく、116℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがより好ましく、123℃以上であることがより好ましく、127℃以上であることがさらに好ましい。また、前記樹脂は、加工性の観点から、軟化点が160℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、145℃以下であることがより好ましく、141℃以下であることがより好ましく、136℃以下であることがさらに好ましい。
なお、本明細書において、樹脂の軟化点は、JIS K 6220-1:2015(ISO 28641:2010)に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0071】
前記樹脂としては、市販品を利用することができ、該樹脂の市販品としては、例えば、ENEOS(株)、荒川化学工業(株)、エクソンモービル社、クレイトン社、ヤスハラケミカル(株)、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0072】
本発明のトレッド用ゴム組成物中の前記樹脂の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、適用先のタイヤカテゴリー、タイヤ部材、目標性能等により、適宜調整することができる。例えば、樹脂の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、0.5~20質量部の範囲が好ましい。
【0073】
(補強性充填剤)
また、本発明のトレッド用ゴム組成物は、補強性充填剤をさらに含むことが好ましい。
本発明の加硫ゴム組成物の、破壊強度、耐摩耗性、低発熱性、Wet性能等の各種性能を高めることができるためである。
ここで、前記補強性充填剤については、ゴム分野で通常用いられる補強性充填剤であればよく、例えば、カーボンブラック、シリカ、タルク、クレイ、水酸化アルミニウム、酸化チタン等が挙げられる。
【0074】
・シリカ
前記シリカとしては、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられ、これらの中でも、シラノール基が多い点で、湿式シリカが好ましい。これらシリカは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記シリカとしては、市販品を利用することができ、該シリカの市販品としては、東ソー・シリカ(株)、デグッサ社、ローディア社、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
【0075】
前記シリカとしては、環境負荷低減の観点から、ケイ酸植物由来のシリカが好ましい。該ケイ酸植物は、例えば、コケ類、シダ類、トクサ類、ウリ科、イラクサ科、イネ科の植物等に存在する。これら植物の中でも、イネ科植物が好ましい。また、該イネ科植物としては、イネ、笹、サトウキビ等が挙げられ、これらの中でも、イネが好ましい。該イネは、食用に広く栽培されているため、広い地域で現地調達可能であり、また、イネの籾殻は、産業廃棄物として多量に発生することから量を確保し易い。従って、入手容易性の観点から、シリカとしては、籾殻由来のシリカ(以下、「籾殻シリカ」とも呼ぶ。)が特に好ましい。該籾殻シリカを用いることで、産業廃棄物となる籾殻を有効活用でき、また、タイヤ製造工場の近隣で原料を現地調達できるため、輸送や保管のエネルギー及びコストを低減でき、種々の観点から、環境面で好ましい。前記籾殻シリカは、籾殻を加熱により炭化して得られる籾殻炭の粉末でもよいし、籾殻を燃料としてバイオマスボイラーで燃焼させた際に発生する籾殻灰をアルカリで抽出してケイ酸アルカリ水溶液を調製し、該ケイ酸アルカリ水溶液を用いて湿式法で製造した沈降シリカでもよい。前記籾殻炭の製法は、特に限定されず、公知の種々の方法を用いることができ、例えば、窯を用いて籾殻を蒸し焼きにすることで熱分解させて籾殻炭を得ることができる。このようにして得られる籾殻炭を公知の粉砕機(例えば、ボールミル)を用いて粉砕し、所定の粒径範囲に選別し分級することで、籾殻炭の粉末を得ることができる。また、前記籾殻由来の沈降シリカは、特開2019-38728号公報に記載の方法等で製造できる。
【0076】
前記シリカは、窒素吸着比表面積(N2SA)が50m2/g以上であることが好ましく、100m2/g以上であることがより好ましく、150m2/g以上であることがさらに好ましく、また、350m2/g以下であることが好ましく、250m2/g以下であることがより好ましく、230m2/g以下であることがさらに好ましく、200m2/g以下であることがより一層好ましい。
なお、本明細書において、シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される値である。
【0077】
前記シリカの含有量は、例えば、適用先のタイヤカテゴリー、タイヤ部材、目標性能等により、適宜調整することができる。例えば、シリカの含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、30質量部以上がより好ましく、50質量部以上がさらに好ましく、60質量部以上がより一層好ましく、110質量部以上が特に好ましく、また、300質量部以下が好ましく、200質量部以下がより好ましく、180質量部以下がさらに好ましく、150質量部以下が特に好ましい。
【0078】
・カーボンブラック
前記カーボンブラックとしては、第1の物性として、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド吸着比表面積(CTAB)が130m2/g以上であることを要する。前記カーボンブラックは、CTABが130m2/g以上であるので、ゴム成分の補強性を高め、ひいては耐摩耗性の向上に寄与することができる。また、前記カーボンブラックのCTABは、耐摩耗性をより向上させる観点から、135m2/g以上であることが好ましく、また、低転がり抵抗性や加工性をより良好に保持する観点から、150m2/g以下であることが好ましい。
なお、カーボンブラックのCTABは、JIS K6217-3に準拠して測定される。また、カーボンブラックのCTABの調整は、限定されないが、例えば、カーボンブラックを製造する際の、原料導入条件、空気導入条件、燃料導入条件、冷却水導入条件等の各種条件をコントロールすることで行うことができる。
【0079】
前記カーボンブラックは、ヨウ素吸着量(IA)が150mg/g以下であることが好ましい。カーボンブラックのIAが150mg/g以下であれば、カーボンブラック表面の所定の活性化が好適に行われて、ゴム成分(変性ブタジエンゴムなど)との相互作用性を良好に高めることができる。また、前記カーボンブラックのIAは、低転がり抵抗性や加工性をより良好に保持する観点から、130mg/g以上であることが好ましい。
なお、カーボンブラックのIAは、JIS K6217-1に準拠して測定される。また、カーボンブラックのIAの調整は、限定されないが、例えば、カーボンブラックを製造する際の、原料導入条件、空気導入条件、燃料導入条件、冷却水導入条件等の各種条件をコントロールすることで行うことができる。
【0080】
また、前記カーボンブラックは、第2の物性として、ヨウ素吸着量(IA)(mg/g)に対する前記CTAB(m2/g)の比(CTAB/IA)が0.92以上1.06以下であることを要する。CTAB/IAが0.92未満であると、耐摩耗性が悪化する虞がある。また、CTAB/IAが1.06超であると、耐摩耗性が悪化する虞があり、また、低転がり抵抗性が悪化する虞がある。また、前記カーボンブラックのCTAB/IAは、耐摩耗性をより向上させる観点から、0.95以上であることが好ましく、また、1.05以下であることが好ましい。
【0081】
さらに、前記カーボンブラックは、第3の物性として、水素放出量が3500質量ppm以上4800質量ppm以下であることを要する。水素放出量が3500質量ppm未満であると、カーボンブラック表面の所定の活性化、ひいてはゴム成分の相互作用性が不十分となり、結果として耐摩耗性が悪化する虞がある。また、水素放出量が4800質量ppm超であると、水素過多に起因して、耐摩耗性が悪化する虞がある。また、水素放出量が4800質量ppm超であると、低転がり抵抗性が悪化する虞がある。また、前記カーボンブラックの水素放出量は、耐摩耗性をより向上させる観点から、3700質量ppm以上であることが好ましく、また、4500質量ppm以下であることが好ましく、4300質量ppm以下であることがより好ましい。
なお、カーボンブラックの水素放出量は、アルゴン雰囲気中2000℃で15分間加熱したときに放出される水素ガスの量を指し、水素分析装置を用いて測定される。また、カーボンブラックの水素放出量の調整は、限定されないが、例えば、カーボンブラックを製造する際の、原料導入条件、空気導入条件、燃料導入条件、冷却水導入条件等の各種条件をコントロールすることで行うことができる。
【0082】
前記カーボンブラックは、ジブチルフタレート吸油量(DBP)が、130cm3/100g以上150cm3/100g以下であることが好ましい。DBPが130cm3/100g以上であれば、耐摩耗性がより向上し、また、150cm3/100g以下であれば、加工性を良好に保持することができる。
【0083】
前記カーボンブラックの製造方法は、上述した所定物性を具備させることができれば、特に限定されない。但し、カーボンブラックにおける上述したCTAB、IA、水素放出量などの物性は、それぞれを単独で調整することが極めて困難である。本実施形態で用いることができるカーボンブラックは、例えば、後述の実施例の製造条件を踏まえ、適宜条件を調整することで製造できる。
【0084】
本発明のゴム組成物における前記カーボンブラックの含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、20質量部以上60質量部以下であることが好ましい。前記カーボンブラックの含有量が20質量部以上であれば、ゴム成分との相互作用性が十分に高まり、耐摩耗性を効果的に向上させることができる。また、前記カーボンブラックの含有量が60質量部以下であれば、低転がり抵抗性や加工性をより良好に保持することができる。同様の観点から、ゴム組成物における前記カーボンブラックの含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、25質量部以上であることがより好ましく、また、50質量部以下であることがより好ましい。
【0085】
上述した物性を具備するカーボンブラックは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、本実施形態のゴム組成物は、上述した物性を具備するカーボンブラック以外のその他のカーボンブラックを含有してもよく、含有しなくてもよい。その他のカーボンブラックとしては、上述した第1の物性、第2の物性及び第3の物性のうち、2つのみ満たすカーボンブラック、1つのみ満たすカーボンブラック、或いは、いずれも満たさないカーボンブラック、が挙げられる。但し、本発明特有の耐摩耗性の向上効果をより確実に得る観点から、本実施形態のゴム組成物において、全カーボンブラック中のその他のカーボンブラックの割合は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、0質量%である(即ち、その他のカーボンブラックを含有しない)ことが特に好ましい。
【0086】
前記カーボンブラックが、その他のカーボンブラックを含場合、該その他のカーボンブラックは、植物由来のカーボンブラックや、リサイクルによって得られたカーボンブラックであることが特に好ましい。植物由来のカーボンブラックとしては、例えば、ヒマシ油、松脂油に由来するものが挙げられる。また、リサイクルによって得られるカーボンブラックとしては、例えば、使用済タイヤ等の熱分解によって得られるカーボンブラック、廃油から得られるカーボンブラック等が挙げられる。前記カーボンブラックのグレードとしては、特に限定されず、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N660、N762等が挙げられる。前記カーボンブラックとしては、市販品を利用することができ、該カーボンブラックの市販品としては、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱ケミカル(株)、ライオン(株)、日鉄カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。これらカーボンブラックは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0087】
本発明のゴム組成物においては、前記カーボンブラック及び前記シリカの合計含有量に対する前記シリカの含有量の質量比(シリカ/(カーボンブラック+シリカ))が、0.15以上であることが好ましい。この場合、低転がり抵抗性を十分良好に保持することができる。同様の観点から、上記質量比(シリカ/(カーボンブラック+シリカ))は、0.20以上であることがより好ましい。
また、前記カーボンブラック及び前記シリカの合計含有量に対する前記シリカの含有量の質量比(シリカ/(カーボンブラック+シリカ))が、0.80以下であることが好ましい。この場合、耐摩耗性を十分に高く保持することができる。同様の観点から、上記質量比(シリカ/(カーボンブラック+シリカ))は、0.60以下であることがより好ましい。
【0088】
(シランカップリング剤)
また、本発明のトレッド用ゴム組成物がシリカを含む場合、該シリカの効果を向上させるために、本発明のトレッド用ゴム組成物は、シランカップリング剤を含むことが好ましい。該シランカップリング剤としては、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド等が挙げられる。前記シランカップリング剤としては、市販品を利用することができ、該シランカップリング剤の市販品としては、例えば、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東レ・ダウコーニング(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)等の製品を使用できる。これらシランカップリング剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
前記シランカップリング剤の含有量は、例えば、適用先のタイヤカテゴリー、タイヤ部材、目標性能等により、適宜調整することができる。例えば、シランカップリング剤の含有量は、前記シリカ100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がさらに好ましく、また、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、12質量部以下がさらに好ましく、10質量部以下がより一層好ましい。
【0090】
(ゴム粉)
また、本発明のトレッド用ゴム組成物は、ゴム粉を含むことが好ましい。該ゴム粉は、使用済タイヤ等の使用済ゴム製品を粉砕し、所望により、鋼材類、繊維類等の補強材、ダスト類、ガラス類、砂、石等を取り除き、又はゴム粉を製造するために新たに加硫済ゴム組成物を準備し、粉砕することで得てもよい。例えば、「Rubber Chemistry And Technology」に記載の方法により、加硫ゴムからゴム粉を得ることができる。加硫ゴムを粉砕してゴム粉を得る工程においては、機械的処理や低温処理を利用してもよい。例えば、機械的処理では、加硫ゴムを微粒子に機械的に粉砕するために、クラッカーミル、グラニュレータ等の種々の破砕機器を使用できる。また、低温処理では、細かく刻まれた加硫ゴムを極低温で凍結させ、続いて、微粒子に粉砕する。また、鋼材類の除去には、磁選機等を用いることができ、繊維類の除去には、空気選別機等を用いることができる。前記ゴム粉としては、市販品を利用することもでき、該ゴム粉の市販品としては、Global Corporation又はNantong Huili Rubber Corporation等の製品が挙げられる。環境負荷低減の観点から、使用済タイヤ等の使用済ゴム製品を粉砕することで得られるゴム粉を用いることが好ましい。前記ゴム粉は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0091】
前記ゴム粉の組成は、特に限定されず、原料となる使用済ゴム製品(使用済タイヤ)等の加硫ゴムの組成による。一実施形態において、ゴム粉は、ゴム成分、カーボンブラック、シリカ等を含む。ゴム粉に含まれるゴム成分、カーボンブラック、シリカ等は、上述した本実施形態のゴム組成物に含まれるゴム成分、カーボンブラック、シリカ等と同様であってもよいし、異なってもよい。
【0092】
前記ゴム粉は、体積平均粒子径が1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、200μm以下であることがさらに好ましく、100μm以下であることがより一層好ましい。また、ゴム粉の体積平均粒子径は、小さい程好ましく、下限は特に限定されない。
なお、本明細書において、体積平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定され、例えば、堀場製作所(株)製「CAPA500」を用いて測定できる。
【0093】
前記ゴム粉は、60メッシュ篩残分が1質量%未満であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましく、下限は特に限定されない。また、前記ゴム粉は、80メッシュ篩残分が10質量%未満であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましく、下限は特に限定されない。
なお、本明細書において、篩残分は、ASTM D5644-01に従って測定される。
【0094】
前記ゴム粉は、アセトン抽出分が12質量%以下であることが好ましく、11質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、また、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがさらに好ましい。
なお、本明細書において、ゴム粉中のアセトン抽出分とは、JIS K6350 に準拠するアセトン抽出法により求められるアセトン抽出分(%)をいう。
【0095】
前記ゴム成分中のゴム粉の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、適用先のタイヤカテゴリー、タイヤ部材、目標性能等により、適宜調整することができる。例えば、ゴム粉の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がより一層好ましく、また、200質量部以下が好ましく、150質量部以下がより好ましく、100質量部以下がより好ましく、50質量部以下がより好ましく、30質量部以下がより好ましく、15質量部以下がさらに好ましく、10質量部以下がより一層好ましく、5質量部以下が特に好ましい。
【0096】
(液状軟化剤)
さらに、本発明のトレッド用ゴム組成物は、液状軟化剤を含有してもよい。ここで、「液状軟化剤」とは、25℃(室温)で液状であり、ゴム組成物を軟化させる作用を有する配合剤である。該液状軟化剤としては、特に限定されず、オイル、液状ポリマー等が挙げられ、これらの中でも、オイルが好ましい。これら液状軟化剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0097】
前記オイルとは、ゴム成分に含まれる伸展油、及び、ゴム組成物の配合剤として添加する液状の油分の総称であり、例えば、植物油、プロセスオイル、植物油やプロセスオイルのリサイクルにより得られたオイル、又はその混合物等が挙げられる。環境負荷低減の観点から、オイルとしては、植物油、リサイクルにより得られたオイルが好ましい。前記植物油としては、パーム油、ヒマシ油、綿実油、大豆油、アマニ油、菜種油、ヤシ油、落花生油、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、コメ油、紅花油、ゴマ油、オリーブ油、向日葵油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油、ココナッツ油等が挙げられる。また、前記プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル等が挙げられる。前記オイルとしては、市販品を利用することができ、該オイルの市販品としては、出光興産(株)、三共油化工業(株)、ENEOS(株)、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、日清オイリオグループ(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。これらオイルは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0098】
前記液状ポリマーとしては、液状ジエン系ポリマーが好ましい。該液状ジエン系ポリマーとしては、液状スチレン-ブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ポリブタジエン(液状BR)、液状ポリイソプレン(液状IR)、液状スチレン-イソプレン共重合体(液状SIR)、液状スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(液状SBSブロックポリマー)、液状スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(液状SISブロックポリマー)、液状ポリファルネセン、液状ファルネセン-ブタジエン共重合体等が挙げられる。これら液状ポリマーは、水素添加されていてもよいし、末端や主鎖が官能基(極性基)で変性されていてもよい。これら液状ポリマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0099】
前記液状軟化剤の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、適用先のタイヤカテゴリー、タイヤ部材、目標性能等により、適宜調整することができる。例えば、液状軟化剤の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がさらに好ましく、また、100質量部以下が好ましく、70質量部以下がより好ましく、50質量部以下がさらに好ましく、30質量部以下がより一層好ましい。
【0100】
(老化防止剤)
さらに、本発明のトレッド用ゴム組成物は、老化防止剤を含有してもよい。該老化防止剤としては、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD)、N,N’-ビス(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン(77PD)、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(DPPD)、N,N’-ビス(1-エチル-3-メチルペンチル)-p-フェニレンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体(TMDQ)、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン(AW)、6-アニリノ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン等が挙げられる。前記老化防止剤としては、市販品を利用することができ、該老化防止剤の市販品としては、大内新興化学工業(株)、住友化学(株)、精工化学(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。これら老化防止剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0101】
前記老化防止剤の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、適用先のタイヤカテゴリー、タイヤ部材、目標性能等により、適宜調整することができる。例えば、老化防止剤の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、12質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、8質量部以下がさらに好ましい。
【0102】
(ワックス)
また、本発明のトレッド用ゴム組成物は、ワックスを含有してもよい。該ワックスとしては、例えば、植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;エチレンの重合物、プロピレンの重合物等の合成ワックス;等が挙げられる。前記ワックスとしては、市販品を利用でき、該ワックスの市販品としては、精工化学(株)、日本精蝋(株)、大内新興化学工業(株)等の製品を使用できる。これらワックスは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0103】
前記ワックスの含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、適用先のタイヤカテゴリー、タイヤ部材、目標性能等により、適宜調整することができる。例えば、ワックスの含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、また、10質量部以下が好ましく、6質量部以下がより好ましい。
【0104】
(ステアリン酸)
また、本発明のトレッド用ゴム組成物は、ステアリン酸を含有してもよい。該ステアリン酸としては、市販品を利用でき、該ステアリン酸の市販品としては、日油(株)、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。これらステアリン酸の市販品は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0105】
前記ステアリン酸の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、適用先のタイヤカテゴリー、タイヤ部材、目標性能等により、適宜調整することができる。例えば、ステアリン酸の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、10質量部以下が好ましく、6質量部以下がより好ましい。
【0106】
(酸化亜鉛)
また、本発明のトレッド用ゴム組成物は、酸化亜鉛(亜鉛華)を含有してもよい。該酸化亜鉛としては、リサイクルにより得られた酸化亜鉛が好ましい。該酸化亜鉛としては、市販品を利用でき、該酸化亜鉛の市販品としては、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)等の製品を使用できる。これら酸化亜鉛の市販品は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0107】
前記酸化亜鉛の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、適用先のタイヤカテゴリー、タイヤ部材、目標性能等により、適宜調整することができる。例えば、酸化亜鉛の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、また、10質量部以下が好ましく、6質量部以下がより好ましい。
【0108】
(硫黄)
さらに、本発明のトレッド用ゴム組成物は、硫黄を含むことが好ましい。該硫黄としては、化石資源由来のもの、再生資源由来のもの、生物資源由来材料の処理によるもの等を用いることができ、環境負荷低減の観点から、生物資源に由来する廃棄物から得られる硫黄を用いることが特に好ましい。生物資源に由来する廃棄物から硫黄を得る方法としては、例えば、上述の特願2022-140390に記載の方法等が挙げられる。また、前記硫黄としては、ゴム工業において一般的に架橋剤として用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄等を用いてもよい。前記硫黄としては、市販品を利用でき、該硫黄の市販品としては、鶴見化学工業(株)、細井化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)等の製品を使用できる。これら硫黄は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0109】
前記硫黄の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、適用先のタイヤカテゴリー、タイヤ部材、目標性能等により、適宜調整することができる。例えば、硫黄の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、0.3質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、0.8質量部以上がさらに好ましく、また、8質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0110】
(セルロースナノファイバー)
本発明のゴム組成物は、セルロースナノファイバー(CNF)を含有してもよい。セルロースナノファイバーは、ゴム組成物に配合することにより、ゴム組成物を補強できる。該セルロースナノファイバーとしては、変性セルロースナノファイバーが好ましく、該変性セルロースナノファイバーは、変性セルロースを原料とする微細繊維である。セルロースナノファイバーの繊維径は、特に限定されないが、3~500nm程度である。セルロースナノファイバーの平均繊維径及び平均繊維長は、走査型電子顕微鏡(SEM)、原子間力顕微鏡(AFM)、又は透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、各繊維を観察した結果から得られる繊維径及び繊維長を平均することによって得ることができる。前記セルロースナノファイバーは、セルロースを解繊することによって得ることができる。また、微細繊維の平均繊維長と平均繊維径は、酸化処理、解繊処理により調整することができる。
【0111】
前記セルロースナノファイバーの原料は、セルロースを含んでいればよく、特に限定されるものではないが、例えば、植物(例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、布、パルプ(針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、晒クラフトパルプ(BKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、再生パルプ、古紙等)、動物(例えば、ホヤ類)、藻類、微生物(例えば、酢酸菌(アセトバクター))、微生物産生物等が挙げられる。これらセルロース原料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0112】
前記セルロースナノファイバーの含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、適用先のタイヤカテゴリー、タイヤ部材、目標性能等により、適宜調整することができる。例えば、セルロースナノファイバーの含有量は、前記ゴム成分100質量部に対し、1~100質量部の範囲が好ましく、5~70重量部の範囲がより好ましく、10~40質量部の範囲がさらに好ましい。
【0113】
(多孔質セルロース粒子)
本発明のゴム組成物は、多孔質セルロース粒子を含有してもよい。該多孔質セルロース粒子は、好ましくは空隙率が75~95%の多孔質構造を持つセルロース粒子であり、ゴム組成物に配合することにより、氷上性能を向上させることができる。多孔質セルロース粒子の空隙率が75%以上であることにより、氷上性能の向上効果に優れ、また、空隙率が95%以下であることにより、粒子の強度を高めることができる。該空隙率は、より好ましくは80~90%である。前記多孔質セルロース粒子の空隙率は、一定質量の試料(即ち、多孔質セルロース粒子)の体積をメスシリンダーで測定し、嵩比重を求めて、下記式から求めることができる。
空隙率(%)={1-[試料の嵩比重(g/mL)]/[試料の真比重(g/mL)]}×100
ここで、セルロースの真比重は1.5である。
【0114】
前記多孔質セルロース粒子の粒径は、特に限定されるものではないが、耐摩耗性の観点から、平均粒径が1000μm以下のものが好ましい。平均粒径の下限は、特に限定されるものではないが、5μm以上であることが好ましい。平均粒径は、より好ましくは100~800μmであり、さらに好ましくは200~800μmである。
前記多孔質セルロース粒子としては、長径/短径の比が1~2である球状粒子が好ましい。このような球状構造の粒子を用いることにより、ゴム組成物中への分散性が向上して、氷上性能の向上、耐摩耗性等の維持に寄与することができる。前記長径/短径の比は、より好ましくは1.0~1.5である。
前記多孔質セルロース粒子の平均粒径と、長径/短径の比は、次のようにして求められる。即ち、多孔質セルロース粒子を顕微鏡で観察して画像を得て、この画像を用いて、粒子の長径と短径(長径と短径が同じ場合には、ある軸方向の長さとこれに直交する軸方向の長さ)を100個の粒子について測定し、その平均値を算出することで平均粒径が得られ、また、長径を短径で割った値の平均値により長径/短径の比が得られる。
【0115】
前記多孔質セルロース粒子としては、レンゴー株式会社から「ビスコパール」として市販されており、また、特開2001-323095号公報、特開2004-115284号公報等に記載されており、それらを好適に用いることができる。
【0116】
前記多孔質セルロース粒子の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、適用先のタイヤカテゴリー、タイヤ部材、目標性能等により、適宜調整することができる。例えば、多孔質セルロース粒子の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対し、0.3~20質量部の範囲が好ましく、1~15重量部の範囲がより好ましく、3~15質量部の範囲がさらに好ましい。
【0117】
(固体微粒子)
本発明のゴム組成物は、固体微粒子を含有してもよい。該固体微粒子は、ゴム組成物に配合することにより、氷上性能を向上させることができる。該固体微粒子は、平均粒子径が1μm以上であることが好ましく、また、1000μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましい。前記固体微粒子としては、籾殻、胡桃粉又は胡桃の殻等の植物より得られた植物由来の粉体;卵殻(卵殻粉)、骨粉等の動物より得られた動物由来の粉体;シラス等の天然鉱物由来の粉体;グラファイト、酸化亜鉛ウィスカ等の無機微粒子;硫酸マグネシウム、リグニンスルホン酸の金属塩等の水溶性金属塩微粒子;グラスファイバー等の非金属繊維;等が挙げられ、これらの中でも、籾殻、胡桃の殻、卵殻、及びシラスが好ましい。
【0118】
前記固体微粒子の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、適用先のタイヤカテゴリー、タイヤ部材、目標性能等により、適宜調整することができる。例えば、固体微粒子の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対し、0.3~20質量部の範囲が好ましく、1~15重量部の範囲がより好ましく、3~15質量部の範囲がさらに好ましい。
【0119】
(その他の成分)
本発明のトレッド用ゴム組成物は、上述した各成分の他に、ゴム工業界で通常使用される配合剤をその他の成分として含むことができる。その他の成分については、例えば、上述した補強性充填剤以外の充填剤;有機過酸化物;等をさらに配合してもよい。これらの添加剤の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、適用先のタイヤカテゴリー、タイヤ部材、目標性能等により、適宜調整することができ、例えば、前記ゴム成分100質量部に対して、0.1~200質量部の範囲が好ましい。
【0120】
(トレッド用ゴム組成物の製造方法)
本発明のトレッド用ゴム組成物の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、前記ゴム成分に、必要に応じて適宜選択した各種成分を配合して、混練り、熱入れ、押出等することにより、本発明のトレッド用ゴム組成物を製造することができる。また、得られたゴム組成物を加硫することで、加硫ゴムとすることができる。
【0121】
前記混練りの条件としては、特に制限はなく、混練り装置の投入体積やローターの回転速度、ラム圧等、及び混練り温度や混練り時間、混練り装置の種類等の諸条件について目的に応じて適宜に選択することができる。混練り装置としては、通常、ゴム組成物の混練りに用いるバンバリーミキサーやインターミックス、ニーダー、ロール等が挙げられる。
【0122】
前記熱入れの条件についても、特に制限はなく、熱入れ温度や熱入れ時間、熱入れ装置等の諸条件について目的に応じて適宜に選択することができる。該熱入れ装置としては、通常、ゴム組成物の熱入れに用いる熱入れロール機等が挙げられる。
【0123】
前記押出の条件についても、特に制限はなく、押出時間や押出速度、押出装置、押出温度等の諸条件について目的に応じて適宜に選択することができる。押出装置としては、通常、ゴム組成物の押出に用いる押出機等が挙げられる。押出温度は、適宜に決定することができる。
【0124】
前記加硫を行う装置や方式、条件等についても、特に制限はなく、目的に応じて適宜に選択することができる。加硫を行う装置としては、通常、ゴム組成物の加硫に用いる金型による成形加硫機等が挙げられる。加硫の条件として、その温度は、例えば100~190℃程度である。
【0125】
<タイヤ>
本発明のタイヤは、上述した本発明のトレッド用ゴム組成物を含むことを特徴とする。本発明のトレッド用ゴム組成物を用いることで、耐摩耗性と低転がり抵抗性とのバランス、及び、サステナブル材料の比率に優れたタイヤが得られる。
ここで、本発明のタイヤは、例えば、建設車両用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、航空機用タイヤ、乗用車用タイヤとして用いることができる。
【0126】
なお、上述した本発明のトレッド用ゴム組成物を用いる際は、例えば、未加硫のゴム組成物を用いて成形後に加硫して得てもよく、又は予備加硫工程等を経た半加硫ゴムを用いて成形後、さらに本加硫して得てもよい。なお、本実施形態のタイヤは、好ましくは空気入りタイヤであり、空気入りタイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【0127】
また、本発明のタイヤでは、上述した本発明のトレッド用ゴム組成物を、トレッド(ベーストレッド、キャップトレッド、アンダートレッド)に適用することを要するが、その他の種々の構成部材に適用することもできる。例えば、クッションゴム、ショルダー、サイドウォール、クリンチ、ビードフィラー、カーカスのコーティングゴム、インスレーション、チェーファー、インナーライナー等に用いることができ、また、ランフラットタイヤのサイド補強層等に用いることもできる。また、本発明のトレッド用ゴム組成物は、タイヤの他にも、ゴムクローラ、免震ゴム、ホース等にも適用することができる。
【実施例0128】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0129】
[参考実施例1-1、参考比較例1-1]
表1に示す配合に従って、常法で配合・混練することで、ゴム組成物のサンプルを調製した。表1では、各成分の配合量は整数で表記した。その他は小数点以下第1位で表記した。
【0130】
<評価>
得られた各サンプルについて、加硫処理を施した後、以下の評価(1)及び(2)を実施した。
(1)低転がり抵抗性
トレッド用ゴム組成物の各サンプルから得られた加硫ゴムの試験片について、粘弾性測定装置を使用し、温度60℃、歪2%、周波数52Hzで、tanδを測定した。
各例で測定されたtanδについて、参考比較例1-1のtanδを100として指数化した。指数値が小さいほど、加硫ゴムは発熱性が低く、加硫ゴムから得られるタイヤの転がり抵抗が小さい(低転がり抵抗性に優れる)ことを示す。評価結果は表1に示す。
【0131】
(2)サステナブル材料の配合部数、比率
トレッド用ゴム組成物の各サンプルについて、全配合部数のうち、サステナ材料配合部数の割合を、サステナブル材料配合部数(質量部)÷全配合部数(質量部)×100(質量%)で算出し、整数で表記した。
評価は、数値が大きい程、サステナブル材料の使用率が高く、良好であることを示す。評価結果は表1に示す。
【0132】
【0133】
*1 TSR#20、SP値=8.20(cal/cm3)1/2
*2 下記の方法で合成したヒドロカルビルオキシシラン化合物変性スチレン-ブタジエンゴム、Tg=-65℃、SP値=8.65(cal/cm3)1/2
*3 ブチルリチウムを開始剤として得られるSBRであってTgが-38℃で末端をN-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-トリエトキシシリル-1-プロパンアミンで変性したスチレン-ブタジエンゴム、Tg=-38℃、SP値=8.95(cal/cm3)1/2
*4 旭カーボン株式会社製、商品名「#80」
*5 東ソーシリカ株式会社製、商品名「ニップシールAQ」
*6 昭和電工株式会社製、商品名「ハイジライトHー43M」、平均粒径=1.0μm
*7 Evonik社製、商品名「Si75」
*8 日本ゼオン株式会社製、商品名「クイントン(登録商標)G100B」
*9 クレイトン社製、商品名「SYLVATRAXX8125」
*10 Sigma-Aldrich社製、製品番号「307564」
*11 老化防止剤と加硫促進剤と硫黄の合計量、参考比較例・参考実施例ともに同一部数で配合。
【0134】
(低Tg変性SBR(*2)の合成方法)
乾燥し、窒素置換した800mLの耐圧ガラス容器に、1,3-ブタジエンのシクロヘキサン溶液及びスチレンのシクロヘキサン溶液を、1,3-ブタジエン67.5g及びスチレン7.5gになるように加え、2,2-ジテトラヒドロフリルプロパン0.6mmolを加え、0.8mmolのn-ブチルリチウムを加えた後、50℃で1.5時間重合を行った。この際の重合転化率がほぼ100%となった重合反応系に対し、変性剤としてN,N-ビス(トリメチルシリル)-3-[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピルアミンを0.72mmol添加し、50℃で30分間変性反応を行った。その後、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)のイソプロパノール5質量%溶液2mLを加えて反応を停止させ、常法に従い乾燥して変性SBRを得た。
【0135】
[参考実施例2-1、参考比較例2-1]
表3に示す配合に従って、常法で配合・混練することで、ゴム組成物のサンプルを調製した。表3では、各成分の配合量は整数で表記した。その他は小数点以下第1位で表記した。
なお、表3中のカーボンブラック(CB1、CB2)、変性ブタジエンゴム(変性BR)については、以下の通り作製した。
【0136】
(カーボンブラックの作製)
カーボンブラックとして、CB1及びCB2を作製した。なお、各カーボンブラックにおける物性の制御は、表1に示すように各種条件(原料導入量、空気導入量、温度、圧力、反応時間など)を変更することにより行った。
作製したCB1及びCB2について、JIS K6217-3に準拠して、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド吸着比表面積(CTAB)[m2/g]を測定し、また、JIS K6217-1に準拠して、ヨウ素吸着量(IA)[mg/g]を測定した。また、作製したCB1~CB4について、水素分析装置(HORIBA社製、「EMGA」)を用い、アルゴン雰囲気中2000℃で15分間加熱したときに放出される水素ガスの量(水素放出量)を測定する。更に、作製したCB1~CB4について、ジブチルフタレート吸油量(DBP)を測定した。CTAB/IAの算出値とともに、結果をそれぞれ表2に示す。
【0137】
【0138】
(変性ブタジエンゴム(変性BR)の作製)
乾燥し、窒素置換した約900mLの耐圧ガラス容器に、シクロヘキサン283g、1,3-ブタジエン50g、2,2-ジテトラヒドロフリルプロパン0.0057mmol、及びヘキサメチレンイミン(HMI)0.513mmolを加え、更にn-ブチルリチウム(BuLi)0.57mmolを加えた後、撹拌装置を具えた50℃の温水浴中で4.5時間重合を行った。この際の重合転化率は、ほぼ100%であった。次に、この重合反応系に、変性剤(カップリング剤)として四塩化スズ0.100mmolを速やかに加え、更に50℃で30分間撹拌して変性反応を行った。その後、重合反応系に、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)のイソプロパノール溶液(BHT濃度:5質量%)0.5mLを加えて、反応を停止させ、更に常法に従って乾燥して、スズ原子を有する変性ブタジエンゴム(変性BR)を得た。得られた変性BRについて、1H-NMRスペクトルの積分比からブタジエン部分のビニル結合量を測定したところ、14%であり、DSC曲線の変曲点からガラス転移温度(Tg)を求めたところ、-95℃であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量分布曲線の全体の面積に対する最も高分子量側のピーク面積の割合からカップリング率を求めたところ、65%であった。
【0139】
<評価>
得られた各サンプルについて、145℃で33分間の加硫処理を施した後、以下の評価(3)~(5)を実施した。
(3)耐摩耗性
トレッド用ゴム組成物の各サンプルから得られた加硫ゴムの加硫ゴムの試験片について、ランボーン式摩耗試験機を用い、スリップ率60%での摩耗量を測定した。なお、摩耗量は、逆数を算出し、参考比較例2-1の値を100として指数化した。指数値が大きいほど、摩耗量が少なく、耐摩耗性に優れることを示す。評価結果は表3に示す。
【0140】
(4)低転がり抵抗性
ゴム組成物の各サンプルから得られた加硫ゴムの試験片について、粘弾性測定装置(上島製作所社製)を使用し、温度50℃、歪0.1%、周波数52Hzで、tanδを測定した。
各例で測定されたtanδについて、参考比較例2-1のtanδを100として指数化した。指数値が小さいほど、加硫ゴムは発熱性が低く、加硫ゴムから得られるタイヤの転がり抵抗が小さい(低転がり抵抗性に優れる)ことを示す。評価結果は表3に示す。
トレッド用ゴム組成物の各サンプルから得られた加硫ゴムの試験片について、粘弾性測定装置を使用し、温度60℃、歪2%、周波数52Hzで、tanδを測定した。
各例で測定されたtanδについて、逆数を算出し、参考比較例2-1の逆数を100として指数化した。指数値が大きいほど、加硫ゴムは発熱性が低く、加硫ゴムから得られるタイヤの転がり抵抗が小さい(低転がり抵抗性に優れる)ことを示す。評価結果は表3に示す。
【0141】
(5)総合評価
各例における耐摩耗性の指数値及び低転がり抵抗性の指数値を用い、下記式から算出される指数値により総合評価を行った。指数値が大きいほど、耐摩耗性及び低転がり抵抗性のバランスに優れることを示す。
総合評価指数=(耐摩耗性の指数値-100)+(転がり抵抗の指数値-100)
【0142】
【0143】
*1 NR:TSR♯20
*2 シリカ:東ソーシリカ社製、「NIPSIL AQ」
*3 シランカップリング剤:ビストリエトキシシリルプロピルポリスルフィド、株式会社大阪ソーダ製
*4 加硫促進剤:N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、大内新興化学工業株式会社製、「ノクセラーCZ」
【0144】
表1の結果から、参考実施例1-1のゴム組成物は、低転がり抵抗性に優れるとともに、サステナブル材料比率についても良好であることもわかる。一方、参考比較例1-1のゴム組成物については、各参考実施例1-1よりも劣った結果を示しており、低転がり抵抗性及びサステナブル材料比率との両立が難しいことがわかる。
また、表3の結果から参考実施例2-1のゴム組成物は、参考比較例2-1のゴム組成物に比べて総合評価が高く、耐摩耗性及び低転がり抵抗性のバランスに優れることが分かる。
そして、表1及び表3の結果を勘案すると、本発明のトレッド用ゴム組成物は、従来のゴム組成物に比べて、耐摩耗性と低転がり抵抗性とのバランス、及び、サステナブル材料の比率に優れるものであることが期待できる。