(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022809
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/532 20060101AFI20250206BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20250206BHJP
A61F 13/533 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
A61F13/532 200
A61F13/53 100
A61F13/53 300
A61F13/533 200
A61F13/533 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024123379
(22)【出願日】2024-07-30
(31)【優先権主張番号】P 2023125804
(32)【優先日】2023-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森谷 晶絵
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA14
3B200BB05
3B200BB17
3B200CA02
3B200CA11
3B200DA16
3B200DB01
3B200DB02
3B200DB05
3B200DB23
(57)【要約】
【課題】簡素な構造で、逆戻り防止性及び拡散性の両者を向上させる。
【解決手段】上記課題は、股間部Mを含む前後方向LD範囲に設けられた吸収体56、及びこの吸収体56を包む包装シート58を有する吸収要素50を備え、吸収体56は、パルプ繊維及び高吸収性ポリマー粒子を混合・集積してなり、吸収要素50は、吸収要素50の表面から吸収体56内まで窪むように厚み方向TDに圧縮された複数の高圧縮部51が間隔を空けて設けられ、複数の高圧縮部51の配置領域における高圧縮部51以外の部分は高圧縮部51よりも厚くかつ低密度の非高圧縮部52であり、高圧縮部51における吸収体56の密度は60000~250000g/m
3であり、個々の高圧縮部51の面積は2~200mm
2である吸収性物品により解決される。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
股間部を有しており、
前記股間部を含む前後方向範囲に設けられた吸収体、及びこの吸収体を包む包装シートを有する吸収要素を備え、
前記吸収体は、広葉樹パルプ繊維を含むパルプ繊維と、高吸収性ポリマー粒子とを混合・集積してなるものであり、
前記吸収要素は、前記吸収要素の表裏少なくとも一方の面から前記吸収体内まで窪むように厚み方向に圧縮された複数の高圧縮部が間隔を空けて設けられ、
前記複数の高圧縮部の配置領域における前記高圧縮部以外の部分は、前記高圧縮部よりも厚くかつ低密度の非高圧縮部であり、
前記高圧縮部における前記吸収体の密度は60000~250000g/m3であり、
個々の前記高圧縮部の面積は2~200mm2である、
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
股間部を有しており、
前記股間部を含む前後方向範囲に設けられた吸収体、及びこの吸収体を包む包装シートを有する吸収要素を備え、
前記吸収体は、広葉樹パルプ繊維を含むパルプ繊維と、高吸収性ポリマー粒子とを混合・集積してなるものであり、
前記吸収要素は、前記吸収要素の表裏少なくとも一方の面から前記吸収体内まで窪むように厚み方向に圧縮された複数の高圧縮部が間隔を空けて設けられ、
前記複数の高圧縮部の配置領域における前記高圧縮部以外の部分は、前記高圧縮部よりも厚くかつ低密度の非高圧縮部であり、
前記複数の高圧縮部の各々は、最も近い他の前記高圧縮部に対する最短距離が1~4mmである、
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項3】
前記複数の高圧縮部の配置領域における前記高圧縮部の面積率が10~35%であり、
前記非高圧縮部の外形に内接する最大の内接円の直径が30mm以下である、
請求項1又は2記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記高圧縮部は変曲点及び屈曲点を有しない外形を有するとともに、前記高圧縮部の外形に内接する最大の内接円の直径が1~10mmであり、かつ前記高圧縮部の外形の周長が前記高圧縮部の外形に内接する最大の内接円の周長の1~15倍である、
請求項3記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記複数の高圧縮部の配置領域に、第1方向に沿う第1仮想直線が、前記第1仮想直線に対して平面視で時計回りに80~90°傾斜した第2方向に第1間隔を空けて繰り返し配列されるとともに、前記第2方向に沿う第2仮想直線が前記第1方向に第2間隔を空けて繰り返し配列されて形成される仮想格子を定めるとともに、
前記第1仮想直線と前記第2仮想直線との交点を頂点とする最小の仮想四角形を定めたとき、
前記高圧縮部は、前記第1仮想直線と前記第2仮想直線との交点位置に配置された第1高圧縮部と、前記第1仮想直線における隣り合う第1高圧縮部の間、及び前記第2仮想直線における隣り合う第1高圧縮部の間にそれぞれ配置された第2高圧縮部と、前記仮想四角形の対角線の交点位置に配置された第3高圧縮部とからなり、
前記第1高圧縮部は、前記第1仮想直線と前記第2仮想直線との交点を中心とする円形をなし、
前記第2高圧縮部は、前記仮想四角形の各辺の中点に重心を有し、かつ各辺に沿う長軸を有する楕円形若しくは角丸矩形であり、
前記第3高圧縮部は、前記仮想四角形の対角線の交点に重心を有し、かつ前後方向に沿う長軸を有する楕円形若しくは角丸矩形、又は前記仮想四角形の対角線の交点を中心とする円形である、
請求項3記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記第1高圧縮部は、直径が1~4mmであり、
前記第2高圧縮部は、長軸の長さが3~6mmで、かつ短軸の長さが前記第1高圧縮部の直径に等しく、
前記第3高圧縮部は、長軸の向きが前後方向に沿う以外は前記第2高圧縮部と同寸及び同形状をなしており、
隣接する前記第1高圧縮部と前記第2高圧縮部との最小間隔は、1~2mmである、
請求項5記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記仮想格子は、前記第1仮想直線が前後方向に対して平面視で時計回りに40~50°傾斜するとともに、前記第2仮想直線が前後方向に対して平面視で反時計回りに40~50°傾斜した斜め格子状をなしている、
請求項3記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記吸収体における前記パルプ繊維の目付けが100~500g/m2であり、
前記吸収体におけるパルプ繊維:高吸収性ポリマー粒子が、重量比で40:60~65:35であり、
前記非高圧縮部の厚みは3~13mmであり、
前記高圧縮部の厚みは前記非高圧縮部の厚みの60~90%である、
請求項1又は2記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記吸収体の全パルプ繊維において、繊維長0.5mm以上1.1mm未満のパルプ繊維の割合が質量基準で40%以上であり、繊維幅10μm以上35μm未満のパルプ繊維の割合が質量基準で90%以上である、
請求項1又は2記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記吸収体のパルプ繊維は、針葉樹パルプ繊維及び前記広葉樹パルプ繊維からなり、
前記針葉樹パルプ繊維に対する前記広葉樹パルプ繊維の質量比が25/75以上38/62以下である、
請求項9記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、パンティライナー(おりものシート)等の吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品の吸収体(吸収性コア等ともいう)は、パルプ繊維と高吸収性ポリマー粒子とを含むものが一般的である。パルプ繊維としては、針葉樹パルプ(NBKP)繊維(針葉樹由来のパルプ繊維)が多く用いられてきたが、近年、広葉樹パルプ(LBKP)繊維が針葉樹パルプ繊維に比べて比較的安価である等の理由で、広葉樹パルプ繊維(広葉樹由来のパルプ繊維)の利用も検討されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
しかしながら、広葉樹パルプ繊維及び針葉樹パルプ繊維の両者を含むパルプ繊維と、高吸収性ポリマー粒子とを混合・集積してなる吸収体は、針葉樹パルプ繊維のみからなるパルプ繊維と高吸収性ポリマー粒子とを混合・集積してなる吸収体と比較して、液拡散性が低く、かつ液吸収後の強度(耐久性)も低いという問題点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-014646号公報
【特許文献2】特許7293479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の主たる課題は、広葉樹パルプ繊維を含有する吸収体において、液吸収後の強度及び液拡散性の両者を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した吸収性物品の一態様を以下に示す。
<第1の態様>
股間部を有しており、
前記股間部を含む前後方向範囲に設けられた吸収体、及びこの吸収体を包む包装シートを有する吸収要素を備え、
前記吸収体は、広葉樹パルプ繊維を含むパルプ繊維と、高吸収性ポリマー粒子とを混合・集積してなるものであり、
前記吸収要素は、前記吸収要素の表裏少なくとも一方の面から前記吸収体内まで窪むように厚み方向に圧縮された複数の高圧縮部が間隔を空けて設けられ、
前記複数の高圧縮部の配置領域における前記高圧縮部以外の部分は、前記高圧縮部よりも厚くかつ低密度の非高圧縮部であり、
前記高圧縮部における前記吸収体の密度は60000~250000g/m3であり、
個々の前記高圧縮部の面積は2~200mm2である、
ことを特徴とする吸収性物品。
【0007】
(作用効果)
本発明者らは、広葉樹パルプ繊維を含有する吸収体における、液拡散性の低さ及び液吸収後の強度(耐久性)も低さの原因が、広葉樹パルプ繊維の繊維長が針葉樹パルプ繊維よりも短いことにあることを知見した。よって、液拡散性の低さ及び液吸収後の強度を改善するためには広葉樹パルプ繊維の繊維長が長いほど好ましいが、広葉樹パルプ繊維は天然由来のものであり、繊維長等の特性を調整するには限界がある。また、広葉樹パルプ繊維の配合量を減らすことはコストメリットの低下をもたらすため好ましくない。
これに対して、本態様の密度及び面積を有する高圧縮部を設けると、後述の実験結果からも明らかなように、広葉樹パルプ繊維を含有する吸収体において、液吸収後の強度及び液拡散性を向上させることができる。すなわち、高圧縮部は押圧(直接的な加圧)により厚み方向に圧縮されて厚みがほぼ等しくなった高密度部分であり、吸収要素の表裏少なくとも一方の面から窪んだ窪みの底部である。このような高密度部分は液吸収により膨張したとしても繊維の交絡が断たれにくい性質を有する。一方、非高圧縮部は高圧縮部よりも厚くかつ低密度の部分であるが、非高圧縮部であっても高圧縮部の周囲近くでは、高圧縮部の変形に引っ張られるように吸収体が変形する結果、高圧縮部に近づくにつれて密度は増加する。このため、高圧縮部においては毛管現象が強く発現し、液保持性が周囲よりも高くなるだけでなく、高圧縮部に向かって液が吸い寄せられる。よって、本態様のように間隔を空けて設けられた個々の高圧縮部がある程度の面積を有していると、液吸収後の吸収体の強度が低下しにくくなるとともに、より多くの排泄液に対して毛管現象による吸引力が作用して、吸収体により吸収した排泄液がより広範囲に拡散するようになる。
【0008】
<第2の態様>
股間部を有しており、
前記股間部を含む前後方向範囲に設けられた吸収体、及びこの吸収体を包む包装シートを有する吸収要素を備え、
前記吸収体は、広葉樹パルプ繊維を含むパルプ繊維と、高吸収性ポリマー粒子とを混合・集積してなるものであり、
前記吸収要素は、前記吸収要素の表裏少なくとも一方の面から前記吸収体内まで窪むように厚み方向に圧縮された複数の高圧縮部が間隔を空けて設けられ、
前記複数の高圧縮部の配置領域における前記高圧縮部以外の部分は、前記高圧縮部よりも厚くかつ低密度の非高圧縮部であり、
前記複数の高圧縮部の各々は、最も近い他の前記高圧縮部に対する最短距離が1~4mmである、
ことを特徴とする吸収性物品。
【0009】
(作用効果)
本態様では、高圧縮部の配置が過度に疎らとならないことにより、後述の実験結果から明らかなように、広葉樹パルプ繊維を含有する吸収体において、液吸収後の強度及び液拡散性を向上させることができる。すなわち、高圧縮部は押圧(直接的な加圧)により厚み方向に圧縮されて厚みがほぼ等しくなった高密度部分であり、吸収要素の表裏少なくとも一方の面から窪んだ窪みの底部である。このような高密度部分は液吸収により膨張したとしても繊維の交絡が断たれにくい性質を有する。一方、非高圧縮部は高圧縮部よりも厚くかつ低密度の部分であるが、非高圧縮部であっても高圧縮部の周囲近くでは、高圧縮部の変形に引っ張られるように吸収体が変形する結果、高圧縮部に近づくにつれて密度は増加する。このため、高圧縮部においては毛管現象が強く発現し、液保持性が周囲よりも高くなるだけでなく、高圧縮部に向かって液が吸い寄せられる。よって、本態様のように高圧縮部がある程度近い間隔で設けられていると、液吸収後の吸収体の強度が低下しにくくなるとともに、より多くの排泄液に対して毛管現象による吸引力が作用して、吸収体により吸収した排泄液がより広範囲に拡散するようになる。
【0010】
<第3の態様>
前記複数の高圧縮部の配置領域における前記高圧縮部の面積率が10~35%であり、
前記非高圧縮部の外形に内接する最大の内接円の直径が30mm以下である、
第1又は2の態様の吸収性物品。
【0011】
(作用効果)
本態様のように、高圧縮部を特に密に配置すると、前述の液拡散性の向上がより一層のものとなる。
さらに、非高圧縮部であっても高圧縮部の周囲近くでは、高圧縮部の変形に引っ張られるように吸収体が変形する結果、高圧縮部が無い場合と比べて吸収体が薄くなるという利点ももたらされる。
これらの観点から、高圧縮部の面積率が上述の範囲内であるとともに、高圧縮部の配置が疎らとならないように(非高圧縮部が全方向に長く続かないように)、非高圧縮部の外形に内接する最大の内接円の直径が上述の範囲内であると、特に好ましい。
従来は、高圧縮部を密に配置することはあまり好ましくないと考えられていたため、本態様のように高圧縮部の密な配置を採用することは通常行われる最適化の範疇にないものである。
【0012】
<第4の態様>
前記高圧縮部は変曲点及び屈曲点を有しない外形を有するとともに、前記高圧縮部の外形に内接する最大の内接円の直径が1~10mmであり、かつ前記高圧縮部の外形の周長が前記高圧縮部の外形に内接する最大の内接円の周長の1~15倍である、
第3の態様の吸収性物品。
【0013】
(作用効果)
高圧縮部の寸法、形状は適宜定めることができる。しかし、高圧縮部は硬質な部分となるため、高圧縮部の寸法が過度に大きかったり、高圧縮部の形状が一方向に過剰に長かったり、過剰に入り組んだ外形を有していたりすると、吸収体全体としての柔軟性が不足したり、吸収体内に異物が混入しているかのような肌触り(異物感)を生じたりするおそれがある。よって、高圧縮部の寸法、形状は本態様の範囲内であると好ましい。
【0014】
<第5の態様>
前記複数の高圧縮部の配置領域に、第1方向に沿う第1仮想直線が、前記第1仮想直線に対して平面視で時計回りに80~90°傾斜した第2方向に第1間隔を空けて繰り返し配列されるとともに、前記第2方向に沿う第2仮想直線が前記第1方向に第2間隔を空けて繰り返し配列されて形成される仮想格子を定めるとともに、
前記第1仮想直線と前記第2仮想直線との交点を頂点とする最小の仮想四角形を定めたとき、
前記高圧縮部は、前記第1仮想直線と前記第2仮想直線との交点位置に配置された第1高圧縮部と、前記第1仮想直線における隣り合う第1高圧縮部の間、及び前記第2仮想直線における隣り合う第1高圧縮部の間にそれぞれ配置された第2高圧縮部と、前記仮想四角形の対角線の交点位置に配置された第3高圧縮部とからなり、
前記第1高圧縮部は、前記第1仮想直線と前記第2仮想直線との交点を中心とする円形をなし、
前記第2高圧縮部は、前記仮想四角形の各辺の中点に重心を有し、かつ各辺に沿う長軸を有する楕円形若しくは角丸矩形であり、
前記第3高圧縮部は、前記仮想四角形の対角線の交点に重心を有し、かつ前後方向に沿う長軸を有する楕円形若しくは角丸矩形、又は前記仮想四角形の対角線の交点を中心とする円形である、
第3又は4の態様の吸収性物品。
【0015】
(作用効果)
高圧縮部の配置領域における高圧縮部の形状及び配置パターンは適宜定めればよいが、本態様のパターンであると、第2高圧縮部の長軸方向(第1方向及び第2方向)における拡散性を向上させることができるとともに、第1方向に非高圧縮部が直線的に連続する部分及び第2方向に非高圧縮部が直線的に連続する部分の両者を有することとなるため、個々の高圧縮部が硬質化するとしても、吸収体全体としては身体表面に沿うように変形しやすいものとなる。
【0016】
<第6の態様>
前記第1高圧縮部は、直径が1~4mmであり、
前記第2高圧縮部は、長軸の長さが3~6mmで、かつ短軸の長さが前記第1高圧縮部の直径に等しく、
前記第3高圧縮部は、長軸の向きが前後方向に沿う以外は前記第2高圧縮部と同寸及び同形状をなしており、
隣接する前記第1高圧縮部と前記第2高圧縮部との最小間隔は、1~2mmである、
第5の態様の吸収性物品。
【0017】
(作用効果)
前述の仮想格子に沿って高圧縮部を配列する場合、各高圧縮部の寸法は適宜定めることができるが、本態様の範囲内であると、液拡散性の向上はもちろん、吸収体の変形容易性も向上するため好ましい。
【0018】
<第7の態様>
前記仮想格子は、前記第1仮想直線が前後方向に対して平面視で時計回りに40~50°傾斜するとともに、前記第2仮想直線が前後方向に対して平面視で反時計回りに40~50°傾斜した斜め格子状をなしている、
第5又は6の態様の吸収性物品。
【0019】
(作用効果)
前述のように仮想格子に沿って高圧縮部を配列する場合、本態様のように斜め格子状に配列されていると、着用時の吸収体の変形容易性はもちろん、液の拡散性にも優れるため好ましい。
【0020】
<第8の態様>
前記吸収体における前記パルプ繊維の目付けが100~500g/m2であり、
前記吸収体におけるパルプ繊維:高吸収性ポリマー粒子が、重量比で40:60~65:35であり、
前記非高圧縮部の厚みは3~13mmであり、
前記高圧縮部の厚みは前記非高圧縮部の厚みの60~90%である、
第1~7のいずれか1つの態様の吸収性物品。
【0021】
(作用効果)
一般に、逆戻り防止性を向上させる場合、液保持性の高い高吸収性ポリマー粒子の混合比率を高めることが多い。また近年では、吸収体の薄型化を図る等の目的で、高吸収性ポリマー粒子の混合比率を高めることも多い。しかし、高吸収性ポリマー粒子の混合比率を高めると、高圧縮部の形状維持性が低下するだけでなく、非高圧縮部における高圧縮部の周囲近くで、高圧縮部の変形に引っ張られるように吸収体が変形しにくくなり、拡散性が向上しにくくなるおそれがある。また、排泄液を吸収し膨張した高吸収性ポリマー粒子同士が密着し、排泄液の拡散を阻害する現象(ゲルブロッキング)が発生しやすくなるため、拡散性が向上しにくくなるおそれもある。よって、吸収体におけるパルプ繊維及び高吸収性ポリマー粒子の配合を本態様の範囲内として、本態様の範囲内で高圧縮部の圧縮形成を行うと好ましい。
【0022】
<第9の態様>
前記吸収体の全パルプ繊維において、繊維長0.5mm以上1.1mm未満のパルプ繊維の割合が質量基準で40%以上であり、繊維幅10μm以上35μm未満のパルプ繊維の割合が質量基準で90%以上である、
第1~8のいずれか1つの態様の吸収性物品。
【0023】
(作用効果)
広葉樹パルプ繊維とそれよりも平均繊維長が長い繊維を組み合わせてパルプ繊維の繊維長分布を本態様のようにすることで、吸収体の吸収容量及び吸収速度を確保しつつ、毛管現象による繊維の液保持能も有することができ、それによって逆戻り防止性を向上させることができる。しかし、それだけでは液拡散性に改善の余地がある。よって、前述の高圧縮部と組み合わせることで、液拡散性も向上させるのは好ましい。
【0024】
<第10の態様>
前記吸収体のパルプ繊維は、針葉樹パルプ繊維及び前記広葉樹パルプ繊維からなり、
前記針葉樹パルプ繊維に対する前記広葉樹パルプ繊維の質量比が25/75以上38/62以下である、
第9の態様の吸収性物品。
【0025】
(作用効果)
後述する実験例からも分かるように、吸収体のパルプ繊維は本態様の配合であると特に好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、広葉樹パルプ繊維を含有する吸収体において、液吸収後の強度及び液拡散性の両者を向上させることができる、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの内面を示す、平面図である。
【
図2】展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの外面を示す、平面図である。
【
図5】(a)
図1の4-4断面図、及び(b)
図1の5-5断面図である。
【
図6】パンツタイプ使い捨ておむつの斜視図である。
【
図7】展開状態の内装体の外面を外装体の輪郭とともに示す、平面図である。
【
図8】吸収体の表面を包装シートの輪郭とともに示す、平面図である。
【
図11】吸収要素の表面の要部を拡大して示す平面図である。
【
図13】吸収体を包装シートで包装する前の状態の吸収要素を示す断面図である。
【
図14】吸収体を包装シートで包装した後、高圧縮部を形成する前の状態の吸収要素を示す断面図である。
【
図16】吸収要素の表面の要部を拡大して示す平面図である。
【
図17】吸収要素の表面の要部を拡大して示す平面図である。
【
図18】吸収要素の表面の要部を拡大して示す平面図である。
【
図19】吸収要素の表面の要部を拡大して示す平面図である。
【
図20】吸収要素の表面の要部を拡大して示す平面図である。
【
図21】吸収要素の表面の要部を拡大して示す平面図である。
【
図25】吸収要素の製造設備例を示す概略図である。
【
図26】吸収要素の製造設備例を示す概略図である。
【
図27】打ち付け試験機を概略的に示す側面図である。
【
図28】打ち付け試験機を概略的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、吸収性物品の一例として、パンツタイプ使い捨ておむつについて添付図面を参照しつつ詳説する。厚み方向に隣接する各構成部材は、以下に述べる固定又は接合部分以外も、必要に応じて公知のおむつと同様に固定又は接合される。断面図における点模様部分は、この固定又は接合手段としてのホットメルト接着剤等の接着剤を示している。ホットメルト接着剤は、スロット塗布、連続線状又は点線状のビード塗布、スパイラル状、Z状、波状等のスプレー塗布、又はパターンコート(凸版方式でのホットメルト接着剤の転写)等、公知の手法により塗布することができる。これに代えて又はこれとともに、弾性部材の固定部分では、ホットメルト接着剤を弾性部材の外周面に塗布し、弾性部材を隣接部材に固定することができる。ホットメルト接着剤としては、例えばEVA系、粘着ゴム系(エラストマー系)、ポリオレフィン系、ポリエステル・ポリアミド系などの種類のものが存在するが、特に限定無く使用できる。各構成部材を接合する固定又は接合手段としてはヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段を用いることもできる。厚み方向の液の透過性が要求される部分では、厚み方向に隣接する構成部材は間欠的なパターンで固定又は接合される。例えば、ホットメルト接着剤によりこのような間欠的な固定又は接合を行う場合、スパイラル状、Z状、波状等の間欠パターン塗布を好適に用いることができ、一つのノズルによる塗布幅以上の範囲に塗布する場合には、幅方向に間隔を空けて又は空けずにスパイラル状、Z状、波状等の間欠パターン塗布を行うことができる。各構成部材を接合する接合手段としてはヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段を用いることもできる。
【0029】
また、以下の説明における不織布としては、部位や目的に応じて公知の不織布を適宜使用することができる。不織布の構成繊維としては、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維(単成分繊維の他、芯鞘等の複合繊維も含む)の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維等、特に限定なく選択することができ、これらを混合して用いることもできる。不織布の柔軟性を高めるために、構成繊維を捲縮繊維とするのは好ましい。また、不織布の構成繊維は、親水性繊維(親水化剤により親水性となった繊維を含む)であっても、疎水性繊維若しくは撥水性繊維(撥水剤により撥水性となった繊維を含む)であってもよい。また、不織布は一般に繊維の長さや、シート形成方法、繊維結合方法、積層構造により、短繊維不織布、長繊維不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、サーマルボンド(エアスルー)不織布、ニードルパンチ不織布、ポイントボンド不織布、積層不織布(スパンボンド層間にメルトブローン層を挟んだSMS不織布、SMMS不織布等を含む)等に分類されるが、これらのどの不織布も用いることができる。
【0030】
図1~
図6は、パンツタイプ使い捨ておむつの一例を示している。本パンツタイプ使い捨ておむつは、前側の胴周り部を構成する長方形の前外装体12F及び後側の胴周り部を構成する長方形の後外装体12Bと、前外装体12Fから股間部Mを経て後外装体12Bまで延在するように外装体12F,12Bの内側に設けられた内装体200とを備えている。前外装体12Fの両側部と後外装体12Bの両側部とが接合されてサイドシール12Aが形成されており、これにより、外装体12F,12Bの前後端部により形成される開口が着用者の胴を通すウエスト開口WOとなり、内装体200の幅方向両側において外装体12F,12Bの下縁及び内装体200の側縁によりそれぞれ囲まれる部分が脚を通す脚開口LOとなっている。内装体200は、尿等の排泄物等を吸収保持する部分であり、外装体12F,12Bは着用者の身体に対して内装体200を支えるための部分である。また、符号Yは展開状態におけるおむつの全長(前身頃Fのウエスト開口WOの縁から後身頃Bのウエスト開口WOの縁までの前後方向長さ)を示しており、符号Xは展開状態におけるおむつの全幅を示している。
【0031】
本パンツタイプ使い捨ておむつは、サイドシール12Aを有する前後方向範囲(ウエスト開口WOから脚開口LOの上端に至る前後方向範囲)として定まる胴周り領域Tと、脚開口LOを形成する部分の前後方向範囲(前身頃Fのサイドシール12Aを有する前後方向領域と後身頃Bのサイドシール12Aを有する前後方向領域との間)として定まる中間領域Lとを有する。前外装体12F及び後外装体12Bにおける胴周り領域Tに位置する部分、つまり前側の胴周り部及び後側の胴周り部は、概念的にウエスト開口の縁部を形成する「ウエスト部」Wと、これよりも下側の部分である「ウエスト下方部」Uとに分けることができる。通常、前側の胴周り部及び後側の胴周り部内に幅方向WDの伸縮応力が変化する境界(例えば弾性部材の太さや伸長率が変化する)を有する場合は、最もウエスト開口WO側の境界よりもウエスト開口WO側がウエスト部Wとなり、このような境界が無い場合は吸収体56又は内装体200よりもウエスト開口WO側に延び出たウエスト延出部分12Eがウエスト部Wとなる。これらの前後方向の長さは、製品のサイズによって異なり、適宜定めることができるが、一例を挙げると、ウエスト部Wは15~40mm、ウエスト下方部Uは65~120mmとすることができる。一方、中間領域Lの両側縁は着用者の脚周りに沿うようにコ字状又は曲線状に括れており、ここが着用者の脚を入れる部位となる。この結果、展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつは、全体として略砂時計形状をなしている。
【0032】
(外装体)
外装体12F,12Bは、図示例のように、前身頃Fの少なくとも胴周り部を構成する部分である長方形の前外装体12Fと、後身頃Bの少なくとも胴周り部を構成する部分である長方形の後外装体12Bとからなり、前外装体12F及び後外装体12Bは股間側で連続しておらず、前後方向LDに離間されたものとなっていても(外装二分割タイプ)よいし、図示しないが前身頃から後身頃まで連続していても(外装一体タイプ)よい。外装二分割タイプにおける前後方向の離間距離12dは例えば全長Yの40~60%程度とすることができる。図示例では、前外装体12F及び後外装体12Bの下縁は幅方向WDに沿う直線状となっているが、前外装体12F及び後外装体12Bの少なくとも一方の下縁が脚周りに沿うような曲線状となっていてもよい。
【0033】
外装二分割タイプのパンツタイプ使い捨ておむつでは、前外装体12F及び後外装体12Bとの間に内装体200が露出するため、内装体200の裏面に液不透過性シート11が露出しないように、内装体200の裏面には、前外装体12Fと内装体200との間から、後外装体12Bと内装体200との間にわたるカバー不織布13を備えていることが好ましい。カバー不織布13の内面及び外面は、それぞれ対向面にホットメルト接着剤を介して接着することができる。カバー不織布13に用いる不織布は、例えば外装体12F,12Bの素材と同様のものを適宜選択することができる。なお、図示しないが、外装体は前身頃Fから後身頃Bにかけて股間を通り連続していてもよい。この場合、外装体は胴周り領域Tに対応する部分のみならず、中間領域Lと対応する部分を有するものとなる。
【0034】
前外装体12F及び後外装体12Bは、胴周り領域Tを構成する前胴周り部及び後側の胴周り部を有する。
図1及び
図2に示す例では、前外装体12F及び後外装体12Bの前後方向LDの寸法が等しく、前外装体12F及び後外装体12Bは中間領域Lと対応する部分を有していないが、
図7に示すように、前外装体12Fよりも後外装体12Bの前後方向寸法が長く、前外装体12Fには中間領域Lと対応する部分を有しないが、後外装体12Bは胴周り領域Tから中間領域L側に延び出た臀部カバー部Cを有していてもよい。図示しないが、前外装体12Fにも胴周り領域Tから中間領域L側に延び出る鼠蹊カバー部を設けてもよい。
【0035】
外装体12F,12Bは、
図4及び
図5に示されるように、後述する弾性部材16~19の外側及び内側にそれぞれ隣接する外側シート層及び内側シート層がホットメルト接着剤や溶着等の接合手段により接合されたものである。外側シート層及び内側シート層は、図示例のように2枚のシート材12S,12Hにより形成する他、一枚のシート材により形成することもできる。例えば、後者の場合、外装体12F,12Bの一部又は全部において、ウエスト開口WOの縁(股間側の縁としても良い)で折り返された一枚のシート材の内側の部分及び外側の部分により内側シート層及び外側シート層がそれぞれ形成される。図示例は、前者の例であり、ウエスト下方部における外側シート層を形成するシート材12Sは、ウエスト下方部における内側シート層を形成するシート材12Hのウエスト開口WO側を回り込んでその内側に折り返されており、この折り返し部分12rは内装体200のウエスト開口WO側の端部上までを被覆するように延在されている。一方、ウエスト部では、折り返し部分12rが弾性部材の内側に隣接する内側シート層となっている。
【0036】
外装体12F,12Bには、着用者の胴周りに対するフィット性を高めるために、弾性部材16~19が内蔵されており、弾性部材16~19の伸縮を伴って幅方向WDに弾性伸縮する伸縮領域A2が形成されている。この伸縮領域A2では、外装体12F,12Bは、自然長の状態では弾性部材の収縮に伴って収縮し、皺又は襞が形成されており、弾性部材の長手方向に伸長すると、皺なく伸び切る所定の伸長率まで伸長が可能である。弾性部材16~19としては、糸ゴム等の細長状の弾性部材(図示例)のほか、帯状、網状、フィルム状等、公知の弾性部材を特に限定なく用いることができる。弾性部材16~19としては合成ゴムを用いても、天然ゴムを用いても良い。
【0037】
図示例の弾性部材16~19についてより詳細に説明すると、外装体12F,12Bのウエスト部Wには、幅方向WDの全体にわたり連続するように、複数のウエスト弾性部材17が前後方向に間隔を空けて取り付けられている。また、ウエスト弾性部材17のうち、ウエスト下方部Uに隣接する領域に配設される1本又は複数本については、内装体200と重なっていてもよいし、内装体200と重なる幅方向中央部を除いてその幅方向両側にそれぞれ設けてもよい。このウエスト弾性部材17としては、太さ155~1880dtex、特に470~1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05~1.5mm2、特に0.1~1.0mm2程度)の糸ゴムを、2~12mmの間隔、特に3~7mmの間隔で、2~15本程度、特に4~10本程度設けるのが好ましく、これによるウエスト部Wの幅方向WDの伸長率は150~400%、特に220~320%程度であるのが好ましい。また、ウエスト部Wは、その前後方向LDのすべてに同じ太さの弾性部材を用いたり、同じ伸長率にしたりする必要はなく、例えば部分的に太さや伸長率が異なるようにしてもよい。
【0038】
また、外装体12F,12Bのウエスト下方部Uには、細長状の弾性部材からなるウエスト下方弾性部材16,19が複数本、前後方向に間隔を空けて取り付けられて、ウエスト下方伸縮領域(ウエスト下方弾性部材16,19を有する領域)が形成されている。ウエスト下方弾性部材16,19としては、太さ155~1880dtex、特に470~1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05~1.5mm2、特に0.1~1.0mm2程度)の糸ゴムを、1~15mm、特に3~8mmの間隔で5~30本程度設けるのが好ましく、これによるウエスト下方部Uの幅方向WDの伸長率は200~350%、特に240~300%程度であるのが好ましい。また、ウエスト下方部Uは、その前後方向LDのすべてに同じ太さの弾性部材を用いたり、同じ伸長率にしたりする必要はなく、部分的に太さや伸長率が異なるようにしてもよい。
【0039】
図示例のウエスト下方部Uのように、吸収体56を有する前後方向範囲に弾性部材16,19を設ける場合には、その一部又は全部において吸収体56の幅方向WDの収縮を防止するために、
図4、
図5及び
図12等に示すように、吸収体56と幅方向WDに重なる部分の一部又は全部を含む幅方向中間が非伸縮領域A1とされ、その幅方向両側が伸縮領域A2とされている(図示例ではウエスト下方伸縮領域となる)と好ましい。非伸縮領域A1の幅方向の両側に設けられる伸縮領域A2の幅方向の寸法は、図示例のように前後方向LDにほぼ一定とするほか、図示しないが前後方向LDに変化させることもできる。また、非伸縮領域A1の幅方向WDの両側に設けられる伸縮領域A2の幅方向WDの寸法は、前身頃F及び後身頃Bでほぼ同じとするほか、異なるものとすることもできる。
【0040】
このような伸縮領域A2及び非伸縮領域A1は、内側シート層と外側シート層との間に、弾性部材16~17,19を取り付けた後、非伸縮領域A1となる領域の幅方向中間の1か所又はほぼ全体にわたり、弾性部材16,19を加圧及び加熱、又は切断により細かく切断し、伸縮領域A2に伸縮性を残しつつ非伸縮領域A1では伸縮性を殺すことにより構築することができる。なお、非伸縮領域A1には伸縮性の形成に実質的に寄与しない不要弾性部材18が残ることになる。
【0041】
内側シート層及び外側シート層を形成するシート材12S,12Hとしては、特に限定無く使用できるが不織布が好ましい。不織布を用いる場合、1枚あたりの目付けは10~30g/m2程度とするのが好ましい。
【0042】
弾性部材16~19は、公知の方法により外装体12F,12Bに固定することができる。また、内側シート層及び外側シート層も、公知の方法により互いに接合することができる。例えば、外装体12F,12Bにおける弾性部材16~19を有する部分では、コームガンやシュアラップノズル等の塗布手段により弾性部材16~19の外周面にのみホットメルト接着剤HMを塗布して内側シート層及び外側シート層の間に挟むことにより、当該弾性部材16~19の外周面に塗布したホットメルト接着剤HMのみで、内側シート層及び外側シート層への弾性部材16~19の固定と、内側シート層及び外側シート層の固定とを行うことができる。
【0043】
(内装体接合部)
内装体200の外装体12F,12Bに対する接合は、ヒートシール、超音波シールのような素材溶着による接合手段や、ホットメルト接着剤により行うことができる。図示例では、内装体200の裏面、つまりこの場合は液不透過性シート11の裏面及び起き上がりギャザー60の付根部分65に塗布されたホットメルト接着剤を介して外装体12F,12Bの内面に対して固定されている。この内装体200と外装体12F,12Bとを接合する内装体接合部20は、
図2に示すように、両者が重なる領域のほぼ全体に設けることができ、例えば内装体200の幅方向両端部を除いた部分に設けることもできる。
【0044】
(内装体)
内装体200は任意の形状を採ることができるが、図示例では前後方向LDに沿う長辺を有する長方形となっている。内装体200は、
図3~
図5に示されるように、身体側となるトップシート30と、液不透過性シート11と、これらの間に介在された吸収要素50とを備えているものである。符号40は、トップシート30を透過した液を速やかに吸収要素50へ移行させるために、トップシート30と吸収要素50との間に設けられた中間シート(セカンドシート)を示しており、符号60は、内装体200の両脇に排泄物が漏れるのを防止するために、内装体200の両側部から着用者の脚周りに接するように延び出た起き上がりギャザー60を示している。
【0045】
(トップシート)
トップシート30は、液を透過する性質を有するものであり、例えば、有孔又は無孔の不織布や、有孔プラスチックシートなどを例示することができる。また、トップシート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、トップシート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
【0046】
トップシート30の両側部は、吸収要素50の側縁で裏側に折り返しても良く、また折り返さずに吸収要素50の側縁より側方にはみ出させても良い。
【0047】
トップシート30は、裏側の部材に対する位置ずれを防止する等の目的で、ヒートシール、超音波シールのような素材溶着による接合手段や、ホットメルト接着剤により裏側に隣接する部材に固定することが望ましい。図示例では、トップシート30はその裏面に塗布されたホットメルト接着剤により中間シート40の表面及び包装シート58のうち吸収体56の表側に位置する部分の表面に固定されている。
【0048】
(中間シート)
トップシート30を透過した液を速やかに吸収体56へ移行させるために、トップシート30より液の透過速度が速い、中間シート(セカンドシートとも呼ばれている)40を設けることができる。この中間シート40は、液を速やかに吸収体56へ移行させて吸収体56による吸収性能を高め、吸収体56からの逆戻りを低減するためのものである。中間シート40は省略することもできる。
【0049】
中間シート40としては、トップシート30と同様の素材や、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、SMS不織布、パルプ不織布、パルプとレーヨンとの混合シート、ポイントボンド不織布又はクレープ紙を例示できる。特にエアスルー不織布が嵩高であるため好ましい。エアスルー不織布には芯鞘構造の複合繊維を用いるのが好ましく、この場合芯に用いる樹脂はポリプロピレン(PP)でも良いが剛性の高いポリエステル(PET)が好ましい。目付けは17~80g/m2が好ましく、25~60g/m2がより好ましい。不織布の原料繊維の太さは2.0~10dtexであるのが好ましい。不織布を嵩高にするために、原料繊維の全部又は一部の混合繊維として、芯が中央にない偏芯の繊維や中空の繊維、偏芯且つ中空の繊維を用いるのも好ましい。
【0050】
図示例の中間シート40は、吸収体56の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の前後方向長さは、おむつの全長と同一でもよいし、吸収要素50の長さと同一でもよいし、液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。
【0051】
中間シート40は、裏側の部材に対する位置ずれを防止する等の目的で、ヒートシール、超音波シールのような素材溶着による接合手段や、ホットメルト接着剤により裏側に隣接する部材に固定することが望ましい。図示例では、中間シート40はその裏面に塗布されたホットメルト接着剤により包装シート58のうち吸収体56の表側に位置する部分の表面に固定されている。
【0052】
(液不透過性シート)
液不透過性シート11の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂等からなるプラスチックフィルムや、不織布の表面にプラスチックフィルムを設けたラミネート不織布、プラスチックフィルムに不織布等を重ねて接合した積層シートなどを例示することができる。液不透過性シート11には、ムレ防止の観点から好まれて使用されている液不透過性かつ透湿性を有する素材を用いることが好ましい。透湿性を有するプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性プラスチックフィルムが広く用いられている。この他にも、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることにより防漏性を強化した不織布、高吸水性樹脂又は疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、プラスチックフィルムを用いずに液不透過性としたシートも、液不透過性シート11として用いることができるが、後述するカバー不織布13とのホットメルト接着剤を介した接着時に十分な接着強度を得るため、樹脂フィルムを用いるのが望ましい。
【0053】
液不透過性シート11は、図示のように吸収要素50の裏側に収まる幅とする他、防漏性を高めるために、吸収要素50の両側を回り込ませて吸収要素50のトップシート30側面の両側部まで延在させることもできる。この延在部の幅は、左右それぞれ5~20mm程度が適当である。
【0054】
(吸収要素)
吸収要素50は、吸収体56と、この吸収体56の全体を包む包装シート58とを有する。吸収要素50は、股間部M、及び股間部Mの前側及び後側に延びた部分を有している。
【0055】
(吸収体)
吸収体56は、股間部Mを含むように股間部Mの前後両側にわたり延びていればよい。本例のようなパンツタイプ使い捨ておむつの場合、吸収体56は、前後方向LD及び幅方向WDにおいて、内装体200の周縁部又はその近傍まで延在しているのが好ましい。なお、符号56Xは吸収体56の全幅を示している。
【0056】
股間部Mにおける吸収量を確保しやすくする場合、吸収体56は
図8に示す例のように略長方形形状であることが好ましい。また、
図12(a)に示す例のように股間部Mにおけるフィット性を向上させるために、股間部Mにおける吸収体56の幅をその前後両側よりも狭くし、括れ形状とすることも可能である。この場合に、股間部Mにおける吸収量を確保しやくするには、股間部Mにおける吸収体56の最も狭い部分の幅n1が、吸収体56の全幅56Xの0.85倍以上であることが好ましい。
【0057】
なお、股間部Mとは、吸収体56が後述する括れ部56nを有する場合にはこの括れ部56nを有する前後方向LDの範囲を意味し、吸収体56が括れ部56nを有しないが、図示例のように展開状態におけるおむつの外形が括れ部を有する場合には、おむつの外形の括れ部を有する前後方向LDの範囲(図示例の場合、前外装体12Fと後外装体12Bとの間)を意味し、いずれの括れ部も有しない場合には前後方向LDの中央に位置する部分であって、かつ前後方向LDの寸法が製品全長の20~30%である部分を意味する。股間部Mより前側及び後側にそれぞれ延びた部分が前側部分及び後側部分となる。
【0058】
吸収体56は、
図3及び
図24(a)に示すように単層であっても、
図24(b)及び(c)に示すように複数積層されていてもよい。吸収体56の層とは、所定の積繊ドラムの集積型による積繊工程、及び必要に応じて厚み方向での圧縮工程を経て得られた層である。よって、例えば
図24(b)及び(c)に示すように、吸収体56は、上層56aと下層56bとの2層から構成されていてよい。
【0059】
なお、吸収体56に含まれる複数の層のサイズは、互いに同じであっても異なっていてもよい。また、吸収体56に含まれる複数の層の厚みも、互いに同じであっても異なっていてもよい。例えば、
図24(a)に示すように、吸収体56に含まれる上層56aと下層56bとで、幅及び厚みが異なっていてもよい。
図24(b)に示す例では、上層56aの幅及び厚みが、下層56bよりも小さくなっている。吸収体に含まれる複数の層のサイズは、吸収性物品の形態及び使用目的に応じて設定できる。なお、層の数は2つに限られず、3以上であってもよい。
【0060】
吸収体56の厚み(吸収体が複数層からなる場合には複数層の全体の厚み)は、0.5~30mm、好ましくは1~15mmとすることができる。例えば使い捨ておむつの場合には、吸収体56の厚みは、1~30mm、好ましくは1.5~15mm、より好ましくは5~13mmとすることができる。また、生理用ナプキンの場合には、吸収体56の厚みは、0.3~30mm、好ましくは1.0~15mmとすることができる。吸収体56の厚みは、均一であってもよいし、厚みが相対的に厚い又は相対的に薄い領域が形成されていてもよい。
【0061】
吸収体56は、パルプ繊維56f及び高吸収性ポリマー粒子56pを混合・集積したものであり、パルプ繊維56f及び高吸収性ポリマー粒子56pは吸収体56の全体にわたり略均一に存在し、高吸収性ポリマー粒子56pがパルプ繊維56f間に保持されているものである。このような吸収体56は、後述する積繊ドラムを用いて製造することができる。吸収体56はパルプ繊維56f及び高吸収性ポリマー粒子56pのみを混合・集積したものであることが望ましいが、必要に応じて、パルプ繊維56f及び高吸収性ポリマー粒子56p以外の物質、例えば、填料、顔料、サイズ剤、凝結剤、耐油剤、硫酸バンド、歩留り向上剤、濾水性向上剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、着色顔料、耐水化剤、消臭剤、香料等の添加剤を含有してもよい。
【0062】
(パルプ繊維)
パルプは、木材、草、又はその他の植物から機械的処理及び/又は化学的処理により取り出された繊維(パルプ繊維)の集合体である。パルプの原料としては、針葉樹、広葉樹の他、竹、稲、くず、すすき、麻、サトウキビ等も利用できる。また、レーヨン、アセテート等の人工セルロースからなるものも使用できる。
【0063】
吸収体56に含まれるパルプ繊維56fとしては、広葉樹パルプ繊維(広葉樹由来のパルプ繊維)と、広葉樹パルプ繊維よりも平均繊維長が長い針葉樹パルプ繊維(針葉樹由来のパルプ繊維)等のパルプ繊維とを混合状態で含有していると好ましいが、広葉樹パルプ繊維のみを含有していても(広葉樹パルプ繊維100%でも)よい。以下では、このような吸収体56を広葉樹パルプ繊維含有吸収体ともいう。広葉樹パルプ繊維は、クラフト法により製造された広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)であることが好ましい。また、針葉樹パルプ繊維は、クラフト法により製造された針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)であることが好ましい。
【0064】
全パルプ繊維56f中の針葉樹パルプ繊維及び広葉樹パルプ繊維の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上である。また、全パルプ繊維56fが、針葉樹パルプ繊維及び広葉樹パルプ繊維から実質的になることが好ましい。なお、本明細書において、パルプ繊維56f又はその材料の配合量は、特に記載がない場合は、絶乾内添量、すなわち絶乾状態での質量割合を指す。
【0065】
表1に示すように、(I)針葉樹パルプ繊維からなる吸収体56の場合、パルプ繊維56fの繊維長及び繊維幅が比較的大きく、また繊維長及び繊維幅のばらつきも比較的大きいので、一般にパルプ繊維56f間の距離が大きくなり、得られる吸収体56は嵩高くなる。よって、パルプ繊維56fによる吸収容量(吸水量)は大きく、吸収体56の吸収速度も比較的速い。しかしながら、パルプ繊維56f間の距離が大きいため、毛管現象による繊維の液保持能は比較的低く、さらには高吸収性ポリマー粒子(SAP)が重力方向に抜け落ちやすくなり、パルプ繊維56f間における高吸収性ポリマー粒子(SAP)の保持性がやや劣る。その結果、下記(II)(III)の吸収体56と比較すると、吸収体56としての液保持能は小さくなり、液の逆戻り抑制の効果は低めである。
【0066】
【0067】
また、(II)広葉樹パルプ繊維からなる吸収体56では、パルプ繊維56fの繊維長及び繊維幅が比較的小さく、また繊維長及び繊維幅のばらつきも比較的小さいので、パルプ繊維56f間の距離が小さくなり、得られる吸収体56における繊維密度も高くなる。そのため、パルプ繊維56fによる吸収容量(吸水量)は小さく、吸収体56若しくは吸収性物品としての吸収速度は遅くなる。しかしながら、パルプ繊維56f間の距離が小さいため、毛管現象による繊維の液保持能は高い。また、パルプ繊維56f間における高吸収性ポリマー粒子56pの保持性は概ね良好であり、高吸収性ポリマー粒子56pによる液保持能は、(I)の吸収体56より高い。その結果、吸収体56の液保持能は(I)の吸収体56より高く、液の逆戻り抑制の効果もある。
【0068】
(III)針葉樹パルプ繊維及び広葉樹パルプ繊維からなる吸収体56では、上述のような比較的繊維長が長く且つ繊維幅が大きい繊維と、比較的繊維長が短く且つ繊維幅が小さい繊維とが組合せされることになり、繊維密度が(I)、(II)の中間程度になる。そのため、繊維による吸収容量をある程度確保でき、吸収体56の吸収速度も維持できるとともに、毛管現象による繊維の液保持能も確保できる。また、パルプ繊維56f間における高吸収性ポリマー粒子56pの保持性もあり、高吸収性ポリマー粒子56pによる液保持能も(I)、(II)に対しさらに高めることができる。その結果、吸収体56の吸収容量及び吸収速度を維持しつつ、液保持能も得られる。このように、(III)の形態では、吸収容量及び吸収速度と液保持能との両方を確保できることで、逆戻り防止性を向上させることができる。
【0069】
なお、上記(III)では、針葉樹パルプ繊維を含有することで、吸収体56に嵩高さをある程度確保できるため、得られる吸収性物品の肌触りの悪化を抑制することができる。また、針葉樹パルプ繊維を含有することで、パルプシートからフラッフパルプを作製する際の操業性(すなわち、粉状体の飛散を抑え、繊維の装置への付着を抑える作用)も確保される。良好な操業性は、吸収性物品製造の全体の高い生産性に寄与する。
【0070】
広葉樹パルプ繊維含有吸収体56の一つの好ましい例では、吸収体56の全パルプ繊維において、繊維長0.5mm以上1.1mm未満のパルプ繊維の割合が質量基準で40%以上であり、繊維幅10μm以上35μm未満のパルプ繊維の割合が質量基準で90%以上である。また、上記の繊維長0.5mm以上1.1mm未満のパルプ繊維の割合は、好ましくは42.6%以上、より好ましくは43%以上、さらに好ましくは43.2%以上、43.7%以上、45以上とすることができる。また、上記の繊維幅10μm以上35μm未満のパルプ繊維の割合は、好ましくは90.6%以上、より好ましくは91.0%以上、さらに好ましくは91.2%以上、91.4%以上とすることができる。このように、吸収体56が、特定のパルプ繊維長及び特定のパルプ繊維幅をそれぞれ特定範囲で含むことにより、上記(III)の吸収体56の利点(特に逆戻り防止性)をさらに向上させ、より確実なものにすることができる。
【0071】
広葉樹パルプ繊維含有吸収体56の全パルプ繊維56fにおいて、繊維長0.5mm以上1.1mm未満のパルプ繊維の割合の上限は特に限定されないが、パルプが天然材料であることに起因する繊維長のばらつきのため、80質量%以下、60質量%以下、55質量%以下となり得る。また、同様に、繊維幅10μm以上35μm未満のパルプ繊維の割合の上限も特に限定されないが、98質量%以下、95質量%以下、94質量%以下となり得る。
【0072】
なお、パルプ繊維の繊維長及び繊維幅は、測定機「VALMET FS5」を用いて、JIS-P8226:2011(ISO16065-2:2007)「パルプ-光学的自動分析法による繊維長測定方法」に準じて測定することができる。
【0073】
さらに、広葉樹パルプ繊維含有吸収体56においては、繊維長0.5mm以上1.1mm未満のパルプ繊維を0.02mm間隔で(0.02mmの分級幅で)測定した時における平均繊維長は0.5~0.8mm、好ましくは0.6~0.7mmとすることができる。これにより、吸収体56において、パルプ繊維が、その配向方向に依存して生じ得る空隙の分布のばらつきを抑制し、吸収速度を確保できる。
【0074】
また、広葉樹パルプ繊維含有吸収体56において、繊維長0.5mm以上1.1mm未満のパルプ繊維を0.02mm間隔で(0.02mmの分級幅で)測定した時における標準偏差σは、0.58mm以下、好ましくは0.56mm以下、より好ましくは0.54mm以下、さらに好ましくは0.50mm以下とすることができる。標準偏差が上記範囲にあることで、吸収体56の吸収容量及び吸収速度の向上、及び逆戻り防止性の向上を図ることができる。
【0075】
さらに、繊維幅10μm以上35μm未満のパルプ繊維を1μm間隔で(1μmの分級幅で)測定した時における平均繊維幅は15μm以上30μm以下、好ましくは18μ以上27μm以下とすることができる。平均繊維幅を上記範囲とすることで、繊維間の空隙を適度に維持し、吸収速度の低下を防ぐことができるとともに、パルプ繊維同士の接触面積が大きくなりすぎることを回避し、繊維同士の結合力の過度の上昇を防止できる。これにより、製造時の解繊性を適切にすることができる。なお、パルプシートの解繊性が過度に低い場合、フラッフパルプの作製時に過解繊となり(過度に解繊作業が行われ)、微細繊維が発生することにより得られる吸収体における吸収速度が低下する虞がある。
【0076】
繊維幅10μm以上35μm未満のパルプ繊維を1μm間隔で(1μmの分級幅で)測定した時における標準偏差σは、2.9μm以下、好ましくは2.8μm以下、より好ましくは2.75μm以下、さらに好ましくは2.6μm以下、2.59μm以下とすることができる。標準偏差を上記範囲とすることで、吸収速度及び逆戻り防止効果の向上を図ることができる。
【0077】
上述のように、特定範囲の繊維長の分布及び特定範囲の繊維幅の分布のばらつきを小さくした広葉樹パルプ繊維含有吸収体56は、広葉樹パルプ繊維を配合したにも関わらず、吸収容量及び吸収速度を確保しつつ、良好な逆戻り防止効果を有する。
【0078】
パルプ繊維に含まれる針葉樹パルプ繊維の原料木材は特に限定されないが、ラジアータパインに代表される松類、各種杉が好適に用いられる。
【0079】
また、広葉樹パルプ繊維の原料木材も特に限定されないが、アカシア材、ユーカリ材等が好適に用いられる。アカシア材は、乾燥による縮みが少なく、衝撃にも強く、丈夫で硬い特徴を有する材料で、アカシア材から得られるパルプも元来の性状を引き継ぎ、水分の吸収や乾燥性が高く有用な原料パルプである。ユーカリ材は、ユーカリ属に属し、特にユーカリ・グロビュラス、ユーカリ・グランディス、ユーカリ・ユーロフィラ、ユーカリ・ナイテンス、ユーカリ・レグナンス等が古くから紙製造用の原料パルプ材として広く用いられ、得られるパルプ繊維は、繊維内腔(ルーメン)が潰れ難く剛直であり、このパルプ繊維を配合することで、吸収体を嵩高化、低密度化することができる。広葉樹パルプ繊維としては、アカシア材はユーカリ材に比べて繊維幅が太いため嵩高性があり、針葉樹パルプ繊維と組み合わせた際でも吸収量及び吸収速度の低下が少ないことから、好ましい。
【0080】
広葉樹パルプ繊維含有吸収体56における、針葉樹パルプ繊維等の他のパルプ繊維に対する広葉樹パルプ繊維の質量比は限定されるものではなく、例えば10/90~90/10とすることができるが、操業性の観点から20/80~50/50であると好ましく、25/75~38/62であるとより好ましく、25/75以上38/62未満であるとさらに好ましく、26/74~36/64であるとさらに好ましく、28/72~35/65であると特に好ましい。
【0081】
また、広葉樹パルプ繊維の原料木材におけるアカシア材の含有量、すなわち広葉樹パルプ繊維含有吸収体56において、広葉樹パルプ繊維中のアカシア材由来のパルプ繊維の含有割合は、好ましくは5~95質量%、より好ましくは5質量%以上95質量%未満、さらに好ましくは20~93質量%、20~90質量%、25~85質量%、50~80質量%とすることができる。針葉樹パルプ繊維に比べて繊維長が短く、繊維同士が密に詰まりやすい広葉樹パルプ繊維であっても、また、その繊維がどの方向(例えば、得られる吸収性物品の長さ方向、幅方向、及び/又は厚み方向のどの方向)に配向していたとしても、繊維間の空隙をより均一に確保できる。
【0082】
吸収体56を構成するパルプ繊維として、上述の針葉樹晒クラフトパルプ及び広葉樹晒クラフトパルプ以外にも、例えばソーダパルプ、サルファイトパルプ、ケミサーモメカニカルパルプ、ケミリファイナーメカニカルパルプ、サーモケミメカニカルパルプ等を用いてもよい。ただし、繊維中のリグニンが十分に除去できていない場合、パルプ繊維の吸収量及び吸収速度が低下しやすくなるため、十分にリグニンを除去した晒パルプが好ましい。上記その他のパルプを含有する場合、上記その他のパルプの含有量としては、パルプ原料全体に対して10質量%以下が好ましい。
【0083】
また、吸収体56に含まれるパルプ繊維56fには、その種類に関わらず、再生されたパルプ繊維(リサイクルパルプ繊維)が含まれていてよい。例えば、パルプ繊維56fは、リサイクルされた針葉樹パルプ繊維、リサイクルされた広葉樹パルプ繊維を含有していてもよい。リサイクルパルプ繊維を利用する場合、吸収体に用いられるパルプ繊維における灰分の量は、例えばフラッフパルプ中の灰分の量はできるだけ少ないと好ましい。また、リサイクルパルプ繊維を利用する場合、同じ原料に由来するパルプをリサイクル前後で比較した場合、リサイクルパルプの白色度は、バージンパルプ(再生されていないパルプ若しくは未再生パルプ)の白色度よりも低くてもよいし、同等であってもよいが、同等であると好ましい。
【0084】
吸収体56を複数層とする場合、その一部のみが広葉樹パルプ繊維を含有していてもよいし、全部が広葉樹パルプ繊維を含有していてもよい。例えば、吸収体56が上層56aと下層56bとの2層から構成されている場合、下層56bのみ広葉樹パルプ繊維を含有していてもよいし、肌に直接接触し得る上層56aのみ広葉樹パルプ繊維を含有していてもよい。
【0085】
また、吸収体56におけるパルプ繊維56fの目付(吸収体が複数層からなる場合には複数層全体の目付)は、製品用途にもよるが、100~500g/m2、好ましくは100~300g/m2、特に好ましくは120~250g/m2とすることができる。例えば使い捨ておむつの場合には、パルプ繊維の目付は、100~300g/m2、好ましくは120~200g/m2とすることができる。また、例えば生理用ナプキンの場合には、吸収体56におけるパルプ繊維の目付(吸収体が複数層からなる場合には複数層全体の目付)は、150~500g/m2、好ましくは250~400g/m2とすることができる。パルプ繊維の目付は、全体的に均一であってもよいし、目付が相対的に高い領域又は相対的に低い領域が形成されていてもよい。
【0086】
(高吸収性ポリマー粒子)
高吸収性ポリマー粒子56pとは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子56pとしては、この種の使い捨ておむつに使用されるものをそのまま使用できる。高吸収性ポリマー粒子56pの膨潤前粒径(液未吸収時の粒径)は特に限定されないが、膨潤前粒径が150μm超850μm以下の高吸収性ポリマー粒子56pが全量の60質量%以上であると好ましく、70質量%以上であるとより好ましく、80質量%以上であると特に好ましい。また、広葉樹パルプ繊維の平均繊維長よりも短い膨潤前粒径(例えば600μm以下、より好ましくは500μm以下)の高吸収性ポリマー粒子56pが全量の60質量%以上であると好ましく、70質量%以上であるとより好ましく、80質量%以上であると特に好ましい。
【0087】
高吸収性ポリマー粒子56pの粒径分布は、JIS Z 8801で規定された目開き850μm、600μm、500μm、355μm、300μm、250μm、150μmの標準ふるい(例えば東京スクリーン社製の標準ふるい)及び受け皿を、上からこの順に振とう機(例えばレッチェ社製、AS200型)にセットし、最上部のふるいに高吸収性ポリマー粒子を全量投入してふるい分けを行うことにより求めることができる。振とう条件は50Hz、振幅0.5mm、振とう時間10分間とする。また、ふるい分けは温度23±2℃、湿度50±5%の環境下で行い、ふるい分けの前に試料を同環境で24時間以上保存した上で測定を行うこととする。ふるい分けは3回行い、3回の平均値を各ふるいのふるい上質量とする。得られた各ふるい上の高吸収性ポリマー粒子の質量と総質量(全高吸収性ポリマー粒子の質量)とから、各ふるい間に対応する粒径範囲(つまり、850μm超、600μm超850μm以下、500μm超600μm以下、355μm超500μm以下、300μm超355μm以下、250μm超300μm以下、150μm超250μm以下、150μm以下)の含有比率(質量百分率)を求めることができる。また、この粒径分布に基づいて粒度累積曲線を求め、累積曲線の中央累積値(50%)に相当する粒子径を平均粒径とすると、高吸収性ポリマー粒子の平均粒径は355~500μmの範囲内にあることが好ましく、370~470μmの範囲内にあるとより好ましい。
【0088】
高吸収性ポリマー粒子56pの材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子56pとしては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系(ポリアクリル酸塩系、ポリスルホン酸塩系、無水マレイン酸塩系)などのものがあり、でんぷん-アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん-アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子56pの形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0089】
高吸収性ポリマー粒子56pとしては、吸水速度が70秒以下、特に40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が遅すぎると、逆戻り(吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう)を発生し易くなる。
【0090】
また、高吸収性ポリマー粒子56pとしては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好適に用いられる。これにより、嵩高な吸収体56とした場合であっても、液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。
【0091】
高吸収性ポリマー粒子56pの目付け量は、当該吸収体56の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、吸収体56における高吸収性ポリマー粒子56pの目付け(吸収体56が複数層からなる場合には複数層全体の目付け)は、50~350g/m2、好ましくは100~300g/m2とすることができる。例えば使い捨ておむつの場合には、高吸収性ポリマー粒子56pの目付は、50~300g/m2、好ましくは100~250g/m2とすることができる。また、例えば生理用ナプキンの場合には、吸収体56における高吸収性ポリマー粒子56pの目付け(吸収体56が複数層からなる場合には複数層全体の目付け)は、70~470g/m2、好ましくは140~240とすることができる。吸収体56が2層になっている場合、下層56b中の高吸収性ポリマー粒子56pの目付けと、上層56a中の高吸収性ポリマー粒子56pの目付けとを異ならせてもよい。すなわち、下層56b中の高吸収性ポリマー粒子56pの目付けを、上層56a中の高吸収性ポリマー粒子56pの目付けより多くしてもよいし、反対に下層56b中の高吸収性ポリマー粒子56pの目付けを、上層56a中の高吸収性ポリマー粒子の目付けより少なくしてもよい。
【0092】
吸収体56におけるパルプ繊維56f及び高吸収性ポリマー粒子56pの比率は特に限定されず、例えばパルプ繊維56f:高吸収性ポリマー粒子56pが重量比で40:60~65:35とすることができる。
【0093】
高吸収性ポリマー粒子56pの膨潤後平均粒径は2,000~3,000μmであると好ましく、2,200~2,800μmであるとより好ましい。高吸収性ポリマー粒子56pの膨潤後平均粒径は、高吸収性ポリマー粒子56pを生理食塩水に60分間浸漬した後、15分間水切りを行った膨潤状態の直径の平均値を意味する。この直径の平均値は、膨潤状態の高吸収性ポリマー粒子56p群を一方向からマイクロスコープを用いて倍率50倍で観察し、高吸収性ポリマー粒子56p群の表面に全体が現れている任意の20粒子の最大径を測定し、算術平均を取ることにより求められるものである。特に、高吸収性ポリマー粒子56pの膨潤後平均粒径が、広葉樹パルプ繊維の平均繊維長よりも大きいと、高吸収性ポリマー粒子56pの膨張によりパルプ繊維56f間の交絡が断たれやすく、高吸収性ポリマー粒子56pの膨張が阻害されにくくなる(いわゆるゲルブロッキングが起こりにくくなる)ため好ましい。
【0094】
(低目付け部)
吸収体56は、
図1~4に示す例のように、股間部Mにおける幅方向WD両側等に、前後方向LDに延びた細長状の低目付け部56Lを有していてもよいし、図示しないが低目付け部56Lを有していなくてもよい。低目付け部56Lは、目付けが少ない部分を意味し、後述する高圧縮部51のように厚み方向TDに圧縮されているだけで目付けは変化しない部分を含まない。低目付け部56Lは、厚み方向TDに貫通するスリットとすることもできるが、図示例のようにパルプ繊維及び高吸収性ポリマー粒子の集積量の少ない凹部であると、吸収量を確保しやすくなるため好ましい。この凹部は、吸収体56の表面に形成されていても、裏面に形成されていてもよい。吸収体56にこのような低目付け部56Lを設けることにより低目付け部56Lに沿う吸収体56の屈曲を促して股間部Mにおける吸収要素50のフィット性が向上する。低目付け部56Lにおけるパルプ繊維及び高吸収性ポリマー粒子の総目付量は、低目付け部56L以外の部分におけるパルプ繊維及び高吸収性ポリマー粒子の総目付量より少なければよく、例えば、低目付け部56L以外の部分におけるパルプ繊維及び高吸収性ポリマー粒子の総目付量の0.1~0.5倍とすることができる。
【0095】
低目付け部56Lは、前後方向LDに延びる細長状である限り、前後方向LDに沿って直線状に延びていてもよいし、図示例のように前後方向LD両側に向かうにつれて側方に位置するように曲がっていてもよい。また、低目付け部56Lの前後端は適宜の形状とすることができ、例えば
図12(a)に示す例のように直線状とする他、
図8に示す例のように曲線状に膨らんだ形状(半円弧状等)としたり、図示しないが両端部の角を丸くして中間の部分を直線状としたりすることができる。低目付け部56Lの幅m1は適宜定めることができ、例えば吸収体56の股間部Mにおける最も狭い部分の幅n1(長方形の場合には全幅56Xを意味)の0.04~0.1倍とすることができる。低目付け部56Lの幅m1はその長さ方向に一定であってもよいし、変化してもよい。低目付け部56Lの前後方向LDの寸法・配置は適宜定めることができる。例えば、低目付け部56Lの前後方向LDの寸法m2は股間部Mの前後方向LDの寸法の50~120%、より好ましくは50~80%とすることができる。また、低目付け部56Lは股間部Mの範囲内に収まっていても、股間部Mの前側、後側又は前後両側にはみ出していてもよい。
【0096】
低目付け部56Lは、
図8に示すように股間部Mにおける幅方向WDの両側に各一本設けるとともに、幅方向WDの中央に一本設ける他、
図12(a)に示すように中央に一本のみ設けたり、
図12(b)に示すように股間部Mにおける幅方向WDの両側に各一本設けるだけとしたりすることができる。
【0097】
(高圧縮部)
吸収要素50においては、
図3、
図4、
図9~
図11に示すように、吸収要素50の表面から吸収体56内まで窪むように厚み方向TDに圧縮された複数の高圧縮部51が間隔を空けて設けられている。また、複数の高圧縮部51の配置領域(前後方向LD及び幅方向WDにそれぞれ沿う辺からなる矩形領域であって、高圧縮部51の全てに外接する矩形領域)のうち、高圧縮部51以外の部分は、高圧縮部51よりも厚くかつ低密度の非高圧縮部52となっている。高圧縮部51は押圧(直接的な加圧)により圧縮されて厚みがほぼ等しくなった高密度部分であり、窪みの底部である。一方、非高圧縮部52は高圧縮部51よりも厚くかつ低密度の部分であるが、非高圧縮部52であっても高圧縮部51の周囲近くでは、高圧縮部51の変形に引っ張られるように吸収体56が変形する結果、高圧縮部51に近づくにつれて密度は増加する。非高圧縮部52は高圧縮部51よりも厚くかつ低密度である限り、高圧縮部51の形成と同時、又はその前若しくはその後に、一部又は全体が厚み方向TDに圧縮されていてもよい。非高圧縮部52は吸収要素50の表面及び裏面のいずれか一方又は両方に窪みを有しないことが好ましい。
【0098】
高圧縮部51は、吸収要素50の前後方向及び幅方向の全体にわたり設ける(つまり、吸収要素50の表面全体が高圧縮部51の配置領域となる)他、吸収要素50の前後方向の一部や幅方向の一部にのみ設けることもできる。例えば、図示しないが、股間部Mを含む前後方向LDの中間領域にのみ高圧縮部51を設けたり、反対に、股間部Mを含む前後方向LDの中間領域に高圧縮部51を設けずに、その前後両側の領域にのみ高圧縮部51を設けたりすることができる。また、図示例の高圧縮部51は、吸収要素の表側に位置するシート(図示例の場合、トップシート30及び中間シート40)の表面から吸収体56内まで窪むものとなっていないが、吸収要素50の表側に位置するシートから吸収体56内まで窪むように押圧された結果、吸収要素50の表面から吸収体56内まで窪むようになっていてもよい。
【0099】
高圧縮部51における吸収体56の密度は特に限定されないが、60000~250000g/m3であると好ましく、65000~200000g/m3であるとより好ましい。一方、非高圧縮部52における吸収体56の密度は特に限定されないが、50000~200000g/m3であると好ましく、55000~150000g/m3であるとより好ましい。高圧縮部51及び非高圧縮部52における吸収体56の密度は以下の方法で測定する。
【0100】
(高圧縮部51における吸収体56密度の測定方法)
(1) 吸収要素50の高圧縮部51を有する面が露出するように、吸収要素50の表側及び裏側の少なくとも一方のシートを剥離し、高圧縮部51の面積を後述の方法により測定する。
(2) 吸収要素50の目付けを測定する。
(3) 吸収要素50から包装シート58を一部切り取り、包装シート58の目付けを測定する。
(4) 上記(1)(2)の測定結果から、高圧縮部51における吸収要素50の質量を求め、上記(1)(3)の測定結果から、高圧縮部51における包装シート58の質量を求め、前者から後者を差し引いて高圧縮部51における吸収体56の質量を求める。
(5) 吸収要素50を液体窒素で凍結させた後、高圧縮部51の略中央を横断するように厚み方向TDに切断し、切断面をマイクロスコープで観察して吸収体56の厚みを測定する。
(6) 高圧縮部51の吸収体56の厚みを一定と仮定して、上記(1)の高圧縮部51の面積と上記(5)の吸収体56の厚みとを乗算することにより高圧縮部51における吸収体56の体積を求める。
(7) 上記(4)を上記(6)で除算することにより高圧縮部51における吸収体56の密度を求める。
【0101】
(非高圧縮部における吸収体密度の測定方法)
(1) 吸収要素50の非高圧縮部52を有する面が露出するように、吸収要素50の表側及び裏側の少なくとも一方のシートを剥離し、ペンを用いて非高圧縮部52に所定寸法の矩形の測定対象領域を5か所マーキングする。測定対象領域の寸法を測定し、面積を求める。
(2) 吸収要素50の目付けを測定する。
(3) 吸収要素50から包装シート58を一部切り取り、包装シート58の目付けを測定する。
(4) 上記(1)(2)の測定結果から、測定対象領域における吸収要素50の質量を求め、上記(1)(3)の測定結果から、測定対象領域における包装シート58の質量を求め、前者から後者を差し引いて測定対象領域における吸収体56の質量を求める。
(5) 吸収要素50を液体窒素で凍結させた後、測定対象領域の略中央を横断するように厚み方向TDに切断し、切断面をマイクロスコープで観察して吸収体56の厚みを測定する。
(6) 測定対象領域の吸収体56の厚みを一定と仮定して、上記(1)の測定対象領域の面積と上記(5)の吸収体56の厚みとを乗算することにより測定対象領域における吸収体56の体積を求める。
(7) 上記(4)を上記(6)で除算することにより非高圧縮部52における吸収体56の密度を求める。
【0102】
また、個々の高圧縮部51の面積は特に限定されないが、2~25mm2程度であると好ましく、3~15mm2であると特に好ましい。
【0103】
高圧縮部51は押圧(直接的な加圧)により厚み方向TDに圧縮されて厚みがほぼ等しくなった高密度部分であり、吸収要素50の表裏少なくとも一方の面から窪んだ窪みの底部である。このような高密度部分は液吸収により膨張したとしても繊維の交絡が断たれにくい性質を有する。一方、非高圧縮部52は高圧縮部51よりも厚くかつ低密度の部分であるが、非高圧縮部52であっても高圧縮部51の周囲近くでは、高圧縮部51の変形に引っ張られるように吸収体56が変形する結果、高圧縮部51に近づくにつれて密度は増加する。このため、高圧縮部51においては毛管現象が強く発現し、液保持性が周囲よりも高くなるだけでなく、高圧縮部51に向かって液が吸い寄せられる。よって、間隔を空けて設けられた個々の高圧縮部51がある程度の密度及び面積を有していると、広葉樹パルプ繊維を含有する吸収体56において、液吸収後の吸収体56の強度が低下しにくくなるとともに、より多くの排泄液に対して毛管現象による吸引力が作用して、吸収体56により吸収した排泄液がより広範囲に拡散するようになる。
【0104】
図示しないが、吸収要素50の表裏両面から吸収体56内まで窪むように厚み方向TDに圧縮されたものとしたり、高圧縮部51は吸収要素50の裏面からだけ吸収体56内まで窪むように厚み方向TDに圧縮されたものとしたりすることもでき、この場合、吸収要素50の裏面に窪みが形成される。しかし、図示例のように、高圧縮部51が吸収要素50の少なくとも表面から吸収体56内まで窪むように厚み方向TDに圧縮されたものであると、逆戻り防止性及び拡散性の両者が向上する。すなわち、前述のように高圧縮部51においては毛管現象が強く発現し、液保持性が周囲よりも高くなるだけでなく、高圧縮部51に向かって液が吸い寄せられるだけでなく、高圧縮部51により集めた排泄液を肌から遠い部分に強く保持できる。その結果、逆戻りが発生し難くなるのである。
【0105】
また、最も近い他の高圧縮部51に対する最短距離d4は1~4mm程度とすることができ、1.5~3.5mm程度であるとより好ましい。このように高圧縮部51がある程度近い間隔で設けられていると、液吸収後の吸収体56の強度が低下しにくくなるとともに、より多くの排泄液に対して毛管現象による吸引力が作用して、吸収体56により吸収した排泄液がより広範囲に拡散するようになる。また、このような間隔である程度の面積を有する高圧縮部51を設けると、高圧縮部51においてパルプ繊維56f間の距離が縮まることにより、パルプ繊維56fの絡まりの強化、高吸収性ポリマー粒子56pの移動経路となるパルプ繊維56fの間隙の減少、高吸収性ポリマー粒子56pに対するパルプ繊維56fの接触部分の増加等がもたらされ、それによって吸収体56内における高吸収性ポリマー粒子56pの移動や吸収体56外への高吸収性ポリマー粒子56pの移動が抑制されるようになる。つまり、広葉樹パルプ繊維を含有する吸収体56における高吸収性ポリマー粒子56pの保持性が向上する。
【0106】
高圧縮部51の配置領域における高圧縮部51の面積率(高圧縮部51の面積の総和/高圧縮部51の配置領域の面積)が10~35%であると好ましく、20~35%であるとより好ましい。また、非高圧縮部52の外形に内接する最大の内接円54の直径が30mm以下であると好ましく、10mm以下であるとより好ましく、6.5mm以下であるとさらに好ましく、6mm以下であるとさらに好ましく、5mm以下であると特に好ましい。さらに、非高圧縮部52の外形に内接する最大の内接円54の直径の下限は2mmであると好ましく、3mmであるとより好ましく、4mmであると特に好ましい。
【0107】
このように、高圧縮部51を特に密に配置すると、前述の液拡散性の向上がより一層のものとなる。また、高吸収性ポリマー粒子56pの保持性の向上もより一層のものとなる。さらに、非高圧縮部52であっても高圧縮部51の周囲近くでは、高圧縮部51の変形に引っ張られるように吸収体56が変形する結果、高圧縮部51が無い場合と比べて吸収体56が薄くなるという利点ももたらされる。これらの観点から、高圧縮部51の面積率が上述の範囲内であると特に好ましい。また、高圧縮部51の配置が疎らとならないように(非高圧縮部52が全方向に長く続かないように)、非高圧縮部52の外形に内接する最大の内接円54の直径が小さいと特に好ましい。
【0108】
高圧縮部51の寸法、形状は適宜定めることができる。しかし、高圧縮部51は硬質な部分となるため、高圧縮部51の寸法が過度に大きかったり、高圧縮部51の形状が一方向に過剰に長かったり、過剰に入り組んだ外形を有していたりすると、吸収体56全体としての柔軟性が不足したり、吸収体56内に異物が混入しているかのような肌触り(異物感)を生じたりするおそれがある。また、高圧縮部51の寸法が過度に小さかったり、高圧縮部51の形状が一方向に過剰に長かったり、過剰に入り組んだ外形を有していたりすると、包装シート58がクレープ紙である場合に、包装シート58が破れやすくなるという問題もある。よって、高圧縮部51の外形に内接する最大の内接円53の直径が1~10mmであると好ましく、1~6mmであるとより好ましく、2~5mmであるとさらに好ましく、2.5~3.5mmであると特に好ましい。また、高圧縮部51の外形の周長は高圧縮部51の外形に内接する最大の内接円53の周長の1~15倍であると好ましく、1~5倍であるとより好ましく、1.0~2.5倍であるとさらに好ましく、1.0~2.0倍であるとさらに好ましく、1.0~1.6倍であると特に好ましい。
【0109】
一例として、各高圧縮部51の長径d1(最小となる外接矩形の長辺の長さ)は4~9mm程度とすることができ、短径d2(最小となる外接矩形の短辺の長さ)は2~5mm程度とすることができる。各高圧縮部51に関して最小となる外接矩形の四辺の長さが等しいときには、その辺の長さd3は2~5mm程度とすることができる。
【0110】
個々の高圧縮部51の最短寸法は特に限定されないが、広葉樹パルプ繊維の平均繊維長より長いことが好ましく、4倍以上であるとより好ましく、4~10倍であるとさらに好ましく、4~12倍であると特に好ましい。個々の高圧縮部51の最短寸法が、広葉樹パルプ繊維の平均繊維長より長いと、パルプの偏りが少なくなり、吸収体の形状維持性を高めることができるという利点がある。また、個々の高圧縮部51の最短寸法は、高吸収性ポリマー粒子56pの膨潤後平均粒径より長いことが好ましく、1.5倍以上であるとより好ましく、1.5~6倍であるとさらに好ましく、1.5~5倍であると特に好ましい。個々の高圧縮部51の最短寸法が、高吸収性ポリマー粒子56pの膨潤後平均粒径よりも長いと、高吸収性ポリマー粒子の保持性が高まり吸収性能の偏りを低減できるという利点がある。
【0111】
高圧縮部51の外形は特に限定されるものではなく、円形、楕円形、角丸矩形(いずれか一方の対辺が直線ではなく、それぞれ半円となるものを含む)のように、変曲点及び屈曲点を有しない形状が好ましいが、三角形や四角形、雲形、X字形、V字形、U字形等としてもよい。
【0112】
一般に、逆戻り防止性を向上させる場合、液保持性の高い高吸収性ポリマー粒子の混合比率を高めることが多い。また近年では、吸収体56の薄型化を図る等の目的で、高吸収性ポリマー粒子の混合比率を高めることも多い。しかし、高吸収性ポリマー粒子の混合比率を高めると、高圧縮部51の形状維持性が低下するだけでなく、非高圧縮部52における高圧縮部51の周囲近くで、高圧縮部51の変形に引っ張られるように吸収体56が変形しにくくなり、低逆戻り性及び拡散性が向上しにくくなるおそれがある。また、排泄液を吸収し膨張した高吸収性ポリマー粒子同士が密着し、排泄液の拡散を阻害する現象(ゲルブロッキング)が発生しやすくなるため、拡散性が向上しにくくなるおそれもある。よって、吸収体56におけるパルプ繊維の目付けが100~500g/m2である場合、吸収体56におけるパルプ繊維:高吸収性ポリマー粒子が重量比で45:55~65:35であると好ましい。
【0113】
吸収要素50の厚み50t及び高圧縮部51の厚み51tは適宜定めることができるが、圧縮が不十分であると低逆戻り性及び拡散性が向上しにくくなるおそれがある。よって、上述のパルプ繊維の目付けの範囲、及びパルプ繊維及び高吸収性ポリマー粒子の比率の範囲を採用する場合、吸収要素50の厚み50t(非高圧縮部52の厚み)は3~13mmとすることが好ましい。この場合、高圧縮部51の厚み51t(厚みが変化する場合は最小値)は適宜定めることができるが、通常の場合、吸収要素50の厚み50tの60~90%であると好ましい。
【0114】
高圧縮部51は、適宜の規則的又は不規則なパターンで配置することができる。例えば、高圧縮部51は、
図17に示すように点線状に設けられた高圧縮部51が格子状に配列されたパターンや、
図18及び
図19に示すように点状の高圧縮部51が千鳥状や行列状に配列されたパターン、
図20に示すようにX字状の高圧縮部51が行列状等に配列されたパターン等を例示することができる。また、図示しないが、直線状に連続する高圧縮部が格子状に配列されたパターンや、大きさや形の異なる高圧縮部が所定の模様を表すように間隔を空けて配列されたパターンであってもよい。特に、点線状に配列された高圧縮部51や線状に連続する高圧縮部51が格子状に配列されていると、非高圧縮部52の高吸収性ポリマー粒子56pの移動が高圧縮部51により囲まれる領域内に抑えられるため、より少ない高圧縮部51で高吸収性ポリマー粒子56pの偏在を抑制することができる。例えば
図21に示す例のように、面積の異なる高圧縮部51が複数さ配列されるとともに、最も面積の大きい高圧縮部51の面積が、最も面積の小さい高圧縮部51の面積の3倍以上であるパターンであってもよい。
図21に示すパターンは、長さが異なる同一幅の線状の高圧縮部51を複数備えており、最も長い高圧縮部51の長さが、最も短い高圧縮部51の長さの3倍以上となっている。また、
図21に示す例のパターンでは、前後方向LDに延びる高圧縮部51と、斜め方向に延びる高圧縮部51と、前後方向LDに延びる部分及びその前後両端から斜め方向に延びる部分を有する高圧縮部51とが組み合わされて配置されている。なお、
図17~
図21には各部の寸法を記載しているが、これらの寸法は一例であり、個別に適宜変更できることはいうまでもない。
【0115】
一つの好ましい高圧縮部51のパターンは、
図11及び
図16に示す例である。この例では、高圧縮部51の配置領域に、第1方向に沿う第1仮想直線81が、第1仮想直線81に対して平面視で時計回りに80~90°傾斜した第2方向に第1間隔81dを空けて繰り返し配列されるとともに、第2方向に沿う第2仮想直線82が第1方向に第2間隔82dを空けて繰り返し配列されて形成される仮想格子を定めるとともに、第1仮想直線81と第2仮想直線82との交点を頂点とする最小の仮想四角形83を定めたとき、高圧縮部51は、第1仮想直線81と第2仮想直線82との交点位置に配置された第1高圧縮部51aと、第1仮想直線81における隣り合う第1高圧縮部51aの間、及び第2仮想直線82における隣り合う第1高圧縮部51aの間にそれぞれ配置された第2高圧縮部51bと、仮想四角形の対角線の交点位置に配置された第3高圧縮部51cとからなっている。また、第1高圧縮部51aは、第1仮想直線81と第2仮想直線82との交点を中心とする円形をなし、第2高圧縮部51bは、仮想四角形の各辺の中点に重心を有し、かつ各辺に沿う長軸を有する角丸矩形(若しくは楕円形でもよい)をなし、第3高圧縮部51cは、仮想四角形の対角線の交点に重心を有し、かつ前後方向LDに沿う長軸を有する角丸矩形(楕円形、又は仮想四角形の対角線の交点を中心とする円形でもよい)をなしている。このパターンでは、第2高圧縮部51bの長軸方向(第1方向及び第2方向)における拡散性を向上させることができるとともに、第1方向に非高圧縮部52が直線的に連続する部分及び第2方向に非高圧縮部52が直線的に連続する部分の両者を有することとなるため、個々の高圧縮部51が硬質化するとしても、吸収体56全体としては身体表面に沿うように変形しやすいものとなる。
【0116】
図11及び
図16に示す例の仮想格子に沿って高圧縮部51を配列する場合、各高圧縮部51の寸法は適宜定めることができるが、第1高圧縮部51aは、直径が1~4mmであり、第2高圧縮部51bは、長軸の長さが3~6mmで、かつ短軸の長さが第1高圧縮部51aの直径に等しく、第3高圧縮部51cは、長軸の向きが前後方向LDに沿う以外は第2高圧縮部51bと同寸及び同形状をなしており、隣接する第1高圧縮部51aと第2高圧縮部51bとの最短距離d4は1~2mmであると、逆戻り防止性及び液拡散性の向上はもちろん、吸収体56の変形容易性も向上するため好ましい。第1間隔81d:第2間隔82dは、0.9:1.1~1.1:0.9の範囲であると好ましく、特に第1間隔81d及び第2間隔82dは等しいことが好ましい。第1間隔81d及び第2間隔82dは、10~14mm程度とすることができる。
【0117】
また、上述の仮想格子は、第1仮想直線81が前後方向LDに対して平面視で時計回りに40~50°傾斜するとともに、第2仮想直線82が前後方向LDに対して平面視で反時計回りに40~50°傾斜した斜め格子状をなしていると、着用時の吸収体56の変形容易性はもちろん、液の拡散性にも優れるため好ましい。
【0118】
高圧縮部51の配列の具体例を表2に示す。
【表2】
【0119】
吸収要素は公知の方法により製造することができる。例えば、パルプ繊維及び高吸収性ポリマー粒子を混合・集積してなる吸収体56を形成する第1ステップと、吸収体56の全体を包装シート58で包装してなる包装体50Pを形成する第2ステップと、
図22に示すように、外周面に高圧縮部51と同じパターンで間隔を空けて配置された多数の突起部91を有するアンビルロール90と、これに対向する円筒面(突起部91を有しない)を有する平滑ロール92との間に包装体50Pを通し、包装体50Pのうちアンビルロール90の多数の突起部91と平滑ロール92との間に挟まれる部分を押圧することにより高圧縮部51を形成する第3ステップとを行うことによって、高圧縮部51を有する吸収要素50を製造することができる。アンビルロール90及び平滑ロール92のいずれか一方又は両方を加熱しつつ高圧縮部51を形成しても、また非加熱で高圧縮部51を形成してもよい。第3ステップでは、包装体50Pのうちアンビルロール90の多数の突起部91と平滑ロール92との間に挟まれる部分のみを押圧してもよいし、包装体50Pの全体を押圧しつつ、アンビルロール90の多数の突起部91と平滑ロール92との間に挟まれる部分を最も深くまで押圧してもよい。
【0120】
突起部91の先端面の寸法、形状、配置は、例えば高圧縮部51の寸法、形状、配置と同様とすることができる。アンビルロール90と平滑ロール92とのクリアランス(押圧位置の最小間隔)は、高圧縮部51の厚み以下とすることができ、一例としては0.5~1.5mmとすることができる。アンビルロール90及び平滑ロール92により高圧縮部51を形成する際の圧力は適宜定めることができるが、一例としては0.2~0.4MPaとすることができる。
【0121】
(包装シート)
包装シート58としては、クレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等の液透過性を有するシートを用いることができる。包装シート58に用いる不織布は特に限定されるものではないが、少なくとも一層のメルトブローン層を表裏一対のスパンボンド層で挟んだSMS不織布、SSMMS不織布等を好適に用いることができる。繊維の材質は特に限定されず、例えばポリプロピレン繊維、ポリエチレン/ポリプロピレンバイコンポーネント繊維などを使用できる。包装シート58の目付けは適宜定めることができるが、5~40g/m2、特に10~30g/m2のものが望ましい。
【0122】
包装シートに用いるクレープ紙は特に限定されないが、目付けは13~20g/m2、特に14~18g/m2のものが望ましい。また、クレープ紙のJIS P 8117:2009「紙及び板紙-透気度及び透気抵抗度試験方法(中間領域)-ガーレー法」に準拠して測定される透気度は1~15秒であることが望ましい。
【0123】
包装シート58に用いるクレープ紙を構成するパルプの平均繊維長は、吸収体56を構成する全パルプ繊維の平均繊維長の2倍未満であってもよいが、1.5~3倍であると、資材強度の向上という利点を有するため好ましい。包装シート58に用いるクレープ紙を構成するパルプの平均繊維長は、吸収体56を構成する全パルプ繊維の平均繊維長の1.5~3倍であるとより好ましい。
【0124】
他方、包装シート58に用いるクレープ紙としては、JIS P 8113:2006に規定される前後方向LDの引張破断伸びが20~35%、かつ幅方向WDの引張破断伸びが4~8%(特に5~7%)であることが一般的である。包装シート58がこのようなクレープ紙であると、高圧縮部51を形成する際、高圧縮部51の縁や、隣り合う高圧縮部51の間でクレープ紙が破れることがあるが、高圧縮部51の外形が変曲点及び屈曲点を有せず、高圧縮部51の外形に内接する最大の内接円の直径が2~5mmであり、かつ高圧縮部51の外形の周長が高圧縮部51の外形に内接する最大の内接円の周長の1~2.5倍であることにより、これを低減することができる。
【0125】
包装シート58のMD方向が前後方向LDに沿うように構成されていると、製造が容易であるため好ましい。この場合、包装シート58の繊維配向が前後方向LDとなり、幅方向WDの乾燥引張強度が前後方向LDの乾燥引張強度よりも格段に弱くなるため、高圧縮部51の前後方向LDの寸法が高圧縮部51の幅方向WDの寸法の2倍以上、特に3倍以上長い(つまり高圧縮部51が前後方向LDに長い形状である)と、その幅方向WDの両側で包装シート58が破れやすい。よって、高圧縮部51の前後方向LDの寸法は高圧縮部51の幅方向WDの寸法の2倍未満、特に1.5倍以下であると、包装シート58が破れにくくなるため好ましい。
【0126】
包装シート58の包装構造は適宜定めることができるが、製造容易性や前後端縁からの高吸収性ポリマー粒子の漏れ防止等の観点から、図示例のように、吸収体56の表裏面及び両側面を取り囲むように筒状に巻付け、かつその前後縁部を吸収体56の前後からはみ出させ、巻き重なる部分及び前後はみ出し部分の重なり部分をホットメルト接着剤、素材溶着等の接合手段により接合するのが好ましい。
【0127】
特に、
図15に示すように、包装シート58は、吸収体56の表側に位置する表面部分58sと、表面部分58sから続く部分であって、吸収体56の一方の側縁を回り込んで吸収体56の裏側に至る第1裏側部分58aと、表面部分58sから続く部分であって、吸収体56の他方の側縁を回り込んで吸収体56の裏側に至る第2裏側部分58bとを有し、第1裏側部分58a及び第2裏側部分58bは、互いに重なる積層部分58Wを有し、すべての高圧縮部51は、積層部分58Wに形成されていると、高圧縮部51の形成面におけるクレープ紙が二重となり、強度が向上し、高圧縮部51の形成時に破れにくくなるため好ましい。
【0128】
高圧縮部51による吸収要素50の形状維持性は、高圧縮部51自体の維持性により左右され、高圧縮部51自体の維持性は高圧縮部51における包装シート58と吸収体56との接合強度や吸収体56自体の形状維持性により左右される。そして、包装シート58と吸収体56との接着をホットメルト接着剤HM1,HM2により行う場合、高圧縮部51形成による表面積増加に伴い、包装シート58と吸収体56との接合強度や吸収体56自体の形状維持性を十分に維持するために、通常より多くのホットメルト接着剤HM1,HM2が必要となる。よって、吸収体56の表面と包装シート58の内面とは、少なくとも高圧縮部を有する領域の全体にわたり、5.0~20.0g/m2、特に7.5~15.0g/m2のホットメルト接着剤HM1,HM2を介して接着されていると好ましい。
【0129】
例えば、
図9に示すように、吸収体56の表面に高圧縮部51による窪みが形成される場合、高圧縮部51を有する領域の全体にわたり、吸収体56の裏面に二層のホットメルト接着剤HM1,HM2を設けることにより、上述のホットメルト接着剤HM量を実現することができる。このような構造は、
図13に示すように、展開状態の包装シート58の内面上に、第1ホットメルト接着剤HM1を吸収体56との対向面のほぼ全体にわたり塗布した後、この包装シート58における第1ホットメルト接着剤HM1の幅方向WDの中間部に吸収体56を配置して、吸収体56の裏面と包装シート58とを第1ホットメルト接着剤HM1を介して接着し、次いで、吸収体56の表面のほぼ全体にわたり第2ホットメルト接着剤HM2を塗布した後、
図14に示すように、包装シート58のうち吸収体56の両側にはみ出た部分をそれぞれ吸収体56の表面上に折り返して、吸収体56の表面と包装シート58の折り返し部分とを第1ホットメルト接着剤HM1及び第2ホットメルト接着剤HM2を介して接着するとともに、包装シート58の重なり部分を第1ホットメルト接着剤HM1を介して接着し、その後に
図9に示すように、エンボス加工により格子状高圧縮部51を形成することにより製造することができる。
【0130】
吸収要素50は、コスト低減のために
図9等に示すように包装シート58と吸収体56との間に紙や不織布等の他のシート層(当然に接着剤層は有していてもよい)を全く有しなくてもよいし、吸収体56の表裏少なくとも一方側に他のシート層を有していてもよい。
【0131】
<吸収体の製造方法>
吸収体56は、公知の方法で製造することができる。
図25は、吸収体製造装置100の一例を概略的にしたものである。この吸収体製造装置では、上流には主としてパルプを含む繊維材料を供給するパルプ供給部111が設けられている。パルプ供給部111は解繊機を備えていてよく、この解繊機にはパルプシート110が供給される。
【0132】
広葉樹パルプ繊維を含有する吸収体56を製造する場合、広葉樹パルプ繊維を含むパルプシート110が解繊機に供給される。解繊機ではパルプシート110を機械的処理により繊維状に解繊して、フラッフパルプを得る。なお、パルプシート110は、ベール状又はロール状のいずれでもよいが、ロール状であると生産性を向上させやすいため好ましい。
【0133】
また、パルプシート110を解繊するための機械的処理に用いる装置は特に限定されない。使い捨ておむつ等の吸収性物品の製造時などに使用されている公知の解繊機を使用でき、機械的処理として摩擦力やせん断力を利用する解繊機を好適に使用できる。解繊機の方式としては、例えば、ハンマー式解繊機、衝撃式解繊機、ロール式解繊機及びシェット気流式解繊機等が挙げられる。
【0134】
解繊により得られたフラッフパルプは、ダクト112内に供給される。ダクト112の途中には、高吸収性ポリマー粒子を供給するためのポリマー粒子導入部113が設けられていてよい。よって、ダクト112内で、パルプ繊維56f(フラッフパルプ)及び高吸収性ポリマー粒子56pが混合された後に積繊ドラム115へと供給される。 積繊ドラム115の外周面には、吸収体型115Cが周方向に離隔して複数配置されている。積繊ドラム115が回転することで、吸収体型115Cが順次、パルプ繊維56f及び高吸収性ポリマー粒子56pの混合物を受容することができる。吸収体型115Cの底面は多孔プレート又はメッシュプレートで構成されており、開孔を通して気体を吸引することでパルプ繊維及び高吸収性ポリマー粒子の混合物を吸収体型115Cの底面に集積できるようになっている。また、開孔を通して気体が排出されることで、吸収体56を、ベルトコンベア等の搬送手段116へと供給することができる。積繊ドラム115の内部には、負圧チャンバ及び正圧チャンバが設けられており、各チャンバによって気体の吸引及び排出がそれぞれ可能になっている。
【0135】
ダクト112内の下流位置には、スカッフィングロール(若しくはブラシ)114が設けられていてよい。スカッフィングロール114によって、積繊された過剰な吸収体材料を掻き取り、吸収体型115Cに集積された吸収体材料の表面を均一化することができる。また、搬送手段116に供給された吸収体56は、圧縮手段117によって厚み方向に圧縮することができる。圧縮手段117は、
図25に示すように一対のロールであっても、吸収体56の両側から接近する一対の押圧部材であってもよい。圧縮手段117によって、吸収体56の保形性が高まる。
【0136】
吸収体56は、さらに下流で、包装シート58によって包むことにより吸収要素50となる。包装シート58で吸収体56を包む工程も公知の方法で行うことができる。
【0137】
吸収体56を2層積層する場合には、
図26に示すように、吸収体56に含まれる各層、図示の例では上層56a及び下層56bをそれぞれ製造する単層製造部101、102を含む製造装置120を用いることができる。単層製造部101、102はいずれも、単層の吸収体を製造するための製造装置100(
図25)と同様の構成を備えている。単層製造部101、102でそれぞれ製造された吸収体の層56a、56bは、厚み方向に重ねられた後、さらにその全体を包装シート58で包むことにより吸収要素となる。
【0138】
(起き上がりギャザー)
起き上がりギャザー60は、内装体200の側部から起き上がる起き上がり部分68を有しており、この起き上がり部分68が、着用者の鼠径部から脚周りを経て臀部までの範囲に接して横漏れを防止するものである。起き上がりギャザー60は、必要に応じて省略することもできる。図示例の起き上がりギャザー60は、付け根側部分60Bが幅方向中央側に向かって斜めに起立し、中間部より先端側部分60Aが幅方向外側に向かって斜めに起立するものであるが、これに限定されるものではなく、全体として幅方向中央側に起立するもの等、適宜の変更が可能である。
【0139】
より詳細に説明すると、図示例の起き上がりギャザー60は、内装体200の前後方向長さに等しい長さを有する帯状のギャザーシート62を、先端となる部分で幅方向WDに折り返して二つに折り重ねるとともに、折り返し部分及びその近傍のシート間に、細長状のギャザー弾性部材63を長手方向に沿って伸長状態で、幅方向WDに間隔を空けて複数本固定してなるものである。起き上がりギャザー60のうち先端部と反対側に位置する基端部(幅方向WDにおいてシート折り返し部分と反対側の端部)は、内装体200の側部に固定された付根部分65とされ、この付根部分65以外の部分は付根部分65から延び出る本体部分66(折り返し部分側の部分)とされている。また、本体部分66は、幅方向中央側に延びる付け根側部分60Bと、この付け根側部分60Bの先端で折り返され、幅方向外側に延びる先端側部分60Aとを有している。そして、本体部分66のうち前後方向両端部が倒伏状態でトップシート30の側部表面に対して固定された倒伏部分67とされる一方で、これらの間に位置する前後方向中間部は非固定の起き上がり部分68とされ、この起き上がり部分68の少なくとも先端部に前後方向LDに沿うギャザー弾性部材63が伸長状態で固定されている。
【0140】
以上のように構成された起き上がりギャザー60では、ギャザー弾性部材63の収縮力により起き上がり部分68が
図3に矢印で示すように肌に当接するように起き上がる。特に、付根部分65が内装体200の裏側に位置していると、股間部及びその近傍において起き上がり部分68が幅方向外側に開くように起立するため、起き上がりギャザー60が脚周りに面で当接するようになり、フィット性が向上するようになる。付根部分65は内装体200の表側、例えばトップシート30の両側部の表面に固定することもできる。
【0141】
図示例の起き上がりギャザー60のように、本体部分66が、幅方向中央側に延びる付け根側部分60Bと、この付け根側部分60Bの先端で折り返され幅方向外側に延びる先端側部分60Aとからなる屈曲構造では、倒伏部分67で、先端側部分60Aと付け根側部分60Bとが倒伏状態で接合されるとともに、付け根側部分60Bが倒伏状態でトップシート30に接合される。倒伏部分67における対向面の接合には、種々の塗布方法によるホットメルト接着剤、及びヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段の少なくとも一方を用いることができる。この場合において、付け根側部分60B及びトップシート30の接合と、先端側部分60A及び付け根側部分60Bの接合とを同じ手段により行っても、また異なる手段により行っても良い。例えば、付け根側部分60B及びトップシート30の接合をホットメルト接着剤により行い、先端側部分60A及び付け根側部分60Bの接合を素材溶着により行うのは好ましい。
【0142】
ギャザーシート62としてはスパンボンド不織布(SS、SSS等)やSMS不織布(SMS、SSMMS等)、メルトブローン不織布等の柔軟で均一性・隠蔽性に優れた不織布に、必要に応じてシリコーンなどにより撥水処理を施したものを好適に用いることができる。この場合の不織布の繊維目付けは10~30g/m2程度とするのが好ましい。また、図示しないが、二つに折り重ねたギャザーシート62の間に防水フィルムを介在させることもできる。
【0143】
ギャザー弾性部材63としては糸ゴム等を用いることができる。スパンデックス糸ゴムを用いる場合は、太さは470~1240dtexが好ましく、620~940dtexがより好ましい。ギャザー弾性部材63の取付け状態での伸長率は、150~350%が好ましく、200~300%がより好ましい。ギャザー弾性部材63の本数は2~6本が好ましく、3~5本がより好ましい。ギャザー弾性部材63の配置間隔は3~10mmが適当である。このように構成すると、ギャザー弾性部材63を配置した範囲で肌に対して面で当たりやすくなる。先端側だけでなく付け根側にもギャザー弾性部材63を配置しても良い。
【0144】
起き上がりギャザー60の起き上がり部分68では、ギャザーシート62の内側層及び外側層の貼り合わせや、その間に挟まれるギャザー弾性部材63の固定に、種々の塗布方法によるホットメルト接着剤及びヒートシールや超音波シール等の素材溶着による固定手段の少なくとも一方を用いることができる。ギャザーシート62の内側層及び外側層の全面を貼り合わせると柔軟性を損ねるため、ギャザー弾性部材63の接着部以外の部分は接着しないか弱く接着するのが好ましい。図示例では、コームガンやシュアラップノズル等の塗布手段によりギャザー弾性部材63の外周面にのみホットメルト接着剤を塗布してギャザーシート62の内側層及び外側層間に挟むことにより、当該ギャザー弾性部材63の外周面に塗布したホットメルト接着剤のみで、ギャザーシート62の内側層及び外側層へのギャザー弾性部材63の固定と、ギャザーシート62の内側層及び外側層間の固定とを行う構造となっている。
【0145】
同様に、倒伏部分67の固定についても、種々の塗布方法によるホットメルト接着剤、及びヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段の少なくとも一方を用いることができる。
【0146】
(サイドフラップ)
図1~
図4等に示すように、内装体200の両側部には、吸収体56の側方に延び出たサイドフラップ70が設けられており、このサイドフラップ70に前後方向に伸縮するサイド伸縮領域SGが形成されていると好ましい。図示例のサイドフラップ70は、前後方向LDに沿ってかつ互いに間隔を空けて設けられた一本又は複数本の細長状のサイド弾性部材73と、サイド弾性部材73の外側に面する第1シート層71と、サイド弾性部材73の内側に面する第2シート層72とを有する。
【0147】
第1シート層71及び第2シート層72をなすシート材は特に限定されず、前述の起き上がりギャザー60や前述の外装体12F,12Bで利用可能な不織布等、適宜の不織布を選択することができる。図示例では、後述するように起き上がりギャザー60のギャザーシート62を延長して第1シート層71及び第2シート層72を形成している。この場合、サイドフラップ70の前後端は起き上がりギャザー60の前後端(つまりこの場合内装体200の前後端)に一致する。
【0148】
サイド弾性部材73も特に限定されず、前述のギャザー弾性部材63と同様の細長状の弾性部材を使用することができる。サイド弾性部材73の取付け状態での伸長率は、150~350%が好ましく、200~270%がより好ましい。サイド弾性部材73の本数は2~16本が好ましく、6~10本がより好ましい。サイド弾性部材73の配置間隔は5~10mmが適当である。
【0149】
サイド弾性部材73は、第1シート層71及び第2シート層72に固定されている。第1シート層71及び第2シート層72の貼り合わせや、その間に挟まれるサイド弾性部材73の固定に、種々の塗布方法によるホットメルト接着剤HMや、ヒートシールや超音波シール等の素材溶着による固定手段を用いることができる。第1シート層71及び第2シート層72の接合面積が大きいと柔軟性を損ねるため、サイド弾性部材73の接着部以外の部分は接合しないか、又は弱く接合するのが好ましい。図示例では、コームガンやシュアラップノズル等の塗布手段によりサイド弾性部材73の外周面にのみホットメルト接着剤HMを塗布して第1シート層71及び第2シート層72の間に挟むことにより、当該サイド弾性部材73の外周面に塗布したホットメルト接着剤HMのみで、第1シート層71及び第2シート層72へのサイド弾性部材73の固定と、第1シート層71及び第2シート層72間の固定とを行う構造となっている。
【0150】
また、図示例では、第1シート層71をなすシート材及び第2シート層72をなすシート材はサイドフラップ70の側縁で折り返されるとともに、この折り返し部分が液不透過性シート11の裏面に固定されている(袋閉じされている)。この固定は、図示例のようにホットメルト接着剤HMにより行う他、素材の溶着により行うことができる。
【0151】
サイドフラップ70は省略することもできる。
【0152】
<吸収体製造用パルプシートの製造例>
表1に示す材料を用い、以下の手順で、広葉樹パルプ繊維を含むNo.1~20のパルプシートを作製した。
【0153】
(蒸解工程)
(1)広葉樹
アカシア及びユーカリを表1に記載の質量比となるよう混合し、所定の硫化度を有する白液を添加し、液比6.0(L/kg)、最高温度170℃で回転式オートクレーブによる蒸解を行い、カッパー価約16の広葉樹未晒クラフトパルプを得た。
(2)針葉樹
杉に所定の硫化度を有する白液を添加し、液比6.0(L/kg)、最高温度170℃で回転式オートクレーブによる蒸解を行い、カッパー価約30の針葉樹未晒クラフトパルプを得た。
【0154】
(洗浄工程)
未晒パルプをパルプ濃度約2%まで希釈した後、ブフナー漏斗にNo.2ろ紙(ADVANTEC社製)を敷き、パルプ濃度を約12%まで脱水した。その後、未晒パルプを角型ろ紙(ADVANTEC社製)で挟み、プレス機で圧力を掛け、パルプ濃度33%まで脱水した。この洗浄工程を2回実施した。
【0155】
(漂白工程)
(1)広葉樹
未晒クラフトパルプを、45℃で8.1%濃度のオゾンガスにて約2分間でオゾン漂白した。なお、オゾン漂白には、住友精密工業製PSA Ozonizer SGA-01A-PSA4 のラボオゾン発生器からのオゾンガスを用いた。さらに、オゾン漂白後のパルプを、二酸化塩素添加率1.5%、パルプ濃度10質量%、70℃で二酸化塩素漂白し、広葉樹晒クラフトパルプを得た。なお、各漂白工程の間では、パルプ濃度約2%まで希釈した後、ブフナー漏斗にNo.2ろ紙(ADVANTEC社製)を敷き、パルプ濃度を約12%まで脱水する希釈洗浄工程を2回実施した。
(2)針葉樹
未晒クラフトパルプを、二酸化塩素添加率1.5%、パルプ濃度10質量%、70℃で30分間二酸化塩素漂白した。続いて、アルカリ添加率1%、過酸化水素添加率0.3%、パルプ濃度10質量%、70℃で120分間アルカリ性過酸化水素漂白を行った。続いて、水酸化ナトリウム添加率0.2%、パルプ濃度10質量%、70℃で120分間、アルカリ処理を行った。続いて、二酸化塩素添加率0.3%、パルプ濃度10質量%、70℃で150分間二酸化塩素漂白を行い、針葉樹晒クラフトパルプを得た。なお、各漂白工程の間では、パルプ濃度約2%まで希釈した後、ブフナー漏斗にNo.2ろ紙(ADVANTEC社製)を敷き、パルプ濃度を約12%まで脱水する希釈洗浄工程を2回実施した。
【0156】
(抄紙工程)
得られた広葉樹哂クラフトパルプおよび針葉樹哂クラフトパルプは、叩解せずに、濃度約2%に希釈して、表2に記載の配合率となるように調整した。そして、調整後のパルプスラリーを用いて、半自動シートマシン(熊谷理機工業社製)を用いて、坪量800g/m2となるよう手抄きシート(フラッフパルプ用パルプシート)を作成した。
【0157】
<吸収性物品の作製>
各パルプシートを用いて、
図25に示すような装置により吸収体をそれぞれ作製した。フラップパルプに添加された高吸水性ポリマーの量は、フラッフパルプ7.7gに対して9.3gであった。得られた吸収体を用いて、前述の高圧縮部51は設けずに、使い捨ておむつ(テープタイプ、Lサイズ)を作製した。
【0158】
<パルプ繊維の繊維長及び繊維幅の測定等>
蒸解工程及び洗浄工程後の各例の広葉樹未晒クラフトパルプにおける繊維長及び繊維幅を測定した。繊維長及び繊維幅は、バルメット社製、繊維長測定機「VALMET FS5」を用いて、JIS-P8226:2011(ISO16065-2:2007)「パルプ-光学的自動分析法による繊維長測定方法」に準じて測定した。繊維分析計「VALMET FS5」は、希釈したパルプ繊維が繊維分析計内部の測定セルを通過する際の画像分析によってパルプ繊維の長さ、幅を測定できる装置である。得られた測定値から、全パルプ繊維における繊維長0.5mm以上1.1mm未満のパルプ繊維の質量基準での割合、及び繊維幅10μm以上35μm未満のパルプ繊維の質量基準での割合を算出した。また、上記繊維長0.5mm以上1.1mm未満のパルプ繊維を0.02mm間隔で(0.02mmの分級幅で)測定したときにおける平均繊維長及び標準偏差σ、並びに上記繊維幅10μm以上35μm未満のパルプ繊維を1μm間隔で(1μmの分級幅で)測定したときにおける平均繊維幅及び標準偏差σを算出した。なお、上記平均値(平均繊維長及び平均繊維幅の値)は、算術平均である。また、上記標準偏差は繊維分析計に基づいて測定したn=10000以上から算出した値である。算出結果を表3に示す。
【0159】
【0160】
<評価>
評価は、以下のようにして行った。評価結果は表4に示す。
【0161】
(密度)
各例のフラッフパルプ用パルプシートの密度は、JIS-P8118(2014)に記載の「紙及び板紙-厚さ、密度及び比容積の試験方法」に準拠して測定した。
【0162】
(比破裂強度の算出)
各例のフラッフパルプ用パルプシートの比破裂強度は、JIS-P8131(2009)に準拠して測定された破裂強さ[kPa]を、坪量で除した値[kPa・m2/g]として求めた。
【0163】
(解繊性評価)
上記の比破裂強度に基づき、各例のフラッフパルプ用パルプシートの解繊性を評価した。評価基準は、以下の5段階とした。評価がA、B、C及びDの場合、フラッフパルプ用パルプシートにおける解繊性が良好であり、これらのうちAの場合の解繊性は優れている。また、Dはやや劣るが実用上は問題のないレベルである。
A:比破裂強度が1.2kPa・m2/g以上1.5kPa・m2/g以下である。
B:比破裂強度が1.6kPa・m2/g又は1.1kPa・m2/gである。
C:比破裂強度が1.7kPa・m2/g又は1.0kPa・m2/gである。
D:比破裂強度が1.8kPa・m2/g又は0.9kPa・m2/gである。
E:比破裂強度が1.9kPa・m2/g以上又は0.8kPa・m2/g以下である。
【0164】
(クレム吸水度の測定)
各例のフラッフパルプ用パルプシートのクレム吸水度を、JIS-P8141(2004)に記載の「紙及び板紙-吸水度試験方法-クレム法」に準拠して測定した。より具体的には、坪量200g/m2の各フラッフパルプ用パルプシートについて、測定開始後1分の高さ[mm]を測定し、測定開始後1分及び2分の高さ[mm]に基づき、測定開始後1分から2分の間の吸水速度[mm/分]を算出した。
【0165】
(吸水量評価)
上記の測定開始後1分の高さの値に基づき、フラップパルプ用シートの吸水量(吸収性能)を以下の基準で評価した。
A:クレム吸水度における測定開始後1分の高さが29mm以上40mm以下である。
B:クレム吸水度における測定開始後1分の高さが27mm以上29mm未満である。
C:クレム吸水度における測定開始後1分の高さが25mm以上27mm未満である。
D:クレム吸水度における測定開始後1分の高さが25mm未満である。
【0166】
(吸水速度評価)
上記の測定開始後1分から2分の間の吸水速度の値に基づき、フラップパルプ用シートの吸水速度を以下の基準で評価した。
A:クレム吸水度における測定開始後1分から2分の間の吸水速度が9mm/分以上である。
B:クレム吸水度における測定開始後1分から2分の間の吸水速度が7mm/分以上9m/分未満である。
C:クレム吸水度における測定開始後1分から2分の間の吸水速度が5mm/分以上7mm/分未満である。
D:クレム吸水度における測定開始後1分から2分の間の吸水速度が3mm/超5mm/未満である。
E:クレム吸水度における測定開始後1分から2分の間の吸水速度が3mm/分以下である。
【0167】
(フラッフパルプの製造時の作業性評価)
フラッフパルプの製造時における作業性は、坪量200g/m2の各例のフラッフパルプ用パルプシートを2cm×2cmに裁断し、市販のミキサー(テスコム社製、ミキサーTM856)で粉砕し、粉砕時の紙紛の発生程度を調べることで評価した。なお、粉砕時に生じる紙粉の堆積量は、EからAに向かうにつれて多くなっている。評価は、以下の5段階の通りとした。評価がA、B、C及びDの場合、作業性が良好である。
A:パルプシート粉砕時に紙紛が舞い、ミキサー壁面にわずかにパルプの堆積がある。
B:パルプシート粉砕時に紙紛が舞い、ミキサー壁面に若干のパルプの堆積がある。
C:パルプシート粉砕時に紙紛が舞い、ミキサー壁面に少量のパルプの堆積がある。
D:パルプシート粉砕時に紙紛が舞い、ミキサー壁面に多少のパルプの堆積があるが、問題ない範囲である。
E:パルプシート粉砕時に紙紛が舞い、ミキサー壁面に多くのパルプが堆積し、実使用に耐えないレベルである。
【0168】
(吸収性物品の肌かぶれ抑制評価)
各例で上述のように作製された使い捨ておむつを、モニターのべ220名に、No.1~22のいずれかを各10枚使用してもらった。すなわち、1つの例の使い捨ておむつにつき、モニター10名による評価が行われた。そして、かぶれが発生した枚数を百分率で評価した。評価は、以下の5段階の通りとした。評価がA、B、C及びDの場合、肌のかぶれに対する抑制効果が既存品と同じ構成のNo.20よりも良好であることを意味する。
A:かぶれ発生率がNo.20より優れる。
B:かぶれ発生率がNo.20より多少優れる。
C:かぶれ発生率がNo.20より若干優れる。
D:かぶれ発生率がNo.20より僅かに優れ、実使用可能である。
E:かぶれ発生率がNo.20と同等であり、既存品と同じレベルである。
なお、かぶれ抑制効果には、吸収体の逆戻り抑制の効果及び吸収体の吸収容量が関係している。
【0169】
【0170】
表3及び表4より、広葉樹パルプ繊維及び針葉樹パルプ繊維を含有し、全パルプ繊維における繊維長0.5mm以上1.1mm未満のパルプ繊維の割合が42.6%以上であり、繊維幅10μm以上35μm未満のパルプ繊維の割合が90.6%以上であるNo.1~19は、特に、解繊性、フラッフパルプの製造時における作業性、吸収性物品におけるかぶれ抑制効果について良好な結果が得られた。
【0171】
<効果確認試験1>
表5に示す各種条件の吸収要素を備えたパンツタイプ使い捨ておむつのサンプル(
図1~
図6と同様の構造を有する)を作製し、吸収要素の厚み測定、加圧下逆戻り試験、拡散面積の測定、吸収体強度試験、ポリマー脱落試験を行った。なお、表5の包装シートの目付け、包装シートの乾燥引張強度、包装シートの引張破断伸びは高圧縮部を形成する前の素材の測定値である。
【0172】
サンプル1及び3の各部の寸法は、以下のとおりとした。
第1高圧縮部51aの長さd3:3mm
第2高圧縮部及び第3高圧縮部の長径d1:4.82mm
第2高圧縮部及び第3高圧縮部の短径d2:3mm
第1間隔81d:12.63mm
第2間隔82d:12.63mm
第1仮想直線81と第2仮想直線82との交差角度:90度
【0173】
サンプル1及び3において、高圧縮部は0.4MPaの圧力で吸収要素の表面の全体にわたり形成した。また、サンプル2及び4は高圧縮部を有しない比較例とした。また、表5に示す仕様以外の条件は、各サンプル共通とした。
【0174】
(加圧下逆戻り試験)
本試験は、キリヤ社の食用青色1号(Brilliant Blue FCF)(荷姿:紛体)約5gを人工尿約300mlに溶解して調整した青色試験液を用いて、以下の手順で行った。
(1)サンプルのサイドシール12Aを切断して前身頃F及び後身頃Bを開いた後、表面(高圧縮部の窪みを有する面)が上となる向きで、水平に設置した平板上に乗せ、内装体200が平坦に展開した状態で固定されるようにサンプルの四隅を平板に粘着テープで固定した。
(2)サンプル表面における吸収体の中心(幅方向の中央かつ前後方向の中央)位置上に、注入筒(内径23mm、外形25mm、高さ100mmのアクリル製円筒部と、この円筒部の周囲に延びた縦100mm×横100mm×厚み2mmの正方形のフランジ部とからなる)を載せて鉛直に保持した。
(3)注入筒の上端開口にメスシリンダーを用いて上記青色試験液50cm3を7cm3/秒の速度で注入し、注入開始からサンプル表面に人工尿が無くなる(完全に吸収される)まで待ち、そこから注入筒を取り除いた。
(4)注入筒を取り除いてから30分放置した。
(5)上記(4)に続いて、再度上記(2)~(4)の手順を実施した。
(6)上記(5)に続いて、再度上記(2)(3)の手順を実施した。
(7)上記(6)の3回目の注入による人工尿が完全に吸収されてから20分後に、人工尿の注入個所に5kgの錘を載せて10分間放置した。錘は、縦100mm×横100mmの正方形の平坦な底面を有するものとし、錘の縦方向及び横方向がサンプルの前後方向及び幅方向に沿うように、かつ錘の中心が吸収体の中心上に位置するように、錘をサンプル表面に載せた。
(8)ADVANTEC社の定性濾紙No.2(縦100mm×横100mm正方形)の30枚の重量(g)を電子天秤で小数第3位まで測定した。
(9)上記(7)に続いて、錘とサンプル表面との間に、中心及び向きを合わせて上記濾紙30枚を重ねて挟み、20秒間後に全濾紙を取り出してその重量(g)を小数第2位まで測定し、この吸収後重量の測定値から上記(5)の吸収前重量の測定値を引いて逆戻り量とした。
【0175】
(拡散面積の測定)
上記加圧下逆戻り試験に続いて、サンプルを水平に設置した平板上に固定したままで、その脇に定規を並べて配置し、その真上からサンプル及び定規の静止画像を撮影し、撮影した画像データを画像解析ソフトウエア「Fiji」(Fiji Is Just ImageJ)で読み込み、サンプル表面における青色部分の面積を以下の手順で測定した。
(1)Fijiを起動し、「File」、「Open」の順に選択し、測定する画像を読み込んだ。
(2)「Straight」のアイコンを選択し、画像内の定規の目盛上の2点に合わせた。
(3)「Analyze」、「Set Scale」の順で選択し、上記(2)で合わせた2点間の実寸(定規の目盛から読み取った)を「Known distance」に入力し、「Unit of length」に単位を入力した。
(4)「Image」、「Type」、「8-bit」の順に選択し、画像を8-bitに変換した。
(5)「Image」、「Adjust」、「Threshold」の順で選択し、Threshold選択画面を表示させ、Thresholdを150~210(Default Red)にセットし、「Dark background」及びDon’t reset rangeにチェックを入れた。
(6)「Analize」、「Set Mesurements」の順に選択し、「Area」、「Mean gray value」、「Min & Max gray value」、「Limit to threshold」にチェックを入れ、OKを選択した。
(7)「Polygon selections」を選択し、上記(5)で赤く表示された範囲のうち、液拡散範囲を囲んだ。
(8)「Analyze」、「Mesure」の順に選択して「Results」を表示させ、その「Area」の項目を拡散面積とした(「Unit of length」をcmにし、面積の単位はcm2とした)。
【0176】
(吸収体強度試験)
(1)サンプルのサイドシール12Aを切断して前身頃F及び後身頃Bを開いた後、表面(高圧縮部の窪みを有する面)が上となる向きで、水平に設置した平板上に乗せ、内装体200が平坦に展開した状態で固定されるようにサンプルの四隅を平板に粘着テープで固定した。
(2)吸収体の中心(幅方向の中央かつ前後方向の中央)位置、及びそこから後方に100mmの位置に、注入筒(内径23mm、外形25mm、高さ100mmのアクリル製円筒部と、この円筒部の周囲に延びた縦100mm×横100mm×厚み2mmの正方形のフランジ部とからなる)をそれぞれ載せて鉛直に保持した。
(3)注入筒の上端開口にメスシリンダーを用いて上記青色試験液90cm3を7cm3/秒の速度で注入し、注入開始からサンプル表面に人工尿が無くなる(完全に吸収される)まで待ち、そこから各注入筒のフランジ部の上に300gの錘を載せ、フランジ部に均等に荷重を加えた。
(4)上記(3)の錘を載せてから5分間放置した後、2つの錘と後方の注入筒を取り除き、中央の注入筒の上端開口にメスシリンダーを用いて上記青色試験液90cm3を7cm3/秒の速度で注入し、注入開始からサンプル表面に人工尿が無くなる(完全に吸収される)まで待ち、そこから中央の注入筒のフランジ部の上に300gの錘を載せ、フランジ部に均等に荷重を加えた。
(5)上記(4)の錘を載せてから5分間放置した後、サンプルを平板から取り外し、後述の打ち付け試験機300の回動板303に取り付け、5秒間隔で繰り返し打ち付けを行った。なお、回動板303が鉛直下方を向いた初期状態でサンプル320の前後方向が上下方向に沿うように、サンプルの前外装体12Fの外面を回動板303のフック材303Fに貼り付けた。
(6)上記(5)の打ち付け中、試験者が打ち付け面301Sに対して正面からサンプル320の吸収体の形状を視認し、吸収体に裂け目を生じていると認めた後、1回打ち付ける度に打ち付けを中断して、裂け目の幅を定規で計測し、裂け目の幅が3cmになるまでの打ち付け回数を吸収体強度として記録した。
【0177】
(打ち付け試験機)
図27及び
図28に打ち付け試験機300を示した。この打ち付け試験機300は、床面上に設置された直方体状フレームからなる支持体310と、この支持体310の背面部311の上下方向の中間に取り付けられたライトボックス301と、背面部311におけるライトボックス301の上方に離間して設けられた、ほぼ水平横方向に延びた第1回動軸302と、この第1回動軸302に一端部が固定され、鉛直下方を向いた状態と、そこから正面側に回動して水平方向を向いた状態との間で正逆回動自由に支持された、平板状の回動板303と、第1回動軸302の回転中心線を横方向に延長した中心線と同心をなすように設けられた第2回動軸304と、第2回動軸304から径方向に延びるとともに第2回動軸304によって正逆回動可能に支持されたサンプル把持アーム305と、サンプル把持アーム305を、鉛直下方を向いた状態と、そこから正面側に回動してほぼ水平方向を向いた状態との間で正逆回動させるための駆動源(サーボモータ)306と有する。ライトボックス301は、正面に透明な打ち付け面301Sを有しており、内部の照明(白色LED)301Lの光が打ち付け面301Sを透過して正面方向に照射されるようになっている。また、回動板303は、鉛直下方を向いた初期状態で正面側となる表面のほぼ全体にわたりメカニカルファスナーのフック材303Fが取り付けられており、このフック材303Fにサンプル320外面を貼り付けることが可能となっている。サンプル把持アーム305の先端部には、鉛直下方を向いた回動板303から垂れ下がるサンプル320の下端部を把持し、その状態を維持しつつサンプル320の下端部が正面側に回動してほぼ水平方向まで回動した後に把持を解放するためのクランプ部307と、その駆動のための図示しない駆動源を有している。符号307Cは、サンプル320の下端部の表裏両側からサンプル320を挟持するための一対の挟持部を示している。
【0178】
本打ち付け試験機300では、サンプル320を回動板に貼り付けた後、外力を加えない初期状態では、
図27に実線で示すようにサンプル320及び回動板303はほぼ鉛直下方を向いた状態となり、サンプル320の外面はライトボックス301の打付け面301Sに接触した状態となる。また、サンプル把持アーム305はほぼ鉛直下方を向き、先端部のクランプ部307が開いた状態となる。ここで、試験動作を開始すると、
図27中の拡大部分中に矢印及び二点鎖線で示すように、クランプ部307が自動的に閉じてサンプル320の下端部を把持し、その状態を維持しつつサンプル把持アーム305が
図27中に矢印及び二点鎖線で示すように正面側にほぼ水平となるまで回動することにより、サンプル320の下端部もほぼ同方向に向いた状態となる。続いて、
図27中の拡大部分中に矢印及び二点鎖線で示すように、クランプ部307が自動的に開くことにより、サンプル320及び回動板303は拘束外力を失い、自重により第1回動軸302を中心として自由に回動して、サンプル320の背面がライトボックス301の打ち付け面301Sに打ち付けられる。その後、サンプル把持アーム305は初期状態に戻る。試験動作中はこのサンプル320の打ち付け動作(把持、回動、開放、及び打ち付け)が、設定時間間隔で繰り返される。試験動作を停止することにより、サンプル320及び回動板303はほぼ鉛直下方を向いた状態となり、サンプル320はライトボックス301の打ち付け面301Sに沿う姿勢で停止する。ここで、サンプル320正面に対峙する試験者が、サンプル320を透過するライトボックス301からの照明光(透過量の違い)により、吸収体の形状を視認することができる。特に前述の上記青色試験液を吸収した吸収体の外形の視認は容易である。
【0179】
(ポリマー脱落試験)
(1)サンプルのサイドシール12Aを切断して前身頃F及び後身頃Bを開いた後、内装体の後端部を吸収体の後端に沿って切断し、吸収体の後端を露出させた。なお、本サンプルの後外装体12Bは、内装体200のウエスト開口WO側の端部上までを被覆する折り返し部分12rを有していたため、この折り返し部分12rをコールドスプレーを用いて剥離し、切除した。
(2)前述の打ち付け試験機300の回動板303が鉛直下方を向いた初期状態でサンプル320の前後方向が上下方向に沿うように、サンプルの前外装体12Fの外面を回動板303のフック材303Fに貼り付けた。また、打ち付け面301Sの下方10cmの位置に高吸収性ポリマー粒子を受け止める回収トレー(図示略)を設置した。その後、5秒間隔で30回打ち付けを繰り返した。
(3)上記(2)の打ち付け後、回収トレー内の落下物の重量を測定し、脱落ポリマー量として記録した。
【0180】
試験結果を表5に示した。
【0181】
【0182】
広葉樹パルプ繊維を含む吸収体を備えるとともに吸収要素に高圧縮部を形成したサンプル1は、高圧縮部を有しない以外は共通のサンプル2と比較して吸収体強度が高く、しかも針葉樹パルプ繊維のみからなる吸収体を備えたサンプル3と同レベルの吸収体強度を有していた。また、サンプル1の拡散面積は、サンプル2よりも顕著に高く、針葉樹パルプ繊維のみからなる吸収体を備えたサンプル3と同レベルとなった。さらに、サンプル1はサンプル2と比較して逆戻り量が少ないだけでなく、全サンプルの中で顕著に少ないものであり、特筆すべき結果となった。また、サンプル1は、サンプル2と比較して脱落ポリマー量が少なく、針葉樹パルプ繊維のみからなる吸収体を備えたサンプル3と同レベルの結果となった。また、サンプル1と2の比較、及びサンプル3と4の比較からも分かるように、高圧縮部の形成により吸収要素の厚みが減少しており、サンプル1とサンプル3との比較からも分かるように広葉樹パルプ繊維を含むことにより吸収要素の厚みがさらに減少した。
【0183】
<明細書中の用語の説明>
明細書中の以下の用語は、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有するものである。
【0184】
・「前後方向」とは図中に符号LDで示す方向(縦方向)を意味し、「幅方向」とは図中にWDで示す方向(左右方向)を意味し、前後方向と幅方向とは直交するものである。
【0185】
・「表側」とは、着用した際に着用者の肌に近い方を意味し、「裏側」とは、着用した際に着用者の肌から遠い方を意味する。
【0186】
・「表面」とは、着用した際に着用者の肌に近い方の面を意味し、「裏面」とは、着用した際に着用者の肌から遠い方の面を意味する。
【0187】
・「伸長率」は、自然長を100%としたときの値を意味する。例えば、伸長率が200%とは、伸長倍率が2倍であることと同義である。
【0188】
・「人工尿」は、尿素:2wt%、塩化ナトリウム:0.8wt%、塩化カルシウム二水和物:0.03wt%、硫酸マグネシウム七水和物:0.08wt%、及びイオン交換水:97.09wt%を混合したものである。
【0189】
・「ゲル強度」は次のようにして測定されるものである。人工尿49.0gに、高吸収性ポリマーを1.0g加え、スターラーで攪拌させる。生成したゲルを40℃×60%RHの恒温恒湿槽内に3時間放置したあと常温にもどし、カードメーター(I.techno Engineering社製:Curdmeter-MAX ME-500)でゲル強度を測定する。
【0190】
・「目付け」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を温度100℃の環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から、試料採取用の型板(100mm×100mm)を使用し、100mm×100mmの寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、100倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
【0191】
・吸収体56、吸収要素50等の厚い部材の「厚み」は、株式会社尾崎製作所の厚み測定器(ピーコック、ダイヤルシックネスゲージ、型式H(測定範囲:0~10mm、測定子:直径10mmの円形加圧平面、測定力:約1.7N、圧力:約21.7KPa))を用い、供試部材と厚み測定器を水平にして、測定する。吸収要素50(非高圧縮部52)の厚みは次のようにして求める。すなわち、吸収要素50の非高圧縮部52のうち、非高圧縮部52の外形に内接する内接円が最大となる領域を10か所選定し、その領域の内接円の中心に上記厚み測定器の測定子の中心を合わせて測定される厚みを、吸収要素50(非高圧縮部52)の厚みとする。
【0192】
・高圧縮部51の「厚み」は、吸収要素50(非高圧縮部52)の厚みから高圧縮部51の深さを差し引いて求める。
【0193】
・高圧縮部51の「深さ」は、株式会社キーエンス社製ワンショット3D測定マクロスコープ VR-3200又はその相当機と、観察アプリケーション「VR-H2V」及び解析アプリケーション「VR-H2A」、又はそれらの相当ソフトウエアを用いて測定する。原則として、測定の際の倍率は12倍、視野面積は24mm×18mmとするが、倍率と視野面積は、高圧縮部51の大きさによって変更することができる。具体的な深さの測定に際しては、上記観察アプリケーションを起動し、測定対象の高圧縮部51を視野内に位置するようにマイクロスコープのステージにサンプルを載せて「測定」ボタンを押す。次に、上記解析アプリケーションを実行し、測定した3D情報の解析を行う。解析手順について
図23を参照して説明すると次のとおりである。すなわち、上記解析アプリケーションを用いて、平面視点で示される画像部(図中XY部分)中の一つの高圧縮部51の中心(円形以外の場合は重心)を通る線分Q1における深さ(測定断面曲線)プロファイルを得る。この深さプロファイルの断面曲線からλc:800μm(但し、λcはJIS-B0601「3.1.1.2」に記載の「粗さ成分とうねり成分との境界を定義するフィルタ」)より短波長の表面粗さの成分を低域フィルタによって除去して得られる断面視点で示される画像部(図中XZ部分)の「輪郭曲線Q2」のうち、曲がりがほぼ平坦になる位置、又は上に凸で最も曲がりが強くなる位置を2つの境界点P1,P2とし、この境界点P1,P2で挟まれる範囲の高さの最小値を求める。さらに、境界点P1,P2の高さの値の平均値を高さの最大値とする。そして、高さの最大値から高さの最小値を差し引いて、高圧縮部51の深さを求めることができる。また、2つの境界点P1,P2は目視にて選択する。なお、その選択にあたっては、当該測定中の高圧縮部51の平面視点の画像を参考としてよい。以上の測定を、同一の寸法・形状として設計された任意の10個の高圧縮部51について行い、結果はその平均値とする。
【0194】
・高圧縮部51の直径や間隔等の寸法は、株式会社キーエンス社製ワンショット3D測定マクロスコープ VR-3200又はその相当機と、観察アプリケーション「VR-H2V」及び解析アプリケーション「VR-H2A」、又はそれらの相当ソフトウエアを用いて測定する。原則として、測定の際の倍率は12倍、視野面積は24mm×18mmとするが、倍率と視野面積は、高圧縮部51の大きさによって変更することができる。具体的に寸法の測定に際しては、上記観察アプリケーションを起動し、測定対象の高圧縮部51を視野内に位置するようにマイクロスコープのステージにサンプルを載せて「測定」ボタンを押す。次に、上記解析アプリケーションを実行し、測定した3D情報の解析を行う。
高圧縮部51の直径の解析手順について
図23を参照して説明すると次のとおりである。すなわち、上記解析アプリケーションを用いて、平面視点で示される画像部(図中XY部分)において、任意の直径方向に沿って対象の高圧縮部51を通る線分Q1における深さ(測定断面曲線)プロファイルを得る。この深さプロファイルの断面曲線からλc:800μm(但し、λcはJIS-B0601「3.1.1.2」に記載の「粗さ成分とうねり成分との境界を定義するフィルタ」)より短波長の表面粗さの成分を低域フィルタによって除去して得られる断面視点で示される画像部(図中XZ部分)の「輪郭曲線Q2」のうち、最下点51Lから+0.25mmに位置するX軸に平行な直線Q3との交点をP3,P4とし、この交点P3,P4のX軸方向の距離X1を、高圧縮部51の直径とする。以上の測定を、同一の寸法・形状として設計された任意の10個の高圧縮部51について行い、結果はその平均値とする。
また隣り合う高圧縮部51の間隔の解析手順について
図23を参照して説明すると次のとおりである。すなわち、上記解析アプリケーションを用いて、平面視点で示される画像部において、対象の間隔の方向に沿って隣り合う二つの高圧縮部51を通る線分Q1における深さ(測定断面曲線)プロファイルを得る。この深さプロファイルの断面曲線からλc:800μm(但し、λcはJIS-B0601「3.1.1.2」に記載の「粗さ成分とうねり成分との境界を定義するフィルタ」)より短波長の表面粗さの成分を低域フィルタによって除去して得られる断面視点で示される画像部(図中XZ部分)の「輪郭曲線Q2」のうち、最下点51Lから+0.25mmに位置するX軸に平行な直線Q3との交点をP3,P4,P5,P6とし、中間の隣り合う2交点P4,P5のX軸方向の距離X2を、高圧縮部51の間隔とする。以上の測定を、同一の寸法・形状として設計された任意の5組の隣り合う高圧縮部51について行い、結果はその平均値とする。
【0195】
・不織布等の薄いシートの「厚み」は、自動厚み測定器(KES-G5 ハンディ圧縮計測プログラム)を用い、荷重:0.098N/cm2、及び加圧面積:2cm2の条件下で自動測定する。
【0196】
・高圧縮部51の「面積」は、株式会社キーエンス社製ワンショット3D測定マクロスコープ VR-3200又はその相当機と、観察アプリケーション「VR-H2V」及び解析アプリケーション「VR-H2A」、又はそれらの相当ソフトウエアを用いて測定する。原則として、測定の際の倍率は12倍、視野面積は24mm×18mmとするが、倍率と視野面積は、高圧縮部51の大きさによって変更することができる。具体的に面積の測定に際しては、上記観察アプリケーションを起動し、測定対象の高圧縮部51を視野内に位置するようにマイクロスコープのステージにサンプルを載せて「測定」ボタンを押す。次に、上記解析アプリケーションを実行し、測定した3D情報の解析を行うために、「体積・面積」ボタンを押して体積・面積測定画面に移行する。体積・面積測定画面では、「凹部」ボタンを押し、次に「測定領域を設定」ボタンを押した後、「補助ツール2」の中から「高さ最小」ボタンを押して、対象の一つの高圧縮部51を含むように領域を指定し、表示された領域内の最下点を選択する。次に、「要素ツール」の中の「自動抽出(レベル)」を選択した後、最下点を基準点として指定し、交差設定の高さを+0.25mmに設定し、「OK」ボタンを押す。体積・面積測定画面に戻り、指定した領域内の最下点から高さ0.25mmまでの部分の面積として表示された値を高圧縮部51の面積とする。以上の測定を、同一の寸法・形状として設計された任意の5個の高圧縮部51について行い、結果はその平均値とする。
【0197】
・「面積率」とは単位面積あたりの対象部分の面積の割合を意味し、対象領域(例えば吸収要素50の裏面)全体に占める対象部分(例えば高圧縮部51)の総和面積を当該対象領域の面積で除して百分率で表すものである。高圧縮部51の面積率を求める場合、高圧縮部51の全てに外接する矩形領域を対象領域とし、かつ次に述べる高圧縮部51の面積から高圧縮部51の総和面積を求めるものとする。すなわち、同一の寸法・形状として設計された高圧縮部51が5個以上設けられているときには、その設計の高圧縮部51の面積はすべて上述の高圧縮部51の面積の測定方法により測定される平均値とする。一方、高圧縮部51の寸法・形状が不規則である場合や、同一の寸法・形状として設計された高圧縮部51が5個未満の場合には、全ての高圧縮部51について一つずつ上述の高圧縮部51の面積の測定方法により測定する(平均値は求めない)。
【0198】
・「吸水量」は、JIS K7223-1996「高吸水性樹脂の吸水量試験方法」によって測定する。
【0199】
・「吸水速度」は、2gの高吸収性ポリマー及び50gの生理食塩水を使用して、JIS K7224‐1996「高吸水性樹脂の吸水速度試験法」を行ったときの「終点までの時間」とする。
【0200】
・「展開状態」とは、収縮(弾性部材による収縮等、あらゆる収縮を含む)や弛み無く平坦に展開した状態を意味する。
【0201】
・各部の寸法は、特に記載が無い限り、自然長状態ではなく展開状態における寸法を意味する。
【0202】
・試験や測定における環境条件についての記載が無い場合、その試験や測定は、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内で行うものとする。
【産業上の利用可能性】
【0203】
本発明は、パンツタイプ使い捨ておむつ、テープタイプ使い捨ておむつ、パッドタイプ使い捨ておむつ等の使い捨ておむつの他、生理用ナプキン、ペット用おむつ等の、吸収体を有する吸収性物品全般に利用できるものである。
【符号の説明】
【0204】
11…液不透過性シート、12A…サイドシール、12B…後外装体、12E…ウエスト延出部分、12F,12B…外装体、12F…前外装体、12S,12H…シート材、13…カバー不織布、16,19…ウエスト下方弾性部材、17…ウエスト弾性部材、18…不要弾性部材、20…内装体接合部、200…内装体、30…トップシート、40…中間シート、50…吸収要素、50P…包装体、51…高圧縮部、51a…第1高圧縮部、51b…第2高圧縮部、51c…第3高圧縮部、52…非高圧縮部、56…吸収体、56f…パルプ繊維、56p…高吸収性ポリマー粒子、56L…低目付け部、58…包装シート、60…起き上がりギャザー、60A…先端側部分、60B…付け根側部分、62…ギャザーシート、63…ギャザー弾性部材、67…倒伏部分、68…起き上がり部分、70…サイドフラップ、71…第1シート層、72…第2シート層、73…サイド弾性部材、81…第1仮想直線、82…第2仮想直線、90…アンビルロール、91…突起部、92…平滑ロール、A1…非伸縮領域、A2…伸縮領域、B…後身頃、C…臀部カバー部、F…前身頃、HM…ホットメルト接着剤、HM1…第1ホットメルト接着剤、HM2…第2ホットメルト接着剤、L…中間領域、LD…前後方向、LO…脚開口、M…股間部、SG…サイド伸縮領域、T…胴周り領域、TD…厚み方向、U…ウエスト下方部、W…ウエスト部、WD…幅方向、WO…ウエスト開口。