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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002285
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】防水コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
H01R13/52 301H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102354
(22)【出願日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】郎 鵬飛
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE02
5E087EE14
5E087FF06
5E087FF13
5E087GG25
5E087HH01
5E087HH02
5E087LL03
5E087LL04
5E087LL12
5E087MM06
5E087RR12
5E087RR25
(57)【要約】
【課題】外径の異なる複数種類の電線に対応可能な防水コネクタを提供する。
【解決手段】防水コネクタAは、複数の端子収容室12を有するハウジング10と、複数のシール孔32を有し、複数のシール孔32を複数の端子収容室12に整合させた状態でハウジング10の後端部に取り付けられたマットシール30と、マットシール30の後方に配置され、ハウジング10に対して保持部19によって取り付け状態に保持されたリヤ部材40と、を備え、保持部19は、ハウジング10に対するリヤ部材40の保持位置を前後方向において変更可能である。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端子収容室を有するハウジングと、
複数のシール孔を有し、前記複数のシール孔を前記複数の端子収容室に整合させた状態で前記ハウジングの後端部に取り付けられたマットシールと、
前記マットシールの後方に配置され、前記ハウジングに対して保持部によって取り付け状態に保持されたリヤ部材と、を備え、
前記保持部は、前記ハウジングに対する前記リヤ部材の保持位置を前後方向において変更可能である防水コネクタ。
【請求項2】
前記保持部は、前記リヤ部材を前側保持位置と、前記前側保持位置よりも後方の後側保持位置とに選択的に保持することが可能であり、
前記リヤ部材が前記後側保持位置に保持され、且つ前記シール孔に電線が挿通されていない状態では、前記リヤ部材の前面と前記マットシールの後面との間に、前記マットシールが後方に膨らむように弾性変形することを許容する変形許容空間が確保されている請求項1に記載の防水コネクタ。
【請求項3】
前記保持部は、前記ハウジングに形成した保持孔と、前記リヤ部材に形成され、前記保持孔に係止される弾性保持片とを含み、
前記保持孔が、前記ハウジングの外面に開口している請求項1又は請求項2に記載の防水コネクタ。
【請求項4】
前記保持部は、前記リヤ部材を前側保持位置と、前記前側保持位置よりも後方の後側保持位置とに選択的に保持することが可能であり、
前記保持孔は、前側保持孔と、前記前側保持孔よりも後方に位置する後側保持孔とを含み、
前記弾性保持片には、前側保持突起と、前記前側保持突起よりも後方に位置する後側保持突起とが形成され、
前記リヤ部材が前記前側保持位置に保持されている状態では、前記後側保持突起が前記前側保持孔に係止し、且つ前記前側保持突起が前記前側保持孔内に収容され、
前記リヤ部材が前記後側保持位置に保持されている状態では、前記前側保持突起が前記前側保持孔に係止し、且つ前記後側保持突起が前記後側保持孔に係止する請求項3に記載の防水コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、防水コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ハウジングの後端部に、複数の通路が形成された後部シールを取り付けたコネクタが開示されている。ケーブルに接続されたソケット端子は、後方から通路内を貫通し、ハウジング内のキャビティに挿入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-283692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のコネクタに、外径が異なる複数種類のケーブルを対応させようとした場合、次のような問題が生じる。通路の内径を細いケーブルに合わせて小さく設定すると、太いケーブルを通路に挿通させたときに、その通路と隣り合う未挿通の通路が、ハウジングのキャビティに対して位置ずれする。通路の内径を太いケーブルに合わせて大きく設定すると、細いケーブルを通路に挿通したときのシール性能が低下する。
【0005】
本開示のコネクタは、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、外径の異なる複数種類の電線に対応可能な防水コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の防水コネクタは、
複数の端子収容室を有するハウジングと、
複数のシール孔を有し、前記複数のシール孔を前記複数の端子収容室に整合させた状態で前記ハウジングの後端部に取り付けられたマットシールと、
前記マットシールの後方に配置され、前記ハウジングに対して保持部によって取り付け状態に保持されたリヤ部材と、を備え、
前記保持部は、前記ハウジングに対する前記リヤ部材の保持位置を前後方向において変更可能である。
【発明の効果】
【0007】
本開示の防水コネクタは、外径の異なる複数種類の電線に対応可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例1において、リヤ部材が後側保持位置に保持されている状態をあらわす斜視図である。
図2図2は、リヤ部材が前側保持位置に保持されている状態をあらわす斜視図である。
図3図3は、ハウジングの斜視図である。
図4図4は、マットシールの斜視図である。
図5図5は、リヤ部材の斜視図である。
図6図6は、リヤ部材が後側保持位置に保持され、ハウジングに第1導電路が取り付けられている状態をあらわす側断面図である。
図7図7は、リヤ部材が前側保持位置に保持され、ハウジングに第2導電路が取り付けられている状態をあらわす側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。下記の複数の実施形態を、矛盾を生じない範囲で任意に組み合わせたものも、発明を実施するための形態に含まれる。
本開示の防水コネクタは、
(1)複数の端子収容室を有するハウジングと、複数のシール孔を有し、前記複数のシール孔を前記複数の端子収容室に整合させた状態で前記ハウジングの後端部に取り付けられたマットシールと、前記マットシールの後方に配置され、前記ハウジングに対して保持部によって取り付け状態に保持されたリヤ部材と、を備える。前記保持部は、前記ハウジングに対する前記リヤ部材の保持位置を前後方向において変更可能である。本開示の構成によれば、細い電線をシール孔に挿通させる場合には、リヤ部材の保持位置を前方に設定して、マットシールをハウジングとリヤ部材との間で挟み付けるようにする。これにより、電線の挿通時におけるシール孔の内径拡大が抑制されるので、良好なシール性能が担保される。太い電線をシール孔に挿通させる場合には、リヤ部材の保持位置をマットシールから後方へ離隔した後方位置に設定する。この場合は、電線の挿通時に、マットシールが前後方向に膨らむように弾性変形することによって、シール孔の内径が電線の外径に合わせて拡大する。これにより、太い電線を支障なくシール孔に挿通させることができる。よって、本開示の防水コネクタは、外径の異なる複数種類の電線に対応可能である。
【0010】
(2)前記保持部は、前記リヤ部材を前側保持位置と、前記前側保持位置よりも後方の後側保持位置とに選択的に保持することが可能であり、前記リヤ部材が前記後側保持位置に保持され、且つ前記シール孔に電線が挿通されていない状態では、前記リヤ部材の前面と前記マットシールの後面との間に、前記マットシールが後方に膨らむように弾性変形することを許容する変形許容空間が確保されていることが好ましい。この構成によれば、太い電線をシール孔に挿通する際に、マットシールが後方へ膨らむように弾性変形することができるので、太い電線を挿通させる際の抵抗が低減される。
【0011】
(3)(1)又は(2)において、前記保持部は、前記ハウジングに形成した保持孔と、前記リヤ部材に形成され、前記保持孔に係止される弾性保持片とを含み、前記保持孔が、前記ハウジングの外面に開口していることが好ましい。この構成によれば、保持孔と弾性保持片との係止状態を、ハウジングの外側から目視により確認することができる。
【0012】
(4)(3)において、前記保持部は、前記リヤ部材を前側保持位置と、前記前側保持位置よりも後方の後側保持位置とに選択的に保持することが可能であり、前記保持孔は、前側保持孔と、前記前側保持孔よりも後方に位置する後側保持孔とを含み、前記弾性保持片には、前側保持突起と、前記前側保持突起よりも後方に位置する後側保持突起とが形成され、前記リヤ部材が前記前側保持位置に保持されている状態では、前記後側保持突起が前記前側保持孔に係止し、且つ前記前側保持突起が前記前側保持孔内に収容され、前記リヤ部材が前記後側保持位置に保持されている状態では、前記前側保持突起が前記前側保持孔に係止し、且つ前記後側保持突起が前記後側保持孔に係止することが好ましい。この構成によれば、リヤ部材が後側保持位置に保持される状態では、保持突起と保持孔が2ヶ所で係止するので、リヤ部材を前側保持位置から後側保持位置へ移動させたときに、リヤ部材が後側保持位置を通過してハウジングから離脱することを防止できる。
【0013】
[本開示の実施形態の詳細]
[実施例1]
本開示を具体化した実施例1の防水コネクタAを、図1図7を参照して説明する。本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。本実施例1において、前後の方向については、図1~7におけるF方向を前方と定義する。上下の方向については、図1~7におけるH方向を上方と定義する。左右の方向については、図1~5におけるR方向を右方と定義する。
【0014】
本実施例1の防水コネクタAは、ハウジング10と、1つのマットシール30と、1つのリヤ部材40とを備えている。図6,7に示すように、防水コネクタAは、複数の第1導電路50Fと、複数の第2導電路50Tとの両方に対して適用可能である。即ち、防水コネクタAには、第1導電路50Fを取り付けることが可能であり、且つ第2導電路50Tを取り付けることも可能である。第1導電路50Fは、第1端子金具51Fと、第1端子金具51Fの後端部に圧着した第1電線52Fとを有する。第1電線52Fは、第1端子金具51Fから後方へ延出している。第2導電路50Tは、第2端子金具51Tと、第2端子金具51Tの後端部に圧着した第2電線52Tとを有する。第2電線52Tは、第2端子金具51Tから後方へ延出している。第2電線52Tの外径は、第1電線52Fの外径よりも小さい。
【0015】
ハウジング10は、図3に示すように、端子収容部11と、端子収容部11から後方へ延出した筒形取付部13とを有する単一部品である。ハウジング10を後方から見た背面視において、端子収容部11と筒形取付部13は方形をなしている。図3,6,7に示すように、端子収容部11には、複数の端子収容室12が上下左右に整列して形成されている。筒形取付部13は、端子収容部11の後端における外周縁から後方へ突出している。筒形取付部13は、上壁部14と左右両側壁部15と下壁部16とを有する。筒形取付部13の内部には、端子収容部11に近い前側収容部17と、前側収容部17よりも後方に位置する後側収容部18とによって構成されている。
【0016】
筒形取付部13の上壁部14には、左右対称な一対の前側保持孔20Fと、左右対称な一対の後側保持孔20Rとが形成されている。前側保持孔20Fと後側保持孔20Rは、いずれも、上壁部14の後端部、即ち上壁部14のうち後側収容部18を構成する部位に形成されている。前側保持孔20Fと後側保持孔20Rは、いずれも、上壁部14を上下方向に貫通した形態である。前側保持孔20Fと後側保持孔20Rは、前後方向に間隔を空けて並ぶように配置されている。後側保持孔20Rの前後方向の開口寸法は、前側保持孔20Fの前後方向の開口寸法よりも小さい。前側保持孔20Fと後側保持孔20Rは、リヤ部材40をハウジング10に対して取付け状態に保持するための保持部19を構成する。
【0017】
筒形取付部13の下壁部16にも、上壁部14と同様、左右対称な一対の前側保持孔20Fと、左右対称な一対の後側保持孔20Rとが形成されている。下壁部16の前側保持孔20Fの形状と形成位置は、上壁部14の前側保持孔20Fに対して上下対称である。下壁部16の後側保持孔20Rの形状と形成位置は、上壁部14の後側保持孔20Rに対して上下対称である。
【0018】
前側収容部17には、マットシール30が収容されている。マットシール30は、弾性変形可能な材料からなり、上下方向及び左右方向に対して前後方向の厚さ寸法が小さい偏平な形状(厚板形状)をなしている。マットシール30は、端子収容部11の後方に配置されている。マットシール30の前面30Fは、端子収容部11の後面11R(前側収容部17の奥端面)に密着している。マットシール30の外周には、前側収容部17の内周面に対して液密状に密着する外周側リップ部31が形成されている。
【0019】
マットシール30には、マットシール30を前後方向に貫通した形態の複数のシール孔32が形成されている。複数のシール孔32は、複数の端子収容室12に対して個別に対向するように配置されている。互いに対向する端子収容部11とシール孔32は、前後に隣接して並ぶように配置されている。
【0020】
後側収容部18には、リヤ部材40が収容されている。リヤ部材40は、マットシール30の後方に配置されている。リヤ部材40は、マットシール30よりも剛性の高い合成樹脂材料からなる。リヤ部材40は、1つの本体部41と、4つの弾性保持片43とを有する単一部品である。本体部41は、上下方向及び左右方向に対して前後方向の厚さ寸法が小さい偏平な形状(厚板形状)をなしている。
【0021】
本体部41には、本体部41を前後方向に貫通する複数の挿通孔42が形成されている。複数の挿通孔42は、複数のシール孔32に対して個別に対向するように配置されている。互いに対向するシール孔32と挿通孔42は、前後に隣接して並ぶように配置されている。即ち、各端子収容室12の後方には、夫々、シール孔32と挿通孔42とが同軸状に並ぶように配置されている。
【0022】
4つの弾性保持片43のうち2つの弾性保持片43は、本体部41の上面における後端部から前方へ片持ち状に延出した形状をなす。弾性保持片43は、本体部41の上面に接近する方向への弾性変形が可能である。2つの弾性保持片43は、左右方向において上壁部14の前側保持孔20F及び後側保持孔20Rと同じ位置に配置されている。弾性保持片43の外面(弾性保持片43を挟んで本体部41及び撓み許容空間とは反対側の面)には、前側保持突起44Fと後側保持突起44Rとが形成されている。前側保持突起44Fと、弾性保持片43の前端部(延出端部)に配置されている。後側保持突起44Rは、前側保持突起44Fよりも後方の位置に配置されている。前側保持突起44Fと後側保持突起44Rは、リヤ部材40をハウジング10に対して取付け状態に保持するための保持部19を構成する。
【0023】
4つの弾性保持片43のうち他の2つの弾性保持片43は、本体部41の下面における後端部から前方へ片持ち状に延出した形状をなす。弾性保持片43は、本体部41の下面に接近する方向への弾性変形が可能である。2つの弾性保持片43は、左右方向において下壁部16の前側保持孔20F及び後側保持孔20Rと同じ位置に配置されている。弾性保持片43の外面(弾性保持片43を挟んで本体部41及び撓み許容空間とは反対側の面)には、前側保持突起44Fと後側保持突起44Rとが形成されている。前側保持突起44Fと、弾性保持片43の前端部(延出端部)に配置されている。後側保持突起44Rは、前側保持突起44Fよりも後方の位置に配置されている。
【0024】
リヤ部材40は、ハウジング10に対して、前側保持位置と後側保持位置とのいずれかに選択的に保持することができる。後側保持位置は、前側保持位置よりも後方の位置である。図6に示すように、リヤ部材40は、前側保持突起44Fを前側保持孔20Fに係止させ、後側保持突起44Rを後側保持孔20Rに係止させることによって、後側保持位置に保持される。リヤ部材40を後側保持位置に保持した状態では、リヤ部材40の前面40Fとマットシール30の後面30Rとの間に、マットシール30の弾性変形を許容する変形許容空間45が確保されている。リヤ部材40を後側保持位置に保持した状態では、リヤ部材40の後端部が筒形取付部13の後端から後方へ突出する。
【0025】
図7に示すように、リヤ部材40は、前側保持突起44Fと後側保持突起44Rを前側保持孔20Fに収容し、後側保持突起44Rを前側保持孔20Fに係止させることによって、前側保持位置に保持される。リヤ部材40が前側保持位置に保持された状態では、リヤ部材40の全体が後側収容部18内に収容され、リヤ部材40の前面40Fが、マットシール30の後面30Rに対して当接、又はマットシール30の後面30Rに対して僅かな隙間を空けた状態となる。リヤ部材40の前面40Fがマットシール30の後面30Rに当接する状態では、マットシール30が、リヤ部材40の前面40Fと端子収容部11の後面11Rとの間で潰されるように弾性変形する形態としてもよく、マットシール30が弾性変形しない形態としてもよい。
【0026】
ハウジング10に、第1導電路50Fを取り付ける際には、リヤ部材40を後側保持位置に保持しておく。この状態で、第1端子金具51Fを前方に向けた状態で、第1導電路50Fを、リヤ部材40の後方から挿通孔42とシール孔32を順に貫通させ、第1端子金具51Fを端子収容室12内に挿入する。第1端子金具51Fがシール孔32を貫通する過程では、マットシール30がシール孔32の内径を拡大させるように弾性変形する。このとき、マットシール30の前面30Fは端子収容部11の後面11Rに当接しているので、マットシール30は、マットシール30の後面30Rをリヤ部材40との間の変形許容空間45内へ膨らませるように弾性変形する。
【0027】
第1導電路50Fがハウジング10に取り付けられた状態では、第1電線52Fがシール孔32に貫通した状態となる。第1電線52Fの外径は、第1電線52Fが挿通されていない状態のシール孔32の内径よりも充分に大きいので、第1端子金具51Fが貫通するときと同様、マットシール30が、その後面30Rを変形許容空間45内へ膨らませるように弾性変形する。このとき、第1電線52Fがシール孔32の内周面を径方向外方へ強く押圧するので、第1電線52Fとシール孔32との間においては、高いシール性が確保される。
【0028】
もし、マットシール30が後方へ膨らむように弾性変形できない場合は、第1導電路50Fが挿通されたシール孔32の内壁部が、第1導電路50Fが通されていない未挿通のシール孔32側へ変位し、この未挿通のシール孔32が端子収容室12に対して位置ずれする。そして、シール孔32に対して第1導電路50Fを1本ずつ挿通していく過程で、未挿通のシール孔32の位置ずれが積み重なっていくことになる。これに対し本実施例1では、マットシール30が後方へ膨らむように弾性変形できるようになっているので、第1導電路50Fをシール孔32に挿通する過程で、第1導電路50Fが挿通されていないシール孔32の位置ずれが、抑制されている。
【0029】
ハウジング10に、第2導電路50Tを取り付ける際には、リヤ部材40を前側保持位置に保持しておく。この状態で、第2端子金具51Tを前方に向けた状態で、第2導電路50Tを、リヤ部材40の後方から挿通孔42とシール孔32を順に貫通させ、第2端子金具51Tを端子収容室12内に挿入する。第2導電路50Tがハウジング10に取り付けられた状態では、第2電線52Tがシール孔32に貫通した状態となる。第2電線52Tの外径はシール孔32の内径よりも僅かに大きいが、リヤ部材40が前側保持位置にある状態ではリヤ部材40の前面40Fがマットシール30の後面30Rに当接するので、シール孔32の内壁部が、第2電線52Tの外周面に対して強く密着する。これにより、第2電線52Tとシール孔32との間においては、高いシール性能が確保される。
【0030】
本実施例1の防水コネクタAは、複数の端子収容室12を有するハウジング10と、複数のシール孔32を有するマットシール30と、リヤ部材40とを備えている。マットシール30は、複数のシール孔32を複数の端子収容室12に整合させた状態でハウジング10の後端部に取り付けられている。リヤ部材40は、マットシール30の後方に配置され、保持部19によってハウジング10に保持されている。保持部19は、ハウジング10に対するリヤ部材40の保持位置を前後方向において変更可能である。
【0031】
第2電線52Tをシール孔32に挿させる場合には、リヤ部材40の保持位置を前方(前側保持位置)に設定して、マットシール30をハウジング10とリヤ部材40との間で挟み付けるようにする。これにより、第2電線52Tの挿通時におけるシール孔32の内径拡大が抑制されるので、良好なシール性能が担保される。第2電線52Tよりも太い第1電線52Fをシール孔32に挿通させる場合には、リヤ部材40の保持位置をマットシール30から後方へ離隔した後方位置(後側保持位置)に設定する。この場合は、第1電線52Fの挿通時に、マットシール30が前後方向又は後方へ膨らむように弾性変形することによって、シール孔32の内径が第1電線52Fの外径に合わせて拡大する。これにより、第1電線52Fを支障なくシール孔32に挿通させることができる。よって、本実施例1の防水コネクタAは、外径の異なる複数種類の電線(第1電線52Fと第2電線52T)に対応可能である。
【0032】
保持部19は、リヤ部材40を前側保持位置と、前側保持位置よりも後方の後側保持位置とに選択的に保持することが可能である。リヤ部材40が後側保持位置に保持され、且つシール孔32に第1電線52Fも第2電線52Tもが挿通されていない状態では、リヤ部材40の前面40Fとマットシール30の後面30Rとの間に、マットシール30が後方へ膨らむように弾性変形することを許容する変形許容空間45が確保されている。この構成によれば、太い側の第1電線52Fをシール孔32に挿通する際に、マットシール30が後方へ膨らむように弾性変形することができるので、第1電線52Fを挿通させる際の抵抗が低減される。
【0033】
保持部19は、ハウジング10に形成した前側保持孔20F及び後側保持孔20Rと、リヤ部材40に形成した前側保持突起44F及び後側保持突起44Rとを含む。前側保持突起44Fは、前側保持孔20Fに対して係止可能である。後側保持突起44Rは、前側保持孔20Fと後側保持孔20Rとに対して係止可能である。前側保持孔20Fと後側保持孔20Rは、ハウジング10の外面(上面又は下面)に開口している。この構成によれば、前側保持孔20Fと弾性保持片43(前側保持突起44F又は後側保持突起44R)との係止状態、及び後側保持孔20Rと弾性保持片43(後側保持突起44R)との係止状態を、ハウジング10の外側から目視によって確認することができる。
【0034】
保持部19は、リヤ部材40を前側保持位置と、前側保持位置よりも後方の後側保持位置とに選択的に保持することが可能である。保持部19は、前側保持孔20Fと、前側保持孔20Fよりも後方に位置する後側保持孔20Rとを含む。弾性保持片43には、前側保持突起44Fと、前側保持突起44Fよりも後方に位置する後側保持突起44Rとが形成されている。リヤ部材40が前側保持位置に保持されている状態では、後側保持突起44Rが前側保持孔20Fに係止し、且つ前側保持突起44Fが前側保持孔20F内に収容される。リヤ部材40が後側保持位置に保持されている状態では、前側保持突起44Fが前側保持孔20Fに係止し、且つ後側保持突起44Rが後側保持孔20Rに係止する。この構成によれば、リヤ部材40が後側保持位置に保持される状態では、保持突起(前側保持突起44F及び後側保持突起44R)と保持孔(前側保持孔20F及び後側保持孔20R)が2ヶ所で係止する。これにより、リヤ部材40を前側保持位置から後側保持位置へ移動させたときに、リヤ部材40が後側保持位置を通過してハウジング10から離脱することを防止できる。
【0035】
[他の実施例]
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される。本発明には、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれ、下記の実施形態も含まれる。
シール孔に太い電線を挿通したときに、マットシールの一部がリヤ部材に接触するようにしてもよい。
リヤ部材が後側保持位置に保持されている状態において、保持突起と保持孔とが1ヶ所だけで係止してもい。
リヤ部材が前側保持位置に保持されている状態で、保持突起と保持孔とが、2ヶ所で係止してもよい。
リヤ部材を保持する位置は、2箇所に限らず、3箇所以上でもよい。
【符号の説明】
【0036】
A…防水コネクタ
10…ハウジング
11…端子収容部
11R…端子収容部の後面
12…端子収容室
13…筒形取付部
14…筒形取付部の上壁部
15…筒形取付部の側壁部
16…筒形取付部の下壁部
17…前側収容部
18…後側収容部
19…保持部
20F…前側保持孔
20R…後側保持孔
30…マットシール
30F…マットシールの前面
30R…マットシールの後面
31…外周側リップ部
32…シール孔
40…リヤ部材
40F…リヤ部材の前面
41…本体部
42…挿通孔
43…弾性保持片
44F…前側保持突起
44R…後側保持突起
45…変形許容空間
50F…第1導電路
50T…第2導電路
51F…第1端子金具
51T…第2端子金具
52F…第1電線
52T…第2電線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7