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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002287
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】変速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/46 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
F16H1/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102358
(22)【出願日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪井 祐紀
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健司
【テーマコード(参考)】
3J027
【Fターム(参考)】
3J027FA36
3J027FB13
3J027GA01
3J027GB03
3J027GC13
3J027GC24
3J027GC29
3J027GD04
3J027GD07
3J027GD08
3J027GD13
3J027GE01
(57)【要約】
【課題】変速機を小型化する。
【解決手段】変速機100は、遊星歯車機構40を収容し、変速された出力回転が伝達されて回転する筒状の回転ハウジング15を備え、遊星歯車機構40は、サンギヤ41とインナーギヤ42との双方に噛み合う複数の環状のプラネタリギヤ43と、複数のプラネタリギヤ43の中空部43aにそれぞれ挿入されてプラネタリギヤ43を支持する複数の支持部としてのプラネタリキャリア44と、を有し、プラネタリキャリア44には、プラネタリギヤ43の少なくとも一部を覆いプラネタリキャリア44からのプラネタリギヤ43の抜け止めをするプレート45と、プレート45をプラネタリキャリア44に固定するねじ部材46と、が設けられ、プラネタリキャリア44は、ねじ部材46の頭部46aの少なくとも一部及びプレート45の一部が収容される収容穴47を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源の出力回転が伝達されるシャフトと、
前記シャフトに接続され前記駆動源の出力回転を変速する遊星歯車機構と、
前記遊星歯車機構を収容し、変速された前記出力回転が伝達されて回転する筒状の回転ハウジングと、を備え、
前記遊星歯車機構は、
前記シャフトを介して前記駆動源の動力が伝達されるサンギヤと、
前記回転ハウジングの内周面に形成されるインナーギヤと、
中空部を有し前記サンギヤと前記インナーギヤとの双方に噛み合う複数の環状のプラネタリギヤと、
前記複数のプラネタリギヤの前記中空部にそれぞれ挿入されて前記プラネタリギヤを支持する複数の支持部と、を有し、
前記支持部には、
前記プラネタリギヤの少なくとも一部を覆い前記支持部からの前記プラネタリギヤの抜け止めをするプレートと、
前記プレートを前記支持部に固定するねじ部材と、が設けられ、
前記支持部は、前記ねじ部材の頭部の少なくとも一部及び前記プレートの一部が収容される収容穴を有することを特徴とする変速機。
【請求項2】
請求項1に記載の変速機であって、
前記プレートは、
前記プラネタリギヤの少なくとも一部を覆う抜け止め部と、
前記収容穴に収容され前記収容穴の内周面と前記ねじ部材の前記頭部との間に挟まれて保持される保持部と、を有し、
前記抜け止め部と前記保持部とが、塑性変形により屈曲することを特徴とする変速機。
【請求項3】
請求項2に記載の変速機であって、
前記プレートは、前記保持部が折れ曲がり弾性変形した状態で設けられることを特徴とする変速機。
【請求項4】
請求項1に記載の変速機であって、
前記収容穴は、
前記ねじ部材の前記頭部の少なくとも一部が収容される第一収容部と、
前記ねじ部材のねじ部が螺合するねじ山が形成される螺合部と、
前記第一収容部と前記螺合部との間に設けられ、前記ねじ山の内径よりも大径に形成されて前記ねじ部が螺合しない第二収容部と、を有することを特徴とする変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、油圧モータが収容される固定ハウジングと、油圧モータのシャフトの出力回転を変速する変速機構と、変速機構を収容し、変速された出力回転が伝達されて回転する回転ハウジングと、回転ハウジングの開口端を閉塞するカバーと、を備える変速機が開示されている。特許文献1に記載の変速機構は、遊星歯車機構であり、油圧モータのシャフトに設けられるサンギヤと、回転ハウジングの内壁に設けられるインナーギヤと、サンギヤとインナーギヤとの双方に噛み合う複数のプラネタリギヤと、を有する。プラネタリギヤを支持する本体部には、抜け止め用のプレート及びプレートを本体部に固定する固定部材が設けられ、プレートによりプラネタリギヤの一部を覆うことにより、プラネタリギヤの抜け止めがされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-116055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の変速機では、プラネタリギヤの抜け止めのために本体部にプレート及び固定部材が設けられるため、変速機の軸方向の寸法が大きくなり、変速機が大型化してしまっている。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、変速機を小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、変速機であって、駆動源の出力回転が伝達されるシャフトと、シャフトに接続され駆動源の出力回転を変速する遊星歯車機構と、遊星歯車機構を収容し、変速された出力回転が伝達されて回転する筒状の回転ハウジングと、を備え、遊星歯車機構は、シャフトを介して駆動源の動力が伝達されるサンギヤと、回転ハウジングの内周面に形成されるインナーギヤと、中空部を有しサンギヤとインナーギヤとの双方に噛み合う複数の環状のプラネタリギヤと、複数のプラネタリギヤの中空部にそれぞれ挿入されてプラネタリギヤを支持する複数の支持部と、を有し、支持部には、プラネタリギヤの少なくとも一部を覆い支持部からのプラネタリギヤの抜け止めをするプレートと、プレートを支持部に固定するねじ部材と、が設けられ、支持部は、ねじ部材の頭部の少なくとも一部及びプレートの一部が収容される収容穴を有することを特徴とする。
【0007】
この発明では、プラネタリギヤの抜け止めをするプレート及びねじ部材の頭部の少なくとも一部が、支持部の収容穴に収容される。これにより、プレート及びねじ部材が支持部から軸方向に突出する突出量が小さくなる。よって、変速機の軸方向の寸法を小さくできる。
【0008】
また、本発明は、プレートは、プラネタリギヤの少なくとも一部を覆う抜け止め部と、収容穴に収容され収容穴の内周面とねじ部材の頭部との間に挟まれて保持される保持部と、を有し、抜け止め部と保持部とが、塑性変形により屈曲することを特徴とする。
【0009】
この発明では、抜け止め部と保持部とが塑性変形により屈曲する。これにより、抜け止め部の剛性が高くなるため、プレートを薄くすることができる。
【0010】
また、本発明は、プレートは、保持部が折れ曲がり弾性変形した状態で設けられることを特徴とする。
【0011】
この発明では、プレートの弾性力により、ねじ部材の緩みが防止される。
【0012】
また、本発明は、収容穴は、ねじ部材の頭部の少なくとも一部が収容される第一収容部と、ねじ部材のねじ部が螺合するねじ山が形成される螺合部と、第一収容部と螺合部との間に設けられ、ねじ山の内径よりも大径に形成されてねじ部が螺合しない第二収容部と、を有することを特徴とする。
【0013】
この発明では、ねじ部材の軸力低下が防止される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、変速機を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る変速機を備える変速機付モータの断面図である。
図2図1に示すAの拡大断面図である。
図3】第二サンギヤ、第二プラネタリギヤ、及び第二プレートの平面図である。
図4】第二プレートを第二プラネタリキャリアに取り付ける前の状態を示す拡大断面図であり、図2に対応して示す。
図5】本発明の変形例に係る遊星歯車機構の平面図であり、図3に対応して示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の本実施形態に係る変速機100及びこれを備える駆動装置としての変速機付モータ101について説明する。
【0017】
変速機付モータ101は、例えば、油圧ショベルなどのクローラ式作業機の車軸部に設けられてクローラベルトを駆動する。図1に示すように、変速機付モータ101は、駆動源としての油圧モータ20と、油圧モータ20のモータ軸(図示せず)に接続されモータ軸の出力回転を減速する変速機100と、を備える。
【0018】
変速機100は、油圧モータ20の出力回転を変速する変速機構としての遊星歯車機構40と、油圧モータ20を収容する固定ハウジング10と、遊星歯車機構40を収容し、変速された出力回転が伝達されて回転する筒状の回転ハウジング15と、回転ハウジング15の開口端部15aの内周に設けられ、回転ハウジング15の開口端部15aを閉塞するカバー60と、を備える。遊星歯車機構40の具体的な構成は後述する。固定ハウジング10、回転ハウジング15、及びカバー60により、変速機100のハウジング1が形成される。
【0019】
回転ハウジング15は、固定ハウジング10に対して回転作動する。回転ハウジング15の開口端部15aは、遊星歯車機構40に対して油圧モータ20とは反対側(図1における右側)で開口する。回転ハウジング15の外周面にはスプロケット(図示せず)が連結される。回転ハウジング15とスプロケットとが共に回転することで、スプロケットに噛み合うクローラベルト(図示せず)が循環して車両が走行する。
【0020】
固定ハウジング10及び回転ハウジング15は、クローラベルトが循環する経路の内側に配置される。回転ハウジング15は、車体102に連結される固定ハウジング10に対してベアリング3を介して回転自在に支持され、その中心軸を中心として回転作動する。
【0021】
固定ハウジング10は、本体部11と、本体部11の外周面から突出して形成され車体102に取り付けられる固定フランジ部12と、を有する。
【0022】
カバー60は、円盤状に形成されており、回転ハウジング15の開口端部15aの内周面に取り付けられる。カバー60の中央には、プラグ61が設けられる。プラグ61は、後述するように、遊星歯車機構40で発生するスラスト荷重を第一プレート45を介して受ける。
【0023】
回転ハウジング15の内面と、固定ハウジング10の本体部11の外面と、カバー60の内面と、によって遊星歯車機構40を収容するギヤ室4が画成される。ギヤ室4には、遊星歯車機構40を潤滑可能な潤滑剤としての潤滑油が封入される。
【0024】
回転ハウジング15には、外周面から環状に突出する回転フランジ部16が形成される。上記のスプロケットは、複数のボルト(図示せず)によって回転フランジ部16に締結され、回転ハウジング15とともに回転作動する。
【0025】
固定ハウジング10と回転ハウジング15の間には、フローティングシール5が設けられる。フローティングシール5は、回転ハウジング15の回転作動時に、変速機100内の作動油が外部に漏出しないように密封するとともに、外部から異物が変速機100内に侵入することを防止する。
【0026】
また、固定ハウジング10と回転ハウジング15の間には、フローティングシール5の外側に外部からの泥などの異物が侵入することを防止するラビリンスシール6が形成される。ラビリンスシール6は、固定ハウジング10と回転ハウジング15の互いに対向する端面同士の間隙によって形成される。
【0027】
油圧モータ20は、固定ハウジング10の本体部11の内部に設けられる。油圧モータ20は、例えば、作動油(作動液)の給排によって回転駆動される斜板式ピストンモータである。なお、モータは、液圧モータ以外であってもよく、例えば、電動モータなどを用いてもよい。油圧モータ20は、公知の構成を採用できるため、図1では簡略化して図示しており、本明細書では詳細な説明を省略する。
【0028】
変速機100は、油圧モータ20のモータ軸と同軸的に連結されモータ軸の出力回転が伝達されるシャフトとしてのドライブシャフト31を備える。遊星歯車機構40は、ドライブシャフト31に接続され、油圧モータ20のモータ軸の出力回転を減速して回転ハウジング15に伝達する。ドライブシャフト31と油圧モータ20のモータ軸とは、例えばスプライン結合により連結される。ドライブシャフト31と油圧モータ20のモータ軸とは、一体に構成されてもよい。なお、回転ハウジング15とドライブシャフト31は同軸上に設けられるため、以下では、回転ハウジング15及びドライブシャフト31の軸方向を単に「軸方向」、回転ハウジング15及びドライブシャフト31の径方向を単に「径方向」とも称する。
【0029】
遊星歯車機構40は、ドライブシャフト31を介して油圧モータ20の動力が伝達される第一サンギヤ41と、回転ハウジング15の内周面に形成されるインナーギヤ42と、第一サンギヤ41とインナーギヤ42との双方に噛み合う複数の環状の第一プラネタリギヤ43と、複数の第一プラネタリギヤ43の中空部43aにそれぞれ挿入されて第一プラネタリギヤ43を支持する複数の第一プラネタリキャリア44と、複数の第一プラネタリキャリア44のそれぞれと噛み合う第二サンギヤ51と、第二サンギヤ51とインナーギヤ42との双方に噛み合う複数の環状の第二プラネタリギヤ53と、複数の第二プラネタリギヤ53の中空部53aにそれぞれ挿入されて第二プラネタリギヤ53を支持する複数の第二プラネタリキャリア54と、を備える。本実施形態では、第二プラネタリギヤ53及び第二プラネタリキャリア54が、特許請求の範囲の「プラネタリギヤ」及び「支持部」に相当する。
【0030】
複数の第一プラネタリキャリア44は互いに周方向に離れて設けられ、複数の第二プラネタリキャリア54もまた互いに周方向に離れて設けられる。第二プラネタリキャリア54は、固定ハウジング10の本体部11におけるカバー60側の端面に固定部材(図時省略)等を介して設けられる。第一サンギヤ41、第一プラネタリギヤ43、及び第一プラネタリキャリア44により遊星歯車機構40の1段目のキャリアが形成され、第二サンギヤ51、第二プラネタリギヤ53、及び第二プラネタリキャリア54により遊星歯車機構40の2段目のキャリアが形成される。1段目のキャリアは、2段目のキャリアよりもカバー60側に設けられる。第一プラネタリギヤ43及び第一プラネタリキャリア44におけるカバー60側の端面は同一平面上に位置し、第二プラネタリギヤ53及び第二プラネタリキャリア54におけるカバー60側の端面は同一平面上に位置する。第一プラネタリキャリア44は、後述する第一ねじ部材46が収容される第一収容穴47を有し、第二プラネタリキャリア54は、後述する第二ねじ部材56及び第二プレート55が収容される第二収容穴57を有する。
【0031】
油圧モータ20のモータ軸が回転駆動されると、モータ軸に連結するドライブシャフト31がモータ軸の回転に伴って回転する。ドライブシャフト31の出力回転は、第一サンギヤ41と第一プラネタリギヤ43、及び、2段目の第二サンギヤ51と第二プラネタリギヤ53を通じてインナーギヤ42に作用し、回転ハウジング15に伝達される。本実施形態における変速機100では、第一プラネタリギヤ43とインナーギヤ42、及び、第二プラネタリギヤ53とインナーギヤ42が軸方向に対して斜めに噛み合って形成される。そのため、第一プラネタリギヤ43及び第二プラネタリギヤ53からインナーギヤ42に作用する力の反力により、遊星歯車機構40ではスラスト荷重(軸方向に沿った荷重)が発生する。よって、第一プラネタリギヤ43には第一プラネタリキャリア44から抜けるように力が作用し、第二プラネタリギヤ53には第二プラネタリキャリア54から抜けるように力が作用する。
【0032】
そこで、遊星歯車機構40では、第一プラネタリギヤ43を覆い第一プラネタリキャリア44からの第一プラネタリギヤ43の抜け止めをする第一プレート45と、第一プレート45を第一プラネタリキャリア44に固定する第一ねじ部材46と、が第一プラネタリキャリア44に設けられる。また、第二プラネタリギヤ53を覆い第二プラネタリキャリア54からの第二プラネタリギヤ53の抜け止めをする第二プレート55と、第二プレート55を第二プラネタリキャリア54に固定する第二ねじ部材56と、が第二プラネタリキャリア54に設けられる。本実施形態では、第二プレート55及び第二ねじ部材56が、特許請求の範囲の「プレート」及び「ねじ部材」に相当する。
【0033】
第一プレート45は、円板状に形成され、ドライブシャフト31、第一サンギヤ41、第一プラネタリキャリア44、及び各第一プラネタリギヤ43におけるカバー60に対向する端面にわたって設けられる。第一プレート45は、第一プラネタリギヤ43の中空部43a全体を覆うとともに、第一プラネタリギヤ43の一部を覆うように設けられる。具体的には、第一プレート45は、図2に示す断面図において、第一プラネタリギヤ43における中空部43aよりもドライブシャフト31側の全体と、中空部43aを挟んでドライブシャフト31とは反対側の一部を覆う。
【0034】
第一プレート45は、第一ねじ部材46の軸部46bが第一収容穴47に収容され、第一ねじ部材46のねじ部と第一収容穴47の内周面のねじ部が螺合することにより、第一プラネタリキャリア44に固定される。本実施形態では、第一ねじ部材46の軸部46bのみが第一収容穴47に収容され、第一ねじ部材46の頭部46aは第一収容穴47に収容されず、第一プラネタリキャリア44から軸方向に突出した状態で設けられる。ここで、第一ねじ部材46の頭部46aは、第一プラネタリキャリア44との間で第一プレート45を保持する部位である。また、第一ねじ部材46の軸部46bは、第一ねじ部材46において第一プラネタリキャリア44に対する締結力を発揮する部位である。第二ねじ部材56についても同様である。
【0035】
このように第一プレート45が第一プラネタリキャリア44に固定されることにより、第一プラネタリギヤ43の軸方向の移動が第一プレート45により規制され、第一プラネタリキャリア44からの第一プラネタリギヤ43の抜け止めがされる。また、遊星歯車機構40で発生するスラスト荷重は、広い面積の1枚の第一プレート45を介して、カバー60に設けられるプラグ61に作用する。プラグ61が受ける遊星歯車機構40のスラスト荷重は、第一プレート45により均一化されるため、第一プレート45とプラグ61が片当たりせずに面接触する。これにより、第一プレート45及びプラグ61が偏摩耗することが防止される。
【0036】
図2図1に示すA付近の拡大断面図であり、図3は第二サンギヤ51、第二プラネタリギヤ53、及び第二プレート55の平面図である。図3では、インナーギヤ42を省略している。図1から図3に示すように、第二プレート55は、第二プラネタリキャリア54及び各第二プラネタリギヤ53におけるカバー60側の端面に設けられ、環状に形成される(図3参照)。第二プレート55は、第二プラネタリギヤ53の中空部53a全体を覆うとともに、第二プラネタリギヤ53の一部を覆うように設けられる。具体的には、第二プレート55は、図1図2に示す断面図において、第二プラネタリギヤ53における中空部53aよりもドライブシャフト31側の一部と、中空部53aを挟んでドライブシャフト31とは反対側の一部を覆う。
【0037】
図2に示すように、第二プレート55は、第二プラネタリギヤ53の一部を覆う抜け止め部55aと、第二プラネタリキャリア54の第二収容穴57に収容され第二収容穴57の内周面と第二ねじ部材56の頭部56aとの間に挟まれて保持される保持部55bと、第二ねじ部材56が挿通される挿通部55cと、抜け止め部55aと保持部55bとの境界部55dと、を有する。第二プレート55は、抜け止め部55aと保持部55bとが、塑性変形により屈曲する。言い換えれば、第二プレート55は、塑性変形により屈曲することで境界部55dが設けられる。
【0038】
第二プレート55は、第二ねじ部材56の軸部56bが第二収容穴57に収容されて、第二プラネタリキャリア54に固定される。第二収容穴57は、第二ねじ部材56の頭部56aの一部が収容される第一収容部57aと、第二ねじ部材56のねじ部56cが螺合するねじ山が形成される螺合部57bと、第一収容部57aと螺合部57bとの間に設けられ、螺合部57bのねじ山の内径(図4に示すBの寸法)よりも大径に形成されてねじ部56cが螺合しない第二収容部57cと、を有する。螺合部57bのねじ山の内径は、具体的には、螺合部57bにおけるねじ山によって形成される穴の直径である。第一収容部57aは、第二収容部57cに近づくにつれて小径となるようにテーパ状に形成される。螺合部57b及び第二収容部57cは、同軸状に形成される。第二収容部57cは、螺合部57bのねじ山の頂点の内径よりも大径に形成され、ねじ部が形成されない。第二プレート55は、第二ねじ部材56の軸部56bが第二収容穴57に収容され、第二ねじ部材56のねじ部56cと螺合部57bが螺合することにより、第二プラネタリキャリア54に固定される。本実施形態では、第二ねじ部材56の軸部56bが第二収容穴57に収容されるとともに、第二ねじ部材56の頭部56aの一部も第二収容穴57(第一収容部57a)に収容される。
【0039】
このように、第二プレート55が第二プラネタリキャリア54に固定されることにより、第二プラネタリギヤ53の軸方向の移動が第二プレート55により規制され、第二プラネタリキャリア54からの第二プラネタリギヤ53の抜け止めがされる。本実施形態の変速機100では、上記のように、第二プラネタリギヤ53の抜け止めをする第二プレート55の一部及び第二ねじ部材56の頭部56aの一部が、第二プラネタリキャリア54の第二収容穴57に収容される。これにより、第二プレート55及び第二ねじ部材56が第二プラネタリキャリア54から軸方向に突出する突出量が小さくなる。よって、変速機100の軸方向の寸法が小さくなり、変速機100を小型化することができる。
【0040】
また、本実施形態の変速機100では、第二収容穴57は、第一収容部57aと螺合部57bとの間にねじ部56cが螺合しない第二収容部57cを有する。言い換えれば、第二ねじ部材56のねじ部56cは、第二収容部57cに対向する領域56dがねじ結合されない。よって、第二プレート55の抜け止め部55aに第二プラネタリギヤ53から力が作用し、第二ねじ部材56が抜けるような力が頭部56aに作用しても、領域56d(ねじ結合されない領域)が弾性変形することで、当該力を吸収することができる。そのため、第二ねじ部材56の軸力低下が防止される。
【0041】
また、本実施形態の変速機100では、上記のように第二プレート55及び第二ねじ部材56が第二プラネタリキャリア54から軸方向に突出する突出量が小さい。そのため、第一プラネタリキャリア44における第二プレート55側の肉厚を大きくすることができ、第一プラネタリキャリア44の強度を向上させることができる。
【0042】
また、変速機100では、抜け止め部55aと保持部55bとが、塑性変形により屈曲する。言い換えれば、抜け止め部55aと保持部55bとの境界部55dが塑性変形により屈曲して形成される。これにより、抜け止め部55aの剛性が高くなるため、第二プレート55を薄くすることができる。よって、変速機100の軸方向の寸法を小さくできる。
【0043】
なお、第二プラネタリキャリア54の第二収容穴57(第一収容部57a)には、第二ねじ部材56の頭部56a全体が収容されてもよい。また、第二プレート55は、第二プラネタリギヤ53の全体を覆ってもよい。
【0044】
以上の本実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0045】
変速機100では、第二プラネタリギヤ53の抜け止めをする第二プレート55及び第二ねじ部材56の頭部56aの一部が、第二プラネタリキャリア54の第二収容穴57に収容されるため、第二プレート55及び第二ねじ部材56が第二プラネタリキャリア54から軸方向に突出する突出量が小さくなり、変速機100を小型化することができる。
【0046】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。以下のような変形例も本発明の範囲内であり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0047】
<変形例1>
上記実施形態では、2段目のキャリアである第二プラネタリキャリア54の第二収容穴57に第二ねじ部材56の頭部56aの少なくとも一部及び第二プレート55の一部が収容され、1段目のキャリアである第一プラネタリキャリア44の第一収容穴47には第一ねじ部材46の頭部46a及び第一プレート45は収容されない。これに限らず、第一プレート45が第二プレート55と同様の抜け止め部、保持部、及び挿通部を有し、第一収容穴47が第二収容穴57と同様の第一収容部、螺合部、及び第二収容部を有して、第一プラネタリキャリア44の第一収容穴47に第一ねじ部材46の頭部46aの少なくとも一部及び第一プレート45の一部が収容される構成であってもよい。言い換えれば、プラネタリキャリアがねじ部材の頭部の少なくとも一部及びプレートの一部が収容される収容穴を有する構成は、遊星歯車機構40の1段目のキャリア及び2段目のキャリアの少なくとも一方に設けられる。
【0048】
<変形例2>
上記実施形態では、第二プレート55は、抜け止め部55aと保持部55bとの境界部55dが折れ曲がった状態で設けられる。これに限らず、第二プレート55は、保持部55bが折れ曲がり弾性変形した状態で設けられてもよい。言い換えれば、抜け止め部55aと保持部55bとの境界部55dが折れ曲がり弾性変形した状態で設けられてもよい。第二プレート55は、第二ねじ部材56により固定される前は、平面状、または、抜け止め部55aと保持部55bが成す鈍角の角度が第二プラネタリキャリア54の表面と第二収容穴57の第一収容部57aが成す鈍角の角度よりも大きく形成される。具体的には、図4に示すように、第二プレート55は、第二ねじ部材56により保持される前は、保持部55bが第一収容部57aの内周面に接触しない。言い換えれば、保持部55bは、第一収容部57aの内周面に対して角度θの角度差を有するように形成される。この状態から、挿通部55cに第二ねじ部材56が挿通され、第二ねじ部材56のねじ部56cと螺合部57bが螺合すると、図2に示すように、第二ねじ部材56の頭部56aが保持部55bを弾性変形させ、保持部55bが抜け止め部55aに対して折れ曲がり、保持部55bが第一収容部57aの内周面に接触する。この構成では、第二プレート55の弾性力が第二ねじ部材56の頭部56aに作用するため、第二ねじ部材56の緩みが防止される。さらに、第二プラネタリギヤ53の抜け止めをする第二プレート55が、第二ねじ部材56の緩みを防止するワッシャの機能を有するため、変速機100の部品点数を削減することができる。
【0049】
<変形例3>
上記実施形態では、第二プレート55が環状に形成される。これにより、第二プレート55を加工しやすくなる。しかしながら、第二プレート55の形状は、第二プラネタリギヤ53の抜け止めができれば上記に限らない。例えば、図5に示すように、第二プレート55が短冊状に形成されてもよい。この場合には、第二プレート55は、周方向に隣り合う第二プラネタリキャリア54の間にわたって二組設けられる。この構成では、短冊状の第二プレート55を、母材となる一枚の板から無駄なく切り出して加工することができる。また、各第二プラネタリキャリア54に個別に第二プレート55が設けられてもよい。
【0050】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0051】
変速機100は、駆動源としての油圧モータ20の出力回転が伝達されるシャフトとしてのドライブシャフト31と、ドライブシャフト31に接続され油圧モータ20の出力回転を変速する遊星歯車機構40と、遊星歯車機構40を収容し、変速された出力回転が伝達されて回転する筒状の回転ハウジング15と、を備え、遊星歯車機構40は、ドライブシャフト31を介して油圧モータ20の動力が伝達されるサンギヤ41,51と、回転ハウジング15の内周面に形成されるインナーギヤ42と、中空部43a,53aを有しサンギヤ41,51とインナーギヤ42との双方に噛み合う複数の環状のプラネタリギヤ43,53と、複数のプラネタリギヤ43,53の中空部43a,53aにそれぞれ挿入されてプラネタリギヤ43,53を支持する複数の支持部としてのプラネタリキャリア44,54と、を有し、プラネタリキャリア44,54には、プラネタリギヤ43,53の少なくとも一部を覆いプラネタリキャリア44,54からのプラネタリギヤ43,53の抜け止めをするプレート45,55と、プレート45,55をプラネタリキャリア44,54に固定するねじ部材46,56と、が設けられ、プラネタリキャリア44,54は、ねじ部材46,56の頭部46a,56aの少なくとも一部及びプレート45,55の一部が収容される収容穴47,57を有する。
【0052】
この構成では、プラネタリギヤ43,53の抜け止めをするプレート45,55及びねじ部材46,56の頭部46a,56aの少なくとも一部が、プラネタリキャリア44,54の収容穴47,57に収容される。これにより、プレート45,55及びねじ部材46,56がプラネタリキャリア44,54から軸方向に突出する突出量が小さくなる。よって、変速機100の軸方向の寸法を小さくできる。
【0053】
また、変速機100では、プレート45,55は、プラネタリギヤ43,53の少なくとも一部を覆う抜け止め部55aと、収容穴47,57に収容され収容穴47,57の内周面とねじ部材46,56の頭部46a,56aとの間に挟まれて保持される保持部55bと、を有し、抜け止め部55aと保持部55bとが、塑性変形により屈曲する。
【0054】
この構成では、抜け止め部55aと保持部55bとが塑性変形により屈曲する。これにより、抜け止め部55aの剛性が高くなるため、プレート45,55を薄くすることができる。
【0055】
また、変速機100では、プレート45,55は、保持部55bが折れ曲がり弾性変形した状態で設けられる。
【0056】
この構成では、プレート45,55の弾性力により、ねじ部材46,56の緩みが防止される。
【0057】
また、変速機100では、収容穴47,57は、ねじ部材46,56の頭部46a,56aの少なくとも一部が収容される第一収容部57aと、ねじ部材46,56のねじ部が螺合するねじ山が形成される螺合部57bと、第一収容部57aと螺合部との間に設けられ、ねじ山の内径よりも大径に形成されてねじ部が螺合しない第二収容部57cと、を有する。
【0058】
この構成では、第二収容部57cにより、ねじ部材46,56の軸力低下が防止される。
【0059】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0060】
15…回転ハウジング、20…油圧モータ(駆動源)、31…ドライブシャフト(シャフト)、40…遊星歯車機構、41…第一サンギヤ(サンギヤ)、42…インナーギヤ、43…第一プラネタリギヤ(プラネタリギヤ)、43a…中空部、44…第一プラネタリキャリア(支持部)、45…第一プレート(プレート)、46…第一ねじ部材(ねじ部材)、46a…頭部、47…第一収容穴(収容穴)、51…第二サンギヤ(サンギヤ)、53…第二プラネタリギヤ(プラネタリギヤ)、53a…中空部、54…第二プラネタリキャリア(支持部)、55…第二プレート(プレート)、55a…抜け止め部、55b…保持部、56…第二ねじ部材(ねじ部材)、56a…頭部、56c…ねじ部、57…第二収容穴(収容穴)、57a…第一収容部、57b…螺合部、57c…第二収容部、100…変速機
図1
図2
図3
図4
図5