(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022878
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】エンドトキシン含有供給物又はエンドトキシンを含有する可能性のある供給物からエンドトキシンを枯渇させる又は除去するための方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/24 20060101AFI20250206BHJP
C12N 7/00 20060101ALI20250206BHJP
B01D 15/36 20060101ALI20250206BHJP
C07K 1/36 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
C12Q1/24
C12N7/00
B01D15/36
C07K1/36
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024174611
(22)【出願日】2024-10-03
(62)【分割の表示】P 2021555890の分割
【原出願日】2019-12-16
(31)【優先権主張番号】18212639.1
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】521262714
【氏名又は名称】ザルトリウス ビーアイエー セパレーションズ ディー.オー.オー.
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギャニオン、ピーター スタンリー
(72)【発明者】
【氏名】レビュラ、ルシヤ
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4D017
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA20
4B063QQ16
4B063QQ17
4B063QQ20
4B063QR84
4B063QR85
4B063QR90
4B063QS10
4B063QS17
4B065AA98X
4B065BC42
4B065BD14
4B065CA44
4B065CA60
4D017AA09
4D017BA04
4D017CA17
4D017CB01
4D017DA01
4H045AA20
4H045AA30
4H045CA10
4H045DA83
4H045EA20
4H045EA60
4H045FA71
4H045GA21
(57)【要約】 (修正有)
【課題】エンドトキシンを含有することが既知であるか又はエンドトキシンを含有することが疑われる供給物からエンドトキシンを枯渇させる又は除去する方法を提供する。
【解決手段】本質的に水性である系において、エンドトキシンを含有することが既知であるか又はエンドトキシンを含有することが疑われる供給物を、(2-アミノエチル)アミン(TREN)リガンドによって第二鉄が固定化された表面を有する、正電荷を有する固相材料と接触させるステップと、前記供給物を、エンドトキシンを前記多孔質固相材料に結合させるのに十分な時間、インキュベートするステップと、前記固相材料を前記本質的に水性である系から分離するステップ、を含み、エンドトキシンを含まなくされた又は枯渇させた前記水性系を単離するステップを任意で含んでもよい、前記供給物からエンドトキシンを枯渇させる又は除去するための方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本質的に水性である系における固相抽出材料によってエンドトキシンを含有することが既知であるか又はエンドトキシンを含有することが疑われる供給物(a known or suspected endotoxin-containing source)からエンドトキシンを枯渇させる又は除去するための方法であって、
・エンドトキシンを含有することが既知であるか又はエンドトキシンを含有することが疑われる供給物を提供するステップ、
・エンドトキシンを含有することが既知であるか又はエンドトキシンを含有することが疑われる前記供給物を、第二鉄が固定化された表面を有する、正電荷を有する固相材料と接触させるステップ、ここで前記固相抽出材料は(2-アミノエチル)アミン(TREN)リガンドによって前記第二鉄を固定化している、
・エンドトキシンを含有することが既知であるか又はエンドトキシンを含有することが疑われる前記供給物を、エンドトキシンを前記多孔質固相材料に結合させるのに十分な時間、インキュベートするステップ、
・前記固相材料を前記本質的に水性である系から分離するステップ、を含み、
・エンドトキシンを含まなくされた又は枯渇させた前記本質的に水性である系を単離するステップを任意で含んでもよい、方法。
【請求項2】
固相抽出が、クロマトグラフィー、濾過、共沈及びそれらの組み合わせからなる群より選択される方法である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記固相材料が、エンドトキシンを含有することが既知であるか又はエンドトキシンを含有することが疑われる前記供給物からエンドトキシンを第二鉄キレート化によって枯渇させる又は除去するクロマトグラフィー材料を含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
低エンドトキシンバクテリオファージ含有組成物の製造、特に治療用途である、組換え産生タンパク質の精製、組換え産生タンパク質の調製に使用される細胞培養成分からのエンドトキシン及び/又はウイルスの除去、並びにインビトロ診断アッセイ試薬からのエンドトキシンの除去のための、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
他の精製方法と組み合わせて実施される、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記他の精製方法が、疎水性相互作用クロマトグラフィー、優先的排除クロマトグラフィー(preferential exclusion chromatography)及びアニオン交換クロマトグラフィーから選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
本質的に水性である系中にバクテリオファージを含有し、エンドトキシンが除去された又は枯渇している、本発明のプロセスによって得られる画分であって、エンドトキシン濃度が感染性バクテリオファージ粒子109個あたり1EU未満である画分。
【請求項8】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の方法を実施するための構成要素を少なくとも1つ含むキット。
【請求項9】
前記少なくとも1つの構成要素は前記固相抽出材料の少なくとも1種であり、前記固相抽出材料は正電荷を有し且つ(2-アミノエチル)アミン(TREN)リガンドによって第二鉄を固定化している、請求項8に記載のキット。
【請求項10】
前記固相抽出材料が、粒状材料若しくはモノリス、繊維、繊維状物質、1つ又は複数の膜、又はそれらの組み合わせの形態である、請求項9に記載のキット。
【請求項11】
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の方法を実施するための指示書を含む、請求項8~請求項10のいずれか一項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンドトキシン含有供給物からエンドトキシンを枯渇させる又は除去するための方法、及び本発明の方法が使用されうる種々の分野、並びに本発明の方法によって得られ得る画分に関する。
【背景技術】
【0002】
リポ多糖類(LPS)はグラム陰性菌の細胞壁構成成分である。このような細菌が死んで分解すると、エンドトキシンとしても知られているLPSが周囲の環境に放出される。エンドトキシンは安定的であり、過酷な条件下でも長期間持続する。エンドトキシンは非常に毒性であるため、バイオ医薬品産業にとって懸念事項である。数ppm程度の量であっても、発熱反応を引き起こすことがある。より大量に摂取すると臓器不全を起こして死に至ることもある。
【0003】
バイオプロセシングの分野におけるエンドトキシンを含みうる供給物(potential sources of endotoxins)には、以下のものが含まれる。
・製品の中にはグラム陰性菌内で産生される(grown)ものもある。したがって、それらはエンドトキシンで大量に汚染されている。
・バイオ医薬品、タンパク質溶液、緩衝液及び他の処理溶液を製造するための細胞培養物は、エンドトキシンを溶液中に放出するグラム陰性細菌によって汚染され(感染し)得る。
・生きているグラム陰性菌が存在しないか、最近存在していた場合でも、エンドトキシンが存在する可能性がある。例えば、処理溶液を処方するために使用される乾燥化学成分は、エンドトキシンで汚染されうる。
・処理溶液はまた、プロセス衛生が不適切であるために汚染供給物との偶発的な接触によって汚染される可能性がある。これもやはり、生きている細菌による実際の感染は必要ない。エンドトキシンの供給物は生きている細菌の供給物よりもはるかに多様であり、広く分布している。
【0004】
世界中の規制当局はエンドトキシン汚染が治療を受けている人に重篤な有害作用をもたらす可能性があることを認識しており、そのためエンドトキシン許容濃度の厳しい制限値を設定している。例えば、最近の刊行物は、特に米国食品医薬品局が最終バイオ医薬品中のエンドトキシンレベルを適切に制御するための製造方法の妥当性に満足しないことが多いと述べている[1,2]。
【0005】
これは、バイオ医薬品産業の分野における製造業者に、エンドトキシンを効果的に除去するプロセスを設計するように圧力をかける。より効果的なプロセスは、より効果的なツールを必要とする。
【0006】
現在、バイオ医薬品中のエンドトキシンレベルを低下させるために、様々な溶液が利用可能である。最も古く、最も広く信頼されている方法の1つは、アニオン交換クロマトグラフィーである。アニオン交換体は正電荷を有し、それらは、電荷相互作用を介して主に生体分子に結合する。具体的には、十分な負電荷を有する生体分子がアニオン交換体上の正電荷に結合する。エンドトキシンは負に帯電し、アニオン交換体に強く結合する。ほとんどの場合、エンドトキシンは、目的の生物医薬製品よりも強くアニオン交換体に結合する。これは、主としてエンドトキシンを含まない、目的の生産物を選択的に溶出することを可能にする。4級アニオン交換体(Q、QA、QAE、TMAE)によるエンドトキシン除去性能は、他のエンドトキシン除去方法が比較される基準である[3~7]。
【0007】
いわゆるマルチモーダル媒体又は混合モードクロマトグラフィー媒体を含む、同様に機能するアニオン交換クロマトグラフィーの多くのバリエーションが存在する。マルチモーダルという用語は、それらが生体分子を結合するために2つ以上の化学的メカニズム、とりわけ、例えば、正電荷と負電荷、芳香族疎水性基と脂肪族疎水性基、水素供与体と水素受容体のような組み合わせを利用するものであることを意味する。エンドトキシンを結合させるために使用されるマルチモーダル媒体は実質的に全て、正に荷電している[3-5]。例としては、ヒスチジン又はヒスタミンなどの固定化アミノ酸が挙げられる。他の場合には、合成化学構造が少なくとも1つの正電荷を少なくとも1つの疎水性残基と組み合わせる。場合によっては、正電荷を有する残基と疎水性の残基との組み合わせが、水素結合を媒介する残基とさらに組み合わされる。他の場合には、エンドトキシンに対して高い親和性を有する複雑な生物学的タンパク質が、エンドトキシンを選択的に捕捉するためにクロマトグラフィー表面上に固定化される。しかしながら、これらのリガンドは、依然として、それらの正電荷及びそれらの疎水性の効果によって支配される[8]。
【0008】
金属アフィニティークロマトグラフィーは、エンドトキシン除去のためのツールの別のクラスを代表する。エンドトキシン除去のためにキレートリガンドであるイミノ二酢酸(IDA)上に固定化された鉄又はカルシウムを使用することは公知である[9,10]。しかしながら、この方法には実用上の欠点がある。IDAは、2-の正味電荷を有する。カルシウムは2+の、鉄は2+又は3+の、正味電荷を有する。これで生じるリガンド:金属錯体は、0又は弱い+1のいずれかの正味電荷を有する。実際の結果として、多くのタンパク質や他の生物学的製剤が結合できない。それらは、処理によって希釈され、濃縮されるために後続する方法(follow-on method)を必要とする。別の欠点は、多くの非エンドトキシン汚染物質も結合せず、結合していない画分中の目的の生産物と一緒に残留することである。これは、宿主タンパク質(host proteins)のエンドトキシンが非常に小さいレベルへ低減されることが治療的適用で必要とされていることから重要である。実際的な結果として、さらなる精製工程が必要とされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、エンドトキシン含有供給物又はエンドトキシンを含有する可能性のある供給物(potentially endotoxin-containing sources)におけるエンドトキシンの枯渇又は除去のための改善された方法を提供することである。本発明の別の目的は、医薬産業又は食品産業において有用な、エンドトキシンの枯渇又は除去のための商業的に適用可能な方法を提供することである。本発明のさらに別の目的は、以前に製造された製品よりもエンドトキシン含有量の低い製品を提供することであり、かかる製品は、製品をエンドトキシンで汚染する危険性のある処理工程を有するプロセスによって得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、本質的に水性である系における固相材料抽出によってエンドトキシン含有供給物からエンドトキシンを枯渇させる又は除去するための方法であって、
・エンドトキシンを含有することが既知であるか又はエンドトキシンを含有することが疑われる供給物(a known or suspected endotoxin-containing source)を提供するステップ、
・エンドトキシンを含有することが既知であるか又はエンドトキシンを含有することが疑われる前記供給物を、第二鉄が固定化された表面を有する正電荷を有する固相材料と接触させるステップ、ここで前記固相抽出材料は(2-アミノエチル)アミン(TREN)リガンドによって前記第二鉄を固定化している、
・エンドトキシンを含有することが既知であるか又はエンドトキシンを含有することが疑われる前記供給物を、エンドトキシンを前記多孔質固相材料に結合させるのに十分な時間、インキュベートするステップ、
・前記固相材料を前記水性系から分離するステップ、を含み、
・エンドトキシンを含まなくされた又は枯渇させた前記水性系を単離するステップを任意で含んでもよい、方法により達成される。
【0011】
前記方法は、Fe3+を担持した固定化リガンドTRENを含む固相を使用する。
【0012】
「エンドトキシン」という用語は、リポ多糖(LPS)という用語で知られているグラム陰性細菌由来の化合物を含む。本発明の一実施形態によれば、エンドトキシンは、エンドトキシン又は病原性であるエンドトキシン断片として理解される。用語「リポ多糖」、「エンドトキシン」又は「エンドトキシン断片」は、互換的に使用することができる。
【0013】
「エンドトキシン含有」供給物("endotoxin-containing" source)とは、エンドトキシン又はエンドトキシン断片によって汚染されているか、又は汚染されているかもしれない任意の供給物を意味する。供給物は、固相抽出に適した本質的に水性の溶液又は分散液であり得る。典型的には、エンドトキシン含有供給物又はエンドトキシンを含有する可能性のある供給物は例えば、発酵ブロス又は組換え生産プロセスで使用されてきた培地などの、エンドトキシンで汚染されているか又は汚染されている可能性のある少なくとも1つの目的成分を含有する、天然に存在する生物学的流体であり得るが、これに限定されるものではない。
【0014】
「第二鉄が固定化された表面を有する固相抽出材料」とは、キレート化により結合した第二鉄を含む固相を主たる機構とする固相抽出材料をいい、「(2-アミノエチル)アミン(TREN)により固定化された第二鉄イオン」とはキレート化により結合した第二鉄を主たる機構とし、第二鉄イオン結合リガンドの正電荷を副次増強機構とする固相をいう。
【0015】
「固相抽出」という用語は、特に、液体混合物中に溶解又は懸濁された化合物が、それらの物理的な特性及び化学的な特性に従って、混合物中の他の化合物から分離される試料調製方法を意味する。固相抽出は尿、血液、細胞培養、水、飲料、土壌、及び動物組織を含む多種多様なマトリックスから、目的の分析物を単離するために使用されうる。固相抽出は一般に、液体(移動相として知られる)中に溶解又は懸濁された溶質の、試料が通過される固体(固定相として知られる)に対する親和性を使用して、混合物を所望の成分及び望ましくない成分に分離する。その結果、目的の所望の化合物又は試料中の望ましくない不純物のいずれかが固定相上に保持される。固定相を通過する画分は、それが所望の化合物又は望ましくない不純物を含有するかどうかに応じて、回収又は廃棄される。固定相上に保持された画分が目的とする化合物を含む場合、それらを、次いで、固定相が適切な溶離剤でリンスされる追加の工程において、回収のために固定相から除去することができる。
【0016】
用語「任意により(optionally)、エンドトキシン、宿主細胞タンパク質、及び宿主細胞DNAが除去又は枯渇された水性系から、濃縮された生産物を単離する」こととは、塩の濃度を増加させてリガンドの正電荷と固相の表面上に濃縮された生産物との相互作用を破壊することによって、前記生産物が選択的に放出され、一方、エンドトキシン及びDNAはキレート化第二鉄に対する親和性によって結合されたままであるステップをいう。
【0017】
用語「エンドトキシンを含有することが疑われる供給物(suspected endotoxin-containing source)」とは、エンドトキシンを含有するかどうかは未だ分かっていないが、エンドトキシンを含有しているリスクのある供給物を意味する。
【0018】
本発明によれば、エンドトキシンは、固相材料の表面(固定相)に固定化された第二鉄とキレート化によって相互作用する。その結果、固相抽出材料を通って流れる移動相は、エンドトキシンを枯渇させるか又は除去する。また、本発明によれば、固相の表面はTRENとしても知られている電気陽性キレートリガンドトリス(2-アミノエチル)アミンで共有結合的に被覆されていることによって正に帯電しているので、負に帯電したエンドトキシンは、該表面と相互作用する。これらの2つの相互作用モード間の協調性は、本発明の拡張された有用性の基礎であると理解される。
【0019】
本発明によれば、TREN-Fe3+を有する固相材料の表面は、好ましくはリガンドあたり少なくとも+1又は+2又は+3だけ、正に荷電される。
【0020】
「キレート化」は、金属イオンの安定な化学的捕捉を指す。それは、多座キレートリガンドと単一の中心金属原子との間の2つ以上の別個の配位結合の形成又は存在を含む。通常、これらのリガンドは有機化合物であり、キレート剤(chelants)、キレーター(chelators)、キレート化剤(chelating agents)又は封鎖剤(sequestering agents)と呼ばれる。ほとんどの場合、キレート化の力は、単純なイオン相互作用よりも何倍も強く、例えば15~60倍強く、広範囲のpH値にわたって、高濃度の塩の存在下でさえ、金属イオンがキレートリガンドによって捕捉されたままであることを可能にする。
【0021】
本発明によれば、固相材料は、正電荷を有するキレートリガンドであるトリス(2-アミノエチル)アミン(TREN)の手段によって第二鉄を固定化している。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、キレートリガンドであるTRENの固有の電気陽性電荷は、負に帯電したキレートリガンド上に固定化された金属と比較して、本発明の改善された性能に対する重要な寄与因子である。TRENのまったく正である電荷は、キレート化された第二鉄イオンによって媒介される親和性とは無関係であっても、負に荷電したエンドトキシンに対して親和性を有することが理解されよう。電荷相互作用によってのみ作用すると理解されている正電荷アニオン交換クロマトグラフィー媒体は、エンドトキシンとのかかる相互作用を奏することが知られている。同様に、TRENの電気陽性は、サンプル中に存在し得る汚染DNA及びRNAに対しての強い親和性をTRENに与えることが理解されよう。金属親和性がない場合、負に荷電したリガンドは、エンドトキシン、DNA、及びRNAなどの負に荷電した生体分子をはじく傾向がある。IDA及びNTAのような負に帯電したキレートリガンドに比しての、正電荷を有するTRENのさらなる実用的かつ重要な利点は、エンドトキシンを除去することが望まれ得る生物学的生産物の大部分が静電相互作用によって結合され、それによって、希釈された供給物供給流から濃縮されうることである。負電荷キレートリガンド上に固定化された第二鉄イオンについての最初の記載(original description)では、ほとんどの生産物が結合せず、これは、最終的に、それらに適用されたサンプルと比較して、それらの生産物の希釈を起こさせることが示されている[9、10]。
【0023】
一実施形態では、エンドトキシンで汚染された生産物を、鉄を担持する負に荷電したキレートリガンド(IDA-Fe又はNTA-Feなど)を含む固相表面と接触させる。これは、目的の生産物を含有する液相のエンドトキシン含量を減少させる。次いで、液相を、TREN-Feのような正電荷を有するキレート化固相(chelating solid phase)と接触させ、これは、前のステップに続いて、目的の生産物をその希釈状態から濃縮する効果を有する。TREN-Feからの生産物の選択的溶出で、依然として結合しているエンドトキシンが残る。単一の方法が単一のランにおいて所望の低いエンドトキシンレベルを達成し得ない程度まで、目的の生産物がエンドトキシンで大量に汚染されている場合に、このアプローチが有用であり得ることは認識されよう。
【0024】
別の実施形態によれば、固相材料は、固相材料の表面に結合した、より正電荷を有するキレートリガンド、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチルペンタアミン、N’-[5-(アセチル-ヒドロキシ-アミノ)ペンチル]-N-[5-[3-(5-アミノペンチル-ヒドロキシ-カルバモイル)プロパノイルアミノペンチル]-N-ヒドロキシ-ブタンジアミド(デフェロキサミン)、3-ヒドロキシ-1,2-ジメチルピリジン-4(1H)-オン(デフェリプロン)、4-[(3Z,5E)-3,5-ビス(6-オキソ-1-シクロヘキサ-2,4-ジエニリデン)-1,2,4-トリアゾリジン-1-イル]安息香酸(デフェラシロクス)の手段によって、固定化された第二鉄を有することができる。これらのリガンドは正に荷電している。
【0025】
本発明のさらなる実施形態によれば、固相材料は、エンドトキシンを含有することが既知であるか又はエンドトキシンを含有することが疑われる供給物からの第二鉄キレート化及び/又は相補的静電相互作用(complementary electrostatic interaction)によってエンドトキシンを枯渇させるか又は除去するクロマトグラフィー材料を含んでもよい。
【0026】
本発明の実施形態によれば、固相抽出は特に、クロマトグラフィー、クロマトグラフィー材料で濾過すること(filtration on chromatographic materials)、共沈及びそれらの組み合わせからなる群より選択される方法である。共沈は、第二鉄イオンを含む正電荷を有する固相抽出材料の粒子がエンドトキシン含有供給物又はエンドトキシンを含有する可能性のある供給物に添加される状況を含むことができる。第二鉄を含む正電荷を有する固相抽出材料はエンドトキシンに結合し、エンドトキシンと共沈した粒子は、次いで、遠心分離又は超音波沈殿の助けを借りて沈降させることを含めて、濾過又は沈降させることができる。
【0027】
本発明によれば、用語「クロマトグラフィー材料」は、その表面が生体分子を吸着する目的で化学修飾されている任意の固相を含む。これには、多孔質クロマトグラフィー粒子を含む多孔質粒子、非多孔質クロマトグラフィー粒子を含む非多孔質粒子、多孔質膜及び非多孔質膜を含む膜、モノリス及びヒドロゲルを含むがこれらに限定されないマクロ網状(3次元骨格)材料、カラム、又は、シート、ロールシート、プリーツシート、若しくは、流体を流すことでエンドトキシンを含有するか又はエンドトキシンを含有する可能性のある水溶液と接触させることができる物理的構成を有するその他の固相材料である織物に、アモルファス状に充填された個々の繊維が含まれる。
【0028】
本発明のさらなる別の実施形態では、固相抽出材料は有利なことに、エンドトキシンを含有する供給物又はエンドトキシンを含有する可能性のある供給物から、担持されているウイルスを除去する。
【0029】
いくつかの実施形態において、モノリシッククロマトグラフィーフォーマットは、内部分散が低いこと、乱流剪断力を欠いていること、並びにエンドトキシン、DNA、及びウイルスのような大きな溶質に対してのキャパシティーが高いことから、特に有利である。エンドトキシンは非常に大きな凝集体として存在することが知られているので、大きな溶質に対してのそのキャパシティーが他のクロマトグラフィー形式と較べてより高いことは、特に重要である。キャパシティーがより高いことは、そのキャパシティーがエンドトキシン除去効率における制限因子にはならないというより高い信頼性に転化する。また、所望の生産物自体が大きい場合、例えば、特にバクテリオファージを含む、ウイルスである場合、バクテリオファージ及びエンドトキシンの両方に対して高いキャパシティーが必要とされることから、モノリスの有用性も増加する。
【0030】
本発明の別の実施形態において、pH値は生理学的に受容可能な酸又は塩基によって調節され得、且つ/又はイオン強度は生理学的に受容可能な緩衝塩によって調節される。生理学的に許容される緩衝塩は、とりわけ、酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、TRIS(トリス-ヒドロキシアミノメタン)、イミダゾール、ヒスチジン、ヒスタミン、トリエチルアミン、及びHEPES(ヒドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸)及びMES(モルホリノエタンスルホン酸)などの双性イオン性塩(正及び負に同時に荷電してる)緩衝成分の塩からなる群より選択されうる。
【0031】
ほとんどの実施形態において、本発明の方法を使用するために推奨される操作pHはpH 7.0±1.5、又はpH 7.0±1.0、又はpH 7.0±0.5の範囲内であり得る。pH範囲は必要であれば、例えば、pH 7.0±2.0まで、又は必要であれば、目的の生産物がこれらの範囲を許容することが知られている場合は、より広く拡張されうる。エンドトキシン及び核酸を除去する方法の能力は、これらの範囲内に存続する。
【0032】
ほとんどの実施形態において、TREN-Fe3+固相を平衡化するための条件は生理学的に近い。これは、7.0±0.5の範囲のpH及び約150mM ±100mMの塩化ナトリウム又は塩化カリウムの濃度を含む。塩濃度は所望であれば、0mM~50mM、又は0mM~25mM、又は0mM~10mM、又は0mM~5mMの範囲など、より低くてもよい。エンドトキシン及び核酸を除去する方法の能力は、これらの範囲内に存続する。
【0033】
いくつかの実施形態では、平衡化中には250mM~1000mM、又は250mM~750mM、又は250mM~500mMなどのより高い濃度の塩を使用することが望ましい場合がある。エンドトキシン及び核酸を除去する方法の能力は、これらの範囲内に存続する。
【0034】
目的とする生物学的生産物の溶出は最初に、ハロゲン化物塩又は酢酸塩のような金属と強く相互作用する既知の傾向がほとんど又は全くない塩を用いて試みられるべきである。このような塩は、固定化されたFe3+イオンと、エンドトキシン及び核酸のホスファチジン酸残基との間の相互作用の妨害を最小限にする。例えば、溶出は最初に、2.0M NaClまで、又は3.0M NaClまで、又は4.0M NaClまでの勾配で評価されうる。
【0035】
あるいは、目的の生物学的生産物の溶出は、リン酸ナトリウム塩及びリン酸カリウム塩を含むリン酸塩の適用によって、単一工程で、若しくはリン酸濃度を増加させながらの複数工程で、又は特定の範囲にわたる直線勾配で、達成されてもよい。例えば、溶出は、500mMリン酸塩へ供する単一工程において;100mM、もしくは50mM、又はそれ以下、又はそれ以上の増分で、リン酸塩濃度を500mMリン酸塩の最終濃度まで増加させることによって;又は0mM~500mMリン酸塩の直線勾配によって、行われ得る。一般的な問題として、目的の生物学的生産物を溶出する最低濃度は、エンドトキシン及び核酸を最も効果的に減少させる。500mMリン酸塩を超える必要はほとんどないが、必要であれば、より高い増分を評価してもよい。リン酸塩濃度が500mMを超えることが意図される場合、リン酸ナトリウムの溶解度は高濃度で制限されるので、リン酸カリウムがリン酸ナトリウムよりも好ましい。クエン酸塩をリン酸塩に置き換えてもよいが、エンドトキシンの除去は損なわれる可能性がある。溶出はEDTA(エチレンジアミン四酢酸)などのキレート剤を用いて達成することができるが、エンドトキシンを除去する方法の能力を損なう危険性が高い。
【0036】
本発明の別の実施形態は、本発明の方法を、ウイルス含有供給物におけるウイルスを除去するため;エンドトキシン含有量の低いバクテリオファージ含有組成物を調製するため;特に治療用途の、組換え産生タンパク質を精製するため;組換え産生タンパク質の調製において使用される細胞培養成分からのエンドトキシン及び/又はウイルスの除去のため;並びに、正確かつ正確な結果を生じるアッセイの能力を妨害するやり方でエンドトキシンが試料成分と相互作用し得るインビトロ診断アッセイ試薬から、エンドトキシンを除去するため、に使用する。
【0037】
また、本発明の主題は、本発明による方法によって得られる、エンドトキシンが除去された又は枯渇した、本質的に水系である画分(fraction)であり、特に、109個の感染性バクテリオファージ粒子あたりのエンドトキシン濃度が1EU未満(10億ファージ粒子あたり1EU)である画分である。
【0038】
いくつかの実施形態では、試料中のエンドトキシン単位の濃度をLimulus Amoebocyte Lysateアッセイに基づく何らかの形態のアッセイによって決定することができる。手短に言えば、Limulusは、カブトガニの属名である。その血液にはアメーバ細胞と呼ばれる細胞が含まれる。アメーバ細胞が溶解され、エンドトキシンに曝露されると、血餅が生成される。このようなアッセイは、単純で、正確で、再現性のあるエンドトキシン定量を可能にする多種多様な物理的フォーマットで作製される。このようなアッセイは当該分野で周知であり、そして多くの自動分析システムが、このような試験を日常的な再現性ベースで実施するために利用可能である。一例は、Charles River Laboratoriesによって製造されたEndoSafeシステムを含む。完全な分析方法は、www.criver.com/sites/default/files/resources/Endosafe(R)nexgen-PTSTMAssayGuide.pdfに記載されている。異なる調製物間の比較を可能にするために、それらを生産物の固定された濃度又は生産物単位の数に関して表すことが、有用であり、時には必要である。1つのかかる場合において、エンドトキシン汚染は例えば、感染性ファージ100万個あたりのエンドトキシン単位(EU)の数、感染性ファージ10億個あたりのエンドトキシン単位の数、又は他の何らかの固定された感染性ファージの標準個数あたりのエンドトキシン単位の数として、表現されうる。単位体積あたり(例えば、mLあたり)のエンドトキシン単位に基づいたものであって感染性ファージの相対濃度(relative concentration)を考慮しない不均衡な比較は、エンドトキシン汚染を表現するこのアプローチでは排除されることが理解されよう。別のかかる場合において、エンドトキシン汚染は、商品のミリグラム(mg)又はグラム(g)あたりのエンドトキシン単位として表されうる。別のかかる場合において、エンドトキシン汚染は、用量(dose)あたりのエンドトキシン単位として表されうる。
【0039】
一定数のバクテリオファージのような感染性ウイルス粒子に対してのエンドトキシンの量を表すことが望ましい実施形態では、かかるウイルス粒子の数を推定することが必要であろう。感染性ウイルス粒子数の推定値は一般に、プラークアッセイと呼ばれる一連の方法によって開発されている。バクテリオファージのためのプラークアッセイは、典型的にはペトリ皿又はマルチウェルプレート中で行われる。それらは、最初に、特定のバクテリオファージ種が感染することが知られている細菌種を含浸させたゲル層を作製することを含む。バクテリオファージの希釈溶液を表面に適用し、第1のゲル層に浸漬させ、次いで、第2のゲル層を添加して、表面上の液体の制御されない広がりを防止する。バクテリオファージが細菌細胞と接触して存在するあらゆる場所で、その細胞に感染して最終的に殺し、数千から数百万のバクテリオファージを放出することになる。これらは最終的には、まだ生きている細菌細胞が集まっている領域とは視覚的に異なる領域である可視プラークをつくるのに十分である広い領域に渡る、より多くの細菌細胞に感染する。いくつかのかかる実験は、1つのプラークが1つの最初の感染バクテリオファージに対応することを合理的な信頼性で示すことが可能になる点まで、バクテリオファージの異なる濃度で行われる。この最初に感染するバクテリオファージはプラーク形成単位(pfu)と呼ばれる。元の試料の容積単位あたり、例えばミリリットル(mL)あたりの、pfuの数は、その元の試料中の感染性バクテリオファージの濃度を表すものと理解される。pfu/mLの数を知ることにより、エンドトキシンの相対濃度、例えば、100万pfuあたり10エンドトキシン単位、感染性ファージ100万個あたり10エンドトキシン単位、又は10EU/106 pfuを、表すことが可能となる。
【0040】
本発明の主題はまた、本発明の方法を実施するための少なくとも1つの構成要素を含むキットである。本発明の一実施形態では、キットは本発明の固相抽出材料の少なくとも1つ少なくとも1つの構成要素を含み、特に、粒子材料又はモノリス又はそれらの組み合わせの形態である。
【0041】
本発明のキットは、本発明の方法を実施するための説明書をさらに含んでもよい。
【0042】
密接に関連する実施形態では、キットは、負に帯電したキレート剤でコーティングされたモノリス、非金属結合アニオン交換体でコーティングされたモノリス、及び/又は高塩用途のためのヒドロキシル基でコーティングされたモノリスのうちの1つ又は複数など、エンドトキシンを除去する何らかの能力を有する、その他のモノリスを、任意で含んでもよい。
【0043】
本発明のキットは、固定化された第二鉄イオン固相TREN-Feを水素結合固相(例えば、H-Bond ADCモノリス)と組み合わせて含むエンドトキシン除去キットとして使用することができる。キットはバクテリオファージの製造に使用することができるが、特に抗体を含む多くの他の状況においても使用することができる。エンドトキシンは、バイオテクノロジーを含む製薬産業の多くの製品部門にとって問題である。
【0044】
別のかかるキット(これもファージに向けられたものである)は1つ以上の固定化された第二鉄イオン固相TREN-Feを、ヒドロキシル化された固相(OHモノリスのような)と組み合わせて含んでもよく、ここで、該ヒドロキシル化された固相はバクテリオファージを濃縮し、そして汚染物質負荷(例えば、タンパク質、核酸、及びエンドトキシン)を減少させるために使用される。
【0045】
別の実施形態では、本発明の方法を実施するための少なくとも1つの構成要素を含むキットは、TRENモノリスを含み、さらにヒドロキシルコーティングモノリス(hydroxyl-coated monolith)を含んでもよい。ここで該2つのモノリスは、特に、低エンドトキシン、低DNA、及び低宿主タンパク質汚染であるバクテリオファージを含む、ウイルスの精製を目的とする。
【0046】
別の実施形態では、本発明の方法を実施するための少なくとも1つの構成要素を含むキットは、TRENモノリスのみを含んでもよい。1つのかかる実施形態において、キットは、抗体からエンドトキシンを除去する特定の用途に向けられ得る。あるいは、それは他の手段によって部分的に精製されたバクテリオファージ調製物からエンドトキシンを除去するために使用されうる。
【0047】
本発明の別の実施形態は、本質的に水性である系における固相材料抽出によって発熱物質含有供給物から発熱物質を枯渇させる又は除去するための方法であって、
・発熱物質を含有することが既知であるか又は発熱物質を含有することが疑われる供給物(a known or suspected pyrogen-containing source)を提供するステップ、
・発熱物質を含有することが既知であるか又は発熱物質を含有することが疑われる前記供給物を、第二鉄が固定化された表面を有する固相材料と接触させるステップ、
・発熱物質を含有することが既知であるか又は発熱物質を含有することが疑われる前記供給物を、発熱物質を多孔質固相材料に結合させるのに十分な時間、インキュベートするステップ、
・前記固相材料を前記本質的に水性である系から分離するステップ、を含み、
・発熱物質を含まなくされた又は枯渇させた前記本質的に水性である系を単離するステップを任意で含んでもよい、方法である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】
図1は、実施例2によるクロマトグラムを示す。
【
図2】
図2は、実施例3によるクロマトグラムを示す。
【
図3】
図3は、実施例6によるクロマトグラムを示す。
【
図4】
図4は、実施例7によるクロマトグラムを示す。
【
図5】
図5は、実施例8によるクロマトグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明は、第二鉄と静電相互作用がエンドトキシン又はエンドトキシン断片と優先的に相互作用する能力とを組み合わせた能力を利用する(The present invention utilises the combined ability of ferric iron and the ability of electrostatic interactions to interact preferentially with endotoxin or endotoxin fragments)。以下において、本発明は、大腸菌培養物中で産生されたバクテリオファージからのエンドトキシン除去のための本発明の方法を使用することによって詳細に記載される。本発明の教示に鑑みて、当業者は、エンドトキシンを含有するか又はエンドトキシンを含有する疑いのある任意の試料からエンドトキシン又はエンドトキシン断片を除去するための類似の方法を容易に開発することができる。
【0050】
治療及び他の商業的用途のためのバクテリオファージは、それらが標的とする細菌を最初に培養することによって産生される。適切な細胞培養培地に、所望の種の細菌を接種する。細菌細胞密度がその最高レベルに近づくと、細菌には次に、精製されることが望まれるバクテリオファージの特定の種が接種される。1つ以上のこのような個々のファージ粒子は、細菌細胞に感染する。細菌細胞にDNAが注入され、細菌細胞の内部で数百から数千個、あるいはそれ以上の個々のバクテリオファージがつくられる。細菌細胞は壊れ開いてファージを放出し、ファージはさらに多くの細菌細胞に感染する。ある時点で、事実上すべての細菌細胞が感染して死滅し、今や死んだ細菌の破片とともに大量のバクテリオファージが細胞培養液中に存在することになる。細胞培養プロセスを終了し、バクテリオファージを回収する。より具体的には細菌残屑が例えば、濾過又は遠心分離によって除去され、そうして、バクテリオファージ調製物は、タンパク質、DNA、エンドトキシン、及び細胞培養成分などの可溶性汚染物質からバクテリオファージが精製されうる状態にされる。
【0051】
最も関心の持たれるバクテリオファージ種は、一般に最も危険な種の細菌に感染して殺すものである。そのような細菌種には、特に、エシェリキア属、サルモネラ属、シュードモナス属、ナイセリア属、レジオネラ属、シゲラ属、及びクレブシエラ属を含む、いわゆるグラム陰性菌種が含まれる。そのような種は、その病原性の可能性に加えて、別の負荷を課す。それらの細胞壁は、エンドトキシンとしても知られるリポ多糖類(LPS)を含有する。LPSは親菌から独立しても病原性を示す。ある場合には、分子のリピドA領域のようなLPSの断片さえも病原性である。死につつある細菌から高濃度のLPSが細胞培養液中に放出される。バクテリオファージをヒトで安全に使用するためには、エンドトキシンを極めて低いレベルまで除去しなければならない。バクテリオファージ回収物中のエンドトキシンレベルは通常、1ミリリットルあたり50,000エンドトキシン単位(EU/mL)を超えることがあり、ヒトでの使用に安全にするためには、しばしば10 EU/mL以下に低下させなければならない。
【0052】
特にStaphyloccus spp.やStreptococcus spp.のような非グラム陰性菌種によって産生されるバクテリオファージは、様々な供給物由来のエンドトキシンに汚染されている可能性もある。一般に汚染のレベルは遥かに低いが、それらは本発明による処理によって実質的に利益を得ることができる。
【0053】
本発明の核である方法は、キレート剤、特に、第二鉄イオン(Fe3+)をキレートすることができるキレート剤を含むように、表面が化学的に修飾された固相を含む。キレート剤はすなわち、正電荷を有する鉄キレート剤であり、中でもトリス(2-アミノエチル)アミン(TREN)のような鉄キレート剤である。正電荷を有するキレート固相を、水中の100mM塩化第二鉄などの第二鉄イオンの溶液に曝露して、キレート基を荷電させ、キレート化第二鉄で被覆された固相の表面を残す。
【0054】
いかなる理論にも束縛されるものではないが、キレート化第二鉄イオンはLPS(エンドトキシン)分子の脂質A及びコア多糖領域のリン酸塩関連酸素原子に対して強い優先的親和性を有すると考えられる。アミノ及びアミドの窒素原子も、それらの領域に存在する場合は、鉄親和性に寄与すると理解される。正電荷を有するキレートリガンドは固相の表面に正帯電を与えると理解され、これは、エンドトキシンに対して強い静電親和性を有することが知られており、エンドトキシンに対する鉄の金属親和性と協働して作用する。エンドトキシンを含む溶液が固相表面のキレート化された第二鉄イオンに曝されると、エンドトキシンは結合する。結合は、広範囲の塩濃度及びpH値に耐えるのに十分に強い。しかし、バクテリオファージはキレート化された第二鉄と弱く結合するか、あるいはまったく結合しない。正電荷を有するリガンドが存在しない場合、これで、バクテリオファージは固相の表面を通過させられる。電気陽性キレートリガンドによって与えられる固相の正電荷はバクテリオファージを結合させ、これは希釈供給流からバクテリオファージを濃縮する有益な効果を有する。この方法は、固相がカラム形式であることを必要としない。エンドトキシンがキレート化第二鉄固相と直接接触することを可能にする固体の任意の物理的フォーマットであれば如何なるものでも、所望の結果を達成する。
【0055】
TREN-Fe3+を有する固相材料の表面積は、好ましくはリガンドあたり少なくとも+1又は+2又は+3の、正に荷電される。
【0056】
脂質A及びコア多糖領域の負に荷電したリン酸塩関連酸素原子はキレートリガンド上の正電荷に対する強い静電引力を経るので、キレート化剤の正電荷はエンドトキシンに対する固相の親和性を増加させるとも理解される。
【0057】
本発明の方法の多くの実施形態において、DNA及びRNAを含む混入核酸は、エンドトキシンの減少又は除去と同時に減少するか又は除去される。固相へのそれらの強力な結合が、固定化鉄に対するそれらのリン酸基の親和性と、正電荷を有する固相に対するそれらの静電親和性との両方によって媒介されることは、理解されよう。
【0058】
固定化された第二鉄イオンがエンドトキシンの非常に強力な結合を可能にし、さらに、結合がそれより弱いバクテリオファージからのエンドトキシンの分離を可能にする因子であることを、実験データは全ての実施形態について示す。エンドトキシン結合はすべてのエンドトキシンに対して一様に強いようである。固相上のキレート化第二鉄イオンに対してのバクテリオファージの結合の相対的な弱さは、ファージがエンドトキシンの強力な結合を促進し得るリン酸残基を欠くという観察によって説明されよう。しかしながら、リン酸残基の欠如とは別に、バクテリオファージの間には、それらの構造及び化学的性質に関して多様性がある。多くは、負に帯電した固相との相互作用を媒介する正電荷を有する。多くは、正電荷を有する固相との相互作用を媒介する負電荷を有する。
【0059】
キレーターであるTRENは、4つまでの正電荷を有する。3個の正電荷を有する第二鉄イオンと結合すると、その正味電荷は仮定としては+7になる。
【0060】
この方法はエンドトキシン汚染を減少させるその例外的能力のために、とりわけ注目すべきであるが、操作条件に関して極めて許容性が高いためにも注目すべきである。このことは、代替方法よりも大きな柔軟性を与える。例えば、アニオン交換クロマトグラフィーは、サンプル適用の間、塩濃度を低く保つことを必要とする。高い塩濃度はエンドトキシン結合を妨害し、従って、アニオン交換クロマトグラフィープロセスの有用性を制限する。イオン交換のための塩は、一般に塩化ナトリウムのように一価でなければならず、その個々のイオンはClに対して1、Naに対して1+の電荷しか有していない。NaClの担持濃度は一般に約50mM未満に保たれなければならない。pHに応じて2又は3の負電荷を有するリン酸塩などの多価イオンの使用は、約25mM以下などの非常に低い濃度でさえ、イオン交換体による効果的なエンドトキシン除去を防止する。TRENにおけるキレート化第二鉄イオンで被覆された正電荷を有する固相を利用すると、NaClの濃度が約100mMから約1000mM、及びリン酸塩の濃度が少なくとも500mMまでであっても、エンドトキシン除去が可能となる。アニオン交換クロマトグラフィーの操作範囲がpH約7~8であることが必要とされるのに対して、第二鉄イオン法の操作pH範囲はアニオン交換よりもはるかに広く、例えば、pH約3~8である。
【0061】
広範囲の条件にわたってバクテリオファージをエンドトキシンから分離する、正帯電表面上のキレート化第二鉄イオンの能力は、本発明の驚くべき側面の1つであり、多様な形式で利用されることを可能にすることによってその有用性を拡張するものである。いくつかの実施形態において、緩衝液の条件は、バクテリオファージが固相に弱く結合することを可能にする。従って、バクテリオファージは固相の表面に蓄積する。バクテリオファージが後に固相から分離されるときは、高濃度で溶出するので、特に元の供給物が低濃度でファージを含有する大容量を有する場合には有利であり得る。
【0062】
バクテリオファージについて、固相表面上の鉄部分に対する親和性は知られていない。しかしながら、バクテリオファージは、固定化キレート剤上の正電荷に対して強い静電引力を有する。これは、バクテリオファージをエンドトキシンと共に固相の表面に結合させる。これは、バクテリオファージが大量の希釈サンプルから迅速に濃縮されることを可能にするので、実際的な重要性を有する。バクテリオファージは固定化された鉄に対しては有意な親和性を有さないので、それらは強く結合したエンドトキシンを残していく緩衝液によって選択的に溶出され得、それによって、バクテリオファージをエンドトキシンから分離する。
【0063】
DNA及びRNAなどの核酸の上で負に荷電しているリン酸塩関連酸素原子もまた、固定化された第二鉄イオンによって強く結合されることが理解されよう。同様に、それらの負電荷は、正電荷を有するキレート剤に対するそれらの親和性を増強する。これは、エンドトキシンと共にDNA及びRNAを除去することを増進できるので、TRENのような正電荷を有する鉄キレーターの有用性を拡張する。
【0064】
固定化された第二鉄イオンを有する正電荷を有するキレーターを有する固相のユニークな有用性は、塩勾配で溶出されるその能力によって、宿主細胞タンパク質をより効果的に除去することを可能にすることから、さらに拡張される。鉄に対する親和性を欠く汚染物質については、固相の表面がアニオン交換体と機能的に等価であり、そのまま利用することができる。
【0065】
固定化された第二鉄イオンが非常に強力なエンドトキシン結合に必要な因子であることを、実験データは全ての実施形態について示している。
【0066】
いくつかの実施形態では、バクテリオファージが固相上のキレート化第二鉄イオンに結合するように、条件を開発することができる。これは、特にリン酸塩の過剰を回避することを含む、過剰の塩の存在を回避することによって達成されうる。多くのファージはTRENに結合するので、濃縮の目的に役立とう。塩の導電率を増加させることによって、ファージはその後回収することができる。エンドトキシンは、ファージの回収を可能にする条件下で固相に結合したままである。クロマトグラフィーのこの様式は当技術分野では結合溶出様式として知られており、ここで目的の生産物は原油供給流から結合され、一方、いくらかの汚染物質は通過して流れ、次いで、目的の生産物は後に濃縮形態で溶出され、一方、別のセットの汚染物質はなお結合されたままであり得る。この場合、結合したままである汚染物質としては、特に、エンドトキシン、DNA、及びRNAが挙げられる。
【0067】
いくつかのかかる実施形態では、サンプル及び固相を平衡化するために使用される緩衝液条件は、緩衝化合物の存在を超える塩が存在しないこと、例えば、約20mM~約50mMの酢酸塩、MES、リン酸塩、Tris又は他の緩衝剤を含有するが、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム又は硫酸カリウムなどの追加の塩を欠くこと、によって定義され得る。他のかかる実施形態では、約20mMを超えて約50mMまでの濃度の緩衝剤の塩の濃度は、上記又は他の塩のいずれかについて約50mM未満の濃度、約100mM未満の濃度、又は約100mM未満の濃度に限定されうる。上記の全ての場合において、その意図は、バクテリオファージの結合を可能にすることである。
【0068】
いくつかの実施形態では、塩濃度を増加させる単一のステップでバクテリオファージを溶出させてもよい。同様の実施形態では、より高い濃度の塩でバクテリオファージが溶出される前に、弱く結合した汚染物質を除去する前溶出工程を含んでもよい。いくつかのかかる実施形態では、ファージよりも強く結合した汚染物質を固相からより高い濃度の塩で除去する第3のステップを適用してもよい。いくつかの実施形態では、塩濃度の別個のステップの代わりに、塩濃度を徐々に連続的に変化させて、いわゆる線形勾配溶出を行ってもよい。いくつかの実施形態では、バクテリオファージの溶出を達成するために必要な結合条件及び塩の量を調節するために、pHを変更してもよい。概して、バクテリオファージとエンドトキシンとの結合はpHが低下することにつれてより強くなり、このことは低pH値では結合が塩に対してより耐性を有し、バクテリオファージを溶出するためにはより多くの塩を必要とし得ることを意味する。そのような関係及びそれらをどのように管理するかは、当技術分野で周知である。
【0069】
重要であるのは、本発明によって具体化されうる条件及び操作形式が広範囲であるにもかかわらず、バクテリオファージ調製物中のエンドトキシンの量を、それらのバリエーションにかかわらず、除去又は減少させる目的を本発明が満たすことを認識することである。特定された範囲内の条件の変化は、本発明が機能するかどうかの決定要因ではない。本発明が請求されているエンドトキシンの減少又は除去を達成する能力は、固相の表面上におけるキレート化された第二鉄イオンの存在によって定義される。これは、感染性バクテリオファージの回収率が高い条件を用いることを可能にするため、重要である。この特徴は、例えば、非常に狭い範囲のpH及び塩条件を必要とするアニオン交換クロマトグラフィーのような、他のエンドトキシン除去方法の要件及び能力とは対照的であるため、この特徴を理解することはさらに重要である。広範囲の条件にわたって良好な結果を達成する本発明の能力は、その有用性の重要な側面を強調する。
【0070】
ある実施形態においては、本発明の方法を使用して、正電荷を有するキレーター-第二鉄イオン複合体に十分に結合しない生物学的製剤からエンドトキシンを除去することが望ましい場合がある。一例を表すのはIgG抗体である。ほとんどは正電荷を有する媒体への結合が不十分であるが、これはそれらの電気的に正の電荷によって生じる静電反発力が効果的な結合を妨げるからである。このような場合、生物学的生産物は、サンプル適用の間にカラムを通って流れ、一方、エンドトキシン及び核酸は除去される。
【0071】
いくつかの実施形態において、エンドトキシンが結合するのに必要な接触時間は、キレート化された第二鉄イオンが結合される固相のタイプに応じて変化する。固相がクロマトグラフィー装置などのフロースルーフォーマットで使用される膜、繊維、シート、ヒドロゲル又はモノリスの形態である場合、必要とされる接触時間は、約10秒未満、約5秒未満、又は約1秒未満であり得る。実際的な目的のためには、ポンプ流量及び/又は圧力公差を含む機器の制限のために、このような低い接触時間を達成することは一般に不可能である。固相がカラムに充填された非多孔質粒子からなる場合、必要な接触時間は、約10秒未満、約30秒未満、約1分未満、又は約2分未満であり得る。固相がカラムに充填された多孔質粒子からなる場合、必要な接触時間は約2分~約5分かそれ以上であり得、約10分~約20分などのより長い接触時間であるとより有効にエンドトキシンの除去が保証される。固相が開放容器内に緩く分布した多孔質粒子からなる場合、必要な接触時間は、約30分を超えてもよく、約60分を超えてもよく、又は約120分を超えてもよく、約4時間、約8時間、又は約16時間接触を継続するなど、さらなる曝露から利益を受け続けてもよい。接触時間のパラメータは当技術分野で周知であり、また、異なる材料又は動作フォーマットで必要とされうる異なる接触時間も周知であり、十分に、過度の実験なしに最適化する当業者の能力の範囲内である。
【0072】
ある実施形態において、エンドトキシンは使用後に、少なくとも約60分間、約1MのNaOHで処理することによって固相から除去されうる。任意で塩化ナトリウムが、1つの例においては1MのNaOHプラス2MのNaClの化合物製剤を生じるように、含まれてもよい。第二鉄コーティングは必要であれば、次の処理サイクルのための平衡化の前に、約100mMの塩化第二鉄を約1カラム容量、その上に通すことによって再生されてもよい。
【0073】
全ての実施形態において、エンドトキシン結合能及び除去効率の最適化は、バクテリオファージがその細菌標的に感染する能力を保存する必要性とのバランスがとられるべきである。いくつかのかかる実施形態において、ウイルス感染性の保存を補助するために、1種以上の安定化化合物が緩衝液に含まれてもよい。1つのかかる実施形態において、緩衝液は、ウイルス感染性を保存するための安定剤として約10%のグリセリン、又は約5%~約15%のグリセリン、又は約2%~約20%のグリセリン、又は約1%~約25%のグリセリン、又は約50%までのより高い濃度のグリセリンを含み得る。グリセリンのような添加剤が粘度を増加させることは認識されよう。これは、剪断応力が粘度に正比例して増加するので、カラムに充填された粒子のようなある種の固相を不適格にする可能性がある。モノリスではクロマトグラフィー床を通る流れが層流であるので、この制約は差し止められよう。これは、モノリスが固相の好ましい物理的フォーマットであり、特に、ファージを安定化させるためにグリセリンのような増粘性添加剤の含有が必要とされうる場合に、モノリスが好ましい物理的フォーマットである、という結論に寄与する。
【0074】
いくつかの実施形態では、緩衝液は、生理学的条件下で正に荷電する安定剤として、アミノ酸を含有してもよい。緩衝液は特に、約100mM~約700mMのアルギニン、又は約200mM~約600mMのアルギニン、又は約300mM~約500mMのアルギニン、又は約400mM~約500mMのアルギニンを含有し得る。いくつかのかかる実施形態において、緩衝液は、安定剤としてヒスチジンを約100mM~200mM、又は約50mM~約250mM、又は約75mM~約150mM、又は約25mM~約225mM含有し得る。
【0075】
他の実施形態において、緩衝液は、安定剤として約50mM~約250mMのソルビトール、キシロース、又はマンニトール、又は約100mM~約200mM、又は約150~約200mMのソルビトール、キシロース、又はマンニトールを含有し得る。いくつかの実施形態において、緩衝液は、約1%~約15%のスクロース、又は約5%~約10%のスクロースを含有し得る。いくつかの実施形態では、緩衝液は、安定剤としてのグリシン、タウリン、又はベタインを、約50mM~約2.0M、又は約100mM~約1.0M、又は約200mM~約800mM、又は約400mM~約700mM、又は約500~約600mM含有し得る。
【0076】
特に、本発明の方法においては、モノリシック固相が使用される。モノリスは、他の固相構成よりも、より速い結合キネティクス及びエンドトキシンに対してのより高いキャパシティーを保証する。この理論に拘束されるものではないが、これについての説明はエンドトキシンの分子設計、特にサイズが大きいことに見出すことができる。純粋なエンドトキシンでさえ、金属イオンの存在下及び界面活性剤の非存在下では大きな凝集体を形成するところ、細菌細胞培養物中のエンドトキシンは純粋ではない。それらは、とりわけ、細胞破片、例えば、細胞壁及び細胞膜断片、タンパク質、核酸、脂質、及び炭水化物を含む一連の他の成分と、共凝集されうる。これらのヘテロ凝集体は、場合によってはサイズが数百nmを超えることがある。結合基質の大部分が存在する細孔に入るには、これらの凝集体のいくつかは大きすぎるため、多孔質粒子クロマトグラフィー媒体での除去性能に影響が及ぶ。孔に入るのに十分に小さいものでさえ、依然として、孔への入り込みを遅らせる遅い拡散定数を有する。
【0077】
本発明を実施するために使用される固相はいかなるものでも、任意で、1回使用されて次いで廃棄されてもよく、又は複数回使用されてもよい。
【0078】
エンドトキシン除去のための全ての固相法の制約は、それらのキャパシティーに関係する。極めて効果的な除去方法でさえ、過剰量の試料によって圧倒されうる。この理由のために、特にバクテリオファージ調製物のような高エンドトキシン供給物からのエンドトキシン除去は、エンドトキシンレベルを最終的な精製方法(final polishing method)の範囲にするための予備工程を含むことが多い。想定キャパシティーが1,000万エンドトキシン単位である固相に1,000万エンドトキシン単位をロードすれば、そのキャパシティーを超え、処理された調製物をエンドトキシンで汚染されたままにしてしまう。
【0079】
いくつかの実施形態において、キレート化第二鉄イオン固相のキャパシティー制約は、もし著しいものであれば、精製バクテリオファージのヒトにおける使用に適切な要件を満たすために本発明の方法によってエンドトキシン含有量をさらに減少させることができる範囲にするように十分に、エンドトキシン含有量を減少させる代替的方法で、試料を事前に処理することによって、差し止めることができる。
【0080】
表面に第二鉄を結合させるための固相抽出材料は、正電荷を有するキレートリガンド、すなわちトリス(2-アミノエチル)アミン(TREN)で化学修飾される。
【0081】
あるいは、正電荷鉄キレートリガンドは、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチルペンタアミン、N’-[5-(アセチル-ヒドロキシ-アミノ)ペンチル]-N-[5-[3-(5-アミノペンチル-ヒドロキシ-カルバモイル)]プロパノイルアミノ-ペンチル]-N-ヒドロキシ-ブタンジアミド(デフェロキサミン)、3-ヒドロキシ-1,2-ジメチルピリジン-4(1H)-オン(デフェリプロン)、又は4-[(3Z,5E)-3,5-ビス(6-オキソ-1-シクロヘキサ-2,4-ジエニリデン)-1,2,4-トリアゾリジン-1-イル]安息香酸(デフェラシロクス)であってもよい。固定化TRENリガンドを有する固相材料は、Bioworks WorkbeadsTM 40 TRENの名称で市販されている。それは、本発明の方法を実施するのに必要な鉄担持形態で商業的に入手することはできない。その上にTREN自体が固定化され、続いてTRENリガンド又は別の正電荷を有する鉄キレートリガンドによって第二鉄イオンが捕捉されている、種々の他の固相材料を、合成することができる。このような固相材料はモノリス、ヒドロゲル、フィルター、繊維、遊離粒子の形態で提供されうるが、これらに限定されず、これらのいずれもすぐに使用可能な(ready-to-use)クロマトグラフィーデバイスの形態で提供されうる。さらなる実施形態において、正電荷を有するTRENによって固相上に固定化された第二鉄イオンを使用する本発明の方法は、より高い程度の精製(例えば、より高い程度の汚染タンパク質除去、より高い程度の汚染DNA除去、及び/又はより高い程度のエンドトキシン除去)を達成するために、さらなる精製方法と組み合わされうる。いくつかのかかる実施形態では正電荷を有するTRENによって固相上に固定化された第二鉄イオンを使用する本発明の方法と組み合わされるのが沈殿工程であってもよく、この工程では公知の技術、例えば硫酸アンモニウム若しくはリン酸カリウムでの塩沈殿、又は例えば4~10kDaの分子量を有するポリエチレングリコールでのPEG沈殿によって、目的の生産物が沈殿される。他のかかる実施形態では、固相上に正電荷TRENによって固定化された第二鉄イオンを使用する本発明の方法は、イオン交換クロマトグラフィー、又は疎水性相互作用クロマトグラフィー、又は水素結合クロマトグラフィー、又はアフィニティークロマトグラフィー、又は立体排除クロマトグラフィー、又は他の何らかのクロマトグラフィー法などのクロマトグラフィー法と組み合わされうる。いくつかのかかる実施形態では、正電荷を有するTRENによって固相上に固定化された第二鉄イオンを使用する本発明の方法は、カラム形式で操作されうる。他のかかる実施形態では、正電荷を有するTRENによって固相上に固定化された第二鉄イオンを使用する本発明の方法は、バッチ形式で操作されうる。いくつかのかかる実施形態では、正電荷を有するTRENによって固相上に固定化された第二鉄イオンを使用する本発明の方法と追加の精製方法との両方を、バッチ形式で実施することができる。
【0082】
正電荷を有するTRENによって固相上に固定化された第二鉄イオンを使用する本発明の方法が他のクロマトグラフィー方法と組み合わされる1つの実施形態において、該他のクロマトグラフィー方法は、その表面上にヒドロキシル基(-OH)を有する固相抽出材料の使用を含む。1つのかかる実施形態において、このアプローチはウイルス(例えば、脂質エンベロープウイルス、又は非脂質エンベロープウイルス、又はバクテリオファージ)を精製する目的のために使用される。1つのかかる実施形態では、ヒドロキシル化固相抽出材料は、沈殿塩、例えばとりわけ硫酸アンモニウム、リン酸カリウム、硫酸ナトリウムもしくは硫酸カリウム、又はクエン酸ナトリウムもしくはクエン酸カリウムの1つ又はそれらの組み合わせの存在下で、ウイルスと組み合わされてもよく、ここで沈殿塩はウイルスを溶液から押し出して固相の表面に蓄積させるのに十分な濃度で存在し、一方、より小さい汚染物質は蓄積せず、したがって排除される。続いて、沈殿する塩の濃度を低下させることによってウイルスを回収し、ウイルスを溶出させる。次いで、ウイルスを含有する溶出画分は、正電荷を有するTRENによって固相上に固定化された第二鉄イオンを使用する本発明の方法によって処理されうる。
【0083】
本発明のキットは、本発明の方法を実施するために使用することができる固相抽出材料の少なくとも1種を適切な形態で含む。固相抽出材料は粒状材料、モノリス又はそれらの組み合わせである。固相抽出材料はカートリッジ、カラムに配置されてもよいし、遊離状態(loose form)で充填されてもよい。固相抽出材料はまた、繊維及び/又は繊維状物質、又は1つ若しくは複数の膜の形成で提供されてもよい。
【0084】
一実施形態では、本発明の方法を実施するための構成要素はTRENモノリスである。かかる一実施形態では、キットは、負に帯電したキレート剤でコーティングされたモノリス、非金属結合アニオン交換体でコーティングされたモノリス、及び/又は高塩用途のためのヒドロキシル基でコーティングされたモノリスのうちの1つ又は複数など、エンドトキシンを除去する何らかの能力を有する他のモノリスを任意で含んでもよい。
【0085】
別の実施形態では、本発明の方法を実施するための少なくとも1つの構成要素を含むキットは、TRENモノリスを含み、さらにヒドロキシルコーティングモノリスを含んでもよい。ここで該2つのモノリスは、特に、低エンドトキシン、低DNA、及び低宿主タンパク質汚染であるバクテリオファージを含む、ウイルスの精製を目的とする。
【0086】
別の実施形態において、本発明のキットは、本発明の方法において使用される緩衝液の調製のための少なくとも1つの成分をさらに含んでもよい。このような成分は、本発明の方法を実施する間に使用される溶液のイオン強度又はpH値を調節するための物質であり得る。本発明のキットは、エンドトキシン含量を測定するためのアッセイ、又は精製されるバクテリオファージの感染性を測定するなど、単離されるべき生産物の品質を決定するためのアッセイを行うための材料を含んでもよい。本発明のキットは、本発明の方法を実施するための説明書をさらに含んでもよい。
【0087】
本発明のキットは、1つ以上の固定化第二鉄イオン固相TREN-Feを水素結合固相(H-Bond ADCモノリス)と組み合わせて含むエンドトキシン除去キットとして使用することができる。キットはバクテリオファージの製造に使用することができるが、特に抗体を含む多くの他の状況においても使用することができる。
【0088】
別のこのようなキット(これもファージに向けられたものである)は1つ以上の固定化された第二鉄イオン固相TREN-Feを、ヒドロキシル化された固相(OHモノリスのような)と組み合わせて含んでもよく、ここで、該ヒドロキシル化された固相はバクテリオファージを濃縮し、そして汚染物質負荷(例えば、タンパク質、核酸、及びエンドトキシン)を減少させるために使用される。キットはまた、1つ以上の固定化された第二鉄イオン固相を含み得る。
【0089】
本明細書に引用される全ての参考文献は、本明細書中の明示的な教示と矛盾しない範囲で、参照により組み込まれる。
【0090】
本発明は、以下の非限定的な実施例によってさらに説明される。
【実施例0091】
実施例1
本発明の相対的有効性を実証するためのベースラインを提供するための実験対照区の調製。
バクテリオファージT4を含有する大腸菌細胞培養物の清澄化された回収物10mLを、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)によって部分的に精製した。HIC工程からのバクテリオファージ溶出ピークを、50mM Tris、1mM CaCl2、0.5mM MgCl2、20mM NaCl、10%グリセリン、pH7.7で、最終導電率が7.42mS/cmとなるまで希釈した。100μLのCIMmac QA(強アニオン交換)モノリス(BIA Separations社)を、50mM Tris、1mM CaCl2、0.5mM MgCl2、20mM NaCl、10%グリセリン、pH 7.7で平衡化した。希釈したバクテリオファージをQAモノリス上にロードした。モノリスを60ベッド容量の平衡緩衝液で洗浄し、次いで50ベッド容量(5ml)での直線勾配溶出を50mM Tris、1mM CaCl2、0.5mM MgCl2、2M NaCl、10%グリセリン(pH 7.7)まで実施した。カラムを洗浄し、1M水酸化ナトリウム、2M塩化ナトリウムで消毒した。その後の分析のために、実験を通して各画分を回収した。バクテリオファージは、約25mS/cm(ピーク中心で測定)の導電率値を有する単一のピークで溶出した。感染性バクテリオファージの55%が主ピークで溶出した。Endosafeにより前記ピークを検査したところ、1ミリリットルあたり141エンドトキシン単位(EU/mL)の濃度が示され、これはファージ10億個あたり11EUに相当する。
【0092】
実施例2(比較例)
最初の疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)工程に続くIDA-Fe(負に荷電したキレートリガンド)(CIM IDA、BIA Separations社)による実験的エンドトキシン低減。
HICは実施例1に記載したようにT4バクテリオファージ回収物で実施したが、8mLのHICモノリス上にロードした160mLの溶解物を用いてより大きなスケールで実施した。31mLの溶出画分は138,167EU/mLのエンドトキシンを含んでいた。この画分を20mM KH
2PO
4、10%グリセリン、pH7.0で、最終導電率が6.7mS/cmとなるまで希釈した。340μLのIDAモノリスを、20CVの脱イオン水;次いで20CVの100mM酢酸、pH3.0;20CVの200mM塩化第二鉄、次いで20CVの50mM酢酸、2.0M塩化ナトリウム、pH 4.5;20CVの脱イオン水で洗浄することによって調製した。次いで、カラムを20mMリン酸カリウム、10%グリセリン、pH7.0に平衡化した。HICからの画分2mLを40mLの移動相Aで導電率6.7mS/cmまで希釈した。サンプルをIDAモノリス上にロードし、次いで、カラムを20CVの20mMリン酸カリウム、10%グリセリン、pH7.0で洗浄して、残りの未結合材料を置換した。500mMリン酸カリウム、pH7.0で終わる20CVでの直線勾配溶出にカラムを供した。その後の分析のために、実験を通して各画分を回収した。クロマトグラムを
図1に示す。感染性バクテリオファージの100%が、0.0mLマークから約45mLまでのフロースルー画分中に見出され、これはHICカラムから溶出された容積から約50%希釈物となっていること(about a 50% dilution from volume eluted from the HIC column)を示す。エンドトキシン濃度は315EU/mLと測定され、これはファージ10億個あたり5.75EUに相当する。
【0093】
実施例3
BIA Separations社によって製造された実験的モノリシックトリス(2-アミノエチル)アミン(TREN)固相表面の表面に固定化された第二鉄イオンは、強力なアニオン交換体(CIMmultus QA、BIA Separations社)と比較して優れたエンドトキシン低減を達成する、という実験的実証。
HICは実施例2に記載したようにT4バクテリオファージ回収物で実施した。エンドトキシン検査では、バクテリオファージ画分は138167EU/mLのエンドトキシンを含有することが示された。HICからの2mLの画分を40mLの移動相Aで、最終導電率が9.3mS/cmとなるまで希釈した。1mLのTRENモノリスを、5CV/分の流速で試薬をその上に流すことによって、実施例2に記載されるように調製した。カラムを20mMリン酸カリウム、pH7.0で平衡化した。40mLの希釈サンプルをロードし、次いでカラムを15CVの20mMリン酸カリウム、pH7.0で洗浄した。カラムを、500mMリン酸カリウム、pH7.0で終わる20CVでの直線勾配溶出に供した。その後の分析のために、実験を通して各画分を回収した。クロマトグラムを
図2に示す。カラムローディング相に対応するカラム流出液中には感染性バクテリオファージが見出されなかった。バクテリオファージの125%が、導電率16mS/cmで溶出するピーク中に見出された。LALアッセイ(Endosafe)による検査では、前記溶出ピークにおいて、1ミリリットルあたり10エンドトキシン単位(EU/mL)未満の濃度が示された。これは10EU/mLに近いがそれを超えない値を表すと理解され、ファージ10億個あたり0.4EU未満に相当する。強力なアニオン交換体を使用する工業標準法(the industry standard method using a strong anion exchanger)で達成されるよりも約25倍良好である。
【0094】
実施例4(比較例)
本発明の方法に対する比較例を提供するための実験対照区の調製。
バクテリオファージT4を含有する大腸菌培養物の清澄化された回収物を硫酸アンモニウム沈殿によって部分的に精製した。1mLの回収物を、1.5mLの3M硫酸アンモニウム、緩衝液50mM MES、pH6.5と合わせた。混合物を9000×gで10分間遠心分離し、上清を廃棄した。沈殿を0.8mLの500mMリン酸カリウム、pH7.0に再懸濁した。表面にイミノ二酢酸(イミノ二酢酸セファロース、Sigma-Aldrich)を有する遊離の(非充填の)多孔質粒子を、20mLの脱イオン水で2回洗浄し、100×gで5分間遠心分離し、次いで上清を廃棄し、次いで20mLの100mM酢酸ナトリウム、pH3.0で同じ方法により洗浄し、次いで20mLの200mM塩化第二鉄で処理し、次いで50mM酢酸ナトリウム、2M塩化ナトリウム、pH4.5で洗浄し、次いで20mLの脱イオン水で洗浄することによって調製した。次いで、粒子を50mM MES、pH6.5で平衡化した。これらの粒子の50%スラリーを用いて実験を行った。0.2mLの50%スラリーを0.8mLの前記再懸濁硫酸アンモニウム沈殿物に添加し、2~8℃で1日3回混合しながらインキュベートしてエンドトキシンを結合させた。粒子を遠心分離によって沈降させ、除去した。バクテリオファージを含有する残りの液体は、エンドトキシンを15.8EU/mL含有していた。
【0095】
実施例5
トリス(2-アミノエチル)アミン(TREN)固相の表面上に固定化された第二鉄イオンは、組み合わせられる精製方法及び固相の物理的形態とは無関係に、優れたエンドトキシン低減を達成するという実験的実証。
バクテリオファージT4を含有する大腸菌培養物の清澄化された回収物を疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)により部分的に精製した。次のステップには5876EUを含有する溶出分画1mlを50mM MES、pH6.0で100倍に希釈して用いた。表面にTRENを有する遊離の(非充填の)多孔質粒子(Workbeads TREN 40、BioWorks)に第二鉄イオンをチャージした。1mLの50%スラリー化TREN粒子を0.25mLの前記希釈HIC画分に添加し、時々混合しながら120分間インキュベートしてエンドトキシンを結合させた。粒子を遠心分離によって沈降させ、除去した。バクテリオファージを含有する残りの液体は、エンドトキシンを9.73EU/mL含有していた。
【0096】
実施例6
本発明の相対的有効性を実証するためのベースラインを提供するための実験対照区の調製。最初の優先的排除クロマトグラフィー(preferential exclusion chromatography)によるバクテリオファージT4の精製及びアニオン交換クロマトグラフィーによる精製。
強力なアニオン交換体を用いるアニオン交換クロマトグラフィーは、エンドトキシン除去のための工業的標準法と考えられる。バクテリオファージT4を含有する大腸菌細胞培養物の清澄化された回収物10mLを、1mLのCIMmultus OHモノリス上での優先的排除クロマトグラフィーによって部分的に精製した。バクテリオファージ溶出ピークを、50mM Tris、1mM CaCl
2、0.5mM MgCl
2、20mM NaCl、10%グリセリン、pH7.7で、最終導電率が7.42mS/cmとなるまで希釈した。100μLのCIMmac QA(強アニオン交換)モノリスを、50mM Tris、1mM CaCl
2、0.5mM MgCl
2、20mM NaCl、10%グリセリン、pH7.7で平衡化した。希釈したバクテリオファージをQAモノリス上にロードした。モノリスを60ベッド容量の平衡緩衝液で洗浄し、次いで50ベッド容量(5mL)での直線勾配溶出を50mM Tris、1mM CaCl
2、0.5mM MgCl
2、2M NaCl、10%グリセリン、pH7.7まで実施した。カラムを洗浄し、1M水酸化ナトリウム、2M塩化ナトリウムで消毒した。その後の分析のために、実験を通して各画分を回収した。エンドトキシンは、回収物におけるファージ1e+10個あたり177,524EUから、優先的排除工程後はファージ1e+10個あたり12054EU、アニオン交換後はファージ1e+10個あたり78EUに減少した。宿主タンパク質は、回収物におけるファージ1e+10個あたり6059ngから、優先的排除工程後はファージ1e+10個あたり153ng、アニオン交換後はファージ1e+10個あたり115ngに減少した。結果を
図3に示す。
【0097】
実施例7
優先的排除クロマトグラフィーによるバクテリオファージT4の最初の精製及び水素結合クロマトグラフィーによる精製。
水素結合クロマトグラフィーはアニオン交換よりも有効なエンドトキシン除去を保証し、それによって本発明の方法に対してより競合的な参照対象(more competitive reference)を提供し得る、という仮説を検証した。実施例6における優先的排除クロマトグラフィー工程から溶出したバクテリオファージのアリコートを、アニオン交換クロマトグラフィーに代えて水素結合クロマトグラフィーによって精製した。100μLのCIMmac H-Bondモノリスを、50mM Tris、1mM CaCl
2、0.5mM MgCl
2、20mM NaCl、10%グリセリン、pH7.7で平衡化した。希釈したバクテリオファージをQAモノリス上にロードした。モノリスを60ベッド容量の平衡緩衝液で洗浄し、次いで50ベッド容量(5ml)での直線勾配溶出を50mM Tris、1mM CaCl
2、0.5mM MgCl
2、2M NaCl、10%グリセリン、pH7.7まで実施した。カラムを洗浄し、1M水酸化ナトリウム、2M塩化ナトリウムで消毒した。その後の分析のために、実験を通して各画分を回収した。エンドトキシンは、回収物におけるファージ1e+10個あたり177,524EUから、優先的排除工程後はファージ1e+10個あたり12054EU、水素結合クロマトグラフィー後はファージ1e+10個あたり19EUに減少した。宿主タンパク質は、回収物におけるファージ1e+10個あたり6059ngから、優先的排除工程後はファージ1e+10個あたり153ng、水素結合クロマトグラフィー後はファージ1e+10個あたり26ngまで減少した。結果を
図4にグラフで示す。全体として、水素結合クロマトグラフィーによるエンドトキシン除去はアニオン交換の約4倍良好であり、宿主細胞タンパク質除去は約5倍良好であった。
【0098】
実施例8
本発明の方法による精製性能とアニオン交換クロマトグラフィー及び水素結合クロマトグラフィーとの実験的比較。
実施例6における優先的排除クロマトグラフィー工程から溶出したバクテリオファージのアリコートを、100μLのTRENモノリス上で精製した。20mMリン酸カリウム、pH7.0で平衡化し、40mLの希釈サンプルをロードし、次いでカラムを15CVの20mMリン酸カリウム、pH7.0で洗浄した。カラムを、500mMリン酸カリウム、pH7.0で終わる20CVでの直線勾配溶出に供した。その後の分析のために、実験を通して各画分を回収した。エンドトキシンは、回収物におけるファージ1e+10個あたり177,524EUから、優先的排除工程後はファージ1e+10個あたり12054EU、本発明の方法後はファージ1e+10個あたりEU未満(アッセイの感度未満)に減少した。宿主タンパク質は、回収物におけるファージ1e+10個あたり6059ngから、優先的排除工程後はファージ1e+10個あたり153ng、本発明の方法後はファージ1e+10個あたり1ng未満(アッセイの感度未満)まで減少した。結果を
図5にグラフで示す。全体として、本発明の方法によるエンドトキシン除去はアニオン交換よりも約80倍良好、水素結合クロマトグラフィーよりも20倍良好であり、宿主細胞タンパク質除去はアニオン交換よりも約100倍良好、水素結合クロマトグラフィーよりも25倍良好であった。
【0099】
参考文献
1: Lolas A. Microbial Control Strategies in Bioprocessing Falling Short of Assur-ing Product Quality and Satisfying Regulatory Expectations. American Pharm. Rev. (2013); www.americanpharmaceuticalreview.com/Featured-Articles/134040-Microbial-Control-Strategies-in-Bioprocessing-Falling-Short-of-Assuring-Product-Quality-and-Satisfying-Regulatory-Expectations.
2: Suvarna K, et al. Case Studies of Microbiological Contamination in Biological Product Manufacturing. American. Pharm. Rev. 14(1) 2011: 50-56.
3: Issekutz A. Removal of Gram-Negative Endotoxin from Solutions By Affinity Chromatography. J. Immunol. Met. 61(3) 1983: 275-281.
4: Anspach F. Endotoxin Removal By Affinity Sorbents. J. Biochem. Biophys. 449(1-3)2001: 665-681.
5: Guo W, et al. Removal of Endotoxin from Aqueous By Affinity Membrane. Biomed. Chromatogr. 11(3) 1997: 164-166.
6: Chen H, et al. Factors Affecting Endotoxin Removal from Recombinant Therapeutic Proteins By Anion Exchange Chromatography. Prot. Expr. Purif. 64(1) 2009:76-81.
7: Hirayama C, et al. Cross-linked N,N Dimethylaminopropylacrylamide Spherical Particles for Selective Removal of Endotoxin. J. Chromatogr. A 676(2) 1994: 267-275.
8: Hoess A, Lidington R. Lipopolysaccharide-Binding and Neutralizing Peptides. World Patent WO 1995005393 A2 1993l; www.google.com/patents/ WO1995005393A2?cl=en:Method.
9: Kang Y. Endotoxin removal from protein solutions by immobilized metal affinity chromatography, 2000, archives.njit.edu/vol01/etd/2000s/2000/njit-etd2000-023/njit-etd2000-023.pdf.
10: Luo R, Kang Y. Methods for endotoxin removal from biological solutions using immobilized meta affinity, United States Patent US6365147B1, 1999.