(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022956
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】クロロプレン重合体組成物、浸漬成形体及びこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 289/00 20060101AFI20250206BHJP
C08L 93/04 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
C08F289/00
C08L93/04
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024204761
(22)【出願日】2024-11-25
(62)【分割の表示】P 2022569722の分割
【原出願日】2021-10-01
(31)【優先権主張番号】P 2020208295
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100160897
【弁理士】
【氏名又は名称】古下 智也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真洋
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 実沙樹
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 雄志
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 豊
(57)【要約】
【課題】優れた破断強度を有する浸漬成形体を得ることが可能なクロロプレン重合体組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】クロロプレン重合体を含有するクロロプレン重合体組成物の製造方法であって、クロロプレンを含む単量体を重合率20%以上で重合することにより、クロロプレン重合体を含有する重合体組成物を得る重合工程、及び、前記重合体組成物と、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマール酸及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の共役樹脂酸成分を含むロジンと、を混合する混合工程を備え、前記混合工程における前記ロジンの混合量が前記重合体組成物の固形分100質量部に対して0質量部を超え23質量部以下である、クロロプレン重合体組成物の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロプレン重合体を含有するクロロプレン重合体組成物の製造方法であって、
クロロプレンを含む単量体を重合率20%以上で重合することにより、クロロプレン重合体を含有する重合体組成物を得る重合工程、及び、
前記重合体組成物と、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマール酸及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の共役樹脂酸成分を含むロジンと、を混合する混合工程を備え、
前記混合工程における前記ロジンの混合量が前記重合体組成物の固形分100質量部に対して0質量部を超え23質量部以下である、クロロプレン重合体組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロロプレン重合体組成物、浸漬成形体、これらの製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
クロロプレン重合体を含有するクロロプレン重合体組成物は、浸漬成形体(浸漬製品)、繊維処理剤、紙加工剤、粘着剤、接着剤、弾性アスファルト(改質アスファルト)、弾性セメント等の種々な分野で利用されている。特に浸漬成形体では、家庭用、産業用、手術用等の各種手袋の主原料としてクロロプレン重合体組成物が用いられている。手袋の用途においては、従来天然ゴムが主に使用されていたが、天然ゴムに含まれるタンパク質等によるアレルギーが問題となるため、合成ゴム手袋の使用が勧められてきた。中でも、クロロプレン重合体は、風合い等において天然ゴムに近い物性を有するため、天然ゴムからの代替材料として検討されている(例えば、下記特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/009038号
【特許文献2】特開2019-143002号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クロロプレン重合体組成物を用いて得られる浸漬成形体(手袋等)においては、天然ゴム又はイソプレンゴムを用いる場合と比べて破断強度が劣る場合がある。そのため、クロロプレン重合体組成物に対しては、当該クロロプレン重合体組成物の浸漬成形体の破断強度を向上させることが求められる。
【0005】
本発明の一側面は、優れた破断強度を有する浸漬成形体を得ることが可能なクロロプレン重合体組成物の製造方法を提供することを目的とする。本発明の他の一側面は、優れた破断強度を有する浸漬成形体を得ることが可能なクロロプレン重合体組成物を提供することを目的とする。本発明の他の一側面は、優れた破断強度を有する浸漬成形体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面の第1実施形態は、クロロプレン重合体を含有するクロロプレン重合体組成物の製造方法であって、クロロプレンを含む単量体を重合率20%以上で重合することにより、クロロプレン重合体を含有する重合体組成物を得る重合工程、及び、前記重合体組成物と、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマール酸及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の共役樹脂酸成分を含むロジンと、を混合する混合工程を備え、前記混合工程における前記ロジンの混合量が前記重合体組成物の固形分100質量部に対して0質量部を超え23質量部以下である、クロロプレン重合体組成物の製造方法に関する。
【0007】
本発明の一側面の第2実施形態は、クロロプレン重合体を含有するクロロプレン重合体組成物の製造方法であって、クロロプレンを含む単量体を重合率20%以上で重合することにより、重合体を含有する第1の重合体組成物を得る第1の重合工程、前記第1の重合体組成物と、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマール酸及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の共役樹脂酸成分を含むロジンと、を混合する混合工程、並びに、前記重合体及び前記共役樹脂酸成分の存在下において、クロロプレンを含む単量体を重合することにより、クロロプレン重合体を含有する第2の重合体組成物を得る第2の重合工程を備える、クロロプレン重合体組成物の製造方法に関する。
【0008】
本発明の他の一側面は、クロロプレン重合体を含有するクロロプレン重合体組成物であって、エタノール-トルエン共沸混合物を用いて当該クロロプレン重合体組成物の浸漬成形体から抽出される抽出物のガスクロマトグラフィーにおいて、当該抽出物が与えるピーク面積の合計を基準として、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマール酸及びこれらの塩である共役樹脂酸成分のピーク面積の割合が0%を超え60%以下である、クロロプレン重合体組成物に関する。
【0009】
本発明の他の一側面は、上述のクロロプレン重合体組成物の浸漬成形体に関する。
【0010】
本発明の他の一側面は、上述のクロロプレン重合体組成物の製造方法により得られたクロロプレン重合体組成物、又は、上述のクロロプレン重合体組成物を浸漬成形する、浸漬成形体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一側面によれば、優れた破断強度を有する浸漬成形体を得ることが可能なクロロプレン重合体組成物の製造方法を提供することができる。本発明の他の一側面によれば、優れた破断強度を有する浸漬成形体を得ることが可能なクロロプレン重合体組成物を提供することができる。本発明の他の一側面によれば、優れた破断強度を有する浸漬成形体及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0013】
数値範囲の「A以上」とは、A、及び、Aを超える範囲を意味する。数値範囲の「A以下」とは、A、及び、A未満の範囲を意味する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。「室温」とは、25℃を意味する。
【0014】
<クロロプレン重合体組成物及びその製造方法>
本実施形態に係るクロロプレン重合体組成物の製造方法(第1実施形態に係るクロロプレン重合体組成物の製造方法、及び、第2実施形態に係るクロロプレン重合体組成物の製造方法を包含する。以下同様)は、クロロプレン重合体を含有するクロロプレン重合体組成物の製造方法である。
【0015】
第1実施形態に係るクロロプレン重合体組成物の製造方法は、クロロプレンを含む単量体を重合率20%以上で重合することにより、クロロプレン重合体を含有する重合体組成物Aを得る重合工程A、及び、重合体組成物Aと、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマール酸及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の共役樹脂酸成分Cを含むロジンと、を混合する混合工程Aを備え、混合工程Aにおけるロジンの混合量が重合体組成物Aの固形分100質量部に対して0質量部を超え23質量部以下である。
【0016】
第2実施形態に係るクロロプレン重合体組成物の製造方法は、クロロプレンを含む単量体を重合率20%以上で重合することにより、重合体Bを含有する重合体組成物B1(第1の重合体組成物)を得る重合工程B1(第1の重合工程)、重合体組成物B1と、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマール酸及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の共役樹脂酸成分Cを含むロジンと、を混合する混合工程B、並びに、重合体B(重合工程B1で得られる重合体)及び共役樹脂酸成分Cの存在下において、クロロプレンを含む単量体を重合することにより、クロロプレン重合体を含有する重合体組成物B2(第2の重合体組成物)を得る重合工程B2(第2の重合工程)を備える。
【0017】
本実施形態に係るクロロプレン重合体組成物は、クロロプレン重合体を含有するクロロプレン重合体組成物であり、本実施形態に係るクロロプレン重合体組成物の製造方法により得ることができる。本実施形態に係るクロロプレン重合体組成物では、エタノール-トルエン共沸混合物を用いて当該クロロプレン重合体組成物の浸漬成形体から抽出される抽出物のガスクロマトグラフィーにおいて、当該抽出物が与えるピーク面積の合計を基準として、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマール酸及びこれらの塩である共役樹脂酸成分のピーク面積の割合が0%を超え60%以下である。
【0018】
本実施形態に係るクロロプレン重合体組成物は、クロロプレン重合体と、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマール酸及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の共役樹脂酸成分Cと、を含有する。本実施形態に係るクロロプレン重合体組成物は、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、ピマール酸、イソピマール酸及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の非共役樹脂酸成分Nを含有してよい。本実施形態に係るクロロプレン重合体組成物は、クロロプレン重合体が水中に分散したクロロプレン重合体ラテックスであってよい。
【0019】
本実施形態に係るクロロプレン重合体組成物及びその製造方法によれば、優れた破断強度を有する浸漬成形体を得ることが可能であり、例えば、後述の実施例において示されるように、クロロプレン重合体と、硫黄、酸化亜鉛等とを含有する組成物を用いて得られる浸漬成形体において優れた破断強度を得ることができる。本実施形態に係るクロロプレン重合体組成物及びその製造方法によれば、JIS K 6251に準拠して測定される破断強度として20.0MPa以上を得ることができる。
【0020】
共役樹脂酸成分は、共役二重結合を有し、ロジンに含まれる。ロジンは、このような共役樹脂酸成分に加えて、共役二重結合を有さない非共役樹脂酸成分を含み、合成ゴム重合用の乳化剤として使用することができる。乳化剤中の共役二重結合が重合反応を阻害させることが一般的に知られており、通常、不均化反応によって共役樹脂酸成分中の共役二重結合を消失させることにより得られた乳化剤を用いる傾向がある。一方、本実施形態に係るクロロプレン重合体組成物の製造方法では、共役二重結合を有する共役樹脂酸成分を用いるものの、上述の特徴を満たすことにより各種物性を好適に得ることができる。
【0021】
本実施形態に係るクロロプレン重合体組成物及びその製造方法によれば、浸漬成形体において優れた破断伸びを得ることもできる。例えば、本実施形態に係るクロロプレン重合体組成物及びその製造方法によれば、JIS K 6251に準拠して測定される破断伸びとして1000%以上を得ることができる。
【0022】
本実施形態に係るクロロプレン重合体組成物及びその製造方法によれば、浸漬成形体において優れた伸長時モジュラス(柔軟性)を得ることもできる。例えば、本実施形態に係るクロロプレン重合体組成物及びその製造方法によれば、JIS K 6251に準拠して測定される25%伸長時モジュラスとして1.4MPa以下を得ることが可能であり、JIS K 6251に準拠して測定される300%伸長時モジュラスとして2.5MPa以下を得ることができる。
【0023】
本実施形態に係るクロロプレン重合体組成物及びその製造方法によれば、浸漬成形体において柔軟性を好適に維持しつつ優れた機械的強度を得ることが可能であり、浸漬成形体において柔軟性を好適に維持しつつ優れた破断強度及び破断伸びを得ることができる。
【0024】
重合工程A,B1,B2(以下、これらを総称して、単に「重合工程」という)では、クロロプレン(2-クロロ-1,3-ブタジエン)を含む単量体を重合することにより、クロロプレン重合体を含有する重合体組成物を得る。重合工程A及びB1では、共役樹脂酸成分Cが実質的に存在しない状態において、クロロプレンを含む単量体を重合してよい。重合工程B2では、重合体B及び共役樹脂酸成分Cの存在下において、クロロプレンを含む単量体を重合することにより、クロロプレン重合体を含有する重合体組成物を得る。重合工程B2では、クロロプレン等の単量体を添加してもよい。
【0025】
重合工程で得られるクロロプレン重合体、及び、本実施形態に係るクロロプレン重合体組成物におけるクロロプレン重合体(以下、これらを総称して、単に「クロロプレン重合体」という)は、クロロプレンを単量体単位(クロロプレンの単量体単位。単量体単位=構造単位)として有し、クロロプレン由来の単量体単位を有することができる。クロロプレン重合体としては、クロロプレンの単独重合体、クロロプレンの共重合体(クロロプレンと、クロロプレンに共重合可能な単量体との共重合体)等が挙げられ、これらの重合体の混合物を用いてもよい。重合工程では、クロロプレンを単独で重合させてよく、クロロプレンと、クロロプレンに共重合可能な単量体とを共重合させてよい。
【0026】
クロロプレンに共重合可能な単量体としては、(メタ)アクリル酸のエステル類((メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等)、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(2-ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等)、(メタ)アクリル酸、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、1-クロロ-1,3-ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、エチレン、スチレン、(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられる。クロロプレンに共重合可能な単量体は1種に限定されるものではなく、例えば、クロロプレンの共重合体は、クロロプレンを含む3種以上の単量体を共重合した共重合体であってもよい。
【0027】
クロロプレン重合体は、浸漬成形体において柔軟性を好適に維持しつつ優れた機械的強度(破断強度、破断伸び等)を得やすい観点から、クロロプレンの単独重合体、及び、クロロプレンと2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンとの共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。
【0028】
本実施形態に係るクロロプレン重合体組成物の製造方法におけるクロロプレンの使用量(第2実施形態に係るクロロプレン重合体組成物の製造方法では、重合工程B1及び重合工程B2の合計量)は、浸漬成形体において柔軟性を好適に維持しつつ優れた機械的強度(破断強度、破断伸び等)を得やすい観点から、クロロプレン重合体の重合に用いる単量体の全量、又は、クロロプレン及び2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンの合計量を基準として下記の範囲であってよい。クロロプレンの使用量は、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、88質量%以上、又は、90質量%以上であってよい。クロロプレンの使用量は、100質量%以下、100質量%未満、98質量%以下、95質量%以下、93質量%以下、92質量%以下、91質量%以下、又は、91質量%未満であってよい。これらの観点から、クロロプレンの使用量は、50~100質量%、70~98質量%、又は、80~95質量%であってよい。
【0029】
クロロプレン重合体におけるクロロプレンの単量体単位の含有量は、浸漬成形体において柔軟性を好適に維持しつつ優れた機械的強度(破断強度、破断伸び等)を得やすい観点から、クロロプレン重合体を構成する単量体単位の全量、又は、クロロプレンの単量体単位及び2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンの単量体単位の合計量を基準として下記の範囲であってよい。クロロプレンの単量体単位の含有量は、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、88質量%以上、又は、90質量%以上であってよい。クロロプレンの単量体単位の含有量は、100質量%以下、100質量%未満、98質量%以下、95質量%以下、93質量%以下、92質量%以下、91質量%以下、又は、91質量%未満であってよい。これらの観点から、クロロプレンの単量体単位の含有量は、50~100質量%、70~98質量%、又は、80~95質量%であってよい。
【0030】
重合工程で重合する単量体は、浸漬成形体において柔軟性を好適に維持しつつ優れた機械的強度(破断強度、破断伸び等)を得やすい観点から、クロロプレンと2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンとを含んでよい。本実施形態に係るクロロプレン重合体組成物の製造方法における2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンの使用量(第2実施形態に係るクロロプレン重合体組成物の製造方法では、重合工程B1及び重合工程B2の合計量)は、浸漬成形体において柔軟性を好適に維持しつつ優れた機械的強度(破断強度、破断伸び等)を得やすい観点から、クロロプレン重合体の重合に用いる単量体の全量、又は、クロロプレン及び2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンの合計量を基準として下記の範囲であってよい。2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンの使用量は、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、12質量%以下、又は、10質量%以下であってよい。2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンの使用量は、0質量%以上、0質量%超、2質量%以上、5質量%以上、7質量%以上、8質量%以上、9質量%以上、又は、9質量%超であってよい。これらの観点から、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンの使用量は、0~50質量%、2~30質量%、又は、5~20質量%であってよい。
【0031】
クロロプレン重合体は、浸漬成形体において柔軟性を好適に維持しつつ優れた機械的強度(破断強度、破断伸び等)を得やすい観点から、クロロプレンの単量体単位、及び、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンの単量体単位を有してよい。クロロプレン重合体における2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンの単量体単位の含有量(2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンの共重合量)は、クロロプレン重合体を構成する単量体単位の全量、又は、クロロプレンの単量体単位及び2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンの単量体単位の合計量を基準として下記の範囲であってよい。2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンの単量体単位の含有量は、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、12質量%以下、又は、10質量%以下であってよい。2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンの単量体単位の含有量は、0質量%以上、0質量%超、2質量%以上、5質量%以上、7質量%以上、8質量%以上、9質量%以上、又は、9質量%超であってよい。これらの観点から、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンの単量体単位の含有量は、0~50質量%、2~30質量%、又は、5~20質量%であってよい。2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンの単量体単位の含有量は、クロロプレン重合体組成物を凍結乾燥させて得られるクロロプレン重合体の熱分解ガスクロマトグラフィーにより求めることができる。
【0032】
クロロプレン重合体は、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群より選ばれる少なくとも一種の(メタ)アクリル酸を単量体単位として有さなくてよい。アクリル酸の単量体単位、又は、メタクリル酸の単量体単位の含有量は、クロロプレン重合体を構成する単量体単位の全量を基準として、2.0質量%未満、1.0質量%未満、0.5質量%以下、又は、0.1質量%以下であってよく、0質量%であってもよい。重合工程において、アクリル酸の使用量(第2実施形態に係るクロロプレン重合体組成物の製造方法では、重合工程B1及び重合工程B2の合計量。メタクリル酸の使用量についても同様)、又は、メタクリル酸の使用量は、クロロプレン重合体の重合に用いる単量体の全量を基準として、2.0質量%未満、1.0質量%未満、0.5質量%以下、又は、0.1質量%以下であってよく、0質量%であってもよい。
【0033】
クロロプレン重合体は、硫黄変性クロロプレン重合体、メルカプタン変性クロロプレン重合体、キサントゲン変性クロロプレン重合体、ジチオカルボナート系クロロプレン重合体、トリチオカルボナート系クロロプレン重合体、カルバメート系クロロプレン重合体等であってよい。
【0034】
重合工程では、乳化重合、溶液重合、懸濁重合、塊状重合等の重合方法により、クロロプレンを含む単量体を重合することができる。これらの重合方法の中でも、制御しやすく、重合後の重合体組成物からクロロプレン重合体を取り出しやすい観点、重合速度が比較的速い観点等から、乳化重合により単量体を重合してよい。
【0035】
乳化重合では、ラジカル重合の一種であり、水、乳化剤、乳化助剤、連鎖移動剤、重合開始剤(触媒)、還元剤(例えば亜硫酸水素ナトリウム)等と共に単量体を重合缶中に投入して重合させることができる。乳化剤としては、ロジン酸、ロジン酸のアルカリ金属塩、不均化ロジン、アニオン性乳化剤(例えばβ-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩)、ノニオン性乳化剤等が挙げられ、これらのうちの複数種を併用してよい。
【0036】
連鎖移動剤としては、通常のクロロプレンの乳化重合に使用される連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、n-ドデシルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン等の長鎖アルキルメルカプタン類;ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサンドゲンジスルフィド等のジアルキルキサントゲンジスルフィド類;ヨードホルムなどが挙げられる。連鎖移動剤の使用量は、クロロプレン重合体の重合に用いる単量体100質量部に対して、1質量部以下、0.5質量部以下、0.1質量部以下、0.08質量部以下、0.05質量部以下、0.05質量部未満、又は、0.04質量部以下であってよい。連鎖移動剤の使用量は、クロロプレン重合体の重合に用いる単量体100質量部に対して、0.001質量部以上、0.005質量部以上、又は、0.01質量部以上であってよい。
【0037】
重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物などが挙げられる。
【0038】
重合温度は、クロロプレン重合体組成物の柔軟性の経時的安定性を保持しやすい観点から、5~55℃、又は、15~45℃であってよい。
【0039】
重合工程A,B1では、クロロプレンを含む単量体を重合率(単位:質量%)20%以上で重合する。このような重合率が得られた後に混合工程A,Bが行われることにより、浸漬成形体の形成に好適な状態が後続の工程において維持されやすい(例えば、重合工程B2における重合体組成物の急激な粘度上昇が起こりづらいことから重合時の安定性を維持しやすい)ため、柔軟性を好適に維持しつつ優れた機械的強度(破断強度、破断伸び等)を有する浸漬成形体を得ることができる。
【0040】
重合工程Aにおける重合率(混合工程Aにおいてロジンを混合する際の重合率、単位:質量%)は、下記の範囲であってよい。重合工程Aにおける重合率は、浸漬成形体において柔軟性を好適に維持しつつ優れた機械的強度(破断強度、破断伸び等)を得やすい観点から、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、85%以上、又は、90%以上であってよい。重合工程Aにおける重合率は、100%未満、95%以下、又は、90%以下であってよい。
【0041】
重合工程B1における重合率(混合工程Bにおいてロジンを混合する際の重合率)は、下記の範囲であってよい。重合工程B1における重合率は、優れた機械的強度(破断強度、破断伸び等)を得やすい観点から、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、又は、85%以上であってよい。重合工程B1における重合率は、柔軟性を好適に維持しやすい観点から、100%未満、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、又は、20%以下であってよい。
【0042】
第2実施形態に係るクロロプレン重合体組成物の製造方法における重合工程B1及び重合工程B2の合計の重合率(単位:質量%)は、下記の範囲であってよい。重合率は、浸漬成形体において柔軟性を好適に維持しつつ優れた機械的強度(破断強度、破断伸び等)を得やすい観点から、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、85%以上、又は、90%以上であってよい。重合率は、100%未満、95%以下、又は、90%以下であってよい。
【0043】
重合率が規定の数値に達した際、重合停止剤を用いることにより重合を停止させることができる。重合停止剤としては、チオジフェニルアミン、4-tert-ブチルカテコール、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ジエチルヒドロキシルアミン等が挙げられる。
【0044】
第1実施形態に係るクロロプレン重合体組成物の製造方法は、混合工程Aの後に、重合工程Aで得られた重合体(クロロプレン重合体)、及び、共役樹脂酸成分Cの存在下において、クロロプレンを含む単量体を重合する重合工程を備えてよく、すなわち、クロロプレンを含む単量体の重合中に、共役樹脂酸成分Cを含むロジンを混合してよい。第1実施形態に係るクロロプレン重合体組成物の製造方法は、混合工程Aの後にこのような重合工程を備えていなくてもよく、すなわち、重合の全てが完了した後に、共役樹脂酸成分Cを含むロジンを混合してよい。この場合、重合工程Aにおいて規定の重合率に達した後、未反応の単量体の除去及び/又は濃縮処理を行ってから混合工程Aを行ってよい。
【0045】
混合工程A,B(以下、「混合工程」と総称する)では、重合工程A又は重合工程B1で得られた重合体組成物と、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマール酸及びこれらの塩(例えば金属塩)からなる群より選ばれる少なくとも一種の共役樹脂酸成分Cを含むロジンと、を混合する。アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸及びレボピマール酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩などが挙げられる。
【0046】
混合工程では、重合工程A又は重合工程B1で得られた重合体組成物と、共役樹脂酸成分C及び非共役樹脂酸成分を含むロジンと、を混合してよい。非共役樹脂酸成分は、デヒドロアビエチン酸、ピマール酸、イソピマール酸、ジヒドロアビエチン酸及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。デヒドロアビエチン酸、ピマール酸、イソピマール酸及びジヒドロアビエチン酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩などが挙げられる。
【0047】
ロジンは、通常固体であり、アルカリ金属塩水溶液に溶解して用いる傾向がある。ロジン中のロジン酸の金属塩としては、ロジン酸ナトリウム、ロジン酸カリウム等のアルカリ金属塩などが挙げられる。ロジンは単一の化合物ではなく、樹脂酸の各種異性体の混合物である。ロジンに含まれる樹脂酸としては、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマール酸等の、共役二重結合を有する共役樹脂酸、及び、ピマール酸、イソピマール酸、デヒドロアビエチン酸等の、共役二重結合を有さない非共役樹脂酸が存在し、ロジンの種類に応じて各樹脂酸の含有量が異なる。ロジンは、製造方法に応じてトールロジン、ガムロジン、ウッドロジン等に分類される。ウッドロジンはロジン全体の1%に満たないことから、トールロジン、ガムロジン等がよく使用される。
【0048】
混合工程Aにおけるロジンの混合量は、優れた破断強度を有する浸漬成形体を得る観点から、重合工程Aで得られた重合体組成物Aの固形分100質量部に対して0質量部を超え23質量部以下である。ロジンの混合量は、優れた破断伸びを得やすい観点、及び、柔軟性を好適に維持しやすい観点から、20質量部以下、18質量部以下、15質量部以下、12質量部以下、10質量部以下、8.0質量部以下、6.0質量部以下、5.5質量部以下、5.0質量部以下、3.0質量部以下、又は、1.0質量部以下であってよい。ロジンの混合量は、優れた破断強度を得やすい観点から、0.1質量部以上、0.5質量部以上、1.0質量部以上、2.0質量部以上、3.0質量部以上、4.0質量部以上、4.5質量部以上、5.0質量部以上、8.0質量部以上、10質量部以上、12質量部以上、15質量部以上、18質量部以上、又は、20質量部以上であってよい。これらの観点から、ロジンの混合量は、0.1~23質量部、1.0~20質量部、又は、5.0~10質量部であってよい。
【0049】
混合工程Bにおけるロジンの混合量は、浸漬成形体において柔軟性を好適に維持しつつ優れた機械的強度(破断強度、破断伸び等)を得やすい観点から、単量体(クロロプレン重合体の重合に用いる単量体)100質量部に対して下記の範囲であってよい。ロジンの混合量は、0.1質量部以上、0.5質量部以上、1.0質量部以上、2.0質量部以上、3.0質量部以上、4.0質量部以上、又は、4.5質量部以上であってよい。ロジンの混合量は、10質量部以下、8.0質量部以下、6.0質量部以下、5.0質量部以下、又は、4.5質量部以下であってよい。これらの観点から、ロジンの混合量は、0.1~10質量部、1.0~8.0質量部、又は、3.0~5.0質量部であってよい。
【0050】
混合工程Bにおけるロジンの混合量は、浸漬成形体において柔軟性を好適に維持しつつ優れた機械的強度(破断強度、破断伸び等)を得やすい観点から、重合工程B2で得られた重合体組成物B2の固形分100質量部に対して下記の範囲であってよい。ロジンの混合量は、0.1質量部以上、0.5質量部以上、1.0質量部以上、2.0質量部以上、3.0質量部以上、4.0質量部以上、4.5質量部以上、又は、5.0質量部以上であってよい。ロジンの混合量は、23質量部以下、20質量部以下、18質量部以下、15質量部以下、12質量部以下、10質量部以下、8.0質量部以下、6.0質量部以下、5.5質量部以下、又は、5.0質量部以下であってよい。これらの観点から、ロジンの混合量は、0.1~23質量部、1.0~10質量部、又は、3.0~6.0質量部であってよい。重合体組成物B2の固形分100質量部に対するロジンの混合量(相対量)は、ロジンの使用量、重合工程B2における重合率等により調整できる。
【0051】
混合工程において重合体組成物と混合されるロジンにおけるアビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマール酸及びこれらの塩の合計量(共役樹脂酸成分Cの合計量)は、浸漬成形体において柔軟性を好適に維持しつつ優れた機械的強度(破断強度、破断伸び等)を得やすい観点から、ロジンの全質量を基準として下記の範囲であってよい。合計量は、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、又は、35質量%以上であってよい。合計量は、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、又は、40質量%以下であってよい。これらの観点から、合計量は、5~60質量%、10~50質量%、又は、20~40質量%であってよい。
【0052】
混合工程において重合体組成物と混合されるロジンにおけるデヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、ピマール酸、イソピマール酸及びこれらの塩の合計量(非共役樹脂酸成分Nの合計量)は、浸漬成形体において柔軟性を好適に維持しつつ優れた機械的強度(破断強度、破断伸び等)を得やすい観点から、ロジンの全質量を基準として下記の範囲であってよい。合計量は、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、又は、45質量%以上であってよい。合計量は、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、又は、50質量%以下であってよい。これらの観点から、合計量は、10~70質量%、20~60質量%、又は、30~50質量%であってよい。
【0053】
混合工程において重合体組成物と混合されるロジンにおけるアビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマール酸及びこれらの塩の合計量(共役樹脂酸成分Cの合計量)は、浸漬成形体において柔軟性を好適に維持しつつ優れた機械的強度(破断強度、破断伸び等)を得やすい観点から、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、ピマール酸、イソピマール酸及びこれらの塩の合計量(非共役樹脂酸成分Nの合計量)100質量部に対して下記の範囲であってよい。合計量は、20質量部以上、30質量部以上、40質量部以上、50質量部以上、60質量部以上、又は、70質量部以上であってよい。合計量は、150質量部以下、120質量部以下、100質量部以下、100質量部未満、90質量部以下、又は、80質量部以下であってよい。これらの観点から、合計量は、20~150質量部、50~100質量部、又は、60~80質量部であってよい。
【0054】
本実施形態に係るクロロプレン重合体組成物の製造方法では、重合工程後に、クロロプレン重合体と、pH調整剤、凍結安定剤、乳化安定剤、粘度調整剤、酸化防止剤、防腐剤等とを混合してよい。
【0055】
本実施形態に係るクロロプレン重合体組成物の製造方法では、重合工程後に、未反応の単量体を除去した後、濃縮処理により固形分濃度を調整してよい。本実施形態に係るクロロプレン重合体組成物の固形分濃度は、例えば45~65質量%であってよい。
【0056】
本実施形態に係るクロロプレン重合体組成物における共役樹脂酸成分Cの含有量(共役樹脂酸成分Cに該当する化合物の合計量)は、クロロプレン重合体組成物の固形分の全質量を基準として下記の範囲であってよい。共役樹脂酸成分Cの含有量は、優れた破断強度を得やすい観点から、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.4質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、1.5質量%以上、1.9質量%以上、2.0質量%以上、3.0質量%以上、4.0質量%以上、5.0質量%以上、6.0質量%以上、7.0質量%以上、又は、7.5質量%以上であってよい。共役樹脂酸成分Cの含有量は、優れた破断伸びを得やすい観点、及び、柔軟性を好適に維持しやすい観点から、20質量%以下、15質量%以下、12質量%以下、10質量%以下、9.0質量%以下、又は、8.5質量%以下、8.0質量%以下、7.0質量%以下、6.0質量%以下、5.0質量%以下、4.0質量%以下、3.0質量%以下、2.0質量%以下、1.9質量%以下、1.5質量%以下、1.0質量%以下、0.5質量%以下、又は、0.4質量%以下であってよい。これらの観点から、共役樹脂酸成分Cの含有量は、0.1~20質量%、0.4~10質量%、又は、1.0~9.0質量%であってよい。本実施形態に係るクロロプレン重合体組成物における共役樹脂酸成分Cの含有量は、クロロプレン重合体組成物の固形分のガスクロマトグラフィーにより算出可能であり、実施例に記載のガスクロマトグラフィーにより算出できる。
【0057】
本実施形態に係るクロロプレン重合体組成物における共役樹脂酸成分Cの含有量(共役樹脂酸成分Cに該当する化合物の合計量)は、クロロプレン重合体の全質量を基準として下記の範囲であってよい。共役樹脂酸成分Cの含有量は、優れた破断強度を得やすい観点から、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.4質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、1.5質量%以上、2.0質量%以上、3.0質量%以上、4.0質量%以上、5.0質量%以上、6.0質量%以上、7.0質量%以上、又は、8.0質量%以上であってよい。共役樹脂酸成分Cの含有量は、優れた破断伸びを得やすい観点、及び、柔軟性を好適に維持しやすい観点から、20質量%以下、15質量%以下、12質量%以下、10質量%以下、9.0質量%以下、8.5質量%以下、8.0質量%以下、7.0質量%以下、6.0質量%以下、5.0質量%以下、4.0質量%以下、3.0質量%以下、2.0質量%以下、1.5質量%以下、1.0質量%以下、0.5質量%以下、又は、0.4質量%以下であってよい。これらの観点から、共役樹脂酸成分Cの含有量は、0.1~20質量%、0.4~10質量%、又は、1.0~9.0質量%であってよい。
【0058】
本実施形態に係るクロロプレン重合体組成物の固形分の平均粒子径は、柔軟性を好適に維持しつつ優れた機械的強度(破断強度、破断伸び等)を有する浸漬成形体を得やすい観点から、下記の範囲であってよい。平均粒子径は、50nm以上、80nm以上、100nm以上、120nm以上、130nm以上、140nm以上、145nm以上、150nm以上、又は、160nm以上であってよい。平均粒子径は、200nm以下、180nm以下、160nm以下、150nm以下、145nm以下、140nm以下、又は、130nm以下であってよい。これらの観点から、平均粒子径は、50~200nm、100~160nm、又は、120~150nmであってよい。
【0059】
本実施形態に係るクロロプレン重合体組成物の粘度(25℃)は、下記の範囲であってよい。粘度は、柔軟性を好適に維持しつつ優れた機械的強度(破断強度、破断伸び等)を有する浸漬成形体を得やすい観点から、1000mPa・s以下、800mPa・s以下、500mPa・s以下、300mPa・s以下、200mPa・s以下、150mPa・s以下、140mPa・s以下、130mPa・s以下、125mPa・s以下、120mPa・s以下、100mPa・s以下、又は、90mPa・s以下であってよい。粘度は、50mPa・s以上、80mPa・s以上、90mPa・s以上、100mPa・s以上、120mPa・s以上、125mPa・s以上、130mPa・s以上、又は、140mPa・s以上であってよい。これらの観点から、粘度は、50~1000mPa・s、90~500mPa・s、又は、100~200mPa・sであってよい。粘度は、温度25℃、回転速度30rpmの条件で測定することができる。
【0060】
本実施形態に係るクロロプレン重合体組成物では、浸漬成形体において優れた破断強度を得る観点から、エタノール-トルエン共沸混合物を用いて当該クロロプレン重合体組成物の浸漬成形体から抽出される抽出物のガスクロマトグラフィーにおいて、当該抽出物が与えるピーク面積の合計(ガスクロマトグラフィーで検出されるピーク面積の合計)を基準として、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマール酸及びこれらの塩である共役樹脂酸成分のピーク面積の割合が0%を超え60%以下である。
【0061】
上述の共役樹脂酸成分のピーク面積の割合を得るための抽出物は、エタノール-トルエン共沸混合物(ETA溶液、体積比、エタノール:トルエン=70:30)を用いて抽出できる。上述の共役樹脂酸成分のピーク面積の割合を有する浸漬成形体は、下記の手順により得ることができる。
(1)水61質量部、硝酸カリウム四水和物36質量部、及び、炭酸カルシウム3質量部を混合することにより得られる凝固液(室温)に外径50mmの円筒を1秒間浸漬した後に円筒を取り出す。
(2)室温にて3分間乾燥させた後、70℃で1分間乾燥させる。
(3)クロロプレン重合体ラテックス組成物(室温、固形分濃度:30質量%)に円筒を2分間浸漬する。
(4)130℃で3分間乾燥させた後、45℃で1分間洗浄する。
(5)130℃で30分間加硫する。
【0062】
共役樹脂酸成分のピーク面積の割合は、優れた破断強度を得やすい観点から、0.1%以上、0.2%以上、0.4%以上、0.5%以上、1.0%以上、2.0%以上、3.0%以上、4.0%以上、4.6%以上、4.7%以上、4.8%以上、5.0%以上、8.0%以上、10%以上、15%以上、17%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、又は、40%以上であってよい。共役樹脂酸成分のピーク面積の割合は、優れた破断伸びを得やすい観点、及び、柔軟性を好適に維持しやすい観点から、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、17%以下、15%以下、10%以下、8.0%以下、5.0%以下、4.8%以下、4.7%以下、4.6%以下、4.0%以下、3.0%以下、2.0%以下、1.0%以下、0.5%以下、又は、0.4%以下であってよい。これらの観点から、共役樹脂酸成分のピーク面積の割合は、0.1~50%、0.4~40%、又は、4.0~20%であってよい。共役樹脂酸成分のピーク面積の割合は、クロロプレン重合体組成物を得る際に使用する共役樹脂酸成分Cの使用量によって調整できる。
【0063】
本実施形態に係るクロロプレン重合体組成物は、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤(酸化防止剤。例えばオゾン老化防止剤)、充填剤、可塑剤、顔料、着色剤、湿潤剤、消泡剤等の添加剤を含有してよい。本実施形態に係るクロロプレン重合体組成物は、クロロプレン重合体とこれらの添加剤とを含有する浸漬成形用の混合液であってよい。
【0064】
加硫剤としては、硫黄(分子状硫黄。例えば、S8等の環状硫黄);酸化亜鉛、酸化鉛、四酸化三鉛等の金属酸化物;酸化マグネシウムなどが挙げられる。加硫剤の含有量は、架橋が充分に進行しやすく、浸漬成形体の引張強度、モジュラス等を好適に得やすい観点、及び、浸漬成形体の好適な触感を得やすい観点から、クロロプレン重合体組成物から上述の添加剤を除いた混合物の固形分100質量部に対して0.5~10質量部であってよい。
【0065】
加硫促進剤としては、チウラム系、ジチオカルバミン酸塩系、チオウレア系、グアニジン系、キサントゲン酸塩系、チアゾール系等の加硫促進剤が挙げられる。
【0066】
老化防止剤としては、オクチル化ジフェニルアミン、p-(p-トルエン-スルホニルアミド)ジフェニルアミン、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレジアミン(DPPD)、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(IPPD)等のジフェニルアミン系化合物などが挙げられる。オゾン老化防止剤としては、N,N’-ジフェニル-p-フェニレジアミン(DPPD)、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(IPPD)等が挙げられる。老化防止剤としては、医療用手袋等のように外観(特に色調)又は衛生性を重視される場合には、ビンダードフェノール系酸化防止剤を用いることができる。老化防止剤の含有量は、老化防止効果を充分に得やすい観点から、クロロプレン重合体組成物から上述の添加剤を除いた混合物の固形分100質量部に対して0.1~5質量部であってよい。
【0067】
<加硫物、浸漬成形体これらの製造方法>
本実施形態に係るクロロプレン重合体組成物を加硫することにより加硫物を得てよい。本実施形態に係る加硫物は、本実施形態に係るクロロプレン重合体組成物の加硫物であり、本実施形態に係るクロロプレン重合体組成物を加硫して得られたものである。本実施形態に係る加硫物の製造方法は、本実施形態に係るクロロプレン重合体組成物を加硫して加硫物を得る工程を含む。本実施形態に係る加硫物は、フィルム状であってよい。
【0068】
本実施形態に係る浸漬成形体は、本実施形態に係るクロロプレン重合体組成物の浸漬成形体である。本実施形態に係る浸漬成形体は、本実施形態に係るクロロプレン重合体組成物を用いた浸漬成形体であり、本実施形態に係るクロロプレン重合体組成物を浸漬成形して得られたものである。本実施形態に係る浸漬成形体は、基材上に形成された浸漬成形膜であってよい。本実施形態に係る浸漬成形体は、柔軟性を好適に維持しつつ優れた破断強度及び破断伸びを有する。本実施形態に係る浸漬成形体は、本実施形態に係る加硫物の成形体であってよい。本実施形態に係る浸漬成形体は、手袋、風船、カテーテル又は長靴であってよい。
【0069】
浸漬成形体の厚さ(例えば最小の厚さ)は、0.01~0.50mm、0.10~0.50mm、0.10~0.30mm、又は、0.10~0.25mmであってよい。浸漬成形体の厚さは、成形型をクロロプレン重合体組成物に浸漬する時間、クロロプレン重合体組成物の固形分濃度等によって調整することができる。浸漬成形体の厚さを薄くしたい場合、浸漬時間を短縮し、又は、クロロプレン重合体組成物の固形分濃度を低くすればよい。
【0070】
本実施形態に係る浸漬成形体の製造方法では、本実施形態に係るクロロプレン重合体組成物の製造方法により得られたクロロプレン重合体組成物、又は、本実施形態に係るクロロプレン重合体組成物を浸漬成形する。本実施形態に係る浸漬成形体を製造する際の成形方法としては、公知の方法を使用することが可能であり、単純浸漬法、凝着浸漬法、感熱浸漬法、電着法等が挙げられる。製造しやすい観点、及び、一定の厚さの浸漬成形体が得られやすい観点から、凝着浸漬法を用いることができる。具体的には、凝集剤をコーティングした成形型をクロロプレン重合体組成物に浸漬した後にクロロプレン重合体組成物を凝固させる。そして、浸出により水溶性不純物を除去した後に乾燥させ、さらに、加硫することにより浸漬成形膜(ゴム被膜)を形成した後に浸漬成形膜を離型する。これにより、フィルム状の浸漬成形体を得ることができる。
【実施例0071】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0072】
<クロロプレン重合体ラテックスの調製>
(実施例A1)
内容積40Lの重合缶に、クロロプレン(単量体)90.5質量部、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン(単量体)9.5質量部、n-ドデシルメルカプタン0.032質量部、純水84.3質量部、不均化ロジン(荒川化学工業株式会社製、商品名:ロンヂスK-25)4.8質量部、水酸化カリウム0.75質量部、亜硫酸水素ナトリウム0.40質量部、及び、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王株式会社製、商品名:デモールN)0.40質量部を添加した。重合開始剤として過硫酸カリウム0.1質量部を添加した後、重合温度40℃にて窒素気流下で重合を行った。重合率90%となった時点で、重合禁止剤であるジエチルヒドロキシルアミン0.007質量部を加えて重合を停止させることによりラテックスA1を得た。
【0073】
このラテックスA1を減圧蒸留して未反応の単量体を除去した後、濃縮処理することにより、クロロプレン重合体を含有するラテックスA2(固形分濃度:60質量%)を得た。このラテックスA2の固形分のゲル含有率(トルエン不溶分)を測定したところ、88質量%であった。
【0074】
次に、ロジン(ハリマ化成株式会社製、商品名:ハートールR-WW)を水酸化カリウム水溶液に溶解させることによりロジン溶液(固形分濃度:12.5質量%)を得た。ラテックスA2の固形分100質量部に対してロジン酸のカリウム塩(共役樹脂酸成分を含むロジン)が1.0質量部である割合で、このロジン溶液とラテックスA2とを混合することによりクロロプレン重合体ラテックスを得た。
【0075】
(実施例A2~A4)
ラテックスA2と混合するロジン溶液の混合量を変更することにより、ラテックスA2の固形分100質量部に対して、表1に示す量のロジン酸のカリウム塩(共役樹脂酸成分を含むロジン)を混合したこと以外は実施例A1と同様に行うことによりクロロプレン重合体ラテックスを得た。
【0076】
(比較例A1)
実施例A1のラテックスA2にロジン溶液を混合することなく、ラテックスA2をクロロプレン重合体ラテックスとして用いた。
【0077】
(比較例A2)
不均化ロジン(荒川化学工業株式会社製、商品名:ロンヂスK-25、共役樹脂酸0%、非共役樹脂酸93.9%)を水酸化カリウム水溶液に溶解させることによりロジン溶液(固形分濃度:12.5質量%)を得た。このロジン溶液と実施例A1のラテックスA2とを混合することにより、ラテックスA2の固形分100質量部に対して不均化ロジンのカリウム塩5質量部を含有するクロロプレン重合体ラテックスを得た。
【0078】
(比較例A3)
不均化ロジン(荒川化学工業株式会社製、商品名:ロンヂスK-25、共役樹脂酸0%、非共役樹脂酸93.9%)を水酸化カリウム水溶液に溶解させることによりロジン溶液(固形分濃度:12.5質量%)を得た。このロジン溶液と実施例A1のラテックスA2とを混合することにより、ラテックスA2の固形分100質量部に対して不均化ロジンのカリウム塩20質量部を含有するクロロプレン重合体ラテックスを得た。
【0079】
(比較例A4)
ラテックスA2と混合するロジン溶液の混合量を変更することにより、ラテックスA2の固形分100質量部に対してロジン酸のカリウム塩(共役樹脂酸成分を含むロジン)25質量部を混合したこと以外は実施例A1と同様に行うことによりクロロプレン重合体ラテックスを得た。
【0080】
(実施例B1)
内容積40Lの重合缶に、クロロプレン(単量体)90.5質量部、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン(単量体)9.5質量部、n-ドデシルメルカプタン0.032質量部、純水84.3質量部、不均化ロジン(荒川化学工業株式会社製、商品名:ロンヂスK-25)4.8質量部、水酸化カリウム0.75質量部、亜硫酸水素ナトリウム0.40質量部、及び、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王株式会社製、商品名:デモールN)0.40質量部を添加した。重合開始剤として過硫酸カリウム0.1質量部を添加した後、重合温度40℃にて窒素気流下で重合を行った。重合率20%となった時点で、ロジン(ハリマ化成株式会社製、商品名:ハートールR-WW)を水酸化カリウム水溶液に溶解させることにより得られたロジン溶液(固形分濃度:12.5質量%)によってロジン酸のカリウム塩(共役樹脂酸成分を含むロジン)4.5質量部を添加した。その後、重合を継続させ、重合率90%となった時点で、重合禁止剤であるジエチルヒドロキシルアミン0.007質量部を加えて重合を停止させることによりラテックスBを得た。上述のロジン酸のカリウム塩(共役樹脂酸成分を含むロジン)の添加量は、ラテックスBの固形分100質量部に対して5.0質量部であった。このラテックスBを減圧蒸留して未反応の単量体を除去した後、濃縮処理することによりクロロプレン重合体ラテックスを得た。
【0081】
(実施例B2)
重合率20%に代えて重合率85%となった時点で、ロジン溶液によってロジン酸のカリウム塩(共役樹脂酸成分を含むロジン)を添加したこと以外は実施例B1と同様に行うことによりクロロプレン重合体ラテックスを得た。
【0082】
(比較例B1)
重合率20%に代えて重合率15%となった時点で、ロジン溶液によりロジン酸のカリウム塩(共役樹脂酸成分を含むロジン)を添加したこと以外は実施例B1と同様に行うことによりクロロプレン重合体ラテックスを得た。
【0083】
<ロジン中の樹脂酸成分の含有量>
上述のロジン(ハリマ化成株式会社製、商品名:ハートールR-WW)中の共役樹脂酸成分及び非共役樹脂酸成分の含有量として、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマール酸及びこれらの塩の合計量(共役樹脂酸成分Cの含有量)、及び、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、ピマール酸、イソピマール酸及びこれらの塩の合計量(非共役樹脂酸成分Nの含有量)を下記手順で測定したところ、ロジンの全質量を基準として、共役樹脂酸成分Cの含有量は38.7質量%であり、非共役樹脂酸成分Nの含有量は48.4質量%であった。
【0084】
まず、ETA溶液(体積比、エタノール:トルエン=70:30)10mLにロジン0.30gを溶解させた後に塩酸処理を施すことにより溶液(ロジン:3質量%)を得た。ホールピペットで採取されたこの溶液5mLを10mLメスフラスコに入れた後にETA溶液で希釈することにより溶液(ロジン:1.5質量%)を得た。この溶液を用いて下記条件でガスクロマトグラフィーを行った。ガスクロマトグラフィーの測定結果より、アビエチン酸成分(アビエチン酸及びその塩。他の樹脂酸成分についても同様)、ネオアビエチン酸成分、パラストリン酸成分、及び、レボピマール酸成分のそれぞれのピーク面積を求めると共に、デヒドロアビエチン酸成分、ピマール酸成分、イソピマール酸成分、及び、ジヒドロアビエチン酸成分のそれぞれのピーク面積を求めた。共役樹脂酸成分のピーク面積として、アビエチン酸成分、ネオアビエチン酸成分、パラストリン酸成分及びレボピマール酸成分のピーク面積の合計を算出した後、ガスクロマトグラフィーで検出されるピーク面積の合計を基準とした共役樹脂酸成分のピーク面積の割合を共役樹脂酸成分Cの含有量として算出した。非共役樹脂酸成分のピーク面積として、ネオアビエチン酸成分、パラストリン酸成分、及び、レボピマール酸成分のピーク面積の合計を算出した後、ガスクロマトグラフィーで検出されるピーク面積の合計を基準とした非共役樹脂酸成分のピーク面積の割合を非共役樹脂酸成分Nの含有量として算出した。
【0085】
[ガスクロマトグラフィーの条件]
・ガスクロマトグラフ質量分析装置:商品名「JEOL Jms-Q1050GC」、日本電子株式会社製
・使用カラム:FFAP 0.32mmφ×25m(膜厚0.3μm)
・カラム温度:200℃→250℃
・昇温速度:10℃/min
・注入口温度:270℃
・注入量:1μL
・インターフェイス温度:270℃
・イオン源温度:270℃
・イオン化電流:50μA
・イオン化電圧:70eV
・検出器:FID
・検出器電圧:-1000V
・検出器電圧:EI法
・検出器温度:270℃
【0086】
<クロロプレン重合体ラテックス中の共役樹脂酸成分の含有量>
上述のクロロプレン重合体ラテックスを凍結乾燥させて得られる固形分3gを2mm角に裁断することにより試験片を得た。コンデンサー付属のナス型フラスコにこの試験片を入れた後、ETA溶液(体積比、エタノール:トルエン=70:30)で抽出した後に塩酸処理を施すことにより得られた抽出物を用いて、上述のロジンにおける共役樹脂酸成分及び非共役樹脂酸成分の含有量の分析と同様の上述の条件でガスクロマトグラフィーを行い、クロロプレン重合体ラテックス中の共役樹脂酸成分の含有量(アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマール酸及びこれらの塩の合計量)を算出した。共役樹脂酸成分の含有量として、クロロプレン重合体ラテックスの固形分の全質量を基準とした含有量、及び、クロロプレン重合体の全質量を基準とした含有量を算出した。クロロプレン重合体ラテックスの固形分におけるクロロプレン重合体の割合は、単量体及び不均化ロジンの使用量、重合率等に基づき算出可能であり、クロロプレン重合体の全質量を基準とした共役樹脂酸成分の含有量は、クロロプレン重合体ラテックスの固形分の全質量を基準とした共役樹脂酸成分の含有量の1.05倍の含有量である。結果を表1及び表2に示す。
【0087】
<クロロプレン重合体ラテックス中の固形分の平均粒子径>
光散乱回折粒径測定装置(大塚電子株式会社製、型式:ELSZ-2)を用いて、クロロプレン重合体ラテックス中の固形分における散乱強度基準の粒子径分布を測定した。散乱強度基準の粒子径分布の測定結果に基づき平均粒子径を求めた。結果を表1及び表2に示す。
【0088】
<クロロプレン重合体ラテックスの粘度>
回転式粘度測定装置(東機産業株式会社製、型式:TV-25)を用いて、クロロプレン重合体ラテックスの粘度を温度25℃、回転速度30rpmの条件で測定した。結果を表1及び表2に示す。
【0089】
<クロロプレン重合体ラテックス組成物の作製>
陶器製ボールミルを用いて、硫黄1質量部、酸化亜鉛(堺化学工業株式会社製、商品名:酸化亜鉛2種)2質量部、加硫促進剤(大内新興化学工業株式会社製、商品名:ノクセラーBZ)2質量部、老化防止剤(OMNOVA SOLUTIONS社製、商品名:Wingstay-L)2質量部、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王株式会社製、商品名:デモールN)0.1質量部、及び、水10.7質量部を20℃で16時間混合することにより水分散液を調製した。上述のクロロプレン重合体ラテックス(固形分100質量部)にこの水分散液(固形分7.1質量部)を混合した後、水を加えて全体の固形分濃度を30質量%に調整することによりクロロプレン重合体ラテックス組成物を作製した。
【0090】
<評価用フィルムの作製>
水61質量部、硝酸カリウム四水和物36質量部、及び、炭酸カルシウム3質量部を混合することにより凝固液を得た。この凝固液(室温)に外径50mmの陶器製の円筒(材質:セラミックス、シンコー株式会社製)を1秒間浸漬した後に円筒を取り出した。室温にて3分間乾燥させた後、70℃で1分間乾燥させた。その後、上述のクロロプレン重合体ラテックス組成物(室温)に円筒を2分間浸漬した。続いて、130℃で3分間乾燥させた後、45℃の容量11Lの水槽で1分間洗浄した。その後、130℃で30分間加硫することにより、円筒の外周面等に評価用フィルム(浸漬成形体、加硫フィルム)を作製した。評価用フィルムを円筒の外周面から剥離して以下の評価を行った。但し、比較例B1では、クロロプレン重合体ラテックス中の固形分の粒径肥大が生じ、粘度が過剰に上昇したことから評価用フィルムを作製できなかった。
【0091】
<評価用フィルムの厚さ>
試験片測厚器(高分子計器株式会社製、商品名:ASKER SDA-12)を用いて評価用フィルムの中央部の3か所の厚さ(フィルム厚)を測定し、最小の厚さを評価用フィルムの厚さとして得た。結果を表1及び表2に示す。
【0092】
<評価用フィルム中の共役樹脂酸成分のピーク面積の割合>
評価用フィルムをETA溶液(体積比、エタノール:トルエン=70:30)に投入し、90℃、1時間還流抽出することにより抽出液を得た。ETA溶液を揮発し、ロジン成分を抽出した後、塩酸を加えることにより得られた酸性溶液を揮発させた。その後、メタノールを添加することにより20mLにメスアップした抽出液を用いて、上述のロジン中の樹脂酸成分の含有量と同様の条件でガスクロマトグラフィーを行った。共役樹脂酸成分のピーク面積として、アビエチン酸成分、ネオアビエチン酸成分、パラストリン酸成分及びレボピマール酸成分のピーク面積の合計を算出した後、ガスクロマトグラフィーで検出されるピーク面積の合計を基準とした共役樹脂酸成分のピーク面積の割合を算出した。結果を表1及び表2に示す。
【0093】
<評価用フィルムの物性>
JIS K 6251に準拠して評価用フィルムの25%伸長時モジュラス、300%伸長時モジュラス、破断強度及び破断伸びを測定した。結果を表1及び表2に示す。破断強度が20.0MPa以上である場合を良好であると判断した。
【0094】
【0095】
【0096】
本発明によれば、下記の実施形態が提供される。
[1]クロロプレン重合体を含有するクロロプレン重合体組成物の製造方法であって、クロロプレンを含む単量体を重合率20%以上で重合することにより、クロロプレン重合体を含有する重合体組成物を得る重合工程、及び、前記重合体組成物と、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマール酸及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の共役樹脂酸成分を含むロジンと、を混合する混合工程を備え、前記混合工程における前記ロジンの混合量が前記重合体組成物の固形分100質量部に対して0質量部を超え23質量部以下である、クロロプレン重合体組成物の製造方法。
[2]クロロプレン重合体を含有するクロロプレン重合体組成物の製造方法であって、クロロプレンを含む単量体を重合率20%以上で重合することにより、重合体を含有する第1の重合体組成物を得る第1の重合工程、前記第1の重合体組成物と、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマール酸及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の共役樹脂酸成分を含むロジンと、を混合する混合工程、並びに、前記重合体及び前記共役樹脂酸成分の存在下において、クロロプレンを含む単量体を重合することにより、クロロプレン重合体を含有する第2の重合体組成物を得る第2の重合工程を備える、クロロプレン重合体組成物の製造方法。
[3]前記混合工程における前記ロジンの混合量が前記第2の重合体組成物の固形分100質量部に対して0質量部を超え23質量部以下である、[2]に記載のクロロプレン重合体組成物の製造方法。
[4]前記ロジンにおけるアビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマール酸及びこれらの塩の合計量が、前記ロジンの全質量を基準として30質量%以上である、[1]~[3]のいずれか一つに記載のクロロプレン重合体組成物の製造方法。
[5]前記単量体が2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンを更に含む、[1]~[4]のいずれか一つに記載のクロロプレン重合体組成物の製造方法。
[6]クロロプレン重合体を含有するクロロプレン重合体組成物であって、エタノール-トルエン共沸混合物を用いて当該クロロプレン重合体組成物の浸漬成形体から抽出される抽出物のガスクロマトグラフィーにおいて、当該抽出物が与えるピーク面積の合計を基準として、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマール酸及びこれらの塩である共役樹脂酸成分のピーク面積の割合が0%を超え60%以下である、クロロプレン重合体組成物。
[7]前記共役樹脂酸成分の含有量が、前記クロロプレン重合体の全質量を基準として0.4~10質量%である、[6]に記載のクロロプレン重合体組成物。
[8][6]又は[7]に記載のクロロプレン重合体組成物の浸漬成形体。
[9]手袋、風船、カテーテル又は長靴である、[8]に記載の浸漬成形体。
[10][1]~[5]のいずれか一つに記載のクロロプレン重合体組成物の製造方法により得られたクロロプレン重合体組成物、又は、[6]又は[7]に記載のクロロプレン重合体組成物を浸漬成形する、浸漬成形体の製造方法。