(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022977
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】眼科装置、その制御方法、プログラム、及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20250206BHJP
【FI】
A61B3/10 100
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024205181
(22)【出願日】2024-11-26
(62)【分割の表示】P 2020177197の分割
【原出願日】2020-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】小野 佑介
(57)【要約】
【課題】光コヒーレンストモグラフィ(OCT)を用いた前眼部解析の改善を図る。
【解決手段】実施形態の眼科装置の固視標提示部は、被検者に固視標を提示する。OCT部は、被検眼の前眼部にOCTスキャンを適用して画像を構築する。傾斜情報生成部は、この画像に描出された前眼部の傾斜状態を示す傾斜情報を生成する。制御部は、この傾斜情報に基づき固視標提示部を制御する。更に、OCT部は、互いに向きが異なる複数のBスキャンを含むラジアルスキャン及び3次元領域に対する3次元スキャンのいずれかを前眼部に適用して画像を構築する。傾斜情報生成部は、この画像を解析して被検眼の隅角の3つ以上の特徴点を特定し、これら3つ以上の特徴点に基づいて傾斜情報の生成を行う。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者に固視標を提示する固視標提示部と、
被検眼の前眼部に光コヒーレンストモグラフィ(OCT)スキャンを適用して画像を構築するOCT部と、
前記画像に描出された前記前眼部の傾斜状態を示す傾斜情報を生成する傾斜情報生成部と、
前記傾斜情報に基づき前記固視標提示部を制御する制御部と
を含み、
前記OCT部は、互いに向きが異なる複数のBスキャンを含むラジアルスキャン及び3次元領域に対する3次元スキャンのいずれかを前記前眼部に適用して前記画像を構築し、
前記傾斜情報生成部は、
前記画像を解析して前記被検眼の隅角の3つ以上の特徴点を特定し、
前記3つ以上の特徴点に基づいて前記傾斜情報の生成を行う、
眼科装置。
【請求項2】
前記傾斜情報生成部は、
前記3つ以上の特徴点として、前記隅角における複数の対向点ペアを特定し、
前記複数の対向点ペアのそれぞれについて、当該対向点ペアを結ぶ直線の傾きを求めることによって、前記複数の対向点ペアに対応する複数の傾きを求め、
前記複数の傾きに統計処理を適用して前記傾斜情報を生成する、
請求項1の眼科装置。
【請求項3】
前記傾斜情報生成部は、前記複数の傾きのうちの最大値に基づいて前記傾斜情報を生成する、
請求項2の眼科装置。
【請求項4】
前記傾斜情報生成部は、
前記3つ以上の特徴点に基づき平面を決定し、
前記平面の傾きを求め、
前記平面の傾きに基づいて前記傾斜情報を生成する、
請求項1の眼科装置。
【請求項5】
被検者に固視標を提示する固視標提示部と、
被検眼の前眼部に光コヒーレンストモグラフィ(OCT)スキャンを適用して画像を構築するOCT部と、
前記画像に描出された前記前眼部の傾斜状態を示す傾斜情報を生成する傾斜情報生成部と、
前記傾斜情報に基づき前記固視標提示部を制御する制御部と
を含み、
前記OCT部は、前記前眼部にBスキャンを適用して前記画像を構築し、
前記傾斜情報生成部は、
前記画像を解析して前記被検眼の隅角における一対の対向点を特定し、
前記一対の対向点を結ぶ直線の傾きを求め、
前記傾きに基づいて前記傾斜情報の生成を行う、
眼科装置。
【請求項6】
前記傾斜情報生成部は、
前記OCT部により構築された前記画像にセグメンテーションを適用して角膜後面画像及び虹彩前面画像を特定し、
前記角膜後面画像と前記虹彩前面画像とが互いに交わる箇所を特定して前記隅角に設定する、
請求項1~5のいずれかの眼科装置。
【請求項7】
被検者に固視標を提示する固視標提示部と、被検眼の前眼部に光コヒーレンストモグラフィ(OCT)スキャンを適用するスキャン部と、少なくとも1つのプロセッサとを含む眼科装置を制御する方法であって、
前記少なくとも1つのプロセッサに、
前記スキャン部により収集されたデータに基づき画像を構築する画像構築ステップと、
前記画像に描出された前記前眼部の傾斜状態を示す傾斜情報を生成する傾斜情報生成ステップと、
前記傾斜情報に基づき前記固視標提示部を制御する制御ステップと
を実行させ、
前記画像構築ステップは、前記スキャン部が互いに向きが異なる複数のBスキャンを含むラジアルスキャン及び3次元領域に対する3次元スキャンのいずれかを前記前眼部に適用して収集されたデータに基づき前記画像を構築し、
前記傾斜情報生成ステップは、
前記画像を解析して前記被検眼の隅角の3つ以上の特徴点を特定し、
前記3つ以上の特徴点に基づいて前記傾斜情報の生成を行う、
眼科装置の制御方法。
【請求項8】
被検者に固視標を提示する固視標提示部と、被検眼の前眼部に光コヒーレンストモグラフィ(OCT)スキャンを適用するスキャン部と、少なくとも1つのプロセッサとを含む眼科装置を制御する方法であって、
前記少なくとも1つのプロセッサに、
前記スキャン部により収集されたデータに基づき画像を構築する画像構築ステップと、
前記画像に描出された前記前眼部の傾斜状態を示す傾斜情報を生成する傾斜情報生成ステップと、
前記傾斜情報に基づき前記固視標提示部を制御する制御ステップと
を実行させ、
前記画像構築ステップは、前記スキャン部が前記前眼部にBスキャンを適用して収集されたデータに基づき前記画像を構築し、
前記傾斜情報生成ステップは、
前記画像を解析して前記被検眼の隅角における一対の対向点を特定し、
前記一対の対向点を結ぶ直線の傾きを求め、
前記傾きに基づいて前記傾斜情報の生成を行う、
眼科装置の制御方法。
【請求項9】
請求項7又は8の方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項10】
請求項9のプログラムが記録されたコンピュータ可読な非一時的記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、眼科装置、その制御方法、プログラム、及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
光コヒーレンストモグラフィ(OCT)を用いた前眼部解析技術が知られており、その一つとして、緑内障(特に、閉塞隅角緑内障)の診断のために実施される隅角解析がある(例えば、特許文献1~4を参照)。
【0003】
隅角解析では、前眼部のOCT画像に基づいて、角膜と虹彩との間に位置する隅角(前房隅角)と呼ばれる部位に関するパラメータを求める演算が実行される。OCT画像に描出されている前眼部の像が傾いていると、隅角パラメータを正確に求められないことがある。特に、スキャン範囲が広い場合、前眼部の像の傾きや歪みが大きくなるため、隅角パラメータの正確度への影響が大きくなる。
【0004】
例えば、ATA(angle-to-angle)スキャンでは、角膜頂点若しくは瞳孔中心又はその近傍位置と略円形に分布する隅角上の2点とを通過する断面にBスキャン(ラインスキャン)が適用される。換言すると、ATAスキャンでは、略円形に分布する隅角上の一対の対向点を通過する断面にBスキャンが適用される。ATAスキャンで得られたOCT画像中の前眼部の像が傾いていると、前眼部の像に歪みが生じ、隅角間距離(angle-to-angle distance)や隅角角度を正確に求めることができない。
【0005】
なお、前眼部の像の傾きが影響するのは隅角解析に限定されない。一般に、形態や形状の評価を行う前眼部解析においてその影響は少なからずある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-147611号公報
【特許文献2】特開2013-226383号公報
【特許文献3】特表2014-500096号公報
【特許文献4】特開2015-43814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明の一つの目的は、OCT前眼部解析の改善を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
幾つかの例示的な態様に係る眼科装置は、被検者に固視標を提示する固視標提示部と、被検眼の前眼部に光コヒーレンストモグラフィ(OCT)スキャンを適用して画像を構築するOCT部と、前記画像に描出された前記前眼部の傾斜状態を示す傾斜情報を生成する傾斜情報生成部と、前記傾斜情報に基づき前記固視標提示部を制御する制御部とを含む。
【0009】
幾つかの例示的な態様に係る眼科装置において、前記制御部は、前記固視標を移動するように前記固視標提示部の制御を行うように構成されていてよい。
【0010】
幾つかの例示的な態様に係る眼科装置において、前記制御部は、画像フレームにおける前眼部の傾斜状態を示す傾斜パラメータと固視標の移動パラメータとの間の対応を示す予め作成された対応情報を参照して前記固視標提示部の制御を行うように構成されていてよい。
【0011】
幾つかの例示的な態様に係る眼科装置において、前記傾斜情報は、前記OCT部により構築された前記画像における所定の第1基準方向に対する傾斜角度を含んでいてよく、前記傾斜パラメータは、前記画像フレームにおける所定の第2基準方向に対する傾斜角度を含んでいてよく、前記移動パラメータは、移動量を含んでいてよい。
【0012】
幾つかの例示的な態様に係る眼科装置において、前記傾斜パラメータに含まれる前記傾斜角度は、前記第2基準方向に対する所定の単位角度を含んでいてよく、前記移動パラメータに含まれる前記移動量は、前記単位角度に対応する単位移動量を含んでいてよい。
【0013】
幾つかの例示的な態様に係る眼科装置において、前記対応情報は、前記第2基準方向に対する複数の異なる傾斜角度と複数の異なる移動量との間の対応を示す情報を含んでいてよい。
【0014】
幾つかの例示的な態様に係る眼科装置において、前記傾斜情報は、前記第1基準方向に対する傾斜方向を更に含んでいてよく、前記傾斜パラメータは、前記第2基準方向に対する傾斜方向を更に含んでいてよく、前記移動パラメータは、移動方向を更に含んでいてよい。
【0015】
幾つかの例示的な態様に係る眼科装置において、前記制御部は、前記固視標を移動するための前記固視標提示部の制御と、前記前眼部にOCTスキャンを繰り返し適用しつつ逐次に画像を構築するための前記OCT部の制御と、前記OCT部により逐次に構築される前記画像から逐次に前記傾斜情報を生成するための前記傾斜情報生成部の制御とを並行して実行し、所定の条件を満足する前記傾斜情報が生成されたことに対応して前記固視標の移動を停止するための前記固視標提示部の制御を行うように構成されていてよい。
【0016】
幾つかの例示的な態様に係る眼科装置において、前記傾斜情報は、前記画像における所定の基準方向に対する傾斜角度を含んでいてよく、前記条件は、前記傾斜角度に関する条件であってよい。
【0017】
幾つかの例示的な態様に係る眼科装置において、前記条件は、前記傾斜角度が所定の閾値よりも小さいことであってよい。
【0018】
幾つかの例示的な態様に係る眼科装置において、前記制御部は、前記OCT部により逐次に構築される前記画像から前記傾斜情報生成部により逐次に生成される前記傾斜情報のいずれかに基づき前記固視標の移動方向を決定して前記固視標提示部の制御を行うように構成されていてよい。
【0019】
幾つかの例示的な態様に係る眼科装置は、被検者に固視標を提示する固視標提示部と、被検眼の前眼部に光コヒーレンストモグラフィ(OCT)スキャンを適用して画像を構築するOCT部と、前記画像に描出された前記前眼部の傾斜状態を示す傾斜情報を生成する傾斜情報生成部と、操作を受けて信号を生成する操作部と、前記操作部からの前記信号に基づいて前記固視標提示部を制御し、前記傾斜情報に基づく情報を表示手段に表示させる制御部とを含む。
【0020】
幾つかの例示的な態様に係る眼科装置において、前記傾斜情報に基づく前記情報は、前記画像における所定の基準方向に対する傾斜角度を示す情報、前記傾斜角度に対応する前記固視標の移動量を示す情報、前記画像における前記基準方向に対する傾斜方向を示す情報、及び、前記傾斜方向に対応する前記固視標の移動方向を示す情報のうちの少なくとも1つを含んでいてよい。
【0021】
幾つかの例示的な態様に係る眼科装置において、前記傾斜情報生成部は、前記OCT部により構築された前記画像を解析して1つ以上の特徴点を特定し、前記1つ以上の特徴点に基づいて前記傾斜情報の生成を行うように構成されていてよい。
【0022】
幾つかの例示的な態様に係る眼科装置において、前記1つ以上の特徴点は、隅角、水晶体前面頂点、角膜頂点、及び虹彩前面における点のうちの少なくとも1つを含んでいてよい。
【0023】
幾つかの例示的な態様に係る眼科装置において、前記OCT部は、前記被検眼の隅角の少なくとも2点を含む領域にOCTスキャンを適用して前記画像を構築するように構成されていてよく、前記傾斜情報生成部は、前記少なくとも2点を前記特徴点として特定し、前記少なくとも2点に基づいて前記傾斜情報の生成を行うように構成されていてよい。
【0024】
幾つかの例示的な態様に係る眼科装置において、前記OCT部は、前記被検眼の水晶体前面頂点を含む領域にOCTスキャンを適用して前記画像を構築するように構成されていてよく、前記傾斜情報生成部は、前記水晶体前面頂点を前記特徴点として特定し、前記水晶体前面頂点における水晶体前面の傾きを求め、前記傾きに基づいて前記傾斜情報の生成を行うように構成されていてよい。
【0025】
幾つかの例示的な態様に係る眼科装置において、前記OCT部は、前記被検眼の角膜頂点を含む領域にOCTスキャンを適用して前記画像を構築するように構成されていてよく、前記傾斜情報生成部は、前記角膜頂点を前記特徴点として特定し、前記角膜頂点における角膜前面の傾きを求め、前記傾きに基づいて前記傾斜情報の生成を行うように構成されていてよい。
【0026】
幾つかの例示的な態様に係る眼科装置において、前記OCT部は、前記被検眼の虹彩前面の少なくとも一部を含む領域にOCTスキャンを適用して前記画像を構築するように構成されていてよく、前記傾斜情報生成部は、前記虹彩前面の少なくとも2点を前記特徴点として特定し、前記少なくとも2点に基づいて前記傾斜情報の生成を行うように構成されていてよい。
【0027】
幾つかの例示的な態様は、被検者に固視標を提示する固視標提示部と、被検眼の前眼部に光コヒーレンストモグラフィ(OCT)スキャンを適用するスキャン部と、少なくとも1つのプロセッサとを含む眼科装置を制御する方法であって、前記少なくとも1つのプロセッサに、前記スキャン部により収集されたデータに基づき画像を構築するステップと、前記画像に描出された前記前眼部の傾斜状態を示す傾斜情報を生成するステップと、前記傾斜情報に基づき前記固視標提示部を制御するステップとを実行させる。
【0028】
幾つかの例示的な態様は、被検者に固視標を提示する固視標提示部と、被検眼の前眼部に光コヒーレンストモグラフィ(OCT)スキャンを適用するスキャン部と、操作を受けて信号を生成する操作部と、少なくとも1つのプロセッサとを含む眼科装置を制御する方法であって、前記少なくとも1つのプロセッサに、前記スキャン部により収集されたデータに基づき画像を構築するステップと、前記画像に描出された前記前眼部の傾斜状態を示す傾斜情報を生成するステップと、前記傾斜情報に基づく情報を表示手段に表示させるステップと、前記操作部からの前記信号に基づいて前記固視標提示部を制御するステップとを実行させる。
【0029】
幾つかの例示的な態様は、いずれかの例示的な態様の方法をコンピュータに実行させるプログラムである。
【0030】
幾つかの例示的な態様は、いずれかの例示的な態様のプログラムを記録したコンピュータ可読な非一時的記録媒体である。
【発明の効果】
【0031】
例示的な態様によれば、OCT前眼部解析の改善を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】例示的な態様に係る眼科装置の構成の一例を表す概略図である。
【
図2】例示的な態様に係る眼科装置の構成の一例を表す概略図である。
【
図3】例示的な態様に係る眼科装置の構成の一例を表す概略図である。
【
図4】例示的な態様に係る眼科装置の構成の一例を表す概略図である。
【
図5A】例示的な態様に係る眼科装置が実行する処理の一例を説明するための概略図である。
【
図5B】例示的な態様に係る眼科装置が実行する処理の一例を説明するための概略図である。
【
図6A】例示的な態様に係る眼科装置が実行する処理の一例を説明するための概略図である。
【
図6B】例示的な態様に係る眼科装置が実行する処理の一例を説明するための概略図である。
【
図7A】例示的な態様に係る眼科装置が実行する処理の一例を説明するための概略図である。
【
図7B】例示的な態様に係る眼科装置が実行する処理の一例を説明するための概略図である。
【
図8】例示的な態様に係る眼科装置の動作の一例を表すフローチャートである。
【
図9】例示的な態様に係る眼科装置の動作の一例を表すフローチャートである。
【
図10】例示的な態様に係る眼科装置の動作の一例を表すフローチャートである。
【
図11】例示的な態様に係る眼科装置の効果を説明するための概略図である。
【
図12】例示的な態様に係る眼科装置の構成の一例を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
幾つかの例示的な態様に係る眼科装置、その制御方法、プログラム、及び記録媒体について図面を参照しながら詳細に説明する。本明細書にて引用された文献に開示された任意の事項や、他の任意の公知技術に関する事項を、例示的な態様に組み合わせることが可能である。なお、特に言及しない限り、「画像データ」とそれに基づく「画像」とを区別せず、また、被検眼の「部位」とその「画像」とを区別しない。
【0034】
幾つかの例示的な態様に係る眼科装置は、フーリエドメインOCT(例えば、スウェプトソースOCT)を利用して生体眼の前眼部を計測することが可能である。例示的な態様に適用可能なOCTのタイプは、スウェプトソースOCTに限定されず、例えばスペクトラルドメインOCT又はタイムドメインOCTであってもよい。
【0035】
幾つかの例示的な態様に係る眼科装置は、OCT以外のモダリティにより取得された画像を処理可能であってよい。例えば、幾つかの例示的な態様は、眼底カメラ、走査型レーザー検眼鏡(SLO)、スリットランプ顕微鏡、及び眼科手術用顕微鏡のいずれかにより取得された画像を処理可能であってよい。幾つかの例示的な態様に係る眼科装置は、眼底カメラ、SLO、スリットランプ顕微鏡、及び眼科手術用顕微鏡のいずれかを含んでいてよい。
【0036】
例示的な態様に係る眼科装置は、OCTスキャンにより生体眼の前眼部から収集されたデータに基づき構築された画像(前眼部画像)を取得し、これを処理するように構成されている。
【0037】
例示的な態様の眼科装置は、生体眼の前眼部にOCTスキャンを適用してデータを収集する構成と、収集されたデータに基づいて前眼部画像を構築する構成とを備えている。また、幾つかの例示的な態様の眼科装置は、生体眼の前眼部画像を外部から受け付ける機能を備えていてよい。例えば、OCT装置を用いて生体眼の前眼部画像が取得され、医用画像管理システム(例えば、Picture Archiving and Communication Systems;PACS)に保存される。幾つかの例示的な態様の眼科装置は、医用画像管理システムにアクセスして前眼部画像の提供を受けるように構成されている。
【0038】
以下の開示では、このような眼科装置に加え、眼科装置の制御方法、この制御方法をコンピュータに実行させるプログラム、及び、このプログラムが記録された記録媒体について説明する。
【0039】
本明細書に開示された要素の機能の少なくとも一部は、回路構成(circuitry)又は処理回路構成(processing circuitry)を用いて実装される。回路構成又は処理回路構成は、開示された機能の少なくとも一部を実行するように構成及び/又はプログラムされた、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、従来の回路構成、及びそれらの任意の組み合わせのいずれかを含む。プロセッサは、トランジスタ及び/又は他の回路構成を含む、処理回路構成又は回路構成とみなされる。本開示において、回路構成、ユニット、手段、又はこれらに類する用語は、開示された機能の少なくとも一部を実行するハードウェア、又は、開示された機能の少なくとも一部を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されたハードウェアであってよく、或いは、記載された機能の少なくとも一部を実行するようにプログラム及び/又は構成された既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが或るタイプの回路構成とみなされ得るプロセッサである場合、回路構成、ユニット、手段、又はこれらに類する用語は、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせであり、このソフトウェアはハードウェア及び/又はプロセッサを構成するために使用される。
【0040】
<眼科装置の構成>
図1に示す例示的な態様の眼科装置1は、OCT装置と眼底カメラとを組み合わせた複合機であり、被検眼Eの前眼部EaにOCTを適用する機能と前眼部Eaを撮影する機能とを備えている。眼科装置1は、眼底カメラユニット2、OCTユニット100、及び演算制御ユニット200を含む。眼底カメラユニット2には、被検眼の正面画像を取得するための各種の要素(例えば、光学系、機構など)が設けられている。OCTユニット100には、OCTスキャンを実行するための各種の要素(例えば、光学系、機構など)の一部が設けられている。OCTスキャンを実行するための他の要素は、眼底カメラユニット2に設けられている。演算制御ユニット200は、各種の処理(演算、制御等)を実行するように構成された1以上のプロセッサと1以上の記憶装置とを含む。これらに加え、眼科装置1は、被検者の顔を支持するための部材(顎受け、額当て等)や、OCTスキャンが適用される部位を切り替えるためのアタッチメント等の任意の要素やユニットを含む。
【0041】
OCTスキャン適用部位を切り替えるためのアタッチメントの例を説明する。このアタッチメントは、レンズ群(レンズユニット)を含む。本例の眼科装置1に設けられた前眼部OCT用アタッチメント400は、OCTスキャン適用部位を後眼部(眼底Ef)と前眼部Eaとの間で切り替えるためのレンズ群を含む。前眼部OCT用アタッチメント400は、例えば、特開2015-160103号公報に開示された光学ユニットと同様に構成されていてよい。
【0042】
図1に示すように、前眼部OCT用アタッチメント400は、対物レンズ22と被検眼Eとの間に配置可能である。前眼部OCT用アタッチメント400が光路に配置されているとき、眼科装置1は前眼部EaにOCTスキャンを適用することが可能である。他方、前眼部OCT用アタッチメント400が光路から退避されているとき、眼科装置1は後眼部にOCTスキャンを適用することが可能である。前眼部OCT用アタッチメント400の移動は、手動又は自動で行われる。
【0043】
幾つかの例示的な態様の眼科装置は、アタッチメントが光路に配置されているときに後眼部にOCTスキャンを適用可能であり、且つ、アタッチメントが光路から退避されているときに前眼部にOCTスキャンを適用可能であってよい。また、アタッチメントにより切り替えられるOCTスキャン適用部位は後眼部及び前眼部の組み合わせに限定されず、眼の任意の部位の組み合わせであってよい。なお、OCTスキャン適用部位を切り替えるための構成はこのようなアタッチメント(レンズ群、レンズユニット、光学ユニット)に限定されず、例えば、光路に沿って移動可能な1以上のレンズを含む構成であってもよい。
【0044】
<眼底カメラユニット2>
眼底カメラユニット2には、被検眼E(前眼部Ea、眼底Efなど)を撮影してデジタル写真を取得するための要素(光学系、機構など)が設けられている。取得される被検眼Eのデジタル写真は、観察画像、撮影画像等の正面画像である。観察画像は、例えば近赤外光を用いた動画撮影により得られ、アライメント、フォーカシング、トラッキングなどに利用される。撮影画像は、例えば可視領域又は赤外領域のフラッシュ光を用いた静止画像であり、診断、解析などに利用される。
【0045】
眼底カメラユニット2は、照明光学系10と撮影光学系30とを含む。照明光学系10は被検眼Eに照明光を照射する。撮影光学系30は、被検眼Eからの照明光の戻り光を検出する。OCTユニット100からの測定光は、眼底カメラユニット2内の光路を通じて被検眼Eに導かれ、その戻り光は、同じ光路を通じてOCTユニット100に導かれる。
【0046】
照明光学系10の観察光源11から出力された光(観察照明光)は、凹面鏡12により反射され、集光レンズ13を経由し、可視カットフィルタ14を透過して近赤外光となる。更に、観察照明光は、撮影光源15の近傍にて一旦集束し、ミラー16により反射され、リレーレンズ系17、リレーレンズ18、絞り19、及びリレーレンズ系20を経由する。そして、観察照明光は、孔開きミラー21の周辺部(孔部の周囲の領域)にて反射され、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて被検眼Eを照明する。観察照明光の被検眼Eからの戻り光は、対物レンズ22により屈折され、ダイクロイックミラー46を透過し、孔開きミラー21の中心領域に形成された孔部を通過し、ダイクロイックミラー55を透過し、撮影合焦レンズ31を経由し、ミラー32により反射される。更に、この戻り光は、ハーフミラー33Aを透過し、ダイクロイックミラー33により反射され、結像レンズ34によりイメージセンサ35の受光面に結像される。イメージセンサ35は、所定のフレームレートで戻り光を検出する。撮影光学系30のフォーカス(焦点位置)は、典型的には、眼底Ef又は前眼部Eaに合致するように調整される。
【0047】
撮影光源15から出力された光(撮影照明光)は、観察照明光と同様の経路を通って被検眼Eに照射される。被検眼Eからの撮影照明光の戻り光は、観察照明光の戻り光と同じ経路を通ってダイクロイックミラー33まで導かれ、ダイクロイックミラー33を透過し、ミラー36により反射され、結像レンズ37によりイメージセンサ38の受光面に結像される。
【0048】
液晶ディスプレイ(LCD)39は固視標(固視標画像)を表示する。LCD39から出力された光束は、その一部がハーフミラー33Aに反射され、ミラー32に反射され、撮影合焦レンズ31及びダイクロイックミラー55を経由し、孔開きミラー21の孔部を通過する。孔開きミラー21の孔部を通過した光束は、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに投射される。
【0049】
LCD39の画面上における固視標画像の表示位置を変更することにより、固視標による被検眼Eの固視位置を変更できる。つまり、固視位置を変更することによって被検眼Eの視線を所望の方向に誘導することができる。所望の固視位置を指定するためのグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)等を設けることができる。
【0050】
固視位置を変更可能な固視標を被検眼Eに提示するための構成はLCD等の表示デバイスには限定されない。例えば、複数の発光部(発光ダイオード等)がマトリクス状(アレイ状)に配列された固視マトリクスを表示デバイスの代わりに採用することができる。この場合、複数の発光部を選択的に点灯させることによって固視位置を変更することができる。更に他の例として、移動可能な1以上の発光部によって固視位置を変更する構成を採用することができる。
【0051】
アライメント光学系50は、被検眼Eに対する光学系のアライメントに用いられるアライメント指標を生成する。発光ダイオード(LED)51から出力されたアライメント光は、絞り52、絞り53、及びリレーレンズ54を経由し、ダイクロイックミラー55により反射され、孔開きミラー21の孔部を通過し、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22を介して被検眼Eに投射される。アライメント光の被検眼Eからの戻り光は、観察照明光の戻り光と同じ経路を通ってイメージセンサ35に導かれる。その受光像(アライメント指標像)に基づいてマニュアルアライメントやオートアライメントを実行できる。
【0052】
従来と同様に、本例のアライメント指標像は、アライメント状態により位置が変化する2つの輝点像からなる。被検眼Eと光学系との相対位置がxy方向に変化すると、2つの輝点像が一体的にxy方向に変位する。被検眼Eと光学系との相対位置がz方向に変化すると、2つの輝点像の間の相対位置(距離)が変化する。z方向における被検眼Eと光学系との間の距離が既定のワーキングディスタンスに一致すると、2つの輝点像が重なり合う。xy方向において被検眼Eの位置と光学系の位置とが一致すると、所定のアライメントターゲット内又はその近傍に2つの輝点像が提示される。z方向における被検眼Eと光学系との間の距離がワーキングディスタンスに一致し、且つ、xy方向において被検眼Eの位置と光学系の位置とが一致すると、2つの輝点像が重なり合ってアライメントターゲット内に提示される。
【0053】
オートアライメントでは、データ処理部230が、2つの輝点像の位置を検出し、主制御部211が、2つの輝点像とアライメントターゲットとの位置関係に基づいて後述の移動機構150を制御する。マニュアルアライメントでは、主制御部211が、被検眼Eの観察画像とともに2つの輝点像を表示部241に表示させ、ユーザーが、表示された2つの輝点像を参照しながら操作部242を用いて移動機構150を動作させる。
【0054】
なお、アライメント手法は上記のものに限定されない。幾つかの例示的な態様の眼科装置のアライメント手段は、前眼部を異なる方向から実質的に同時に撮影して2以上の撮影画像を取得し、これら撮影画像を解析して被検眼の3次元位置を求め、この3次元位置に基づき光学系を移動させるように構成されていてよい(例えば、特開2013-248376号公報を参照)。
【0055】
フォーカス光学系60は、被検眼Eに対するフォーカス調整に用いられるスプリット指標を生成する。撮影光学系30の光路(撮影光路)に沿った撮影合焦レンズ31の移動に連動して、フォーカス光学系60は照明光学系10の光路(照明光路)に沿って移動される。反射棒67は、照明光路に対して挿脱される。フォーカス調整を行う際には、反射棒67の反射面が照明光路に傾斜配置される。LED61から出力されたフォーカス光は、リレーレンズ62を通過し、スプリット指標板63により2つの光束に分離され、二孔絞り64を通過し、ミラー65により反射され、集光レンズ66により反射棒67の反射面に一旦結像されて反射される。更に、フォーカス光は、リレーレンズ20を経由し、孔開きミラー21に反射され、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22を介して被検眼Eに投射される。フォーカス光の被検眼Eからの戻り光は、アライメント光の戻り光と同じ経路を通ってイメージセンサ35に導かれる。その受光像(スプリット指標像)に基づいてマニュアルフォーカシングやオートフォーカシングを実行できる。
【0056】
孔開きミラー21とダイクロイックミラー55との間の撮影光路に、視度補正レンズ70及び71を選択的に挿入することができる。視度補正レンズ70は、強度遠視を補正するためのプラスレンズ(凸レンズ)である。視度補正レンズ71は、強度近視を補正するためのマイナスレンズ(凹レンズ)である。
【0057】
ダイクロイックミラー46は、デジタル撮影用光路(照明光路及び撮影光路)にOCT用光路(測定アーム)を結合する。ダイクロイックミラー46は、OCTスキャン用の波長帯の光を反射し、撮影用の波長帯の光を透過させる。測定アームには、OCTユニット100側から順に、コリメータレンズユニット40、リトロリフレクタ41、分散補償部材42、OCT合焦レンズ43、光スキャナ44、及びリレーレンズ45が設けられている。
【0058】
リトロリフレクタ41は、
図1の矢印が示す方向(測定光LSの入射方向及び出射方向)に移動可能とされている。それにより、測定アームの長さが変更される。測定アーム長の変更は、例えば、眼軸長に応じた光路長の補正や、角膜形状や眼底形状に応じた光路長の補正や、干渉状態の調整などのために利用される。
【0059】
分散補償部材42は、参照アームに配置された分散補償部材113(後述)とともに、測定光LSの分散特性と参照光LRの分散特性とを合わせるよう作用する。
【0060】
OCT合焦レンズ43は、測定アームのフォーカス調整を行うために
図1の矢印が示す方向(測定アームの光軸)に沿って移動可能とされている。それにより、測定アームのフォーカス状態(焦点の位置、焦点距離)が変更される。眼科装置1は、撮影合焦レンズ31の移動、フォーカス光学系60の移動、及びOCT合焦レンズ43の移動を連係的に制御可能であってよい。
【0061】
光スキャナ44は、実質的に、被検眼Eの瞳孔と光学的に共役な位置に配置される。光スキャナ44は、測定アームにより導かれる測定光LSを偏向する。光スキャナ44は、例えば、x方向のスキャンを行うための偏向器(x-スキャナ)と、y方向のスキャンを行うための偏向器(y-スキャナ)とを含む、2次元スキャンが可能な偏向器である。例えば、光スキャナ44は、2つのガルバノミラーを含むガルバノスキャナである。典型的には、2つの偏向器のいずれか一方が被検眼Eの瞳孔と光学的に共役な位置に配置され、或いは、2つの偏向器の間に瞳孔共役位置が配置される。これにより、眼底EfにOCTスキャンを適用するときに、被検眼Eの瞳孔内(又はその近傍)の位置をピボットとして測定光LSを振ることができ、眼底Efの広い範囲にOCTスキャンを適用することが可能になる。
【0062】
本態様においては、前眼部OCT用アタッチメント400が測定アームから退避されているときには、上記のように、光スキャナ44は、実質的に、被検眼Eの瞳孔に対して光学的に共役に配置される。他方、前眼部OCT用アタッチメント400が測定アームに挿入されているとき、光スキャナ44は、前眼部Eaと前眼部OCT用アタッチメント400との間の位置に対して光学的に共役に配置される。より具体的には、前眼部OCT用アタッチメント400が測定アームから退避されているとき、例えば、x-スキャナ及びy-スキャナのいずれか一方が瞳孔に対して光学的に共役に配置されるか、或いは、x-スキャナとy-スキャナとの間の位置が瞳孔に対して光学的に共役に配置される。また、前眼部OCT用アタッチメント400が測定アームに挿入されているとき、例えば、x-スキャナ及びy-スキャナのいずれか一方が前眼部Eaと前眼部OCT用アタッチメント400との間の位置に対して光学的に共役に配置されるか、或いは、x-スキャナとy-スキャナとの間の位置が前眼部Eaと前眼部OCT用アタッチメント400との間の位置に対して光学的に共役に配置される。
【0063】
<OCTユニット100>
図2に示す例示的なOCTユニット100には、スウェプトソースOCTを適用するための光学系や機構が設けられている。この光学系は干渉光学系を含む。この干渉光学系は、波長可変光源(波長掃引型光源)からの光を測定光と参照光とに分割し、被検眼Eからの測定光の戻り光と参照光路を経由した参照光とを重ね合わせて干渉光を生成し、この干渉光を検出する。干渉光学系により得られた検出結果(検出信号)は、干渉光のスペクトルを表す信号(干渉信号)であり、演算制御ユニット200(画像構築部220)に送られる。
【0064】
光源ユニット101は、例えば、出射光の波長を高速で変化させる近赤外波長可変レーザーを含む。光源ユニット101から出力された光L0は、光ファイバ102により偏波コントローラ103に導かれてその偏光状態が調整される。更に、光L0は、光ファイバ104によりファイバカプラ105に導かれて測定光LSと参照光LRとに分割される。測定光LSの光路は測定アームなどと呼ばれ、参照光LRの光路は参照アームなどと呼ばれる。
【0065】
参照光LRは、光ファイバ110によりコリメータ111に導かれて平行光束に変換され、光路長補正部材112及び分散補償部材113を経由し、リトロリフレクタ114に導かれる。光路長補正部材112は、参照光LRの光路長と測定光LSの光路長とを合わせるための光学素子である。分散補償部材113は、測定アームに配置された分散補償部材42とともに、参照光LRと測定光LSとの間の分散特性を合わせるよう作用する。リトロリフレクタ114は、これに入射する参照光LRの光路に沿って移動可能であり、それにより参照アームの長さが変更される。参照アーム長の変更は、例えば、眼軸長に応じた光路長の補正や、角膜形状や眼底形状に応じた光路長の補正や、干渉状態の調整などに利用される。
【0066】
リトロリフレクタ114を経由した参照光LRは、分散補償部材113及び光路長補正部材112を経由し、コリメータ116によって平行光束から集束光束に変換され、光ファイバ117に入射する。光ファイバ117に入射した参照光LRは、偏波コントローラ118に導かれてその偏光状態が調整される。偏波コントローラ118は、干渉状態を調整するための光学部材であり、例えば、測定光LSと参照光LRとの干渉強度を最適化するために用いられる。偏波コントローラ118を通過した参照光LRは、光ファイバ119を通じてアッテネータ120に導かれてその光量が調整され、光ファイバ121を通じてファイバカプラ122に導かれる。
【0067】
一方、ファイバカプラ105により生成された測定光LSは、光ファイバ127を通じてコリメータレンズユニット40に導かれて平行光束に変換される。コリメータレンズユニット40から出射した測定光LSは、リトロリフレクタ41、分散補償部材42、OCT合焦レンズ43、光スキャナ44及びリレーレンズ45を経由し、ダイクロイックミラー46により反射され、対物レンズ22により屈折されて被検眼Eに投射される。なお、前眼部OCT用アタッチメント400が測定アームに配置されている場合には、ダイクロイックミラー46により反射された測定光LSは、対物レンズ22及び前眼部OCT用アタッチメント400を介して被検眼E(前眼部Ea)に投射される。測定光LSは、被検眼Eの様々な深さ位置において散乱・反射される。測定光LSの被検眼Eからの戻り光は、往路と同じ経路を逆向きに進行してファイバカプラ105に導かれ、光ファイバ128を経由してファイバカプラ122に到達する。
【0068】
ファイバカプラ122は、光ファイバ128を介して入射された測定光LSと、光ファイバ121を介して入射された参照光LRとを重ね合わせて干渉光を生成する。ファイバカプラ122は、生成された干渉光を所定の分岐比(例えば1:1)で分岐することで一対の干渉光LCを生成する。一対の干渉光LCは、それぞれ光ファイバ123及び124を通じて検出器125に導かれる。
【0069】
検出器125は、例えばバランスドフォトダイオードを含む。バランスドフォトダイオードは、一対の干渉光LCをそれぞれ検出する一対のフォトディテクタを有し、これらにより得られた一対の検出結果の差分を出力する。検出器125は、この出力(検出信号)をデータ収集システム(DAQ)130に送る。
【0070】
データ収集システム130には、光源ユニット101からクロックKCが供給される。クロックKCは、光源ユニット101において、波長可変光源により所定の波長範囲内で掃引される各波長の出力タイミングに同期して生成される。光源ユニット101は、例えば、各出力波長の光L0を分岐して2つの分岐光を生成し、これら分岐光の一方を光学的に遅延させ、これら分岐光を合成し、得られた合成光を検出し、その検出結果に基づいてクロックKCを生成する。データ収集システム130は、検出器125から入力される検出信号のサンプリングをクロックKCに基づいて実行する。データ収集システム130は、このサンプリングの結果を演算制御ユニット200に送る。
【0071】
本例では、測定アーム長を変更するための要素(例えば、リトロリフレクタ41)と、参照アーム長を変更するための要素(例えば、リトロリフレクタ114、又は参照ミラー)との双方が設けられているが、一方の要素のみが設けられていてもよい。また、測定アーム長と参照アーム長との間の差(光路長差)を変更するための要素はこれらに限定されず、任意の要素(光学部材、機構など)であってよい。
【0072】
このように、スウェプトソースOCTは、波長可変光源からの光を測定光と参照光とに分割し、被検物からの測定光の戻り光を参照光と重ね合わせて干渉光を生成し、この干渉光を光検出器で検出し、波長の掃引及び測定光のスキャンに応じて収集された検出データにフーリエ変換等を施して画像を構築する手法である。
【0073】
一方、スペクトラルドメインOCTは、低コヒーレンス光源(広帯域光源)からの光を測定光と参照光とに分割し、被検物からの測定光の戻り光を参照光と重ね合わせて干渉光を生成し、この干渉光のスペクトル分布を分光器で検出し、検出されたスペクトル分布にフーリエ変換等を施して画像を構築する手法である。
【0074】
すなわち、スウェプトソースOCTは、干渉光のスペクトル分布を時分割で取得するOCT手法であり、スペクトラルドメインOCTは、干渉光のスペクトル分布を空間分割で取得するOCT手法である。
【0075】
<制御系・処理系>
眼科装置1の制御系及び処理系の構成例を
図3に示す。制御部210、画像構築部220及びデータ処理部230は、例えば演算制御ユニット200に設けられている。眼科装置1は、外部装置との間でデータ通信を行うための通信デバイスを含んでいてもよい。眼科装置1は、記録媒体からデータを読み出す処理や、記録媒体にデータを書き込む処理を行うためのドライブ装置(リーダ/ライタ)を含んでいてもよい。
【0076】
<制御部210>
制御部210は、各種の制御を実行する。制御部210は、主制御部211と記憶部212とを含む。主制御部211は、プロセッサを含み、眼科装置1の各要素(
図1~
図4に示された要素を含む)を制御する。主制御部211は、固視標に関する制御を行うためにLCD39を制御する。主制御部211は、プロセッサを含むハードウェアと、制御ソフトウェアとの協働によって実現される。
【0077】
撮影合焦駆動部31Aは、主制御部211の制御の下に、撮影光路に配置された撮影合焦レンズ31と照明光路に配置されたフォーカス光学系60とを移動する。リトロリフレクタ(RR)駆動部41Aは、主制御部211の制御の下に、測定アームに設けられたリトロリフレクタ41を移動する。OCT合焦駆動部43Aは、主制御部211の制御の下に、測定アームに配置されたOCT合焦レンズ43を移動する。リトロリフレクタ(RR)駆動部114Aは、主制御部211の制御の下に、参照アームに配置されたリトロリフレクタ114を移動する。上記した駆動部のそれぞれは、主制御部211の制御の下に動作するパルスモータ等のアクチュエータを含む。測定アームに設けられた光スキャナ44は、主制御部211の制御の下に動作する。
【0078】
移動機構150は、例えば、少なくとも眼底カメラユニット2を3次元的に移動する。典型的な例において、移動機構150は、±x方向(左右方向)に移動可能なx-ステージと、x-ステージを移動するx-移動機構と、±y方向(上下方向)に移動可能なy-ステージと、y-ステージを移動するy-移動機構と、±z方向(奥行き方向)に移動可能なz-ステージと、z-ステージを移動するz-移動機構とを含む。これら移動機構のそれぞれは、主制御部211の制御の下に動作するパルスモータ等のアクチュエータを含む。
【0079】
挿脱機構400Aは、前眼部OCT用アタッチメント400をOCT用光路(測定アーム)に挿入する動作と、前眼部OCT用アタッチメント400を測定アームから退避する動作とを実行する。挿脱機構400Aは、主制御部211の制御の下に動作するソレノイドアクチュエータ等のアクチュエータを含む。
【0080】
記憶部212は各種のデータを記憶する。記憶部212に記憶されるデータとしては、OCT画像、デジタル写真(前眼部画像、眼底画像)、被検眼情報、解析データなどがある。被検眼情報は、患者IDや氏名などの被検者情報や、左眼/右眼の識別情報や、電子カルテ情報などを含む。
【0081】
<画像構築部220>
画像構築部220は、プロセッサを含み、データ収集システム130から入力された信号(サンプリングデータ)に基づいて、被検眼EのOCT画像データを構築する。画像構築部220により構築されるOCT画像データは、1以上のAスキャン画像データであり、典型的には複数のAスキャン画像データからなるBスキャン画像データ(2次元断面像データ)である。
【0082】
OCT画像データを構築する処理は、従来のフーリエドメインOCTと同様に、ノイズ除去(ノイズ低減)、フィルタ処理、高速フーリエ変換(FFT)などを含む。他のタイプのOCT装置の場合、画像構築部220は、そのタイプに応じた公知の処理を実行する。
【0083】
画像構築部220は、データ収集システム130から入力された信号に基づいて、被検眼Eの3次元データを構築するように構成されてよい。この3次元データは、被検眼Eの3次元領域(ボリューム)を表現した3次元画像データである。この3次元画像データは、3次元座標系により画素の位置が定義された画像データを意味する。3次元画像データの例として、スタックデータやボリュームデータがある。
【0084】
スタックデータは、複数のスキャンラインに沿って得られた複数の断面像を、これらスキャンラインの位置関係に基づき3次元的に配列して得られた画像データである。すなわち、スタックデータは、元々個別の2次元座標系により定義されていた複数の断面像を、1つの3次元座標系で表現する(つまり、1つの3次元空間に埋め込む)ことにより構築された画像データである。換言すると、スタックデータは、2次元的に配列された複数のスキャン点(スキャン点アレイ)についてそれぞれ取得された複数のAスキャン画像データを、これらスキャン点の位置関係に基づき3次元的に配列して得られた画像データである。
【0085】
ボリュームデータは、3次元的に配列されたボクセルを画素とする画像データであり、ボクセルデータとも呼ばれる。ボリュームデータは、スタックデータに補間処理やボクセル化処理などを適用することによって構築される。
【0086】
画像構築部220は、3次元画像データにレンダリングを施して表示用画像を構築する。適用可能なレンダリング法の例として、ボリュームレンダリング、サーフェスレンダリング、最大値投影(MIP)、最小値投影(MinIP)、多断面再構成(MPR)などがある。
【0087】
画像構築部220は、3次元画像データに基づいてOCT正面画像(OCT en-face画像)を構築するように構成されてよい。例えば、画像構築部220は、3次元画像データをz方向(Aライン方向、深さ方向)に投影してプロジェクションデータを構築することができる。また、画像構築部220は、3次元画像データの一部(例えば、スラブ)からプロジェクションデータを構築することができる。
【0088】
3次元画像データの部分データ(例えば、スラブ)は、典型的には、セグメンテーションを利用して設定される。セグメンテーションは、画像中の部分領域を特定する処理である。典型的には、セグメンテーションは、被検眼Eの所定組織に相当する画像領域を特定するために利用される。セグメンテーションは、任意の公知の画像処理技術を含んでいてよく、例えば、エッジ検出等の画像処理、及び/又は、機械学習(例えば、深層学習)を利用したセグメンテーションを含んでいてよい。セグメンテーションは、例えば、画像構築部220又はデータ処理部230により実行される。
【0089】
眼科装置1は、OCTモーションコントラスト撮影(motion contrast imaging)を実行可能であってよい。OCTモーションコントラスト撮影は、眼内に存在する液体等の動きを抽出するイメージング技術である(例えば、特表2015-515894号公報を参照)。
【0090】
画像構築部220は、プロセッサを含むハードウェアと、画像構築ソフトウェアとの協働によって実現される。
【0091】
<データ処理部230>
データ処理部230は、プロセッサを含み、被検眼Eの画像に対して特定のデータ処理を適用するように構成されている。データ処理部230は、例えば、プロセッサを含むハードウェアと、データ処理ソフトウェアとの協働によって実現される。
【0092】
データ処理部230は、被検眼Eについて取得された2つの画像の間の位置合わせ(レジストレーション)を行うことができる。例えば、データ処理部230は、OCTスキャンを用いて取得された3次元画像データと、眼底カメラユニット2により取得された正面画像との間のレジストレーションを行うことができる。また、データ処理部230は、OCTスキャンを用いて取得された2つのOCT画像の間のレジストレーションを行うことができる。また、データ処理部230は、眼底カメラユニット2により取得された2つの正面画像の間のレジストレーションを行うことができる。また、OCT画像の解析結果や、正面画像の解析結果に対してレジストレーションを適用することも可能である。レジストレーションは、公知の手法によって実行可能であり、例えば特徴点抽出とアフィン変換とを含む。
【0093】
<ユーザーインターフェイス240>
ユーザーインターフェイス240は表示部241と操作部242とを含む。表示部241は表示装置3を含む。操作部242は各種の操作デバイスや入力デバイスを含む。ユーザーインターフェイス240は、例えばタッチパネルのような表示機能と操作機能とが一体となったデバイスを含んでいてもよい。ユーザーインターフェイス240の少なくとも一部を含まない実施形態を構築することも可能である。例えば、表示デバイスは、眼科装置に接続された外部装置であってよい。
【0094】
<制御系・処理系の詳細>
眼科装置1の制御系及び処理系の構成の詳細の例を
図4に示す。
図4には、眼科装置1の特徴的な制御及び処理に関する要素が選択的に示されている。
【0095】
<LCD39>
LCD39は、被検眼Eに固視標を提示する。LCD39は固視標提示部の例である。他の態様の固視標提示部は、LCD等の表示デバイス以外の構成によって被検眼(OCTスキャンが適用される眼)に固視標を提示する。更に他の態様の固視標提示部は、被検眼の僚眼に固視標を提示する。そのような固視標提示部の例として外部固視灯がある。
【0096】
<OCT部250>
OCT部250は、前眼部EaにOCTスキャンを適用して画像を構築する。OCT部250は、前眼部EaにOCTスキャンを適用するための要素群と、OCTスキャンにより収集されたデータから画像を構築するための要素(群)とを含む。本態様では、OCT部250は、眼底カメラユニット2内の測定アームを形成する要素群と、OCTユニット100と、画像構築部220とを含んでいる。
【0097】
<傾斜情報生成部231>
本態様のデータ処理部230は傾斜情報生成部231を含んでいる。傾斜情報生成部231は、OCT部250により構築された画像に描出された前眼部Eaの傾斜状態を示す傾斜情報を生成する。
【0098】
例示的な傾斜情報は、前眼部Eaの向きを示す情報を含んでいてよい。この向き情報は、例えば、角度の値を含んでいてよい。この角度は、例えば、画像が定義される座標系における所定方向(基準方向)に対する傾斜角度であってよい。この座標系は、例えば、3次元座標系(例えば、xyz座標系)であってもよいし、又は、3次元座標系により張られる空間の部分空間(3次元空間、2次元空間、又は1次元空間)の定義座標系であってもよい。
【0099】
典型的な例において、基準方向は、z方向又はこれに直交する方向(xy平面内の任意の方向)であり、傾斜情報は、この基準方向に対する傾斜角度を含む。基準方向に対する傾斜角度は、例えば、基準方向の角度値を0度又は0ラジアンとしたときの角度値として定義される。また、基準方向に対する傾斜角度は、大きさ及び方向(プラス方向、マイナス方向)の双方を含む情報であってもよいし、大きさのみの情報(絶対値)であってもよい。
【0100】
傾斜情報生成部231が実行する処理の幾つかの例を説明する。例えば、傾斜情報生成部231は、OCT部250により構築された画像を解析して1つ以上の特徴点を特定する処理と、特定された特徴点に基づいて傾斜情報を生成する処理とを実行するように構成されていてよい。なお、傾斜情報生成部231が実行する処理は本例の処理に限定されない。例えば、傾斜情報生成部231は、画像から傾斜情報を生成するように訓練された人工知能エンジン(典型的には、機械学習済みの畳み込みニューラルネットワークを含む推論システム)によって、OCT部250により構築された画像から直接に傾斜情報を生成するように構成されていてよい。
【0101】
特徴点は、例えば、隅角、水晶体前面頂点、角膜頂点、及び、虹彩前面における点のうちのいずれかを含んでいてよい。なお、特徴点はこれらに限定されない。例えば、特徴点は、毛様体(毛様筋)、チン小帯、硝子体、及び眼底Efのいずれか、又は、その部分であってもよい。また、特徴点は、眼内に移植された人工物、又は、その部分であってもよい。人工物の例として、眼内レンズ(IOL)、低侵襲緑内障手術(MIGS)デバイスなどがある。
【0102】
特徴点を特定するための画像解析は、例えば、前眼部Eaの所定部位に対応する画像領域を特定するためのセグメンテーション、所与の画像領域における特徴部分(特徴点)を特定するための特徴点検出などを含んでいてよい。セグメンテーションは、任意の公知の画像処理技術を含んでいてよく、例えば、エッジ検出等の画像処理、及び/又は、機械学習(例えば、深層学習)を利用したセグメンテーションを含んでいてよい。
【0103】
特徴点に基づき傾斜情報を生成する処理の幾つかの例を説明する。或る画像領域における1つの特徴点から傾斜情報を生成する処理は、例えば、この特徴点における接線の傾き又は接平面の傾き(例えば法線の傾き)を求める処理と、この傾きから傾斜情報を生成する処理とを含んでいてよい。傾斜情報は、傾きの値であってもよいし、傾きから算出された値であってもよい。なお、当該画像領域は、少なくとも当該特徴点の近傍において微分可能である。例えば、接線又は接平面を求める前に、対象となる画像領域(少なくとも特徴点の近傍)を微分可能な図形(直線、曲線、平面、曲面など)で近似することができる。或いは、対象となる画像領域を微分可能な図面で近似した後に特徴点を特定するようにしてもよい。
【0104】
2つ以上の特徴点から傾斜情報を生成する処理は、例えば、2つ以上の特徴点を通過する直線の傾き又は平面の傾き(例えば法線の傾き)を求める処理と、この傾きから傾斜情報を生成する処理とを含んでいてよい。傾斜情報は、傾きの値であってもよいし、傾きから算出された値であってもよい。本例の処理が適用される画像領域は微分可能でなくてもよい。また、2つ以上の特徴点を通過する図形(直線又は平面)を考慮する代わりに、2つ以上の特徴点から得られる近似図形(例えば、最小二乗法などの任意の回帰分析で求められる図形)を考慮してもよい。
【0105】
特徴点が隅角である場合の例を説明する。本例において、OCT部250は、被検眼Eの隅角の少なくとも2点を含む領域にOCTスキャンを適用する。ここで、「隅角の少なくとも2点」は、任意の複数の点であってよいが、典型的には、略円形に分布する隅角上の一対の対向点を含んでいる。
【0106】
本例のOCTスキャンは、例えば、Bスキャン、3次元スキャン、及びラジアルスキャンのいずれかであってよい。本例のBスキャンは、例えば、前述したATAスキャンであってよい。本例の3次元スキャンが適用される領域は、例えば、角膜頂点若しくは瞳孔中心又はその近傍位置をxy方向の中心としたボリュームであってよい。本例のラジアルスキャン(クロススキャンでもよい)は、例えば、角膜頂点若しくは瞳孔中心又はその近傍位置において交差する、互いに向きが異なる複数のBスキャンを含んでいてよい。本例のOCT部250は、更に、本例のOCTスキャンで収集されたデータから画像を構築する。
【0107】
本例の傾斜情報生成部231は、まず、OCT部250により構築された画像を解析することで、上記した隅角の少なくとも2点を特徴点として特定する。例えば、傾斜情報生成部231は、OCT部250により構築された画像にセグメンテーションを適用して角膜に対応する画像領域(角膜画像)と虹彩に対応する画像領域(虹彩画像)とを特定する。例えば、角膜画像は、角膜後面に対応する画像領域(角膜後面画像)であり、虹彩画像は、虹彩前面に対応する画像領域(虹彩前面画像)である。傾斜情報生成部231は、角膜画像(例えば角膜後面画像)と虹彩画像(例えば虹彩前面画像)とが互いに交わる箇所を特定し、当該箇所を隅角に設定することができる。
【0108】
更に、本例の傾斜情報生成部231は、特徴点として特定された隅角の少なくとも2点に基づいて傾斜情報の生成を行う。この傾斜情報生成について第1~第3の例を以下に説明するが、これらに限定されるものではない。
【0109】
第1の例において、傾斜情報生成部231は、特徴点として特定された隅角の2点を結ぶ直線の傾きを求め、この傾きの値又はこれから算出される値を傾斜情報(傾斜角度)とすることができる。
【0110】
第2の例において、ラジアルスキャン又は3次元スキャンが適用された場合、傾斜情報生成部231は、対向点のペアを複数求め、それぞれの対向点ペアを結ぶ直線の傾きを求め、得られた複数の傾きから(統計処理によって)傾斜情報を生成することができる。具体例として、傾斜情報生成部231は、複数の傾きの値のうちから最大値を特定し、この最大値又はこれから算出される値を傾斜情報(傾斜角度)とすることができる。
【0111】
第3の例において、ラジアルスキャン又は3次元スキャンが適用された場合、傾斜情報生成部231は、3つ以上の特徴点を特定し、これら特徴点を用いて定義される平面の傾き(例えば、法線の傾き)を求め、この傾きの値又はこれから算出される値を傾斜情報(傾斜角度)とすることができる。
【0112】
特徴点が隅角である場合の1つの具体例を説明する。
図5A及び
図5Bを参照する。まず、傾斜情報生成部231は、ATAスキャンで得られた画像にセグメンテーションを適用することで、
図5Aに示す角膜後面画像511及び512と虹彩前面画像521及び522とを特定する。角膜後面画像511及び虹彩前面画像521は画像フレームの左端側に位置しており、角膜後面画像512及び虹彩前面画像522は画像フレームの右端側に位置している。次に、傾斜情報生成部231は、角膜後面画像511と虹彩前面画像521とが交わる位置を特定し、この交差位置を隅角の特徴点531に設定する(
図5Bを参照)。同様に、傾斜情報生成部231は、角膜後面画像512と虹彩前面画像522とが交わる位置を特定し、この交差位置を隅角の特徴点532に設定する(
図5Bを参照)。特徴点531は画像フレームの左端側に位置しており、特徴点532は画像フレームの右端側に位置している。最後に、傾斜情報生成部231は、特徴点531と特徴点532とを結ぶ直線540の傾きを求め、この傾きの値(又は、それから算出される値)を傾斜角度に設定する(
図5Bを参照)。このようにして生成される傾斜角度は、当該ATAスキャンが適用されたときの前眼部Eaの傾斜状態を示す傾斜情報の例である。
【0113】
特徴点が水晶体前面頂点である場合の例を説明する。本例において、OCT部250は、被検眼Eの水晶体前面頂点(又はその近傍位置)を含む領域にOCTスキャンを適用する。本例のOCTスキャンは、例えば、Bスキャン、3次元スキャン、及びラジアルスキャンのいずれかであってよい。本例のBスキャンは、例えば、前述したATAスキャンであってよい。本例の3次元スキャンが適用される領域は、例えば、水晶体前面頂点又はその近傍位置をxy方向の中心としたボリュームであってよい。本例のラジアルスキャン(クロススキャンでもよい)は、例えば、水晶体前面頂点又はその近傍位置において交差する、互いに向きが異なる複数のBスキャンを含んでいてよい。本例のOCT部250は、更に、本例のOCTスキャンで収集されたデータから画像を構築する。
【0114】
本例の傾斜情報生成部231は、まず、OCT部250により構築された画像を解析することで、水晶体前面頂点を特徴点として特定する。例えば、傾斜情報生成部231は、OCT部250により構築された画像にセグメンテーションを適用して水晶体前面に対応する画像領域(水晶体前面画像)を特定する。傾斜情報生成部231は、特定された水晶体前面画像を、微分可能な図形(例えば、曲線、曲面)で近似することができる。
【0115】
続いて、傾斜情報生成部231は、水晶体前面画像(又は水晶体画像)を解析することで水晶体前面頂点を特定する。例えば、傾斜情報生成部231は、水晶体前面画像の中央位置(例えば、水晶体前面画像の両端から等距離に位置する水晶体前面画像上の点、又は、水晶体前面画像の両端から水晶体前面画像に沿った距離が等しい水晶体前面画像上の点)を特定して水晶体前面頂点に設定することができる。他の例において、傾斜情報生成部231は、水晶体前面画像の形状に基づいて水晶体前面頂点を特定してもよい。更に他の例において、傾斜情報生成部231は、水晶体画像の形態に基づいて水晶体前面頂点を特定してもよい。例えば、傾斜情報生成部231は、水晶体画像の厚み分布を参照することによって、水晶体後面画像からの距離が最大となる水晶体前面画像上の位置を特定し、この位置を水晶体前面頂点に設定することができる。
【0116】
更に、傾斜情報生成部231は、特定された水晶体前面頂点における水晶体前面画像の傾きを求め、この傾きの値又はこれから算出される値を傾斜情報(傾斜角度)とすることができる。水晶体前面頂点における水晶体前面画像の傾きは、例えば、水晶体前面頂点における水晶体前面画像(微分可能な近似図形)の接線の傾き又は接平面の傾き(例えば、法線の傾き)として定義されてよい。
【0117】
特徴点が水晶体前面頂点である場合の1つの具体例を説明する。
図6A及び
図6Bを参照する。まず、傾斜情報生成部231は、ATAスキャンで得られた画像にセグメンテーションを適用することで、
図6Aに示す水晶体前面画像550を特定する。ここで、傾斜情報生成部231は、水晶体前面画像550の微分可能な近似図形を求め、この近似図形を改めて水晶体前面画像550とすることができる。次に、傾斜情報生成部231は、水晶体前面画像550を解析して水晶体前面頂点560を特定する。更に、傾斜情報生成部231は、水晶体前面頂点560における水晶体前面画像550の接線570の傾きを求め、この傾きの値(又は、それから算出される値)を傾斜角度に設定する。このようにして生成される傾斜角度は、当該ATAスキャンが適用されたときの前眼部Eaの傾斜状態を示す傾斜情報の例である。
【0118】
特徴点が角膜前面頂点である場合の例を説明する。本例において、OCT部250は、被検眼Eの角膜前面頂点(又はその近傍位置)を含む領域にOCTスキャンを適用する。本例のOCTスキャンは、例えば、Bスキャン、3次元スキャン、及びラジアルスキャンのいずれかであってよい。本例のBスキャンは、例えば、前述したATAスキャンであってよい。本例の3次元スキャンが適用される領域は、例えば、角膜前面頂点又はその近傍位置をxy方向の中心としたボリュームであってよい。本例のラジアルスキャン(クロススキャンでもよい)は、例えば、角膜前面頂点又はその近傍位置において交差する、互いに向きが異なる複数のBスキャンを含んでいてよい。本例のOCT部250は、更に、本例のOCTスキャンで収集されたデータから画像を構築する。
【0119】
本例の傾斜情報生成部231は、まず、OCT部250により構築された画像を解析することで、角膜前面頂点を特徴点として特定する。例えば、傾斜情報生成部231は、OCT部250により構築された画像にセグメンテーションを適用して角膜前面に対応する画像領域(角膜前面画像)を特定する。傾斜情報生成部231は、特定された角膜前面画像を、微分可能な図形(例えば、曲線、曲面)で近似することができる。
【0120】
続いて、傾斜情報生成部231は、角膜前面画像を解析することで角膜頂点を特定する。例えば、傾斜情報生成部231は、角膜前面画像の中央位置(例えば、角膜前面画像の両端から等距離に位置する角膜前面画像上の点、又は、角膜前面画像の両端から角膜前面画像に沿った距離が等しい角膜前面画像上の点)を特定して角膜頂点に設定することができる。他の例において、傾斜情報生成部231は、角膜前面画像の形状に基づいて角膜頂点を特定してもよい。
【0121】
更に、傾斜情報生成部231は、特定された角膜頂点における角膜前面画像の傾きを求め、この傾きの値又はこれから算出される値を傾斜情報(傾斜角度)とすることができる。角膜頂点における角膜前面画像の傾きは、例えば、角膜頂点における角膜前面画像(微分可能な近似図形)の接線の傾き又は接平面の傾き(例えば、法線の傾き)として定義されてよい。
【0122】
このように、特徴点が水晶体前面頂点である場合に実行可能な一連の処理は、例えば、特徴点が水晶体前面頂点である場合と同じ要領で実行することが可能である。
【0123】
特徴点が虹彩前面上の点である場合の例を説明する。本例において、OCT部250は、被検眼Eの虹彩前面の少なくとも一部を含む領域にOCTスキャンを適用する。本例のOCTスキャンは、例えば、Bスキャン、3次元スキャン、及びラジアルスキャンのいずれかであってよい。本例のOCT部250は、更に、本例のOCTスキャンで収集されたデータから画像を構築する。
【0124】
本例の傾斜情報生成部231は、まず、OCT部250により構築された画像を解析することで、虹彩前面の少なくとも2点を特徴点として特定する。例えば、傾斜情報生成部231は、OCT部250により構築された画像にセグメンテーションを適用して虹彩前面画像を特定する。次に、傾斜情報生成部231は、虹彩前面画像の少なくとも2点を特定して特徴点とする。続いて、傾斜情報生成部231は、特徴点として特定された虹彩前面画像の少なくとも2点に基づいて傾斜情報の生成を行う。本例の傾斜情報生成は、例えば、特徴点が隅角である場合の傾斜情報生成の第1~第3の例のいずれかと同じ要領で実行されてよいが、これらに限定されるものではない。
【0125】
特徴点が虹彩前面上の点である場合の1つの具体例を説明する。
図7A及び
図7Bを参照する。まず、傾斜情報生成部231は、ATAスキャンで得られた画像にセグメンテーションを適用することで、
図7Aに示す虹彩前面画像581及び582とを特定する。虹彩前面画像581は画像フレームの左端側に位置しており、虹彩前面画像582は画像フレームの右端側に位置している。次に、傾斜情報生成部231は、虹彩前面画像581の1つ以上のピークと、虹彩前面画像582の1つ以上のピークとを特定する。続いて、傾斜情報生成部231は、虹彩前面画像581の1つ以上のピークのうち最も内側(水晶体側)に位置するピーク581aと、虹彩前面画像582の1つ以上のピークのうち最も内側(水晶体側)に位置するピーク582aとを特定する(
図7Bを参照)。なお、他のピークを特定するようにしてもよい。更に、傾斜情報生成部231は、ピーク581aとピーク582aとを結ぶ直線590の傾きを求め、この傾きの値(又は、それから算出される値)を傾斜角度に設定する(
図7Bを参照)。このようにして生成される傾斜角度は、当該ATAスキャンが適用されたときの前眼部Eaの傾斜状態を示す傾斜情報の例である。なお、虹彩前面画像のピークを求める代わりに、虹彩前面画像の谷、虹彩前面画像の最も内側(水晶体側)の点、虹彩前面画像の最も外側の点などの任意の点を特徴点としてもよい。
【0126】
<制御部210>
図4に示す制御部210は、傾斜情報生成部231により生成された傾斜情報に基づいてLCD39(固視標提示部)の制御を実行する。本態様では、制御部210は、固視標を移動するようにLCD39の制御を行う。具体的には、本態様の制御部210は、固視標画像の表示位置を変更するようにLCD39の制御を行う。本態様の固視標移動制御の幾つかの例を以下に説明する。
【0127】
固視標移動制御の第1の例を説明する。本例では、
図4に示す対応情報2121が予め作成された記憶部212に記憶される。なお、対応情報2121は、制御部210の外部に設けられてもよい。例えば、制御部210によってアクセス可能な記憶装置に対応情報2121を格納することができる。制御部210(主制御部211)は、傾斜情報生成部231により生成された傾斜情報に基づき、対応情報2121を参照して固視標提示部の制御を行う。
【0128】
対応情報2121は、画像フレーム(画像の定義座標系)における前眼部の傾斜状態を示すパラメータ(傾斜パラメータ)と、固視標の移動状態を示すパラメータ(移動パラメータ)との間の対応を示す情報である。主制御部211は、例えば、傾斜情報生成部231により生成された傾斜情報と傾斜パラメータとに基づいて対応する移動パラメータを決定し、決定された移動パラメータに基づき固視標提示部の制御を行う。
【0129】
本例の傾斜パラメータは、傾斜情報生成部231により生成される傾斜情報と比較可能なデータであり、例えば、傾斜情報に含まれる傾斜角度と同様に定義された傾斜角度(基準方向が同じ)、又は、傾斜情報に含まれる傾斜角度の基準方向(第1基準方向)と異なる基準方向(第2基準方向)により定義される傾斜角度であってよい。一方、本例の移動パラメータは、LCD39の表示画面におけるアドレス情報(画素位置)、固視標の移動量(画素数、空間的寸法など)、LCD39に対する制御内容などによって定義されていてよい。
【0130】
対応情報2121は、眼科装置1又は他の眼科装置を用いた準備的測定(予備的測定)に基づいて作成されてもよいし、コンピュータシミュレーションに基づいて作成されてもよいし、理論的演算に基づいて作成されてもよいし、これら3つの方法のうちの少なくとも2つに基づいて作成されてもよい。
【0131】
典型的な例を説明する。本例の傾斜情報は、OCT部250により構築された画像における所定の第1基準方向に対する傾斜角度を含む。また、本例の傾斜パラメータは、画像フレームにおける所定の第2基準方向に対する傾斜角度を含む。第1基準方向と第2基準方向とは同じであってよく、例えば、z方向、又は、それに直交する方向であってよい。第1基準方向と第2基準方向とが互いに異なる場合、第1基準方向及び第2基準方向の双方は同じ座標系(例えばxyz座標系)によって表現可能であり、例えば、第1基準方向及び第2基準方向の一方がz方向であり且つ他方がz方向に直交する方向である。また、本例の移動パラメータは、固視標の移動量を含む。このような対応情報2121の2つの例を以下に説明する。
【0132】
対応情報2121の第1の例を説明する。本例の傾斜パラメータに含まれる傾斜角度は、画像フレームにおける第2基準方向に対する所定の単位角度を含む。単位角度は、傾斜情報生成部231により求められる傾斜角度の最小単位であり、任意の値であってよい。単位角度は、例えば、1度、3度、5度、及び10度のいずれかであってよい。本例の移動パラメータに含まれる移動量は、傾斜パラメータに含まれる単位角度に対応する移動量(単位移動量)を含む。単位移動量は、傾斜角度が単位角度だけ変化したときの被検眼E(前眼部Ea、前眼部Eaの所定部位)の変位量をキャンセルするための固視標の移動量である。換言すると、傾斜角度が単位角度だけ変化したときに、被検眼Eと眼科装置1(光学系)との間の相対位置が当該変化の前後においてほぼ同じになるような、固視標の移動量である。単位移動量は、例えば、LCD39の画素数若しくはこれと等価な情報、又はLCD39に対する制御内容として表現されている。本例の対応情報2121は、例えば、眼科装置1又は他の眼科装置を用いた準備的測定に基づいて作成されてもよいし、コンピュータシミュレーションに基づいて作成されてもよいし、理論的演算に基づいて作成されてもよいし、これら3つの方法のうちの少なくとも2つに基づいて作成されてもよい。本例において、主制御部211は、例えば、傾斜情報生成部231により求められた傾斜角度を単位角度で除算する第1演算処理と、第1演算処理で求められた商の値(又は、この商の値を近似する整数)を単位移動量に乗算する第2演算処理と、第2演算処理で求められた積の値(又は、この積の値を近似する整数)だけ固視標を移動するようにLCD39を制御する処理とを実行する。固視標の移動方向は、傾斜情報生成部231が画像から得る傾斜方向に基づき決定されてよい。固視標の移動方向は、傾斜角度を減少させる方向である。
【0133】
対応情報2121の第2の例を説明する。本例の対応情報2121は、画像フレームにおける第2基準方向に対する複数の異なる傾斜角度と複数の異なる移動量との間の対応を示す情報を含む。本例の対応情報2121の表現形態は任意であってよく、例えば、傾斜角度と移動量との間の対応関係を表すグラフ、テーブル、又はリストであってよい。本例の対応情報2121は、例えば、眼科装置1又は他の眼科装置を用いた準備的測定に基づいて作成されてもよいし、コンピュータシミュレーションに基づいて作成されてもよいし、理論的演算に基づいて作成されてもよいし、これら3つの方法のうちの少なくとも2つに基づいて作成されてもよい。本例において、主制御部211は、例えば、傾斜情報生成部231により求められた傾斜角度に対応する対応情報2121中の傾斜角度を特定する処理(例えば、求められた傾斜角度に等しい又は最も近い対応情報2121中の傾斜角度を特定する処理)と、特定された傾斜角度に対応する移動量を対応情報2121から決定する処理と、決定された移動量だけ固視標を移動するようにLCD39を制御する処理とを実行する。固視標の移動方向は、傾斜角度を減少させる方向であり、傾斜情報生成部231が画像から得る傾斜方向に基づき決定されてよい。
【0134】
傾斜方向を考慮する場合の例を説明する。本例において、傾斜情報生成部231は、、OCT部250により構築された画像に基づいて、当該画像における第1基準方向に対する傾斜角度及び傾斜方向を求め、これらの双方を含む傾斜情報を生成する。また、本例の対応情報2121に含まれる傾斜パラメータは、画像フレームにおける第2基準方向に対する傾斜角度及び傾斜方向の双方を含む。更に、本例の対応情報2121に含まれる移動パラメータは、固視標の移動量及び移動方向の双方を含む。本例の対応情報2121は、例えば、眼科装置1又は他の眼科装置を用いた準備的測定に基づいて作成されてもよいし、コンピュータシミュレーションに基づいて作成されてもよいし、理論的演算に基づいて作成されてもよいし、これら3つの方法のうちの少なくとも2つに基づいて作成されてもよい。本例において、主制御部211は、例えば、このような対応情報2121を参照することによって、傾斜情報生成部231により生成された傾斜情報に含まれる傾斜角度に基づき固視標の移動量を決定し、且つ、この傾斜情報に含まれる傾斜方向に基づき固視標の移動方向を決定する。更に、主制御部211は、決定された方向に決定された移動量だけ固視標を移動するようにLCD39を制御する。以上で、固視標移動制御の第1の例の説明を終える。
【0135】
次に、固視標移動制御の第2の例を説明する。上述した固視標移動制御の第1の例は、検出された傾斜状態から固視標の移動量や移動方向を決定するように動作するが、本例(第2の例)は、傾斜状態をモニタしつつ固視標の好適な位置を探索するように動作する。本例では対応情報2121は不要である。他方、本例において、対応情報2121を参照しつつ移動方向や移動量を逐次に決定するようにしてもよい。
【0136】
制御部210(主制御部211)は、LCD39の制御と、OCT部250の制御と、傾斜情報生成部231の制御とを並行して実行する。この並行的な制御は、例えば、同時的な制御、交互的な制御、及び巡回的な制御のいずれか1つ以上を含んでいてよい。
【0137】
本例におけるLCD39の制御は、固視標を移動するための制御である。この制御による固視標の移動態様は、連続的な移動であってもよいし、段階的な移動であってもよいし、連続的な移動と段階的な移動との組み合わせであってもよい。
【0138】
本例におけるOCT部250の制御は、前眼部EaにOCTスキャンを繰り返し適用しつつ逐次に画像を構築するための制御である。この反復的OCTスキャンに用いられるスキャンパターンは任意であってよく、例えばBスキャンである。このようなOCT部250の動作は、ライブOCTスキャン、リアルタイムOCT動画撮影などと呼ばれる。
【0139】
本例における傾斜情報生成部231の制御は、OCT部250により逐次に構築される画像から逐次に傾斜情報(例えば、傾斜角度及び傾斜方向)を生成するための制御である。
【0140】
これら3つの制御の組み合わせにより、固視標を移動しつつ(つまり、被検眼Eの視線方向を変化させつつ)OCT動画撮影と傾斜情報生成とをリアルタイムで実行することができる。
【0141】
この組み合わせ制御において、制御部210は、生成された傾斜情報を固視標移動制御にフィードバックすることができる。つまり、制御部210は、OCT部250により逐次に構築される画像から傾斜情報生成部231によって逐次に生成される傾斜情報のいずれかに基づいて固視標の移動方向を決定し、決定された移動方向に固視標を移動するようにLCD39の制御を行うことができる。また、制御部210は、OCT部250により逐次に構築される画像から傾斜情報生成部231によって逐次に生成される傾斜情報のいずれかに基づいて固視標の移動量を決定し、決定された移動量だけ固視標を移動するようにLCD39の制御を行うことができる。また、これらを組み合わせることにより、制御部210は、OCT部250により逐次に構築される画像から傾斜情報生成部231によって逐次に生成される傾斜情報のいずれかに基づいて固視標の移動方向及び移動量を決定し、決定された移動方向に決定された移動量だけ固視標を移動するようにLCD39の制御を行うことができる。なお、このようなフィードバック制御において対応情報2121を参照することができる。
【0142】
本例における制御部210は、逐次に生成される傾斜情報が所定の条件(傾斜状態評価条件)を満足しているか否か判定を行う。典型的な例において、傾斜情報は、画像における所定の基準方向(典型的には、z方向に直交する方向、水平方向)に対する傾斜角度を含んでいる。この場合、傾斜状態評価条件は、傾斜角度に関する条件を含んでいる。例えば、この場合の傾斜状態評価条件は、傾斜角度が所定の閾値よりも小さいことであってよい。この場合、制御部210は、傾斜情報生成部231により逐次に生成される傾斜角度が閾値以下であるか否か、つまり、前眼部の傾斜方向が水平方向にほぼ一致しているか否か、判定する。この閾値は事前に設定され、その大きさは任意である。例えば、前眼部OCT画像の用途に応じて閾値を変更することができる。典型的には、解析用途(計測用途)の前眼部OCT画像に対する閾値は、観察用途の前眼部OCT画像に対する閾値よりも小さく設定されていてよい。
【0143】
更に、制御部210は、傾斜状態評価条件を満足する傾斜情報が生成されたことに対応して固視標の移動を停止するためのLCD39の制御を行う。これにより、前眼部の傾斜方向が水平方向にほぼ一致するような固視標の位置を見つけることができる。つまり、前眼部の傾斜がほぼ無い状態の画像を得ることができる。以上で、固視標移動制御の第2の例の説明を終える。
【0144】
<眼科装置の動作>
眼科装置1の動作について幾つかの例を説明する。なお、患者IDの入力、前眼部OCT用アタッチメント400の測定アームへの挿入など、従来と同様の準備的処理は、既になされたものとする。
【0145】
<第1の動作例>
図8を更に参照して眼科装置1の動作の第1の例を説明する。本例は、眼科装置1の基本的な動作例である。
【0146】
(S1:固視標の提示を開始)
主制御部211は、LCD39を制御して被検眼Eに固視標を提示する。固視標画像の初期表示位置は、例えば、LCD39の表示画面の中心位置であってよい。
【0147】
(S2:前眼部の赤外撮影とライブOCTを開始)
次に、主制御部211は、前眼部Eaの赤外撮影を開始するように眼底カメラユニット2を制御するとともに、前眼部EaにライブOCTスキャンを適用するようにOCT部250を制御する。本例のライブOCTスキャンは、例えば、所定の繰り返しレートでの反復的ATAスキャンであってよい。
【0148】
(S3:準備的処理)
次に、眼科装置1は、ステップS2で取得が開始された前眼部Eaの赤外観察画像及び/又はOCT画像(Bスキャン画像)を参照して所定の準備的処理を実行する。この準備的処理は、例えば、アライメント、フォーカス調整、OCT偏光調整などであってよい。
【0149】
(S4:傾斜情報を生成)
準備的処理が完了したら、主制御部211は、ステップS2で開始されたライブOCTスキャンで得られたOCT画像を傾斜情報生成部231に送る。このOCT画像は、例えば、1回のATAスキャンで収集されたデータから構築された1枚のBスキャン画像であってよく、最新のBスキャン画像であってよい。また、2つ以上のOCT画像を傾斜情報生成部231に提供してもよい。
【0150】
傾斜情報生成部231は、主制御部211から提供されたOCT画像を解析することで、このOCT画像に描出された前眼部Eaの傾斜状態を表す傾斜情報を生成する。2つ以上のOCT画像が提供された場合、傾斜情報生成部231は、例えば、傾斜情報の時系列変化を表す情報(時系列傾斜情報)を作成してもよいし、2つ以上の傾斜情報を統計的に処理してより少数(例えば1つ)の傾斜情報を生成してもよいし、2つ以上の傾斜情報のいずれかを選択してもよいし、これらの処理のうちのいずれか2つ以上を組み合わせた処理を行ってもよい。
【0151】
(S5:固視標提示部を制御)
次に、制御部210は、ステップS4で生成された傾斜情報に基づいてLCD39の制御を行う。
【0152】
(S6:前眼部OCT)
ステップS5の固視標制御の後、制御部210は、(診断用)OCT画像を取得するためのOCTスキャンを前眼部Eaに適用するようにOCT部250を制御する。このOCTスキャンの実行タイミングは任意である。例えば、ステップS5の固視標制御の直後にOCTスキャンを実行してもよいし、固視標制御の後に1つ以上の工程を経てからOCTスキャンを実行してもよい。固視標制御の後に行われる工程の例として、傾斜状態の確認、傾斜状態の評価、情報の表示、操作(指示)の受け付けなどがある。
【0153】
これにより、OCT画像に描出された前眼部Eaの傾斜状態にしたがって固視標の制御を行った後に前眼部EaにOCTスキャンを適用して(診断用)OCT画像を取得することができる。したがって、前眼部Eaの傾斜状態に応じた調整や修正を行ってから前眼部EaにOCTスキャンを適用することができ、診断等に好適なOCT画像を取得することが可能となる。
【0154】
<第2の動作例>
図9を更に参照して眼科装置1の動作の第2の例を説明する。本例は、前述した固視標移動制御の第1の例が適用される場合に実行可能な動作の例である。
図4に示す対応情報2121が事前に記憶部212に記憶される。
【0155】
(S11~S14)
ステップS11~S14は、それぞれ、第1の動作例のステップS1~S4と同じ要領で実行されてよい。
【0156】
(S15:固視標の移動方向と移動量を決定)
制御部210は、ステップS14で生成された傾斜情報に基づき、対応情報2121を参照して、固視標の移動方向及び移動量を決定する。
【0157】
(S16:固視標を移動)
制御部210は、ステップS15で決定された移動方向及び移動量に基づいて固視標を移動させる。例えば、制御部210は、ステップS15で決定された移動方向及び移動量に基づいて、当該移動方向に当該移動量だけ固視標画像の表示位置を移動するようにLCD39の制御を行う。
【0158】
なお、眼科装置1は、ステップS16に続いて、(診断用)OCT画像を取得するための前眼部OCTスキャン(ステップS20)を行うように構成されてもよいが、本動作例では、ステップS16で達成された固視標の位置が好適であるか否か確認するために、以下に説明する例示的なステップS17~S19が実行される。
【0159】
(S17:傾斜情報を生成)
ステップS16において固視標が移動された後、制御部210は、ライブOCTスキャンを実行しているOCT部250により新たに取得されたOCT画像(Bスキャン画像)を傾斜情報生成部231に送る。傾斜情報生成部231は、この新たなOCT画像を解析することで、この新たなOCT画像に描出された前眼部Eaの傾斜状態を表す新たな傾斜情報を生成する。この新たな傾斜情報は、少なくとも傾斜角度を含んでいるものとする。
【0160】
(S18:傾斜角度は閾値未満であるか?)
制御部210は、ステップS17で生成された新たな傾斜情報に含まれる傾斜角度を所定の閾値と比較する。傾斜角度が閾値未満であると判定された場合(S18:Yes)、動作はステップS19に移行する。
【0161】
他方、傾斜角度が閾値以上であると判定された場合(S18:No)、動作はステップS15に戻る。ステップS15~S18の処理は、例えば、ステップS18において傾斜角度が閾値未満である(S18:Yes)と判定されるまで繰り返し実行される。
【0162】
幾つかの例において、制御部210は、予め決められた繰り返し回数に達するまでステップS15~S18の処理を繰り返すことが可能であり、当該繰り返し回数に達したときに動作を停止したり、エラー(固視標を好適な位置に提示できないこと)を出力したりするように、眼科装置1の制御を行うことができる。また、幾つかの例において、制御部210は、予め決められた処理時間に達するまでステップS15~S18の処理を繰り返すことが可能であり、当該処理時間に達したときに動作を停止したり、エラーを出力したりするように、眼科装置1の制御を行うことができる。
【0163】
本動作例では、傾斜角度が閾値以上であると判定された場合(S18:No)、動作をステップS15に戻しているが、ステップS14に戻すようにしてもよい。つまり、傾斜角度が閾値以上であると判定された場合(S18:No)、ライブOCTスキャンを実行しているOCT部250により新たに取得されたOCT画像(Bスキャン画像)から新たな傾斜情報を生成し(S14)、この新たな傾斜情報に基づきステップS15~S18の処理を再び実行するように構成されていてもよい。
【0164】
(S19:「撮影OK」を表示)
ステップS18において傾斜角度が閾値未満である(S18:Yes)と判定されると、制御部210は、固視標が好適な位置に提示されて撮影(前眼部OCTスキャン)の準備が整ったことを示す情報を、表示部241に表示させる。表示された情報を認識したユーザーは、操作部242を用いて撮影指示を行うことができる。
【0165】
なお、このような情報表示及び指示操作を行うことなく、ステップS18において傾斜角度が閾値未満である(S18:Yes)と判定されたことに対応して撮影(前眼部OCTスキャン)を自動で行うようにしてもよい(オートシュート機能)。なお、オートシュート機能を実行する場合においても、撮影の準備が整ったことを示す情報の表示を行うようにしてもよい。
【0166】
(S20:前眼部OCT)
撮影の指示が入力されると(又は、オートシュート機能発動の条件が満足されると)、制御部210は、(診断用)OCT画像を取得するためのOCTスキャンを前眼部Eaに適用するようにOCT部250を制御する。なお、第1の動作例と同様に、このOCTスキャンの実行タイミングは任意であってよい。
【0167】
これにより、第1の動作例と同様に、OCT画像に描出された前眼部Eaの傾斜状態にしたがって固視標の制御を行った後に前眼部EaにOCTスキャンを適用して(診断用)OCT画像を取得することができる。更に、本動作例によれば、OCT画像に描出された前眼部Eaの傾斜状態から移動量や移動方向を自動で決定して固視標を移動することができる。したがって、前眼部Eaの傾斜状態に応じて固視標を好適な位置に移動させてから前眼部EaにOCTスキャンを適用することができ、診断等に好適なOCT画像を取得することが可能となる。また、本動作例によれば、前眼部Eaの傾斜状態に応じた固視標の移動の後に、この移動後の傾斜状態を再度確認することが可能である。更に、移動後の傾斜状態が良好でない場合には、固視標の位置の調整を再び行うことが可能である。
【0168】
<第3の動作例>
図10を更に参照して眼科装置1の動作の第3の例を説明する。本例は、前述した固視標移動制御の第2の例が適用される場合に実行可能な動作の例である。前述したように、対応情報2121を参照してもよいし、しなくてもよい。
【0169】
(S31~S33)
ステップS31~S33は、それぞれ、第1の動作例のステップS1~S3と同じ要領で実行されてよい。
【0170】
(S34:固視標の移動と傾斜情報の生成とを開始)
制御部210は、ステップS32で既に開始されたライブOCTスキャンに加えて、固視標を移動するためのLCD39の制御と、傾斜情報を生成するための傾斜情報生成部231の制御とを開始させる。これにより、LCD39とOCT部250と傾斜情報生成部231の制御との並行的な動作が開始される。
【0171】
(S35:傾斜情報を傾斜状態評価条件と比較)
制御部210は、ステップS34で開始された並行的な動作において傾斜情報生成部231により生成された傾斜情報を、予め設定された傾斜状態評価条件と比較する。例えば、制御部210は、ステップS34で開始された並行的な動作において傾斜情報生成部231により生成された傾斜角度を所定の閾値と比較する。
【0172】
(S36:傾斜情報が条件を満足しているか?)
制御部210は、ステップS35の比較において、傾斜情報が傾斜状態評価条件を満足しているか否か判定する。例えば、制御部210は、傾斜角度が閾値未満であるか否か判定する。傾斜情報が傾斜状態評価条件を満足していると判定された場合(S36:Yes)、動作はステップS37に移行する。
【0173】
他方、傾斜情報が傾斜状態評価条件を満足していないと判定された場合(S36:No)、動作はステップS35に戻る。ステップS34で開始された並行的な動作は依然として実行されている。制御部210は、傾斜情報生成部231により生成された新たな傾斜情報を傾斜状態評価条件と比較する(S35)。ステップS35~S36の処理は、例えば、ステップS36において傾斜角度が傾斜状態評価条件を満足している(S36:Yes)と判定されるまで繰り返し実行される。
【0174】
幾つかの例において、制御部210は、予め決められた繰り返し回数に達するまでステップS35~S36の処理を繰り返すことが可能であり、当該繰り返し回数に達したときに動作を停止したり、エラー(固視標を好適な位置に提示できないこと)を出力したりするように、眼科装置1の制御を行うことができる。また、幾つかの例において、制御部210は、予め決められた処理時間に達するまでステップS35~S36の処理を繰り返すことが可能であり、当該処理時間に達したときに動作を停止したり、エラーを出力したりするように、眼科装置1の制御を行うことができる。
【0175】
(S37:「撮影OK」を表示)
ステップS36において傾斜情報が傾斜状態評価条件を満足している(S36:Yes)と判定されると、制御部210は、固視標が好適な位置に提示されて撮影(前眼部OCTスキャン)の準備が整ったことを示す情報を、表示部241に表示させる。表示された情報を認識したユーザーは、操作部242を用いて撮影指示を行うことができる。
【0176】
なお、このような情報表示及び指示操作を行うことなく、ステップS36において傾斜情報が傾斜状態評価条件を満足している(S36:Yes)と判定されたことに対応して撮影(前眼部OCTスキャン)を自動で行うようにしてもよい(オートシュート機能)。なお、オートシュート機能を実行する場合においても、撮影の準備が整ったことを示す情報の表示を行うようにしてもよい。
【0177】
(S38:前眼部OCT)
撮影の指示が入力されると(又は、オートシュート機能発動の条件が満足されると)、制御部210は、(診断用)OCT画像を取得するためのOCTスキャンを前眼部Eaに適用するようにOCT部250を制御する。なお、第1の動作例と同様に、このOCTスキャンの実行タイミングは任意であってよい。
【0178】
これにより、第1の動作例と同様に、OCT画像に描出された前眼部Eaの傾斜状態にしたがって固視標の制御を行った後に前眼部EaにOCTスキャンを適用して(診断用)OCT画像を取得することができる。更に、本動作例によれば、OCT画像に描出される前眼部Eaの傾斜状態を参照(モニタ)しつつ固視標の好適な位置を探索することができる。したがって、前眼部Eaの傾斜状態に応じて固視標を好適な位置に移動させてから前眼部EaにOCTスキャンを適用することができ、診断等に好適なOCT画像を取得することが可能となる。
【0179】
<動作例の組み合わせ>
第2の動作例の少なくとも一部の工程と第3の動作例の少なくとも一部の工程とを組み合わせることが可能である。例えば、第2の動作例のステップS15~S18の一連の工程と、第3の動作例のステップS34~S36の一連の工程とを、任意の順序で(例えば交互に)行うことができる。
【0180】
<眼科装置の効果>
眼科装置1の効果について説明する。
図11(A)は、第1位置に配置された固視標610が被検眼Eに提示されている状態を示している。このときに取得される前眼部OCT画像(ATAスキャンで得られた画像)630においては、前眼部Eaの像が大きく傾斜している。このような前眼部OCT画像は前眼部解析に適さず、例えば隅角間距離や隅角角度を正確に求めることはできない。
【0181】
このような状況が発生したとき、眼科装置1は、前眼部OCT画像630における前眼部の像の傾斜状態を検出して固視標の制御を行うことができる。固視標の制御により、例えば、被検眼Eに提示される固視標を、
図11(A)に示す第1位置に配置された固視標610から、
図11(B)に示す第2位置に配置された固視標620に変更することができる。これにより、
図11(A)に示す前眼部OCT画像630が得られる状態から、
図11(B)に示す前眼部OCT画像640が得られる状態に移行させることができる。つまり、前眼部Eaの像が傾斜した前眼部OCT画像630が得られる状態から、この傾斜がほぼ解消された前眼部OCT画像640が得られる状態に移行することができる。これにより、隅角解析などの前眼部解析を正確に行うことが可能になる。このように、眼科装置1は、OCT前眼部解析の改善に寄与するものである。
【0182】
<眼科装置の他の態様>
以上に説明した態様では、眼科装置1は、OCT画像における前眼部の描出状態(傾斜状態)に応じて固視標の自動制御を行っている。一方、ここに説明する態様では、ユーザーが固視標の操作を行うものであり、OCT画像における前眼部の描出状態(傾斜状態)に応じてユーザーの操作を支援する。
【0183】
本態様の眼科装置は、上述した眼科装置1と同様のハードウェア構成を有していてよい。ソフトウェア構成については、本態様の特徴的な動作に関するソフトウェア構成を除いて、上述した眼科装置1のソフトウェア構成と同様であってよい。本態様の眼科装置は
図1~
図3に示す構成を有するものとし、これらの図面を適宜参照する。また、本態様の眼科装置の説明においては、
図4に示す構成の代わりに
図12に示す構成を参照する。上述の眼科装置1について説明した任意の事項を本態様の眼科装置に組み合わせることができる。
【0184】
本態様の眼科装置のLCD39(固視標提示部)は、上述した眼科装置1のLCD39と同様に、被検者に固視標を提示する。
【0185】
本態様の眼科装置のOCT部250は、上述した眼科装置1のOCT部250と同様に、被検眼Eの前眼部EaにOCTスキャンを適用して画像を構築する。
【0186】
本態様の眼科装置の傾斜情報生成部231は、上述した眼科装置1の傾斜情報生成部231と同様に、OCT部250により構築された画像に描出された前眼部Eaの傾斜状態を示す傾斜情報を生成する。
【0187】
本態様の眼科装置の操作部242は、ユーザーによる固視標の操作に用いられ、この操作を受けて信号(固視標操作信号)を生成する。
【0188】
本態様の眼科装置の制御部210は、操作部242からの固視標操作信号に基づいて固視標提示部を制御する。これにより、被検眼Eに提示される固視標の位置が変更される。つまり、ユーザーによる固視標の位置の操作が可能となる。
【0189】
更に、本態様の眼科装置の制御部210は、傾斜情報生成部231により生成された傾斜情報に基づく情報を表示部241(表示手段)に表示させる。ここで、傾斜情報に基づき表示される情報は、ユーザーの固視標の位置の操作を支援するための情報を含んでいる。
【0190】
傾斜情報に基づく情報は、例えば、前眼部Eaに対するライブOCTスキャンと並行して逐次に作成され、ライブOCTスキャンで得られるライブOCT画像(リアルタイム動画像)とともに表示される。これにより、ユーザーは、ライブOCT画像における前眼部Eaの傾斜状態をリアルタイムで把握することができ、更に、前眼部Eaの傾斜状態を補正するための固視標の位置の操作について支援を受けることができる。
【0191】
例えば、傾斜情報に基づき表示される情報は、以下に説明する情報のうちのいずれか1つ以上を含んでいてよい:OCT部250により取得された前眼部Eaの画像における所定の基準方向に対する傾斜角度を示す情報(傾斜角度情報);この傾斜角度に対応する固視標の移動量を示す情報(移動量情報);OCT部250により取得された前眼部Eaの画像における所定の基準方向に対する傾斜方向を示す情報(傾斜方向情報);この傾斜方向に対応する固視標の移動方向を示す情報(移動方向情報)。
【0192】
傾斜角度及び傾斜方向は、傾斜情報生成部231によって取得される。傾斜角度情報は、傾斜情報生成部231により取得された傾斜角度(角度の大きさ)を示す任意の表示オブジェクト(図形、文字列、画像など)であってよい。傾斜方向情報は、傾斜情報生成部231により取得された傾斜方向(傾斜の向き)を示す任意の表示オブジェクト(図形、文字列、画像など)であってよい。
【0193】
移動量情報は、傾斜情報生成部231により取得された傾斜角度から作成される。同様に、移動方向情報は、傾斜情報生成部231により取得された傾斜方向から作成される。傾斜情報生成部231により取得された傾斜情報から他の情報(移動量情報、移動方向情報など)を作成する処理は、例えば、上述した眼科装置1の対応情報2121を参照して実行することができる。
【0194】
本態様では、表示部241は眼科装置の要素である。しかし、他の態様の表示手段は、眼科装置の要素でなくてよく、例えば眼科装置の周辺機器であってよい。
【0195】
本態様の眼科装置によれば、OCT画像に描出された前眼部Eaの傾斜状態にしたがって固視標の位置の操作を支援するための情報をユーザーに提供することができる。したがって、ユーザーは、OCT画像における前眼部Eaの傾斜を容易に補正することができ、診断等に好適なOCT画像の取得の容易化を図ることが可能となる。このように、本態様の眼科装置は、OCT前眼部解析の改善に寄与するものである。
【0196】
<眼科装置の制御方法>
幾つかの例示的な態様は、眼科装置を制御する方法を提供する。以下、眼科装置の制御方法の第1及び第2の態様について説明する。上述した眼科装置について説明された任意の事項を制御方法に組み合わせることができる。
【0197】
眼科装置の制御方法の第1の態様について説明する。本態様における眼科装置は、固視標提示部と、スキャン部と、(少なくとも1つの)プロセッサとを含む。固視標提示部は、被検者に固視標を提示するように構成され、例えば上記のLCD39を含む。スキャン部は、被検眼の前眼部にOCTスキャンを適用するように構成され、例えば上記のOCT部250における光学系及び機構(眼底カメラユニット2内の測定アームを形成する要素群、及び、OCTユニット100)を含む。本態様の制御方法を受けてプロセッサは以下の3つの処理を実行する。
【0198】
第1の処理として、プロセッサは、スキャン部により収集されたデータに基づき画像を構築する。第1の処理を実行するプロセッサは、例えば、上記の画像構築部220を含んでいる。
【0199】
第2の処理として、プロセッサは、構築された画像に描出された前眼部Eaの傾斜状態を示す傾斜情報を生成する。第2の処理を実行するプロセッサは、例えば、上記の傾斜情報生成部231を含んでいる。
【0200】
第3の処理として、プロセッサは、生成された傾斜情報に基づき固視標提示部を制御する。第3の処理を実行するプロセッサは、例えば、上記の制御部210を含んでいる。
【0201】
このような第1の態様によれば、OCT画像に描出された前眼部Eaの傾斜状態にしたがって固視標の制御を行った後に前眼部EaにOCTスキャンを適用して(診断用)OCT画像を取得することができる。したがって、前眼部Eaの傾斜状態に応じた調整や修正を行ってから前眼部EaにOCTスキャンを適用することができ、診断等に好適なOCT画像を取得することが可能となる。
【0202】
眼科装置の制御方法の第2の態様について説明する。本態様における眼科装置は、固視標提示部と、スキャン部と、操作部と、(少なくとも1つの)プロセッサとを含む。固視標提示部は、被検者に固視標を提示するように構成され、例えば上記のLCD39を含む。スキャン部は、被検眼の前眼部にOCTスキャンを適用するように構成され、例えば上記のOCT部250における光学系及び機構(眼底カメラユニット2内の測定アームを形成する要素群、及び、OCTユニット100)を含む。操作部は、ユーザーの操作を受けて信号を生成するように構成され、例えば上記の操作部242を含む。本態様の制御方法を受けてプロセッサは以下の4つの処理を実行する。
【0203】
第1の処理として、プロセッサは、プロセッサは、スキャン部により収集されたデータに基づき画像を構築する。第1の処理を実行するプロセッサは、例えば、上記の画像構築部220を含んでいる。
【0204】
第2の処理として、プロセッサは、構築された画像に描出された前眼部Eaの傾斜状態を示す傾斜情報を生成する。第2の処理を実行するプロセッサは、例えば、上記の傾斜情報生成部231を含んでいる。
【0205】
第3の処理として、プロセッサは、生成された傾斜情報に基づく情報を表示手段に表示させる。第3の処理を実行するプロセッサは、上記の制御部210を含んでいる。表示手段は、眼科装置の要素(表示部241など)であってもよいし、眼科装置の周辺機器などであってもよい。
【0206】
第4の処理として、プロセッサは、操作部からの信号に基づいて固視標提示部を制御する。第4の処理を実行するプロセッサは、上記の制御部210を含んでいる。
【0207】
例えば、ユーザーは、第3の処理で表示された情報を参照して固視標を移動するための操作を実行することができる。眼科装置は、この操作を受けて第4の処理を実行することで固視標を移動させる。
【0208】
このような第2の態様によれば、OCT画像に描出された前眼部Eaの傾斜状態にしたがって固視標の位置の操作を支援するための情報をユーザーに提供することができる。したがって、ユーザーは、OCT画像における前眼部Eaの傾斜を容易に補正することができ、診断等に好適なOCT画像の取得の容易化を図ることが可能となる。
【0209】
<プログラム及び記録媒体>
幾つかの例示的な態様は、上述の制御方法をコンピュータ(眼科装置)に実行させるプログラムを提供する。例えば、眼科装置の制御方法の第1の態様をコンピュータに実行させるプログラムを作成することができる。また、眼科装置の制御方法の第2の態様をコンピュータに実行させるプログラムを作成することができる。これらのプログラムに対して、上述した眼科装置について説明された任意の事項を組み合わせることが可能である。
【0210】
このようなプログラムを記録したコンピュータ可読な非一時的記録媒体を作成することが可能である。例えば、眼科装置の制御方法の第1の態様をコンピュータに実行させるプログラムが記録された、コンピュータ読み取り可能な非一時的記録媒体を作成することができる。また、眼科装置の制御方法の第2の態様をコンピュータに実行させるプログラムが記録された、コンピュータ読み取り可能な非一時的記録媒体を作成することができる。これらの記録媒体に対して、上述した眼科装置について説明された任意の事項を組み合わせることが可能である。非一時的記録媒体は任意の形態であってよく、その例として、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリなどがある。
【0211】
以上に開示された構成は、この発明の実施態様の幾つかの例に過ぎない。この発明を実施しようとする者は、この発明の要旨の範囲内において任意の変形(省略、置換、付加等)を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0212】
1 眼科装置
39 LCD
210 制御部
211 主制御部
212 記憶部
2121 対応情報
231 傾斜情報生成部
240 ユーザーインターフェイス
241 表示部
242 操作部
250 OCT部