(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002319
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】管継手用アダプター
(51)【国際特許分類】
F16L 37/091 20060101AFI20241226BHJP
F16L 37/12 20060101ALI20241226BHJP
F16L 21/08 20060101ALI20241226BHJP
F16L 55/00 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
F16L37/091
F16L37/12
F16L21/08 G
F16L55/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102404
(22)【出願日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000128968
【氏名又は名称】株式会社オンダ製作所
(72)【発明者】
【氏名】岸 佑樹
【テーマコード(参考)】
3H015
3J106
【Fターム(参考)】
3H015JA02
3J106BC04
3J106BD01
3J106EA03
3J106EB12
3J106EC01
3J106ED12
3J106EE01
(57)【要約】
【課題】異なる構成の管継手にも対応が容易な管継手用アダプターを提供する。
【解決手段】変換アダプター1は、第2の管継手50Bが備えた継手部51に対して挿入するための合成樹脂製の筒状部101と、筒状部101に連設され継手部51とは異なる継手構成の本体部102とを備えている。筒状部101の周面には、第2の管継手50Bの継手部51が一つ有するパイプ抜け止め用のロックリング52が入り込んで係合される係合溝2及び継手部51が有するパイプシール用のシールリング53が接触されるシール面103がそれぞれ周方向において環状に設けられている。筒状部101の周面において係合溝2とシール面103との間でシール面103と同一円筒面上には、第2の管継手50Bとは別の第1の管継手の継手部が二つ有するパイプ抜け止め用のロックリングがともに食い込んで係合される係合領域3が設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管継手が備えた継手部に対して挿入するための合成樹脂製の筒状部と、前記筒状部に連設され前記継手部とは異なる継手構成又は封止プラグ構成の本体部とを備えた管継手用アダプターであって、前記筒状部の周面には、前記継手部が一つ有するパイプ抜け止め用のロックリングが入り込んで係合される係合溝及び前記継手部が有するパイプシール用のシールリングが接触されるシール面がそれぞれ周方向において環状に設けられ、前記筒状部の周面において前記係合溝と前記シール面との間で前記シール面と同一円筒面上には、前記管継手とは別の管継手の継手部が二つ有するパイプ抜け止め用のロックリングがともに食い込んで係合される係合領域が設けられた管継手用アダプター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管継手が有する継手部の構造を変換するために用いられる変換アダプターや、隣接した管継手の継手部同士を連結するために用いられる連結アダプター等の管継手用アダプターに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、パイプの外表面シール構造から内表面シール構造への変換用継手が開示されている。このような継手としては、他にも非特許文献1に示す変換アダプター(例えば「HJS型 変換アダプター」)が存在する。当該変換アダプターは、非特許文献2の第1の管継手(例えば「WH型 ダブルロックヘッダー」)及び非特許文献3の第2の管継手(例えば「AE型 ヘッダー」)のそれぞれに対して使用が可能である。
【0003】
図7は、非特許文献1の変換アダプター100を、非特許文献2の第1の管継手50Aに対して使用した状態を示している。第1の管継手50Aは、図示しない樹脂製パイプを接続するための継手部51を端部に備えている。継手部51は、周知のワンタッチ式の継手構造を備えるものであって、二つのロックリング52と二つのシールリング53とを有している。
【0004】
金属製のロックリング52は、継手部51に挿入される樹脂製パイプの外周面に対して食い込むことで、樹脂製パイプの抜け止めを行うものである。シールリング53は、樹脂製パイプの外周面に当接して、第1の管継手50Aと樹脂製パイプとの水密性を確保するものであって、樹脂製パイプの挿入方向(紙面左右方向)に沿って二つ設けられている。二つのシールリング53は、ロックリング52よりも継手部51の奥側に配置されている。シールリング53よりも継手部51の奥側において、第1の管継手50Aの内周面は縮径され、樹脂製パイプの挿入位置を当接規定するための当接面54が形成されている。
【0005】
変換アダプター100は、第1の管継手50Aの継手部51に挿入するための筒状部101と、筒状部101に連設され、継手部51とは異なる継手構造の本体部102とを備えている。筒状部101及び本体部102は、黄銅や青銅等の金属製である。本体部102は、筒状部101よりも大きい外径を有するとともに、内周面にはシール面103が設けられている。本体部102には、シールリング60を外周面に有するプラグ61が挿入接続される。プラグ61は、プラグ61のフランジ62と本体部102のフランジ104とがクイックファスナ71によって挟持されることで、変換アダプター100から離脱しないようにされる。
【0006】
変換アダプター100は、本体部102が継手部51の開口端面55に当接する位置まで第1の管継手50Aに挿入されている。筒状部101の先端部105は、外周面及び内周面に形成されたテーパ面を備え、先端に向かうほど薄肉となっている。筒状部101の挿入方向において、筒状部101の先端は、第1の管継手50Aの奥側のシールリング53と当接面54との間に位置している。
【0007】
筒状部101の外周面には、第1係合溝106、第2係合溝107及びシール面108がそれぞれ周方向において環状に設けられている。第1係合溝106、第2係合溝107及びシール面108は、本体部102側から筒状部101の先端に向かってこの順に位置している。第2係合溝107には、第1の管継手50Aのロックリング52が係合されることで、変換アダプター100の抜け止めが行われる。シール面108には、第1の管継手50Aの二つのシールリング53が接触されて管継手50Aと変換アダプター100との水密性が確保される。
【0008】
以上のように、変換アダプター100を第1の管継手50Aに対して挿入し、本体部102を継手部51の開口端面55に対して当接させることで、ロックリングタイプの継手部51が、本体部102によるクイックファスナタイプの継手構造に変換される。
【0009】
図8は、非特許文献1の変換アダプター100を、非特許文献3の第2の管継手50Bに対して使用した状態を示している。第2の管継手50Bは、一つのロックリング52と一つのシールリング53とを備えるワンタッチ式の管継手であって、略円筒状の外筒部56と外筒部56の内部に形成された内筒部57との間に、樹脂製パイプが挿入されるものである。
【0010】
外筒部56と内筒部57との間には、樹脂製パイプの先端に押圧されて樹脂製パイプの挿入を案内する挿入ガイド58が配置されている。継手部51においてシールリング53よりも奥側では、外筒部56と内筒部57とが連結されて、挿入ガイド58の挿入位置を当接規制するための当接面54が形成されている。樹脂製パイプの先端に押圧された挿入ガイド58が、当接面54に当接することで、第2の管継手50Bに対する樹脂製パイプの挿入位置が規定される。
【0011】
第2の管継手50Bは、第1の管継手50Aとは異なる構成を有しており、継手部51における開口端面55からロックリング52までの距離が、第1の管継手50Aにおける当該距離よりも短い。したがって、変換アダプター100を第2の管継手50Bに対して挿入し、本体部102を継手部51の開口端面55に対して当接させた状態において、ロックリング52は、変換アダプター100の第1係合溝106に対して係合される。
【0012】
つまり、変換アダプター100は、第1係合溝106及び第2係合溝107を備えることにより、継手部51の構成が互いに異なる第1の管継手50A及び第2の管継手50Bにそれぞれ対応している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】オンダ製作所総合カタログ VOL45 89頁
【非特許文献2】オンダ製作所総合カタログ VOL45 110頁
【非特許文献3】オンダ製作所総合カタログ VOL45 95頁
【非特許文献4】オンダ製作所総合カタログ VOL45 227頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところが、第1の管継手50A及び第2の管継手50Bとは異なる構成の継手部を有した別の管継手に対して、変換アダプター100を使用した場合、継手部のロックリングと筒状部101の第1係合溝106、第2係合溝107との位置関係及び/又は継手部51のシールリング53と筒状部101のシール面108との位置関係が、筒状部101の軸線方向へ大きくずれることがあった。
【0016】
したがって、ロックリング52と第1係合溝106又は第2係合溝107との好適な係合関係を実現できなかったり、シールリング53とシール面108との好適な接触関係を実現できなかったりすることがあった。
【0017】
例えば、
図9は、非特許文献1の変換アダプター100を、非特許文献4のワンタッチ式の第3の管継手50C(例えば「ソケット」)に対して使用した状態を示している。変換アダプター100を、第1の管継手50Aや第2の管継手50Bとは構成が異なる第3の管継手50Cに対して使用した場合、第1係合溝106にロックリング52が係合される一方、二つのシールリング53のうちロックリング52側のシールリング53の位置に第2係合溝107が配置され、パイプシール機能が損なわれる。よって、第3の管継手50Cに対しては、例えば第2係合溝107を削除した変換アダプターを、変換アダプター100とは別に準備する必要があった。
【0018】
本発明の目的は、異なる構成の管継手にも対応が容易な管継手用アダプターを提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記目的を達成するために請求項1の発明は、管継手が備えた継手部に対して挿入するための合成樹脂製の筒状部と、前記筒状部に連設され前記継手部とは異なる継手構成又は封止プラグ構成の本体部とを備えた管継手用アダプターであって、前記筒状部の周面には、前記継手部が一つ有するパイプ抜け止め用のロックリングが入り込んで係合される係合溝及び前記継手部が有するパイプシール用のシールリングが接触されるシール面がそれぞれ周方向において環状に設けられ、前記筒状部の周面において前記係合溝と前記シール面との間で前記シール面と同一円筒面上には、前記管継手とは別の管継手の継手部が二つ有するパイプ抜け止め用のロックリングがともに食い込んで係合される係合領域が設けられた管継手用アダプターである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の管継手用アダプターは、別の管継手の継手部が二つ有するロックリングがともに食い込んで係合される係合領域が、係合溝とは別に設けられており、当該管継手のロックリングに対応するために係合溝を設ける場合と比較して、当該管継手に対する対応が容易となる。ロックリングが食い込んで係合される係合領域は、筒状部(係合領域)が合成樹脂製であることにより、容易に実現される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態の変換アダプターを第1の管継手に接続した状態を示す縦断面図。
【
図2】第1実施形態の変換アダプターを第2の管継手に接続した状態を示す縦断面図。
【
図3】第1実施形態の変換アダプターを第3の管継手に接続した状態を示す縦断面図。
【
図4】第2実施形態の連結アダプターを第1の管継手に接続した状態を示す縦断面図。
【
図5】第2実施形態の連結アダプターを第2の管継手に接続した状態を示す縦断面図。
【
図6】第2実施形態の連結アダプターを第3の管継手に接続した状態を示す縦断面図。
【
図7】従来の変換アダプターを第1の管継手に接続した状態を示す縦断面図。
【
図8】従来の変換アダプターを第2の管継手に接続した状態を示す縦断面図。
【
図9】従来の変換アダプターを第3の管継手に接続した状態を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した第1実施形態及び第2実施形態について説明する。
(第1実施形態)
【0023】
図1~
図3に示すように、管継手用アダプターとしての変換アダプター1は、筒状部101及び本体部102がポリフェニレンサルファイド(PPS)〔エンジニアリングプラスチック〕等の合成樹脂製であること、係合溝2が一つでかつ軸線方向に長いこと、係合溝2とシール面108との間にシール面108と同一円筒面上(換言すれば係合溝2より大径)の係合領域3を備えていること以外は、従来の変換アダプター100と同じ構成である。
【0024】
図1は、変換アダプター1を第1の管継手50Aに接続した状態を示している。二つのロックリング52は、変換アダプター1の係合溝2ではなく、係合領域3に対して食い込んで係合されている。
図2は、変換アダプター1を第2の管継手50Bに接続した状態を示している。第2の管継手50Bの一つのロックリング52は、変換アダプター1の係合溝2に対して係合されている。
図3は、変換アダプター1を第3の管継手50Cに接続した状態を示している。第3の管継手50Cの一つのロックリング52は、変換アダプター1の係合溝2に対して係合されている。
【0025】
図1~
図3のいずれの状態においても、シールリング53の位置にはシール面108が配置されており、換言すれば当該位置に係合溝2が配置されることはなく、よってパイプシール機能が係合溝2によって損なわれることはない。このことには、第1の管継手50Aの継手部51が二つ有するロックリング52がともに食い込んで係合される係合領域3を有していることが大きく寄与している。
【0026】
つまり、第1の管継手50Aの継手部51が二つ有するロックリング52がともに食い込んで係合される係合領域3が、係合溝2とは別に設けられており、第1の管継手50Aのロックリング52に対応するための係合溝を設ける場合と比較して、第1の管継手50Aに対する対応が容易となる。ロックリング52が食い込んで係合される係合領域3は、筒状部101(係合領域3)が合成樹脂製であることにより、容易に実現される。
【0027】
(第2実施形態)
図4~
図6に示すように、管継手用アダプターとしての連結アダプター10は、本体部102に替えて一対の筒状部101を同一軸線上に備えていること、一対の筒状部101の間で同一軸線上にフランジ部11を備えていること以外は、第1実施形態の変換アダプター1と同じ構成である。つまり、連結アダプター10は、互いに接近して配置された管継手(第1の管継手50A~第3の管継手50C)の継手部51同士を連結するためのものである。なお、連結アダプター10を第1の管継手50A、第3の管継手50Cに接続した状態において、一対の筒状部101の端部には、それぞれ金属からなる円筒状のインコア12が挿入されている。
【0028】
(別例)
〇変換アダプター1の本体部102を、止水用の封止プラグ構成とすること。
【0029】
〇変換アダプター1の本体部102を、継手部51とは異なる呼び径のワンタッチ式の継手構造として、サイズ変換用の構成とすること。
【0030】
〇変換アダプター1の本体部102を、流路方向変換用のエルボ継手構成とすること。
【0031】
〇変換アダプター1の本体部102を、複数の接続口を備える分岐継手構成とすること。
【0032】
〇変換アダプター1の本体部102を、ねじ接続用の構成とすること。
【0033】
〇変換アダプター1の本体部102を、継手部51に接続される樹脂製パイプとは異なる管種のパイプに対応した継手構造として、管種変換用の構成とすること。
【0034】
〇変換アダプター1の本体部102に流路を開閉するバルブを備える構成とすること。
【0035】
〇変換アダプター1の本体部102を、水抜き用の吸気弁構成とすること。
【符号の説明】
【0036】
1…変換アダプター、2…係合溝、3…係合領域。
10…連結アダプター、11…フランジ部、12…インコア。
50A~50C…第1の管継手~第3の管継手、51…継手部、52…ロックリング、53…シールリング、54…当接面、55…開口端面、56…外筒部、57…内筒部、58…挿入ガイド。
60…シールリング、61…プラグ、62…フランジ。
71…クイックファスナ。
100…変換アダプター、101…筒状部、102…本体部、103…シール面、104…フランジ、105…先端部、106…第1係合溝、107…第2係合溝、108…シール面。