(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025023229
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】スクリュー圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04C 18/16 20060101AFI20250206BHJP
【FI】
F04C18/16 C
F04C18/16 Q
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024210186
(22)【出願日】2024-12-03
(62)【分割の表示】P 2019184225の分割
【原出願日】2019-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】谷本 聖太
(72)【発明者】
【氏名】頼金 茂幸
(72)【発明者】
【氏名】小松 智弘
(72)【発明者】
【氏名】土屋 豪
(72)【発明者】
【氏名】千葉 紘太郎
(57)【要約】
【課題】
給液機構の設置可能な範囲を拡大するスクリュー圧縮機を提供することにある。
【解決手段】
スクリュー圧縮機は、スクリューロータと、スクリューロータを収容するケーシングと、ケーシングで囲まれる作動室へ液体を供給する給液機構とを備え、スクリューロータは、吸込端面から吐出端面に向かって軸方向にピッチが変化する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリューロータと、
前記スクリューロータを収容するケーシングと、
前記ケーシングで囲まれる作動室へ液体を供給する給液機構とを備え、
前記スクリューロータは、
吸込端面から吐出端面に向かって軸方向にピッチが変化することを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項2】
請求項1に記載のスクリュー圧縮機において、
前記給液機構は、
前記ケーシングに貫通させた穴から前記スクリューロータに給液することを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項3】
請求項1に記載のスクリュー圧縮機において、
前記スクリューロータは、
前記吸込端面から前記吐出端面に向かって、ピッチが大きくなることを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項4】
請求項1に記載のスクリュー圧縮機において、
前記スクリューロータは、
前記吸込端面から前記吐出端面に向かって、ピッチが小さくなることを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項5】
請求項3に記載のスクリュー圧縮機において、
前記給液機構は、
吐出端面側に配置されることを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項6】
請求項4に記載のスクリュー圧縮機において、
前記給液機構は、
吸込端面側に配置されることを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項7】
請求項3に記載のスクリュー圧縮機において、
前記スクリューロータと前記スクリューロータの軸方向に直交する断面の形状および寸法、全巻角、および長さが同じでありピッチが等間隔のスクリューロータにおけるボア内壁のある位置に設置した給液口が連通する前記作動室の圧力が、
前記スクリューロータの同じ位置に設置した給液口が連通する前記作動室の圧力より高くなる位置に前記給液機構が配置されることを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項8】
請求項4に記載のスクリュー圧縮機において、
前記スクリューロータと前記スクリューロータの軸方向に直交する断面の形状および寸法、全巻角、および長さが同じでありピッチが等間隔のスクリューロータにおけるボア内壁のある位置に設置した給液口が連通する前記作動室の圧力が、
前記スクリューロータの同じ位置に設置した給液口が連通する前記作動室の圧力より高くなる位置に前記給液機構が配置されることを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項9】
請求項3に記載のスクリュー圧縮機において、
前記スクリューロータのヘリックス角が、
前記スクリューロータと前記スクリューロータの軸方向に直交する断面の形状および寸法、全巻角、および長さが同じでありピッチが等間隔のスクリューロータにおけるヘリックス角と等しくなる点を含み、
かつ前記吸込端面および前記吐出端面と平行な面よりも前記吐出端面よりに、前記給液機構が配置されることを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項10】
請求項4に記載のスクリュー圧縮機において、
前記スクリューロータのヘリックス角が、
前記スクリューロータと前記スクリューロータの軸方向に直交する断面の形状および寸法、全巻角、および長さが同じでありピッチが等間隔のスクリューロータにおけるヘリックス角と等しくなる点を含み、
かつ前記吸込端面および前記吐出端面と平行な面よりも前記吸込端面よりに、前記給液機構が配置されることを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載のスクリュー圧縮機において、
前記給液機構は、
微粒給液口を備えることを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載のスクリュー圧縮機において、
前記スクリューロータの軸方向に、複数の給液口を備えたことを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項13】
請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載のスクリュー圧縮機において、
前記給液機構は、少なくとも1つ以上の微粒給液口と、少なくとも1つ以上のキリ穴給液口とを備えることを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項14】
請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載のスクリュー圧縮機において、
前記給液機構は、
噴流衝突ノズルまたはファンスプレーノズルを備えることを特徴とするスクリュー圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給液式のスクリュー圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリュー圧縮機には、作動室に液体を供給しながら駆動するものがある。液体の供給によってスクリューロータが潤滑されると同時に、作動流体の冷却効果・内部漏洩の抑制効果が得られることが知られている。一方で、回転するスクリューロータが供給された液体を吐出ポートまで運搬する動力が必要となり、圧縮機の省エネ性能を下げてしまう。
【0003】
動力増加の対策例として特許文献1には、給油式のスクリュー圧縮機において、供給する油の拡散を効率よくすることで冷却効率を向上させ、少量の油噴射で効率よく圧縮空気を冷却し、スクリューロータによる油撹拌損失を低減する技術が記載されている。
【0004】
また、一般的な差圧による給液だと、給液口の設置可能位置は、給液元圧よりも低圧の作動室に連通する箇所に限られるという制約がある。加えて、必要給液量を満たすには給液元圧と給液口が連通する作動室の圧力との圧力差を十分に大きくとる必要があり、給液口の設置可能な範囲が限定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
給液式のスクリュー圧縮機は、スクリューロータの潤滑に必要な最低限の給液量が決まっているため、特許文献1に記載されるような給液量を減らす方法によって撹拌損失を低減することには限界がある。そこで給液量を変えず撹拌損失を低減するには、給液口を吐出ポートに近づける対策が有効であるが、給液口の設置可能な範囲が制限されるという課題がある。
【0007】
また近年は圧縮機の高速化・小型化によって、スクリューロータやケーシングが小型化し、給液口の設置可能な範囲が縮小してしまい、給液口の設置数や設置箇所等の設計自由度が下がってしまう課題がある。
【0008】
そこで、本発明者らはスクリューロータのピッチが変化する場合において給液口の設置可能な範囲を広げることができることを見出した。
【0009】
本発明の目的は、給液機構の設置可能な範囲を拡大するスクリュー圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の好ましい一例としては、スクリューロータと、前記スクリューロータを収容するケーシングと、前記ケーシングで囲まれる作動室へ液体を供給する給液機構とを備え、
前記スクリューロータは、
吸込端面から吐出端面に向かって軸方向にピッチが変化するスクリュー圧縮機である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、給液機構の設置可能な範囲を拡大できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1におけるスクリューロータの側面図である。
【
図4】一般的なスクリュー圧縮機の給油経路を示す図である。
【
図5】(a)は、実施例1におけるピッチが変化するスクリューロータの側面図であり、(b)は、(a)のスクリューロータとスクリューロータの軸方向と直交する断面の形状などが等しい等ピッチのスクリューロータの側面図である。
【
図6】(a)は
図5とは回転角が異なる実施例1におけるピッチが変化するスクリューロータの側面図であり、(b)は(a)のスクリューロータとスクリューロータの軸方向と直交する断面の形状などが等しい等ピッチのスクリューロータの側面図である。
【
図7】実施例2におけるスクリューロータの側面図である。
【
図8】実施例2における給液ノズルの断面図である。
【
図9】実施例2における給液ノズルの断面図である。
【
図10】実施例2におけるスリット部と作動空間の接続部を示す図である。
【
図11】(a)は実施例3におけるピッチが変化するスクリューロータの側面図であり、(b)は(a)のスクリューロータとスクリューロータの軸方向と直交する断面の形状などが等しい等ピッチのスクリューロータの側面図である。
【
図12】(a)は
図11とは回転角が異なる実施例3におけるピッチが変化するスクリューロータの側面図であり、(b)は(a)のスクリューロータとスクリューロータの軸方向と直交する断面の形状などが等しい等ピッチのスクリューロータの側面図である。
【
図13】実施例3におけるピッチが変化するスクリューロータの側面図である。
【
図14】実施例4におけるピッチが変化するスクリューロータの側面図である。
【
図15】実施例1における作動室の吸込端面からの距離と圧力の関係を表すグラフである。
【
図16】実施例3における作動室の吸込端面からの距離と圧力の関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施例の説明に先立って、スクリュー圧縮機の全体構成を説明する。
図2および
図3に、スクリュー圧縮機の構成を示す。
図2はスクリュー圧縮機の構成図、
図3は
図2のA-A断面である。
【0014】
スクリュー圧縮機1は、ねじれた歯(ローブ)を持ち互いに噛み合って回転する雄スクリューロータ2と雌スクリューロータ3を備えたスクリューロータ、それらを収納するケーシング4、雌雄両スクリューロータをそれぞれ回転自在に支持するための吸込側軸受5と吐出側軸受6、およびオイルシールまたはメカニカルシールなどの軸封部品7によって構成される。
【0015】
一般的には、雄スクリューロータ2は吸込側端部にスクリューロータ軸を介して回転駆動源であるモータ8に接続される。また、雄スクリューロータ2および雌スクリューロータ3は、それぞれケーシング4の雄側ボア9および雌側ボア10に対して数十~数百μmのすき間を保って収容される。
【0016】
ここで、スクリューロータの軸方向は、
図2のE方向で示す方向である。
【0017】
モータ8によって回転駆動された雄スクリューロータ2は、雌スクリューロータ3を回転駆動し、雌雄両方のスクリューロータの歯溝とそれを囲む雄側ボア9および雌側ボア10とで形成される作動空間11が膨張および収縮することによって、空気等の流体を吸込口12から吸入し、所定の圧力まで圧縮したのち、吐出流路13から吐出する。
【0018】
また、作動空間11、吸込側軸受5、吐出側軸受6、および軸封部品7に対して、スクリュー圧縮機1の外部から給液口14、吸込側軸受給液口15、および吐出側軸受給液口16を介して液体が注入される。
【0019】
図3において、符号14aは雄側ボアの給液口を、符号14bは雌側ボアの給液口を示す。
【0020】
図4に、スクリュー圧縮機1に供給される液体の外部経路を示す。液体経路は、スクリュー圧縮機1、遠心分離機17、冷却器18、フィルタや逆支弁などの補機19、およびそれらを接続する配管20によって構成される。
【0021】
スクリュー圧縮機1から吐出された圧縮気体中には、圧縮機内部に外部から注入された油もしくは水などの液体が混入している。圧縮気体中に混入した液体は、遠心分離機17によって圧縮気体から分離され、冷却器18によって冷却された後、補機19を介して分岐し、再度、給液口14からスクリュー圧縮機1内部の作動空間11へ、吸込側軸受給液口15から吸込側軸受5へ、吐出側軸受給液口16から吐出側軸受6へ供給される。
【0022】
なお、液体経路の分岐点は、
図4に示したようにスクリュー圧縮機1の外部に限られるものではなく、スクリュー圧縮機1のケーシング4の内部において分岐するものも含まれる。
【0023】
本実施例はこのようなスクリュー圧縮機において、給液口の設置可能な範囲を拡大することで、撹拌損失の低減や冷却効率の増大といった効果を得、省エネ性能の高いスクリュー圧縮機を提供するものである。
【0024】
尚、
図2、
図3のスクリューロータは、スクリューロータのローブ間の距離であるピッチが変化しない一般的なスクリューロータを示した。実施例においては、
図2、
図3とスクリューロータ以外は共通であるが、スクリューロータは実施例ごと異なり、ピッチも吸込端面から吐出端面にかけて変化する。
【0025】
ここで、吸込端面とは、雌または雄のスクリューロータにおける
図2の吸込口12に近い側の端面である。また吐出端面とは雌または雄のスクリューロータにおける
図2の吐出流路13に近い側の端面である。
【実施例0026】
図1、
図2、
図3、
図5、
図6、
図15を用いて実施例1について説明する。なお本実施例は給液式スクリュー空気圧縮機に関するものである。本実施例の説明では、前述したのと同じ箇所については同じ記号を付して説明する。
【0027】
本実施例では、
図3に示した雄スクリューロータ2、雌スクリューロータ3それぞれが、
図1に示したピッチが変化する雄スクリューロータ21、ピッチが変化する雌スクリューロータ22であるとし、
図1に示した面Cよりも吐出端面側にキリ穴給液口27を設置している。ピッチが変化する雄スクリューロータ21およびピッチが変化する雌スクリューロータ22は、吸込端面から吐出端面に向かって、つまりスクリューロータの軸方向にピッチが大きくなるスクリューロータである。
【0028】
図5(a)には、ピッチが変化する雄スクリューロータ21およびピッチが変化する雌スクリューロータ22を、
図2におけるB方向から見た図を示し、上側が吸込端面、下側が吐出端面である。本実施例のスクリューロータと従来スクリューロータを比較するため、
図5(b)に等ピッチの雄スクリューロータ23と等ピッチの雌スクリューロータ24を
図2においてB方向から見た図を示している。
【0029】
ただし、等ピッチの雄スクリューロータ23は、スクリューロータ軸と直交する断面の形状と寸法、スクリューロータ長さ、全巻角に関して、ピッチが変化する雄スクリューロータ21に等しく、吸込端面から吐出端面に向かってピッチが変化しないスクリューロータと定義する。
【0030】
等ピッチの雌スクリューロータ24は、スクリューロータ軸に直交する断面の形状と寸法、スクリューロータ長さ、全巻角に関して、ピッチが変化する雌スクリューロータ22に等しく、吸込端面から吐出端面に向かってピッチが変化しないスクリューロータと定義する。
【0031】
このように、等ピッチの雄雌のスクリューロータと、ピッチが変化する雄雌のスクリューロータの関係を定義する。それは、前述した略同条件で比較することで、従来は給液式のスクリューロータで用いられた等ピッチのスクリューロータに比べて、ピッチが変化するスクリューロータを用いることで、給油口の設置可能な範囲を拡大することを説明するためである。
【0032】
ここで、面Cについて定義するため、スクリューロータ歯先のある点での峰線と、スクリューロータ端面に平行な面とが成す鋭角をヘリックス角と定義する。等ピッチの雄スクリューロータ23のヘリックス角と、ピッチが変化する雄スクリューロータ21のヘリックス角が同値になる点を点Cとする。また、点Cを含み、スクリューロータ端面と平行な面を面Cとする。
【0033】
図6を用いて本実施例の作用と効果について説明する。
図6(a)に本実施例のピッチが変化する雄スクリューロータ21およびピッチが変化する雌スクリューロータ22を
図2におけるB方向からみた図を示す。
図6(b)に、等ピッチの雄スクリューロータ23および等ピッチの雌スクリューロータ24を
図2においてB方向から見た図を示す。
図6は
図5とは回転角が異なるスクリューロータを示す。
【0034】
ここで作動室容積は、作動室の軸方向長さと、スクリューロータ軸方向と直交するスクリューロータ断面の溝面積の積で求まるが、
図6(a)のスクリューロータと
図6(b)のスクリューロータは軸方向と直交する断面形状が等しいため、作動室の軸方向長さが等しければ、その作動室の容積は等しくなる。
【0035】
図6(a)の作動室25と
図6(b)の作動室26は軸方向長さが等しく、容積が等しいことから、作動室圧力が同じであるとすると、給液口をどちらのスクリューロータ仕様の作動室に連通させた場合でも、同じ給液機構を用いた場合、作動室25、作動室26のいずれにも同流量の給液が可能である。ここで、作動室26を形成するローブ峰線の軸方向の間隔に比べて、作動室25を形成するローブ峰線の軸方向の間隔は広く、給液口を連通できるボア内壁面上の領域は、作動室26よりも作動室25の方が広い。
【0036】
また、
図15に吸込端面から吐出端面に向かってピッチが大きくなるスクリューロータの作動室圧力41と等ピッチのスクリューロータの作動室圧力40それぞれについて、作動室の吸込端面からの軸方向距離を横軸、作動室の圧力を縦軸としたグラフを示した。ここで、作動室の吸込端面からの軸方向距離は、作動室を形成するローブ峰線のうち吸込端面側の峰線の雄スクリューロータ軸上の位置とした。
【0037】
圧縮行程後半(グラフ上側)では、同じ圧力にある作動室を比較したとき、等ピッチのスクリューロータよりもピッチが変化するスクリューロータの方が、作動室位置が吐出端面側に近く、給液口をより吐出端面に近い範囲まで設置できることが分かる。
【0038】
つまり、
図15のグラフからわかるように、スクリューロータが吸込端面から吐出端面に向かって、ピッチが大きくなる場合には、等間隔のピッチのスクリューロータに比べて、給液機構を吐出端面側に配置することで、設置可能な範囲を広くすることができる。ここで吐出端面側は、
図15の右方向側である。
【0039】
図15で、等ピッチのスクリューロータの線グラフと吸込端面から吐出端面に向かってピッチが大きくなるスクリューロータの線グラフが交差した点における横軸(作動室の吸込端面からの距離)の位置は、
図5の点Cに相当する。
【0040】
点Cより右側、つまり等間隔ピッチのスクリューロータの線グラフが、吸込端面から吐出端面に向かってピッチが大きくなるスクリューロータの線グラフを作動室圧力(縦軸)に関して越える範囲である。
【0041】
その範囲は、吸込端面から吐出端面に向かってピッチが大きくなるスクリューロータとスクリューロータの軸方向に直交する断面の形状および寸法、全巻角、および長さが同じでありピッチが等間隔のスクリューロータにおける、ある位置での作動室の圧力が、吸込端面から吐出端面に向かってピッチが大きくなるスクリューロータの同じ位置の作動室の圧力より高くなる範囲である。
そのような範囲に給液機構を配置すると、等間隔のスクリューロータを使う場合に比べて給液機構の設置可能範囲を拡大することができる。
【0042】
図15のデータをシミュレーション、もしくは実験で取得することにより、スクリューロータが吸込端面から吐出端面に向かってピッチが大きくなる場合に、スクリューロータとロータ軸方向に直交する断面の形状および寸法、全巻角、および長さが同じでありピッチが等間隔のスクリューロータにおける作動室の圧力と比較し、等間隔のスクリューロータの作動室の圧力が、吸込端面から吐出端面に向かってピッチが大きくなるスクリューロータの作動室の圧力より高くなる範囲を求め、その求めた範囲に給液機構を配置するという給液機構の配置決定手法を得ることができる。
【0043】
実施例1によれば、
図6に示すように、作動室25に給液口を連通できるボア内壁面上の領域が、作動室26に給油口を連通する場合よりも広くなる範囲は、ピッチが変化する雄スクリューロータ21およびピッチが変化する雌スクリューロータ22の面Cよりも吐出端面側である。そのため、面Cよりも吐出端面側に給液口を設置できる場合、給液口の設置可能な範囲を拡大できる。
【0044】
また、この給液口の設置可能な範囲において、
図6に示したように、作動室25に連通した給油口27aと吐出ポートとの距離は、作動室26に連通した給液口27bと吐出ポートとの距離より短くでき、スクリューロータが液体を運搬する距離を短縮し、撹拌損失を低減できる。
【0045】
本実施例では、ピッチが連続的かつ一様に変化するピッチが変化するスクリューロータを用いたが、ピッチの変化が段階的であってもよく、ピッチの変化割合が途中で変化してもよい。
【0046】
本実施例のピッチが変化するスクリューロータのヘリックス角が、想定される等ピッチのスクリューロータのヘリックス角と同値になる点が複数現れる場合は、最も吸込端面に近い点を点Cとし、点Cを含み吸込または吐出端面と平行な面よりも吐出端面側に給液口を設置すればよい。
また、本実施例では単一の給液口を設置したが、複数の給液口を設置してもよい。
第1の噴射口29と第2の噴射口30とは作動空間11側で交差しており、交差する点はスクリューロータの歯溝上に位置する。給液口14から第1の噴射口29および第2の噴射口30に流入し、それぞれから噴射された液体はお互いが衝突し、その後拡散する。
液体の拡散により、作動室内に広く液体が拡散し、高い冷却効果を得ることができる。一方で、噴流衝突ノズルは給液時の圧力損失が大きく、単一の噴流衝突ノズルから給液出来る量がキリ穴に比べて少ない。給液量を確保するには、給液口の設置数を増やす必要があるが、給液口の設置可能な範囲は、給液元圧と、給液口が連通する作動室の圧力との圧力差の制約や、圧縮機のサイズによる制限がある。
本実施例によって実施例1と同様に、給液口の設置可能な範囲が拡大し、撹拌損失低減の効果を実現できる。加えて、給液口の設置可能な範囲が拡大することによって従来よりも多くの給液口を設置可能となり、噴流衝突ノズルを用いた場合でも十分な給液量を確保できる。
更に、ピッチが変化する雄スクリューロータ21およびピッチが変化する雌スクリューロータ22を用いたスクリュー圧縮機では、面Cより吐出端面側において、任意の作動室を形成するローブ峰線の間隔が、等ピッチの雄スクリューロータ23および等ピッチの雌スクリューロータ24を用いた場合よりも広いため、微粒給液口から給液された液体が広範囲に拡散し、より高い冷却効果を得ることができる。
スリット部31から作動空間11に噴射される液体は、寸法bの方向(スリットの幅方向)よりも、寸法aの方向(スリットの長手方向)に広く拡散する。液体は、スリット部31から膜状に噴射され、その後、微粒化していく。
本実施例では、噴流衝突ノズルもしくはファンスプレーノズルといった微粒給液口を一つ設置したが、スクリューロータの軸方向に、複数の給液口を設置してもよい、つまり、少なくとも1つ以上の微粒給液口と少なくとも1つ以上のキリ穴給液口とを1台の圧縮機に設置してもよい。例えば、小型の圧縮機において、微粒給液口を複数設置できるスペースが確保できない場合、吸込端面側にキリ穴給液口を、吐出端面側に微粒給液口を設置することで、スクリューロータの潤滑に必要な液量を確保しながらも、微粒給液の高い冷却効果を得ることができる。