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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002325
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】無菌コネクタ
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/18 20060101AFI20241226BHJP
   F16L 57/00 20060101ALI20241226BHJP
   F16L 37/133 20060101ALI20241226BHJP
   F16L 37/30 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
A61M39/18
F16L57/00 C
F16L37/133
F16L37/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102416
(22)【出願日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005175
【氏名又は名称】藤倉コンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100189289
【弁理士】
【氏名又は名称】北尾 拓洋
(72)【発明者】
【氏名】武石 大一
(72)【発明者】
【氏名】北▼詰▲ 哲也
【テーマコード(参考)】
3H024
3J106
4C066
【Fターム(参考)】
3H024CA03
3J106BA01
3J106BB01
3J106BC04
3J106BD01
3J106BE14
3J106BE29
3J106EA03
3J106EB03
3J106EC01
3J106ED06
3J106GA40
3J106GB10
4C066JJ04
(57)【要約】
【課題】操作性が向上した無菌コネクタを提供する。
【解決手段】無菌コネクタの各コネクタ部10が、対向面11に流路の開口部を持つコネクタ本体1と、開口部を塞ぐ膜部材2と、第1面3aが対向面11に対向する態様で対向面11上に収容された閉姿勢から、コネクタ本体1の外側に突き出して延びる開姿勢にまで回転する、膜部材2と接続した板状のタブ部材3、とを備える。タブ部材3は、ユーザの指が挿入されるリング部31と、タブ部材の一方の側面3cから突き出して回転軸となる軸状部32と、を有し、コネクタ本体1は、長尺のガイド穴14aに挿通された軸状部32を軸支する軸受部14を有する。開姿勢のときに軸状部32が軸支される位置が開姿勢のときから上下方向にずれていることでタブ部材3の第1面3aが2つのコネクタ部10の結合時に互いに密接する2つのコネクタ部10の間の仮想的な境界面と同じ高さに位置するよう調整される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流路をそれぞれ有する2つのコネクタ部で構成され、外部からの雑菌の侵入を抑制しつつ、前記2つのコネクタ部が結合して該2つのコネクタ部の前記流路が連通することで、該2つのコネクタ部の間の流体の流通が実現する無菌コネクタにおいて、
前記2つのコネクタ部のそれぞれが、
結合相手の相手側コネクタ部に結合するための結合機構を有するとともに、前記2つのコネクタ部の結合時に前記相手側コネクタ部に対向する対向面に開口部を持つ流体の流路を有するコネクタ本体と、
帯形状を有する膜部材であって、前記2つのコネクタ部の結合前には、前記コネクタ本体の前記開口部を塞ぐ態様で前記対向面上に一端部が接着され、前記2つのコネクタ部の結合後には、前記一端部が前記対向面から剥がされることで前記開口部を開放して前記2つのコネクタ部の前記流路を連通させる膜部材と、
前記一端部以外の前記膜部材の残りの部分と接続した、板形状を有するタブ部材であって、該タブ部材の端部を回転軸として回転することで、前記板形状の2つの面のうちの第1面を前記コネクタ本体の前記対向面に対向させた態様で前記対向面上に収容された閉姿勢から、表裏反転して前記コネクタ本体の外側に突き出して延びる開姿勢に移行し、前記2つのコネクタ部の結合時には、前記開姿勢において、前記相手側コネクタ部における前記開姿勢の前記タブ部材と当接し、ユーザの指による引き抜き操作を受けて前記コネクタ本体から離脱して前記膜部材の前記一端部を前記対向面から引き剥がすタブ部材と、を備え、
前記タブ部材が、
リング状に形成されたリング部であって、前記リング状の内側の空洞が、前記2つのコネクタ部の結合時において前記相手側コネクタ部の前記タブ部材における前記リング部のリング状の内側の空洞と重なる態様で、前記相手側コネクタ部の前記タブ部材における前記リング部と当接して、前記引き抜き操作の際に前記ユーザの指の挿入を受けるリング部と、
前記タブ部材の前記端部において、前記板形状の厚さ方向を幅方向として帯状に広がる互いに向かい合った前記板形状の2つの側面のうちの一方の側面にのみ形成された軸状部であって、前記一方の側面から突き出して前記回転軸として働く軸状部と、を有するものであり、
前記コネクタ本体が、
前記軸状部が挿通されるとともに、挿通された前記軸状部が挿通方向とは垂直な方向に移動可能な長尺のガイド穴が形成され、該ガイド穴に挿通された軸状部を回転自在に軸支する軸受部、を有するものであって、
前記ガイド穴において、前記開姿勢の前記タブ部材の前記軸状部が軸支される開姿勢軸支位置が前記閉姿勢の前記タブ部材の前記軸状部が軸支される閉姿勢軸支位置から前記対向面に垂直な上下方向についてずれた位置にあることにより、前記閉姿勢において前記対向面に対向していた前記タブ部材の前記第1面が、前記開姿勢において、前記2つのコネクタ部の結合時に互いに密接する2つの前記コネクタ部の間の境界となる仮想的な境界面と前記上下方向について同じ高さに位置するように調整される無菌コネクタ。
【請求項2】
前記コネクタ本体の前記流路の内壁に沿って配置された、弾性材からなる環状シール部材であって、前記上下方向について前記流路の前記開口部から突出した突出端部を有する環状シール部材をさらに備え、
前記閉姿勢において前記タブ部材の前記リング部は、前記リング状の内側の空洞に、前記環状シール部材の前記突出端部により前記上下方向について前記開口部から押し上げられた前記膜部材の前記一端部を収容するものである請求項1記載の無菌コネクタ。
【請求項3】
前記タブ部材は、前記端部において前記第1面とは反対側の第2面から立設し、前記対向面に接続する前記コネクタ本体の側面に前記開姿勢において突き当たることで前記タブ部材の前記第1面が前記開姿勢において前記仮想的な境界面と前記上下方向について同じ高さに位置している状態を維持する突き当て部を有するものである請求項1又は2に記載の無菌コネクタ。
【請求項4】
前記開姿勢軸支位置は、前記閉姿勢軸支位置よりも前記上下方向について低い位置にあるとともに、前記引き抜き操作における引き抜き方向について前記閉姿勢軸支位置よりも下流側に位置するものである請求項1又は2に記載の無菌コネクタ。
【請求項5】
前記ガイド穴は、前記引き抜き方向の下流側端部が該引き抜き方向に向かって開放された長尺な切り欠け部であり、前記タブ部材は、前記引き抜き操作を受けて、前記軸状部が、前記引き抜き方向に開放された前記下流側端部から外れることで前記コネクタ本体から離脱するものである請求項4記載の無菌コネクタ。
【請求項6】
前記軸状部には、該軸状部の先端に、長尺の前記ガイド穴の幅よりも径が大きく、前記軸状部が前記挿通方向にずれて前記ガイド穴から抜けることを防止する抜け止め防止部が形成されている請求項4に記載の無菌コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのコネクタ部で構成され、外部からの雑菌の侵入を抑制しつつこれら2つのコネクタ部が結合することでこれら2つのコネクタ部の間における流体の流通を実現する無菌コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品を取り扱う分野では、薬液等の流体が流れる管や、こうした流体を含む容器や、こうした流体を処理する装置などを互いに接続しこれらの間で流体を流通させるためのコネクタが従来から知られている。こうしたコネクタは、2つのコネクタ部で構成されており、これら2つのコネクタ部が結合することでこれら2つのコネクタ部の間における流体の流通が実現する。
【0003】
こうしたコネクタの中には、外部からの雑菌の侵入を抑制しつつこれら2つのコネクタ部の結合が行われるものがあり、無菌コネクタと呼ばれている。無菌コネクタの中には、各コネクタ部内の流体の流路の開口部が膜(フィルム)で覆われた状態で2つのコネクタ部同士を互いに密着させ、これらコネクタ部の2枚の膜を同時に引き抜くことによって流体の流通が実現する、いわゆるフィルム式の無菌コネクタが知られている(たとえば特許文献1~3参照)。このタイプの無菌コネクタでは、結合した状態であっても2枚の膜を引き抜くまでは流体の流路は外部から遮断されているため、雑菌が流体の流路に入り込むリスクがきわめて低くなっている。
【0004】
フィルム式の無菌コネクタでは、結合時にコネクタ部から膜を引き抜きやすくするため、膜を引き抜く際のつまみ(タブ)となる部材が膜に取り付けられていることが一般的である。結合前のコネクタ部では、タブはコネクタ本体に取り付けられており、無菌コネクタのユーザは、2つのコネクタ部同士を互いに密着させた状態で各コネクタ部のタブをつかんで各コネクタ本体から引き離すことで各コネクタから膜を引き抜くことができる。
【0005】
このようなタブの役割の観点から考えると、タブとしては、ユーザがつかみやすい形状を備えているものが好ましい。たとえば、特許文献1には、ユーザにつかまれる部位に溝やリブが設けられてユーザがつかみやすくしたタブが開示されている(特許文献1の図28の符号314aおよびその説明参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第10307583号明細書
【特許文献2】特許第6535902号公報
【特許文献3】特表2017-505408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、衛生上の理由から、無菌コネクタのユーザは手袋等を着用していることが多い。このように手袋等を着用した状態では、仮にタブに溝やリブが形成されていたとしても、指でタブをつかんで引っ張る際に指がすべってしまうことがあり操作性がよくない。このため、無菌コネクタの操作性を向上させるにあたっては、さらなる工夫が望まれる。
【0008】
上記の事情を鑑み、本発明は、操作性が向上した無菌コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するため、本発明は、以下の無菌コネクタを提供する。
【0010】
[1] 流体の流路をそれぞれ有する2つのコネクタ部で構成され、外部からの雑菌の侵入を抑制しつつ、前記2つのコネクタ部が結合して該2つのコネクタ部の前記流路が連通することで、該2つのコネクタ部の間の流体の流通が実現する無菌コネクタにおいて、
前記2つのコネクタ部のそれぞれが、
結合相手の相手側コネクタ部に結合するための結合機構を有するとともに、前記2つのコネクタ部の結合時に前記相手側コネクタ部に対向する対向面に開口部を持つ流体の流路を有するコネクタ本体と、
帯形状を有する膜部材であって、前記2つのコネクタ部の結合前には、前記コネクタ本体の前記開口部を塞ぐ態様で前記対向面上に一端部が接着され、前記2つのコネクタ部の結合後には、前記一端部が前記対向面から剥がされることで前記開口部を開放して前記2つのコネクタ部の前記流路を連通させる膜部材と、
前記一端部以外の前記膜部材の残りの部分と接続した、板形状を有するタブ部材であって、該タブ部材の端部を回転軸として回転することで、前記板形状の2つの面のうちの第1面を前記コネクタ本体の前記対向面に対向させた態様で前記対向面上に収容された閉姿勢から、表裏反転して前記コネクタ本体の外側に突き出して延びる開姿勢に移行し、前記2つのコネクタ部の結合時には、前記開姿勢において、前記相手側コネクタ部における前記開姿勢の前記タブ部材と当接し、ユーザの指による引き抜き操作を受けて前記コネクタ本体から離脱して前記膜部材の前記一端部を前記対向面から引き剥がすタブ部材と、を備え、
前記タブ部材が、
リング状に形成されたリング部であって、前記リング状の内側の空洞が、前記2つのコネクタ部の結合時において前記相手側コネクタ部の前記タブ部材における前記リング部のリング状の内側の空洞と重なる態様で、前記相手側コネクタ部の前記タブ部材における前記リング部と当接して、前記引き抜き操作の際に前記ユーザの指の挿入を受けるリング部と、
前記タブ部材の前記端部において、前記板形状の厚さ方向を幅方向として帯状に広がる互いに向かい合った前記板形状の2つの側面のうちの一方の側面にのみ形成された軸状部であって、前記一方の側面から突き出して前記回転軸として働く軸状部と、を有するものであり、
前記コネクタ本体が、
前記軸状部が挿通されるとともに、挿通された前記軸状部が挿通方向とは垂直な方向に移動可能な長尺のガイド穴が形成され、該ガイド穴に挿通された軸状部を回転自在に軸支する軸受部、を有するものであって、
前記ガイド穴において、前記開姿勢の前記タブ部材の前記軸状部が軸支される開姿勢軸支位置が前記閉姿勢の前記タブ部材の前記軸状部が軸支される閉姿勢軸支位置から前記対向面に垂直な上下方向についてずれた位置にあることにより、前記閉姿勢において前記対向面に対向していた前記タブ部材の前記第1面が、前記開姿勢において、前記2つのコネクタ部の結合時に互いに密接する2つの前記コネクタ部の間の境界となる仮想的な境界面と前記上下方向について同じ高さに位置するように調整される無菌コネクタ。
【0011】
[2] 前記コネクタ本体の前記流路の内壁に沿って配置された、弾性材からなる環状シール部材であって、前記上下方向について前記流路の前記開口部から突出した突出端部を有する環状シール部材をさらに備え、
前記閉姿勢において前記タブ部材の前記リング部は、前記リング状の内側の空洞に、前記環状シール部材の前記突出端部により前記上下方向について前記開口部から押し上げられた前記膜部材の前記一端部を収容するものである[1]に記載の無菌コネクタ。
【0012】
[3] 前記タブ部材は、前記端部において前記第1面とは反対側の第2面から立設し、前記対向面に接続する前記コネクタ本体の側面に前記開姿勢において突き当たることで前記タブ部材の前記第1面が前記開姿勢において前記境界面と前記上下方向について同じ高さに位置している状態を維持する突き当て部を有するものである[1]又は[2]に記載の無菌コネクタ。
【0013】
[4] 前記開姿勢軸支位置は、前記閉姿勢軸支位置よりも前記上下方向について低い位置にあるとともに、前記引き抜き操作における引き抜き方向について前記閉姿勢軸支位置よりも下流側に位置するものである[1]又は[2]に記載の無菌コネクタ。
【0014】
[5] 前記ガイド穴は、前記引き抜き方向の下流側端部が該引き抜き方向に向かって開放された長尺な切り欠け部であり、前記タブ部材は、前記引き抜き操作を受けて、前記軸状部が、前記引き抜き方向に開放された前記下流側端部から外れることで前記コネクタ本体から離脱するものである[4]に記載の無菌コネクタ。
【0015】
[6] 前記軸状部には、該軸状部の先端に、長尺の前記ガイド穴の幅よりも径が大きく、前記軸状部が前記挿通方向にずれて前記ガイド穴から抜けることを防止する抜け止め防止部が形成されている[4]に記載の無菌コネクタ。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、結合前の各コネクタ部のタブ部材は、コネクタ本体の対向面上に収容された閉姿勢となることで、かさばらなくてコンパクトな状態に維持されており、結合前の段階での取り扱いや持ち運びにとって都合がよい。
【0017】
また、2つのコネクタ部の結合時には、タブ部材は、端部側面の軸状部を回転軸として閉姿勢から回転することで、表裏反転してコネクタ本体の外側に突き出して延びる開姿勢となり、この姿勢で相手側コネクタ部の開姿勢のタブ部材と当接する。この当接の際には2つのタブ部材のリング部同士は重なっており、ユーザは、2つのリング部に指を挿入して2つのタブ部材を、結合した2つのコネクタ本体から同時に引き抜くことで、タブ部材に接続した膜部材を同時に引き抜いて2つのコネクタ部の流路を連通させることができる。このようにリング部に指を挿入してタブ部材を引き抜く方式は、指でタブをつかんで引っ張る従来の方式と比べ、指が滑りにくく確実にタブ部材および膜部材を引き抜くことができるため、本発明では、無菌コネクタの操作性が向上している。
【0018】
このとき、2つの膜部材が同時に引き抜かれるようにする観点から、リング部同士ができるだけぴったりと重なっていることが好ましい。ただし、単純に閉姿勢のタブ部材がそのままの位置で回転して開姿勢になっただけでは、2つのコネクタ部の結合時にタブ部材のリング部同士がぴったり重なることは、タブ部材の厚みの存在等に起因して通常あり得ない。一方、本発明では、閉姿勢軸支位置と開姿勢軸支位置の間に上下方向にずれが存在することにより、開姿勢においてタブ部材の第1面が、2つのコネクタ部の結合時に互いに密接する2つのコネクタ本体の間の仮想的な境界面と同じ高さに位置するよう調整される。このため、2つのコネクタ部の結合時にリング部同士がぴったり重なりやすく、2つの膜部材が、より確実に同時に引き抜かれることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態の無菌コネクタの構成要素であるコネクタ部の外観斜視図である。
図2図1のコネクタ部の側面図である。
図3図1のコネクタ部を、その構成要素に分けて表した分解図である。
図4図1および図2のコネクタ部からカバー部材を取り外した時の様子を表した外観斜視図である。
図5図4の閉姿勢のタブ部材が、その端部の軸状部を回転軸として回転して開姿勢に移行した時の様子を表した外観斜視図である。
図6】開姿勢のタブ部材を有する2つのコネクタ部が結合している状態を表した外観斜視図である。
図7図6の状態にある2つのコネクタ部の断面を模式的に表した図である。
図8】環状シール部材が開口部から突出している場合において、環状シール部材により開口部から押し上げられた膜部材と、閉姿勢のタブ部材におけるリング部との関係を示す模式的な断面図である。
図9図4における、閉姿勢のタブ部材と、この閉姿勢のタブ部材を図3の対向面上に収容しているコネクタ本体とを、図4の軸状部の軸方向からみたときの側面図である。
図10図9の閉姿勢のタブ部材が開姿勢に向かって回転している途中の状態を表した側面図である。
図11図9の閉姿勢のタブ部材が開姿勢に向かって回転している途中の状態を表した側面図である。
図12図9の閉姿勢のタブ部材が図10および図11の状態を経て開姿勢に移行したときの状態を表した側面図である。
図13図12の開姿勢のタブ部材を有する2つのコネクタ部が結合している様子を表した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0021】
本実施形態の無菌コネクタは、流体の流路をそれぞれ有する2つのコネクタ部で構成されている。本実施形態の無菌コネクタでは、外部からの雑菌の侵入を抑制しつつ、これら2つのコネクタ部が結合しその流路が連通することで、これら2つのコネクタ部の間の流体の流通が実現する。これら2つのコネクタ部は同一の構成を有しており、以下では、まず、これら2つのコネクタ部のうちの1つである単体のコネクタ部について説明する。
【0022】
図1は、本実施形態の無菌コネクタの構成要素であるコネクタ部10の外観斜視図であり、図2は、図1のコネクタ部10の側面図であり、図3は、図1のコネクタ部10を、その構成要素に分けて表した分解図である。
【0023】
コネクタ部10は、主要な構成要素として、コネクタ本体1(図1図3参照)、膜部材2(図3参照)、およびタブ部材3(図1図3参照)、を備えている。また、本実施形態では、一例として、これらの構成要素に加えて、コネクタ部10内の流路の内壁に沿って配置された、弾性材からなる環状シール部材5(図3参照)がさらに備えられた形態が採用されている。
【0024】
なお、本実施形態における結合前のコネクタ部10には、コネクタ部10内部構造の露出を防ぐカバー部材4(図1図3参照)が取り付けられており、このカバー部材4も結合前のコネクタ部10の構成要素の1つである。後述するように、カバー部材4は、2つのコネクタ部10の結合処理の最初の段階でコネクタ部10から取り外されてしまうため、それ以降の結合処理の過程では全く現れなくなる構成要素である。以下の説明では、説明の簡単化のため、カバー部材4が取り外された後のコネクタ部10についても、カバー部材4を備えたコネクタ部10と同様に単に「コネクタ部10」と呼ぶことがある。
【0025】
以下では、コネクタ部10の主要な構成要素である、コネクタ本体1、膜部材2、およびタブ部材3について主に図3を参照しつつ詳しく説明する。
【0026】
コネクタ本体1は、2つのコネクタ部10の結合時に結合相手のコネクタ部10(以下、簡単に「相手側コネクタ部10」と呼ぶ)に対向する対向面11において相手側コネクタ部10に結合するための結合機構12を有している。コネクタ本体1はさらに、対向面11に開口部13aを持つ流体の流路13を有している。なお、流路13や開口部13aの一部は外部からは見えないため、それら見えない部分については図3では点線で示されている。ここで、流路13の、開口部13aとは反対側には、取付部131が形成されており、この取付部131には本実施形態の無菌コネクタの外部の管等が取り付けられて外部からの流体の流入・外部への流体の流出が行われる。
【0027】
膜部材2は、帯形状を有する部材である。2つのコネクタ部10の結合前には、膜部材2は、コネクタ本体1の開口部13aを塞ぐ態様で対向面11上に一端部20が接着されている。2つのコネクタ部10の結合後には、この一端部20が対向面11から剥がされることで、開口部13aが開放され2つのコネクタ部10の流路が連通する。なお、図3には、一端部20以外の膜部材2の残りの部分として、第1部分21、第2部分22、および第3部分23が示されている。第1部分21は、一端部20と図の膜部材2の左端で接続し180度折り返されて図の右方に延びる部分である。第2部分22は、第1部分21と図の膜部材2の右端で接続し90度折り返されて図の上方向に延びる部分である。第3部分23は、第2部分22と図の膜部材2の右端で接続し90度折り返されて図の左方に延びる部分であり、リング状となった端部(膜部材2全体でいえば、一端部20とは反対側の他端部)を有している。
【0028】
タブ部材3は、上述の一端部20以外の膜部材2の残りの部分と接続した、板形状を有する部材である。なお、特許文献1にもタブ部材(符号300)が存在するが、特許文献1のタブ部材は折れ曲がった複雑な形状をしておりそれに起因して特許文献1の無菌コネクタはいくらかかさばった構造となっている。一方、本実施形態のタブ部材3は、特許文献1のタブ部材(符号300)に比べシンプルな板形状となっているため、かさばらなくてコンパクトな無菌コネクタの実現に貢献している。
【0029】
本実施形態では、一例として、図3において上側を向いているタブ部材3の面(後述の第2面3b)に膜部材2の第3部分23が接着されることで、タブ部材3が膜部材2の残りの部分と接続している形態が採用されている。図3の分解図では、タブ部材3と膜部材2とは分離されて示されているが、図1および図2の実際の状態では、タブ部材3は、タブ部材3に接着される膜部材2の第3部分23(図3参照)と、タブ部材3に接着されない膜部材2の第1部分21(図3参照)の間に配置されている。このとき、図3の右側を向いているタブ部材3の後端面3dには膜部材2の第2部分22が対向している。
【0030】
この状態では、タブ部材3は、コネクタ本体1の対向面11に対し、タブ部材3の板形状の2つの面のうちの第1面(図3では不図示・図5の符号3a参照)をコネクタ本体1の対向面11に対向させており、このような態様で対向面11上に収容されている。以下では、このような姿勢のタブ部材3を閉姿勢のタブ部材3と呼ぶ。図1図3では、タブ部材3は、このような閉姿勢をとっている。
【0031】
本実施形態では、結合前の各コネクタ部10のタブ部材3は、コネクタ本体1の対向面11(図3参照)上に収容された閉姿勢となることで、かさばらなくてコンパクトな状態に維持されており、結合前の段階での取り扱いや持ち運びにとって都合がよい。
【0032】
図4は、図1および図2のコネクタ部10からカバー部材4を取り外した時の様子を表した外観斜視図である。
【0033】
図1および図2のコネクタ部10を使用するユーザは、2つのコネクタ部10を結合させるにあたり、まず、図1および図2のコネクタ部10からカバー部材4を取り外す。これにより、図1および図2ではカバー部材4に覆われて外側からは見えなかったコネクタ部10内部構造が、図4に示されているように露出し、閉姿勢のタブ部材3が視認可能となる。図4の閉姿勢のタブ部材3では、上側の面(後述の第2面3b)に膜部材2の第3部分23が接着し、タブ部材3の後端面3dに対向する膜部材2の第2部分22を経て、膜部材2の第1部分21がタブ部材3の下側に配置されている。なお、図4では、図1および図2に示す、単一のコネクタ部10からカバー部材4を取り外されたときの様子が示されているが、相手側コネクタ部10についても同様の構成が備えられている。
【0034】
ここで、タブ部材3は、その端部(より正確には、端部に形成された図3および図4に示す後述の軸状部32)を回転軸として回転することができる。この回転により、タブ部材3は、図3および図4の閉姿勢から、表裏反転してコネクタ本体1の外側に突き出して延びる開姿勢に移行する。
【0035】
図5は、図4の閉姿勢のタブ部材3が、その端部の軸状部32を回転軸として回転して開姿勢に移行した時の様子を表した外観斜視図である。
【0036】
図4の閉姿勢においてタブ部材3が端部(後述の軸状部32)を回転軸として図4の矢印X方向に半回転することで、タブ部材3は、図5に示すように、コネクタ本体1の対向面11の延長面に沿ってコネクタ本体1の外側に突き出して延びる開姿勢に移行する。このとき、図4の閉姿勢ではコネクタ本体1の対向面11(図4では不図示・図3および図5参照)に対向していたタブ部材3の下側の面である第1面3a(図4では不図示・図5参照)が、図5の開姿勢ではタブ部材3の上側の面となる。一方、第1面3aとは反対側のタブ部材3の面であって図4の閉姿勢ではタブ部材3の上側の面であった第2面3b(図4参照・図5では不図示)は、図5の開姿勢ではタブ部材3の下側の面となる。すなわち、タブ部材3は、図4の閉姿勢から図5の開姿勢に移行することでその表裏が反転することとなる。
【0037】
2つのコネクタ部10の結合時には、このような開姿勢のタブ部材3が、相手側コネクタ部10における同じく開姿勢のタブ部材3と当接する。
【0038】
図6は、開姿勢のタブ部材3を有する2つのコネクタ部10が結合している状態を表した外観斜視図であり、図7は、図6の状態にある2つのコネクタ部10の断面を模式的に表した図である。
【0039】
図6および図7に示すように開姿勢のタブ部材3同士が重なった状態で、各タブ部材3は、ユーザの指による図6および図7のY方向への引き抜き操作を受けてコネクタ本体1から離脱する。この離脱により、各タブ部材3に接続された各膜部材2の一端部20がコネクタ本体1の対向面11上の開口部13a(図3参照)から引き剥される。これにより2つのコネクタ部10の流路13(図3および図7参照)が連通するようになる。
【0040】
以下では、2つのコネクタ部10を結合して流路が連通するようになるまでの無菌コネクタの操作性を向上させるためにタブ部材3やコネクタ本体1に施されている形状や構成の工夫について詳しく説明する。
【0041】
図3図5に示すようにタブ部材3は、リング部31および軸状部32を有している。
【0042】
リング部31は、リング状に形成された部位である。2つのコネクタ部10の結合時には、リング部31は、そのリング状の内側の空洞が、相手側コネクタ部10のタブ部材3のリング部31のリング状の内側の空洞と重なった態様で、相手側コネクタ部10のリング部31に当接する(図6参照)。リング部31は、このように当接した状態で、ユーザによるタブ部材3の引き抜き操作の際にユーザの指の挿入を受ける。
【0043】
軸状部32は、タブ部材3の端部(図3では右側の端部)において、タブ部材3の板形状の厚さ方向を幅方向として帯状に広がる互いに向かい合ったその板形状の2つの側面のうちの一方の側面(図3では手前側の側面3c)にのみ形成されている部位である。すなわち、2つの側面のうちの他方の側面(図3では奥側の側面)には軸状部32は形成されておらず、タブ部材3の端部において1つだけ存在する。軸状部32は、上記の一方の側面3cから突き出しており、上述の閉姿勢(図4参照)から開姿勢(図5参照)へのタブ部材3の回転の際にはこの回転の回転軸として働く。
【0044】
一方、コネクタ本体1は、図3図5に示すように、上記の軸状部32を軸支する部位として軸受部14を有している。軸受部14には、軸状部32が挿通されるとともに、挿通された軸状部32が挿通方向とは垂直な方向に移動可能な長尺のガイド穴14aが形成されており、軸受部14は、ガイド穴14aに挿通された軸状部32を回転自在に軸支する。タブ部材3において軸状部32が片側に1つだけ存在することに対応して、軸受部14もコネクタ本体1の片側に1つだけ存在する、このように、軸受部14がコネクタ本体1の片側にのみ存在する理由は、図6のように2つのコネクタ本体1が結合する際に、軸受部14が相手側コネクタ部10の軸受部14とぶつかって結合の妨げとなることを避けるためである。
【0045】
軸受部14は、図4に示す閉姿勢のタブ部材3の軸状部32を、ガイド穴14aにおける閉姿勢軸支位置で軸支し、図5に示す開姿勢のタブ部材3の軸状部32を、ガイド穴14aにおける開姿勢軸支位置で軸支する。すなわち、図4において長尺のガイド穴14a内で軸状部32が占めている位置が閉姿勢軸支位置であり、図5において長尺のガイド穴14a内で軸状部32が占めている位置が開姿勢軸支位置である。ここで、図4および図5の軸状部32の位置の比較からわかるように、開姿勢軸支位置は、コネクタ本体1の対向面11(図3参照)に垂直な上下方向について閉姿勢軸支位置からずれた位置にある。より具体的には、開姿勢軸支位置は、上下方向について閉姿勢軸支位置よりも低い位置にある(後述の図12の差d参照)。この位置のずれにより、閉姿勢において対向面11に対向していたタブ部材3の第1面3aが、開姿勢において、2つのコネクタ部10の結合時に互いに密接する2つのコネクタ部10の間の境界となる仮想的な境界面B(図7参照)と上下方向について同じ高さに位置するように調整される。
【0046】
なお、上記の「仮想的な境界面」の「仮想的な」とは、部材の表面のように実在する面ではなく概念上の抽象的な面であることを示すものである。具体的には、このような「仮想的な境界面」は、互いに密接する2つのコネクタ部10の接触箇所となる接触面を延長することで得られる。ここで、図7では、具体例として、図5の環状シール部材5が上下方向について流路13の開口部13aから少し突出している場合が示されている。この場合、2つのコネクタ部10の結合時には、2つのコネクタ部10における2つの環状シール部材5同士が密接し、2つの環状シール部材5の接触箇所(接触面)を延長することで上記の仮想的な境界面Bが得られる。なお、こうした仮想的な境界面Bの上下方向の高さ(たとえば対向面11から測った高さ等)は、コネクタ本体1が有する上述の結合機構により、あらかじめ(結合前の段階で)決定されている。すなわち、本実施形態では、結合前の段階で、開姿勢のタブ部材3の第1面3aの高さが境界面Bと同じ高さに調整されることとなる。
【0047】
2つのコネクタ部10の結合時には、開姿勢のタブ部材3は、このように第1面3aの高さが境界面Bと同じ高さに調整された状態で相手側コネクタ部10の開姿勢のタブ部材3と当接する(図6および図7参照)。この当接の際には2つのタブ部材3のリング部31同士は重なっており、ユーザは、2つのリング部31に指を挿入して2つのタブ部材3を、結合した2つのコネクタ本体1から同時に図6のY方向に引き抜くことで、タブ部材3に接続した膜部材2(図3および図4参照)を同時に引き抜いて2つのコネクタ部10の流路13を連通させることができる。このようにリング部31に指を挿入してタブ部材3を引き抜く方式は、指でタブをつかんで引っ張る従来の方式と比べ、指が滑りにくく確実にタブ部材3および膜部材2を引き抜くことができるため、本実施形態では、無菌コネクタの操作性が向上している。
【0048】
このとき、2つの膜部材2が同時に引き抜かれるようにする観点から、リング部31同士ができるだけぴったりと重なっていることが好ましい。ただし、単純に閉姿勢のタブ部材3がそのままの位置で回転して開姿勢になっただけでは、2つのコネクタ部10の結合時にタブ部材3のリング部31同士がぴったり重なることは、タブ部材3の厚みの存在等に起因して通常あり得ない。一方、本実施形態では、上述したように、閉姿勢軸支位置と開姿勢軸支位置の間に上下方向にずれが存在することにより、開姿勢においてタブ部材3の第1面3aが、2つのコネクタ部10の結合時における仮想的な境界面と同じ高さに位置するよう調整される。このため、リング部同士がぴったり重なりやすく、2つの膜部材2が、より確実に同時に引き抜かれることとなる。
【0049】
なお、閉姿勢軸支位置と開姿勢軸支位置との間の上下方向の位置のずれ(後述の図12の差d参照)としては、たとえば、1.0~4.0mmであることが好ましい。こうした数値については、仮想的な境界面Bの高さ等の実情に応じて適宜決定できる。
【0050】
図8は、環状シール部材5が開口部13aから突出している場合において、環状シール部材5により開口部13aから押し上げられた膜部材2と、閉姿勢のタブ部材3におけるリング部31との関係を示す模式的な断面図である。
【0051】
図5で上述したように、弾性材からなる環状シール部材5は、コネクタ本体1の流路13の内壁に沿って配置されており、図7で上述したように上下方向について流路13の開口部13aから突出している。図8では、その突出した部分が突出端部51として示されている。この突出端部51は、図8に示すように、開口部13aを覆っている膜部材2の一端部20を上下方向について開口部13aから押し上げている。このとき、閉姿勢のタブ部材3のリング部31は、そのリング状の内側の空洞に、押し上げられた膜部材2の一端部20を収容する。なお、図8では、膜部材2の一端部20だけでなく、その上に重なる膜部材2の第1部分21も一端部20とともにリング部31のリング状の内側の空洞に収容されている様子が示されている。
【0052】
一般に、高いシール性を発揮するために環状シール部材が開口部から突出することが必要となることが多い。本実施形態では、このような場合であっても、環状シール部材5の突出端部51に押し上げられた膜部材2の一端部20が閉姿勢のタブ部材3のリング部31におけるリング状の内側の空洞に収容される。このため、突出端部51の存在により、タブ部材3の閉姿勢が不安定化することが避けられている。
【0053】
ここで、図3図5に示されているように、タブ部材3は、軸状部32が形成されているタブ部材3の端部において図5の第1面3aとは反対側の図4の第2面3bから立設した突き当て部33を有している。突き当て部33は、タブ部材3が図5の開姿勢にある時に、コネクタ本体1の対向面11(図3および図4参照)に接続するコネクタ本体1の側面15(図3図5参照)に突き当たる。突き当て部33がコネクタ本体1の側面15に突き当たることで、タブ部材3は図5の開姿勢を超えて回転することができず、開姿勢のタブ部材3の第1面3aが仮想的な境界面と上下方向について同じ高さに位置している状態が維持される。
【0054】
このような突き当て部33をタブ部材3が有する形態によれば、タブ部材3の開姿勢における上記の状態(図5参照)が安定化し、この結果、重なっている2つのコネクタ部10の結合時の姿勢(図6参照)も安定化する。
【0055】
以下では、図4の閉姿勢から図5の開姿勢への移行の際の、長尺のガイド穴14a内における軸状部32の位置の変化について、以下の図9図12を参照しつつさらに詳しく説明する。
【0056】
図9は、図4における、閉姿勢のタブ部材3と、この閉姿勢のタブ部材3を図3の対向面11上に収容しているコネクタ本体1とを、図4の軸状部32の軸方向からみたときの側面図である。図10および図11は、図9の閉姿勢のタブ部材3が開姿勢に向かって回転している途中の状態を表した側面図である。図12は、図9の閉姿勢のタブ部材3が図10および図11の状態を経て開姿勢に移行したときの状態を表した側面図である。図13は、図12の開姿勢のタブ部材3を有する2つのコネクタ部10が結合している様子を表した側面図である。
【0057】
図9において長尺のガイド穴14a内の軸状部32の位置が上述の閉姿勢軸支位置(図4も参照)であり、ユーザが図4および図9の矢印X方向への回転力をタブ部材3の先端部34に与えることで、タブ部材3は、閉姿勢軸支位置の軸状部32を回転軸として回転を開始する。図10には、タブ部材3の回転角が90°未満の回転途中の状態が表されており、図11は、タブ部材3の回転角が90°を超えている回転途中の状態が表されている。これら図10および図11の状態を経てタブ部材3は最終的に図12の開姿勢に移行し、図12において長尺のガイド穴14a内の軸状部32の位置が上述の開姿勢軸支位置(図5も参照)である。
【0058】
ここで、図9図12に示されているように、長尺のガイド穴14aは、引き抜き方向(図6および図13のY方向)に延びている。そして、タブ部材3の回転とともに、軸状部32は、ガイド穴14a内で引き抜き方向に進行する(図10から図11へのガイド穴14a内での軸状部32の位置の変化を参照)。すなわち、図12の開姿勢軸支位置は、図9の閉姿勢軸支位置よりも上下方向について低い位置にある(図12の位置の差d参照)ことに加えて、引き抜き方向について閉姿勢軸支位置よりも下流側に位置している。
【0059】
このように開姿勢軸支位置が閉姿勢軸支位置よりも引き抜き方向下流側に位置する形態によれば、閉姿勢軸支位置から、上下方向の位置の差d(図12参照)の分だけ下がった開姿勢軸支位置への軸状部32の移行がスムーズにかつ安定した状態で行われる。
【0060】
また、図9図12に示されているように、長尺のガイド穴14aは、厳密に言えば完全な穴ではなく、引き抜き方向(図6および図13のY方向)の下流側端部が引き抜き方向に向かって開放された長尺な切り欠け部である。タブ部材3は、図13の結合状態において、ユーザの図のY方向への引き抜き操作を受けて、その引き抜き方向に開放された下流側端部から軸状部32が外れることで、コネクタ本体1から離脱する。
【0061】
このようにガイド穴14aが長尺な切り欠け部となっている形態によれば、タブ部材3をコネクタ本体1から引き抜くのが、容易かつスムーズになる。
【0062】
ここで、軸状部32には、図3に示すように、軸状部32の先端に、長尺のガイド穴14aの幅よりも径が大きく、軸状部32が、ガイド穴14aへの軸状部32の挿通方向にずれてガイド穴14aから抜けることを防止する抜け止め防止部32aが形成されている。
【0063】
このように軸状部32に抜け止め防止部32aが形成されている形態によれば、軸状部32がタブ部材3の片側に1つしか存在しないにもかかわらず、軸状部32がガイド穴14aから抜けにくくタブ部材3の姿勢が安定化する。
【0064】
以上では、タブ部材3の軸状部32やコネクタ本体1の軸受部14(あるいはそのガイド穴14a)に関連した特徴について説明したが、以下では、それ以外の特徴について説明する。
【0065】
図3で上述したように、コネクタ本体1は対向面11において相手側コネクタ部10に結合するための結合機構12を有している。結合機構12としては、たとえば、図3に示すように、対向面11から突出したラチェット爪121と、対向面11から凹んだラチェット爪受入部122とを有するものを採用することができる。ラチェット爪121およびラチェット爪受入部122は、図6および図13の状態において、これらがそれぞれ対向する、結合相手のコネクタ部10のラチェット爪受入部122およびラチェット爪121とそれぞれ係合するものである。より詳しく説明すると、ラチェット爪121の先端の鉤状部分がラチェット爪受入部122内の引っ掛かり部に引っ掛かってラチェット爪受入部122内に嵌まり込むことでラチェット爪受入部122およびラチェット爪121とが係合する。この係合により2つのコネクタ部10の結合状態が実現する。
【0066】
このようにラチェット爪121およびラチェット爪受入部122を用いた結合機構12では、ラチェット爪121をラチェット爪受入部122に差し込むだけで2つのコネクタ部10が結合する。このため、2つのコネクタ部10を結合させるのがきわめて容易である。
【0067】
本実施形態では、このようなラチェット方式は、図4および図9に示すタブ部材3の閉姿勢を安定化するためにも用いられている。具体的には、タブ部材3側に形成された図5および図9のラチェット爪35が、コネクタ本体1側に形成された図9のラチェット爪受入部16に係合することで、図4および図9に示すタブ部材3の閉姿勢が固定されている。このようにタブ部材3の閉姿勢が固定されることで、2つのコネクタ部10の結合前に、タブ部材3がコネクタ本体1から外れてしまうといった事故が回避される。
【0068】
ただし、本発明では、結合機構としては、上述したようなラチェット方式以外の結合・固定手段を採用してもよい。たとえば、ネジで2つの結合・固定対象の部材を結合・固定する方式が採用されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、無菌コネクタの操作性の向上に有用である。
【符号の説明】
【0070】
1:コネクタ本体、
2:膜部材、
3:タブ部材、
3a:第1面、
3b:第2面、
3c:側面、
3d:後端面、
4:カバー部材、
5:環状シール部材、
10:コネクタ部、
11:対向面、
12:結合機構、
13:流路、
13a:開口部、
14:軸受部、
15:側面、
16:ラチェット爪受入部、
20:一端部、
21:第1部分、
22:第2部分、
23:第3部分、
31:リング部、
32:軸状部、
32a:抜け止め防止部、
33:突き当て部、
34:先端部、
35:ラチェット爪、
51:突出端部、
121:ラチェット爪、
122:ラチェット爪受入部
B:仮想的な境界面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13