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  • 特開-EGR弁の制御装置 図1
  • 特開-EGR弁の制御装置 図2
  • 特開-EGR弁の制御装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002332
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】EGR弁の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 26/46 20160101AFI20241226BHJP
   F02M 26/28 20160101ALI20241226BHJP
   F02M 26/33 20160101ALI20241226BHJP
【FI】
F02M26/46 Z
F02M26/28
F02M26/33
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102436
(22)【出願日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】鎗野 素成
【テーマコード(参考)】
3G062
【Fターム(参考)】
3G062ED08
3G062GA08
3G062GA21
3G062GA25
(57)【要約】
【課題】EGR率を適切に制御することができるEGR弁の制御装置を提供することを課題とする。
【解決手段】車両に搭載されたエンジンのEGR管を開閉するEGR弁の制御装置であって、前記EGR管には、水冷式のEGRクーラが設けられており、前記EGR管及びEGRクーラは、前記車両のグリルシャッタを通過した走行風に晒され、前記EGRクーラに導入される冷却水の温度、車速、及び前記グリルシャッタの開度を取得する取得部と、前記冷却水の温度、前記車速、及び前記グリルシャッタの開度に基づいて、前記EGR弁の開度を補正する補正部と、を備えたEGR弁の制御装置。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたエンジンのEGR管を開閉するEGR弁の制御装置であって、
前記EGR管には、水冷式のEGRクーラが設けられており、
前記EGR管及びEGRクーラは、前記車両のグリルシャッタを通過した走行風に晒され、
前記EGRクーラに導入される冷却水の温度、車速、及び前記グリルシャッタの開度を取得する取得部と、
前記冷却水の温度、前記車速、及び前記グリルシャッタの開度に基づいて、前記EGR弁の開度を補正する補正部と、を備えたEGR弁の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EGR弁の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されたエンジンのEGR(Exhaust Gas Recirculation)管には、EGR弁とEGRクーラとが設けられている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-178881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
EGRガスの温度が低いほど、EGR率を増大することにより、エンジンの排気ガスの温度の上昇を抑制できる。このため、EGRクーラに流入する冷却水の温度が低いほど、EGR開度を大きく制御することが考えられる。しかしながら、EGR管やEGRクーラが走行風に晒される場合、この走行風によってもEGRガスの温度は影響を受ける。従って、EGRクーラに流入する冷却水の温度のみによりEGR弁の開度を制御すると、EGR率を適切に制御することができないおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、EGR率を適切に制御することができるEGR弁の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、車両に搭載されたエンジンのEGR管を開閉するEGR弁の制御装置であって、前記EGR管には、水冷式のEGRクーラが設けられており、前記EGR管及びEGRクーラは、前記車両のグリルシャッタを通過した走行風に晒され、前記EGRクーラに導入される冷却水の温度、車速、及び前記グリルシャッタの開度を取得する取得部と、前記冷却水の温度、前記車速、及び前記グリルシャッタの開度に基づいて、前記EGR弁の開度を補正する補正部と、を備えたEGR弁の制御装置によって達成できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、EGR率を適切に制御することができるEGR弁の制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、車両に搭載されたエンジンの概略構成図である。
図2図2は、EGR弁の開度補正制御を例示したフローチャートである。
図3図3Aは、車速とグリルシャッタの開度とに応じて雰囲気流量を規定したマップの例示図であり、図3Bは、雰囲気流量とEGRクーラに導入される冷却水の温度とに応じて雰囲気温度を規定したマップの例示図であり、図3Cは、雰囲気温度と雰囲気流量とに応じて補正係数Kを規定したマップの例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[エンジンの概略構成]
図1は、車両1のエンジンコンパートメント2内に搭載されたエンジン3の概略構成図である。エンジン3は、エンジン本体10、吸気管12、排気管14、及びEGR管16を含む。エンジン本体10には、吸気管12及び排気管14が接続されている。排気管14には、排気ガスを浄化する触媒15が設けられている。排気管14の触媒15よりも下流側には、EGR管16の一端が接続されている。EGR管16の他端は、吸気管12に接続されている。尚、EGR管16の一端は、排気管14の触媒15よりも上流側に接続されていてもよい。
【0010】
EGR管16には、水冷式のEGRクーラ17が設けられている。EGRクーラ17は、冷却水が循環する冷却水経路27上に設けられている。冷却水経路27は、冷却水がエンジン本体10とラジエータとEGRクーラ17とを循環するように設けられた経路である。EGRクーラ17においてEGRガスと冷却水との熱交換が行われることにより、EGRガスは冷却される。EGR管16のEGRクーラ17よりも下流にはEGR弁18が設けられている。EGR弁18の開度に応じて、EGR率が調整される。
【0011】
車両1のフロントには、グリルシャッタ20が設けられている。グリルシャッタ20は、複数のルーパ21と、ルーパ21の開度を調整する制御モータ22とを備えている。ルーパ21の開度に応じて、走行風がエンジンコンパートメント2内を流れる。
【0012】
車両1には、ECU(Electronic Control Unit)50が搭載されている。ECU50は、車両1の走行制御に係る各種演算処理を行う演算処理回路と、制御用のプログラムやデータが記憶されたメモリと、を備える電子制御ユニットである。ECU50は、各種センサ値に基づいてエンジン3の駆動を制御する。ECU50は、エンジン3の運転状態に基づいてEGR弁18の開度を制御する。ECU50は、EGR弁18の制御装置の一例である。ECU50は、後述する取得部及び補正部を機能的に実現する。また、ECU50は制御モータ22の停止位置を制御することにより、ルーパ21の姿勢を制御する。このようにしてグリルシャッタ20の開度が制御される。
【0013】
ECU50には、イグニッションスイッチ61、車速センサ62、及び水温センサ63が接続されている。イグニッションスイッチ61は、車両1のシステムを起動するためのスイッチである。車速センサ62は、車速を検出する。水温センサ63は、EGRクーラ17に導入される冷却水の温度を検出する。
【0014】
EGR管16及びEGRクーラ17は、グリルシャッタ20を介してエンジンコンパートメント2内を流れる走行風に晒される。ここでEGR管16は、熱伝導率が高い金属製である。このため、EGRガスはEGRクーラ17での冷却水との熱交換のみならず、EGR管16での走行風との熱交換によっても冷却される。また、EGR管16及びEGRクーラ17周辺の温度は、EGRクーラ17に導入される冷却水の温度の影響を受ける。
【0015】
[EGR弁の開度補正制御]
図2は、EGR弁18の開度補正制御を例示したフローチャートである。本制御はイグニッションがオンの間は繰り返し実行される。最初にECU50は、触媒15の温度を取得する(ステップS1)。ECU50は、例えばエンジン3の回転数と負荷率とに基づいて触媒15の温度を推定することにより取得してもよい。ECU50は、触媒15の温度を検出するセンサにより触媒15の温度を取得してもよい。
【0016】
次にECU50は、EGRクーラ17に導入される冷却水の温度、車速、及びグリルシャッタ20の開度を取得する(ステップS2)。ECU50は、水温センサ63の検出値に基づいて冷却水の温度を取得する。ECU50は、車速センサ62の検出値に基づいて車速を取得する。ECU50は、制御モータ22の制御指令値に基づいてグリルシャッタ20の開度を取得してもよいし、制御モータ22に設けられたセンサの検出値に基づいてグリルシャッタ20の開度を取得してもよい。ステップS2は、取得部が実行する処理の一例である。
【0017】
次にECU50は、EGR管16及びEGRクーラ17周辺の雰囲気温度を算出する(ステップS3)。雰囲気温度は、EGR管16及びEGRクーラ17周辺を流れる走行風の流量(以下、雰囲気流量と称する)と、EGRクーラ17に導入される冷却水の温度とに基づいて算出される。具体的には、ECU50は図3A及び図3Bのマップを参照して、雰囲気温度を算出する。
【0018】
図3Aは、車速とグリルシャッタ20の開度とに応じて雰囲気流量を規定したマップの例示図である。図3Aのマップでは、車速が速いほど、及びグリルシャッタ20の開度が大きいほど、雰囲気流量は増大するように規定されている。車速が速いほどエンジンコンパートメント2内を流れる走行風の流速が高くなり、この結果、雰囲気流量は増大するからである。また、グリルシャッタ20の開度が大きいほど、エンジンコンパートメント2内に導入される空気量が増大し、この結果、雰囲気流量は増大するからである。尚、雰囲気流量は上記のようなマップに基づいて算出することに限定されず、車速とグリルシャッタ20の開度とを引数とした演算式により算出してもよい。
【0019】
図3Bは、雰囲気流量とEGRクーラ17に導入される冷却水の温度とに応じて雰囲気温度を規定したマップの例示図である。図3Bのマップでは、雰囲気流量が大きいほど、及びEGRクーラ17に導入される冷却水の温度が低いほど、雰囲気温度は低下する。雰囲気流量が大きいほど、EGR管16を介してEGRガスから走行風に持ち去られる熱量が増大するからである。また、EGRクーラ17に導入される冷却水の温度が低いほど、EGRクーラ17周辺を流れる走行風が冷却され、特にEGRクーラ17の風下に位置するEGR管16の部位が冷却されるからである。尚、雰囲気温度は上記のようなマップに基づいて算出することに限定されず、雰囲気流量とEGRクーラ17に導入される冷却水の温度とを引数とした演算式により算出してもよい。
【0020】
次にECU50はエンジン3の出力増大要求があり、且つ排気ガスの温度制限が必要か否かを判定する(ステップS4)。排気ガスの温度の制限とは、触媒15の過昇温を抑制するために、排気ガスの昇温を抑制するための制限である。例えばステップS1で取得された触媒15の温度が上限値付近にある場合には、排気ガスの温度制限が必要と判定される。ステップS4でNoの場合には、再度ステップS1が実行される。
【0021】
ステップS4でYesの場合とは、エンジン3の出力を増大させることにより、排気ガスの温度が上昇して触媒15の温度が上限値を超える恐れがある場合である。この場合には、ECU50は以下のようにEGR弁18の開度を補正する。
【0022】
ステップS4でYesの場合には、ECU50は補正係数Kを算出する(ステップS5)。補正係数Kは、例えば0.5~1.5までの可変値である。図3Cは、雰囲気温度と雰囲気流量とに応じて補正係数Kを規定したマップの例示図である。図3Cのマップでは、雰囲気温度が低いほど、及び雰囲気流量が大きいほど、補正係数Kは増大するように規定されている。補正係数Kが1.0よりも大きい場合は、雰囲気温度と雰囲気流量とに基づいてEGR管16でEGRガスの温度が低下すると考えられる場合である。補正係数Kが1.0未満の場合は、雰囲気温度と雰囲気流量とに基づいてEGR管16でEGRガスの温度が上昇すると考えられる場合である。補正係数Kは、上記のようなマップに基づいて算出することに限定されず、雰囲気温度と雰囲気流量とを引数とした演算式により算出してもよい。
【0023】
次にECU50は、補正係数Kに基づいてEGR弁18の開度を補正する(ステップS6)。具体的にはECU50は、EGR弁18の目標開度Aに補正係数Kを乗算して補正後の目標開度Bを算出し、EGR弁18の開度を補正後の目標開度Bに制御する。尚、補正前の目標開度Aは、エンジン3の運転状態等に基づいて予め算出されている。ステップS6は、補正部が実行する処理の一例である。
【0024】
ここで、補正係数Kが1よりも大きい場合は、補正後の目標開度Bは補正前の目標開度Aよりも大きい。この場合、EGR管16でEGRガスの温度が低下すると考えられる場合であり、その分EGR率を増大させることができる。これにより、エンジン3でのノッキングの発生が抑制され、排気ガスの温度が低下する。従って、エンジン3の出力増大の要求を満たしながら、触媒15の過昇温が抑制される。
【0025】
補正係数Kが1未満の場合には、補正後の目標開度Bは補正前の目標開度Aよりも小さい。この場合、EGR管16でEGRガスの温度が上昇すると考えられる場合であり、その分EGR率を減少させる。これにより、エンジン3でノッキングが発生して排気ガスの温度が上昇することを抑制できる。
【0026】
以上のようにEGRクーラ17に導入される冷却水の温度、車速、及びグリルシャッタ20の開度に基づいてEGR弁18の開度が制御される。これにより、EGR管16及びEGRクーラ17が走行風に晒されることを考慮してEGR弁18の開度が制御される。このため、EGR率が適切に制御される。
【0027】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 車両
2 エンジンコンパートメント
3 エンジン
16 EGR管
17 EGRクーラ
18 EGR弁
20 グリルシャッタ
50 ECU(制御装置)
図1
図2
図3