(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025023380
(43)【公開日】2025-02-17
(54)【発明の名称】印刷装置、印刷制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/32 20060101AFI20250207BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20250207BHJP
B65H 7/06 20060101ALI20250207BHJP
【FI】
B41J2/32 Z
B41J29/38 302
B65H7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127447
(22)【出願日】2023-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】生江 令人
【テーマコード(参考)】
2C061
2C065
3F048
【Fターム(参考)】
2C061AP01
2C061AQ04
2C061AS06
2C061HH13
2C061HJ01
2C061HJ02
2C061HN08
2C061HN15
2C061HV09
2C061HV21
2C061HV41
2C061HV46
2C065AA01
2C065AB01
2C065AD07
2C065AF01
2C065CZ03
2C065CZ06
2C065CZ18
3F048AA05
3F048AB01
3F048BA14
3F048BB03
3F048DC12
3F048EA13
3F048EB22
(57)【要約】
【課題】紙詰まりが発生した際の印刷再開までの手間と記録紙の無駄使いを削減する。
【解決手段】サーマルプリンタ1のCPU11は、サーマルヘッド171による印刷が行われている際にジャム検出部18によりジャムが検出された場合、サーマルヘッド171による印刷を中断し、テープ(被印刷媒体)Tを副走査方向Xとは逆方向(
図5(b)及び
図5(c)参照)へ所定の長さだけ搬送させる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷媒体を加熱することにより印刷を行うサーマルヘッドと、
前記サーマルヘッドとの間に前記被印刷媒体を挟んで回転することにより、前記被印刷媒体を搬送するプラテンローラと、
前記被印刷媒体のジャムを検出するジャム検出部と、
前記印刷が行われている際に前記ジャム検出部により前記ジャムが検出された場合、前記印刷を中断し、前記被印刷媒体を搬出方向とは逆方向へ所定の長さだけ搬送させる制御部と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記被印刷媒体を搬出方向とは逆方向へ所定の長さだけ搬送させた後、前記被印刷媒体を前記搬出方向へ前記所定の長さだけ搬送させ、前記サーマルヘッドによる前記印刷を再開させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記被印刷媒体を搬出方向とは逆方向へ所定の長さだけ搬送させた後、前記被印刷媒体を前記搬出方向へ前記所定の長さだけ搬送させる際に、前記サーマルヘッドに印加する電圧を、前記被印刷媒体の発色に影響しない電圧レベルに調整する、
ことを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記被印刷媒体の種類に基づいて前記電圧レベルを調整する、
ことを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記電圧レベルは、
前記ジャムにより前記被印刷媒体に発生した皺を抑制可能な電圧レベルである、
ことを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記ジャム検出部は、
前記被印刷媒体の搬送経路から逸脱した所定の領域に前記被印刷媒体が搬送されたことを前記ジャムとして検出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記所定の長さは、
前記ジャム検出部から前記被印刷媒体の搬送経路に下した垂線の長さを矢高とする前記プラテンローラの円弧長に基づいて決定される長さである、
ことを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項8】
被印刷媒体を加熱することにより印刷を行うサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドとの間に前記被印刷媒体を挟んで回転することにより、前記被印刷媒体を搬送するプラテンローラと、前記被印刷媒体のジャムを検出するジャム検出部と、を備える印刷装置のコンピュータが実行する印刷制御方法であって、
前記印刷が行われている際に前記ジャム検出部により前記ジャムが検出された場合、前記印刷を中断し、前記被印刷媒体を搬出方向とは逆方向へ所定の長さだけ搬送させる制御工程を含む、
ことを特徴とする印刷制御方法。
【請求項9】
被印刷媒体を加熱することにより印刷を行うサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドとの間に前記被印刷媒体を挟んで回転することにより、前記被印刷媒体を搬送するプラテンローラと、前記被印刷媒体のジャムを検出するジャム検出部と、を備える印刷装置のコンピュータを、
前記印刷が行われている際に前記ジャム検出部により前記ジャムが検出された場合、前記印刷を中断し、前記被印刷媒体を搬出方向とは逆方向へ所定の長さだけ搬送させる制御手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、印刷制御方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、記録紙の搬送中に紙詰まり(ジャム)が発生した場合に、紙詰まりの発生直前に印刷された実印刷領域上の印刷イメージの再印刷を行うプリンタが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されているプリンタでは、記録紙の搬送中に紙詰まりが発生した場合、紙詰まりを解消する手間がかかるという問題がある。また、再印刷を行う場合、記録紙を搬出方向へ搬送し、紙詰まりの発生直前に印刷を行ったラベルの次のラベルに対して再印刷を行うので、記録紙を必要以上に使ってしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、紙詰まりが発生した際の印刷再開までの手間と記録紙の無駄使いを削減できる印刷装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る印刷装置は、
被印刷媒体を加熱することにより印刷を行うサーマルヘッドと、
前記サーマルヘッドとの間に前記被印刷媒体を挟んで回転することにより、前記被印刷媒体を搬送するプラテンローラと、
前記被印刷媒体のジャムを検出するジャム検出部と、
前記印刷が行われている際に前記ジャム検出部により前記ジャムが検出された場合、前記印刷を中断し、前記被印刷媒体を搬出方向とは逆方向へ所定の長さだけ搬送させる制御部と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、紙詰まりが発生した際の印刷再開までの手間と記録紙の無駄使いを削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】サーマルプリンタの機能構成を示すブロック図である。
【
図3】サーマルプリンタの内部構造を示す概略図である。
【
図4】印刷制御処理の制御手順を示すフローチャートである。
【
図5】(a)~(e)はジャムが発生した際のテープの搬送制御の一連の流れを示す図である。
【
図6】プラテンローラとその周囲を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る印刷装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0010】
≪サーマルプリンタの外観≫
まず、
図1を参照して、本実施の形態のサーマルプリンタ1の外観を説明する。
図1は、サーマルプリンタ1を示す外観斜視図である。
【0011】
図1に示すように、サーマルプリンタ1は、被印刷媒体としてのテープTを加熱して、文字、マーク、図、表などの画像を印刷する印刷装置である。
【0012】
テープTは、印刷されるテープ本体部と、当該テープ本体部の剥離紙と、を有する。テープ本体部は、ラミネートフィルム、発色層、テープ色層、基材、粘着層を表面から裏面に順に一体的に有する多層構造のテープである。
【0013】
サーマルプリンタ1は、筐体101上に、テープ出口102、テープ残量確認窓103、オープンボタン104、操作部12、表示部14を有する。筐体101は、後述する回路構成や、テープTを供給するテープアダプタ174(
図2、
図3参照)などを収納する。また、筐体101は、蓋101aを有し、ユーザによるオープンボタン104の押下に応じて蓋101aが開けられ、筐体101内に収納されているテープアダプタ174の交換が可能である。
【0014】
テープ出口102は、印刷されたテープTの出口である。テープ残量確認窓103は、筐体101内に収納されたリール上のテープTの厚さを残量としてユーザが観察するための透明な窓部である。オープンボタン104は、蓋101aを開けるための押下操作を受け付けるボタンである。
【0015】
操作部12は、電源キー121と、カットキー122と、無線LAN切替キー123と、を有する。電源キー121は、サーマルプリンタ1の電源オン/オフの押下入力を受け付けるキーである。カットキー122は、テープTの切断及びフィードの押下入力を受け付けるキーである。無線LAN切替キー123は、サーマルプリンタ1の無線LAN通信のモードとして、アクセスポイントモードと、クライアントモードと、を切り替える押下入力を受け付けるキーである。アクセスポイントモードとは、サーマルプリンタ1が無線LANのアクセスポイントとして機能し、サーマルプリンタ1が外部機器と直接無線LAN通信を行うモードである。クライアントモードとは、サーマルプリンタ1が無線LANのアクセスポイントを介して外部機器と無線LAN通信を行うモードである。
【0016】
表示部14は、電源ランプ141と、無線LANランプ142,143と、を有する。電源ランプ141は、サーマルプリンタ1の電源オン中に点灯するランプである。無線LANランプ142は、サーマルプリンタ1の無線LANのアクセスポイントモード中に点灯するランプである。無線LANランプ143は、サーマルプリンタ1の無線LANのクライアントモード中に点灯するランプである。
【0017】
≪サーマルプリンタの機能構成≫
次に、
図2及び
図3を参照して、サーマルプリンタ1の内部の機能構成(回路構成)を説明する。
図2は、サーマルプリンタ1の機能構成を示すブロック図である。
図3は、サーマルプリンタ1の内部構造を示す概略図である。
図3は、印刷部17(後述)とその周囲を局所的に表し、それ以外の部分を省略した概略図となっている。
【0018】
図2に示すように、サーマルプリンタ1は、CPU11と、操作部12と、RAM13と、表示部14と、記憶部15と、通信部16と、印刷部17と、ジャム検出部18と、を備える。サーマルプリンタ1の各部は、バス19を介して接続されている。
【0019】
CPU11は、サーマルプリンタ1の各部を制御する制御部である。CPU11は、記憶部15に記憶された各種プログラムのうち指定されたプログラムを読み出してRA13に展開し、展開されたプログラムとの協働で、各種処理を実行する。
【0020】
操作部12は、電源キー121、カットキー122、無線LAN切替キー123を有する。操作部12は、ユーザからの各キーの押下の操作入力を受け付け、その操作入力に基づく操作信号をCPU11に出力する。
【0021】
RAM13は、情報を読み出し及び書き込み可能な揮発性の半導体メモリである。RAM13は、CPU11に作業用のワークエリアを提供し、データ及びプログラムを一時的に記憶する。
【0022】
表示部14は、電源ランプ141、無線LANランプ142,143を有する。表示部14は、CPU11からの指示に従い、電源ランプ141、無線LANラン142,143の点灯をオン/オフする。
【0023】
記憶部15は、ROM(Read Only Memory)など、少なくとも情報の読み出しが可能な記憶部である。ただし、記憶部15は、フラッシュメモリなど、少なくとも情報の読み出し及び書き込みが可能な記憶部としてもよい。
【0024】
通信部16は、無線LAN通信用のアンテナ、変復調回路、信号処理回路などを有する。通信部16は、直接(アクセスポイントモード)又はアクセスポイントを介して(クライアントモード)外部機器(例えば、PC(Personal Computer))と無線LAN通信を行う。
【0025】
図2及び
図3に示すように、印刷部17は、サーマルヘッド171、プラテンローラ172、カッター173、テープアダプタ174、駆動部175を有し、CPU11の制御に従い、テープTに印刷を行う。
【0026】
サーマルヘッド171は、テープTの搬送経路上に配置され、テープTを加熱して印刷を行う印刷ヘッドである。ここで、テープTの搬送方向(搬出方向)を副走査方向Xとし、テープTの搬送方向(副走査方向X)に垂直な方向を主走査方向Yとする。サーマルヘッド171は、例えば、主走査方向Yに一列に配列された複数の発熱素子を一ライン有する。サーマルヘッド171は、CPU11の制御により、駆動部175を介して、印刷データに応じて複数の発熱素子が選択的に通電されることで、加熱によりテープTに一ラインずつ印刷を行う。なお、サーマルヘッド171が、主走査方向Yに一列に配列された複数の発熱素子を複数ライン有し、テープTに複数ラインずつ印刷を行う構成としてもよい。
【0027】
プラテンローラ172は、サーマルヘッド171に対向して設けられ、テープアダプタ174から引き出されるテープTを、サーマルヘッド171との間で挟んで回転することによりテープ出口102に搬送するローラーである。プラテンローラ172は、CPU11の制御により、駆動部175を介して、サーマルヘッド171の方向へ昇降(接離)自在に、回転軸を中心に回転駆動されることにより、サーマルヘッド171に当接して印刷可能に、テープTを副走査方向Xにテープ出口102へ搬送する。また、プラテンローラ172は、CPU11の制御により、駆動部175を介して、テープTを副走査方向Xに搬送するときの回転(正転)とは逆向きに回転(逆転)駆動することが可能となっている。つまり、プラテンローラ172は、回転軸を中心に逆転駆動されることにより、テープTを副走査方向Xとは反対の方向へ搬送することが可能となっている。
【0028】
カッター173は、テープTの搬送経路上であって、サーマルヘッド171よりも副走査方向Xの下流側(テープ出口102側)に配置され、CPU11の制御により、印刷後のテープTを切断する切断部である。カッター173は、テープTのテープ本体部及び剥離紙をまとめて切断(フルカット)するフルカット機構を有するものとするが、これに限定されるものではなく、テープTのテープ本体部のみを切断(ハーフカット)するハーフカット機構も有するものとしてもよい。
【0029】
テープアダプタ174は、巻回された印刷前のテープTを保持するアダプタである。テープアダプタ174は、プラテンローラ172の回転(正転)により引っ張られるテープTをサーマルヘッド171側に送り出す。
【0030】
駆動部175は、サーマルヘッド171、プラテンローラ172、カッター173を駆動する駆動部であり、サーマルヘッド171の各発熱素子に通電するヘッド駆動回路、プラテンローラ172のプラテンローラ昇降機構、プラテンローラ172を回転(正転又は逆転)するモータ、カッター173の切断駆動機構を有する。駆動部175は、CPU11の制御に従い、ヘッド駆動回路によるサーマルヘッド171の各発熱素子の加熱、プラテンローラ昇降機構によるプラテンローラ172の昇降、モータによるプラテンローラ172の回転、カッター173の切断駆動機構によるテープの切断を行う。
【0031】
ジャム検出部18は、テープTが副走査方向Xにテープ出口102へ搬送される際に、プラテンローラ172への巻き付きを起因として、プラテンローラ172の側方の領域R(
図3参照)、すなわち、搬送経路から逸脱した領域Rに搬送されてしまったテープTを検出するフォトセンサである。このため、ジャム検出部18は、上記の領域Rを介してプラテンローラ172のローラー面が臨める位置に設けられている。ジャム検出部18は、検出された検出情報をCPU11に出力する。
【0032】
≪サーマルプリンタの動作≫
次に、
図4を参照して、サーマルプリンタ1により実行される印刷制御処理について説明する。
図4は、印刷制御処理の制御手順を示すフローチャートである。この印刷制御処理は、例えば、サーマルプリンタ1のCPU11が、通信部16を介して、外部機器から印刷データ(印刷ジョブデータ)を取得したことを契機として開始される。
【0033】
図4に示すように、印刷制御処理が開始されると、サーマルプリンタ1のCPU11は、駆動部175を介して、プラテンローラ172を回転(正転)させることにより、印刷対象ラインがサーマルヘッド171の発熱素子と対向する位置までテープTを副走査方向Xへ搬送(正転搬送)させる(ステップS1)。
【0034】
次いで、CPU11は、ジャム検出部18によりテープTのジャムを検出したか否かを判定する(ステップS2)。
【0035】
ステップS2において、ジャム検出部18によりテープTのジャムが検出されていないと判定された場合(ステップS2;NO)、CPU11は、サーマルヘッド171に印加する電圧を所定の電圧レベルに調整し、当該サーマルヘッド171により1ライン分の印刷を行わせる(ステップS3)。
【0036】
次いで、CPU11は、ステップS3で印刷が行われたライン(印刷対象ライン)が印刷最終ラインであるか否かを判定する(ステップS4)。
【0037】
ステップS4において、印刷対象ラインが印刷最終ラインであると判定された場合(ステップS4;YES)、CPU11は、印刷制御処理を終了する。
【0038】
また、ステップS4において、印刷対象ラインが印刷最終ラインではないと判定された場合(ステップS4;NO)、CPU11は、処理をステップS1に戻し、次の印刷対象ラインがサーマルヘッド171の発熱素子と対向する位置までテープTを副走査方向Xへ搬送(正転搬送)させる(ステップS1)。続けて、CPU11は、ステップS2以降の処理を行う。
【0039】
また、ステップS2において、ジャム検出部18によりテープTのジャムが検出されたと判定された場合(ステップS2;YES)、CPU11は、駆動部175を介して、プラテンローラ172を回転(逆転)させることにより、副走査方向Xとは逆方向へ所定の長さ(L×2)だけテープTを搬送(逆転搬送)させる(ステップS5)。例えば、
図5(a)に示すように、プラテンローラ172に巻き付いたことを起因としてテープTに山折り箇所(ジャム部分)Twが発生し、当該山折り箇所Twがプラテンローラ172とジャム検出部18との間の領域R(
図3参照)に進入すると、ジャム検出部18により当該テープTのジャムが検出される。このようにジャム検出部18によりテープTのジャムが検出されると、CPU11は、サーマルヘッド171による印刷を中断し、
図5(b)及び
図5(c)に示すように、副走査方向Xとは逆方向(図中の矢印方向)へ所定の長さ(L×2)、すなわち、上記の山折り箇所(ジャム部分)Twの長さだけテープTを搬送(逆転搬送)させる。つまり、CPU11は、テープTの山折り箇所(ジャム部分)Twがサーマルヘッド171による印刷位置よりも上流に位置するようにテープTを搬送(逆転搬送)させる。ここで、所定の長さ(L×2)は、
図6に示すように、ジャム検出部18からテープTの搬送経路TPに下した垂線PLの長さlを矢高とするプラテンローラ172の円弧長(L×2)に相当する長さとなっている。
【0040】
次いで、CPU11は、サーマルヘッド171に印加する電圧を、テープTの発色に影響しない電圧レベルであり、且つ、テープTの山折り箇所Twに発生した皺を抑制可能な電圧レベルに調整する(ステップS6)。この電圧レベルは、テープTの種類(紙テープ、布テープ、マグネットテープ等)に基づいて調整され、例えば、最小階調の印刷濃度で印刷が行われる際にサーマルヘッド171に印加する電圧の40%程度の電圧レベルである。
【0041】
次いで、CPU11は、駆動部175を介して、プラテンローラ172を回転(正転)させることにより、副走査方向Xへ所定の長さ(L×2)だけテープTを搬送(正転搬送)させる(ステップS7)。例えば、
図5(d)及び
図5(e)に示すように、CPU11は、副走査方向Xへ所定の長さ(L×2)だけ、すなわち、山折り箇所(ジャム部分)Twの先端部分から終端部分がサーマルヘッド171による印刷位置を通過するまで、テープTを搬送(正転搬送)させる。つまり、CPU11は、ジャム検出部18によるジャムの検出を契機としてサーマルヘッド171による印刷が中断された位置までテープTを戻す。上述したように、このとき、サーマルヘッド171は、印加電圧がテープTの発色に影響しない電圧レベルであり、且つ、テープTの山折り箇所Twに発生した皺を抑制可能な電圧レベルに調整されている。このため、副走査方向Xへ所定の長さ(L×2)だけテープTを搬送させることによって、山折り箇所(ジャム部分)Twに発生した皺を除去することができるようになっている。
【0042】
次いで、CPU11は、処理をステップS3に進め、サーマルヘッド171により1ライン分の印刷を行わせる(ステップS3)。続けて、CPU11は、ステップS4以降の処理を行う。
【0043】
≪効果≫
以上説明したように、サーマルプリンタ1のCPU11は、サーマルヘッド171による印刷が行われている際にジャム検出部18によりジャムが検出された場合、サーマルヘッド171による印刷を中断し、テープ(被印刷媒体)Tを副走査方向Xとは逆方向(
図5(b)及び
図5(c)参照)へ所定の長さだけ搬送させる。これにより、ジャム検出部18により検出されたジャムを解消できるので、ジャムが発生した際の印刷再開までのユーザの手間とテープTの無駄使いを削減できる。
【0044】
また、CPU11は、テープTを副走査方向Xとは逆方向へ所定の長さだけ搬送させた後、テープTを副走査方向Xへ上記の所定の長さだけ搬送させ、サーマルヘッド171による印刷を再開させる。これにより、ジャム検出部18によるジャムの検出を契機としてサーマルヘッド171による印刷が中断された位置から印刷を再開できるので、ジャムが発生した際の印刷再開までのユーザの手間とテープTの無駄使いをより一段と削減できる。
【0045】
また、CPU11は、テープTを副走査方向Xとは逆方向へ所定の長さだけ搬送させた後、テープTを副走査方向Xへ上記の所定の長さだけ搬送させる際に、サーマルヘッド171に印加する電圧を、テープTの発色に影響しない電圧レベルであって、ジャムによりテープTに発生した皺を抑制可能な電圧レベルに調整する。これにより、テープTを副走査方向Xへ上記の所定の長さだけ搬送させる際に、テープTに発生した皺を伸ばすことができるので、ジャムの再発を抑制することができる。
【0046】
また、CPU11は、テープTの種類に基づいて電圧レベルを調整する。これにより、テープTに発生した皺を伸ばす処理を当該テープTの種類に応じて適切に行うことができる。
【0047】
また、ジャム検出部18は、テープTの搬送経路TPから逸脱した所定の領域R(
図3参照)にテープTが搬送されたことをジャムとして検出する。したがって、サーマルプリンタ1によれば、テープTのジャムを的確に検出できる。
【0048】
また、上記の所定の長さ(L×2)は、ジャム検出部18から搬送経路TPに下した垂線PLの長さlを矢高とするプラテンローラ172の円弧長に基づいて決定されているので、プラテンローラ172への巻き付きを起因として発生したジャムを適切に解消することができる。
【0049】
≪その他≫
なお、上記実施形態における記述は、本発明に係る印刷装置の一例であり、これに限定されるものではない。
例えば、上記実施形態では、テープTを副走査方向Xとは逆方向へ所定の長さ(L×2)だけ搬送させた後、テープTを副走査方向Xへ上記の所定の長さ(L×2)だけ搬送させる際に、サーマルヘッド171に印加する電圧を、テープTの発色に影響しない電圧レベルであり、且つ、テープTの山折り箇所Twに発生した皺を抑制可能な電圧レベルに調整しているが、テープTを副走査方向Xとは逆方向へ所定の長さ(L×2)だけ搬送させる際、すなわち、印刷制御処理(
図4参照)のステップS5の処理が行われる際にも、サーマルヘッド171に印加する電圧を上記の電圧レベルに調整するようにしてもよい。
【0050】
また、上記実施形態において、ジャム検出部18は、プラテンローラ172への巻き付きを起因として発生するジャムを検出するため、領域R(
図3参照)を介してプラテンローラ172のローラー面が臨める位置に設けられているが、当該ジャムとは異なる態様のジャムが発生し得る場合には、当該ジャムを検出可能な位置にジャム検出部を別途設けるようにしてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、印刷制御処理(
図4参照)のステップS5において、副走査方向Xとは逆方向へテープTを搬送(逆転搬送)させる際の所定の長さを、ジャム検出部18からテープTの搬送経路TPに下した垂線PLの長さlを矢高とするプラテンローラ172の円弧長(L×2)に相当する長さとしているが、この長さはあくまでも一例にすぎず、少なくともテープTのジャム部分(山折り箇所Tw)の長さを有していれば、それ以上の長さであってもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、テープTを副走査方向Xとは逆方向へ所定の長さ(L×2)だけ搬送させる際、及び/又は、テープTを副走査方向Xへ上記の所定の長さ(L×2)だけ搬送させる際に、駆動部175を介して、プラテンローラ172をサーマルヘッド171の方向へ接近させるようにしてもよい。これにより、上記搬送の際にプラテンローラ172とサーマルヘッド171との間を通過するテープTのジャム部分(山折り箇所Tw)を押圧することができるので、当該ジャム部分に発生した皺を好適に伸ばすことができる。
【0053】
また、上記実施形態におけるサーマルプリンタ1の各構成要素の細部構成及び細部動作に関しては、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0054】
1 サーマルプリンタ
11 CPU
12 操作部
13 RAM
14 表示部
15 記憶部
16 通信部
17 印刷部
171 サーマルヘッド
172 プラテンローラ
173 カッター
174 テープアダプタ
175 駆動部
18 ジャム検出部
19 バス