(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025023398
(43)【公開日】2025-02-17
(54)【発明の名称】判定装置、判定方法、および、判定プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/11 20060101AFI20250207BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20250207BHJP
E06C 7/18 20060101ALN20250207BHJP
【FI】
A61B5/11 210
A61B5/00 102A
E06C7/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127485
(22)【出願日】2023-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506055405
【氏名又は名称】学校法人帝京科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 元悟
(72)【発明者】
【氏名】田中 和哉
【テーマコード(参考)】
2E044
4C038
4C117
【Fターム(参考)】
2E044EE12
4C038VA04
4C038VB15
4C038VB31
4C038VC20
4C117XB01
4C117XC01
4C117XE26
4C117XJ11
4C117XJ45
(57)【要約】
【課題】脚立の設置方向の誤り、あるいは、作業方向の誤りを検知する。
【解決手段】判定装置は、作業開始前に脚立に乗った作業者の静止状態における重心軌跡を取得する。そして、判定装置は、取得した重心軌跡のx方向の振幅Δxとy方向の振幅Δyとの比率r(Δy/Δx)を求める。作業者の作業開始後、判定装置は、脚立に乗った作業者の作業中の重心軌跡を取得する。そして、判定装置は、取得した重心軌跡のx方向の振幅Δx´とy方向の振幅Δy´との比率r´(Δy´/Δx´)を求める。判定装置が、比率r(Δy/Δx)>比率r´(Δy´/Δx´)と判定した場合、脚立の設置方向の誤り、あるいは、作業方向の誤りがある旨の警報を出力する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚立の回転軸の方向をx方向とし、水平方向にx方向と直交する方向をy方向とし、前記脚立に乗った作業者の作業開始前の重心動揺の軌跡を取得し、取得した前記重心動揺の軌跡におけるx方向の振幅とy方向の振幅との比率を算出する第1の算出部と、
前記脚立に乗った作業者の作業中における重心動揺の軌跡を取得し、取得した前記重心動揺の軌跡における、x方向の振幅とy方向の振幅との比率を算出する第2の算出部と、
前記第2の算出部により算出された前記作業者のx方向の振幅の比率が、前記第1の算出部により算出された当該作業者のx方向の振幅の比率よりも大きいか否かを判定する判定部と、
前記第2の算出部により算出された前記作業者のx方向の振幅の比率が、前記第1の算出部により算出された当該作業者のx方向の振幅の比率よりも大きい場合、前記脚立の設置方向の誤りまたは作業方向の誤りが発生している旨の警報を出力する出力処理部と
を備えることを特徴とする判定装置。
【請求項2】
前記重心動揺の軌跡におけるx方向の振幅は、前記重心動揺の軌跡におけるx方向の最大振幅であり、前記重心動揺の軌跡におけるy方向の振幅は、前記重心動揺の軌跡におけるy方向の最大振幅である、
ことを特徴とする請求項1に記載の判定装置。
【請求項3】
前記第1の算出部により算出された前記作業者のx方向の振幅とy方向の振幅との比率を、当該作業者の識別情報および日付と対応付けて記憶する記憶部をさらに備え、
前記判定部は、
前記記憶部に記憶される当該作業者のx方向の振幅とy方向の振幅との比率のうち、最新の日付の前記比率を用いて、前記判定を行うこと
を特徴とする請求項1に記載の判定装置。
【請求項4】
判定装置により実行される判定方法であって、
脚立の回転軸の方向をx方向とし、水平方向にx方向と直交する方向をy方向とし、前記脚立に乗った作業者の作業開始前の重心動揺の軌跡を取得し、取得した前記重心動揺の軌跡におけるx方向の振幅とy方向の振幅との比率を算出する第1の算出工程と、
前記脚立に乗った作業者の作業中における重心動揺の軌跡を取得し、取得した前記重心動揺の軌跡における、x方向の振幅とy方向の振幅との比率を算出する第2の算出工程と、
前記第2の算出工程により算出された前記作業者のx方向の振幅の比率が、前記第1の算出工程により算出された当該作業者のx方向の振幅の比率よりも大きいか否かを判定する工程と、
前記第2の算出工程により算出された前記作業者のx方向の振幅の比率が、前記第1の算出工程により算出された当該作業者のx方向の振幅の比率よりも大きい場合、前記脚立の設置方向の誤りまたは作業方向の誤りが発生している旨の警報を出力する工程と
を含むことを特徴とする判定方法。
【請求項5】
脚立の回転軸の方向をx方向とし、水平方向にx方向と直交する方向をy方向とし、前記脚立に乗った作業者の作業開始前の重心動揺の軌跡を取得し、取得した前記重心動揺の軌跡におけるx方向の振幅とy方向の振幅との比率を算出する第1の算出工程と、
前記脚立に乗った作業者の作業中における重心動揺の軌跡を取得し、取得した前記重心動揺の軌跡における、x方向の振幅とy方向の振幅との比率を算出する第2の算出工程と、
前記第2の算出工程により算出された前記作業者のx方向の振幅の比率が、前記第1の算出工程により算出された当該作業者のx方向の振幅の比率よりも大きいか否かを判定する工程と、
前記第2の算出工程により算出された前記作業者のx方向の振幅の比率が、前記第1の算出工程により算出された当該作業者のx方向の振幅の比率よりも大きい場合、前記脚立の設置方向の誤りまたは作業方向の誤りが発生している旨の警報を出力する工程と
をコンピュータに実行させるための判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脚立の設置方向の誤り、あるいは、作業方向の誤りを検知するための、判定装置、判定方法、および、判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脚立に乗って作業する作業者の転倒等の事故を防止する技術がある。例えば、脚立の4本の脚に取り付けられた重量センサにより、脚立で作業する作業者の重心の動き等を捉え、その重心の動きの振幅が所定の閾値を超えた場合に警報を出力する技術がある。また、作業者のバランス能力を考慮した上で、上記の重心の動きの振幅に関する閾値を設定する技術もある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、例えば、脚立の回転軸の方向をx方向とし、水平方向にx方向と直交する方向をy方向としたとき、脚立に乗って作業する作業者はy方向よりもx方向に転倒しやすい傾向がある。したがって、作業者が脚立に乗って作業する際には作業方向がx方向にならないように脚立を設置する、あるいは、作業方向がx方向にならないように作業するのが好ましい。
【0005】
しかし、従来、脚立の設置方向の誤り、あるいは、作業方向の誤りを検知する技術はなかった。そのため、脚立での作業中における転倒の予兆を精度よく検知することはできなかった。そこで、本発明は、脚立の設置方向の誤り、あるいは、作業方向の誤りを検知することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するため、本発明は、脚立の回転軸の方向をx方向とし、水平方向にx方向と直交する方向をy方向とし、前記脚立に乗った作業者の作業開始前の重心動揺の軌跡を取得し、取得した前記重心動揺の軌跡におけるx方向の振幅とy方向の振幅との比率を算出する第1の算出部と、前記脚立に乗った作業者の作業中における重心動揺の軌跡を取得し、取得した前記重心動揺の軌跡における、x方向の振幅とy方向の振幅との比率を算出する第2の算出部と、前記第2の算出部により算出された前記作業者のx方向の振幅の比率が、前記第1の算出部により算出された当該作業者のx方向の振幅の比率よりも大きいか否かを判定する判定部と、前記第2の算出部により算出された前記作業者のx方向の振幅の比率が、前記第1の算出部により算出された当該作業者のx方向の振幅の比率よりも大きい場合、前記脚立の設置方向の誤りまたは作業方向の誤りが発生している旨の警報を出力する出力処理部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、脚立の設置方向の誤り、あるいは、作業方向の誤りを検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態におけるx方向、y方向を説明するための図である。
【
図2】
図2は、作業者の重心軌跡の例を示す図である。
【
図3】
図3は、判定システムの構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、判定装置が実行する事前測定処理の例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、判定装置が実行する作業時の測定処理の例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、判定プログラムを実行するコンピュータの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(実施形態)について説明する。本発明は、本実施形態に限定されない。
【0010】
[概要]
まず、
図1および
図2を用いて、本実施形態の判定装置10の概要を説明する。なお、以下の説明において、脚立の回転軸の方向をx方向とし、水平方向にx方向と直交する方向をy方向とする。
【0011】
前記したとおり、脚立に乗って作業する作業者はy方向よりもx方向に転倒しやすい傾向がある。よって、
図1に示すように、作業対象がy方向(+y方向)にあるように脚立が設置されている方が作業者にとって安全である(=脚立の設置方向が正しい)と考えられる。
【0012】
ここで、判定装置10は、例えば、脚立の各脚部に設置された重量センサ等から、作業者が脚立に乗って作業するときの重心軌跡を測定する。
【0013】
そして、例えば、
図2の符号201に示すように、作業者の重心軌跡の最大振幅がy方向に長い場合、作業者にとって安全である(=脚立の設置方向が正しい)と考えられる。一方、符号202に示すように、作業者の重心軌跡の最大振幅がx方向に長い場合、作業者にとって安全ではない(=脚立の設置方向が誤っている)と考えられる。
【0014】
しかし、重心軌跡のx方向の最大振幅>重心軌跡のy方向の最大振幅か否かの判定のみでは、作業者個人の運動能力や体調を踏まえたバランス能力特性、脚立の足場形状、脛位置での寄りかかりによる体勢の支持等、様々な条件を考慮できていない。
【0015】
そこで、判定装置10は、上記の条件を考慮するため、作業開始前に作業者が脚立に乗った状態(静止状態)の重心軌跡のΔx(例えば、x方向の最大振幅)およびΔy(例えば、y方向の最大振幅)を取得する(特許文献1参照)。そして、判定装置10は、ΔxとΔyとの比率r(例えば、Δy/Δx)を算出する。上記の比率rは、作業者の個人特性や脚立の特性を反映した値と考えることができる。以下、比率r=Δy/Δx、比率r´=Δy´/Δx´である場合を例に説明する。
【0016】
作業者の作業開始後、判定装置10は、所定期間ごとに、Δx´とΔy´を取得する。そして、取得したΔx´とΔy´を用いて、作業者の作業中の振幅の比率r´(Δy´/Δx´)を算出する。ここで作業中における比率r´が、作業開始前の振幅の比率rよりも小さければ、横方向(x方向)の振動が大きい状況であることが分かる。つまり、脚立の設置方向が誤っている、あるいは、作業方向が誤っていることが推測される。よって、判定装置10は、比率r>比率r´と判定した場合、作業者に脚立の設置方向が誤っている、あるいは、作業方向が誤っている旨の警報を出力する。
【0017】
これにより、判定装置10は、作業者に脚立の設置方向が誤っている、あるいは、作業方向が誤っていることを通知することができる。その結果、作業者が脚立に乗って作業中しているときの転倒等の事故を防止することができる。
【0018】
[構成例]
次に、
図3を用いて、判定システムの構成例を説明する。判定システムは、センサ22と、脚立20と、判定装置10とを備える。
【0019】
センサ22は、脚立20に乗って作業する作業者の重心位置に関する時系列データを収集する。センサ22は、例えば、脚立20の脚部に分散して配置される。各センサ22は、例えば、重量を計測可能な歪みセンサである。作業者が脚立20に乗ると、各センサ22が歪みの大きさに応じたセンサ値を生成し出力する。センサ22は、センサ値を有線または無線で判定装置10に送信する。
【0020】
判定装置10は、4つのセンサ22から所定の間隔でセンサ値を受信し続けることで、脚立20に乗った作業者の重心位置に関する時系列データを取得することができる。なお、センサ22の数は、4つに限定されず、3つ以上であればよい。センサ22の数が3つ以上であれば、作業者の重心の変動を検出することができる。
【0021】
脚立20は、踏み台、三脚、作業台、足場台など、作業者が当該器具に乗り、地面よりも高い位置で作業する際に用いられる器具であれば何でもよい。あるいは、脚立20とセンサ22の代わりに、センサを内蔵する重心動揺計を用いることもできる。
【0022】
[判定装置]
判定装置10は、例えば、入出力部11、記憶部12、および、制御部13を備える。入出力部11は、各種データの入出力を司るインタフェースである。入出力部11は、例えば、センサ22のセンサ値の入力を受け付けたり、制御部13により生成された警報を出力したりする。
【0023】
記憶部12は、制御部13が各種処理を実行する際に参照されるデータ、プログラム等を記憶する。記憶部12は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。例えば、記憶部12は、制御部13により算出された事前比率rを記憶する事前比率DB等を備える。
【0024】
制御部13は、判定装置10全体の制御を司る。制御部13の機能は、例えば、CPU(Central Processing Unit)が、記憶部12に記憶されるプログラムを実行することにより実現される。
【0025】
制御部13は、例えば、測定パターン設定部131と、データ取得部132と、第1の算出部133と、第2の算出部134と、判定部135と、出力処理部136とを備える。
【0026】
測定パターン設定部131は、ユーザから、測定パターン(事前測定か、作業時の測定か)の設定入力を受け付け、判定装置10に設定する。また、測定パターン設定部131は、測定パターンの他に、測定対象の作業者のID、測定の日付等の設定入力も受け付ける。
【0027】
データ取得部132は、作業者の重心位置に関する時系列データをセンサ22から取得する。例えば、データ取得部132は、作業開始前および作業中における作業者の重心位置の時系列データをセンサ22から取得する。
【0028】
第1の算出部133は、データ取得部132から作業開始前における作業者の重心位置の時系列データ(事前測定における作業者の重心位置の時系列データ)を取得する。そして、第1の算出部133は、取得した重心位置の時系列データを用いて重心動揺の軌跡を求める。その後、第1の算出部133は、求めた重心動揺の軌跡におけるx方向の振幅とy方向の振幅との比率(第1の比率)を算出する。
【0029】
例えば、第1の算出部133は、作業者の重心軌跡のΔx(例えば、x方向の最大振幅)およびΔy(例えば、y方向の最大振幅)を測定する。そして、第1の算出部133は、ΔxとΔyとの比率r(例えば、Δy/Δx)を算出する。その後、第1の算出部133は、算出した比率rを作業者のID、日付と対応付けて、事前比率DBに格納する。
【0030】
第2の算出部134は、データ取得部132から作業時における作業者の重心位置の時系列データを取得する。そして、第2の算出部134は、取得した重心位置の時系列データを用いて重心動揺の軌跡を求める。その後、第2の算出部134は、重心動揺の軌跡におけるx方向の振幅とy方向の振幅との比率(第2の比率)を算出する。
【0031】
例えば、第2の算出部134は、作業時における作業者の重心動揺の軌跡のΔx´(例えば、x方向の最大振幅)およびΔy´(例えば、y方向の最大振幅)を取得する。そして、第2の算出部134は、Δx´とΔy´との比率r´(例えば、Δy´/Δx´)を算出する。第2の算出部134は、上記の処理を所定時間ごと(例えば、30秒ごと)に実行する。
【0032】
判定部135は、第2の算出部134により算出された作業者の重心軌跡のx方向の振幅の比率(作業時におけるx方向の振幅の比率)が、第1の算出部133により算出された当該作業者の重心軌跡のx方向の振幅の比率(作業開始前におけるx方向の振幅の比率)よりも大きいか否かを判定する。
【0033】
例えば、第2の算出部134により、作業者Aの作業時における比率r´(例えば、Δy´/Δx´)が算出された場合、判定部135は、事前比率DBから作業者Aの最近の日付の比率r(Δy/Δx)を読み出す。そして、判定部135は、作業者Aの最近の日付の比率r(Δy/Δx)と作業者Aの比率r´(Δy´/Δx´)とを比較し、比率r>比率r´か否かを判定する。
【0034】
出力処理部136は、判定部135により、作業時における作業者の重心軌跡のx方向の振幅の割合が、作業開始前における当該作業者の重心軌跡のx方向の振幅の割合よりも大きいと判定された場合、脚立の設置方向の誤り、または、作業方向の誤りが発生している旨の警報を出力する。
【0035】
例えば、判定部135により、比率r>比率r´と判定された場合、出力処理部136は、脚立の設置方向の誤り、または、作業方向の誤りが発生している旨の警報を出力する。
【0036】
これにより、作業者は、脚立の設置方向が誤っている、あるいは、作業方向が誤っていることを知ることができる。その結果、脚立を使った作業中における転倒等の事故を防止することができる。
【0037】
[処理手順の例]
[事前測定]
次に、
図4および
図5を用いて、判定装置10が実行する処理手順の例を説明する。まず、
図4を用いて、判定装置10が実行する事前測定処理の例を説明する。なお、測定パターン設定部131は、既に事前測定の設定入力を受け付け済みであり、作業者は脚立に乗り、作業開始前の状態であるものとする。
【0038】
判定装置10のデータ取得部132は、作業者の重心位置に関する時系列データを各センサ22から取得する。そして、第1の算出部133は、取得された時系列データに基づき、作業者の重心動揺の軌跡を求め、重心動揺の軌跡におけるΔx(例えば、x方向の最大振幅)とΔy(例えば、y方向の最大振幅)とを取得する(S1)。
【0039】
第1の算出部133は、S1で取得したΔxとΔyを用いて作業者の重心動揺の比率r(Δy/Δx)を算出する(S2)。そして、第1の算出部133は、算出した作業者の重心動揺の比率rを、作業者のID、日付とともに事前比率DBに保存する(S3:DB保存)。
【0040】
[作業時の測定]
その後、ユーザは、判定装置10の測定パターン設定部131に測定パターン(作業時の測定)を設定する。その後、作業者は脚立に乗った状態で作業を開始する。そして、判定装置10は、作業時の測定処理を開始する。
図5を用いて、判定装置10が実行する作業時の測定処理の例を説明する。
【0041】
まず、データ取得部132は、作業者の作業時における重心位置に関する時系列データを各センサ22から取得する。そして、第2の算出部134は、取得された時系列データに基づき、作業者の重心動揺の軌跡を求め、重心動揺の軌跡におけるΔx´(例えば、x方向の最大振幅)とΔy´(例えば、y方向の最大振幅)とを取得する(S11)。
【0042】
第2の算出部134は、S11で取得したΔx´とΔy´を用いて作業者の重心動揺の軌跡の比率r´(Δy´/Δx´)を算出する(S12)。
【0043】
判定部135は、S12で算出された作業者の作業中の重心動揺の軌跡の比率r´(Δy´/Δx´)が、当該作業者の作業開始前の重心動揺の軌跡の比率r(Δy/Δx)よりも小さいか否かを判定する(S13)。
【0044】
ここで、判定部135が、作業者の作業中の重心動揺の軌跡の比率r´(Δy´/Δx´)は、当該作業者の作業開始前の重心動揺の軌跡の比率r(Δy/Δx)よりも小さいと判定した場合(S13でYes)、脚立の設置方向の誤り、または、作業方向の誤りが発生している旨の警報を出力する(S14)。
【0045】
一方、判定部135が、作業者の重心動揺の軌跡の比率r´(Δy´/Δx´)は、当該作業者の重心動揺の軌跡の比率r(Δy/Δx)以上と判定した場合(S13でNo)、S11へ戻る。
【0046】
判定装置10が上記の処理を実行することで、作業者に、脚立の設置方向が誤っている、あるいは、作業方向が誤っていることを通知することができる。その結果、脚立を使った作業中における転倒等の事故を防止することができる。
【0047】
なお、前記した実施形態において、作業者の重心動揺の軌跡におけるΔxとΔyとの比率r=Δy/Δxである場合を例に説明したが、比率r=Δx/Δyであってもよい。比率r=Δx/Δyである場合、判定部135は、比率r(Δx/Δy)<比率r´(Δx´/Δy´)と判定した場合、脚立の設置方向の誤り、または、作業方向の誤りが発生している旨の警報を出力する。
【0048】
また、ΔxおよびΔyはそれぞれ、重心動揺の軌跡におけるx方向の最大振幅、y方向の最大振幅である場合を例に説明したが、x方向の振幅の平均、y方向の振幅の平均等であってもよい。
【0049】
[システム構成等]
また、図示した各部の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示のように構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行われる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0050】
また、前記した実施形態において説明した処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部又は一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0051】
[プログラム]
前記した判定装置10は、パッケージソフトウェアやオンラインソフトウェアとしてプログラム(判定プログラム)を所望のコンピュータにインストールさせることによって実装できる。例えば、上記のプログラムを情報処理装置に実行させることにより、情報処理装置を判定装置10として機能させることができる。ここで言う情報処理装置にはスマートフォン、携帯電話機やPHS(Personal Handyphone System)等の移動体通信端末、さらには、PDA(Personal Digital Assistant)等の端末等がその範疇に含まれる。
【0052】
図6は、判定プログラムを実行するコンピュータの構成例を示す図である。コンピュータ1000は、例えば、メモリ1010、CPU1020を有する。また、コンピュータ1000は、ハードディスクドライブインタフェース1030、ディスクドライブインタフェース1040、シリアルポートインタフェース1050、ビデオアダプタ1060、ネットワークインタフェース1070を有する。これらの各部は、バス1080によって接続される。
【0053】
メモリ1010は、ROM(Read Only Memory)1011及びRAM(Random Access Memory)1012を含む。ROM1011は、例えば、BIOS(Basic Input Output System)等のブートプログラムを記憶する。ハードディスクドライブインタフェース1030は、ハードディスクドライブ1090に接続される。ディスクドライブインタフェース1040は、ディスクドライブ1100に接続される。例えば磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能な記憶媒体が、ディスクドライブ1100に挿入される。シリアルポートインタフェース1050は、例えばマウス1110、キーボード1120に接続される。ビデオアダプタ1060は、例えばディスプレイ1130に接続される。
【0054】
ハードディスクドライブ1090は、例えば、OS1091、アプリケーションプログラム1092、プログラムモジュール1093、プログラムデータ1094を記憶する。すなわち、上記の判定装置10が実行する各処理を規定するプログラムは、コンピュータにより実行可能なコードが記述されたプログラムモジュール1093として実装される。プログラムモジュール1093は、例えばハードディスクドライブ1090に記憶される。例えば、判定装置10における機能構成と同様の処理を実行するためのプログラムモジュール1093が、ハードディスクドライブ1090に記憶される。なお、ハードディスクドライブ1090は、SSD(Solid State Drive)により代替されてもよい。
【0055】
また、上述した実施形態の処理で用いられるデータは、プログラムデータ1094として、例えばメモリ1010やハードディスクドライブ1090に記憶される。そして、CPU1020が、メモリ1010やハードディスクドライブ1090に記憶されたプログラムモジュール1093やプログラムデータ1094を必要に応じてRAM1012に読み出して実行する。
【0056】
なお、プログラムモジュール1093やプログラムデータ1094は、ハードディスクドライブ1090に記憶される場合に限らず、例えば着脱可能な記憶媒体に記憶され、ディスクドライブ1100等を介してCPU1020によって読み出されてもよい。あるいは、プログラムモジュール1093及びプログラムデータ1094は、ネットワーク(LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等)を介して接続される他のコンピュータに記憶されてもよい。そして、プログラムモジュール1093及びプログラムデータ1094は、他のコンピュータから、ネットワークインタフェース1070を介してCPU1020によって読み出されてもよい。
【符号の説明】
【0057】
10 判定装置
11 入出力部
12 記憶部
13 制御部
131 測定パターン設定部
132 データ取得部
133 第1の算出部
134 第2の算出部
135 判定部
136 出力処理部