IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本光電工業株式会社の特許一覧

特開2025-23417処理装置、およびコンピュータプログラム
<>
  • 特開-処理装置、およびコンピュータプログラム 図1
  • 特開-処理装置、およびコンピュータプログラム 図2
  • 特開-処理装置、およびコンピュータプログラム 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025023417
(43)【公開日】2025-02-17
(54)【発明の名称】処理装置、およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1455 20060101AFI20250207BHJP
【FI】
A61B5/1455
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127521
(22)【出願日】2023-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】大浦 光宏
(72)【発明者】
【氏名】堀口 大介
(72)【発明者】
【氏名】岸 理紗
(72)【発明者】
【氏名】堀江 克如
(72)【発明者】
【氏名】松沢 航
(72)【発明者】
【氏名】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】山森 伸二
(72)【発明者】
【氏名】鈴川 正之
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038KK01
4C038KL07
4C038KX01
(57)【要約】
【課題】動脈血酸素分圧を非侵襲的かつ時間連続的に監視可能にする。
【解決手段】入力インタフェース111は、対象者20の動脈血酸素分圧と動脈血酸素飽和度の実測値に対応する第一データD1、ならびに対象者20の動脈血二酸化炭素分圧、動脈血のpH、体温、および血液中の2,3-DPG濃度の少なくとも一つの値に対応する第二データD2の少なくとも一方を受け付ける。プロセッサ112は、第一データD1と第二データD2の少なくとも一方に基づいて対象者20の動脈血酸素飽和度を対象者20の動脈血酸素分圧の推定値に変換する規則を決定する。入力インタフェース111が対象者20の経皮的動脈血酸素飽和度に対応する第三データD3を受け付けると、プロセッサ112は、第三データD3と前記規則に基づいて前記推定値を算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の動脈血酸素分圧と動脈血酸素飽和度の実測値に対応する第一データ、ならびに当該対象者の動脈血二酸化炭素分圧、動脈血のpH、体温、および血液中の2,3-DPG濃度の少なくとも一つの値に対応する第二データの少なくとも一方を受け付ける入力インタフェースと、
前記第一データと前記第二データの少なくとも一方に基づいて前記対象者の動脈血酸素飽和度を当該対象者の動脈血酸素分圧の推定値に変換する規則を決定するプロセッサと、
を備えており、
前記入力インタフェースが前記対象者の経皮的動脈血酸素飽和度に対応する第三データを受け付けると、前記プロセッサは、前記第三データと前記規則に基づいて前記推定値を算出する、
処理装置。
【請求項2】
前記入力インタフェースが前記対象者の吸入酸素情報に対応する第四データを受け付けると、前記プロセッサは、前記推定値と前記第四データに基づいて前記対象者の酸素化能に対応する指標を取得する、
請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記入力インタフェースは、複数の時点について前記第三データを受け付け、
前記プロセッサは、前記複数の時点について受け付けられた前記第三データに対して平滑化処理を施すことにより、前記経皮的動脈血酸素飽和度の分解能を高める、
請求項1に記載の処理装置。
【請求項4】
前記入力インタフェースは、複数の時点について前記第三データを受け付け、
前記プロセッサは、前記複数の時点について受け付けられた前記第三データの近似曲線を導出し、当該近似曲線に基づいて前記複数の時点とは異なる時点の経皮的動脈血酸素飽和度の値を見積もることにより、前記経皮的動脈血酸素飽和度の分解能を高める、
請求項1に記載の処理装置。
【請求項5】
波長が相違する第一の光と第二の光が前記対象者の生体組織に照射され、
前記第三データは、前記生体組織をそれぞれ通過した前記第一の光の減光度変化と前記第二の光の減光度変化の比の実測値に対応している、
請求項1に記載の処理装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記第三データに対応する前記経皮的動脈血酸素飽和度に基づいて、前記推定値がとりうる範囲を特定する、
請求項1に記載の処理装置。
【請求項7】
前記第一データと前記第二データの少なくとも一方が更新されると、前記プロセッサは、更新された当該第一データと当該第二データの少なくとも一方に基づいて前記規則を補正する、
請求項1に記載の処理装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記実測値が取得されてからの経過時間が閾値を上回る場合、前記第三データに基づく前記推定値の算出を行なわない、
請求項1に記載の処理装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、前記実測値が取得されてからの経過時間が閾値を上回る場合、前記経過時間が前記閾値を上回っていることを通知装置に通知させる、
請求項1に記載の処理装置。
【請求項10】
前記入力インタフェースが前記対象者のバイタルサインの変化に対応する第五データを受け付けると、前記プロセッサは、当該第五データを少なくとも前記推定値と時間的に関連付ける、
請求項1に記載の処理装置。
【請求項11】
処理装置に搭載されたプロセッサにより実行可能なコンピュータプログラムであって、
実行されることにより、前記処理装置は、
対象者の動脈血酸素分圧と動脈血酸素飽和度の実測値に対応する第一データ、ならびに当該対象者の動脈血二酸化炭素分圧、動脈血のpH、体温、および血液中の2,3-DPG濃度の少なくとも一つの値に対応する第二データの少なくとも一方を受け付け、
前記第一データと前記第二データの少なくとも一方に基づいて前記対象者の動脈血酸素飽和度を当該対象者の動脈血酸素分圧の推定値に変換する規則を決定し、
前記対象者の経皮的動脈血酸素飽和度に対応する第三データを受け付け、
前記第三データと前記規則に基づいて前記推定値を算出する、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、対象者の呼吸機能の一指標である動脈血酸素分圧を監視するための処理装置に関連する。本開示は、当該処理装置に搭載されたプロセッサにより実行可能なコンピュータプログラムにも関連する。
【背景技術】
【0002】
例えば急性期医療において、対象者の呼吸機能の管理は重要な要素である。呼吸は外気中の酸素を取り込んで体内に供給するためになされるので、血液中の酸素含有量は、呼吸機能の指標の一つになりうる。特許文献1は、人工換気を最適化するために動脈血酸素飽和度も監視対象とするシステムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-538553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
動脈血酸素分圧を非侵襲的かつ時間連続的に監視可能にすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示により提供される一態様例は、処理装置であって、
対象者の動脈血酸素分圧と動脈血酸素飽和度の実測値に対応する第一データ、ならびに当該対象者の動脈血二酸化炭素分圧、動脈血のpH、体温、および血液中の2,3-DPG濃度の少なくとも一つの値に対応する第二データの少なくとも一方を受け付ける入力インタフェースと、
前記第一データと前記第二データの少なくとも一方に基づいて前記対象者の動脈血酸素飽和度を当該対象者の動脈血酸素分圧の推定値に変換する規則を決定するプロセッサと、
を備えており、
前記入力インタフェースが前記対象者の経皮的動脈血酸素飽和度に対応する第三データを受け付けると、前記プロセッサは、前記第三データと前記規則に基づいて前記推定値を算出する。
【0006】
本開示により提供される一態様例は、処理装置に搭載されたプロセッサにより実行可能なコンピュータプログラムであって、
実行されることにより、前記処理装置は、
対象者の動脈血酸素分圧と動脈血酸素飽和度の実測値に対応する第一データ、ならびに当該対象者の動脈血二酸化炭素分圧、動脈血のpH、体温、および血液中の2,3-DPG濃度の少なくとも一つの値に対応する第二データの少なくとも一方を受け付け、
前記第一データと前記第二データの少なくとも一方に基づいて前記対象者の動脈血酸素飽和度を当該対象者の動脈血酸素分圧の推定値に変換する規則を決定し、
前記対象者の経皮的動脈血酸素飽和度に対応する第三データを受け付け、
前記第三データと前記規則に基づいて前記推定値を算出する。
【0007】
上記の各態様例に係る構成によれば、時間連続的かつ非侵襲的に取得可能な経皮的動脈血酸素飽和度の実測値を用いて対象者の動脈血酸素分圧の値が推定されるので、血液採取時の侵襲に伴う負担を強いることなく、対象者の動脈血酸素分圧の推定値の時間連続的なモニタリングが実現されうる。加えて、経皮的動脈血酸素飽和度の実測値を動脈血酸素分圧の推定値に変換するための規則は、酸素解離曲線の偏移に影響を及ぼしうる対象者の生体パラメータの値に基づいて、必要最低限数(ゼロ回を含む)の血液ガス分析を通じて決定される。よって、対象者に与えうる負担をさらに軽減しつつ、対象者の生体的状態が反映された動脈血酸素分圧の推定値を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る監視システムの機能構成を例示している。
図2】酸素解離曲線を例示している。
図3】酸素解離曲線を偏移させる要因を例示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付の図面を参照しつつ、実施形態の例を以下詳細に説明する。
【0010】
図1は、一実施形態に係る監視システム10の機能構成を例示している。監視システム10は、対象者20の動脈血酸素分圧(PaO2)を監視するための構成を備えている。PaO2は、動脈血中に含まれる酸素の分圧を示す値であり、呼吸機能としての肺における血液の酸素化状態を示す指標として用いられる。
【0011】
図2は、PaO2と観血的動脈血酸素飽和度(SaO2)の関係を例示している。この特性曲線は、酸素解離曲線として知られている。SaO2は、動脈血中に含まれるヘモグロビンのうち酸素と結合しているものの比率を示す値である。SaO2は、百分率を用いて表されうる。本例では0%に対応する0から100%に対応する1までの値をとるように示されている。
【0012】
酸素解離曲線を用いることにより、SaO2の値を取得できればPaO2の値を推定できる。しかしながら、SaO2は観血的に得られる値であるので、取得されるPaO2の値は時間離散的にならざるを得ない。加えて、SaO2は侵襲的に得られる値であるので、複数回にわたるPaO2の値の取得は対象者にとって負担である。
【0013】
さらに、図2に破線で示されるように、様々な生体パラメータの変化に応じて酸素解離曲線の全体が左方または右方に偏移する現象が知られている。図3は、生体パラメータの変化が酸素解離曲線の偏移に与える影響を例示している。
【0014】
酸素解離曲線を偏移させる生体パラメータの例としては、動脈血中の酸素とヘモグロビンの親和性、動脈血中の二酸化炭素の分圧(PaCO2)、動脈血のpH、体温(血液温)、血液中の2, 3-DPG(2, 3-Diphosphoglycerate)濃度などが挙げられる。なお、血液温は、体表温や直腸温のように他の身体部位で測定された体温に基づいて推定されてもよい。
【0015】
本出願の発明者たちは、SaO2とSpO2が大きく乖離していない事実に鑑み、対象者20の生体パラメータを考慮して較正された酸素解離曲線をひとたび決定すれば、以降は当該較正された酸素解離曲線を用いることにより、非侵襲的かつ時間連続的に得られるSpO2の測定値からPaCO2を精度よくかつ時間連続的に算出できるとの着想を得た。較正された酸素解離曲線は、対象者20の動脈血酸素飽和度をPaO2の推定値に変換する規則の一例である。
【0016】
酸素解離曲線を再現するモデルとして、次式(Hillの式)が知られている。

SaO2 = (PaO2 / P50)n / [ 1 + (PaO2 / P50)n ] …(1)

図2に例示されるように、P50は、50%のSaO2を与えるPaO2の値を表している。標準的なP50の値としては、26.8が知られている。酸素解離曲線が左方へ偏移すればP50は減少し、酸素解離曲線が右方へ偏移すればP50は増加する。すなわち、定数としてのP50を特定できれば、対象者20の状態を反映する較正された酸素解離曲線を決定できる。
【0017】
図1に例示されるように、監視システム10は、処理装置11を含んでいる。処理装置11を用いて較正された酸素解離曲線を決定する手法の例について説明する。
【0018】
処理装置11は、入力インタフェース111を備えている。入力インタフェース111は、対象者20のPaO2とSaO2の実測値に対応する第一データD1を受け付けるハードウェアインタフェースとして構成されている。PaO2とSaO2の実測値は、対象者20から採取された動脈血を不図示の血液ガス分析装置による分析に供することによって取得される。第一データD1は、血液ガス分析装置から送信されてもよいし、不図示のユーザインタフェースを通じてユーザにより手入力されてもよい。
【0019】
本明細書で用いられる「実測値に対応するデータ」という表現は、当該実測値そのものを当該データが示している場合と、当該実測値に所定の変換を適用することにより得られた値や当該実測値の推定値などを当該データが示している場合の双方を含む意味である。
【0020】
第一データD1は、入力元の仕様に応じて、アナログデータの形態であってもよいし、デジタルデータの形態であってもよい。第一データD1がアナログデータの形態である場合、入力インタフェース111は、A/Dコンバータを含む適宜の変換回路を備える。この説明は、後述する入力インタフェース111が受け付け可能な他のデータについても同様に適用される。
【0021】
処理装置11は、プロセッサ112を備えている。プロセッサ112は、入力インタフェース111により受け付けられた第一データD1に対応するPaO2とSaO2の実測値を式(1)に代入してP50を特定する演算を行なうように構成されている。この演算は、図3に例示される対象者20の動脈血における「酸素とヘモグロビンの親和性」に鑑みた酸素解離曲線の較正に対応している。
【0022】
図1に例示されるように、処理装置11は、ストレージ113を備えている。プロセッサ112は、上記の演算により較正された酸素解離曲線に対応するデータを、ストレージ113に格納するように構成されている。ストレージ113は、半導体メモリ、ハードディスク装置、磁気テープ装置などにより実現されうる。
【0023】
なお、第一データD1として入力される上記のSaO2の実測値は、SpO2の実測値で置き換えられうる。しかしながら、一度の動脈血の採取によりPaO2とともに取得され、かつより直接的に動脈血の酸素飽和度を表しているので、SaO2の実測値が取得されることが好ましい。
【0024】
処理装置11の入力インタフェース111は、対象者20のPaCO2、動脈血のpH、体温、および血液中の2, 3-DPG濃度の少なくとも一つの実測値に対応する第二データD2も受け付け可能なハードウェアインタフェースとして構成されている。第二データD2は、第一データD1に加えて受け付けられてもよいし、第一データD1に代えて受け付けられてもよい。
【0025】
PaCO2とpHの実測値は、対象者20から採取された動脈血を不図示の血液ガス分析装置による分析に供することによって取得される。この場合、第二データD2は、血液ガス分析装置から送信されてもよいし、不図示のユーザインタフェースを通じてユーザにより手入力されてもよい。
【0026】
体温は、対象者20に装着された不図示の温度センサを通じて取得されうる。第二データD2は、当該温度センサから送信されてもよいし、不図示のユーザインタフェースを通じてユーザにより手入力されてもよい。なお、体温は、必ずしも実測値である必要はない。血液の標準温度Tsの値として知られている37℃が、体温の値として使用されてもよい。
【0027】
2, 3-DPG濃度は、対象者から採取された血液を例えば紫外吸光測定法を用いる不図示の測定キットによる測定に供することによって取得される。この場合、第二データD2は、血液ガス分析装置から送信されてもよいし、不図示のユーザインタフェースを通じてユーザにより手入力されてもよい。なお、2, 3-DPG濃度は、必ずしも実測値である必要はない。2, 3-DPG濃度の標準値Dsとして知られている4.65×10-3モルが、2, 3-DPG濃度の値として使用されてもよい。
【0028】
第二データD2に基づく式(1)におけるP50の特定は、次式を用いてなされうる。

P50 = [ P50s ( P50c / P50s ) ( P50p / P50s ) ] (P50t / P50s ) ( P50d / P50s ) …(2)
P50c = P50s + 1.273 x 10-1 ( Pc - Pcs ) + 1.083 x 10-4 ( Pc - Pcs )2 …(3)
P50p = P50s - 25.535 ( ph - phs ) + 10.646 ( ph - phs )2 - 1.764 ( ph - phs )3 …(4)
P50t = P50s + 1.435 ( T - Ts ) + 4.163 x 10-2 ( T - Ts )2 + 6.86 x 10-4 ( T - Ts )3 …(5)
P50d = P50s + 795.63 ( D - Ds ) - 19660.89 ( D - Ds )2 …(6)

ここで、
P50s:P50の標準値(26.8)
Pc:PaCO2の実測値
Pcs:PaCO2の標準値(40 mmHg)
ph:pHの実測値
phs:pHの標準値(7.24)
T:体温の実測値
Ts:血液温度の標準値(37℃)
D:2, 3-DPG濃度の実測値
Ds:2, 3-DPG濃度の標準値(4.65×10-3モル)
である。
【0029】
なお、上記の各式における係数の値、および幾つかの生体パラメータについて示されている標準値の具体的な値は、例示に過ぎない。参照しない生体パラメータについては、各式の実測値として当該生体パラメータの標準値が代入される。
【0030】
上記のようにしてP50が特定されることにより、各種の生体パラメータに鑑みた酸素解離曲線の較正がなされる。プロセッサ112は、較正された酸素解離曲線に対応するデータを、ストレージ113に格納する。
【0031】
第一データD1と第二データD2の双方が入力インタフェース111により受け付けられる場合、酸素解離曲線の較正に用いられるP50の値は、次式により算出されうる。

P50 = k1 P50d1 + k2 P50d2 …(7)
k1 + k2 = 1 …(8)

ここで
P50d1:第一データD1を用いて特定されたP50の値
P50d2:第二データD2を用いて特定されたP50の値
である。k1とk2は、最終的に特定されるP50への各項の寄与度を表す係数であり、ユーザにより適宜に定められうる。k1とk2は、正の実数である。
【0032】
監視システム10は、パルスオキシメトリプローブ12を含んでいる。パルスオキシメトリプローブ12は、対象者20の身体に装着される。パルスオキシメトリプローブ12は、対象者20のSpO2を測定するための周知の構成を備えている。
【0033】
具体的には、パルスオキシメトリプローブ12は、酸素化ヘモグロビンの吸光特性が相違する複数の波長の光を出射する複数の光源を備えている。例えば、赤色域に中心波長を有する第一の光と赤外域に中心波長を有する第二の光とが、対象者20の動脈を含む生体組織に照射される。パルスオキシメトリプローブ12は、受光素子を備えている。受光素子は、生体組織を通過した第一の光と第二の光の各々の光量を検出し、当該光量に対応する信号を出力するように構成されている。
【0034】
光源から出射された第一の光の光量と受光素子により検出された第一の光量の差分から動脈血による第一の光の減光度A1が特定される。同様に、光源から出射された第二の光の光量と受光素子により検出された第二の光量の差分から動脈血による第一の光の減光度A2が特定される。動脈血の脈動に伴う第一の光の減光度変化ΔA1と第二の光の減光度変化ΔA2の比をΦとした場合、SpO2は、Φの関数として次式で与えられうる。

SpO2 = f (Φ) …(9)
【0035】
処理装置11の入力インタフェース111は、対象者20のSpO2の実測値に対応する第三データD3を受け付け可能なハードウェアインタフェースとして構成されている。パルスオキシメトリプローブ12から出力される信号は、不図示のパルスオキシメータによるSpO2の算出処理に供される。第三データD3は、当該パルスオキシメータから送信されてもよいし、不図示のユーザインタフェースを通じてユーザにより手入力されてもよい。
【0036】
プロセッサ112は、ストレージ113に格納されている較正された酸素解離曲線に対応するデータを読み出し、式(1)におけるSaO2の値に代えて第三データD3に対応するSpO2の実測値を代入する。これにより、較正された酸素解離曲線に基づくPaO2の推定値が算出される。
【0037】
処理装置11は、出力インタフェース114を備えている。プロセッサ112は、PaO2の推定値に対応するデータE1を、出力インタフェース114から出力するように構成されている。
【0038】
監視システム10は、出力装置13を含んでいる。出力装置13は、PaO2の推定値をユーザに通知可能な状態にするように構成されている。出力装置13は、表示装置、印刷装置、データ送信装置などにより実現されうる。処理装置11は、出力装置13とは独立した装置であってもよいし、出力装置13の一部であってもよい。
【0039】
出力インタフェース114は、ハードウェアインタフェースとして構成されている。データE1は、出力装置13の仕様に応じて、アナログデータの形態であってもよいし、デジタルデータの形態であってもよい。データE1がアナログデータの形態である場合、出力インタフェース114は、D/Aコンバータを含む適宜の変換回路を備える。この説明は、後述する出力インタフェース114が出力可能な他のデータについても同様に適用される。
【0040】
これまで説明した本実施形態例に係る構成によれば、時間連続的かつ非侵襲的に取得可能なSpO2の実測値を用いて対象者20のPaO2の値が推定されるので、血液採取時の侵襲に伴う負担を強いることなく、対象者20のPaO2の推定値の時間連続的なモニタリングが実現されうる。加えて、SpO2の実測値をPaO2の推定値に変換するための規則は、酸素解離曲線の偏移に影響を及ぼしうる対象者20の生体パラメータの値に基づいて、必要最低限数(ゼロ回を含む)の血液ガス分析を通じて決定される。よって、対象者20に与えうる負担をさらに軽減しつつ、対象者20の生体的状態が反映されたPaO2の推定値を得ることができる。
【0041】
処理装置11の入力インタフェース111は、対象者20の吸入酸素濃度(FiO2)の値に対応する第四データD4を受け付け可能なハードウェアインタフェースとして構成されうる。FiO2の値は、実測値、設定値、または推定値でありうる。第四データD4は、対象者20に接続された不図示の酸素吸入装置から送信されてもよいし、不図示のユーザインタフェースを通じてユーザにより手入力されてもよい。FiO2は、吸入酸素情報の一例である。
【0042】
この場合、プロセッサ112は、上記のようにして取得されたPaO2の推定値と第四データD4に対応するFiO2の実測値とに基づいて、P/F比(PaO2/FiO2)を取得するように構成される。P/F比は、対象者20の酸素化能を示す指標の一例である。
【0043】
プロセッサ112は、取得されたP/F比に対応するデータE2を、出力インタフェース114から出力装置13へ出力するように構成される。出力装置13は、P/F比の推定値をユーザに通知可能な状態にするように構成される。
【0044】
従来は血液ガス分析を通じて取得されるPaO2の値を用いていたので、算出されるP/F比の値は時間離散的にならざるを得なかった。しかしながら、上記のような構成によれば、時間連続的かつ非侵襲的に取得可能なSpO2の実測値を用いて対象者20のP/F比の値が推定されるので、血液採取時の侵襲に伴う負担を強いることなく、対象者20の酸素化能の時間連続的なモニタリングが実現されうる。
【0045】
PaO2に基づくのであれば、対象者20の酸素化能を示す指標は、P/F比に限られない。当該指標の別例としては、PAO2(肺胞気式から算出される肺胞気酸素分圧)とPaO2の差に対応するA-aDO2、当該A-aDO2のPaO2に対する比(A-aDO2/PaO2)、PaO2のPAO2に対する比(PaO2/PAO2)、酸素化指数(OI:Oxygenation Index)などが挙げられる。OIは、(FiO2/PaO2)の値に平均気道内圧(MAP:Mean Airway Pressure)の値を乗じることにより得られる。なお、PAO2は、吸入酸素情報の一例になりうる。
【0046】
SpO2は整数値として提示されることが一般的であるので、SpO2の実測値に基づいて推定されるPaO2およびP/F比の値もまた離散的にならざるを得ない。よって、処理装置11のプロセッサ112は、SpO2の実測値の分解能を疑似的に高めるための処理を行ないうる。
【0047】
一例として、プロセッサ112は、複数の時点において入力インタフェース111により受け付けられた第三データD3に対して平滑化処理を行なうように構成されうる。例えば、時間的に隣接して取得された所定の数の第三データD3に対応する複数のSpO2の実測値に対して移動平均処理が適用されることにより、実測値の分解能を疑似的に高めることができる。結果として、PaO2およびP/F比の推定値の分解能もまた高められうる。
【0048】
別例として、プロセッサ112は、複数の時点において入力インタフェース111により受け付けられた第三データD3に対して近似曲線を導出し、当該近似曲線に基づいて外挿処理または内挿処理を行なうように構成されうる。換言すると、プロセッサ112は、導出された近似曲線に基づいて上記の複数の時点とは異なる所望の時点におけるSpO2の値を見積もることにより、実測値の分解能を疑似的に高めることができる。結果として、PaO2およびP/F比の推定値の分解能もまた高められうる。
【0049】
別例として、入力インタフェース111は、第三データD3として式(9)におけるΦの実測値を取得するように構成されうる。この場合、プロセッサ112は、次式に基づいてPaO2の推定値を算出するように構成される。gは、fとは異なる関数である。

PaO2 = g (Φ) …(10)

SpO2に対応するΦの実測値は、関数fにより整数化される前の連続的な値を有しているので、上式により得られるPaO2およびP/F比の推定値の分解能もまた高められうる。
【0050】
前述の通り、SpO2は整数値として提示されることが一般的であるので、実際のSpO2の値は一定の範囲内に分布しうる。例えば実測値として提示されたSpO2が95%である場合、実際のSpO2の値は、94.5%から95.4%の範囲内に分布する。したがって、特定のSpO2の実測値から推定されるPaO2の値もまた一定の範囲内に分布しうる。
【0051】
当該事実に鑑み、処理装置11のプロセッサ112は、第三データD3に対応するSpO2の実測値に基づいて、PaO2の推定値がとりうる範囲を特定するように構成されうる。この場合、プロセッサ112は、特定されたPaO2の推定値がとりうる範囲を示すデータE3を、出力インタフェース114から出力装置13へ出力するように構成されうる。
【0052】
このような構成によれば、対象者20のPaO2の推定値がとりうる範囲を、出力装置13を通じてユーザに通知可能な状態にできる。
【0053】
第一データD1と第二データD2の少なくとも一方は、定期的あるいは不定期的な測定を通じて更新されうる。処理装置11のプロセッサ112は、更新された第一データD1と第二データD2の少なくとも一方が入力インタフェース111により受け付けられると、ストレージ113に格納されている較正された酸素解離曲線に対応するデータを補正するように構成されうる。
【0054】
第一データD1が更新された場合、プロセッサ112は、式(1)を参照して説明した手法でP50を再特定し、再特定されたP50の値をもって酸素解離曲線を補正する。補正された酸素解離曲線に対応するデータは、ストレージ113に格納される。以降に入力インタフェース111により受け付けられる第三データD3に対応するSpO2の実測値に基づくPaO2の推定は、補正された酸素解離曲線に対応する規則に基づいて行なわれる。
【0055】
第二データD2が更新された場合、プロセッサ112は、式(2)から(6)を参照して説明した手法でP50を再特定し、再特定されたP50の値をもって酸素解離曲線を補正する。補正された酸素解離曲線に対応するデータは、ストレージ113に格納される。以降に入力インタフェース111により受け付けられる第三データD3に対応するSpO2の実測値に基づくPaO2の推定は、補正された酸素解離曲線に対応する規則に基づいて行なわれる。
【0056】
このような構成によれば、対象者20の最新の生体状態をPaO2の推定値に反映させることができる。
【0057】
第一データD1は、PaO2とSaO2の各実測値が取得された時点を示す情報を含みうる。同様に、第二データD2は、PaCO2、動脈血のpH、体温、および血液中の2, 3-DPG濃度の各実測値が取得された時点を示す情報を含みうる。処理装置11のプロセッサ112は、当該情報を参照し、各実測値が取得されてからの経過時間が閾値を上回っているかを判断するように構成されうる。閾値は、第一データD1と第二データD2の信頼性が維持されていると判断されうる期間に基づいて適宜に定められる。
【0058】
この場合、プロセッサ112は、経過時間が閾値を上回っていると判断された場合、以降に取得されたSpO2に対応する第三データD3に基づくPaO2の推定を行なわないように構成される。
【0059】
第一データD1と第二データD2は時間離散的に取得される生体パラメータの値に基づいているので、対象者20の生体状態を正確に反映しているかについての信頼性が時間の経過とともに低下する。したがって、ストレージ113に格納されている較正された酸素解離曲線に対応するデータの信頼性もまた低下する。上記のような構成によれば、信頼性の低下したデータに基づいて対象者20のPaO2が推定されないようにできる。
【0060】
プロセッサ112は、経過時間が閾値を上回っている事実を出力装置13に通知させる通知制御データNを、出力インタフェース114から出力するように構成されうる。通知は、視覚的通知、聴覚的通知、および触覚的通知の少なくとも一つを通じてなされうる。この場合における出力装置13は、通知装置の一例である。通知装置は、出力装置13とは独立した装置であってもよい。
【0061】
このような構成によれば、対象者20のPaO2の時間連続的なモニタリングを継続するために第一データD1と第二データD2の少なくとも一方の更新をユーザに促すことができる。PaO2の推定値を算出の要否をユーザが選択できるようにしてもよい。
【0062】
図1に例示されるように、処理装置11の入力インタフェース111は、対象者20のバイタルサインの変化に対応する第五データD5を受け付け可能なハードウェアインタフェースとして構成されうる。
【0063】
本明細書で用いられる「バイタルサイン」という語は、脈拍、呼吸、体温、血圧、および意識レベルの少なくとも一つの数値、または当該数値の経時変化を意味する。数値の経時変化は、波形やグラフとして可視化されうる。本明細書で用いられる「バイタルサインの変化」という表現は、バイタルサインの経時変化のうち医療的に有意なものを指す。
【0064】
第五データD5は、対象者20のバイタルサインを取得する不図示装置から送信されてもよいし、不図示のユーザインタフェースを通じてユーザにより手入力されてもよい。
【0065】
この場合、プロセッサ112は、入力インタフェース111により受け付けられた第五データD5を、少なくとも第三データD3に基づいて算出されたPaO2の推定値と時間的に関連付けるように構成される。なお、バイタルサインは、第一データD1、第二データD2、第三データD3、第四データD4、およびP/F比の推定値の少なくとも一つと時間的に関連付けられうる。
【0066】
このような構成によれば、時間連続的に取得される対象者20のPaO2の推定値から対象者20のバイタルサインに変化が生じた時点におけるPaO2の推定値を特定し、バイタルサインの変化との関連性を分析する作業が容易化される。
【0067】
これまで説明した各種の機能を有する処理装置11のプロセッサ112は、汎用メモリと協働して動作する汎用マイクロプロセッサにより実現されうる。汎用マイクロプロセッサとしては、CPU、MPU、GPUが例示されうる。汎用メモリとしては、ROMやRAMが例示されうる。この場合、ROMには、上述した処理を実行するコンピュータプログラムが記憶されうる。ROMは、コンピュータプログラムが記憶された非一時的なコンピュータ可読媒体の一例である。汎用マイクロプロセッサは、ROM上に記憶されたプログラムの少なくとも一部を指定してRAM上に展開し、RAMと協働して上述した処理を実行する。当該コンピュータプログラムは、汎用メモリにプリインストールされてもよいし、通信ネットワークを介して外部サーバ装置からダウンロードされてから汎用メモリにインストールされてもよい。この場合、外部サーバ装置は、コンピュータプログラムが記憶された非一時的なコンピュータ可読媒体の一例である。
【0068】
プロセッサ112は、マイクロコントローラ、ASIC、FPGAなどの上記のコンピュータプログラムを実行可能な専用集積回路によって実現されてもよい。この場合、当該専用集積回路に含まれる記憶素子に上記のコンピュータプログラムがプリインストールされる。当該記憶素子は、コンピュータプログラムが記憶されたコンピュータ可読媒体の一例である。プロセッサ112は、汎用マイクロプロセッサと専用集積回路の組合せによっても実現されうる。
【0069】
これまでの説明において参照した構成の各々は、本開示の理解を容易にするための例示にすぎない。各構成例は、本開示の趣旨の範囲内において適宜の変更や他の構成例との組み合わせがなされうる。
【0070】
上記の実施形態例においては、処理装置11は、対象者20のSpO2を測定するパルスオキシメータとは独立した装置として提供されている。しかしながら、処理装置11は、パルスオキシメータに内蔵されてもよい。
【0071】
以下に列挙される構成もまた、本開示の一部を構成する。

項目1:
対象者の動脈血酸素分圧と動脈血酸素飽和度の実測値に対応する第一データ、ならびに当該対象者の動脈血二酸化炭素分圧、動脈血のpH、体温、および血液中の2,3-DPG濃度の少なくとも一つの値に対応する第二データの少なくとも一方を受け付ける入力インタフェースと、
前記第一データと前記第二データの少なくとも一方に基づいて前記対象者の動脈血酸素飽和度を当該対象者の動脈血酸素分圧の推定値に変換する規則を決定するプロセッサと、
を備えており、
前記入力インタフェースが前記対象者の経皮的動脈血酸素飽和度に対応する第三データを受け付けると、前記プロセッサは、前記第三データと前記規則に基づいて前記推定値を算出する、
処理装置。

項目2:
前記入力インタフェースが前記対象者の吸入酸素情報に対応する第四データを受け付けると、前記プロセッサは、前記推定値と前記第四データに基づいて前記対象者の酸素化能に対応する指標を取得する、
項目1に記載の処理装置。

項目3:
前記入力インタフェースは、複数の時点について前記第三データを受け付け、
前記プロセッサは、前記複数の時点について受け付けられた前記第三データに対して平滑化処理を施すことにより、前記経皮的動脈血酸素飽和度の分解能を高める、
項目1または2に記載の処理装置。

項目4:
前記入力インタフェースは、複数の時点について前記第三データを受け付け、
前記プロセッサは、前記複数の時点について受け付けられた前記第三データの近似曲線を導出し、当該近似曲線に基づいて前記複数の時点とは異なる時点の経皮的動脈血酸素飽和度の値を見積もることにより、前記経皮的動脈血酸素飽和度の分解能を高める、
項目1または2に記載の処理装置。

項目5:
波長が相違する第一の光と第二の光が前記対象者の生体組織に照射され、
前記第三データは、前記生体組織をそれぞれ通過した前記第一の光の減光度変化と前記第二の光の減光度変化の比の実測値に対応している、
項目1から8のいずれか一項に記載の処理装置。

項目6:
前記プロセッサは、前記第三データに対応する前記経皮的動脈血酸素飽和度に基づいて、前記推定値がとりうる範囲を特定する、
項目1から5のいずれか一項に記載の処理装置。

項目7:
前記第一データと前記第二データの少なくとも一方が更新されると、前記プロセッサは、更新された当該第一データと当該第二データの少なくとも一方に基づいて前記規則を補正する、
項目1から6のいずれか一項に記載の処理装置。

項目8:
前記プロセッサは、前記実測値が取得されてからの経過時間が閾値を上回る場合、前記第三データに基づく前記推定値の算出を行なわない、
項目1から7のいずれか一項に記載の処理装置。

項目9:
前記プロセッサは、前記経過時間が前記閾値を上回っていることを通知装置に通知させる、
項目1から8のいずれか一項に記載の処理装置。

項目10:
前記入力インタフェースが前記対象者のバイタルサインの変化に対応する第五データを受け付けると、前記プロセッサは、当該第五データを少なくとも前記推定値と時間的に関連付ける、
項目1から9のいずれか一項に記載の処理装置。
【符号の説明】
【0072】
11:処理装置、111:入力インタフェース、112:プロセッサ、13:出力装置、D1:第一データ、D2:第二データ、D3:第三データ、D4:第四データ、D5:第五データ
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-07-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0071
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0071】
以下に列挙される構成もまた、本開示の一部を構成する。

項目1:
対象者の動脈血酸素分圧と動脈血酸素飽和度の実測値に対応する第一データ、ならびに
当該対象者の動脈血二酸化炭素分圧、動脈血のpH、体温、および血液中の2,3-DPG濃度
の少なくとも一つの値に対応する第二データの少なくとも一方を受け付ける入力インタフ
ェースと、
前記第一データと前記第二データの少なくとも一方に基づいて前記対象者の動脈血酸素
飽和度を当該対象者の動脈血酸素分圧の推定値に変換する規則を決定するプロセッサと、
を備えており、
前記入力インタフェースが前記対象者の経皮的動脈血酸素飽和度に対応する第三データ
を受け付けると、前記プロセッサは、前記第三データと前記規則に基づいて前記推定値を
算出する、
処理装置。

項目2:
前記入力インタフェースが前記対象者の吸入酸素情報に対応する第四データを受け付け
ると、前記プロセッサは、前記推定値と前記第四データに基づいて前記対象者の酸素化能
に対応する指標を取得する、
項目1に記載の処理装置。

項目3:
前記入力インタフェースは、複数の時点について前記第三データを受け付け、
前記プロセッサは、前記複数の時点について受け付けられた前記第三データに対して平
滑化処理を施すことにより、前記経皮的動脈血酸素飽和度の分解能を高める、
項目1または2に記載の処理装置。

項目4:
前記入力インタフェースは、複数の時点について前記第三データを受け付け、
前記プロセッサは、前記複数の時点について受け付けられた前記第三データの近似曲線
を導出し、当該近似曲線に基づいて前記複数の時点とは異なる時点の経皮的動脈血酸素飽
和度の値を見積もることにより、前記経皮的動脈血酸素飽和度の分解能を高める、
項目1または2に記載の処理装置。

項目5:
波長が相違する第一の光と第二の光が前記対象者の生体組織に照射され、
前記第三データは、前記生体組織をそれぞれ通過した前記第一の光の減光度変化と前記
第二の光の減光度変化の比の実測値に対応している、
項目1からのいずれか一項に記載の処理装置。

項目6:
前記プロセッサは、前記第三データに対応する前記経皮的動脈血酸素飽和度に基づいて
、前記推定値がとりうる範囲を特定する、
項目1から5のいずれか一項に記載の処理装置。

項目7:
前記第一データと前記第二データの少なくとも一方が更新されると、前記プロセッサは
、更新された当該第一データと当該第二データの少なくとも一方に基づいて前記規則を補
正する、
項目1から6のいずれか一項に記載の処理装置。

項目8:
前記プロセッサは、前記実測値が取得されてからの経過時間が閾値を上回る場合、前記
第三データに基づく前記推定値の算出を行なわない、
項目1から7のいずれか一項に記載の処理装置。

項目9:
前記プロセッサは、前記実測値が取得されてからの経過時間が閾値を上回る場合、前記経過時間が前記閾値を上回っていることを通知装置に通知させ
る、
項目1から8のいずれか一項に記載の処理装置。

項目10:
前記入力インタフェースが前記対象者のバイタルサインの変化に対応する第五データを
受け付けると、前記プロセッサは、当該第五データを少なくとも前記推定値と時間的に関
連付ける、
項目1から9のいずれか一項に記載の処理装置。