IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 元旦ビューティ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-横葺屋根の施工法 図1
  • 特開-横葺屋根の施工法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025023420
(43)【公開日】2025-02-17
(54)【発明の名称】横葺屋根の施工法
(51)【国際特許分類】
   E04D 3/363 20060101AFI20250207BHJP
【FI】
E04D3/363 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127524
(22)【出願日】2023-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000165505
【氏名又は名称】元旦ビューティ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】舩木 元旦
【テーマコード(参考)】
2E108
【Fターム(参考)】
2E108AA02
2E108AS03
2E108BN02
2E108DD03
2E108EE01
2E108FG11
2E108GG01
2E108GG09
2E108GG15
2E108GG20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】下地構造を限定する(特殊な保持部材を用いる)ことなく、水上側から水下側へ横葺屋根材を施工する横葺屋根の施工法を提供する。
【解決手段】屋根を水上側から水下側へ向かって施工し、断熱材は裏面側が水上側へ延在する重合受部と、表面側が水下側へ延在する重合部を有し、横葺屋根材は隣り合う断熱材の重合部分を被覆する面板部と、その水上端に表面側へ折り曲げた成形部と、その水下端に裏面側へ折り返した係合部分、及びその先端を更に折り返して水下側へ延在させた延在片を有する成形部と、を備え、水上側の断熱材の重合部に、水下側の断熱材の重合受部が差し込み重合される第1の工程と、水上側の断熱材に取り付けられた係合部分に、水下側に隣り合う横葺屋根材の成形部が差し込み係合される第2の工程と、横葺屋根材の延在片が固定具にて固定される第3の工程と、第1~3の工程を繰り返すことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱材の表面側に横葺屋根材を配設する屋根を水上側から水下側へ向かって施工する横葺屋根の施工法であって、
前記断熱材は、水上端に裏面側が水上側へ延在する重合受部を有すると共に、水下端に表面側が水下側へ延在する重合部を有し、
前記横葺屋根材は、少なくとも水上側の断熱材の重合部に水下側の断熱材の重合受部が重合した部分を被覆する面板部と、その水上端に表面側へ折り曲げた水上側成形部と、その水下端に裏面側へ折り返した係合部分、及びその先端を更に折り返して水下側へ延在させた延在片を有する水下側成形部と、を備え、
水上側の前記断熱材の前記重合部に、水下側の前記断熱材の前記重合受部が差し込み状に重合される第1の工程と、
水上側の前記断熱材に取り付けられた前記係合部分に、水下側に隣り合う前記横葺屋根材の前記水上側成形部が差し込み状に係合される第2の工程と、
前記横葺屋根材の前記延在片が固定具にて固定される第3の工程と、
前記第1~3の工程を繰り返すことを特徴とする横葺屋根の施工法。
【請求項2】
前記断熱材は、水上側が厚肉に、水下側が薄肉に形成される段差部を備え、前記第2の工程にてこの段差部に、前記横葺屋根材の前記水下側成形部が係合されることを特徴とする請求項1に記載の横葺屋根の施工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下地構造を限定する(特殊な保持部材を用いる)ことなく、水上側から水下側へ横葺屋根材を施工する横葺屋根の施工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、横葺屋根は、軒先(水下)側から棟(水上)側へ向かって屋根材を葺き上げる施工法が一般的であった。この施工法は、大掛かりな足場設置が必要となるため、本出願人は、棟(水上)側から軒先(水下)側へ向かって屋根材を葺き下ろす施工法を特許文献1として提案し、足場設置を大幅に省力化でき、工期短縮が図れることを見出した。
しかも、前記水下側から水上側へ向かって屋根材を葺き上げる施工法では、施工済みの屋根材と未施工の境目から雨水や土埃、落葉が屋根材裏面に侵入して腐食を招いたり、作業者が施工済みの屋根材を踏み付けてしまう恐れがあったが、前記特許文献1の水上側から水下側へ向かって屋根材を葺き下ろす施工法では、このような恐れも解消できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-222809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1の施工法は、特殊な保持部材、即ち「長手方向に沿って係合溝を備えた長尺な吊子部材」を必要とし、任意の下地に対して取り付けられるものではなかった。また、その保持部材の取付工程をも必要としていた。
【0005】
そこで、本発明は、下地構造を限定する(特殊な保持部材を用いる)ことなく、水上側から水下側へ横葺屋根材を施工する横葺屋根の施工法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記に鑑み提案されたもので、断熱材の表面側に横葺屋根材を配設する屋根を水上側から水下側へ向かって施工する横葺屋根の施工法であって、前記断熱材は、水上端に裏面側が水上側へ延在する重合受部を有すると共に、水下端に表面側が水下側へ延在する重合部を有し、前記横葺屋根材は、少なくとも水上側の断熱材の重合部に水下側の断熱材の重合受部が重合した部分を被覆する面板部と、その水上端に表面側へ折り曲げた水上側成形部と、その水下端に裏面側へ折り返した係合部分、及びその先端を更に折り返して水下側へ延在させた延在片を有する水下側成形部と、を備え、水上側の前記断熱材の前記重合部に、水下側の前記断熱材の前記重合受部が差し込み状に重合される第1の工程と、水上側の前記断熱材に取り付けられた前記係合部分に、水下側に隣り合う前記横葺屋根材の前記水上側成形部が差し込み状に係合される第2の工程と、前記横葺屋根材の前記延在片が固定具にて固定される第3の工程と、前記第1~3の工程を繰り返すことを特徴とする横葺屋根の施工法に関するものである。
【0007】
さらに、本発明は、前記施工法において、前記断熱材は、水上側が厚肉に、水下側が薄肉に形成される段差部を備え、前記第2の工程にてこの段差部に、前記横葺屋根材の前記水下側成形部が係合されることを特徴とする横葺屋根の施工法をも提案する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の横葺屋根の施工法は、下地構造の構造を限定することなく、且つ特殊な保持部材を用いることなく、水上側から水下側へ横葺屋根材を施工する工法であって、該施工法を形成する第1~3の各工程もそれぞれ容易に行うことができる。
そのため、 前述の水下側から水上側へ施工する工法のように施工済みの屋根材と未施工の境目から雨水や土埃、落ち葉が横葺屋根材裏面に侵入することがなく、作業者が施工済みの横葺屋根材を踏み付けてしまう恐れもなく、断熱材の裏面側は、例えばスレート等の既存屋根でも野地板でもよく、改修又は新設の両方に適応することができる。
また、この施工法には、水上端に裏面側が水上側へ延在する重合受部を有すると共に、水下端に表面側が水下側へ延在する重合部を有している断熱材を用いているので、隙間ない断熱層を形成でき、その表面側に配置される外装材を裏面側から確実に支持することができる。
さらに、水上側の重合受部に水下側の重合部が重合した部分を被覆する面板部と、その水上端に表面側へ折り曲げた水上側成形部と、係合部分及び延在片を有する水下側成形部と、を備えている横葺屋根材を用いているので、流れ方向に隣り合う断熱材の接続部分(重合部分)と横葺屋根材の接続部分(係合部分)との位置をずらすことができ、雨水が浸入し難い。
【0009】
さらに、断熱材は、水上側が厚肉に、水下側が薄肉に形成される段差部を備え、第2の工程にてこの段差部に、横葺屋根材の水下側成形部が係合される場合、第3の工程にて横葺屋根材の延在片に固定具を打ち込む作業を安定に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)本発明の実施例1の施工法において第1の工程を示す側面図、(b)第2の工程を示す側面図、(c)用いた断熱材の拡大側面図である。
図2】(a)本発明の実施例1の施工法において第3の工程を示す側面図、(b)施工後の横葺屋根を示す側面図、(c)用いた横葺屋根材の拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の横葺屋根の施工法は、断熱材の表面側に横葺屋根材を配設する屋根を水上側から水下側へ向かって施工するものであり、断熱材は、水上端に裏面側が水上側へ延在する重合受部を有すると共に、水下端に表面側が水下側へ延在する重合部を有し、横葺屋根材は、少なくとも水上側の断熱材の重合受部に水下側の断熱材の重合部が重合した部分を被覆する面板部と、その水上端に表面側へ折り曲げた水上側成形部と、その水下端に裏面側へ折り返した係合部分、及びその先端を更に折り返して水下側へ延在させた延在片を有する水下側成形部と、を備えている。
そして、水上側の断熱材の重合部に、水下側の断熱材の重合受部が差し込み状に重合される第1の工程と、水上側の断熱材に取り付けられた係合部分に、水下側に隣り合う横葺屋根材の水上側成形部が差し込み状に係合される第2の工程と、横葺屋根材の延在片が固定具にて固定される第3の工程と、前記第1~3の工程を繰り返すことを特徴とする。
【0012】
前述のように本発明の施工法に用いられる断熱材は、その水上端に裏面側が水上側へ延在する重合受部を有すると共に、その水下端に表面側が水下側へ延在する重合部を有している。
この断熱材は、非透水素材が望ましいが、必ずしも限定するものではなく、後述する図示実施例の断熱材のように低反発性の非透水性の弾性素材で形成され、その形状特性を任意に変更可能な素材が望ましい。
これらの重合受部、重合部については、後述する図示実施例のように矩形状の上半部分(表層部分)を切り欠いたような重合受部、下半部分(裏層部分)を切り欠いたような重合部とした構成でもよいし、相互に重合可能であれば、特にその具体的な構成を限定しない。
なお、この断熱材には、水上側が厚肉に、水下側が薄肉に形成される段差部が備えられることが望ましく、後述する図示実施例のように流れ方向の巾寸法の略中央付近にこの段差部が形成されることが望ましい。
【0013】
また、本発明の施工法に用いられる横葺屋根材は、少なくとも水上側の断熱材の重合受部に水下側の断熱材の重合部が重合した部分を被覆する面板部と、その水上端に表面側へ折り曲げた水上側成形部と、その水下端に裏面側へ折り返した係合部分、及びその先端を更に折り返して水下側へ延在させた延在片を有する水下側成形部と、を備えている。
この横葺屋根材は、隣り合う横葺屋根材が相互に係合される様式のどのような横葺屋根材をも用いることができ、ガルバリウム鋼板(登録商標)でもその他の各種金属板でも適用でき、裏面側の断熱材とは一部空間を隔てて配設される構成でも、後述する図示実施例のように横葺屋根材の裏面側に密着状に断熱材が配される構成でもよい。
これらの面板部、水上側成形部、水下側成形部については、後述する図示実施例では水上端を表面側へ円弧状に折り曲げた平坦状部分を水上側成形部とし、それを水下側へ延在させた平坦状部分を面板部としたが、特にそれらに限定しない。また、後述する図示実施例では、係合部分をコ字状に成形し、延在片の水下端を裏面側へ折曲したが、特にそれらに限定しない。
【0014】
本発明の施工法では、前述のように第1の工程として、水上側の断熱材の重合部に、水下側の断熱材の重合受部が差し込み状に重合される。
この工程では、水上側に取り付けられた断熱材の重合部に、水下側の断熱材を傾斜状(水上端の重合受部が低くなるように傾斜)に臨ませ、重合受部が差し込み状に重合されるように配設する。その際、差し込んだ重合受部が重合部の裏面に密着状に配置されるように、水上側の断熱材の重合部を上方へ持ち上げたり水下側の断熱材を押し込むことで深く重合させる。
【0015】
第2の工程として、水上側の断熱材に取り付けられた係合部分に、水下側に隣り合う横葺屋根材の水上側成形部が差し込み状に係合される。
この工程では、前記第1の工程にて配設した断熱材が固定されていないが、該断熱材を手や膝で押さえつつ横葺屋根材を傾斜状(水上端の水上側成形部が低くなるように傾斜)に臨ませ、既に取り付けられている水上側の横葺屋根材の水下側成形部の係合部分に、水上側成形部が差し込まれる。
なお、断熱材に、前記段差部が形成されている場合には、この段差部に、水下側成形部の係合部分が係合され、以降の第3の工程にて横葺屋根材の延在片に固定具を打ち込む作業を安定に行うことができる。
【0016】
第3の工程として、横葺屋根材の延在片が固定具にて固定される。
この工程では、ビス等の汎用の固定具を用いることができ、前記第2の工程にて傾斜状に臨ませて水上側成形部を差し込んだ横葺屋根材を断熱材に沿わせるように傾動させた後、断熱材に沿わせた延在片にこの固定具を打ち込んで固定する。
なお、この固定具は、横葺屋根材ばかりでなく裏面側の断熱材もが固定されるため、後述する図示実施例では断熱材の裏面側の野地材をも貫通して更に裏面側の躯体に先端が至っている(固定されている)。
そして、前記第1~3の工程を繰り返して横葺屋根が施工される。
【0017】
なお、前記第1の工程では、既に水上側に横葺屋根材が取り付けられた状態であり、この横葺屋根材の延在片にも前記第3の工程のように固定具が固定されているが、前記第2の工程にて水下側に隣り合う横葺屋根材を配設する際には、その水上側成形部が固定部分(固定具が打ち込まれた部分)を覆うように差し込まれている。
【0018】
また、本発明の施工法に適用される下地、即ち断熱材の裏面側の構成については、傾斜勾配を有するものであれば、特に限定するものではなく、どのような下地にも適用することができる。例えば後述する図示実施例のように躯体の上に野地材が敷設された構成でも、或いはスレート等の既存屋根でもよく、改修又は新設の両方に適応することができる。
【0019】
このように施工される本発明の横葺屋根の施工法は、下地構造の構造を限定することなく、且つ特殊な保持部材を用いることなく、水上側から水下側へ横葺屋根材を施工する施工法であって、該施工法を形成する第1~3の各工程もそれぞれ容易に行うことができる。
そのため、 前述の水下側から水上側へ向かって屋根材を葺き上げる施工法のように施工済みの屋根材と未施工の境目から雨水や土埃、落ち葉が屋根材裏面に侵入することがなく、作業者が施工済みの屋根材を踏み付けてしまう恐れもなく、断熱材の裏面側は、例えばスレート等の既存屋根でも野地板でもよく、改修又は新設の両方に適応することができる。
また、この施工法には、水上端に裏面側が水上側へ延在する重合受部、水下端に表面側が水下側へ延在する重合部を有する断熱材を用いているので、隙間ない断熱層を形成でき、その表面側に配置される外装材を裏面側から確実に支持することができる。
さらに、断熱材の重合部分(重合部と重合受部とが重合している部位)を被覆する面板部と、その水上端に表面側へ折り曲げた水上側成形部と、係合部分及び延在片を有する水下側成形部と、を備えている横葺屋根材を用いているので、流れ方向に隣り合う断熱材の接続部分(重合部分)と横葺屋根材の接続部分(係合部分)との位置をずらすことができ、雨水が浸入し難い。
【0020】
また、断熱材は、水上側が厚肉に、水下側が薄肉に形成されている段差部を形成したことで、第2の工程にてこの段差部に、横葺屋根材の水下側成形部が係合でき、第3の工程にて横葺屋根材の延在片に固定具を打ち込む作業を安定に行うことができる。
【実施例0021】
図1(a)に示す本発明の実施例1の第1の工程では、図中の右側に示す水上側の断熱材2の重合部23に、図中の左側に示す水下側の断熱材2の重合受部22が差し込み状に重合される状態を示している。
この第1の工程では、水上側に取り付けられた断熱材2の重合部23に、水下側の断熱材2を水上端の重合受部22が低くなるように傾斜状に臨ませ、重合受部22が差し込み状に重合されるように配設する。
その際、差し込んだ重合受部22が重合部23の裏面に密着状に配置されるように、水上側の断熱材2の重合部23を上方へ持ち上げたり水下側の断熱材2を押し込むことで深く重合させる。
【0022】
この実施例1に用いられる断熱材2は、図1(c)に拡大して示すようにその水上端に裏層部分が水上側へ延在する重合受部22を有すると共に、その水下端に表層部分が水下側へ延在する重合部23を有している。
この断熱材2は、低反発性の非透水性の弾性素材(発泡ポリスチレン)で形成され、前記重合受部22は、矩形状の上半部分(表層部分)を切り欠いたような形状、前記重合部23は下半部分(裏層部分)を切り欠いたような形状であってこれらは重合可能であるが、前記重合受部22には浸入水を水下側へ流すための凹状部221が形成されている。
また、この断熱材2には、前記重合部23及び重合受部22を除く胴部分21の水上側21aが厚肉に、水下側21bが薄肉に形成される段差部24が流れ方向の略中央に形成され、該段差部24には凹状部241が形成されている。
【0023】
さらに、この断熱材2の表面形状は詳述していないが、その断面形状に点線で示すような凹凸構成が形成され、凸状部が横葺屋根板1を支持し、凹状部を浸入した雨水が流下する経路が形成されている。
雨水の流水経路については、この断面に点線矢印にて概略的に示したが、重合受部22に設けた凹状部221から点線矢印を通って次段(水下側に隣り合う)の断熱材2に導かれる。
【0024】
図1(b)に示す第2の工程では、図中の右側に示す水上側の断熱材2に取り付けられた係合部分131に、水下側に隣り合う横葺屋根材1の水上側成形部12が差し込み状に係合される。
この第2の工程では、前記第1の工程にて配設した断熱材2が固定されていないが、該断熱材2を手や膝で押さえつつ横葺屋根材1を水上端の水上側成形部12が低くなるように傾斜状に臨ませ、既に取り付けられている水上側の横葺屋根材1の水下側成形部13の係合部分131に、水上側成形部12が差し込まれる。その際、水上側成形部12は、水上側の横葺屋根材1を固定する固定具1bを覆うように配される。
なお、裏面側の断熱材2には、前述のように段差部24が形成されているので、横葺屋根材1を傾動状に配するだけで、この段差部24に水下側成形部13の係合部分131が係合され、以降の第3の工程にて延在片132に固定具1bを打ち込む作業を安定に行うことができる。
【0025】
図2(a)に示す第3の工程では、横葺屋根材1の延在片132が固定具1bにて固定される。
この第3の工程では、前記第2の工程にて配設した横葺屋根材1が固定されていないので、その延在片132に固定具1bを打ち込んで固定する。
なお、この固定具1bは、図示するような汎用の足長ビスを用いることができ、横葺屋根材1ばかりでなく裏面側の断熱材2もが固定されるように断熱材2の裏面側の野地材3をも貫通して更に裏面側の躯体4に固定されている。
そして、前記第1~3の工程を繰り返して横葺屋根が施工される。
【0026】
図2(b)には、前記第1~3の工程を繰り返して施工される横葺屋根が示されている。
なお、下地構成、即ち断熱材2の裏面側の構成について簡単に説明すると、この実施例1では傾斜状に配設された躯体4の上面側に所定厚みの野地材3が敷設された構成であるが、前述のようにこの下地構成に特殊な保持部材や形状構成を必要としないので、例えばスレート等の既存屋根でも適用でき、改修又は新設の両方に適応することができる。
【0027】
このように実施例1の横葺屋根の施工法は、下地構造の構造を限定することなく、且つ特殊な保持部材を用いることなく、水上側から水下側へ横葺屋根材1を施工する工法であって、該施工法を形成する第1~3の各工程もそれぞれ容易に行うことができる。
そのため、 前述の水下側から水上側へ施工する工法のように施工済みの横葺屋根材1と未施工の境目から雨水や土埃、落ち葉が横葺屋根材1の裏面に侵入することがなく、作業者が施工済みの屋根材を踏み付けてしまう恐れもなく、断熱材2の裏面側は、例えばスレート等の既存屋根でも野地板でもよく、改修又は新設の両方に適応することができる。
また、この施工法には、水上端に裏面側が水上側へ延在する重合受部22を有すると共に、水下端に表面側が水下側へ延在する重合部23を有している断熱材2を用いているので、隙間ない断熱層を形成でき、その表面側に配置される横葺屋根材1を裏面側から確実に支持することができる。
さらに、水上側の重合受部22に水下側の重合部23が重合した部分を被覆する面板部11と、その水上端に表面側へ折り曲げた水上側成形部12と、係合部分131及び延在片132を有する水下側成形部13と、を備えている横葺屋根材1を用いているので、流れ方向に隣り合う断熱材2,2の接続部分(重合部分)と横葺屋根材1,1の接続部分(係合部分)との位置をずらすことができ、雨水が浸入し難い。
【0028】
さらに、この実施例1では、断熱材2は、水上側が厚肉に、水下側が薄肉に形成される段差部24を備え、前述の第2の工程にてこの段差部24に、横葺屋根材1の水下側成形部13が係合されるので、前述の第3の工程にて横葺屋根材1の延在片132に固定具1bを打ち込む作業を安定に行うことができる。
【符号の説明】
【0029】
1 横葺屋根材
11 面板部
12 水上側成形部
13 水下側成形部
131 係合部分
132 延在片
1b 固定具
2 断熱材
21 胴部分
22 重合受部
23 重合部
24 段差部
3 野地材
4 躯体
図1
図2