(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025023423
(43)【公開日】2025-02-17
(54)【発明の名称】移植機
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20250207BHJP
【FI】
A01C11/02 302C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127530
(22)【出願日】2023-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000100469
【氏名又は名称】みのる産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】大坪 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】竹田 圭佑
【テーマコード(参考)】
2B060
【Fターム(参考)】
2B060AA09
2B060AC01
2B060AD05
2B060AE01
2B060BA04
2B060CB09
2B060CB17
2B060CB26
2B060CC05
(57)【要約】
【課題】移植機において、苗箱からポット苗を押し出すときに、苗箱と苗受け部材との間にポット苗の葉が挟まったり、隣の受け溝に葉が入ったりすることを、抑制できる技術を提供する。
【解決手段】この移植機は、押出機構、苗受け部材51、および葉よけ部材90を備える。押出機構は、苗箱の搬送経路上の所定の位置において、苗箱からポット苗Nを押し出す。苗受け部材51は、押出機構により押し出されたポット苗Nを受け取る。葉よけ部材90は、苗箱からポット苗Nを押し出すときに、ポット苗Nの茎葉部N2に接触して、茎葉部N2を苗受け部材51から遠ざける。移植機1は、葉よけ部材90により茎葉部N2をよけた状態で、苗箱からポット苗Nを押し出す。これにより、苗箱と苗受け部材51との間にポット苗Nの葉が挟まったり、隣の受け溝に葉が入ったりすることを、抑制できる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗箱からポット苗を取り出して圃場に移植する移植機であって、
前記苗箱を所定の搬送経路に沿って搬送する苗箱搬送部と、
前記搬送経路上の押出位置において、前記苗箱から前記ポット苗を押し出す押出機構と、
前記押出機構により押し出された前記ポット苗を受け取る苗受け部材と、
前記押出位置において、前記ポット苗の茎葉部に接触して、前記茎葉部を前記苗受け部材から遠ざける葉よけ部材と、
を備え、
前記葉よけ部材により前記茎葉部を前記苗受け部材から遠ざけた状態で、前記押出機構が前記苗箱から前記ポット苗を押し出す、移植機。
【請求項2】
請求項1に記載の移植機であって、
前記苗受け部材は、前記苗箱から押し出された前記ポット苗を受け取る受け取り位置と、前記ポット苗を後段へ受け渡す受け渡し位置と、の間で往復移動し、
前記葉よけ部材は、前記苗受け部材が前記受け渡し位置から前記受け取り位置へ移動するときに、前記苗受け部材とともに移動することにより、前記茎葉部に接触する、移植機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の移植機であって、
前記葉よけ部材は、前記苗箱から離れる向きに移動しつつ前記茎葉部に接触する、移植機。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の移植機であって、
前記葉よけ部材は、前記茎葉部に接触した状態で、前記押出機構と連動して押出方向に移動する、移植機。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の移植機であって、
前記葉よけ部材を、前記茎葉部に接触する接触位置から、前記茎葉部に接触しない待機位置へ向けて付勢するばね
をさらに備える、移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、根鉢部を有するポット苗を、苗箱から取り出して圃場に移植する移植機が知られている。従来の移植機については、例えば、特許文献1に記載されている。この種の移植機は、苗箱から、ポット苗を押し出す押出機構を備えている。押出機構は、苗箱の底部に設けられた孔に、押出棒を挿入することにより、苗箱からポット苗を押し出す。押し出されたポット苗は、苗箱の前方に配置された苗受け部材51の受け溝に受け取られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、白菜などの葉菜類の苗は、成長に伴い葉が横方向に広がりやすい。このため、葉菜類のポット苗を苗箱から押し出すときに、苗受け部材51と苗箱の間に葉が挟まったり、葉が隣の受け溝に入ったりすることがある。そうすると、ポット苗の葉が引っ掛かることによって、根鉢部が崩れる場合や、苗受け部材に正常にポット苗を保持できない場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、移植機において、苗箱からポット苗を押し出すときに、苗箱と苗受け部材との間にポット苗の葉が挟まったり、隣の受け溝に葉が入ったりすることを、抑制できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、苗箱からポット苗を取り出して圃場に移植する移植機であって、前記苗箱を所定の搬送経路に沿って搬送する苗箱搬送部と、前記搬送経路上の押出位置において、前記苗箱から前記ポット苗を押し出す押出機構と、前記押出機構により押し出された前記ポット苗を受け取る苗受け部材と、前記押出位置において、前記ポット苗の茎葉部に接触して、前記茎葉部を前記苗受け部材から遠ざける葉よけ部材と、を備え、前記葉よけ部材により前記茎葉部を前記苗受け部材から遠ざけた状態で、前記押出機構が前記苗箱から前記ポット苗を押し出す。
【0007】
本願の第2発明は、第1発明の移植機であって、前記苗受け部材は、前記苗箱から押し出された前記ポット苗を受け取る受け取り位置と、前記ポット苗を後段へ受け渡す受け渡し位置と、の間で往復移動し、前記葉よけ部材は、前記苗受け部材が前記受け渡し位置から前記受け取り位置へ移動するときに、前記苗受け部材とともに移動することにより、前記茎葉部に接触する。
【0008】
本願の第3発明は、第1発明または第2発明の移植機であって、前記葉よけ部材は、前記苗箱から離れる向きに移動しつつ前記茎葉部に接触する。
【0009】
本願の第4発明は、第1発明から第3発明までのいずれか1発明の移植機であって、前記葉よけ部材は、前記茎葉部に接触した状態で、前記押出機構と連動して押出方向に移動する。
【0010】
本願の第5発明は、第1発明から第4発明までのいずれか1発明の移植機であって、前記葉よけ部材を、前記茎葉部に接触する接触位置から、前記茎葉部に接触しない待機位置へ向けて付勢するばねをさらに備える。
【発明の効果】
【0011】
本願の第1発明~第5発明によれば、ポット苗の茎葉部を苗受け部材から遠ざけた状態で、苗箱からポット苗を押し出すことができる。これにより、苗箱と苗受け部材との間にポット苗の葉が挟まったり、隣の受け溝に葉が入ったりすることを、抑制できる。その結果、苗箱から苗受け部材へのポット苗の受け渡しの成功率を高めることができる。
【0012】
特に、第2発明によれば、苗受け部材の動作を利用して、葉よけ部材を茎葉部に接触させることができる。
【0013】
特に、第3発明によれば、葉よけ部材が、茎葉部の根元から葉先へ向かう方向に移動しつつ、茎葉部に接触する。これにより、葉よけ部材による茎葉部の損傷を抑制できる。
【0014】
特に、第4発明によれば、押出機構により苗箱からポット苗を押し出すときに、茎葉部を、葉よけ部材に妨げられることなく、押出方向に移動させることができる。
【0015】
特に、第5発明によれば、ポット苗が押し出された後、葉よけ部材を接触位置から待機位置へ戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図4】苗箱搬送部、押出機構、および苗反転機構の斜視図である。
【
図5】苗箱搬送部、押出機構、および苗反転機構の側面図である。
【
図6】苗箱からポット苗が押し出されるときの様子を示した図である。
【
図7】苗箱からポット苗が押し出されるときの様子を示した図である。
【
図8】苗箱からポット苗が押し出されるときの様子を示した図である。
【
図9】苗箱からポット苗が押し出されるときの様子を示した図である。
【
図10】苗箱からポット苗が押し出されるときの様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
<1.苗箱について>
まず、本実施形態の移植機1に使用される苗箱9について説明する。
図1は、苗箱9の斜視図である。
図2は、ポット苗Nを保持した苗箱9の断面図である。この苗箱9は、複数のポット苗Nを保持する容器である。ポット苗Nは、例えば、白菜等の葉菜類の苗である。ただし、ポット苗Nは、チンゲン菜、ほうれん草、キャベツ、ブロッコリーなどの苗であってもよい。
【0019】
苗箱9は、上面視において略長方形状の外形を有する。後述する移植機1において、苗箱9は、その長手方向である搬送方向に搬送される。
図1および
図2に示すように、苗箱9は、複数の苗室91を有する。複数の苗室91は、搬送方向および搬送方向に直交する左右方向に、間隔をあけて配列されている。
【0020】
苗室91は、苗箱9の上面から下側へ向けて凹んだ凹部である。苗室91の形状は、例えば、下方へ向かうにつれて徐々に縮径する円錐台状である。各苗室91の底面には、底孔(図示省略)が設けられている。底孔は、例えばY字状の切れ込みである。ただし、底孔は、十字状の切れ込みであってもよく、あるいは、円形の貫通孔であってもよい。
【0021】
また、苗箱9は、左右の両側部に複数の搬送孔92を有する。搬送孔92は、後述する移植機1において苗箱9を搬送するための孔である。複数の搬送孔92は、搬送方向に間隔をあけて配列されている。搬送孔92の搬送方向の間隔は、苗室91の搬送方向の間隔と同一である。
【0022】
ポット苗Nは、苗箱9の各苗室91に土を入れて、播種・育苗を行うことにより得られる。
図2に示すように、ポット苗Nは、根鉢部N1と茎葉部N2とを有する。根鉢部N1は、苗室91に収容された土と、土中に延びた苗の根により構成される。茎葉部N2は、根鉢部N1から上方へ延びた茎および葉により構成される。苗箱9は、複数のポット苗Nを保持した状態で、移植機1に載置される。
【0023】
<2.移植機の構成>
図3は、移植機1の側面図である。この移植機1は、圃場Gを走行しつつ、苗箱9からポット苗Nを順次に取り出して、圃場Gへ移植する装置である。移植機1は、本体部10、苗箱載置台20、苗箱搬送部30、押出機構40、苗反転機構50、横送りベルト60、送り出し爪70、および植付け部80を備える。
【0024】
本体部10は、エンジン11と、4つの車輪12とを有する。4つの車輪12は、2つの前輪と、2つの後輪とを含む。車輪12は、エンジン11から出力される動力により回転する。これにより、本体部10が前方へ進行する。後述する苗箱搬送部30、押出機構40、苗反転機構50、横送りベルト60、送り出し爪70、および植付け部80は、エンジン11からPTO軸を介して伝達される動力、または、車輪12から伝達される動力により動作する。
【0025】
また、本体部10は、座席13および操作部14を有する。座席13および操作部14は、本体部10の後部に設けられている。作業者は、座席13に着座した状態で、操作部14を操作することにより、移植機1を操縦する。
【0026】
苗箱載置台20は、移植前または移植後の苗箱9を載置する台である。苗箱載置台20は、座席13の近傍に設けられている。移植機1の使用時には、座席13に着座した作業者が、苗箱載置台20から移植前の苗箱9を取り出して、苗箱搬送部30へセットする。また、作業者は、ポット苗Nが移植されて空になった苗箱9を、苗箱搬送部30から取り出して、苗箱載置台20へ収納する。
【0027】
図4は、苗箱搬送部30、押出機構40、および苗反転機構50の斜視図である。
図5は、苗箱搬送部30、押出機構40、および苗反転機構50の側面図である。
【0028】
苗箱搬送部30は、苗箱9を、移植機1内の所定の搬送経路に沿って搬送する機構である。
図4に示すように、苗箱搬送部30は、搬送面31と、苗箱送り機構32とを有する。搬送面31は、操作部14の前方の位置から、前方へ向かって斜め下向きに延びる。移植機1の使用時には、作業者が、複数のポット苗Nを保持した苗箱9を、搬送面31にセットする。
【0029】
苗箱送り機構32は、搬送面31にセットされた苗箱9を、所定のピッチで断続的に搬送する機構である。苗箱送り機構32は、苗箱9の搬送孔92に爪を係合させて、その爪を下向きに移動させることにより、苗箱9を搬送する。苗箱9の搬送ピッチ(一回の送り動作により苗箱9が搬送される距離)は、複数の苗室91の搬送方向の間隔と同一である。
【0030】
押出機構40は、苗箱搬送部30による苗箱9の搬送経路上の所定の位置(以下「押出位置」と称する)において、苗箱9からポット苗Nを押し出す機構である。押出機構40は、複数の押出棒41を有する。複数の押出棒41は、左右方向に一定の間隔で配列されている。また、複数の押出棒41は、左右方向に延びる連結部42によって、一体化されている。隣り合う押出棒41の間隔は、苗箱9における苗室91の左右方向の間隔と同一である。
【0031】
苗箱9は、押出位置において、略鉛直下向きに搬送される。このとき、苗箱9の姿勢は、ポット苗Nの根鉢部N1が後、茎葉部N2が前に配置された状態となっている。押出機構40は、複数の苗室91が押出位置に配置されると、複数の押出棒41を前方へ突き出す。そうすると、複数の苗室91に底孔を介して押出棒41が挿入されることにより、各苗室91からポット苗Nが前方へ押し出される。これにより、左右方向に並ぶ複数のポット苗N(一列分のポット苗N)が、苗箱9から取り出される。
【0032】
苗反転機構50は、苗箱9から取り出されたポット苗Nの姿勢を反転させて、横送りベルト60へ移載する機構である。
図4に示すように、苗反転機構50は、苗受け部材51を有する。苗受け部材51は、苗箱9の搬送周期に合わせて、押出位置の前方の受け取り位置と、受け取り位置の下方の受け渡し位置との間で往復移動する。苗箱9からポット苗Nが押し出されるときには、苗受け部材51は、受け取り位置に配置される。
【0033】
苗受け部材51は、左右方向に並ぶ複数の受け溝52を有する。苗箱9から押し出された複数のポット苗Nは、受け溝52に根鉢部N1が挿入された状態で、苗受け部材51に保持される。その後、苗受け部材51は、受け取り位置から受け渡し位置へ移動して、複数のポット苗Nを横送りベルト60へ落とす。その際、苗受け部材51が反転することにより、ポット苗Nは、根鉢部N1が前、茎葉部N2が後となる姿勢で、横送りベルト60に載置される。
【0034】
横送りベルト60は、複数のポット苗Nを、左右に搬送する機構である。本実施形態の移植機1は、左右に並ぶ一対の横送りベルト60を有する。左側の横送りベルト60は、苗受け部材51の左半分の受け溝52から落下した複数のポット苗Nを、左方向へ搬送する。右側の横送りベルト60は、苗受け部材51の右半分の受け溝52から落下した複数のポット苗Nを、右方向へ搬送する。
【0035】
各横送りベルト60は、一対のプーリの間に架け渡された環状の平ベルトである。横送りベルト60は、プーリの回転に伴って回動し、上面に載置されたポット苗Nを水平方向(右方向または左方向)に搬送する。
【0036】
送り出し爪70は、横送りベルト60により搬送されたポット苗Nを、下方へ送り出す機構である。送り出し爪70は、左右の横送りベルト60の搬送方向の終端付近に、それぞれ設けられている。送り出し爪70は、その下端部が横送りベルト60の上面よりも高い上昇位置と、その下端部が横送りベルト60の上面よりも低い下降位置との間で、ポット苗Nの搬送周期に合わせて、上下に往復移動する。
【0037】
横送りベルト60により搬送されたポット苗Nが、横送りベルト60の終端から下方へ落下する際、送り出し爪70は、上昇位置から下降位置へ移動することにより、ポット苗Nに上方から接触する。これにより、ポット苗Nが下方へ送り出されるとともに、ポット苗Nの姿勢が起立する。その後、ポット苗Nは、一対の送り出しローラの間を通って、下方に位置する植付けカップ81へ投入される。
【0038】
植付け部80は、圃場Gにポット苗Nを植え付ける機構である。植付け部80は、一対の送り出しローラの下方に、設けられている。
図3に示すように、植付け部80は、植付けカップ81を有する。植付けカップ81は、下端部が開閉可能なカップである。植付けカップ81は、送り出しローラの下方の受け取り位置と、受け取り位置よりもさらに下方の植付け位置との間で、上下に往復移動する。
【0039】
受け取り位置では、植付けカップ81の下端部が閉じている。植付けカップ81は、受け取り位置において、送り出しローラからポット苗Nを受け取る。植付け位置では、圃場Gに植付けカップ81の下端部が挿入されるととともに、当該下端部が開く。これにより、圃場Gに穴が形成されて、植付けカップ81から当該穴へポット苗Nが落下する。その結果、圃場Gにポット苗Nが植え付けられる。
【0040】
<3.葉よけ部材について>
図6~
図10は、苗箱9からポット苗Nが押し出されるときの様子を、時系列に示した図である。
図6~
図10に示すように、本実施形態の移植機1は、上記の構成に加えて、葉よけ部材90をさらに備えている。葉よけ部材90は、苗箱9から苗受け部材51へポット苗Nが押し出されるときに、ポット苗Nの茎葉部N2を上方によけて、苗受け部材51にポット苗Nの葉が引っ掛かることを抑制するための部材である。
【0041】
葉よけ部材90は、例えば、金属製の棒状部材を、屈曲させることにより形成される。葉よけ部材90は、ポット苗Nの茎葉部N2に接触可能な接触部を有する。葉よけ部材90の接触部は、最も左側のポット苗Nよりも左側の位置から、最も右側のポット苗Nよりも右側の位置まで、左右方向に直線状に延びる。
【0042】
葉よけ部材90は、本体部10のフレームに対して、回動可能に支持されている。より具体的には、葉よけ部材90は、左右方向に延びる回動軸93を中心として回動可能に支持されている。葉よけ部材90は、ポット苗Nの茎葉部N2に接触する接触位置(
図8中の実線の位置)と、茎葉部N2に接触しない待機位置(
図8中の二点鎖線の位置)との間で、回動可能となっている。
【0043】
また、
図8に示すように、移植機1は、ばね94を有する。ばね94は、例えば、回動軸93に螺合されたねじりばねである。ばね94は、葉よけ部材90を、接触位置から待機位置へ向けて付勢する。したがって、葉よけ部材90に外力が加わっていない状態では、葉よけ部材90は、待機位置に配置される。
【0044】
苗箱9に保持されたポット苗Nが押出位置まで搬送されると、上述した苗受け部材51が、受け渡し位置から受け取り位置へ上昇する。このとき、
図6のように、苗受け部材51の上面が、葉よけ部材90に接触する。そして、苗受け部材51に押されることによって、葉よけ部材90も、回動軸93を中心として上方へ回動する。その結果、葉よけ部材90が、
図6に示す待機位置から、
図7に示す接触位置へ移動する。
【0045】
図8は、ポット苗Nが押出位置に配置され、苗受け部材51が受け取り位置に配置され、葉よけ部材90が接触位置に配置されたときの様子を示している。
図8に示すように、苗受け部材51が受け取り位置に配置されると、苗受け部材51とともに上昇した葉よけ部材90が、ポット苗Nの茎葉部N2に接触する。そして、茎葉部N2が、上方へまくり上げられることにより、苗受け部材51の受け溝52から茎葉部N2が遠ざけられる。
【0046】
この状態で、
図8および
図9に示すように、押出機構40は、押出棒41を前方へ突出させて、苗箱9からポット苗Nを前方へ押し出す。このとき、仮に、苗箱9と苗受け部材51との間にポット苗Nの葉が挟まった状態のまま、あるいは、ポット苗Nの葉が隣の受け溝52に入った状態のまま、ポット苗Nが押し出されると、葉の引っ掛かりによって、ポット苗Nの根鉢部N1が崩れる場合がある。また、押し出されたポット苗Nが、苗受け部材51に正常に保持されない場合がある。
【0047】
しかしながら、本実施形態では、
図8のように、ポット苗Nの茎葉部N2は、葉よけ部材90により、苗受け部材51から上方へ遠ざけられている。したがって、苗箱9と苗受け部材51との間にポット苗Nの葉が挟まったり、隣の受け溝52に葉が入ったりすることを抑制しつつ、ポット苗Nを前方へ押し出すことができる。その結果、苗箱9から苗受け部材51へのポット苗Nの受け渡しの成功率を高めることができる。
【0048】
図8に示すように、葉よけ部材90の回動軸93は、押出位置に配置されたポット苗Nの茎葉部N2よりも下方に位置する。このため、葉よけ部材90の接触部が茎葉部N2に接触するときには、接触部が、真上ではなく斜め前方へ移動する。したがって、葉よけ部材90は、苗箱9から前方へ離れる向きに移動しつつ、茎葉部N2に接触する。すなわち、葉よけ部材90は、茎葉部N2の根元から葉先へ向かう方向に移動しつつ、茎葉部N2に接触する。これにより、葉よけ部材90が茎葉部N2に接触することによる茎葉部N2の損傷を抑制できる。
【0049】
また、葉よけ部材90の回動軸93は、押出棒41が前方へ押し出されているときは、
図5に示す接続部材95を介して、押出機構40の連結部42と接続されている。したがって、押出機構40が押出棒41を前方へ押し出すときには、押出棒41、連結部42、接続部材95、回動軸93、および葉よけ部材90が、一体として前方へ移動する。したがって、葉よけ部材90は、茎葉部N2に接触した状態で、押出棒41とともに、前方(押出方向)へ移動する。これにより、苗箱9からポット苗Nを押し出すときに、茎葉部N2を、葉よけ部材90に妨げられることなく、前方へ移動させることができる。その結果、ポット苗Nの根鉢部N1が崩れることを、より抑制できる。
【0050】
押出棒41によるポット苗Nの押し出しが完了すると、葉よけ部材90は、苗受け部材51の上面から前方へ外れた位置に配置される。そうすると、ばね94の付勢力によって、葉よけ部材90は、
図9に示す接触位置から、
図10に示す待機位置へ回動する。これにより、押し出されたポット苗Nを避けつつ、葉よけ部材90を待機位置へ戻すことができる。
【0051】
<4.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0052】
図4に示すように、苗箱搬送部30は、搬送面31の左右の端部に、苗箱9をガイドするためのガイド溝33を有する。このガイド溝33に、ポット苗Nの葉が挟まると、茎葉部N2が引っ掛かった状態のまま、押出機構40によりポット苗Nが押し出されるおそれがある。そこで、ガイド溝33と苗箱9との隙間を塞ぐガイド板を設けてもよい。このようなガイド板を設ければ、ポット苗Nの葉が、ガイド溝33と苗箱9との隙間に挟まることを抑制できる。したがって、ポット苗Nの押し出しをより良好に行うことができる。
【0053】
また、
図4に示すように、苗箱搬送部30は、搬送面31の中央に分草板34を有する。この分草板34を支持する支持部と、苗箱9との隙間に、ポット苗Nの葉が挟まると、茎葉部N2が引っ掛かった状態のまま、押出機構40によりポット苗Nが押し出されるおそれがある。そこで、この隙間を塞ぐガイド板を設けてもよい。このようなガイド板を設ければ、ポット苗Nの葉が、分草板34を支持する支持部と苗箱9との隙間に挟まることを抑制できる。したがって、ポット苗Nの押し出しをより良好に行うことができる。
【0054】
また、上記の実施形態では、葉よけ部材90が、苗受け部材51と連動して、待機位置から接触位置へ移動していた。しかしながら、葉よけ部材90は、苗受け部材51とは別に、待機位置から接触位置へ移動するものであってもよい。
【0055】
また、上記の実施形態では、左右2条分のポット苗Nを同時に移植できる、いわゆる2条植の移植機1について説明した。しかしながら、本発明の移植機は、2条植には限られない。本発明の移植機は、例えば、1条植、4条植、6条植、8条植の移植機であってもよい。
【0056】
また、上記の実施形態では、作業者が搭乗して操作する、いわゆる乗用式の移植機1について説明した。しかしながら、本発明の移植機は、乗用式には限られない。本発明の移植機は、作業者が追随して歩行しながら操作する、いわゆる歩行式の移植機であってもよい。
【0057】
また、移植機の細部の構成については、本願の各図に示された形状と、相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 移植機
9 苗箱
10 本体部
11 エンジン
12 車輪
13 座席
14 操作部
20 苗箱載置台
30 苗箱搬送部
31 搬送面
32 苗箱送り機構
33 ガイド溝
34 分草板
40 押出機構
41 押出棒
42 連結部
50 苗反転機構
51 苗受け部材
52 受け溝
60 横送りベルト
70 送り出し爪
80 植付け部
81 植付けカップ
90 葉よけ部材
91 苗室
92 搬送孔
93 回動軸
94 ばね
95 接続部材
G 圃場
N ポット苗
N1 根鉢部
N2 茎葉部