(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002343
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】砕石杭形成用アタッチメント及びそれを備える砕石杭形成装置
(51)【国際特許分類】
E02D 3/08 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
E02D3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102449
(22)【出願日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】507301486
【氏名又は名称】株式会社 尾鍋組
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾鍋 哲也
【テーマコード(参考)】
2D043
【Fターム(参考)】
2D043DA07
2D043DB02
2D043DB05
2D043DB29
(57)【要約】
【課題】開閉蓋の破損を抑制しながら、開閉蓋を比較的に小さな力で大きく開けることを可能とする。
【解決手段】アタッチメント10は、円筒部12と、砕石投入孔15を塞ぐ開閉蓋61と、を備える。開閉蓋61は、砕石投入孔15に対応した外形状を有する蓋本体62と、蓋本体62内に配置される補強布63と、蓋本体62内に軸方向に間隔を空けて配置され、軸方向と直交する幅方向に延びる複数の補強板64と、を備える。蓋本体62は、軸方向に沿って延び、円筒部12に固定される第1縁部65と、軸方向に沿って延びると共に、幅方向に間隔を空けて位置し、円筒部12に非固定の第2縁部66と、を備える。蓋本体62は、第1縁部65を支点として屈曲することで、砕石投入孔15を開放する開状態と、砕石投入孔15を閉じる閉状態とに切替えられる。補強布63は、縦糸y1と、縦糸に織り込まれた横糸y2と、を備えている。補強布は、縦糸1と横糸y2のそれぞれが補強板64と斜交するように蓋本体62に対して配置されている。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に形成した空間に砕石杭を形成する砕石杭形成装置に取付けられ、前記地中に挿入されて前記空間を形成し、前記地中から上昇しつつ前記空間に砕石杭を形成する砕石杭形成用のアタッチメントであって、
その側面に軸方向に沿って延びる砕石投入孔が形成される円筒部と、
前記砕石投入孔を塞ぐ開閉蓋と、を備えており、
前記開閉蓋は、
前記砕石投入孔に対応した外形状を有する蓋本体と、
前記蓋本体内に配置される補強布と、
前記蓋本体内に前記軸方向に間隔を空けて配置されると共に、前記軸方向と直交する幅方向に延びる複数の補強板と、を備えており、
前記蓋本体は、
前記軸方向に沿って延び、前記円筒部に固定される第1縁部と、
前記軸方向に沿って延びると共に、前記第1縁部に対して前記幅方向に間隔を空けて位置し、前記円筒部に固定されていない第2縁部と、を備えており、
前記蓋本体は、前記第1縁部を支点として屈曲することで、前記砕石投入孔を開放する開状態と、前記砕石投入孔を閉じる閉状態とに切替えられるようになっており、
前記補強布は、縦糸と、前記縦糸に織り込まれた横糸と、を備えており、
前記補強布は、前記縦糸と前記横糸のそれぞれが前記補強板と斜交するように前記蓋本体に対して配置されている、砕石杭形成用アタッチメント。
【請求項2】
前記補強布は、1又は複数の補強布片を備えており、
前記補強布片は、前記横糸の方向と交差する方向に延びる切断辺を有しており、
前記補強布片は、前記切断辺が前記軸方向と平行又は直交するように前記蓋本体に対して配置されている、請求項1に記載の砕石杭形成用アタッチメント。
【請求項3】
前記補強布は、前記軸方向に配列された複数の補強布片を備えており、
前記補強布片は、平面視すると平行四辺形に形成されており、前記横糸の方向と交差する方向に延びると共に、互いに対向する一対の切断辺を有しており、
前記複数の補強布片は、前記切断辺が前記軸方向と平行となるように前記蓋本体に対して配置されている、請求項2に記載の砕石杭形成用アタッチメント。
【請求項4】
前記補強布は、前記横糸が前記補強板となす角度が45°となるように前記蓋本体に対して配置されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の砕石杭形成用アタッチメント。
【請求項5】
前記蓋本体は、締結具によって前記円筒部に固定されており、
前記補強布は、前記締結具が配置される位置から前記補強板の前記第1縁部側の端部までの範囲に配置されている、請求項4に記載の砕石杭形成用アタッチメント。
【請求項6】
請求項1に記載のアタッチメントと、
正転方向と反転方向の回転駆動力を発生させて、前記アタッチメントを駆動する駆動装置と、を備える、砕石杭形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、砕石杭形成用アタッチメント及びそれを備える砕石杭形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液状化対策等の地盤改良のために、地中に砕石杭を形成する方法が用いられている。地中に砕石杭を形成する方法としては、地中に挿入されて空間を形成し、地中から上昇しつつ空間に砕石杭を形成するアタッチメントを用いることがある。この種のアタッチメントは、その側面に軸方向に沿って砕石投入孔が形成される円筒部と、円筒部内に回転可能に配置され、駆動装置からの駆動力により回転するシャフトと、を備えている。シャフトの上側端部側と駆動装置の出力軸側とは、中空状のジョイントロッドによって連結されている。したがって、駆動装置を駆動すると、その回転力がジョイントロッドを介してシャフト側に伝達され、シャフトが回転する。そして、シャフトが正転方向に回転することによってアタッチメントを地中に挿入しながら地中に空間を形成する。アタッチメントが地中に挿入されると、円筒部の内部空間には砕石が投入され、シャフトが反転方向に回転することによってアタッチメントを引き抜きながら砕石杭を形成する。例えば、特許文献1には、砕石杭形成用のアタッチメントの一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のアタッチメントは、円筒部の砕石投入孔を塞ぐための開閉蓋を備えている。開閉蓋は、砕石投入孔に対応した外形状を有する蓋本体と、蓋本体内にて全体的に配置される補強布と、蓋本体内にアタッチメントの軸方向に間隔を空けて配置されると共に、軸方向と直交する幅方向に延びる複数の補強板と、を備えている。そして、砕石杭を形成する際には、開閉蓋は、地表から少し上方の箇所を開けて、その開けた箇所に砕石投入装置のシュート部の先端を差し込み、円筒部の空間に砕石を投入する必要がある。
【0005】
すなわち、開閉蓋の地中に挿し込まれている部分は閉じたままであるため、地中に挿し込まれた部分に対してシュート部差込箇所を外側に大きく変形させなければならない。詳細には、地中に挿し込まれた部分に対して地表から少し上方の箇所を捻じって開閉蓋を開ける必要があり、開閉蓋の捻じられた部分には軸方向に伸びようとする力が作用する。しかしながら、蓋本体の内部に補強布が入れられると、蓋本体の変形が抑制され、開閉蓋の開閉がし難くなる。なお、開閉蓋を大きく開くことができないと、砕石を投入するための幅が確保し難くなる。また、開閉蓋を大きく開くために開閉蓋に大きな力を作用させると、開閉蓋からアタッチメントに大きな力が作用し、その結果、アタッチメントが軸線回りに回転し、砕石杭形成中に砕石投入孔の位置(開閉蓋を設けた位置)が変化するという問題も生じる。
【0006】
本明細書は、開閉蓋の破損を抑制しながら、開閉蓋を比較的に小さな力で大きく開けることを可能とする技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示するアタッチメントは、地中に形成した空間に砕石杭を形成する砕石杭形成装置に取付けられ、地中に挿入されて空間を形成し、地中から上昇しつつ空間に砕石杭を形成する砕石杭形成用のアタッチメントである。このアタッチメントは、その側面に軸方向に沿って延びる砕石投入孔が形成される円筒部と、砕石投入孔を塞ぐ開閉蓋と、を備える。開閉蓋は、砕石投入孔に対応した外形状を有する蓋本体と、蓋本体内に配置される補強布と、蓋本体内に軸方向に間隔を空けて配置されると共に、軸方向と直交する幅方向に延びる複数の補強板と、を備える。蓋本体は、軸方向に沿って延び、円筒部に固定される第1縁部と、軸方向に沿って延びると共に、第1縁部に対して幅方向に間隔を空けて位置し、円筒部に固定されていない第2縁部と、を備える。蓋本体は、第1縁部を支点として屈曲することで、砕石投入孔を開放する開状態と、砕石投入孔を閉じる閉状態とに切替えられるようになっている。補強布は、縦糸と、縦糸に織り込まれた横糸と、を備えており、縦糸と横糸のそれぞれが補強板と斜交するように蓋本体に対して配置されている。
【0008】
上記のアタッチメントによると、補強布の縦糸と横糸のそれぞれが補強板と斜交するように、蓋本体に対して補強布が配置されている。補強布は横糸と斜交する方向に伸縮し易いため、開閉蓋が軸方向に変形し易くなる。このため、開閉蓋を開いてシュート部を差込むときに、従来と比較して開閉蓋を大きく開くことができる。また、開閉蓋のうち破損し易い部分は補強布で補強することができ、開閉蓋の破損を抑制することができる。これらによって、開閉蓋の破損を抑制しながら、開閉蓋を比較的に小さな力で大きく開けることができる。
【0009】
また、本明細書は、上記のアタッチメントを備えた砕石杭形成装置を開示する。すなわち、本明細書に開示する砕石杭形成装置は、上記のアタッチメントと、正転方向と反転方向の回転駆動力を発生させて、アタッチメントを駆動する駆動装置と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本明細書に開示する砕石杭形成装置100の概略構成を示す図である。
【
図2】アタッチメントのみを別の角度から見た図である。
【
図3】
図1のA-A線における断面図(砕石投入孔にホッパーの先端が挿入されていない閉状態(地中を掘削するときの状態))である。
【
図4】
図1のA-A線における断面図(砕石投入孔にホッパーの先端が挿入された開状態(地中からアタッチメントを引き抜くときの状態))である。
【
図5】砕石杭形成装置100に係る開閉蓋の部分破断正面図である。
【
図6】砕石杭形成装置100に係る開閉蓋の概略断面図である。
【
図7】砕石杭形成装置100に係る開閉蓋の概略部分正面図である。
【
図8】変形例1に係る開閉蓋の概略部分正面図である。
【
図10】変形例3に係る開閉蓋の概略部分正面図である。
【
図11】補強布の配置方法を説明するための図であって、開閉蓋の一部を破断した概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(特徴1)本明細書が開示するアタッチメントでは、補強布は、1又は複数の補強布片を備えていてもよい。補強布片は、横糸の方向と交差する方向に延びる切断辺を有していてもよい。補強布片は、切断辺が軸方向と平行又は直交するように蓋本体に対して配置されていてもよい。
(特徴2)本明細書が開示するアタッチメントでは、補強布は、軸方向に配列された複数の補強布片を備えていてもよい。補強布片は、平面視すると平行四辺形に形成されており、横糸の方向と交差する方向に延びると共に、互いに対向する一対の切断辺を有していてもよい。複数の補強布片は、切断辺が軸方向と平行となるように蓋本体に対して配置されていてもよい。
(特徴3)本明細書が開示するアタッチメントでは、補強布は、横糸が補強板となす角度が45°となるように蓋本体に対して配置されていてもよい。
(特徴4)本明細書が開示するアタッチメントでは、蓋本体は、締結具によって円筒部に固定されており、補強布は、締結具が配置される位置から補強板の第1縁部側の端部までの範囲に配置されていてもよい。
(特徴5)本明細書が開示するアタッチメントでは、補強布は、幅方向について、補強板の第1縁部側の端部から第2端部側の端部までの間に少なくとも配置されていてもよい。
【0012】
以下、本明細書に開示する砕石杭形成装置100の一例について詳細に説明する。
図1に示すように、砕石杭形成装置100は、建設機械としての地盤改良機40と、地盤改良機40に装着されたアタッチメント10を備えている。地盤改良機40は、
図1に示されるように、地盤改良機本体構造1と、運転席としてのキャビン7と、低接地圧で不整地を移動可能な無限軌道であるクローラ6と、施工時において地盤改良機40の揺動を抑制するアウトリガー5と、を備える。
【0013】
地盤改良機40は、さらに、アタッチメント10を操作するための構成として、アタッチメント10に出力軸27を介して回転駆動力を供給する駆動装置11と、昇降ガイドレール9を有するリーダー4と、駆動装置11及びアタッチメント10を昇降ガイドレール9に沿って昇降する昇降台17と、リーダー4を支持するためのリーダー取付ベース2と、リーダー4の傾きを操作する油圧シリンダー3と、リーダー4の下端部においてリーダー4と一体的に形成されている延長脚柱8と、を備えている。
【0014】
図1及び
図2に示すように、アタッチメント10は、フィン13が設けられた円筒部12と、コアロッド22(
図3、4に図示)と、螺旋部14と、円筒部12の振れ止め用の包囲枠30と、昇降台17に取り付けられるハンガーステー18と、トップカバーケース16と、砕石投入装置32と、包囲枠30を支持する支持プレート37と、砕石投入装置32を支持する支持アーム39と、アタッチメント10による施工状態を管理する施工管理装置41と、を備えている。
【0015】
円筒部12は、その側面に軸方向に沿って形成された砕石投入孔15を備えている。砕石投入孔15は、円筒部12の軸方向に延びており、開閉蓋61によって塞がれている。なお、開閉蓋61の詳細については後述する。
【0016】
砕石投入装置32は、ホッパー部33と、ホッパー部33の下部に配置されるシュート部34を備えている。砕石投入孔15は、アタッチメント10が地中を掘削する際には、開閉蓋61によって閉じられている。これによって、砕石投入孔15から円筒部12内に土砂が侵入することを防止できる。また、円筒部12内に砕石を投入する際には、開閉蓋61が開けられる。これによって、砕石投入装置32に投入した砕石を砕石投入孔15から円筒部12内に投入することができる。また、砕石投入孔15が軸方向に沿って長孔として設けられていることによって、円筒部12が上昇しても砕石投入位置を変更することなく、砕石を円筒部12内に投入することができる。
【0017】
図1及び
図2に示すように、螺旋部14は、円筒部12の先端に位置しており、コアロッド22(
図3、4に図示)及び回転入力軸31と一体的に構成されている。回転入力軸31は、駆動装置11のモーター出力軸27に接続されている。回転入力軸31は、モーター出力軸27の回転駆動力に応じて回転し、その回転駆動力を一体的に結合されたコアロッド22を介して螺旋部14に伝達する。螺旋部14の先端には掘削翼が設けられている。掘削翼は、螺旋部14の先端に向かうにしたがって径が大きくなる螺旋状に形成されている。掘削翼の略全体は円筒部12内に配置されており、掘削翼の先端の一部のみが円筒部12の先端から突出している。
【0018】
コアロッド22(
図3に図示)は、図示しない位置で円筒部12に回転可能に結合され、円筒部12と回転軸を共通にしている。円筒部12は、その周囲に螺旋状のフィン13を有している。フィン13は、螺旋部14の螺旋(すなわち、掘削翼)と同一方向の螺旋形状を有している。すなわち、掘削する際には、円筒部12と螺旋部14は、同一方向に回転することになる。これにより、螺旋部14の掘削によって生じた掘削土砂がフィン13によって地表に運搬されることになる。
【0019】
トップカバーケース16は、円筒部12の後端部に取付けられており、円筒部12と一体化されている。コアロッド22は、トップカバーケース16の上面を貫通しており、トップカバーケース16に回転可能に支持されている。このため、コアロッド22が回転駆動されても、円筒部12はコアロッド22と共に回転することなく、フリーな状態が保たれる。
【0020】
アタッチメント10は、さらに、図示しない回転駆動力伝達部と反転防止部を備えている。回転駆動力伝達部は、ワンウェイクラッチ機構であり、掘削時の回転方向に螺旋部14を駆動する際は、自動的に螺旋部14と円筒部12を一体として回転させる。これにより、上述のように螺旋部14で掘削した土砂を円筒部12が有するフィン13で地上に排出することができる。一方、回転駆動力伝達部は、掘削時の回転方向と逆方向に螺旋部14を駆動する際は、螺旋部14を反転方向に回転させることで砕石に圧力を印加すると共に、螺旋部14から円筒部12への動力伝達を遮断して円筒部12の回転を停止させる。反転防止部は、掘削時の回転方向と逆方向に螺旋部14を駆動する際は、回転を停止された円筒部12が、掘削時の回転方向にもその逆方向にも回転しないように、円筒部12の回転を規制する。以下、円筒部12と螺旋部14が同一方向に回転する方向、すなわち、掘削時の回転方向を「正転方向」といい、掘削時の回転方向と逆方向に回転する方向、すなわち、螺旋部14で砕石に圧力を印加する回転方向を「反転方向」ということがある。また、正転方向の回転を右回転(時計回り)とし、反転方向の回転を左回転(反時計回り)として説明する。
【0021】
ここで、
図5~
図7に基づき、円筒部12が備える開閉蓋61の構成について詳述する。
【0022】
図5に示すように、開閉蓋61は、円筒部12に形成された砕石投入孔15を塞ぐための縦長矩形状の長尺部材である。開閉蓋61は、蓋本体62と、補強布63と、複数の補強板64と、を備えている。蓋本体62は、砕石投入孔15に対応した外形状を有している。蓋本体62は、弾性変形可能なゴム製又は樹脂製の材料からなる。蓋本体62は、第1縁部65と、第2縁部66とを備えている。第1縁部65は、軸方向に沿って延び、円筒部12に固定される縁部である。一方、第2縁部66は、軸方向に沿って延びると共に、第1縁部65に対して幅方向に間隔を空けて位置し、円筒部12に固定されていない縁部である。蓋本体62は、締結具67によって円筒部12に設けた扉取付プレート68の第1開口縁68aに固定されている。締結具67は、例えばボルト及びナットであって、軸方向に沿った複数箇所に等間隔に設けられている。
【0023】
蓋本体62は、第1縁部65を支点として屈曲することで、砕石投入孔15を開放する開状態(
図4参照)と、砕石投入孔15を閉じる閉状態(
図3参照)とに切替えられるようになっている。開状態のときには、蓋本体62の第2縁部66は、扉取付プレート68の第2開口縁68bから離間し、円筒部12の内部領域と外部領域とを連通させる。閉状態のときには、蓋本体62の第2縁部66は、扉取付プレート68の第2開口縁68bに当接し、円筒部12の内部領域と外部領域との連通を遮断する。
【0024】
複数の補強板64は、開閉蓋61を補強するために蓋本体62内に埋め込まれた状態で配置されている。複数の補強板64は、開閉蓋61が地中の土圧や水圧により折れ曲がらないために設置されており、蓋本体62内に軸方向(
図5のZ軸方向)に間隔を空けて配置されると共に、軸方向と直交する幅方向(
図5のX軸方向)に延びている。複数の補強板64は、金属製の骨材であって、補強板64の幅方向の長さよりもやや短い寸法を有している。補強板64の第2縁部66側の端部t2は、蓋本体62の第2縁部66の近傍に到るように配置されている。補強板64の第1縁部65側の端部t1は、蓋本体62の第1縁部65の近傍には配置されておらず、締結具67よりも第2縁部66寄りの位置に配置されている。なお、端部t1、t2は、角を丸めた形状を有している。
【0025】
補強布63a,63bは、開閉蓋61を補強するために蓋本体62内に配置されており、主として補強板64による蓋本体62の引き裂きを防止している。補強布63aは、蓋本体62において補強板64の後側(つまり蓋本体62の内面側)に埋設され、補強布63bは、蓋本体62において補強板64の前側(つまり蓋本体62の外面側)に埋設されている。
図7に示されるように、補強布63a,63bは、縦糸y1と、縦糸y1に織り込まれた横糸y2と、を備える。補強布63a,63bは、特定方向に伸びやすい性質を有している。具体的には、補強布63a,63bは、横糸y2に沿った方向に対して、45°の角度をなす方向に最も伸縮性を有している(
図7の白抜き矢印を参照)。補強布63a,63bは、横糸y2が補強板64に対して斜交(角度45°)するとともに、縦糸y1が補強板64に対して斜交(角度45°)する位置関係となるように配置されている。このため、補強布63a,63bは、軸方向及び軸方向に直交した幅方向へ伸縮性を有したものとなっている。一方、開閉蓋61には軸方向に直交する幅方向に延びる補強板64が埋設されているため、開閉蓋61の幅方向の変形は拘束される。したがって、開閉蓋61は、幅方向と比較して軸方向に変形し易いものとなっている。これによって、蓋本体62を補強しながら蓋本体62の変形性を向上し、開閉蓋61を開状態とするときにスムーズに変形することができる。なお、横糸y2は補強板64と45°の角度を必ずしもなしていなくてもよく、補強板64と斜交するように蓋本体62に対して配置されていればよい。
【0026】
また、補強布63a,63bは、蓋本体62の幅方向の全体に配置されている。補強布63a,63bを蓋本体62の幅方向の全体に配置しても、補強布63a,63bは、横糸y2が補強板64と45°の角度をなすように配置されている。このため、開閉蓋61の軸方向の変形性が確保され、開閉蓋61を比較的に小さな力で大きく開けることができるようになっている。
【0027】
次に、砕石杭形成装置100が砕石杭を形成する際の砕石杭形成装置100の動作について説明する。
【0028】
まず、アタッチメント10の位置合わせを行う。アタッチメント10の位置合わせは、クローラ6の駆動によって地盤改良機40の位置と方向とを調整することによって行われる。なお、地盤改良機40の位置と方向とを調整した後、地盤改良機40は、アウトリガー5によって地面に固定されてもよい。これにより、施工時における地盤改良機40の揺動や位置ずれを抑制することができる。
【0029】
次いで、アタッチメント10を地中に挿入して、地中を掘削する。具体的には、地盤改良機40を地面に固定した後、駆動装置11を駆動させながらアタッチメント10を下降させる。この際、駆動装置11は、正転方向の回転駆動力を発生するように駆動する。上述したように、駆動装置11が正転方向の回転駆動力を発生すると、回転駆動力伝達部によって、螺旋部14及び円筒部12が正転方向に回転する。これによって、アタッチメント10が地中に挿入されて掘削される。地中の掘削によって排出される土砂は、円筒部12の外周に運ばれ、フィン13によって地表に排出される。アタッチメント10が所定の深さまで到達すると、駆動装置11の正転回転の駆動を停止し、掘削を終了する。
【0030】
次いで、アタッチメント10を上昇させ、地中に砕石杭を形成する。砕石杭の形成は、以下の手順で行われる。まず、
図4に示すように、開閉蓋61を開いた状態で、砕石投入装置32に砕石を投入する。砕石投入装置32に投入された砕石は、砕石投入孔15を介して円筒部12内に投入される。次に、反転方向の回転駆動力が発生するように、駆動装置11を駆動する。すると、螺旋部14は、反転方向に回転し、円筒部12内に投入された砕石を螺旋部14から押圧しながら円筒部12外に排出する。これによって、アタッチメント10が地中から押し出されると共に、円筒部12で形成した空間に砕石杭が形成される。上述したように、駆動装置11が反転方向の回転駆動力を発生すると、回転駆動力伝達部によって螺旋部14のみが反転方向に回転し、円筒部12は正転方向にも反転方向にも回転しない状態となる。このため、円筒部12に設けられる砕石投入孔15の位置が周方向に変化することを回避することができ、砕石投入装置32の位置を調整することなく円筒部12内へ砕石を投入することができる。そして、アタッチメント10が地表まで押し出されると、駆動装置11の反転方向の駆動を停止し、砕石杭の形成が終了する。
【0031】
ところで、この種のアタッチメント10において砕石杭を形成する際には、開閉蓋61の地表から少し上方の箇所を開けて、その開いた箇所に砕石投入装置32のシュート部34の先端を差し込み、円筒部12の空間に砕石を投入する必要がある。しかしながら、開閉蓋61の地中に埋設された部分(以下、地中埋設部ということがある)は閉じたままであるため、地中埋設部に対してシュート部差込箇所を外側に大きく変形させなければならない。特に、蓋本体62の第1縁部65は円筒部12に固定されていることから、蓋本体62の第2縁部66側をシュート部34の先端が差し込み可能となるまで外側に大きく開かなければならない。このため、地中に挿し込まれた部分に対して地表から少し上方の箇所が捻じられた状態となり、開閉蓋61の捻じられた部分(特に、第2縁部66側)には軸方向に伸びようとする力が作用する。上述したように、開閉蓋61では、横糸y2が補強板64に対して45°に斜交すると共に、縦糸y1が補強板64に対して45°に斜交する位置関係となるように、補強板64に対して補強布63a,63bが配置されている。このため、開閉蓋61は、軸方向に伸縮性を有したもの(すなわち、軸方向に変形性が向上したもの)となっている。このため、開状態とするときにスムーズに変形できる性質を開閉蓋61に付与することができ、開閉蓋61の開閉を容易にすることができる。また、開閉蓋61の開閉がスムーズとなり、開閉蓋61を開くために必要な力が小さくなるため、その反作用として開閉蓋61から円筒部12に作用する力(すなわち、円筒部12を軸周りに回転させようとする力)も小さくなる。これによって、砕石杭形成中に砕石投入孔15の位置(開閉蓋61の位置)が変化することを抑制することができる。
【0032】
なお、上述した実施例では、補強布63a,63bが蓋本体62の幅方向の全体に配置されていたが、これに限定されることはない。例えば、
図8に示す開閉蓋61Cのように、補強布63a,63bは、蓋本体62の軸方向にほぼ全体的に配置されている反面、蓋本体62の幅方向には全体的に配置されておらず、部分的に配置されていてもよい。すなわち、補強布63a,63bは、締結具67が配置される位置P1から補強板64の第1縁部65側の端部t1までの範囲を含んで配置される。具体的には、補強布63a,63bは、第1縁部65から第1縁部65側の端部t1より若干第2縁部66寄りの位置までの範囲に配置されている。別言すると、補強布63a,63bは、第1縁部65側の端部t1より若干第2縁部66寄りの位置から第2縁部66までの範囲には、配置されていない。このような構成によっても、締結具67による開閉蓋61Cの引き裂きや、補強板64の端部t1による開閉蓋61の突き破りが防止される。
【0033】
また、上述した開閉蓋61Cでは、補強布63a,63bを幅方向の1箇所のみに配置したが、これに限定されることはない。例えば、
図9に示す開閉蓋61Dのように、補強布63を幅方向において異なる2箇所に配置してもよい。すなわち、一方の補強布63a,63bを位置P1から端部t1までの範囲を含むように配置し、他方の補強布63c,63dを位置P2から端部t2までの範囲を含むように配置してもよい。換言すると、2個所に配置した補強布63a~63dを用いて開閉蓋61Dを補強する場合、補強布63a,63bと補強布63c,63dとを幅方向に間隔を空けて配置してもよい。このような例によっても、締結具67及び補強板64の端部t1による蓋本体62の引き裂きや突き破りを有効に防止することができる。さらに、補強板64の端部t2による蓋本体62の引き裂きや突き破りを有効に防止するとともに、開閉蓋61Dの第2縁部66からの裂けが第1縁部65側に伸びることを有効に防止することができる。また、補強布63c,63dを位置P2から端部t2までの範囲を含むように配置しても、補強布63c,63dは、その横糸y2が補強板64と45°の角度をなすように配置されている。このため、開閉蓋61Eは、軸方向に伸びやすい性質を有している。これによって、開閉蓋61Dの損傷を抑制しながら、開閉蓋61Cを比較的に小さな力で大きく開けることができる。
【0034】
また、
図9に示す開閉蓋61Dでは、2個所に配置した補強布(63a,63b)と補強布(63c,63d)のそれぞれが、その横糸y2が補強板64と45°の角度をなすように蓋本体62に対して配置されていたが、これに限定されることはない。例えば、
図10に示す開閉蓋61Eでは、位置P1から端部t1までの範囲を含むように配置した補強布63a,63bを、横糸y2が補強板64と平行な状態となり、縦糸y1が補強板64と直交するように配置する一方、位置P2から端部t2までの範囲を含むように配置した補強布63c,63dを、横糸y2が補強板64と45°の角度をなすように配置してもよい。すなわち、補強布63c,63dが配置された部位は、補強布63a,63bが配置された部位と比較して、軸方向に伸び易くなっている。このような構成によると、補強布63a,63bの開閉蓋61Eへの配置を容易に行うことができると共に、補強布63a,63bによって、締結具67及び補強板64の端部t1による蓋本体62の引き裂きや突き破りを有効に防止することができる。さらに、補強布63c,63dによって、補強板64の端部t2による蓋本体62の引き裂き等を防止しながら開閉蓋61Eの変形性を担保することができる。なお、
図10に示す開閉蓋61Eにおいて、補強布63a,63bと補強布63c,63dの間の隙間を無くし、また、補強布63c,63dを第2縁部66まで配置するようにして、開閉蓋61Eの幅方向の全体に補強布を配置するようにしてもよい。
【0035】
なお、上述した実施例において、補強布を横糸y2が補強板64と所望の角度(例えば、45°)をなすように開閉蓋61に配置する方法としては、開閉蓋61の面積に対して大きな面積の補強布を用意して、この補強布を開閉蓋61の大きさに合わせて斜めに切断する方法が考えられる。しかしながら、開閉蓋61は、砕石投入孔15を塞ぐための縦長矩形状の長尺部材であるため、砕石投入孔15の軸方向の寸法に対応する横幅の長い補強布を用意することは難しい。また、別の方法としては、幅方向に対して斜めに延びる横糸と、その横糸に対して直交するように延びる縦糸を備えた補強布を用意して、この補強布を開閉蓋61の大きさに合わせて縦長矩形状に切断する方法も考えられる。このような方法では、補強布を特殊な織り方により作製しなければならないため、簡易な方法とはならない。すなわち、補強布の織り方としては、通常、織り機の縦方向に沿って複数の縦糸を張り、これら複数の縦糸に対して直交するように横糸をくぐらせて編まれる。このため、補強布を通常の織り方で織ると、幅方向に対して平行に延びる横糸と、その横糸に対して直交するように延びる縦糸を備えた補強布となる。したがって、幅方向に対して斜めに延びる横糸と、その横糸に対して直交するように延びる縦糸を備えた補強布を用意するためには、特殊な織り方を採用する必要がある。また、仮に幅方向に対して斜めに延びる横糸と、その横糸に対して直交するように延びる縦糸を備えた補強布を用意できたとしても、特殊な織り方を採用しているため、通常の織り方で織られた補強布と比較して費用がかかることとなる。そこで、
図11に示す開閉蓋61のように、開閉蓋61に複数の補強布片72,74を配置して、開閉蓋61の所望の部位(
図11では開閉蓋61の全面)に補強布を配置してもよい。
【0036】
具体的には、まず、高さ方向に対して平行に延びる縦糸y1と、幅方向に対して平行に延びる横糸y2と、を備えた補強布を準備する。準備する補強布の高さ方向の寸法は、砕石投入孔15の軸方向の寸法に対応した寸法とし、準備する補強布の幅方向の寸法は、砕石投入孔15の幅方向の寸法に対応した寸法とする。次に、準備した補強布を斜めに所望の傾斜角(例えば、45度)に切断することで、平面視すると三角形となる2個の補強布片72と、平面視すると平行四辺形となる複数個の補強布片74を作製する。
図11から明らかなように、三角形となる補強布片72では、切断辺73cが縦糸y1と平行(横糸y2と直交する方向)に延びており、切断辺73a,73bが縦糸y1(及び横糸y2)に対して所望の傾斜角で延びている。また、平行四辺形となる複数個の補強布片74では、一対の切断辺75bが縦糸y1と平行(横糸y2と直交する方向)に延びており、切断辺75aが縦糸y1(及び横糸y2)に対して所望の傾斜角(例えば、45°)で延びている。複数の補強布片72,74を準備したら、
図11に示すように、複数の補強布片72,74を、開閉蓋61の軸方向(Z方向)に並べて配置する。詳細には、補強布片72は、切断辺73bが開閉蓋61の下縁(又は上縁)に沿い、切断辺73aが開閉蓋61の右縁(又は左縁)に沿うように開閉蓋61の上端と下端に配置する。一方、補強布片74は、一対の切断辺75aが開閉蓋61の右縁及び左縁に沿うように開閉蓋61に配置する。なお、隣接する補強布片(例えば、補強布72と補強布74)の隣接する切断辺(例えば、補強布72の切断辺73cと補強布74の切断辺75b)は一部が重ね合わされた状態で配置される。これによって、開閉蓋61の全面に隙間なく補強布を配置することができる。これによって、簡易な方法によって、開閉蓋61に対して所望の角度で横糸y2が延びるように補強布を配置することができる。なお、蓋本体62の内部に補強布及び補強板を配置して一体化する方法としては、例えば、補強布及び補強板を2枚の蓋本体部分の内部に収容し、2枚の蓋本体部分を溶着する等の方法を用いることができる。
【0037】
また、上述した各例では、補強布63が蓋本体62において補強板64の前側と後側の両側に埋設されていたが、これに限定されることはない。例えば、別の例では、補強布63が蓋本体62において補強板64の前側に埋設されていてもよく、あるいは、
図12に示すように、補強板64の後側にのみ補強布63aが埋設されていてもよい。
【0038】
また、上述した砕石杭形成装置100では、地中に形成された空間に砕石を投入して砕石杭を形成する方法として、アタッチメント10のスクリューの逆回転による締固めを行っていたが、このような例に限られない。本明細書に開示の技術は、アタッチメント10のスクリューの逆回転による締固めによらない砕石杭形成方法においても採用することができる。
【0039】
また、上述した砕石杭形成装置100は、掘削した土砂を地表面に排出するタイプ(いわゆる、排土タイプ)のアタッチメント10であったが、このような例に限られない。本明細書に開示の技術は、例えば無排土タイプのアタッチメントにおいても採用することができる。
【0040】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記の実施例においては、円筒部が時計回りに回転するときに土砂を掘削したが、このような例に限られず、上記の実施例とは逆方向に円筒部が回転するときに土砂を掘削し、また、開閉蓋の固定位置が上記の実施例とは左右が逆になったものなども本発明の範囲内となる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0041】
10: アタッチメント
12: 円筒部
15: 砕石投入孔
61、61C、61D、61E: 開閉蓋
62: 蓋本体
63: 補強布
64: 補強板
65: 第1縁部
66: 第2縁部
67: 締結具
100: 砕石杭形成装置
P1: 締結具が配置される位置
P2: 第1縁部側の端部より第2縁部側の位置
t1: 第1縁部側の端部
t2: 第2縁部側の端部
y1: 縦糸
y2: 横糸