IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キョーラク株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-二重容器 図1
  • 特開-二重容器 図2
  • 特開-二重容器 図3
  • 特開-二重容器 図4
  • 特開-二重容器 図5
  • 特開-二重容器 図6
  • 特開-二重容器 図7
  • 特開-二重容器 図8
  • 特開-二重容器 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025023452
(43)【公開日】2025-02-17
(54)【発明の名称】二重容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20250207BHJP
   B29C 49/22 20060101ALI20250207BHJP
   B29C 49/02 20060101ALI20250207BHJP
【FI】
B65D1/02 210
B65D1/02 110
B29C49/22
B29C49/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127571
(22)【出願日】2023-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】國森 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】室屋 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】樽野 真輔
【テーマコード(参考)】
3E033
4F208
【Fターム(参考)】
3E033AA02
3E033BA14
3E033BA15
3E033BA16
3E033BB08
3E033CA02
3E033DA02
3E033DA05
3E033DB01
3E033DC04
3E033DD01
3E033FA03
4F208AG03
4F208AG07
4F208AG23
4F208AG28
4F208AH55
4F208LA08
4F208LB01
4F208LB22
4F208LG03
4F208LG06
4F208LG16
4F208LG19
4F208LG22
4F208LG28
4F208LH06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ダイレクトブロー成形によって形成した内プリフォームに外プリフォームを被せて構成されるプリフォームを二軸延伸ブロー成形して容器本体を形成した場合でも、低温落下試験において当接凸部に割れが生じることが抑制される、二重容器を提供する。
【解決手段】容器本体を備える、二重容器であって、前記容器本体は、内袋と、前記内袋を覆うように配置された外殻を備え、前記内袋は、前記外殻の開口端から突出する突出部を備え、前記突出部には、突出筒と、当接凸部が設けられており、前記当接凸部は、前記開口端に当接する位置に配置され、かつ前記突出筒から径方向外側に突出した部位であり、前記当接凸部は、前記突出部から径方向外側に向かって延びる上壁及び下壁を有し、前記上壁は、前記下壁よりも前記内袋の開口端に近い側に配置され、前記下壁に対する前記上壁の回転を抑制する補強部が設けられている、二重容器が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体を備える、二重容器であって、
前記容器本体は、内袋と、前記内袋を覆うように配置された外殻を備え、
前記内袋は、前記外殻の開口端から突出する突出部を備え、
前記突出部には、突出筒と、当接凸部が設けられており、
前記当接凸部は、前記開口端に当接する位置に配置され、かつ前記突出筒から径方向外側に突出した部位であり、
前記当接凸部は、前記突出部から径方向外側に向かって延びる上壁及び下壁を有し、
前記上壁は、前記下壁よりも前記内袋の開口端に近い側に配置され、
前記下壁に対する前記上壁の回転を抑制する補強部が設けられている、二重容器。
【請求項2】
請求項1に記載の二重容器であって、
前記当接凸部は、周方向に沿って配置された複数の当接突起を備え、
前記複数の当接突起の間には中間部位が設けられており、
前記中間部位は、前記突出筒からの突出量が前記当接突起よりも小さいか、又は前記突出筒から突出していない部位であり、
前記補強部は、前記中間部位によって構成される、二重容器。
【請求項3】
請求項2に記載の二重容器であって、
前記当接突起の数は、4又は8である、二重容器。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1つに記載の二重容器であって、
前記突出部には、前記当接凸部よりも前記内袋の開口端に近い位置に、口部装着部材を装着するための係合部が設けられている、二重容器。
【請求項5】
請求項1~請求項3の何れか1つに記載の二重容器であって、
前記容器本体は、ダイレクトブロー成形によって形成した内プリフォームに外プリフォームを被せて構成されるプリフォームを二軸延伸ブロー成形して製造された成形体である、二重容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外殻と内袋とを有する容器本体を備える二重容器が知られている。例えば、特許文献1には、内プリフォームに外プリフォームを被せて構成されるプリフォームを二軸延伸ブロー成形して、内袋とこれを覆う外殻を有する容器本体を製造する方法が開示されている。また、特許文献1の容器本体では、内袋は、外殻の開口端から突出する突出部を備えており、突出部には、外殻の開口端に当接する当接凸部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-26868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1と同様の構成の容器本体を有する二重容器について、本発明者が低温での落下試験を行ったところ、内プリフォームをダイレクトブロー成形した場合に、当接凸部での割れが生じやすくなることが分かった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ダイレクトブロー成形によって形成した内プリフォームに外プリフォームを被せて構成されるプリフォームを二軸延伸ブロー成形して容器本体を形成した場合でも、低温落下試験において当接凸部に割れが生じることが抑制される、二重容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]容器本体を備える、二重容器であって、前記容器本体は、内袋と、前記内袋を覆うように配置された外殻を備え、前記内袋は、前記外殻の開口端から突出する突出部を備え、前記突出部には、突出筒と、当接凸部が設けられており、前記当接凸部は、前記開口端に当接する位置に配置され、かつ前記突出筒から径方向外側に突出した部位であり、前記当接凸部は、前記突出部から径方向外側に向かって延びる上壁及び下壁を有し、前記上壁は、前記下壁よりも前記内袋の開口端に近い側に配置され、前記下壁に対する前記上壁の回転を抑制する補強部が設けられている、二重容器。
[2][1]に記載の二重容器であって、前記当接凸部は、周方向に沿って配置された複数の当接突起を備え、前記複数の当接突起の間には中間部位が設けられており、前記中間部位は、前記突出筒からの突出量が前記当接突起よりも小さいか、又は前記突出筒から突出していない部位であり、前記補強部は、前記中間部位によって構成される、二重容器。
[3][2]に記載の二重容器であって、前記当接突起の数は、4又は8である、二重容器。
[4][1]~[3]の何れか1つに記載の二重容器であって、前記突出部には、前記当接凸部よりも前記内袋の開口端に近い位置に、口部装着部材を装着するための係合部が設けられている、二重容器。
[5][1]~[4]の何れか1つに記載の二重容器であって、前記容器本体は、ダイレクトブロー成形によって形成した内プリフォームに外プリフォームを被せて構成されるプリフォームを二軸延伸ブロー成形して製造された成形体である、二重容器。
【発明の効果】
【0007】
内プリフォームをダイレクトブロー成形によって形成した場合、射出成形によって形成した場合と違って当接凸部が一体とならずに、上壁と下壁を備える形状となる。そして、この形状は、二軸延伸ブロー成形を行って形成される容器本体にもほぼそのまま受け継がれ、ダイレクトブロー成形によって形成した内プリフォームに外プリフォームを被せて構成されるプリフォームを二軸延伸ブロー成形して容器本体を形成した場合には、当接凸部が上壁と下壁を備える形状となり、低温落下試験において、下壁に対して上壁を回転させる方向の力が加わると、当接凸部に割れが生じやすくなることが分かった。そして、本発明者は、この知見に基づき、下壁に対する上壁の回転を抑制する補強部を設けることによって、当接凸部の割れの発生を抑制可能であることを見出し、本発明の完成に到った。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態の二重容器1の斜視図である。図中の一点鎖線は、表面形状を構成する面の曲率が変化する境界線を表す。他の図についても同様である。
図2図1中の容器本体2の斜視図である。
図3図2の口部5近傍の分解斜視図である。
図4図4Aは、図2の容器本体2の、口部5の中心を通る縦断面図であり、図4Bは、図4A中のB-B断面の端面図であり、図4Cは、図4A中の領域Cの拡大図である。
図5】内プリフォーム14及び外プリフォーム13が分離されている状態を示す斜視図である。
図6】内プリフォーム14に外プリフォーム13を被せることによって構成されたプリフォーム15の斜視図である。
図7】本発明の第2実施形態の二重容器1についての、図3に対応する分解斜視図である。
図8図7の二重容器1についての、図4Bに対応する端面図である。
図9】本発明の第2実施形態で用いる内プリフォーム14の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0010】
1.第1実施形態
1-1.二重容器1の構成
<基本構成>
図1に示すように、本発明の第1実施形態の二重容器1は、容器本体2と、口部装着部材8を備える。
【0011】
図2図3に示すように、容器本体2は、口部5と、胴部6と、底部7を備える。口部5は、開口端5cを有する筒状(好ましくは円筒状)部位である。開口端5cは、容器本体2の開口端であると共に、内袋4の開口端でもある。口部5は、口部装着部材8を装着可能な係合部4mを備える。口部装着部材8は、本実施形態ではキャップ8aであるが、ポンプであってもよい。口部5には、フランジ5bが設けられている。フランジ5bは、口部5に口部装着部材8を装着する際に口部5を支持するために利用可能である。
【0012】
胴部6は、口部5よりも開口端5cから離れた側に口部5に隣接して配置される。胴部6は、口部5よりも外径(本明細書において、「外径」は、断面が円形でない場合は、円相当径を意味する。)が大きい。胴部6は筒状であり、底部7は、胴部6の下端に設けられ、胴部6の下端を閉塞する。胴部6は、口部5から離れるにつれて外径が大きくなる肩部6bを備える。また、胴部6は、肩部6bよりも底部7側に、胴部本体6cを備える。胴部本体6cは、例えば、底部7に向かって外径が略一定である形状であるか、又は底部7に向かって縮径する形状である。
【0013】
図3に示すように、容器本体2は、内袋4と、内袋4を覆うように配置された外殻3を備える。内袋4は、突出部4c以外の内袋本体4dが外殻3内に収容されている。以下の説明では、内袋4のうち、容器本体2の口部5、胴部6、及び底部7に相当する部位をそれぞれ、内袋4の口部5、胴部6、及び底部7のように称する。外殻3についても同様である。
【0014】
<外殻3と内袋4の詳細構造>
図2図4に示すように、内袋4は、外殻3の開口端3aから突出する突出部4cを備える。突出部4cは、突出筒4c1と、係合凸部4c2と、環状凸部4c5と、当接凸部4vを備える。
【0015】
環状凸部4c5は、口部装着部材8と軸方向に係合する。係合凸部4c2は、口部装着部材8と周方向に係合する。係合凸部4c2と環状凸部4c5によって、係合部4mが構成される。係合部4mは、、当接凸部4vよりも内袋4の開口端5cに近い位置に配置される。本明細書において、「軸方向」とは、口部5の中心軸Cが延びる方向であり、言い換えると、容器本体2から内袋4を引き抜く方向である。「周方向」とは、口部5の中心軸Cを中心として回転させる方向であり、言い換えると、口部5において内袋4を外殻3に対して、回転させる方向である。
【0016】
係合凸部4c2は、周方向に離間されて複数箇所(本実施形態では8箇所)に設けられることが好ましい。係合凸部4c2は、環状凸部4c5上に配置され、環状凸部4c5から径方向外側に向かって突出するように設けられる。環状凸部4c5及び係合凸部4c2は、上面にテーパー面4c8が設けられている。これによって、口部装着部材8に設けられた環状凸部(不図示)が環状凸部4c5及び係合凸部4c2を乗り越えやすくなっている。
【0017】
当接凸部4vは、開口端3aに当接する位置に配置され且つ突出筒4c1から径方向外側に突出した部位である。当接凸部4vが開口端3aに当接することによって、内袋4が外殻3内に脱落することが回避される。当接凸部4vの詳細は、後述する。
【0018】
図3に示すように、内袋本体4dの外周面には、カム凸部4gが設けられている。カム凸部4gの下面は、口部5の開口端5c側から見て、反時計周りに進むにつれて開口端5cに近づくように傾斜している。また、外殻3の内周面には、カムレール3lが設けられている。
【0019】
内袋4を容器本体2から引き抜く前の状態では、カム凸部4gの下面がカムレール3lの上面に当接している。カム凸部4gとカムレール3lによって、カム機構31が構成される。内袋4を反時計回りに回転させると、内袋4がカム機構31の作用によって容器本体2から抜け出す方向に移動する。この際に、内袋4が捻られて縮径される。
【0020】
<内袋4の引き抜き>
口部装着部材8は、好ましくは打栓式で容器本体2の口部5に装着可能に構成されており、口部装着部材8を口部5に被せた状態で、口部装着部材8を底部7の方向に押圧することによって、口部装着部材8を口部5に係合させて装着することができる。
【0021】
口部装着部材8は、内袋4の口部5に周方向及び軸方向に係合されており、口部装着部材8の回転に伴って内袋4が外殻3に対して回転するように構成されている。そして、内袋4と外殻3の間に設けられたカム機構31の作用により、内袋4の回転に伴って内袋4が容器本体2から抜け出す方向に移動するように構成される。
【0022】
このような構成によれば、口部装着部材8を回転させることによって、内袋4を捻りながら容器本体2から抜け出る方向に移動させることができ、その後は、口部装着部材8を引っ張ることによって、内袋4を容器本体2から引き抜くことができる。なお、内袋4を捻らずに軸方向に引っ張ることによって内袋4を容器本体2から分離するようにしてもよい。その場合にも、本発明の構成によれば、内袋4の分離に必要な力が低減される。
【0023】
<当接凸部4vの詳細>
後述するように、容器本体2は、好ましくは、ダイレクトブロー成形によって形成した内プリフォーム14に外プリフォーム13を被せて構成されたプリフォーム15(図5図6に図示)を二軸延伸ブロー成形して製造された成形体である。内プリフォーム14をダイレクトブロー成形によって形成した場合、射出成形によって形成した場合と違って当接凸部4vが一体とならずに、図4Cに示すように、上壁4v1と下壁4v2が先端4v3で繋がった形状となる。上壁4v1は、下壁4v2よりも内袋4の開口端5cに近い側に配置される。当接凸部4vの根本での厚さが上壁4v1と下壁4v2の合計の厚さよりも大きい場合には、上壁4v1と下壁4v2の間には、隙間4v4が形成される。隙間4v4は、先端4v3に向かって徐々に狭まる。
【0024】
二重容器1の低温落下試験は、係合部4mに口部装着部材8を装着した状態で行うところ、二重容器1の胴部6が地面に衝突すると、口部装着部材8に回転力が加わり、その回転力が係合部4mを介して当接凸部4vに加わる。当接凸部4vが一体で形成されていれば、落下時に生じる回転力による当接凸部4vの割れは生じにくいが、当接凸部4vが上壁4v1と下壁4v2を有する構成である場合には、落下時に生じる回転力によって下壁4v2に対して上壁4v1を回転させる方向の力が加わって当接凸部4vに割れが生じやすくなるという問題が生じやすくなる。
【0025】
本実施形態では、このような問題を解決すべく、下壁4v2に対する上壁4v1の回転を抑制する補強部4wが設けられている。補強部4wは、下壁4v2に対する上壁4v1の回転を抑制可能な任意の構成にすることができる。
【0026】
本実施形態では、当接凸部4vは、周方向に沿って配置された複数の当接突起4vaを備える。複数の当接突起4vaの間には中間部位4vbが設けられている。中間部位4vbは、突出筒4c1からの突出量が当接突起4vaよりも小さいか、又は突出筒4c1から突出していない部位である。補強部4wは、中間部位4vbによって構成される。本実施形態では、中間部位4vbは、突出筒4c1から突出していない部位である。中間部位4vbは、当接突起4vaに比べて変形しにくいので、中間部位4vbを設けることによって当接突起4vaの変形が抑制される。
【0027】
当接凸部4vは、複数の当接突起4vaが周方向に互いに離間されて(好ましくは等間隔に)間欠的に形成されて構成されている。当接突起4vaの数は、例えば、2~16であり、4又は8が好ましく、8がさらに好ましい。内プリフォーム14をダイレクトブロー成形によって形成する場合、内プリフォーム14を成形用の分割金型から型抜きする必要があり、型抜き性を考慮すると、当接突起4vaの数は、4又は8が好ましい。また、当接突起4vaの数が多いほど、当接凸部4vの割れ抑制効果が高いので、当接突起4vaの数は8がさらに好ましい。当接突起4vaと中間部位4vbは傾斜面4vcを介して連結されることが好ましい。傾斜面4vcは、例えば図4Bの左右方向に開閉する分割金型からの型抜きの際にアンダーカットにならないように設けることが好ましい。当接突起4vaの突出傾斜(つまり、傾斜面4vcの傾斜)は、係合凸部4c2の突出傾斜よりもゆるやかであってもよい。係合凸部4c2は口部装着部材8と周方向に係合させるために、突出傾斜が急であることが好ましいが、当接突起4vaは、内袋の脱落防止のために設けられているものであって、別の部材と周方向に係合させる必要がないからである。
【0028】
当接突起4vaと中間部位4vbの合計に対して中間部位4vbが占める割合は、例えば、10~90%であり、20~80%が好ましい(本実施形態では32%、第2実施形態では44%)。この値は、具体的には例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲であってもよい。中間部位4vbが占める角度の合計は、例えば、60~300度であり、80~200度が好ましい(本実施形態は112度、第2実施形態は140度)。この値は、具体的には例えば、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300度であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲であってもよい。
【0029】
当接凸部4vの上縁と係合部4mの下縁の間の上下方向の長さHは、例えば、2mm以上であり、3mm以上が好ましい(本実施形態では3.1mm)。この長さHが長いほど、当接凸部4vに加わる回転力が大きくなりやすく、本発明を適用する意義が顕著になる。この長さは、例えば、2~20mmであり、具体的には例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲又は何れか以上であってもよい。
【0030】
当接凸部4vの上縁と係合部4mの下縁の中間での内袋4の肉厚は、例えば、0.5~1.5mmであり、具体的には例えば、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲であってもよい。
【0031】
1-2.二重容器1の製造方法
容器本体2は、図6に図示するプリフォーム15を二軸延伸ブロー成形することによって製造することができる。また、容器本体2に口部装着部材8を装着することによって二重容器1を製造することができる。
【0032】
<内プリフォーム14、外プリフォーム13,プリフォーム15の構成>
図5に示すように、プリフォーム15は、内袋4となる内プリフォーム14と、外殻3となる外プリフォーム13を備える。
【0033】
図5に示すように、内プリフォーム14は、有底筒状であり、口部14aと、胴部14bと、底部14cを備える。口部14aの開口端には、突出部14dが設けられている。突出部14dは、成形時に変形せずにそのままの形状で突出部4cとなる。突出部14dには、係合部14m及び当接凸部14vが設けられている。係合部14m及び当接凸部14vは、それぞれ、成形後に係合部4m及び当接凸部4vとなる。底部14cは、胴部14bの下端を閉じるように設けられる。突出部4c、係合部4m及び当接凸部4vについて上述した事項は、その趣旨に反しない限り、突出部14d、係合部14m及び当接凸部14vにも適用可能である。
【0034】
図5に示すように、外プリフォーム13は、有底筒状であり、口部13aと、胴部13bと、底部13cを備える。底部13cは、胴部13bの下端を閉じるように設けられる。底部13cには、環状凸部13dが設けられている。口部13aには、フランジ部13eが設けられている。
【0035】
図6に示すように、内プリフォーム14に外プリフォーム13を被せることによって、プリフォーム15を形成することができる。プリフォーム15では、口部14aと口部13aが対向し、胴部14bと胴部13bが対向する。
【0036】
口部13a,14aがプリフォーム15の口部15aとなり、胴部13b,14bがプリフォーム15の胴部15bとなり、底部13c,14cがプリフォーム15の底部15cとなる。胴部15b及び底部15cが、二軸延伸ブロー成形において主に延伸される。
【0037】
<内プリフォーム14、外プリフォーム13、プリフォーム15の材料・製造方法>
内プリフォーム14及び外プリフォーム13は、ポリエステル(例:PET)やポリオレフィン(例:ポリプロピレン、ポリエチレン)等の熱可塑性樹脂で形成することができる。内プリフォーム14は、ダイレクトブロー成形によって形成可能である。外プリフォーム13は、ダイレクトブロー成形や射出成形によって形成可能である。
【0038】
<ダイレクトブロー成形による内プリフォーム14の製造>
内プリフォーム14は、溶融状態の筒状パリソンを用いたダイレクトブロー成形で形成することが好ましい。ダイレクトブロー成形では、射出成形に比べて、薄肉化が容易であるので、ダイレクトブロー成形で内プリフォーム14を形成することによって、内袋4の薄肉化が可能である。また、多層構造の内袋4を形成すべく、内プリフォーム14は、内側から順に、内側層と、ガスバリア層と、外側層を備える構成にすることが望ましいが、このような構成の内プリフォーム14は、多層射出成形で形成することが容易ではないことに加えて、例えば内プリフォーム14の底部14cにゲートを設けた場合、ガスバリア層を構成する樹脂が内プリフォーム14の開口端にまで到達せずにガスバリア性が低下してしまう虞がある。特に、内プリフォーム14の肉厚が小さくなるほど、樹脂が流動しにくくなり、上記問題が顕著になる。一方、ダイレクトブロー成形では、内側層と、ガスバリア層と、外側層に対応する構成を備えた筒状パリソンを用いて成形するので、ガスバリア層を内プリフォーム14の全体に渡って設けることが容易である。
【0039】
好ましくは、ガスバリア層は、例えばEVOHで構成され、内側層と外側層は、ポリオレフィン(例:ポリプロピレン)で構成される。内側層と外側層の少なくとも一方には、リプロ層を設けてもよい。リプロ層は、再生樹脂を含む樹脂で構成され、再生樹脂とバージン樹脂で構成される混合樹脂で構成されることが好ましい。リプロ層を設けることによって、環境負荷及び容器製造コストを低減させることができる。
【0040】
2.第2実施形態
図7図9を用いて、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態と類似しており、第1実施形態の説明は、その趣旨に反しない限り、本実施形態にも適用可能である。本実施形態は、当接凸部4vに設けられている当接突起4vaの数が4つである点が、第1実施形態との主な相違点である。このような形態であっても、隣接する2つの当接突起4vaの間の中間部位4vbが補強部4wとして機能して、当接凸部4vの割れを抑制することができる。このような構造の容器本体2は、図9に示すように、当接突起の数が4つである当接凸部14vを有する内プリフォーム14を用いて製造することができる。
【0041】
3.その他の実施形態
・上記実施形態では、内袋4は、容器本体2から引き抜き可能に構成されていたが、内袋4が容器本体2から引き抜き不能に構成されていてもよい。
・上記実施形態では、口部装着部材8は、打栓式で口部5に装着されていたが、口部装着部材8は、ネジ式などの別の方式で口部5に装着するものであってもよい。
・上記実施形態では、中間部位4vbは、突出筒4c1から突出していない部位となっているが、中間部位4vbが、突出筒4c1から突出している場合でも、その突出量が突出筒4c1よりも小さい場合には、中間部位4vbは、当接突起4vaの変形を抑制できるので、補強部4wとして機能する。
・補強部4wとして機能する中間部位4vbを設ける代わりに/設けると共に、隙間4v4の少なくとも一部に樹脂を充填することによって、下壁4v2に対する上壁4v1の回転を抑制するようにしてもよい。この場合、樹脂を充填した部位が補強部4wとなる。
【実施例0042】
1.容器本体の製造及び肉厚測定
<実施例1>
図5図6に示す形状のプリフォーム15を二軸延伸ブロー成形することによって、図1図4に示す形状の容器本体2(内容量300mL)を得た。当接凸部4vの上縁と係合部4mの下縁の中間での内袋4の肉厚は、約0.8mmであった。得られた容器本体2に水を280ml充填した後、図1に示すキャップ8aを装着して、二重容器1を得た。
【0043】
内プリフォーム14は、プロピレン-エチレンランダム共重合体(型式:ウィンテック、日本ポリプロ社製)をダイレクトブロー成形することによって製造した。外プリフォーム13は、PET(型式:チタン系触媒グレード、帝人社製)を300℃で射出成形して外プリフォームの形状とした後に20℃に急冷することによって製造した。急冷によって溶融状態のPETを非晶質状態にした。二軸延伸ブロー成形は、プリフォーム15を110℃(プリフォーム15の長手方向の中央での温度)に加熱して行った。
【0044】
<実施例2>
図5に示す内プリフォーム14の代わりに、図9に示す内プリフォーム14を用いて、第1実施形態と同様の方法で二重容器1を製造した。
【0045】
<比較例1>
図5に示す内プリフォーム14の代わりに、当接凸部14vが全周に渡って一定の高さになるように設けられた(つまり、補強部4wとなる中間部位4vbがない)内プリフォーム14を用いて、第1実施形態と同様の方法で二重容器1を製造した。
【0046】
2.低温落下試験
実施例・比較例の二重容器1のサンプルを5℃で10時間静置させた後に、正立姿勢で1.2mの高さからリノリウムの上に落下させた。サンプルの底部を下側に向けた状態での落下(垂直落下)と、サンプルを水平にした状態での落下(水平落下)をそれぞれ5回ずつ行い、以下の基準で評価した。
【0047】
20サンプルについて上記試験を行ったところ、内袋4に割れが発生したサンプル数は、以下の通りであった。
実施例1:0
実施例2:1
比較例1:2
【0048】
以上の結果から補強部4wを設けることによって、内袋4の割れの発生を抑制することができることが分かった。
【符号の説明】
【0049】
1 :二重容器
2 :容器本体
3 :外殻
3a :開口端
3l :カムレール
4 :内袋
4c :突出部
4c1 :突出筒
4c2 :係合凸部
4c5 :環状凸部
4c8 :テーパー面
4d :内袋本体
4g :カム凸部
4m :係合部
4v :当接凸部
4v1 :上壁
4v2 :下壁
4v3 :先端
4v4 :隙間
4va :当接突起
4vb :中間部位
4vc :傾斜面
4w :補強部
5 :口部
5b :フランジ
5c :開口端
6 :胴部
6b :肩部
6c :胴部本体
7 :底部
8 :口部装着部材
8a :キャップ
13 :外プリフォーム
13a :口部
13b :胴部
13c :底部
13d :環状凸部
13e :フランジ部
14 :内プリフォーム
14a :口部
14b :胴部
14c :底部
14d :突出部
14m :係合部
14v :当接凸部
15 :プリフォーム
15a :口部
15b :胴部
15c :底部
31 :カム機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9