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2025-2346階段型純石英コア数モードファイバ及び光伝送システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002346
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】階段型純石英コア数モードファイバ及び光伝送システム
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/036 20060101AFI20241226BHJP
   H04J 14/04 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
G02B6/036
H04J14/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102454
(22)【出願日】2023-06-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.ウェブサイト掲載日 2022年11月21日(予稿集公開日) ウェブサイトのアドレス抄録URL:https://spie.org/conferences-and-exhibitions/photonics-west(トップページ) https://spie.org/photonics-west/presentation/Design-of-three-mode-dual-step-index-pure-silica-core/12429-16(発表ページ) 2.ウェブサイト掲載日 2023年1月31日 ウェブサイトのアドレス 国際会議Photonics West開催期間2023年1月28日~2023年2月2日 https://spie.org/conferences-and-exhibitions/photonics-west 3.ウェブサイト掲載日 2023年3月15日(ビデオ公開) ウェブサイトのアドレス 国際会議Photonics West開催期間2023年1月28日~2023年2月2日(発表日2023年1月31日) 掲載URL:https://www.spiedigitallibrary.org/conference-proceedings-of-spie/12429/124290F/Design-of-three-mode-dual-step-index-pure-silica-core/10.1117/12.2647667.full?SSO=1において「階段型純石英コア数モードファイバ及び光伝送システム」に関する技術について公開した。
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100129230
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 理恵
(72)【発明者】
【氏名】岩屋 太郎
(72)【発明者】
【氏名】中島 和秀
(72)【発明者】
【氏名】松井 隆
(72)【発明者】
【氏名】坂本 泰志
(72)【発明者】
【氏名】森 崇嘉
(72)【発明者】
【氏名】寒河江 悠途
(72)【発明者】
【氏名】今田 諒太
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 晋聖
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝憲
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 剛
【テーマコード(参考)】
2H250
5K102
【Fターム(参考)】
2H250AB04
2H250AB09
2H250AB10
2H250AC64
2H250AC94
2H250AC95
2H250AD15
2H250AD34
2H250AE26
2H250AE27
2H250AE72
2H250AH46
2H250AH50
5K102AA01
5K102AD00
5K102KA01
5K102KA42
5K102PA01
5K102PA11
5K102PH49
5K102PH50
5K102RB14
(57)【要約】
【課題】モード間遅延差(DMD)と伝搬損失を同時に低減することが可能な階段型純石英コア数モードファイバ及び光伝送システムを提供する。
【解決手段】階段型純石英コア数モードファイバは、石英ガラスにより構成される内側コアと、内側コアより屈折率が低く、内側コアを囲む外側コアと、外側コアより屈折率が低く、全ての外側コアを囲むクラッドと、を備える。ここで、LP21又はLP02の実効遮断波長が1530nm以下であり、波長1550nmにおけるモードフィールド径が10~13μmである。そして、波長1625μm、曲げ径30mm、及び、曲げ回数100回における曲げ損失が2dB以下であり、レイリー散乱損失が0.150dB/km以下であり、モード間遅延差の絶対値が1ns/km以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英ガラスにより構成される内側コアと、
前記内側コアより屈折率が低く、前記内側コアを囲む外側コアと、
前記外側コアより屈折率が低く、全ての前記外側コアを囲むクラッドと、
を備え、
LP21又はLP02の実効遮断波長が1530nm以下であり、
波長1550nmにおけるモードフィールド径が10~13μmであり、
波長1625μm、曲げ径30mm、及び、曲げ回数100回における曲げ損失が2dB以下であり、
レイリー散乱損失が0.150dB/km以下であり、
モード間遅延差の絶対値が1ns/km以下であり、
前記内側コアと前記外側コアの半径比および比屈折率差比を、それぞれR、RΔとし、前記モードフィールド径をWとしたとき、
【数1】
を満たす、階段型純石英コア数モードファイバ。
【請求項2】
【数2】
を満たすことで、前記レイリー散乱損失が0.150dB/km以下である、請求項1に記載の階段型純石英コア数モードファイバ。
【請求項3】
【数3】
を満たすことで、前記モード間遅延差の絶対値が1ns/km以下である、請求項1に記載の階段型純石英コア数モードファイバ。
【請求項4】
【数4】
を満たすことで、前記曲げ損失が0.5dB以下である、請求項1に記載の階段型純石英コア数モードファイバ。
【請求項5】
【数5】
を満たすことで、前記モードフィールド径が10~12μmにおける前記曲げ損失が0.1dB以下である、請求項1に記載の階段型純石英コア数モードファイバ。
【請求項6】
前記クラッドの径が126μm以下である、請求項1に記載の階段型純石英コア数モードファイバ。
【請求項7】
複数の前記内側コアと、前記内側コアと同数の複数の前記外側コアを備え、
前記クラッドは複数の前記外側コアを囲む、請求項1に記載の階段型純石英コア数モードファイバ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の階段型純石英コア数モードファイバと、
信号光を生成する送信機と、
前記信号光を、前記階段型純石英コア数モードファイバを伝搬する光波モードに変換するモード合波器と、
前記階段型純石英コア数モードファイバの一端側に配置され、前記光波モードを含む入力光を前記内側コア及び前記外側コアに入力する光結合部と、
前記階段型純石英コア数モードファイバの他端側に配置され、前記内側コア及び前記外側コアからの出力光を抽出する光抽出部と、
前記出力光から前記光波モードを分離して前記信号光を取り出すモード分離器と、
前記モード分離器からの前記信号光を受信する受信機と、
を備える光伝送システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、階段型純石英コア数モードファイバ及び光伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
将来の大容量光ネットワーク実現に向けて空間分割多重技術の研究が盛んに行われている。空間分割多重技術のうち、1つのコアにおいて複数のモードを伝搬させる数モードファイバ(FMF)伝送によれば、空間多重度を高めることができ、光ファイバ1本当たりの伝送容量の飛躍的な向上につながることが期待されている。
【0003】
FMF伝送によれば、モード間遅延差(DMD)が大きいほど信号復元のための信号処理負荷が増大する。非特許文献1,2には、屈折率を半径方向へ放射状に変化させたグレーデットインデックス(GI)型を採用したFMFにおいて、既存のシングルモードファイバ(SMF)相当の伝搬損失が生じることが開示されている。
【0004】
非特許文献3には、純石英ガラスでコアを構成した純石英コアファイバ(PSCF)を用いることで、伝搬損失を低減できることが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】P. Sillard et al., “Low-differential-mode-group-delay 9-LP-mode fiber,” J. Lightw. Technol., vol. 34, no. 2, pp. 425-430 (2016).
【非特許文献2】T. Sakamoto, et al. "Differential mode delay managed transmission line for WDM-MIMO system using multi-step index fiber." J. Lightw. Technol. 30.17 : 2783-2787, (2012).
【非特許文献3】T. Kato et,al., ” Ultra low nonlinearity low loss pure silica core fiber”, OECC, vol. 2, pp. 1575-1576 (1999).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1,2に開示されたFMFに対して、非特許文献3の技術を適用しようとする場合、PSCFにおける屈折率分布の制御は容易ではない。そのため、DMDと伝搬損失を同時に低減することが可能なFMFを製造することが困難であるという課題がある。
【0007】
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものである。その目的とするところは、モード間遅延差(DMD)と伝搬損失を同時に低減することが可能な階段型純石英コア数モードファイバ及び光伝送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本開示の一態様に係る階段型純石英コア数モードファイバは、石英ガラスにより構成される内側コアと、内側コアより屈折率が低く、内側コアを囲む外側コアと、外側コアより屈折率が低く、全ての外側コアを囲むクラッドと、を備える。ここで、LP21又はLP02の実効遮断波長が1530nm以下であり、波長1550nmにおけるモードフィールド径が10~13μmである。そして、波長1625μm、曲げ径30mm、及び、曲げ回数100回における曲げ損失が2dB以下であり、レイリー散乱損失が0.150dB/km以下であり、モード間遅延差の絶対値が1ns/km以下である。
【0009】
また、本開示の一態様に係る光伝送システムは、本開示の階段型純石英コア数モードファイバと、信号光を生成する送信機と、信号光を、階段型純石英コア数モードファイバを伝搬する光波モードに変換するモード合波器と、階段型純石英コア数モードファイバの一端側に配置され、光波モードを含む入力光を内側コア及び外側コアに入力する光結合部と、階段型純石英コア数モードファイバの他端側に配置され、内側コア及び外側コアからの出力光を抽出する光抽出部と、出力光から光波モードを分離して信号光を取り出すモード分離器と、モード分離器からの信号光を受信する受信機と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、モード間遅延差(DMD)と伝搬損失を同時に低減することが可能な階段型純石英コア数モードファイバ及び光伝送システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施形態に係る階段型純石英コア数モードファイバの構造を示す断面図である。
図2】本開示の実施形態に係る階段型純石英コア数モードファイバにおける屈折率分布の一例を示す図である。
図3A】DMD、レイリー散乱損失、曲げ損失のコア構造依存性を示す図である。
図3B】DMD、レイリー散乱損失、曲げ損失のコア構造依存性を示す図である。
図3C】DMD、レイリー散乱損失、曲げ損失のコア構造依存性を示す図である。
図4A】曲げ損失の境界曲線における、半径比に関する係数のMFD依存性を示す図である。
図4B】レイリー散乱損失の境界曲線における半径比に関する係数のMFD依存性を示す図である。
図4C】DMDの境界曲線における半径比に関する係数のMFD依存性を示す図である。
図4D】DMDの境界曲線における半径比に関する係数のMFD依存性を示す図である。
図5】曲げ損失の境界曲線における、半径比に関する係数のMFD依存性を示す図である。
図6】曲げ損失の境界曲線における、半径比に関する係数のMFD依存性を示す図である。
図7】本開示の実施形態に係る階段型純石英コア数モードファイバの変形例を示す断面図である。
図8】本開示の実施形態に係る階段型純石英コア数モードファイバを用いた光伝送システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面を参照して、本開示の実施の形態を詳細に説明する。説明において、同一のものには同一符号を付して重複説明を省略する。
【0013】
[1.階段型純石英コア数モードファイバの構成]
図1は、本開示の実施形態に係る階段型純石英コア数モードファイバの構造を示す断面図である。以下、本実施形態に係る階段型純石英コア数モードファイバを、光ファイバFBと表記する。
【0014】
図1では、光ファイバFBの延在する方向(中心軸の方向)に直交する断面での断面図が示されている。光ファイバFBは、光波モードが伝搬する内側コア10及び外側コア20と、クラッド30と、を備える。
【0015】
内側コア10は、石英ガラスにより構成される。特に、光波モードの伝搬損失を低減するため、内側コア10は、純石英ガラスにより構成されるものであってもよい。例えば、内側コア10の断面形状は円形である。
【0016】
外側コア20は、内側コア10より屈折率が低く、内側コア10を囲むように配置される。外側コア20は、内側コア10ごとに内側コア10を囲むように配置される。例えば、内側コア10と外側コア20の中心軸は共通で、外側コア20の直径は内側コア10の直径よりも大きい。
【0017】
クラッド30は、外側コア20より屈折率が低く、全ての外側コア20を囲むように配置される。例えば、クラッド30の断面形状は円形である。クラッド30の径は126μm以下であってもよい。既存のシングルモードファイバ(SMF)と同等の標準クラッド径とすることにより、従来のコネクタやケーブル化技術等との親和性を高め、製造コストが肥大化してしまうことを抑制できる。
【0018】
内側コア10よりも外側コア20の屈折率を低くするため、外側コア20には、フッ素が添加されていてもよい。同様に、外側コア20よりもクラッド30の屈折率を低くするため、外側コア20には、フッ素が添加されていてもよい。屈折率を低くするために添加する物質は、フッ素(F)に限定されず、屈折率を低くする作用を有するものであれば良い。例えば、三酸化二ホウ素(B)であってもよい。
【0019】
光ファイバFBは、1以上の任意の個数の内側コア10及び外側コア20を備えるものであってもよい。すなわち、光ファイバFBは、マルチコア化されていてもよい。マルチコア化された光ファイバFBについては、変形例として後述する。
【0020】
光ファイバFB内を伝搬する光線は、内側コア10及び外側コア20における全反射の繰り返しによって伝搬する。ここで、光線の傾きは任意の値が許されるものではなく、特別の角度を有する光線のみが伝搬可能となる。このような光線の形態を光波モードと呼ぶ。内側コア10及び外側コア20を伝搬可能な光波モードは、例えば電磁界解析によって求めることができる。
【0021】
例えば、光波モードには、直線偏光モード(Linearly Polarized mode)が存在する。直線偏光モードは、「LPml」の形式で表現される。ここで、「m」は、内側コア10及び外側コア20を伝搬する光線の横方向電界の強度分布の角度方向の変化の様子を示すモード次数であり、「l」は、内側コア10及び外側コア20を伝搬する光線の横方向電界の強度分布の半径方向の変化の様子を示すモード次数である。
【0022】
本実施形態では、内側コア10及び外側コア20は、少なくとも1つ以上の光波モードを有するものとする。例えば、内側コア10及び外側コア20は、「LP01」および「LP11」を光波モードとして有する。内側コア10及び外側コア20が有する光波モードは、ここに挙げた例に限定されない。
【0023】
図2は、本開示の実施形態に係る階段型純石英コア数モードファイバにおける屈折率分布の一例を示す図である。図2では、縦軸に屈折率を示し、横軸に、半径方向の位置を示す。例えば、図1において光ファイバFBの中心軸を通る断面における屈折率の分布は、図2のような階段型構造となっている。
【0024】
以下の説明のため、内側コア10の半径を「r」(単位μm)とし、外側コア20の半径を「r」(単位μm)とする。内側コア10に対する外側コア20の比屈折率差をΔとし、内側コア10に対するクラッド30の比屈折率差をΔとする。
【0025】
また、内側コア10と外側コア20の半径比および比屈折率差比を、それぞれR、RΔとする。より具体的には、「R=r/r」、「R=Δ/Δ」と定義する。
【0026】
[2.光ファイバFBに対する要求条件]
内側コア10と外側コア20の半径比「R」と比屈折率差比「RΔ」に課せられる要求条件を検討するため、種々の光ファイバFBに関して、構造計算を実施した。
【0027】
なお、前提条件として、光ファイバFBが伝送する光通信の波長帯は、Cバンド及びLバンドを想定し、さらに、2LPモード伝送を想定した。そして、LP21もしくはLP02の実効遮断波長が1530nm以下となるような設計範囲を想定した。これは、ITU-T G.654規格に準拠している(文献:ITU-T, G.654, “Characteristics of a cut-off shifted single-mode optical fibre and cable”, (11/2016).)。
【0028】
図3A~3Cは、DMD、レイリー散乱損失、曲げ損失のコア構造依存性を示す図である。ここで、任意のR,RΔの組み合わせにおいてコア半径Aおよび比屈折率差Δは、モードフィールド径(MFD)が11.5μmかつLP21もしくはLP02におけるカットオフ波長(λ)が1530nmとなる条件によって限定できる。
【0029】
図3Aに示した設計範囲におけるAおよびΔの範囲は、それぞれ6.89μm≦a≦10.8μm、0.332%≦Δ≦0.600%である。
【0030】
さらに、散乱損失係数は0.2dB(文献:M. Ohashi et al., “Optical Loss Property of Silica-Based Single-Mode Fibers”, JLT, vol.10, No.5, pp. 539-543 (1992).)、曲げ損失は波長1625nm及び曲げ径30mm、100turns(曲げ回数100回)を条件として計算し、曲げ損失は常用対数をとった値をプロットしている。
【0031】
ここで、曲げ損失αの要求条件を、α≦2dB/100turnとする(log102≦0.3)。これはITU-G.654.Dの規格に準拠する。図3Aにおいて、曲げ損失αの要求条件を満たす領域は、次の数式1で示される。
【数1】
【0032】
また、レイリー散乱損失αの要求条件を、α≦0.150dB/kmとする。これは波長1.55μmにおける既存のPSCFの損失値に準拠する。図3Aにおいて、レイリー散乱損失αの要求条件を満たす領域は、次の数式2で示される。
【数2】
【0033】
さらに、モード間遅延差(DMD)τの要求条件を、-1ns/km≦τ≦1ns/kmとすると、図3Aにおいて、モード間遅延差(DMD)τの要求条件を満たす領域は、次の数式3で示される。
【数3】
【0034】
次に、図3Bは、DMD、レイリー散乱損失、曲げ損失のコア構造依存性を示す図である。図3Bでは、MFD=10μm、λ=1530nmを設計条件としている。
【0035】
図3Bに示した設計範囲におけるaおよびΔの範囲は、それぞれ5.93μm≦a≦7.92μm、0.623%≦Δ≦0.789%である.
【0036】
ここで、曲げ損失αの要求条件を、α≦2dB/100turnとする(log102≦0.3)。これはITU-G.654.Dの規格に準拠する。図3Bにおいて、曲げ損失αの要求条件を満たす領域は、次の数式4で示される。
【数4】
【0037】
また、レイリー散乱損失αの要求条件を、α≦0.150dB/kmとする。これは波長1.55μmにおける既存のPSCFの損失値に準拠する。図3Bにおいて、レイリー散乱損失αの要求条件を満たす領域は、次の数式5で示される。
【数5】
【0038】
さらに、モード間遅延差(DMD)τの要求条件を、-1ns/km≦τ≦1ns/kmとすると、図3Bにおいて、モード間遅延差(DMD)τの要求条件を満たす領域は、次の数式6で示される。
【数6】
【0039】
さらに、図3Cは、DMD、レイリー散乱損失、曲げ損失のコア構造依存性を示す図である。
図3Cでは、MFD=13μm、λ=1530nmを設計条件としている。
【0040】
図3Cに示した設計範囲におけるaおよびΔの範囲は、それぞれ7.72μm≦a≦10.1 μm、0.390%≦Δ≦0.574%である.
【0041】
ここで、曲げ損失αの要求条件を、α≦2dB/100turnとする(log102≦0.3)。これはITU-G.654.Dの規格に準拠する。図3Cにおいて、曲げ損失αの要求条件を満たす領域は、次の数式7で示される。
【数7】
【0042】
また、レイリー散乱損失αの要求条件を、α≦0.150dB/kmとする。これは波長1.55μmにおける既存のPSCFの損失値に準拠する。図3Cにおいて、レイリー散乱損失αの要求条件を満たす領域は、次の数式8で示される。
【数8】
【0043】
さらに、モード間遅延差(DMD)τの要求条件を、-1ns/km≦τ≦1ns/kmとすると、図3Cにおいて、モード間遅延差(DMD)τの要求条件を満たす領域は、次の数式9で示される。
【数9】
【0044】
[2-1.曲げ損失αの要求条件]
曲げ損失α=2dBを満たす境界曲線において、RΔに関する係数をa,a,a,aとすると、RΔは次の数式10で示される。
【数10】
【0045】
図4Aは、曲げ損失の境界曲線における、半径比に関する係数のMFD依存性を示す図である。MFDをW[μm]とすると、係数の近似曲線は次の数式11で示される。
【数11】
【0046】
したがって、任意のMFDにおいて曲げ損失の要求条件α≦2dBを満たす領域は、次の数式12で示される。
【数12】
【0047】
[2-2.レイリー散乱損失αの要求条件]
レイリー散乱損失α=0.150dB/kmを満たす境界曲線において、RΔに関する係数をb,b,b,bとすると、RΔは次の数式13で示される。
【数13】
【0048】
図4Bは、レイリー散乱損失の境界曲線における半径比に関する係数のMFD依存性を示す図である。MFDをW[μm]とすると、係数の近似曲線は次の数式14で示される。
【数14】
【0049】
したがって、任意のMFDにおいてレイリー散乱損失の要求条件α≦0.150dB/kmを満たす領域は、次の数式15で示される。
【数15】
【0050】
[2-3.モード間遅延差(DMD)τの要求条件]
モード間遅延差(DMD)τ=1ns/kmを満たす境界曲線において、RΔに関する係数をc,c,c,cとすると、RΔは次の数式16で示される。
【数16】
【0051】
図4Cは、DMDの境界曲線における半径比に関する係数のMFD依存性を示す図である。MFDをW[μm]とすると、係数の近似曲線は次の数式17で示される。
【数17】
【0052】
モード間遅延差(DMD)τ=-1ns/kmを満たす境界曲線において、RΔに関する係数をd,d,d,dとすると、RΔは次の数式18で示される。
【数18】
【0053】
図4Dは、DMDの境界曲線における半径比に関する係数のMFD依存性を示す図である。MFDをW[μm]とすると、係数の近似曲線は次の数式19で示される。
【数19】
【0054】
したがって、任意のMFDにおいてDMDの要求条件-1≦τ≦1を満たす領域は、次の数式20で示される。
【数20】
【0055】
[2-4.曲げ損失αの要求条件(その他の例1)]
次に、曲げ損失αの要求条件を、α≦0.5dB/100turnとする(log10(0.5)≦-0.3)。これは海底長距離伝送を想定したITU-G.654.Bの規格に準拠する。曲げ損失α=0.5dBを満たす境界曲線において、RΔに関する係数をe,e,e,eとすると、RΔは次の数式21で示される。
【数21】
【0056】
図5は、曲げ損失の境界曲線における、半径比に関する係数のMFD依存性を示す図である。MFDをW[μm]とすると、係数の近似曲線は次の数式22で示される。
【数22】
【0057】
したがって、任意のMFDにおいて曲げ損失の要求条件α≦0.5dBを満たす領域は、次の数式23で示される。
【数23】
【0058】
[2-5.曲げ損失αの要求条件(その他の例2)]
次に、MFD上限を12μmとすると、曲げ損失αの要求条件を、α≦0.1dB/100turnとできる(log10(0.1)≦-1)。これは陸上中長距離伝送を想定したITU-G.654.Eの規格に準拠する。曲げ損失α=0.1dBを満たす境界曲線において、RΔに関する係数をf,f,f,fとすると、RΔは次の数式24で示される。
【数24】
【0059】
図6は、曲げ損失の境界曲線における、半径比に関する係数のMFD依存性を示す図である。MFDをW[μm]とすると、係数の近似曲線は次の数式25で示される。
【数25】
【0060】
したがって、任意のMFDにおいて曲げ損失の要求条件α≦0.1dBを満たす領域は、次の数式26で示される。
【数26】
【0061】
[3.階段型純石英コア数モードファイバの変形例]
図7は、本開示の実施形態に係る階段型純石英コア数モードファイバの変形例を示す断面図である。図7では、光ファイバFBは、内側コア10及び外側コア20からなる組を4つ備えており、マルチコア化されている。
【0062】
図7に示す光ファイバFBにおいても、内側コア10は、石英ガラスにより構成され、外側コア20は、内側コア10より屈折率が低く、内側コア10を囲むように配置される。そして、クラッド30は、外側コア20より屈折率が低く、全ての外側コア20を囲むように配置される。図7において、光ファイバFBは、複数の内側コア10と、内側コア10と同数の複数の外側コア20を備えている。
【0063】
光ファイバFBが備える内側コア10及び外側コア20の個数は、図7に示す例に限定されない。光ファイバFBは、1以上の任意の個数の内側コア10及び外側コア20を備えるものであってもよい。光ファイバFBが備えるコアの1つずつを、内側コア10及び外側コア20によって構成することで、空間多重度を高めることが可能となる。
【0064】
[4.光伝送システムの構成]
図8は、本開示の実施形態に係る階段型純石英コア数モードファイバを用いた光伝送システムの構成を示す図である。光伝送システム100は、本開示の実施形態に係る光ファイバFB、送信機ST、モード合波器MT、光結合部FI、光抽出部FO、モード分離器MR、受信機SRを備える。
【0065】
送信機STは、信号光を生成する。送信機STは1以上の任意の台数であってもよい。
【0066】
モード合波器MTは、信号光を光波モードに変換する。モード合波器MTは1以上の任意の台数であってもよい。
【0067】
光結合部FIは、光ファイバFBの一端側に配置され、光波モードを含む入力光を、内側コア10及び外側コア20に入力する。光結合部FIは、モード合波器MTと接続され、各モード合波器MTの出力を光ファイバFBの、内側コア10及び外側コア20に導入するものであってもよい。その他、光結合部FIは、MUX(Multiplexer)であってもよい。MUXとは、複数の入力信号を一つの出力信号に変換する回路である。MUXは、複数の入力信号のうち、一つだけを選択して出力信号とする選択する信号は、選択信号と呼ばれる制御信号によって決定される。
【0068】
光抽出部FOは、光ファイバFBの他端側に配置され、内側コア10及び外側コア20からの出力光を抽出する。光抽出部FOは、モード分離器MRと接続され、光ファイバFBの内側コア10及び外側コア20の出力を、各モード合波器MTに導入するものであってもよい。その他、光抽出部FOは、DEMUX(Demultiplexer)であってもよい。DEMUXは、MUXの逆の機能を持ち、一つの入力信号を複数の出力信号に分配する回路である。DEMUXは、入力信号を、選択信号に応じて複数の出力に分配する。
【0069】
モード分離器MRは、出力光から光波モードを分離して信号光を取り出す。モード分離器MRは1以上の任意の台数であってもよい。
【0070】
受信機SRは、モード分離器MRからの信号光を受信する。受信機SRは複数台であってもよい。受信機SRは1以上の任意の台数であってもよい。
【0071】
[実施形態の効果]
以上詳細に説明したように、本実施形態に係る階段型純石英コア数モードファイバは、石英ガラスにより構成される内側コアと、内側コアより屈折率が低く、内側コアを囲む外側コアと、外側コアより屈折率が低く、全ての外側コアを囲むクラッドと、を備える。ここで、LP21又はLP02の実効遮断波長が1530nm以下であり、波長1550nmにおけるモードフィールド径が10~13μmである。そして、波長1625μm、曲げ径30mm、及び、曲げ回数100回における曲げ損失が2dB以下であり、レイリー散乱損失が0.150dB/km以下であり、モード間遅延差の絶対値が1ns/km以下である。
【0072】
ここで、内側コアと外側コアの半径比および比屈折率差比を、それぞれR、RΔとし、モードフィールド径をWとしたとき、
【数27】
を満たすものであってもよい。
【0073】
これにより、モード間遅延差(DMD)と伝搬損失を同時に低減することが可能な階段型純石英コア数モードファイバを提供することができる。特に、曲げ損失2dB以下とすることができ、ITU-G.654.Dの規格に準拠することができる。
【0074】
また、DMDが小さくなるため、信号処理側の負荷を低減することができる。光ファイバの両端に接続する装置の信号処理が小さくなるため、伝送装置のコストも低減することができる。また、伝搬損失が小さくなるため、信号がより遠くまで伝搬する。その結果、伝送装置、特に、信号を出す装置側のコストを抑制することができる。
【0075】
また、本実施形態に係る階段型純石英コア数モードファイバは、
【数28】
を満たすことで、レイリー散乱損失を0.150dB/km以下とするものであってもよい。これにより、波長1.55μmにおける既存のPSCFの損失値に準拠することができる。DMDと伝搬損失を同時に低減することが可能な階段型純石英コア数モードファイバを提供することができる。
【0076】
また、本実施形態に係る階段型純石英コア数モードファイバは、
【数29】
を満たすことで、モード間遅延差の絶対値を1ns/km以下とするものであってもよい。これにより、DMDと伝搬損失を同時に低減することが可能な階段型純石英コア数モードファイバを提供することができる。
【0077】
さらに、本実施形態に係る階段型純石英コア数モードファイバは、
【数30】
を満たすことで、曲げ損失を0.5dB以下とするものであってもよい。これにより、海底長距離伝送を想定したITU-G.654.Bの規格に準拠することができる。DMDと伝搬損失を同時に低減することが可能な階段型純石英コア数モードファイバを提供することができる。
【0078】
また、本実施形態に係る階段型純石英コア数モードファイバは、
【数31】
を満たすことで、モードフィールド径が10~12μmにおける曲げ損失を0.1dB以下とするものであってもよい。これにより、陸上中長距離伝送を想定したITU-G.654.Eの規格に準拠することができる。DMDと伝搬損失を同時に低減することが可能な階段型純石英コア数モードファイバを提供することができる。
【0079】
さらに、本実施形態に係る階段型純石英コア数モードファイバは、クラッドの径が126μm以下とするものであってもよい。これにより、階段型純石英コア数モードファイバは、既存のシングルモードファイバ(SMF)と同等の標準クラッド径となる。その結果、従来のコネクタやケーブル化技術等との親和性を高め、製造コストが肥大化してしまうことを抑制できる。
【0080】
また、本実施形態に係る階段型純石英コア数モードファイバは、複数の内側コアと、内側コアと同数の複数の外側コアを備え、クラッドは複数の外側コアを囲むものであってもよい。これにより、空間多重度を高めることができ、光ファイバ1本当たりの伝送容量を向上させることができる。同時に、DMDと伝搬損失を同時に低減することができる。
【0081】
さらに、本実施形態に係る光伝送システムは、本開示の階段型純石英コア数モードファイバと、信号光を生成する送信機と、信号光を、階段型純石英コア数モードファイバを伝搬する光波モードに変換するモード合波器と、階段型純石英コア数モードファイバの一端側に配置され、光波モードを含む入力光を内側コア及び外側コアに入力する光結合部と、階段型純石英コア数モードファイバの他端側に配置され、内側コア及び外側コアからの出力光を抽出する光抽出部と、出力光から光波モードを分離して信号光を取り出すモード分離器と、モード分離器からの信号光を受信する受信機と、を備える。
【0082】
これにより、DMDと伝搬損失を同時に低減することが可能な光伝送システムを提供することができる。また、DMDが小さくなるため、信号処理側の負荷を低減することができる。光ファイバの両端に接続する装置の信号処理が小さくなるため、伝送装置のコストも低減することができる。また、伝搬損失が小さくなるため、信号がより遠くまで伝搬する。その結果、伝送装置、特に、信号を出す装置側のコストを抑制することができる。
【0083】
以上、実施形態に沿って本開示の内容を説明したが、本開示はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。この開示の一部をなす論述および図面は本開示を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0084】
本開示はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本開示の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0085】
10 内側コア
20 外側コア
30 クラッド
100 光伝送システム
FB 光ファイバ(階段型純石英コア数モードファイバ)
FI 光結合部
FO 光抽出部
MR モード分離器
MT モード合波器
SR 受信機
ST 送信機

図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
図8