(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025023486
(43)【公開日】2025-02-17
(54)【発明の名称】速硬性混和材、速硬性セメント組成物及び速硬コンクリートの製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20250207BHJP
B28C 7/04 20060101ALI20250207BHJP
C04B 24/32 20060101ALI20250207BHJP
C04B 22/14 20060101ALI20250207BHJP
C04B 22/10 20060101ALI20250207BHJP
C04B 22/08 20060101ALI20250207BHJP
【FI】
C04B28/02
B28C7/04
C04B24/32 A
C04B22/14 A
C04B22/10
C04B22/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127636
(22)【出願日】2023-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】長塩 靖祐
【テーマコード(参考)】
4G056
4G112
【Fターム(参考)】
4G056AA06
4G056CB31
4G112MB00
4G112MB06
4G112MB12
4G112PA23
4G112PB05
4G112PB08
4G112PB10
(57)【要約】
【課題】本発明は、カルシウムアルミネート類を含有する速硬性混和材を施工現場で添加した場合でも、安定したコンクリートのワーカビリティーを得るために好適な速硬性混和材を提供するものである。
【解決手段】カルシウムアルミネート類、粉末状減水剤及び粉末状消泡剤を含有する速硬性混和材。さらに、アルカリ土類金属硫酸塩、アルカリ金属硫酸塩、アルカリ金属炭酸塩からなる群から選ばれる1種又は2種以上を含有する速硬性混和材。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウムアルミネート類、粉末状減水剤及び粉末状消泡剤を含有する速硬性混和材。
【請求項2】
さらに、アルカリ土類金属硫酸塩、アルカリ金属硫酸塩、アルカリ金属炭酸塩からなる群から選ばれる1種又は2種以上を含有する請求項1に記載の速硬性混和材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の速硬性混和材とセメントを含有する速硬性セメント組成物。
【請求項4】
生コンクリート工場で製造された、速硬性混和材を含まないベースコンクリートに、速硬コンクリートの施工現場にて、請求項1又は2に記載の速硬性混和材を添加し混練することを特徴とする速硬コンクリートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、速硬コンクリートに用いられるカルシウムアルミネート類を含有する速硬性混和材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートやモルタルのようなセメント組成物の硬化促進方法として、カルシウムアルミネート類を主成分とする速硬性混和材を添加し、短時間で強度を発現させる手法が提案されている。例えば、特許文献1では、カルシウムアルミネート類を主成分とする超速硬セメント、石膏、無機塩類に加えて、特定の粉末状セメント分散剤を含有するセメント混和材が提案されている。このセメント混和材を用いることによって、各種セメント組成物に速硬性、低収縮性を付与し、さらに作業性を向上させることができることが開示されている。しかしながら、特許文献1で実施されているのは、セメント92質量部に対して、混和材の配合量が8質量部と少ない場合であり、強度発現性も6時間で5N/mm2程度の速硬コンクリートである。近年は、より短時間での強度発現性の要求があり、少なくとも材齢6時間で20N/mm2以上の強度発現性が求められている。
【0003】
特許文献2においても、カルシウムアルミネート類を含み、石膏、炭酸リチウム、無水硫酸ナトリウム、粉末状分散剤を含有するセメント混和材が提案されている。本特許においては、セメント混和材に、吸湿性を有する無水硫酸ナトリウムを配合することによって、セメント混和材を長期保存後も、速硬性ならびに作業性の変化が小さくすることができ、結果として長期保存を可能として既調合用に適したセメント混和材が得られることが開示されている。特許文献2の実施例では、セメント混和材と普通ポルトランドセメントを混合し速硬セメントとした後、骨材と水とともに練り混ぜられたモルタル試料とし、速硬性、作業性及び長期保存性の評価がなされている。ここで作業性の評価は、J14ロート流下時間及びブリーディングであり、これはいわゆるグラウト組成物としての評価である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-39761号公報
【特許文献2】特開2006-335620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カルシウムアルミネート類を含有する急硬性のセメント混和材は、現場にてベースコンクリートに添加されることが多いが、施工現場における混練装置は、簡易なものが多く、生コン工場で使用されている混練装置に比べると必ずしも十分な混練能力を有していない場合が多い。このような混練装置を使用し、短時間での強度発現性を付与するため多量の速硬性混和材を添加して混練した場合、バッチ毎に流動性に変動が生じるなど安定したコンクリートのワーカビリティーが得られ難いという課題がみられる。
【0006】
本発明は、カルシウムアルミネート類を含有する速硬性混和材を施工現場で添加した場合でも、安定した速硬コンクリートのワーカビリティーを得るために好適な速硬性混和材を提供するものである。併せて、良好な強度発現性、凍結融解抵抗性を有する速硬コンクリートを製造できる速硬性混和材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討した結果、上記の課題を解決できる速硬性混和材が得られることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は以下の〔1〕~〔4〕を提供するものである。
〔1〕カルシウムアルミネート類、粉末状減水剤及び粉末状消泡剤を含有する速硬性混和材。
〔2〕さらに、アルカリ土類金属硫酸塩、アルカリ金属硫酸塩、アルカリ金属炭酸塩からなる群から選ばれる1種又は2種以上を含有する〔1〕の速硬性混和材。
〔3〕〔1〕又は〔2〕の速硬性混和材とセメントを含有する速硬性セメント組成物。
〔4〕生コンクリート工場で製造された、速硬性混和材を含まないベースコンクリートに、速硬コンクリートの施工現場にて、〔1〕又は〔2〕の速硬性混和材を添加し混練することを特徴とする速硬コンクリートの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、施工現場でカルシウムアルミネート類を含有する速硬性混和材を添加した場合でも、安定した速硬コンクリートのワーカビリティーを得ることができる。また、良好な強度発現性、凍結融解抵抗性を有する速硬コンクリートを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<速硬性混和材>
本発明における速硬性混和材は、カルシウムアルミネート類、粉末状減水剤及び粉末状消泡剤を含有する。特に、粉末状消泡剤を含有することを特徴とする。以下、詳細に説明する。
【0010】
(カルシウムアルミネート類)
本発明における速硬性混和材は、カルシウムアルミネート類を含有する。ここで、カルシウムアルミネート類とは、少なくともCaO及びAl2O3を主要成分とする化合物、固溶体、ガラス質物質又はこれらの混合物の総称である。このようなカルシウムアルミネート類としては、例えば、CaO・2Al2O3、CaO・Al2O3、12CaO・7Al2O3、3CaO・Al2O3等のカルシウムアルミネート、4CaO・Al2O3・Fe2O3、2CaO・Al2O3・Fe2O3等のカルシウムアルミノフェライト、3CaO・3Al2O3・CaF2、11CaO・7Al2O3・CaF2等のカルシウムフロロアルミネート、8CaO・Na2O・3Al2O3等のカルシウムナトリウムアルミネート、アウイン(3CaO・3Al2O3・CaSO4、)、アルミナセメント等が挙げられる。化学成分としては、急硬性付与及び流動性の確保の点から、CaO/Al2O3モル比として0.9~1.5であることが好ましい。ガラス質物質の含有率(ガラス化率)は特に限定されるものではないが、5~70質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましい。
【0011】
カルシウムアルミネート類の製造は、CaO原料、Al2O3原料、Fe2O3原料等を電気炉、キルン等の公知の装置を用いて、焼成あるいは溶融することによって行うことができる。原料としては、石灰石、ボーキサイト、リサイクル原料等が使用されるが、カルシウムアルミネート類には、これらの原料に起因する不純物成分が含まれていても構わない。不純物成分としては、例えば、SiO2、K2O、TiO2、MgO、SrO、MnO等が挙げられる。不純物成分の含有量としては、10質量%以下が望ましい。
【0012】
焼成物あるいは溶融物は、冷却後、ボールミル等の粉砕機を用いて粉砕され粉末とする。本発明で使用するカルシウムアルミネート類は、速硬性付与の点から、ブレーン比表面積が3000cm2/g以上であるものが好ましく、4000~8000cm2/gであるものが好ましい。また、カルシウムアルミネート類は、本発明の速硬性混和材中30~80質量%含有することが好ましく、40~70質量%含有することがより好ましい。
【0013】
(粉末状減水剤)
本発明における速硬性混和材は、粉末状減水剤を含有する。粉末状減水剤としては、メラミンスルホン酸系減水剤、ナフタレンスルホン酸系減水剤、ポリカルボン酸系減水剤等を使用することができる。これらの中で、初期強度発現性の点から、ポリカルボン酸系減水剤が好ましい。粉末状減水剤の含有量は、カルシウムアルミネート類100質量部に対して0.1~1.0質量部が好ましく、0.2~0.8質量部がより好ましく、0.25~0.65質量部がさらに好ましい。
【0014】
(粉末状消泡剤)
本発明における速硬性混和材は、粉末状消泡剤を含有する。粉末状消泡剤としては、ポリエーテル系、鉱物油系、エステル系、アミン系、アミド系、シリコーン系等が挙げられる。粉末状消泡剤を粉末状減水剤と併用することによって、混練後の速硬コンクリートの空気量を低下させ、安定した流動性(ワーカビリティー)を確保することができる。特に、カルシウムアルミネート類との相性や破泡性の点から、ポリエーテル系が好ましい。粉末状消泡剤の含有量は、カルシウムアルミネート類100質量部に対し、0.01~0.15質量部であることが好ましく、0.04~0.13質量部であることがより好ましく、0.05~0.1質量部であることがさらに好ましい。
【0015】
(その他の成分)
本発明における速硬性混和材は、さらに、アルカリ土類金属硫酸塩、アルカリ金属硫酸塩及びアルカリ金属炭酸塩からなる群から選ばれる1種又は2種以上を含有することが好ましい。これらの金属塩はカルシウムアルミネート類と併用することにより強度発現性を高めることができる。アルカリ土類金属硫酸塩としては、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸ストロンチウム等が挙げられる。アルカリ金属硫酸塩としては、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム等が挙げられる。アルカリ金属炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等が挙げられる。これら金属塩の中では、強度発現性の観点から、少なくとも硫酸カルシウムを用いることが好ましい。硫酸カルシウムとしては、天然石膏、副産される化学石膏等を用いることができる。石膏のブレーン比表面積は3000~12000cm2/gが好ましく、4000~10000cm2/gがより好ましい。
【0016】
アルカリ土類金属硫酸塩、アルカリ金属硫酸塩及びアルカリ金属炭酸塩からなる群から選ばれる1種又は2種以上の金属塩の含有量としては、強度発現性の点から、カルシウムアルミネート類100質量部に対し、1~200質量部が好ましい。さらに具体的には、アルカリ土類金属硫酸塩の含有量としては、カルシウムアルミネート類100質量部に対し、20~200質量部が好ましく、50~150質量部がより好ましい。アルカリ金属硫酸塩の含有量としては、カルシウムアルミネート類100質量部に対し、1~10質量部が好ましく、2~8質量部がより好ましい。アルカリ金属炭酸塩の含有量としては、カルシウムアルミネート類100質量部に対し、1~10質量部が好ましく、2~8質量部がより好ましい。。
【0017】
さらに、本発明における速硬性混和材には、凝結遅延剤を含むことができる。凝結遅延剤は、速硬コンクリートの水和反応を抑制し、可使時間を確保する働きをする。凝結遅延剤としては、セメント組成物に通常使用されているものを使用することができるが、短時間強度発現性の点より、オキシカルボン酸またはその塩であることが好ましい。オキシカルボン酸及びその塩としては、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、ヘプトン酸及びそれらのナトリウム塩又はカリウム塩等を挙げることができる。これらのうち1種又は2種以上を使用することができる。凝結遅延剤の配合量は、カルシウムアルミネート類100質量部に対し、0.1~10質量部が好ましく、特に0.2~5質量部が好ましい。
【0018】
本発明の速硬性混和材には、本発明の効果を実質的に阻害しない範囲で、更にセメントやコンクリートに使用される各種添加剤を含んでもかまわない。このような添加剤としては、例えば、AE剤、増粘剤、収縮低減剤、膨張材等が挙げられる。
【0019】
<速硬性セメント組成物>
本発明の速硬性セメント組成物は、セメントと上記速硬性混和材とを含有してなる。速硬性混和材の含有量としては、セメント100質量部に対して、15~60重量部が好ましく、20~50質量部がより好ましい。ここで、本発明におけるセメント組成物とは、セメント、セメントペースト、モルタル及びコンクリートを含む組成物の総称である。本発明における速硬性混和材を用いることによって、良好な初期強度発現性に有する速硬モルタル、速硬コンクリートを製造することができる。
【0020】
本発明で使用するセメントは、普通、早強、超早強、中庸熱、低熱等の各種ポルトランドセメントや、高炉セメント、フライアッシュセメント等を含む混合セメント、エコセメント等を用いることができる。中でも、強度発現性や経済性の観点から、普通ポルトランドセメント又は早強ポルトランドセメントが好ましい。
【0021】
<速硬コンクリートの製造方法>
速硬コンクリートの製造方法は、特に限定されるものではなく、一般のコンクリートを製造するのと同じように、ポルトランドセメント、骨材、水及び化学混和剤等を所定の割合で配合し、これに速硬性混和材を加えて、通常の混練装置を用いて製造することができる。速硬性混和材を含むすべての材料を一緒に混練することで製造することもできるが、まずベースコンクリートを製造した後、速硬性混和材を添加して混練することで製造することが好ましい。特に短時間で高強度を発現させるために速硬性混和材を多量に配合する場合は、施工現場で速硬性混和材を添加して混練することが望ましい。
【0022】
具体的には、生コンクリート工場でベースコンクリート(速硬性混和材を含まない)を製造した後、トラックアジテータで施工現場へ搬送し、施工現場にて、速硬性混和材をベースコンクリートへ添加し混練する。この際、併せて所定量の凝結遅延剤を添加することができる。生コンクリート工場で製造されるベースコンクリートは、JIS規格のレディミクストコンクリートであることが推奨される。施工現場での混練には、慣用のミキサを使用することができる。例えば、傾胴ミキサ、二軸強制練りミキサ等が挙げられる。また、トラックアジテータのタンク内に速硬性混和材を投入し、混練することもできる。
【0023】
また、使用する骨材としては、細骨材、粗骨材が挙げられる。これらの骨材は特に限定されるものではなく、一般にコンクリートで使用される骨材を用いることができる。細骨材としては、川砂、山砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂またはこれらの混合物等を使用することができる。また、粗骨材としては、川砂利、山砂利、陸砂利、砕石またはこれらの混合物等を使用することができる。
【0024】
骨材の配合量は、ひび割れ防止、材料分離防止の点から、セメントと速硬性混和材の合計100質量部に対して、200~700質量部が好ましく、200~600質量部がより好ましい。また、細骨材と粗骨材を併用する場合の細骨材率は、5~60%が好ましい。コンクリート中の骨材の単位量としては、細骨材、粗骨材いずれも、好ましくは500~1100kg/m3、より好ましくは600~1000kg/m3である。
【0025】
使用する水としては、特に限定されるものではなく、水道水等を使用することができる。上記セメント混練物において、セメントと速硬性混和材の合計100質量部に対する水の配合比は、好ましくは30~100質量部、より好ましくは40~70質量部である。
【0026】
速硬コンクリートには、さらに必要に応じて、凝結遅延剤を添加することができる。凝結遅延剤が速硬性混和材に配合されている場合であっても、施工現場の温度条件によって、あるいは施工現場の状況によって、可使時間をより長く設定したいとの要求がなされる場合がある。この場合使用される凝結遅延剤としては、セメント組成物に通常使用されているものであればいずれのものも使用することができるが、強度発現性の点から、オキシカルボン酸またはその塩であることが好ましい。オキシカルボン酸及びその塩としては、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、ヘプトン酸及びそれらのナトリウム塩又はカリウム塩等を挙げることができる。これらのうち1種又は2種以上を使用することができる。この場合の凝結遅延剤の添加量は、セメントと速硬性混和材の合計量100質量部に対し、0.1~2質量部が好ましく、0.2~1質量部がより好ましい。
【0027】
速硬コンクリートには、上記以外にも、本発明の特長が損なわない程度において、通常のコンクリートにも用いられる各種混和剤(材)を添加することできる。例えば、AE剤、減水剤、増粘剤、膨張材、収縮低減剤、セメント混和用ポリマー、防水材、防錆剤、保水剤、顔料、白華防止剤、撥水剤、各種繊維、シリカフュームやフライッシュ等のポゾラン微粉末、高炉スラグ微粉末、石灰石微粉末等の石粉等が挙げられる。
【実施例0028】
以下に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0029】
<カルシウムアルミネートの作製>
使用原料は石灰石(CaO含有率56質量%、Al2O3、MgO及びSiO2含有率はいずれも0.5質量%未満)とボーキサイト(Al2O3含有率87質量%、Fe2O3含有率1質量%、SiO2含有率5質量%、CaO及びMgO含有率は何れも0.5質量%未満)を用い、CaOとAl2O3の含有モル比が1.2となるように調合した。調合した混合物は、電気炉にて最高温度1500(±50℃)で3時間焼成した。最高温度から炉外に取出し、直ぐに水中に浸し、約5分後に水中から回収して200℃の乾燥機で乾燥させた。得られたカルシウムアルミネート[CA]は、CaO・Al2O3を主成分とする化合物であり、粉末エックス線回折による内部標準法により測定したガラス化率は15%であった。この焼成物をミルで粉砕し、ブレーン比表面積を約5000cm2/gに調整した。
【0030】
<速硬性混和材の作製>
作製したカルシウムアルミネート類と下記に示す使用材料(a)~(e)を、レーディゲミキサを用いて混合し、速硬性混和材[ADF]を作製した。作製した速硬性混和材を表1に示す。
【0031】
<使用材料>
(a)硫酸カルシウム:II型無水石膏(市販品)、ブレーン比表面積7000cm2/g
(b)炭酸リチウム:試薬(関東化学社製)
(c)硫酸ナトリウム:試薬(関東化学社製)
(d)粉末状減水剤:ポリカルボン酸系粉末減水剤
(e)粉末状消泡剤:ポリエーテル系粉末消泡剤
【0032】
【0033】
<速硬コンクリートの製造>
まず、下記に示す材料(f)~(l)を用いてベースコンクリートを製造した。このベースコンクリートに速硬性混和材と凝結遅延剤(水溶液として調製)を添加し、傾胴ミキサにて混練し、速硬コンクリートとした。速硬コンクリートの配合を表2に示す。ベースコンクリートには、AE減水剤を添加し、目標スランプ15±2cm、空気量4.5±1.5%となるよう調製した。凝結遅延剤の添加量は、凝結時間が60分以上となるよう調整した。
【0034】
(f)セメント[C]:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)、密度3.16g/cm3
(g)細骨材[S]:静岡県産山砂、密度2.58g/cm3
(h)粗骨材[G]:茨城県産砕石、密度2.66g/cm3
(i)水[W]:上水道水
(j)AE減水剤[Ad]:AE減水剤標準型(I種)
(k)凝結調整剤[R]:クエン酸(試薬、関東化学社製)
(l)液体消泡剤:ポリアルキレングリコール誘導体
【0035】
【0036】
<試験方法>
評価試験の方法を以下に示す。
(1)スランプ
JIS A 1101「コンクリートのスランプ試験方法」に準拠して試験した。
(2)空気量の測定
JIS A 1128「フレッシュコンクリートの空気量の圧力による試験方法」に準拠して試験した。
(3)圧縮強度試験
JIS A 1108「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準拠して、材齢6時間、28日の圧縮強度を試験した。養生温度は試験直前まで20℃とした。
(4)凍結融解抵抗性試験
JIS A 1148「コンクリートの凍結融解試験方法」に準拠して行った。試験サイクルは300サイクルまでとした。
【0037】
(実施例1)
まず、速硬性混和材への消泡剤添加効果を検討した。ベースコンクリートを製造後、速硬性混和材及び凝結遅延剤(セメント100質量部に対して1質量部)を添加した。ベースコンクリートのスランプは15.5cm、空気量は5.5%であった。1)消泡剤無添加の速硬性混和材(ADF0)を使用した場合、2)消泡剤を添加した速硬性混和材(ADF1)を使用した場合、3)消泡剤無添加の速硬性混和材(ADF0)を使用し、コンクリートに液体消泡剤を別に添加(CA100質量部に対して0.075質量部)した場合について、それぞれ3回試験を行い、速硬コンクリートのフレッシュ性状を評価した。結果を表3に示す。速硬コンクリートの目標スランプは20±2.5cm、空気量2.0±1.5%とした。
【0038】
【0039】
消泡剤無添加の速硬性混和材を用いた場合(No.1-1)、速硬コンクリートの空気量は大きく増加し、スランプもばらつきが大きく、目標とするスランプから外れるケースがみられた。速硬性混和材とは別に液体消泡剤をコンクリートに添加した場合(No.1-3)、空気量の増加は抑えられたものの、ばらつきがみられて目標とする空気量にならないケースがみられた。また、スランプもばらつきを抑えることができず、目標スランプから外れるケースがみられた。さらに、液体消泡剤を用いた場合の速硬コンクリートの相対動弾性係数は平均で68%と低く、凍結融解抵抗性が良好とはいえない結果であった。
一方、消泡剤を添加した速硬性混和材を使用した場合(No.1-2)、空気量及びスランプのばらつきは小さく、3回とも目標とする空気量、スランプとすることができた。これらの結果より、粉末状消泡剤を配合した速硬性混和材を用いることにより、空気量、スランプのばらつきを抑えることができ、安定したワーカビリティーの速硬コンクリートが得られることが分かった。
【0040】
(実施例2)
速硬性混和材に配合する粉末状減水剤及び粉末状消泡剤の含有量を変えた試験を行った。ベースコンクリートに添加する凝結遅延剤の添加量は実施例1と同様にセメント100質量部に対して1質量部としたが、No.2-7のみ0.8質量部とした。試験結果を表4に示す。粉末状減水剤と粉末状消泡剤とが適量配合された速硬性混和材を用いることで、良好なワーカビリティーを有し、強度発現性、相対動弾性係数(凍結融解抵抗性)も良好な速硬コンクリートが得られた。
【0041】