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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002349
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】車両の前部構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 5/02 20060101AFI20241226BHJP
   B60R 7/06 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
B60R5/02
B60R7/06 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102459
(22)【出願日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】古谷 啓介
(72)【発明者】
【氏名】石塚 耕三
(72)【発明者】
【氏名】藤井 英明
(72)【発明者】
【氏名】平岩 愛
(72)【発明者】
【氏名】六車 美咲
【テーマコード(参考)】
3D022
【Fターム(参考)】
3D022BB01
3D022BC16
3D022CA08
3D022CB01
3D022CC03
3D022CD27
(57)【要約】
【課題】フロントトランクを備える車両の前部構造において、利便性の向上を図る。
【解決手段】車両は、フロントトランク12とグローブボックス11と連通部13とを備える。フロントトランク12は、車両の前部に配され、荷物を収容可能な収容空間12aを有する。グローブボックス11は、車両の前部に配され、荷物の出し入れが可能な収容空間11aを有するとともに、開口を開閉可能な蓋11bを有する。連通部13は、フロントトランク12の収容空間12aとグローブボックス11の収容空間11aとを連通する連通空間13aを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室よりも前方の車両前部に配され、荷物を収容可能なフロント収容空間を有するフロントトランクと、
前記車室の前部に配され、当該車室側から荷物の出し入れが可能な車室側収容空間を有するとともに、前記車室側収容空間における前記車室側の開口に対して開閉可能な蓋を有する車室側収容部と、
前記フロント収容空間と前記車室側収容空間とを連通する連通空間を有する連通部と、
を備える、
車両の前部構造。
【請求項2】
前記フロントトランクの内底面および前記連通部の内底面の少なくとも一部は、前記車両の前後方向における前方側へと行くのに従って高さが漸次低くなるように傾斜している、
請求項1に記載の車両の前部構造。
【請求項3】
前記フロントトランクの内底面における前端部から前記連通部の内底面における後端部までの領域の内の前部に位置する前部領域は、前記フロントトランクの内底面における前記前端部側へと行くのに従って高さが漸次低くなるように傾斜しており、
前記フロントトランクの内底面における前端部から前記連通部の内底面における後端部までの領域の内の前記前部領域を除く残部領域は、前記連通部の内底面における前記後端部側へと行くのに従って高さが漸次低くなるように傾斜している、
請求項1に記載の車両の前部構造。
【請求項4】
前記車室側収容部の内底面は、前方部分を含む少なくとも一部が、後方側へと行くのに従って高さが漸次低くなるように傾斜している、
請求項1に記載の車両の前部構造。
【請求項5】
前記フロントトランクにおける前記フロント収容空間を囲む壁部、および前記連通部における前記連通空間を囲む壁部の一部は、他の部分に比べて漸弱に形成された脆弱部を有する、
請求項1から請求項4の何れかに記載の車両の前部構造。
【請求項6】
前記フロントトランクは、上部に荷物の出し入れが可能な開口部を有するとともに、前記開口部に対して開閉可能な蓋を有する、
請求項1から請求項4の何れかに記載の車両の前部構造。
【請求項7】
前記フロントトランクにおける前記フロント収容空間を囲む壁部の内の後壁は、上部から下部へと行くのに従って漸次後方側に後退するように傾斜している、
請求項1から請求項4の何れかに記載の車両の前部構造。
【請求項8】
前記連通部の内底面は、当該内底面の他の部分に比べて上方に突出した複数の凸部を有する、
請求項1から請求項4の何れかに記載の車両の前部構造。
【請求項9】
前記車室側収容部は、インストルメントパネルに設けられたグローブボックスである、
請求項1から請求項4の何れかに記載の車両の前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、前部にトランクが設けられてなる車両が開示されている。特許文献1に開示のトランクは、樹脂材料により形成されており、車両前部におけるボンネットの下部に配置されている。ユーザは、ボンネットを開けてトランクに対して荷物の出し入れを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第102020106560号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示のトランクでは、トランクにアクセスしようとする場合に常に車両を停止させてボンネットを開ける必要があり、ユーザの利便性という観点から改善が必要である。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、フロントトランクを備える車両の前部構造において、ユーザの利便性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る車両の前部構造は、フロントトランクと、車室側収容部と、連通部とを備える。前記フロントトランクは、車両の車室よりも前方の車両前部に配され、荷物を収容可能なフロント収容空間を有する。前記車室側収容部は、前記車室の前部に配され、当該車室側から荷物の出し入れが可能な車室側収容空間を有するとともに、前記車室側収容空間における前記車室側の開口に対して開閉可能な蓋を有する。前記連通部は、前記フロント収容空間と前記車室側収容空間とを連通する連通空間を有する。
【0007】
上記態様に係る車両の前部構造では、フロントトランクのフロント収容空間と車室側収容部の車室側収容空間とが、連通部によって連通されているので、車室側からもフロントトランクへと荷物を収容することができる。これより、乗員が車両から降車することなく、フロントトランクに対して荷物を収容することができ、高い利便性を実現することができる。
【0008】
また、上記態様に係る車両の前部構造では、蓋を有する車室側収容部をフロントトランクとの連通対象としているので、フロントトランクから車室に向けて臭いが漏れ出したり、荷物が車室側に零れ落ちたりすることが抑制可能である。
【0009】
上記態様に係る車両の前部構造において、前記フロントトランクの内底面および前記連通部の内底面の少なくとも一部は、前記車両の前後方向における前方側へと行くのに従って高さが漸次低くなるように傾斜していてもよい。
【0010】
上記態様に係る車両の前部構造では、フロントトランクの内底面および連通部の内底面の少なくとも一部が、前方側に行くほど低くなるように傾斜しているので、車室側収容部から連通部へと収容された荷物がフロントトランクへと移動し易くすることができる。
【0011】
なお、傾斜するように内底面が設けられているのが上記内底面の一部だけである場合には、当該傾斜する部分と傾斜していない部分との分岐点が、前方から衝撃荷重が加わった際に折れたり曲がったりするきっかけ箇所となる。即ち、内底面が傾斜している部分と傾斜していない部分とで角ができるため、当該箇所が衝撃荷重により折れたり曲がったりする。よって、前突時においてフロントトランクや連通部の各壁部が車室内に侵入するのを抑制することができる。
【0012】
上記態様に係る車両の前部構造において、前記フロントトランクの内底面における前端部から前記連通部の内底面における後端部までの領域の内の前部に位置する前部領域は、前記フロントトランクの内底面における前記前端部側へと行くのに従って高さが漸次低くなるように傾斜していてもよい。また、上記態様に係る車両の前部構造において、前記フロントトランクの内底面における前端部から前記連通部の内底面における後端部までの領域の内の前記前部領域を除く残部領域は、前記連通部の内底面における前記後端部側へと行くのに従って高さが漸次低くなるように傾斜していてもよい。
【0013】
上記態様に係る車両の前部構造では、上記前部領域が前端部側に向けて下り傾斜となるように形成され、上記残部領域が後端部側に向けて下り傾斜となるように形成されているので、前部領域と残部領域との分岐点よりも前方に送られた荷物はフロントトランクへと送られ易くすることができる。
【0014】
また、上記態様に係る車両の前部構造では、前部領域と残部領域との分岐点よりも後方に荷物を配しておく場合には、車室側から当該荷物を取り出すのを容易とすることができる。
【0015】
さらに、上記態様に係る車両の前部構造において、前部領域と残部領域との分岐点で内底面同士の間に角ができる。よって、上記態様においても、上記同様、前突時においてフロントトランクや連通部の各壁部が車室内に侵入するのを抑制することができる。
【0016】
上記態様に係る車両の前部構造において、前記車室側収容部の内底面は、前方部分を含む少なくとも一部が、後方側へと行くのに従って高さが漸次低くなるように傾斜していてもよい。
【0017】
上記態様に係る車両の前部構造では、車室側収容部の内底面が、後方側(車室側)へと行くのに従って高さが低くなるように傾斜しているので、車室側収容部内に留めておきたい荷物が連通部からフロントトランクへと移動してしまうのを抑制することができる。
【0018】
上記態様に係る車両の前部構造において、前記フロントトランクにおける前記フロント収容空間を囲む壁部、および前記連通部における前記連通空間を囲む壁部の一部は、他の部分に比べて漸弱に形成された脆弱部を有してもよい。
【0019】
上記態様に係る車両の前部構造では、フロントトランクの壁部および連通部の壁部の一部が脆弱部を有するように形成されているので、前突時に前方から衝撃力を受けた場合に衝撃力を吸収できるとともに、フロントトランクや連通部の各壁部が車室内に侵入するのを抑制することができる。即ち、前突時に壁部に設けられた脆弱部をきっかけとしてフロントトランクや連通部が変形・破損することで、衝撃力を吸収するとともに、フロントトランクや連通部の各壁部が車室内に侵入するのを抑制することができる。
【0020】
なお、脆弱部としては、例えば、壁部に切欠き部を設けたり、壁部同士が角度を有して(面一とならないように)突き合わされた構造を採用したりすることで形成することができる。
【0021】
上記態様に係る車両の前部構造において、前記フロントトランクは、上部に荷物の出し入れが可能な開口部を有するとともに、前記開口部に対して開閉可能な蓋を有してもよい。
【0022】
上記態様に係る車両の前部構造では、フロントトランクに蓋が設けられているので、走行中の振動などでフロント収容空間内の荷物が外部に飛び出たり、フロント収容空間内に埃や雨水などが侵入したりするのを抑制することができる。
【0023】
上記態様に係る車両の前部構造において、前記フロントトランクにおける前記フロント収容空間を囲む壁部の内の後壁は、上方側から下方側へと行くのに従って漸次後方側に後退するように傾斜していてもよい。
【0024】
上記態様に係る車両の前部構造では、フロントトランクの後壁が、下部に行くほど後方側に後退するように傾斜しているので、フロントトランクの後方に補機などが配される場合においても当該補機を視認すること、および当該補機にアクセスすることが容易となる。
【0025】
上記態様に係る車両の前部構造において、前記連通部の内底面は、当該内底面の他の部分に比べて上方に突出した複数の凸部を有してもよい。
【0026】
上記態様に係る車両の前部構造では、連通部の内底面に複数の凸部が設けられているので、連通部の内底面に対して荷物を移動させる場合に摺動抵抗を小さく抑えることができる。よって、上記態様に係る車両の前部構造では、連通部を介してフロントトランクへと荷物をスムーズに移動させることが可能である。
【0027】
また、フロントトランクに連通する連通部には、埃や水などが連通部に入り込む場合もあるが、当該埃などは凸部上には溜まり難い。よって、連通部を移動する荷物に埃や水などが付着するのを抑制することができる。
【0028】
上記態様に係る車両の前部構造において、前記車室側収容部は、インストルメントパネルに設けられたグローブボックスであってもよい。
【0029】
上記態様に係る車両の前部構造では、既存のグローブボックスを車室側収容部としているので、新たな収容部を設けなくてもよい。そして、グローブボックスは従前から蓋を有するので、収容部の開口にわざわざ蓋を取り付けなくてもよい。よって、上記態様に係る車両の前部構造を採用する場合には、大幅に車両の設計変更をすることなく、車室とフロントトランクとの間の連通構造を構成することが可能である。
【発明の効果】
【0030】
上記の各態様に係る車両の前部構造では、ユーザの利便性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】第1実施形態に係る車両の前部構造を示す模式図である。
図2図1のII-II線断面を示す断面図である。
図3】第2実施形態に係る車両の前部構造の一部を示す断面図である。
図4】第3実施形態に係る車両の前部構造の一部を示す断面図である。
図5】車両前突時におけるフロントトランクと連通部との変形状態を示す断面図である。
図6】第4実施形態に係る車両の前部構造の一部を示す断面図である。
図7】第5実施形態に係る車両の前部構造の一部を示す断面図である。
図8】第6実施形態に係る車両の前部構造の一部を示す斜視図である。
図9】第7実施形態に係る車両の前部構造の一部を示す斜視図である。
図10】第8実施形態に係る車両の前部構造の一部を示す斜視図である。
図11】第9実施形態に係る車両の前部構造の一部を示す断面図である。
図12】第10実施形態に係る車両の前部構造の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明を例示的に示すものであって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0033】
[第1実施形態]
1.車両1の前部構造の概略
第1実施形態に係る車両1の前部構造に概略について、図1を用いて説明する。
【0034】
図1に示すように、本実施形態に係る車両1は、ダッシュパネル1cよりも前方の前部1aにフロントトランク12を備える。フロントトランク12は、ボンネット下に配されており、荷物の収容が可能な空間を有する。
【0035】
車両1は、ダッシュパネル1cよりも後方の車室1bにインストルメントパネル10を有する。インストルメントパネル10は、車室1bの前方部分において、左右方向に延びるように配されている。インストルメントパネル10には、助手席側部分1dの前方となる部分にグローブボックス11が設けられている。
【0036】
グローブボックス11は、車室1b側から荷物の出し入れが可能に構成されている。本実施形態のグローブボックス11は、車室側収容部に該当する。
【0037】
車両1は、フロントトランク12とグローブボックス11との間を繋ぐ連通部13をさらに備える。即ち、本実施形態に係る車両1では、フロントトランク12の収容空間とグローブボックス11の収容空間とが連通部13により連通されている。
【0038】
2.フロントトランク12およびグローブボックス11と、連通部13との接続構成
フロントトランク12およびグローブボックス11と、連通部13との接続構成について、図2を用いて説明する。
【0039】
図2に示すように、フロントトランク12は、上方側に開口部12bを有するとともに、後壁12dの下方側に後開口部12eを有する。フロントトランク12の収容空間12aに対しては、開口部12bから荷物の出し入れが可能である。
【0040】
なお、本実施形態では、フロントトランク12の内底面12cは、略水平面で構成されている。内底面12cを水平面で構成することにより、内底面12c上に載置された荷物が前後左右に移動し難い。
【0041】
グローブボックス11は、前方側に前開口部11dを有するとともに、後方側に後開口部11eを有する。この内、後開口部11eは、蓋11bにより開閉可能となっている。グローブボックス11の収容空間11aは、車両1の前後方向において、前開口部11dと後開口部11eとの間に形成されている。グローブボックス11の内底面11aは、略水平面で構成されている。
【0042】
連通部13は、前後方向に延びる連通空間13aを有し、周囲が壁部で覆われた構成を有する。連通部13の連通空間13aは、前方側でフロントトランク12の収容空間12aに対して後開口部12eで接続され、後方側でグローブボックス11の収容空間11aに対して前開口部11dで接続されている。連通部13の内底面13bは、略水平面で構成されており、フロントトランク12の内底面12cおよびグローブボックス11の内底面11cのそれぞれと段差なく接続されるように構成されている。
【0043】
3.効果
本実施形態に係る車両1の前部構造では、フロントトランク12の収容空間12aとグローブボックス11の収容空間11aとが、連通部13の連通空間13aによって接続されているので、車室1b側からもフロントトランク12へと荷物を収容することができる。これより、乗員が車両1から降車することなく、フロントトランク12に対して荷物の出し入れをすることができ、高い利便性を実現することができる。
【0044】
また、車両1では、蓋11bを有するグローブボックス11をフロントトランク12との連通対象としているので、フロントトランク12から車室1bに向けて臭いが漏れ出したり、荷物が車室1b側に零れ落ちたりすることが抑制可能である。
【0045】
また、車両1では、グローブボックス11をフロントトランク12との連通対象としており、車室1b側に連通対象としての新たな収容部を設けないこととしている。
また、グローブボックス11は従前から蓋11bを有するので、収容部の開口にわざわざ蓋を取り付けなくてもよい。よって、車両1では、大幅に設計変更することなく、車室1bとフロントトランク12との間の連通構造を構成することが可能である。
【0046】
従って、本実施形態に係る車両1の前部構造では、車両1の前部1aに設けられたフロントトランク12に対して車室1b内からも荷物を収容することができる。
【0047】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る車両の前部構造について、図3を用いて説明する。図3では、車両の前部構造の内の一部を抜き出して図示している。図3で図示を省略している部分については、上記第1実施形態と同じである。また、図3でも上記第1実施形態と同じ構成を有する部分については、同じ符号を付している。そして、上記第1実施形態と同じ構成を有する部分についての重ねての説明を省略する。
【0048】
図3に示すように、本実施形態に係る車両でも、フロントトランク22と、グローブボックス11と、連通部33とを備える。フロントトランク22は、上方側に開口部22bを有するとともに、荷物の収容が可能な収容空間22aを有する。本実施形態のフロントトランク22は、内底面22cが傾斜するように形成されている。具体的に、内底面22cは、フロントトランク22の後方側から前方側へと行くのに従って高さが漸次低くなるように傾斜している。
【0049】
連通部33は、フロントトランク22の収容空間22aとグローブボックス11の収容空間11aとを連通する連通空間33aを有する。連通部33の内底面33bは、グローブボックス11との接続側からフロントトランク22との接続側へと行くのに従って高さが漸次低くなるように傾斜している。
【0050】
なお、連通部33の内底面33bは、フロントトランク22の内底面22cおよびグローブボックス11の内底面11cのそれぞれと段差なく接続されるように構成されている。
【0051】
本実施形態に係る車両の前部構造は、フロントトランク22の内底面22cおよび連通部33の内底面33bが傾斜している点を除き、上記第1実施形態と同様の構成を有するので、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0052】
また、本実施形態に係る車両では、フロントトランク22の内底面22cおよび連通部33の内底面33bが、前方側に行くのに従って漸次低くなるように傾斜しているので、グローブボックス11から連通部33へと送られた荷物が内底面33bを摺動してフロントトランク22の前方側へと移動し易くすることができる。
【0053】
なお、本実施形態では、フロントトランク22の内底面22cの全体、および連通部33の内底面33bの全体について傾斜していることとしたが、それらの内底面22c,33bの一部が傾斜していても、荷物の移動を容易とすることができる。
【0054】
[第3実施形態]
第3実施形態に係る車両の前部構造について、図4および図5を用いて説明する。図4では、車両の前部構造の内の一部を抜き出して図示している。図4で図示を省略している部分については、上記第1実施形態と同じである。また、図4でも上記第1実施形態および上記第2実施形態と同じ構成を有する部分については、同じ符号を付している。
【0055】
図4に示すように、本実施形態に係る車両でも、上記第2実施形態と同様に、前方ほど高さが低くなるように形成された内底面22cを有するフロントトランク22を備える。そして、その他の構成については、上記第1実施形態と同様である。
【0056】
本実施形態に係る車両の前部構造は、フロントトランク22の内底面22cが傾斜している点を除き、上記第1実施形態と同様の構成を有するので、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0057】
また、本実施形態に係る車両の前部構造は、上記第2実施形態と同様に、フロントトランク22の内底面22cが傾斜しているので、車両が走行することによる振動などでフロントトランク22に収容された荷物が連通部13へと不所望に移動してしまうのを抑制することができる。
【0058】
さらに、本実施形態では、フロントトランク22の内底面22cが傾斜し、且つ、連通部13の内底面13bが略水平面で構成されているので、フロントトランク22の底壁と連通部13の底壁との当接箇所で互いに角度を有した状態となっている。このため、図5に示すように、前突時などにフロントトランク22に対して後ろ向きの衝撃力が加わった場合に、フロントトランク22の底壁22dと連通部13の底壁13cとの突き合せ箇所を他の箇所に比べて低剛性な脆弱部とすることができる。即ち、前突時などにおいても、フロントトランク22の底壁22dの端面22eと連通部13の底壁13cの端面13dとの突き合せ状態が解除され、端面22eおよび端面13dが上方を向くように底壁22d,13cの突き合せ箇所近傍が変形または破損する。このため、本実施形態に係る車両の前部構造では、前突時においても後ろ向きの衝撃力によって連通部13が後方に移動して車室1bへと進入するような事態を抑制することができる。
【0059】
なお、本実施形態では、フロントトランク22の底壁22dと連通部13の底壁13cとが突き合わされた構造を採用したが、フロントトランク22の底壁が互いに突き合わされた複数枚の壁部で構成されてもよいし、連通部13の底壁が互いに突き合わされた複数枚の壁部で構成されてもよい。このような構成を採用する場合にも、前突時に突き合わせられた端部同士が図5に示すように突き合せ状態が解除されることにより衝撃力の吸収が図られ、壁部が車室1b内に進入するのを抑制することが可能となる。
【0060】
[第4実施形態]
第4実施形態に係る車両の前部構造について、図6を用いて説明する。図6では、車両の前部構造の内の一部を抜き出して図示している。図6で図示を省略している部分については、上記第1実施形態と同じである。また、図6でも上記第1実施形態から上記第3実施形態と同じ構成を有する部分については、同じ符号を付している。
【0061】
図6に示すように、本実施形態に係る車両では、上記第2実施形態と同様に、前方ほど高さが低くなるように形成された内底面22cを有するフロントトランク22を備える。本実施形態では、連通部43の内底面43bの高さが後方ほど低くなるように傾斜している。そして、連通部43の連通空間43aによって、フロントトランク22の収容空間22aとグローブボックス11の収容空間11aとが連通されている。
【0062】
本実施形態に係る車両の前部構造は、連通部43の内底面43bが傾斜している点を除き、上記第2実施形態と同様の構成を有するので、上記第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0063】
また、本実施形態では、フロントトランク22の内底面22cが前方側ほど低くなるように傾斜しており、且つ、連通部43の内底面43bが後方側ほど低くなるように傾斜しているので、フロントトランク22の底壁と連通部43の底壁との当接箇所で互いに角度を有した状態となっている。このため、上記第3実施形態で説明したように、前突時などにフロントトランク22に対して後ろ向きの衝撃力が加わった場合に、フロントトランク22の底壁と連通部43の底壁との突き合せ箇所を低剛性な漸弱部とすることができ、後ろ向きの衝撃力によって連通部43が後方に移動して車室1bへと進入するような事態を抑制することができる。
【0064】
さらに、本実施形態に係る車両の前部構造では、フロントトランク22の内底面22cが前端部側に向けて下り傾斜となるように形成され、連通部43の内底面43bが後端部側に向けて下り傾斜となるように形成されているので、内底面22cと内底面43bとの分岐点よりも前方に送られた荷物はフロントトランク22へと送られ易くすることができる。また、連通部43内に荷物を配しておく場合には、車室1b側から当該荷物を取り出すのを容易とすることができる。
【0065】
なお、本実施形態では、フロントトランク22の内底面22cの全体が後端部側に向けて上り傾斜となるように形成され、連通部43の内底面43bの全体が後端部側に向けて下り傾斜となるように形成された構成を採用したが、上り傾斜と下り傾斜との分岐点については必ずしもフロントトランク22と連通部43との境界部分に合致させる必要はない。例えば、フロントトランク22の前後方向の中程部分に上り傾斜と下り傾斜との分岐点を設けてもよいし、連通部43の前後方向の中程部分に上り傾斜と下り傾斜との分岐点を設けてもよい。
【0066】
[第5実施形態]
第5実施形態に係る車両の前部構造について、図7を用いて説明する。図7では、車両の前部構造の内の一部を抜き出して図示している。図7で図示を省略している部分については、上記第1実施形態と同じである。また、図7でも上記第1実施形態と同じ構成を有する部分については、同じ符号を付している。
【0067】
図7に示すように、本実施形態に係る車両でも、フロントトランク32と、グローブボックス11と、連通部13とを備える。フロントトランク32は、上方側に開口部32bを有するとともに、荷物の収容が可能な収容空間32aを有する。なお、本実施形態では、フロントトランク32の内底面32cが上記第1実施形態と同様に略水平面で構成されることとしたが、上記第2実施形態から上記第4実施形態などと同様に傾斜させてもよい。
【0068】
本実施形態のフロントトランク32は、開口部32bに対して開閉可能な蓋32dを有する。ユーザは、蓋32dを開けて荷物を収容空間32aに出し入れすることができる。なお、蓋32dをボンネットにワイヤーロープや紐などで連結しておいてもよい。これにより、ユーザはボンネットを開けるだけでフロントトランク32の蓋32dも開けることができ、より高い利便性を実現することができる。
【0069】
また、本実施形態のフロントトランク32は、後壁32eが傾斜している。具体的に、後壁32eが、上方側から下方側へと行くのに従って漸次後方側に後退するように傾斜している。
【0070】
本実施形態に係る車両の前部構造は、フロントトランク32の構成を除き、上記第1実施形態と同様の構成を有するので、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0071】
また、本実施形態に係る車両の前部構造では、フロントトランク32に蓋32dが設けられているので、走行中の振動などでフロントトランク32の収容区間32aから荷物が外に飛び出たり、収容空間32a内に埃や雨水などが侵入したりするのを抑制することができる。
【0072】
また、本実施形態に係る車両の前部構造では、フロントトランク32の後壁32eが、下方側に行くほど後方側に後退するように傾斜しているので、フロントトランク32の後方部分(矢印Aで示す部分)に補機などが配される場合においても当該補機を視認すること、および当該補機にアクセスすることが容易となる。
【0073】
[第6実施形態]
第6実施形態に係る車両の前部構造について、図8を用いて説明する。図8では、車両の前部構造の内の連通部53の一部を抜き出して図示している。図8で図示を省略している部分については、上記第1実施形態などと同じである。
【0074】
図8に示すように、本実施形態の連通部53は、内底面53bに複数条の凸条部(複数の凸部)53cを有する。複数条の凸条部53cは、それぞれが前後方向に延び、互いに左右方向に離間するように形成されている。
【0075】
本実施形態に係る車両の前部構造は、連通部53における内底面53bの構造を除き、上記第1実施形態と同様の構成を有するので、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0076】
また、本実施形態に係る車両の前部構造では、連通部53の内底面53bに複数条の凸条部53cが設けられているので、連通部53の内底面53bに対して荷物を移動させる場合に摺動抵抗を小さく抑えることができる。よって、連通部53を介してフロントトランクへと荷物をスムーズに移動させることが可能である。
【0077】
また、連通部53の連通空間53aには埃や水などが入り込む場合もあるが、上方に突設された凸条部53cの上には埃などが溜まり難い。よって、連通部53を通り移動する荷物に埃や水などが付着するのを抑制することができる。
【0078】
[第7実施形態]
第7実施形態に係る車両の前部構造について、図9を用いて説明する。図9では、車両の前部構造の内の連通部53の一部を抜き出して図示している。図9で図示を省略している部分については、上記第1実施形態などと同じである。
【0079】
図9に示すように、本実施形態の連通部13には、内底面13b上に上敷部材54が載置されている。上敷部材54は、上面54bに複数条の凸条部(複数の凸部)54cを有する。複数条の凸条部54cは、上記第6実施形態の凸条部53cと同様に、それぞれが前後方向に延び、互いに左右方向に離間するように形成されている。
【0080】
本実施形態に係る車両の前部構造は、連通部13の内底面13b上に上敷部材54が載置されている点を除き、上記第1実施形態と同様の構成を有するので、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0081】
また、本実施形態に係る車両の前部構造では、連通部13の内底面13b上に載置された上敷部材54の上面54bに複数条の凸条部54cが設けられているので、連通部13の連通空間13aを前後方向に荷物が移動する場合に摺動抵抗を小さく抑えることができる。よって、連通部13を介してフロントトランクへと荷物をスムーズに移動させることが可能である。
【0082】
また、上述のように、連通部13の連通空間13aには埃や水などが入り込む場合もあるが、連通部13の内底面13b上に複数条の凸条部54cを有する上敷部材54を載置することによって連通空間13aを通り移動する荷物に埃や水などが付着するのを抑制することができる。
【0083】
[第8実施形態]
第8実施形態に係る車両の前部構造について、図10を用いて説明する。図10では、車両の前部構造の内の連通部53の一部を抜き出して図示している。図10で図示を省略している部分については、上記第1実施形態などと同じである。
【0084】
図10に示すように、本実施形態の連通部63は、内底面63bに複数の凸部63cを有する。複数の凸部63cは、それぞれが半球形状を有し、互いに離間するように分散配置されている。
【0085】
本実施形態に係る車両の前部構造は、連通部63における内底面63bの構造を除き、上記第1実施形態と同様の構成を有するので、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0086】
また、本実施形態に係る車両の前部構造では、連通部63の内底面63bに複数の凸部63cが設けられているので、連通部63の内底面63bに対して荷物を移動させる場合に摺動抵抗を小さく抑えることができる。よって、連通部63を介してフロントトランクへと荷物をスムーズに移動させることが可能である。
【0087】
また、連通部63の連通空間63aには埃や水などが入り込む場合もあるが、上方に突設された凸部63cの上には埃などが溜まり難い。よって、連通部63を通り移動する荷物に埃や水などが付着するのを抑制することができる。
【0088】
[第9実施形態]
第9実施形態に係る車両の前部構造について、図11を用いて説明する。図11では、車両の前部構造の内の一部を抜き出して図示している。図11で図示を省略している部分については、上記第1実施形態と同じである。また、図11でも上記第1実施形態と同じ構成を有する部分については、同じ符号を付している。
【0089】
図11に示すように、本実施形態では、グローブボックス21の内底面21cの高さが後方(車室1b側)ほど低くなるように傾斜している。そして、グローブボックス21の収容空間21aは、前方側で連通部13の連通空間13aと接続され、後方側の開口部には蓋21bが取り付けられている。
【0090】
本実施形態に係る車両の前部構造は、グローブボックス21の内底面21cが傾斜している点を除き、上記第1実施形態などと同様の構成を有するので、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0091】
また、本実施形態に係る車両の前部構造では、グローブボックス21の内底面21cが、後方側(車室1b側)へと行くのに従って高さが低くなるように傾斜しているので、グローブボックス21の収容空間21a内に留めておきたい荷物が連通部13からフロントトランクへと移動してしまうのを抑制することができる。
【0092】
[第10実施形態]
第10実施形態に係る車両の前部構造について、図12を用いて説明する。図12では、車両の前部構造の内の連通部73の一部を抜き出して図示している。図12で図示を省略している部分については、上記第1実施形態と同じである。
【0093】
図11に示すように、本実施形態の連通部73は、複数個所(一例として3箇所)の脆弱部(矢印Bで示す部分)を有する。具体的に、脆弱部は、連通部73における底壁73e、側壁73f、および上壁73gに薄肉部73hを設けることで構成されている。薄肉部73hは、底壁73eから側壁73fを通り上壁73gに至るように周方向に連続するように形成されている。
【0094】
薄肉部73hにより構成される脆弱部は、連通部73における他の部分よりも剛性が低く、前突時に前方から衝撃力が加わった際に変形または破断し易い。
【0095】
本実施形態に係る車両の前部構造は、連通部73に脆弱部が形成されている点を除き、上記第1実施形態などと同様の構成を有するので、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0096】
また、本実施形態に係る車両の前部構造では、連通部73の壁部73e~73gの一部が脆弱部を有するように形成されているので、前突時に前方から衝撃力を受けた場合にも連通部73の各壁部73e~73gが車室内に侵入するのを抑制することができる。即ち、前突時に壁部73e~73gに設けられた脆弱部が変形・破損することで、連通部73の各壁部73e~73gが車室1b内に進入するのを抑制することができる。
【0097】
なお、本実施形態では、連通部73の壁部73e~73gに薄肉部73hを設けて脆弱部を構成することとしたが、フロントトランクに脆弱部を設けることとしてもよい。また、薄肉部73hを設けることで脆弱部とするだけでなく、壁部の一部または全部を断面視で蛇腹状とすることでも前突時の衝撃力を吸収することができる。
【0098】
[変形例]
上記第1実施形態から上記第10実施形態では、連通部13,33,43,53,63,73の車室1b側の接続対象をグローブボックス11,21としたが、本発明は、連通部の車室側の接続対象はこれに限定を受けるものではない。インストルメントパネルの上部や下部にグローブボックスとは別の収容部を設け、当該収容部を連通部の接続対象としてもよい。ただし、この場合には、収容部に開閉可能な蓋を設けることが臭いの漏れ出しや荷物の零れ落ちなどを防ぐ観点から必要である。
【0099】
また、上記第1実施形態から上記第10実施形態では、連通部13,33,43,53,63,73の車室1b側の接続対象をグローブボックス11,21としたため、車室1bの助手席側部分1dに車室側収容部を配置することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、インストルメントパネルにおけるステアリングホイールの前方部分に車室側収容部を設けることや、運転席と助手席との間の前方部分に車室側収容部を設けることとしてもよい。
【0100】
また、上記第1実施形態から上記第10実施形態では、車両1の前部1aに1つのフロントトランク12を設けることとしたが、本発明は、車両の前部に複数のフロントトランクを設けることとしてもよい。この場合には、少なくとも1つのフロントトランクに対して連通部を介して車室側収容部と接続しておけばよい。
【符号の説明】
【0101】
1 車両
1a 前部
10 インストルメントパネル
11,21 グローブボックス(車室内側収容部)
12,22,32 フロントトランク
12c,22c 内底面
13,33,43,53,63 連通部
13b,33b,43b,53b 内底面
13c 底壁
21c 内底面
22d 底壁
32b 開口部
32d 蓋
32e 後壁
53c 凸条部
54 上敷部材
54b 上面
54c 凸条部
63c 凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12