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特開2025-23493水検知センサ、情報杭、および水検知システム
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  • 特開-水検知センサ、情報杭、および水検知システム 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025023493
(43)【公開日】2025-02-17
(54)【発明の名称】水検知センサ、情報杭、および水検知システム
(51)【国際特許分類】
   G01F 23/24 20060101AFI20250207BHJP
【FI】
G01F23/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127647
(22)【出願日】2023-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】591034017
【氏名又は名称】株式会社リプロ
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(72)【発明者】
【氏名】岡田 謙吾
【テーマコード(参考)】
2F014
【Fターム(参考)】
2F014AA07
2F014DA00
(57)【要約】
【課題】設置費用の増大、設置スペースの増大を抑制しつつ複数の水位が検知可能な水検知センサを提供する。
【解決手段】 収納部を有するセンサ本体と、このセンサ本体に取り付けられた検知部とを備えた、水検知センサであって、前記収納部には、水検知の検知結果を出力するセンサ回路が収納され、前記検知部は、前記センサ回路に接続された水検知用の電極部分を少なくとも3つ有し、該電極部分のうち、少なくとも1つは長さが異なる、水検知センサ。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納部を有するセンサ本体と、
このセンサ本体に取り付けられた検知部とを備えた、水検知センサであって、
前記収納部には、水検知の検知結果を出力するセンサ回路が収納され、
前記検知部は、前記センサ回路に接続された水検知用の電極部分を少なくとも3つ有し、一番長い共通電極を除く残りの該電極部分のうち、少なくとも1つは長さが異なる、
水検知センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の水検知センサであって、
外部に対して前記センサ回路における前記検知結果を送信する通信部を前記収納部に、または前記収納部の外部に有する、
水検知センサ。
【請求項3】
請求項1に記載の水検知センサであって、
外部に対して前記センサ回路における前記検知結果を表示する表示部を備えた、
水検知センサ。
【請求項4】
請求項1に記載の水検知センサであって、
前記センサ回路に給電を行う電源部を備え、該給電のオンオフ動作は、非接触スイッチにより行われる、
水検知センサ。
【請求項5】
請求項1に記載の水検知センサであって、
前記センサ回路に向けて検出値を送出する傾斜センサ、変位センサ、GPSセンサ、加速度センサ、振動センサのうちの少なくとも1つを備えた、
水検知センサ。
【請求項6】
請求項1に記載の水検知センサであって、
前記センサ本体に、RFIDタグを備えた、
水検知センサ。
【請求項7】
請求項1に記載の水検知センサが内蔵される収納部と、
前記収納部内に水を導入する導入孔とを具備した、
水検知機能を有する情報杭。
【請求項8】
請求項2に記載の水検知センサの前記通信部から送信された前記検知結果を受信し、ユーザに対して検知結果を提示する、
水検知システム。
【請求項9】
請求項1に記載の水検知センサを複数具備し、該複数の水検知センサを鉛直方向に位置をずらして配置した、
水検知システム。
【請求項10】
請求項2に記載の水検知センサを複数具備し、該複数の水検知センサを水平方向に位置をずらして配置し、前記通信部から前記検知結果を送信する、
水検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水位等の検知を行う水検知センサ、これを用いた情報杭、および水検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大雨による浸水被害や河川の氾濫等が頻発してきており、水位や浸水の状況をいち早く把握し、迅速な災害対応を行うことが重要であると考えられてきている。そこで、センサ等を用いて浸水状況を把握する仕組みの構築に向けて、国や自治体、民間企業などにより実証実験が行われている。
【0003】
上記センサ等を用いた浸水状況の把握では、例えば通信機能を有する水検知センサを内蔵した杭(情報杭などとも呼ばれる)を用いて、現場における情報を検知して送信等を行うシステム(水検知システム)が考えられてきている(例えば、株式会社リプロの水ピィ杭などを使用した水検知センサ杭システム)。上記情報杭は、IoT技術を使用するものであり、サーバーやモバイルフォン等を含む管理システムに組み込まれるものである。水検知システムは、ため池や河川・高潮などの監視に使用可能なものであり、集中豪雨による内水氾濫やバックウォータ現象、アンダーパスやため池、河川用水路の脇などの監視にも利用可能である。
【0004】
水位検知を含む水検知を行う水検知センサでは、例えば、先端が露出した電極が使用され、上昇した水面が電極に触れることで水面が検知される。特許文献1に開示の従来技術では、2本の電極で水検知(または水面検知、水位検知)を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-215179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記水検知は、上記特許文献1に開示の従来技術のように、2本の電極で足りる。しかし、上記従来技術では、複数の水位を検知することは不可能である。そこで、複数の水位を検知するためには、複数台の水検知センサの設置が必要となり、設置業者等のユーザにとって設置費用が台数にほぼ比例して増大する上、設置に必要なスペースも台数にほぼ比例して増大することとなる。
【0007】
本発明の目的は、以上の従来技術の課題を解決すべく、設置費用の増大、設置スペースの増大を抑制しつつ複数の水位が検知可能な水検知センサ、情報杭、および水検知システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る水検知センサは、
収納部を有するセンサ本体と、
このセンサ本体に取り付けられた検知部とを備えた、水検知センサであって、
前記収納部には、水検知の検知結果を出力するセンサ回路が収納され、
前記検知部は、前記センサ回路に接続された水検知用の電極部分を少なくとも3つ有し、一番長い共通電極を除く残りの該電極部分のうち、少なくとも1つは長さが異なる。
なお、こうした水検知センサは、該水検知センサが内蔵される収納部と、
前記収納部内に水を導入する導入孔とを具備した、
水検知機能を有する情報杭で実現されてもよい。
なお、共通電極は、一番長い電極でなくても、二番目に長い電極であってもよく、この場合でも、上記構成と同様の作用、効果を奏する。
【0009】
前記水検知センサおよび情報杭は、上記のように、前記水検知用の電極部分を少なくとも3つ有し、一番長い共通電極を除く残りの該電極部分のうち、少なくとも1つは長さが異なる。よって、一番長い電極である一の電極(共通電極)に対して、これと長さが異なる(長さが短い)他の電極が少なくとも1つは存在することとなる。ここで、少なくとも3つの電極部分のうちの、上記一の電極と他の電極以外の残りの1つまたは複数の電極の長さは、一の電極以下、すなわち一の電極と同じ長さか、他の電極と同じ長さか、またはこれらの電極とは長さが異なる(さらに長さが短い)。当該残りの1つまたは複数の電極が、一の電極と同じ長さの場合、この残りの1つまたは複数の電極および一の電極とで所定の深さの水位を計測する一方で、一の電極(または残りの1つまたは複数の電極)と他の電極とでもこれとは別の深さの水位が計測可能である。また残りの1つまたは複数の電極が、他の電極と同じ長さの場合、残りの1つまたは複数の電極および他の電極とで所望の水位を計測する一方で、一の電極と他の電極(または残りの1つまたは複数の電極)とでもこれとは別の深さの水位が計測可能である。このように、1台の水検知センサで異なる2つの水位を検知可能である。
【0010】
なお、残りの1つまたは複数の電極が、1本だった場合に(これを単数の第3電極と呼ぶ)、この単数の第3電極の長さが一の電極および他の電極と異なる場合でも、この単数の第3電極および一の電極で、さらに単数の第3電極および他の電極で、各々異なる水位を検知可能であり、2つの水位を検知可能であり2つの水位を検知可能である。さらに残りの1つまたは複数の電極が、複数本だった場合には(これを複数の第3電極と呼ぶ)、これら複数の第3電極のうち一つでも長さが異なる場合には、一の電極と複数の第3電極との組合わせで、少なくとも2以上の水位の検知が可能となるため、全体では、一の電極と他の電極、一の電極と複数の第3電極とで、3以上の水位の検知が可能となる。よって、本発明に係る水検知センサは、設置費用の増大、設置スペースの増大を抑制しつつ複数の水位が検知可能である。
【0011】
前記水検知センサが、前記情報杭で実現されることで、例えば位置情報を有する、全部または一部設置された土地境界杭の機能などと共用でき、地面に対して前記杭(情報杭)を打ち込むことで水検知センサを所望の高さや場所の位置に設置できる。
【0012】
前記水検知センサは、外部に対して前記センサ回路における前記検知結果を送信する通信部を前記収納部に、または前記収納部の外部に有してもよい。これにより、例えば水検知センサから離れた地点にも検知結果を送信できる。なお、前記通信部が前記収納部の外部に存在する場合、通信部を例えば前記通信部が所定の通信網等に通信可能な位置(圏内)に設置できる。
ここで、この水検知センサは、該水検知センサの前記通信部から送信された前記検知結果を受信し、ユーザに対して検知結果を提示する、水検知システムに組み込まれてもよい。この水検知システムにより、コンピュータやモバイルフォン等を使用して、SNSやweb、対応アプリケーション(単にアプリとも称する)を通じて、カラー化や画像化による視覚等により、遠隔地のユーザに検知結果を提示できる。例えば、水検知システムは、GIS(地理情報システム)を含みうる。
また、前記水検知センサは、外部に対して前記センサ回路における前記検知結果を表示する表示部を備えてもよい。これにより、水検知センサ周りの人に検知結果を表示でき、例えば単色または複数色の光等で表示できる。表示部は、前記センサ本体の外面に取り付けられたり、前記センサ本体の外部に設けられてもよく、または前記センサ本体の全体または一部が透明材料、半透明材料で構成される前記センサ本体の内部の基板上等に具備されてもよい。
【0013】
前記水検知センサは、前記センサ回路に給電を行う電源部を備え、該給電のオンオフ動作は、非接触スイッチにより行われてもよい。従来では、雨、夜露等による電気的短絡などを回避するため、外部に向けて露出等した給電のオンオフのスイッチは存在せず、さらに電源部にはリードスイッチ等が実装されておらず、このため水検知センサを分解して電源部に給電用の配線を直接接続等して給電を行っていたため、ユーザや作業員の分解などの作業の手間を要していた。しかし上記構成により、従来とは異なり、外部から給電のオンオフ動作を、分解などすることなく、さらに非接触で行うことができる。非接触スイッチは、例えば、マグネットの接近、離間により行うものであってもよい。この場合、水検知センサの稼働や給電のオンオフを確実に把握しらしめるため、該オンオフの表示(点灯、点滅など)が透明窓等を通じて外部から確認できるようにしてあるのが好ましい。上記透明窓に代えて、前記センサ本体の全体または一部が、透明材料、半透明材料で構成されていてもよい。また誤動作防止のため、上記接近、離間によるオンオフ動作は、所定の手順で行われるのが好ましい。
【0014】
前記水検知センサは、前記センサ回路に向けて検出値を送出する傾斜センサ、変位センサ、GPSセンサ、加速度センサ、振動センサのうちの少なくとも1つを備えてもよい。これにより、前記水検知センサは、水検知センサが杭などに内蔵されて装着された場合のその杭の中心位置の傾斜、水検知センサの設置地点の位置変位、絶対的位置、移動加速度等も検知できる。また、前記センサ本体に、パッシブ型などのRFIDタグを備えてもよい。RFIDタグによるワイヤレス通信により、例えば、水検知センサ毎の個別ID等を携帯端末などで非接触かつ自動的に読み取ることができ、サーバやクラウドなどへの各水検知センサの個別ID等登録における手間を低減できる。なお、上記サーバやクラウドなどへの登録には、GPS位置情報も含め、水検知センサや杭の位置情報、場所情報を表示するGIS(地理情報システム)への位置登録、場所登録が含まれる。RFIDタグは、前記検知部とは逆側の上端部付近などにおいて、前記センサ本体の外面に取り付けられたり、前記センサ本体の内部に設けられてもよく、また、前記センサ本体の外部に設けられてもよい。これにより、RFIDタグを地面から高い位置に設定でき、後述の杭(情報杭)などに前記水検知センサを内蔵装着した場合にも、RFIDタグを地面から高い位置に設定できる。
【0015】
また、別の水検知システムにおいて、上記水検知センサを複数具備し、該複数の水検知センサを鉛直方向に位置をずらして配置してもよい。これにより、複数の水位を検知しうる上で述べたような水検知センサを使用して、かつ複数の水検知センサの高さ方向の位置を異ならせているため、より詳細な水検知の情報を得ることができ、例えば更にきめ細かい水位検知をすることができる。
【0016】
また、さらに別の水検知システムにおいて、前記通信部を有する水検知センサを複数具備し、該複数の水検知センサを水平方向に位置をずらして配置し、前記通信部から前記検知結果を送信してもよい。この構成により、情報杭に使用されるような上記水検知センサを複数具備しているため、より詳細な水検知の情報を得ることができる上、例えば更にきめ細かい水位検知をすることができる上、水平方向の位置を異ならせているため、いわゆる面的な、例えば地図上の場所ごとの情報が得られ、それらの利活用が可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる水検知センサ、情報杭、および水検知システムは、設置費用の増大、設置スペースの増大を抑制しつつ複数の水位が検知可能とできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】本発明の一の実施形態に係る水検知センサの概略外観図である(電極部分が3つ)。
図1B】本発明の他の実施形態に係る水検知センサの概略外観図である(電極部分が4つ以上)。
図2】同水検知センサの内部構成を示す概略ブロック図(透視図)である。
図3】同水検知センサにおける給電の非接触のオンオフ動作を示す図である。
図4】同水検知センサが装着される情報杭の一例を示す図である。
図5】同水検知センサが使用された水検知システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1Aに、本発明の一の実施形態に係る水検知センサ(電極部分が3つ)の概略外観図を示し、図1Bに、本発明の他の実施形態に係る水検知センサ(電極部分が4つ以上。同図では4つ)の概略外観図を示す。水検知センサは、後述の杭(情報杭など)のようなものに内蔵装着されるか、結束バンドやスチールバンドのような取り付け具で、または接着等で、建物や、電柱、ガードレール、柵等の柱状部分や、用水路等のコンクリート壁、擁壁等の壁状部分などに取り付けられて、使用される。
【0020】
水検知センサは、例えばいわゆる廃プラ等が使用されると環境にやさしい製品とできる。水検知センサは、更に例えばその外形はいわゆるPET(ポリエチレンテレフタラート)ボトルの形状をしている。これは、出願人が、後述のセンサ本体200に空のPETボトルを流用しうると考えている点、PETボトルに海ゴミのイメージがある場合に該ゴミにより災害から守られるメッセージとなると考えている点、およびボトルネック状のPETボトルの外形から細い先端を下向きにした設置のイメージがし易いと考えている点による。また、水検知センサは、センサ本体200は赤色やピンク色等のいわゆる派手色であってもよい。これは、出願人が、こうした色は設置者に設置位置を印象付ける効果があると考えている点、またこうした色は有事のイメージを喚起するものであると考えている点による。
【0021】
これらの図には、後述の収納部210を有するセンサ本体200と、このセンサ本体200に取り付けられた検知部300とを備えた水検知センサ100であって、検知部300における水検知用の電極部分320を少なくとも3つ有し、一番長い共通電極を除く残りの該電極部分のうち、少なくとも1つは長さが異なる水検知センサ100が示されている。例えば、センサ本体200は、直径50mmの円筒状でIPX7相当の防水性を有し、検知部300も含めた長さは168mmである。また例えば、センサ本体200は、検知部300とは逆側の上端部付近に溝部を2ヶ所有しており、上記バンドなどで水検知センサ100を固定する際に溝部に嵌合できて有益である。電極部分320の検知部300から突出した長さは、例えば32mmであり、伸縮による長さ調整が可能である。また、検知部300と電極部分320との間に、接続端子付きの延長ケーブル(不図示)を中継させて、長さ調整を行ってもよい。この電極部分320を使用して、例えば、30秒毎にセンシング(検知)が行われており、誤検知を回避するため連続4回センシングで水が検知された場合、水検知(浸水検知等)および水検知からの復帰(浸水改善検知等)の検知結果が後述のセンサ回路270から出力される。各電極部分320は互いに逆方向に反っており、各電極の先端が広がったスペース幅により例えば水滴停滞等に起因する誤検知を低減している。なお、共通電極は、一番長い電極でなくても、二番目に長い電極であってもよく、この場合でも、以下で説明する構成と同様の作用、効果を奏する。
【0022】
電極部分320は、二本一組で一つの水検知が可能となる。図1Aでは、電極部分320が3本あり、電極部分320A,320B,320Cを有し、電極部分320A(共通電極),320Cは同じ長さであり、電極部分320Bだけ長さが異なり、他よりも短くなっている、すなわち、一番長い共通電極320Aを除く残りの電極部分のうち、電極部分320C(電極部分320Aと同じ長さ)に対して少なくとも1つ電極部分320Bの長さが異なっている例が示されている。なお、電極部分320A,320Cは長さが異なってもよい。これにより、異なる2つの水位の水面a、bの検知が1台の水検知センサ100で可能となる。図1Bでは、電極部分320が4本あり、電極部分320D(共通電極),320E,320F,320Gを有し、電極部分320Eは電極部分320Dと同じ長さであるが、電極部分320F,電極部分320Gの長さが異なっている例であり(この順に長さが短くなっている)、すなわち、一番長い共通電極320Dを除く残りの該電極部分のうち、電極部分320E(電極部分320Dと同じ長さ)に対して、電極部分320F,電極部分320Gの長さが異なっている。これにより、異なる3つの水位の水面a、b、cの検知が1台の水検知センサ100で可能となる。さらに、図1Bでは、水面aから水面bへの水面上昇時間と、水面bから水面cへの水面上昇時間とを比較することで、水面上昇速度の変化を把握することも可能となる。同様に、水面下降速度の変化も把握できる。なお、電極部分320Cと電極部分320A、電極部分320Eと電極部分320Dとは、異なる長さであってもよく、また電極部分320Fと電極部分320Gとが互いに、または電極部分320Dと同じ長さであるなどしてもよい。
【0023】
図2に、水検知センサ100の内部構成の一例を透視図で示す。上記の2つの実施形態における水検知センサ100において、内部構成等は同じである。本例におけるセンサ本体200内の収納部210に、上記水検知用の電極部分320に接続されてその検知結果を出力するセンサ回路270、センサ回路270等に給電を行う一次電池や二次電池等の電源部250、センサ本体200の外部に対してセンサ回路270における検知結果を送信する通信部230を備える。この通信部230は、例えば所定の距離だけ離れて収納部210の外部に存在してもよく、通信部の一部たるアンテナ(不図示)が、収納部210の外部に存在してもよい。なおセンサ本体200の外面等には、外部に対してセンサ回路270における検知結果を表示する表示部290が備えられてもよい。表示部290は、例えばLCDや、複数の有色のLEDである。上記検知結果とは、ここでは水検知、浸水検知あるいは水面検知等であり、また水検知からの復帰(浸水改善検知等)も含まれ得て、水検知により上述の水位の検知が可能となる。電源部250の上記電池は、長期安定利用可能な電池であり、5~10年の長期信頼性と大容量性を有していることが好ましい。
【0024】
なおセンサ本体200に、不図示のパッシブ型などのRFIDタグを備えてもよい。RFIDタグによるワイヤレス通信により、例えば、水検知センサ100毎の個別ID等を携帯端末などで非接触かつ自動的に読み取ることができ、サーバやクラウドなどへの各水検知センサの個別ID等登録における手間を低減できる。なお、本実施形態では、上記サーバやクラウドなどへの登録には、GPS位置情報も含め、水検知センサや杭(情報杭など)の位置情報、場所情報を表示するGIS(地理情報システム)である水検知システムSYSへの位置登録、場所登録が含まれる。RFIDタグは、検知部300とは逆側の上端部付近などにおいて、センサ本体200の外面に取り付けられたり、センサ本体200の内部に設けられてもよく、また、センサ本体200から離れた外部に設けられてもよい。これにより、RFIDタグを地面から高い位置に設定でき、後述の情報杭(図4)などに前記水検知センサを内蔵した場合にも、RFIDタグを地面から高い位置に設定できる。
【0025】
上記の各実施形態における水検知センサ100は、センサ回路270に向けて検出値を送出する傾斜センサ、変位センサ、GPSセンサ、加速度センサ、振動センサのうちの少なくとも1つを備えていてもよく、これらのうちいくつかが組み合わされて使用されてもよい。ここでは、水検知センサ100は、傾斜センサS1、GPSセンサS2,変位センサS3、加速度センサS4の4つを備えている。これにより、水検知センサ100は、後述のように杭(情報杭)などに内蔵装着された場合のその杭の中心位置などの傾斜、水検知センサ100の設置地点の位置変位、絶対的位置、および/または転倒や衝撃などによる移動加速度等も検知できる。なお水検知センサ100は、不図示の他のセンサも含めた検出結果に従って、自動的にまた定期的にセルフライフチェックを行う機能を有してもよい。このセルフライフチェックの結果送信等は、後述の水検知システムや衛星通信などを通じて行われる。また、定期送信(セルフライフチェック)については、状況に応じてWeb上から計測時間の変更の指示等を水検知センサへ送ることが出来る。
【0026】
図3に、水検知センサ100内のセンサ回路270等に給電を行う電源部250における非接触の給電用オンオフ動作を示す。本実施形態の水検知センサ100では、外部に向けて露出等した給電のオンオフのスイッチは具備されていない。ここでは、マグネットMGの接近、離間により、非接触で電源部250の給電のオンオフ動作を行う非接触スイッチSWが使用されている。マグネットMGには、例えば一部のスマートフォンに搭載されている内蔵磁石が使用されてもよい。なお、不測の磁界の変化等による誤動作を回避するため、例えば、一定の操作手順、時間間隔等でマグネットMGの接近、離間が行われることが好ましい。この場合、給電のオンオフを確実に把握するため、該オンオフの表示が透明窓等(不図示)を通じて外部から確認できるようにしてあるのが好ましい。なお、このオンオフの表示は、水を検知した際の表示や、電源バッテリーの残量(消費量、低減量、停止等)の表示などに使用されてもよい。
【0027】
図4に、水検知センサ100が内蔵装着される杭PLの一例を示す。杭PLは、例えば、情報杭であり、標杭や標識体でありうる。本実施形態の杭(情報杭)PLは、ほぼ全体が直方体形状であるが、同図の下方の部分は円筒または円柱形状であり、さらに先端部分は尖っている。よって、杭PLの設置時に、円筒または円柱形状である下方の部分のみを地面に突き刺して(杭PLの仮固定)、杭PLを回転させて向きを整えてから、杭PLを直方体形状の部分まで打ち込んで向きを固定することができる(杭PLの本固定)。上記杭PLの回転により、水検知センサ100が通信を行う際の、向きによる感度調整が可能となる。杭PLは、上記の各実施形態の水検知センサ100が内蔵装着されることで水検知機能を有し、水検知センサ100が内蔵装着される例えば穴状の収納部FTと、外界から収納部FT内に水を導入する孔であって側壁に存在する導入孔HLとを具備している。水検知センサ100は、更に杭PLに蓋CPが取り付けられることで、杭PLに内蔵されうる。検知センサ100が導入孔HLからの水侵入を検知することで、杭PLの周りの外界における水の検出が可能となる。この杭PLには、例えばいわゆる廃プラ等が使用されると、環境にやさしい製品とできる。
【0028】
図5に、水検知センサ100が使用された水検知システムSYSを示す。水検知システムSYSは、水検知センサ100の通信部230から送信された前記検知結果を受信し、後述のようにユーザに対して検知結果を提示する。本実施形態では、水検知システムSYSは、GIS(地理情報システム)である。水検知システムSYSでは、例えば、SIGFOX等の低価格、低消費電力で長距離のデータ通信を可能とする無線通信技術であるLPWA(Low Power Wide Area)ネットワークが使用される。LPWAはIoT/M2Mに適した通信方式の一つとして注目されているものである。SIGFOXを使用すると、例えば、後述のゲートウエイ610を不要にでき、水検知センサ100とサーバやクラウド等とが電話回線などにより1対1で直接に通信を行う。水検知システムSYSでは、少なくとも水検知センサ毎の個別ID、設置位置、GPS情報(x、y、z座標情報等)が、テーブル化、リスト化などされてサーバやクラウド等に登録される。なお、上記SIGFOX等の通信を通じて、水検知センサ100自体へ、下り通信を使って、検知感度の設定、変更の指示などをすることができる。
【0029】
水検知システムSYSにおいて、通信部230から送信された検知結果は、まずLPWAのゲートウエイ610を経由し、その後インターネット回線630に送出される。その後、検知結果はLPWAクラウド650および/または該LPWAクラウド650にアクセス可能なサーバ700に蓄積され、浸水等の過去データの蓄積が可能である。一方、サーバ700は、ユーザから、例えばパソコン(パーソナルコンピュータ)810のブラウザやモバイルフォン830の専用アプリ(アプリケーション)を経て、検知結果の提示のためのアクセスを位置情報と共に受け付ける。パソコン810のモニタやモバイルフォン830の画面には、例えば地図が表示されて各水検知センサ100の位置が緑色で表示され、内水氾濫やバックウォータ現象等により水を検知した箇所では緑色が赤色に変化して検知結果が提示される。また、水が引いた際には、上記赤色から緑色に変化して(復帰して)検知結果が提示される。なお、検知結果の提示は、SNS等でなされてもよく、これにより近所の者や限られた者にのみ検知結果の送信が可能となり、公共の情報送信先との差別化等を図ることができる。
【0030】
水検知システムSYSでは、水検知センサ100からの水位の状態及び機器の傾き等の情報(検知結果)が定期的に確認され、状態変化があると検知結果をトリガーにして無線にて連絡される(無線による緊急通知送信)。ここで、モバイルフォン830等は、例えばサーバ700および/またはPC810から、位置情報が含まれたEメール等の受信が可能であり、このEメール等で上記連絡やバッテリー状態の通知などがされてもよい(アラート通知メール、および状態改善通知メール)。この中で、検知結果によっては例えば、検知結果をトリガーにして、設置先の位置情報を元に、自動的に、所定の機関への通報や現地へのドローン派遣等がなされてもよい(不図示)。また水検知システムSYSでは、一部において無線送信で下り通信がなされ(同図中の点線矢印)、例えばサーバ700からLPWAクラウド650やLPWAゲートウエイ610、水検知センサ100へ、通信時間間隔や検知時間間隔等の諸元(パラメータ)を含む制御データ等が送信される。
【0031】
上記実施形態に係る水検知センサ100、杭PL、水検知システムSYSでは、例えば複数の水検知センサ100および/または情報杭PLの利活用によって、さらに次のような利点、効果を奏しうる。(1)水検知センサ100、情報杭PLを複数使用することで、面的な形態で水検知を網羅することができ、いわゆるメッシュネットワークを構築するのに有効なシステムを構築できる。(2)複数の水検知センサ100、情報杭PLを使用することにより、面的なまたは立体的な浸水進行状態を把握しうるシステムを構築でき、加えて複数の水検知センサ100、情報杭PLにおける隣間の連動や、上記情報杭PLごとの点情報をつなぎ合わせて情報精度を上げたいわゆるアドレスマッチングによる連動情報の利用、AI(人工知能)など活用した自動検知が可能となる。(3)複数の水検知センサ100、情報杭PLによるアラート機能における連動動作などが可能となり、例えば上流近くの水検知センサ100、情報杭PLが水検知して、水検知センサ100、情報杭PL間の連動動作により、下流の水検知センサ100、情報杭PLから光などの視覚的または聴覚的なアラートを発するなどすることができ、現物による予知等が可能なシステムを提供できる。(4)上記GISを利用して地図上に点在する複数の水検知センサ100、情報杭PLによる複数の水検知の検知結果や検知実績によって、リスクを可視化することができ、例えば面的な場所ごとの保険料計算などへの反映が可能となる。(5)情報杭PLにおける発想は、複数の点(情報杭)を、通信などにより線で繋げて、土地という変化の多い広大なものなどを面で捉える/面で網羅することであり、これにより水検知センサ100、杭PL、水検知システムSYSは、利活用の範囲を相乗効果的に格段に向上しえて、昨今の甚大災害などに寄与しうる。
【0032】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0033】
例えば、上記とは別の態様の水検知システムにおいて、水検知センサ100を複数具備し、該複数の水検知センサ100を鉛直方向に位置をずらして配置してもよい。これにより、複数の水位を検知しうる上で述べたような水検知センサ100を使用して、かつ複数の水検知センサ100の高さ方向の位置を異ならせているため、例えば更に、より正確かつ効率的に水位を検出することができる、より詳細な水検知の情報を得ることができる、きめ細かい水位検知をすることができる等の効果を奏する。
【符号の説明】
【0034】
100 水検知センサ
200 センサ本体
210 収納部
230 通信部
250 電源部
270 センサ回路
290 表示部
300 検知部
320 電極部分
FT 収納部
HL 導入孔
PL 杭(情報杭)
SW 非接触スイッチ
SYS 水検知システム
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5