(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025023497
(43)【公開日】2025-02-17
(54)【発明の名称】窓モジュール、車両、及び熱可塑性エラストマー組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B60J 1/00 20060101AFI20250207BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20250207BHJP
C08L 23/26 20250101ALI20250207BHJP
C08L 53/02 20060101ALI20250207BHJP
C08L 23/16 20060101ALI20250207BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20250207BHJP
B29B 7/00 20060101ALI20250207BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20250207BHJP
B32B 17/06 20060101ALI20250207BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20250207BHJP
【FI】
B60J1/00 M
C08L101/00
C08L23/26
C08L53/02
C08L23/16
C08J3/20 Z CES
C08J3/20 CET
B29B7/00
B32B27/00 D
B32B17/06
B32B27/36 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127655
(22)【出願日】2023-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】322004083
【氏名又は名称】株式会社ENEOSマテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】笹間 将平
(72)【発明者】
【氏名】小林 雅人
【テーマコード(参考)】
4F070
4F100
4F201
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA12
4F070AA13
4F070AA18
4F070AB03
4F070AB07
4F070AB11
4F070AB24
4F070AC92
4F070AE02
4F070AE03
4F070AE08
4F070FA03
4F070FB06
4F070FB07
4F100AG00A
4F100AK03B
4F100AK03G
4F100AK07B
4F100AK07G
4F100AK12B
4F100AK12G
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4F100AK75B
4F100AK75G
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4F100AL01B
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4F100AL05G
4F100AL09B
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4F100GB32
4F201AA03
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4F201BC01
4J002AA01W
4J002BB02W
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4J002BB15X
4J002BB213
4J002BP01X
4J002GF00
4J002GL00
(57)【要約】
【課題】プライマー処理や接着剤塗布を行わなくても、窓部と前記窓部の外周を覆う窓枠部とが強固に接着された窓モジュールを提供する。
【解決手段】本発明に係る窓モジュールは、窓部と、前記窓部の外周を覆う窓枠部と、を有し、前記窓枠部が、下記(T)成分及び下記(S)成分を含有する組成物で構成されている。
(T)成分:(A)オレフィン系熱可塑性エラストマー及びスチレン系熱可塑性エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種のエラストマー成分と、(B)熱可塑性樹脂(但し、(S)成分に該当するものを除く。)と、を含む組成物の溶融混練物
(S)成分:カルボキシ基、酸無水物基、アミノ基、及びシラノール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する重合体
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓部と、前記窓部の外周を覆う窓枠部と、を有する窓モジュールであって、
前記窓枠部が、下記(T)成分及び下記(S)成分を含有する組成物で構成される、窓モジュール。
(T)成分:(A)オレフィン系熱可塑性エラストマー及びスチレン系熱可塑性エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種のエラストマー成分と、(B)熱可塑性樹脂(但し、(S)成分に該当するものを除く。)と、を含む組成物の溶融混練物
(S)成分:カルボキシ基、酸無水物基、アミノ基、及びシラノール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する重合体
【請求項2】
前記(T)成分が、前記(A)成分と、前記(B)成分と、(C)架橋剤と、を含む組成物の溶融混練物である、請求項1に記載の窓モジュール。
【請求項3】
前記(S)成分を構成する重合体が、プロピレン系重合体である、請求項1に記載の窓モジュール。
【請求項4】
前記(S)成分を構成する重合体が、スチレン系熱可塑性エラストマーである、請求項1に記載の窓モジュール。
【請求項5】
前記(A)成分が、(A1)オレフィン系熱可塑性エラストマーを含有する、請求項1に記載の窓モジュール。
【請求項6】
前記(A1)オレフィン系熱可塑性エラストマーが、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体である、請求項5に記載の窓モジュール。
【請求項7】
前記(A)成分が、
(A2)ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックA、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックB、及びビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位のランダム重合体ブロックCからなる群より選ばれる少なくとも2種の重合体ブロックを有するブロック重合体、又はその水素添加体を含有する、請求項1に記載の窓モジュール。
【請求項8】
前記(B)成分が、オレフィン系樹脂である、請求項1に記載の窓モジュール。
【請求項9】
前記窓部が、波長400nm~700nmの範囲に、透過率が10%以上となる波長が存在する、請求項1に記載の窓モジュール。
【請求項10】
前記窓部が、ガラス、ポリカーボネート樹脂、又はポリ(メタ)アクリレート樹脂で構成される、請求項1に記載の窓モジュール。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載の窓モジュールを備える車両。
【請求項12】
(A)オレフィン系熱可塑性エラストマー及びスチレン系熱可塑性エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種のエラストマー成分と、(B)熱可塑性樹脂(但し、(S)成分に該当するものを除く。)と、を溶融混練する第1の工程と、
前記第1の工程で得られた溶融混練物と、(S)カルボキシ基、酸無水物基、アミノ基、及びシラノール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する重合体と、を溶融混練する第2の工程と、
を有する、熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓モジュール及びそれを備えた車両、並びに熱可塑性エラストマー組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車内に水、埃、音などの侵入を防ぐために、車両の窓部の外周にウェザーストリップと呼ばれるゴム製のシール材が使用されている。ウェザーストリップを介して車両の窓ガラスと車体パネルとを接続させる場合、一般的にはポリウレタン系接着剤が用いられている。具体的には、前記窓ガラスの周縁部と前記窓ガラスを抱き上げたウェザーストリップとに接着剤を塗布し、これを車体パネルに装着、押圧して窓ガラスを接続する方法が採られている。ポリウレタン系接着剤との接着性を向上させるためには、該接着剤が塗布される前に、該ウェザーストリップと該窓ガラスの周縁部にプライマー処理が施される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、プライマー処理後、経時的にプライマーとしての接着効果が減退し、その可使時間は長くても10日間であり、この可使時間が過ぎた場合においては、再度プライマー処理を行わなければならないのが現状である。また、プライマー処理や接着剤塗布には手間がかかるため、プライマー処理や接着剤塗布を行わずに車両の窓ガラスとウェザーストリップとを強固に接着できる技術が求められている。
【0005】
本発明に係る幾つかの態様は、プライマー処理や接着剤塗布を行わなくても、窓部と前記窓部の外周を覆う窓枠部とが強固に接着された窓モジュールを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下のいずれかの態様として実現することができる。
【0007】
本発明に係る窓モジュールの一態様は、
窓部と、前記窓部の外周を覆う窓枠部と、を有する窓モジュールであって、
前記窓枠部が、下記(T)成分及び下記(S)成分を含有する組成物で構成される。
(T)成分:(A)オレフィン系熱可塑性エラストマー及びスチレン系熱可塑性エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種のエラストマー成分と、(B)熱可塑性樹脂(但し、(S)成分に該当するものを除く。)と、を含む組成物の溶融混練物
(S)成分:カルボキシ基、酸無水物基、アミノ基、及びシラノール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する重合体
【0008】
前記窓モジュールの一態様において、
前記(T)成分が、前記(A)成分と、前記(B)成分と、(C)架橋剤と、を含む組成物の溶融混練物であってもよい。
【0009】
前記窓モジュールの一態様において、
前記(S)成分を構成する重合体が、プロピレン系重合体であってもよい。
【0010】
前記窓モジュールの一態様において、
前記(S)成分を構成する重合体が、スチレン系熱可塑性エラストマーであってもよい。
【0011】
前記窓モジュールの一態様において、
前記(A)成分が、(A1)オレフィン系熱可塑性エラストマーを含有してもよい。
【0012】
前記窓モジュールの一態様において、
前記(A1)オレフィン系熱可塑性エラストマーが、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体であってもよい。
【0013】
前記窓モジュールの一態様において、
前記(A)成分が、
(A2)ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックA、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックB、及びビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位のランダム重合体ブロックCからなる群より選ばれる少なくとも2種の重合体ブロックを有するブロック重合体、又はその水素添加体を含有してもよい。
【0014】
前記窓モジュールの一態様において、
前記(B)成分が、オレフィン系樹脂であってもよい。
【0015】
前記窓モジュールの一態様において、
前記窓部が、波長400nm~700nmの範囲に、透過率が10%以上となる波長が存在するものであってもよい。
【0016】
前記窓モジュールの一態様において、
前記窓部が、ガラス、ポリカーボネート樹脂、又はポリ(メタ)アクリレート樹脂で構成されるものであってもよい。
【0017】
本発明に係る車両の一態様は、
前記いずれかの態様の窓モジュールを備えるものである。
【0018】
本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物の製造方法の一態様は、
(A)オレフィン系熱可塑性エラストマー及びスチレン系熱可塑性エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種のエラストマー成分と、(B)熱可塑性樹脂(但し、(S)成分に該当するものを除く。)と、を溶融混練する第1の工程と、
前記第1の工程で得られた溶融混練物と、(S)カルボキシ基、酸無水物基、アミノ基、及びシラノール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する重合体と、を溶融混練する第2の工程と、
を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る窓モジュールは、プライマー処理や接着剤塗布を行わなくても窓部と前記窓部の外周を覆う窓枠部とが強固に接着されるとともに、該窓枠部は摺動性及び復元性に優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る窓モジュールの一例を模式的に示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下に記載された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含むものとして理解されるべきである。
【0022】
本明細書において、「X~Y」を用いて記載された数値範囲は、数値Xを下限値として含み、かつ、数値Yを上限値として含むものとして解釈される。
【0023】
なお、本明細書中においては、(A)オレフィン系熱可塑性エラストマー及びスチレン系熱可塑性エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種のエラストマー成分を「(A)成分」と、(A1)オレフィン系熱可塑性エラストマーを「(A1)成分」と、(A2)スチレン系熱可塑性エラストマーを「(A2)成分」と、(B)熱可塑性樹脂を「(B)成分」と、(C)架橋剤を「(C)成分」と、(T)(A)成分と(B)成分とを含む組成物の溶融混練物を「(T)成分」と、(S)カルボキシ基、酸無水物基、アミノ基、及びシラノール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する重合体を「(S)成分」と、それぞれ略して用いることがある。
【0024】
1.窓モジュール
図1に、本発明の一実施形態に係る窓モジュール100を示す。
図1に示すように、本実施形態に係る窓モジュール100は、窓部10と、窓部10の外周を覆う窓枠部12とを有している。窓枠部12は、窓部10の周縁部を抱き上げた状態で、窓部10の周縁部と接着されている。窓枠部12は、下記(T)成分及び下記(S)成分を含有する組成物から構成されている。
(T)成分:(A)オレフィン系熱可塑性エラストマー及びスチレン系熱可塑性エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種のエラストマー成分と、(B)熱可塑性樹脂(但し、(S)成分に該当するものは除く。)と、を含む組成物の溶融混練物
(S)成分:カルボキシ基、酸無水物基、アミノ基、及びシラノール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する重合体
【0025】
本実施形態に係る窓モジュール100は、車両のサイドドア、バックドア、フード、ルーフ等に使用される、窓部10と窓枠部12とを備えた窓モジュールである。
図1に示すように、本実施形態に係る窓モジュール100は、ボディの組立工程などで直ちに使用できるようにモジュール化されているため、車両の生産性が向上する。
【0026】
窓部10の構成材料としては、透明なものであれば、従来公知の材料から任意に選択することができる。ここで、「透明」とは、分光光度計で測定された板状成形品における光線透過率として、波長400nm~700nmの範囲に、10%以上となる波長が存在することを意味する。
【0027】
窓部10の構成材料の具体例としては、ガラス、ポリスチレン樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂、水添ポリスチレン樹脂、ポリアクリルスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、SMA樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリフェニルエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、非晶性ポリアルキレンテレフタレート樹脂、ポリエステル樹脂、非晶性ポリアミド樹脂、ポリ-4-メチルペンテン-1、環状ポリオレフィン樹脂、非晶性ポリアリレート樹脂、ポリエーテルサルフォン、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマーが挙げられる。これらの中でも、耐衝撃性や耐熱性の観点から、ガラ
ス、ポリカーボネート樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂が好ましい。
【0028】
以下、窓枠部12を構成する組成物に含まれる成分について説明する。
【0029】
1.1.組成物
窓枠部を構成する組成物は、上記(T)成分及び上記(S)成分を含有する。
【0030】
1.1.1.(T)成分
(T)成分は、(A)オレフィン系熱可塑性エラストマー及びスチレン系熱可塑性エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種のエラストマー成分と、(B)熱可塑性樹脂(但し、(S)成分に該当するものを除く。)と、を含む組成物の溶融混練物である。(T)成分は、動的架橋熱可塑性エラストマー(TPV)とも呼ばれるものである。(T)成分は、マトリクス相である(B)成分中に、(A)成分がドメイン相として高密度に微分散した海島構造を特徴とする多相系高分子材料である。
【0031】
原料成分の溶融混練は、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、ニーダー、多軸スクリュー押出機、ロール等の一般的な混和機を用いた溶融混練手段が用いられる。以下、(T)成分に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0032】
1.1.1.1.(A)成分
窓枠部を構成する組成物は、(T)成分として、(A1)オレフィン系熱可塑性エラストマー及び(A2)スチレン系熱可塑性エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種のエラストマー成分を含有する。
【0033】
(T)成分中の(A)成分の含有割合は、(T)成分の全質量を100質量部としたときに、好ましくは10~80質量部であり、より好ましくは15~70質量部であり、特に好ましくは20~60質量部である。(T)成分中の(A)成分の含有割合が前記範囲内にあると、組成物の射出成形性や、組成物を成形することによって得られる窓枠部の摺動性及び復元性に優れたものとなる。
【0034】
<(A1)オレフィン系熱可塑性エラストマー>
(A1)オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、オレフィンに由来する繰り返し単位を含有する共重合体であれば特に限定されないが、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体であることが好ましく、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体であることがより好ましい。(A1)成分は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよいが、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0035】
α-オレフィンとしては、炭素数3以上10以下のα-オレフィンが好ましく、炭素数3以上8以下のα-オレフィンがより好ましい。α-オレフィンの具体例としては、プロピレン、1-ブテン、2-メチルプロペン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等が挙げられる。これらの中でも、プロピレンが特に好ましい。(A1)成分を合成するにあたって、これらのα-オレフィンは、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0036】
非共役ジエンとしては、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ジシクロオクタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、5-ビニル-2-ノルボルネン等の炭素数5以上15以下の非共役ジエンが挙げられる。これらの中でも、5-エチリデン-2-ノルボルネン、ジシクロペンタジエンが好ましい。
【0037】
(A1)成分は、エチレン、α-オレフィン、及び非共役ジエン以外の単量体に由来する繰り返し単位を含有してもよい。このような単量体としては、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン等の炭素数4以上8以下の共役ジエン;酢酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等の不飽和カルボン酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸等が挙げられる。(A1)成分を合成するにあたって、これらの単量体は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0038】
(A1)成分の全質量を100質量%としたときに、(A1)成分中のエチレンに由来する繰り返し単位の含有割合は、好ましくは40~85質量%であり、より好ましくは50~80質量%であり、特に好ましくは55~70質量%である。
【0039】
(A1)成分の全質量を100質量%としたときに、(A1)成分中のα-オレフィンに由来する繰り返し単位の含有割合は、好ましくは10~50質量%であり、より好ましくは15~45質量%であり、特に好ましくは25~40質量%である。
【0040】
(A1)成分の全質量を100質量%としたときに、(A1)成分中の非共役ジエンに由来する繰り返し単位の含有割合は、好ましくは1~15質量%であり、より好ましくは2~12質量%であり、特に好ましくは3~10質量%である。
【0041】
(A1)成分の全質量を100質量%としたときに、(A1)成分中のエチレン、α-オレフィン、及び非共役ジエン以外の単量体に由来する繰り返し単位の含有割合は、好ましくは0~15質量%であり、より好ましくは0~8質量%であり、特に好ましくは0~5質量%である。
【0042】
(A1)成分中の、各単量体に由来する繰り返し単位の含有割合は、赤外分光法により求めることができる。具体的には、赤外分光光度計を用いて、(A1)成分の赤外吸収スペクトルを測定し、「赤外吸収スペクトルによるポリエチレンのキャラクタリゼーション(高山、宇佐美 等著)」又は「Die Makromolekulare Chemie,177、461(1976)(McRae、M.A.,MadamS,W.F.等著)」に記載の方法にしたがって、(A1)成分中の、各単量体に由来する繰り返し単位の含有割合を算出することができる。
【0043】
(A1)成分の具体例としては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体、エチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・プロピレン・1-オクテン共重合体、エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン・プロピレン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・プロピレン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体等が挙げられる。これらの中でも、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体が好ましい。これらの(A1)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0044】
(A1)成分の製造例としては、チーグラー・ナッタ系触媒、メタロセン系錯体や非メタロセン系錯体等の公知の錯体系触媒の存在下、エチレンと、α-オレフィンと、非共役ジエンと、その他の単量体とを共重合する方法が挙げられる。重合方法としては、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等が挙げられる。
【0045】
(A1)成分の数平均分子量は、特に限定されないが、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の値として、好ましくは100,000以上、より好ましくは150,000以上、さらに好ましくは170,000以上である。(A1)成分の数平均分子量は、特に限定されないが、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の値として、好ましくは600,000以下、より好ましくは550,000以下、特に好ましくは500,000以下である。
【0046】
<(A2)スチレン系熱可塑性エラストマー>
(A2)スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックA、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックB、及びビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位のランダム重合体ブロックCからなる群より選ばれる少なくとも2種の重合体ブロックを有するブロック重合体、又はその水素添加体であることが好ましい。
【0047】
ここで、「主体とする」とは、対象の単量体単位を対象の重合体ブロック中に、50モル%以上含むことをいう。
【0048】
ビニル芳香族単量体としては、特に限定されず、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1-ジフェニルエチレン、N,N-ジメチル-p-アミノエチルスチレン、N,N-ジエチル-p-アミノエチルスチレン等が挙げられる。これらの中でも、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレンが好ましく、スチレンがより好ましい。
【0049】
共役ジエン単量体としては、特に限定されず、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等が挙げられる。これらの中でも、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエンが好ましく、1,3-ブタジエンがより好ましい。
【0050】
重合体ブロックAは、1種のビニル芳香族単量体単位から構成されていてもよいし、2種以上のビニル芳香族単量体単位から構成されていてもよい。重合体ブロックAには、ビニル芳香族単量体単位以外の単量体単位が含まれていてもよい。
【0051】
重合体ブロックBは、1種の共役ジエン単量体単位から構成されていてもよいし、2種以上の共役ジエン単量体単位から構成されていてもよい。重合体ブロックBには、共役ジエン単量体単位以外の単量体単位が含まれていてもよい。
【0052】
重合体ブロックCは、1種のビニル芳香族単量体単位及び1種の共役ジエン単量体単位から構成されていてもよいし、2種以上のビニル芳香族単量体単位及び1種の共役ジエン単量体単位から構成されていてもよいし、1種のビニル芳香族単量体単位及び2種以上の共役ジエン単量体単位から構成されていてもよいし、2種以上のビニル芳香族単量体単位及び2種以上の共役ジエン単量体単位から構成されていてもよい。重合体ブロックCには、ビニル芳香族単量体単位及び共役ジエン単量体単位以外の単量体単位が含まれていてもよい。
【0053】
(A2)成分のブロック共重合体におけるビニル芳香族単量体単位を主体とするブロックAの質量割合は、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上である。(A2)成分のブロック共重合体におけるビニル芳香族単量体単位を主体とするブロックAの質量割合は、好ましくは55質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下であり、特に好ましくは45質量%以下である。
【0054】
(A2)成分のブロック共重合体の化学構造は、直鎖状、分岐状、放射状等の何れであってもよいが、下記式(1)又は(2)で表されるブロック共重合体であることが好ましく、機械的強度向上の観点から、下記式(1)の構造であることがより好ましい。
【0055】
A-(B-A)m (1)
(A-B)n (2)
式中、Aは重合体ブロックAを表す。Bは重合体ブロックBを表す。mは1~5の整数を表す。nは2~5の整数を表す。
重合体ブロックA、重合体ブロックBがそれぞれ複数存在する場合、それらに含まれる単量体単位はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0056】
(A2)成分は、組成物のゴム弾性の観点から、上記式(1)で表されるブロック共重合体であることが好ましく、mが3以下である式(1)で表されるブロック共重合体がより好ましく、mが2以下である式(1)で表されるブロック共重合体がさらに好ましく、mが1である式(1)で表されるブロック共重合体が特に好ましい。
【0057】
(A2)成分は、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックA、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックB、及びビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位のランダム重合体ブロックCからなる群より選ばれる少なくとも2種の重合体ブロックを有するブロック共重合体の水素添加体であってもよい。
【0058】
ブロック共重合体の水素添加方法、反応条件については特に制限はなく、通常は、20~150℃、0.1~10MPaの水素加圧下、水添触媒の存在下で行われる。この場合、水素添加率は、水添触媒の量、水添反応時の水素圧力、又は反応時間等を変えることにより適宜調整することができる。
【0059】
水添触媒としては、例えば、特開平1-275605号公報、特開平5-271326号公報、特開平5-271325号公報、特開平5-222115号公報、特開平11-292924号公報、特開2000-37632号公報、特開昭59-133203号公報、特開昭63-5401号公報、特開昭62-218403号公報、特開平7-90017号公報、特公昭43-19960号公報、特公昭47-40473号公報に記載の水添触媒が挙げられる。なお、上記水添触媒は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用することもできる。
【0060】
(A2)成分の具体例としては、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、スチレン・イソプレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、及びこれらの水素添加体が挙げられる。スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の水素添加体としては、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン共重合体(SEBS)が挙げられる。スチレン・イソプレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の水素添加体としては、スチレン・エチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体(SEEPS)が挙げられる。これらの中でも、高い流動性が得られ、融着性が良好になる傾向があることから、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の水素添加体が好ましい。
【0061】
(A2)成分の数平均分子量は、特に限定されないが、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の値として、好ましくは100,000以上、より好ましくは150,000以上、さらに好ましくは170,000以上である。(A2)成分の数平均分子量は、特に限定されないが、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の値として、好ましくは600,000以下、より好ましくは550,000以下、特に好ましくは500,000以下である。
【0062】
1.1.1.2.(B)成分
窓枠部を構成する組成物は、(T)成分として(B)熱可塑性樹脂(後述の(S)成分に該当するものを除く。)を含有する。(B)成分としては、例えば、オレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル系樹脂;アクリル系樹脂;ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン12、半芳香族ポリアミド(ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロン9T)、変性ポリアミド等のポリアミド;ポリカーボネート、ポリアセタール、フッ素樹脂、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエステルエラストマー、ポリアリレート、液晶ポリマー(全芳香族系、半芳香族系)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。これらの(B)成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0063】
これらの(B)成分の中でも、(A)成分との相容性が良好となる観点から、オレフィン系樹脂が好ましい。オレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン等の炭素数2~8程度のα-オレフィンの単独重合体;それらのα-オレフィンと、エチレン、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-オクタデセン等の炭素数2~18程度の他のα-オレフィン等との二元あるいは三元の共重合体等が挙げられる。
【0064】
オレフィン系樹脂の具体例としては、例えば、エチレン単独重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-ヘプテン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体等のエチレン系樹脂;プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体等のプロピレン系樹脂;1-ブテン単独重合体、1-ブテン・エチレン共重合体、1-ブテン・プロピレン共重合体等の1-ブテン系樹脂;4-メチル-1-ペンテン単独重合体、4-メチル-1-ペンテン・エチレン共重合体等の4-メチル-1-ペンテン系樹脂等が挙げられる。
【0065】
これらのオレフィン系樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、エチレン系樹脂及びプロピレン系樹脂が好ましく、プロピレン系樹脂がより好ましく、プロピレン単独重合体が特に好ましい。
【0066】
(T)成分中の(B)成分の含有割合は、(T)成分の全質量を100質量部としたときに、好ましくは1~50質量部であり、より好ましくは5~40質量部であり、特に好ましくは10~30質量部である。(T)成分中の(B)成分の含有割合が前記範囲内にあると、組成物の射出成形性や、組成物を成形することによって得られる窓枠部の摺動性及び復元性に優れたものとなる。
【0067】
1.1.1.3.(C)架橋剤
窓枠部を構成する組成物は、(T)成分として(C)架橋剤を含有することが好ましい。(C)成分としては、有機過酸化物、フェノール系架橋剤、硫黄、硫黄化合物、p-キノン、p-キノンジオキシムの誘導体、エポキシ化合物、シラン化合物、アミノ樹脂等を挙げることができる。これらの中でも、有機過酸化物及びフェノール系架橋剤が好ましく、有機過酸化物がより好ましい。
【0068】
<有機過酸化物>
上記有機過酸化物としては、1,3-ジ(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキセン-3、1,3-ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,2-ジ(tert-ブチルパーオキシ)-p-イソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキシド、ジ-tert-ブチルパーオキシド、tert-ブチルパーオキシド、tert-ブチルクミルパーオキシド、p-メンタンパーオキシド、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ジラウロイルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキシド、p-クロロベンゾイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジ(tert-ブチルパーオキシ)パーベンゾエート、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルパーオキシ)バレレート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等を挙げることができる。これらの有機過酸化物のうち、1,3-ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン等のジアルキルパーオキシド類が好ましい。
【0069】
有機過酸化物の含有割合は、均一かつ緩和な部分架橋を行う観点から、(A)成分と(B)成分と鉱物油系軟化剤の合計100質量部に対して、好ましくは0.01~2.0質量部であり、より好ましくは0.02~1.5質量部である。
【0070】
(C)架橋剤として有機過酸化物を使用した場合に、溶融混練中で発生するフリーラジカルに対する反応性の高い多官能性化合物を架橋助剤として使用することで、架橋反応が速やかに進行し、架橋密度の高いゴムドメインを形成できるととともに、フリーラジカルの架橋反応以外の副反応(例えば、フリーラジカル種同士の不均化反応、架橋反応に関与しない水素引き抜き反応、共重合体ゴムやポリオレフィン樹脂の主鎖切断を伴うβ脱離反応)を抑制することができる。
【0071】
ここで、「多官能性化合物」とは、一分子中に非共役の炭素-炭素二重結合を二つ以上もつ低分子化合物であって、同二重結合をもたない他の架橋剤と併用することにより架橋反応を効率的に進行させ、均一な架橋構造と優れたゴム弾性を発現することができる化合物のことをいう。
【0072】
多官能性化合物としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、テトラアリルオキシエタン、トリアリルシアヌレート、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、N,N’-トルイレンビスマレイミド、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ジビニルベンゼン、ジ(メタ)アクリル酸亜鉛等が挙げられる。これらの多官能性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0073】
多官能性化合物の含有割合は、相構造の均一性及び成形加工性を維持する観点から、(A)成分と(B)成分と鉱物油系軟化剤の合計100質量部に対して、好ましくは3質量部以下であり、より好ましくは0.1~1.5質量部であり、特に好ましくは0.2~1.2質量部である。
【0074】
<フェノール系架橋剤>
上記フェノール系架橋剤としては、下記一般式(3)で表されるp-置換フェノール系化合物、o-置換フェノール-アルデヒド縮合物、m-置換フェノール-アルデヒド縮合物、臭素化アルキルフェノール-アルデヒド縮合物等を挙げることができるが、特にp-置換フェノール系化合物が好ましい。
【化1】
(式(3)中、nは0~10の整数であり、Xはヒドロキシル基、ハロゲン化アルキル基及びハロゲン原子の少なくともいずれかであり、Rは炭素数1~15の飽和炭化水素基である。)
【0075】
なお、p-置換フェノール系化合物は、アルカリ触媒の存在下においてp-置換フェノールとアルデヒド(好ましくはホルムアルデヒド)との縮合反応により得られる。
【0076】
フェノール系架橋剤の含有割合は、均一かつ緩和な部分架橋を行う観点から、(A)成分と(B)成分と鉱物油系軟化剤の合計100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部であり、より好ましくは0.3~5質量部であり、特に好ましくは0.4~2質量部である。
【0077】
フェノール系架橋剤を使用する場合、架橋助剤を併用してもよい。フェノール系架橋剤と併用可能な架橋助剤としては、例えば、塩化第一スズ、塩化第二鉄等の金属ハロゲン化物;塩素化ポリプロピレン、臭素化ポリプロピレン、臭素化ブチルゴム、クロロプレンゴム等の有機ハロゲン化物が挙げられる。更に、上記架橋助剤以外に、酸化亜鉛のような金属酸化物や、ステアリン酸等の分散剤を併用してもよい。
【0078】
1.1.1.4.その他の成分
窓枠部を構成する組成物は、(T)成分として、必要に応じて各種添加剤を含有してもよい。このような添加剤としては、例えば鉱物油系軟化剤、鉱物油系以外の軟化剤、滑剤、老化防止剤、熱安定剤、耐候剤、金属不活性剤、紫外線吸収剤、光安定剤、銅害防止剤などの安定剤、防菌・防かび剤、分散剤、可塑剤、結晶核剤、難燃剤、シリコーンオイル、シリコーンポリマー、粘着付与剤、発泡助剤、酸化チタン、カーボンブラックなどの着色剤、フェライトなどの金属粉末、ガラス繊維、金属繊維などの無機繊維、炭素繊維、アラミド繊維などの有機繊維、複合繊維、チタン酸カリウムウィスカーなどの無機ウィスカー、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラスフレーク、アスベスト、マイカ、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、ハイドロタルサイト、カオリン、けい藻土、グラファイト、軽石、エボ粉、コットンフロック、コルク粉、硫酸バリウム、フッ素樹脂、ポリマービーズなどの充填剤またはこれらの混合物、ポリオレフィンワックス、セルロースパウダー、ゴム粉、木粉などの充填剤、低分子量ポリマーなどが挙げられる。
【0079】
<鉱物油系軟化剤>
上記鉱物油系軟化剤としては、重量平均分子量で300~2000、特には500~1500の分子量を有するものが好ましい。鉱物油系炭化水素からなるゴム用軟化剤は、一
般に、芳香族環、ナフテン環、及びパラフィン鎖の三者の混合物であって、パラフィン鎖の炭素数が全炭素数中の50%以上を占めるものがパラフィン系オイル、ナフテン環の炭素数が全炭素数中の30~45%のものがナフテン系オイル、芳香族環の炭素数が全炭素数中の30%以上のものが芳香族系オイルと、それぞれ分類されている。本発明においては、パラフィン系のものが好ましく、特に水添パラフィン系のものが好ましい。また、鉱物油系炭化水素は、40℃の動粘度が2×10-5~8×10-4m2/s(20~800cSt)、特には5×10-5~6×10-4m2/s(50~600cSt)であるもの、流動点が-40~0℃、特には-30~0℃であるものが好ましい。
【0080】
<鉱物油系以外の軟化剤>
上記鉱物油系以外の軟化剤としては、通常用いられるゴム用軟化剤であれば特に制限されないが、例えば、植物油(やし油等)、脂肪酸と高級アルコールとのエステル類(フタル酸ジエステル類等)、リン酸トリエステル類、ポリブテン系、ポリブタジエン系等の低分子量の炭化水素等が挙げられる。
【0081】
<老化防止剤>
窓枠部を構成する組成物が老化防止剤を含有することにより、熱分解が抑制されて高温での成形に耐え得るとともに、該組成物を成形して得られる窓枠部と窓部との融着部において、耐熱性が向上する場合がある。
【0082】
老化防止剤としては、ヒンダードアミン系化合物、ハイドロキノン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、含硫黄化合物、含リン化合物、ナフチルアミン系化合物、ジフェニルアミン系化合物、p-フェニレンジアミン系化合物、キノリン系化合物、ヒドロキノン誘導体系化合物、モノフェノール系化合物、ビスフェノール系化合物、トリスフェノール系化合物、ポリフェノール系化合物、チオビスフェノール系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、亜リン酸エステル系化合物、イミダゾール系化合物、ジチオカルバミン酸ニッケル塩系化合物、リン酸系化合物等が挙げられる。これらの老化防止剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0083】
老化防止剤としては、市販品を使用することもでき、例えば、ADEKA社製の商品名「アデカスタブAO-60」、「アデカスタブ2112」、「アデカスタブAO-412S」等を使用することができる。
【0084】
1.1.2.(S)成分
窓枠部を構成する組成物は、(S)成分として、カルボキシ基、酸無水物基、アミノ基、及びシラノール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基(以下、「特定官能基」ともいう。)を有する重合体を含有する。窓枠部を構成する組成物が(S)成分として特定官能基を有する重合体を含有することにより、プライマー処理や接着剤塗布を行わなくても窓部と前記窓部の外周を覆う窓枠部とを強固に接着することができる。
【0085】
特定官能基を有する重合体としては、特に限定されないが、酸及び/又はその誘導体変性ポリオレフィン系重合体、アミノ基変性ポリオレフィン系重合体、シラノール基変性ポリオレフィン系重合体、酸及び/又はその誘導体変性スチレン系熱可塑性エラストマー、アミノ基変性スチレン系熱可塑性エラストマー、シラノール基変性スチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。特定官能基を有する重合体は、原料として用いるポリオレフィン系重合体又はスチレン系熱可塑性エラストマーに特定官能基を有する化合物(以下、「変性剤」ともいう。)を変性させることによって得られる。
【0086】
原料として用い得るポリオレフィン系重合体としては、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体等のポリプロピレン系重合体を使用することが好ましい。これら
の中でも、窓部と窓枠部とのより高い接着性を得る観点から、プロピレン単独重合体がより好ましい。また、ポリオレフィン系重合体は、結晶性であっても、非晶性であってもよい。
【0087】
原料として用い得るスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)等が挙げられる。
【0088】
変性に用いる酸としては、不飽和カルボン酸が好ましい。不飽和カルボン酸としては、特に限定されないが、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ケイヒ酸、イタコン酸、ハイミック酸、シトラコン酸が挙げられる。また、不飽和カルボン酸の誘導体としては、これらの酸の無水物、エステル、アミド、イミド、金属塩等が挙げられる。
【0089】
不飽和カルボン酸の誘導体としては、具体的には、無水マレイン酸、無水ハイミック酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、イタコン酸ジエチルエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、マレイン酸-N-モノエチルアミド、マレイン酸-N,N-ジエチルアミド、マレイン酸-N-モノブチルアミド、マレイン酸-N,N-ジブチルアミド、フマル酸モノアミド、フマル酸ジアミド、フマル酸-N-モノブチルアミド、フマル酸-N,N-ジブチルアミド、マレイミド、N-ブチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、メタクリル酸カリウム等が挙げられる。
【0090】
これらの酸及び/又はその誘導体は1種を用いても2種以上を併用してもよい。
【0091】
変性に用いるアミノ基を有する化合物としては、N,N-ジメチルビニルベンジルアミン、N,N-ジエチルビニルベンジルアミン、N,N-ジプロピルビニルベンジルアミン、N,N-ジブチルビニルベンジルアミン、N,N-ジフェニルビニルベンジルアミン、2-ジメチルアミノエチルスチレン、2-ジエチルアミノエチルスチレン、2-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルスチレン、1-(4-N,N-ジメチルアミノフェニル)-1-フェニルエチレン、N,N-ジメチル-2-(4-ビニルベンジロキシ)エチルアミン、4-(2-ピロリジノエチル)スチレン、4-(2-ピペリジノエチル)スチレン、4-(2-ヘキサメチレンイミノエチル)スチレン、4-(2-モルホリノエチル)スチレン、4-(2-チアジノエチル)スチレン、4-(2-N-メチルピペラジノエチル)スチレン、1-((4-ビニルフェノキシ)メチル)ピロリジン、1-(4-ビニルベンジロキシメチル)ピロリジン等が挙げられる。これらのアミノ基を有する化合物は1種を用いても2種以上を併用してもよい。
【0092】
変性に用いるアルコキシシリル基を有する化合物としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-(N-フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(N-フェニル)アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。原料として用いる
ポリオレフィン系重合体又はスチレン系熱可塑性エラストマーにアルコキシシリル基を有する化合物を変性させた後、該アルコキシシリル基を加水分解させることによって、シラノール基変性ポリオレフィン系重合体又はシラノール基変性スチレン系熱可塑性エラストマーを得ることができる。これらのアルコキシシリル基を有する化合物は1種を用いても2種以上を併用してもよい。
【0093】
ポリオレフィン系重合体又はスチレン系熱可塑性エラストマーの変性に用いる変性剤の使用量は、原料として用いるポリオレフィン系重合体又はスチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上である。一方、ポリオレフィン系重合体又はスチレン系熱可塑性エラストマーの変性に用いる変性剤の使用量は、原料として用いるポリオレフィン系重合体又はスチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。変性剤の使用量が上記下限値以上であれば、得られる組成物の接着性が良好となる傾向にあり、一方、上記上限値以下であれば、未反応物及び副生物の発生の抑制により、得られる組成物から構成される窓枠部において、製品外観の悪化を防止できるとともに、接着性の低下を抑制できる傾向にある。
【0094】
上述した変性剤による変性は、グラフト変性が好適であり、従来公知の種々の方法で行うことができる。変性方法としては、溶融させたポリオレフィン系重合体又はスチレン系熱可塑性エラストマーに変性剤を添加してグラフト共重合させる溶融変性法、溶媒に溶解させたポリオレフィン系重合体又はスチレン系熱可塑性エラストマーに変性剤を添加してグラフト共重合させる溶液変性法、固体のポリオレフィン系重合体又はスチレン系熱可塑性エラストマーに変性剤を添加してグラフト共重合させる固相重合法等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0095】
特定官能基を有する重合体の数平均分子量は、特に限定されないが、20,000以上であることが好ましく、20,000以上300,000以下であることがより好ましい。
【0096】
特定官能基を有する重合体のメルトフローレート(MFR)は、特に限定されないが、0.01~3000g/10分が好ましく、より好ましくは0.1~2500g/10分であり、特に好ましくは1~100g/10分である。ここで、特定官能基を有する重合体のMFRは、JIS K7210:1999に準拠し、測定温度230℃、測定荷重21.2Nの条件下で測定した値を意味する。
【0097】
窓枠部を構成する組成物中の(S)成分の含有割合は、(T)成分100質量部に対して、好ましくは1~30質量部であり、より好ましくは2~25質量部であり、特に好ましくは3~20質量部である。(S)成分の含有割合が前記範囲内にあれば、窓部と窓枠部との十分な接着力が得られる傾向にある。
【0098】
1.2.組成物の製造方法
本発明の一実施形態に係る組成物の製造は、(A)オレフィン系熱可塑性エラストマー及びスチレン系熱可塑性エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種のエラストマー成分と、(B)熱可塑性樹脂(但し、(S)成分に該当するものを除く。)と、を溶融混練する第1の工程と、前記第1の工程で得られた溶融混練物と、(S)カルボキシ基、酸無水物基、アミノ基、及びシラノール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する重合体と、を溶融混練する第2の工程と、を有する。
【0099】
本発明における「溶融混練」とは、剪断力を加えること及び加熱することの両方を行うことを指す。第1の工程において、(A)成分と(B)成分とを溶融混練することにより
、(B)成分の連続相(海相)中に(A)成分が分散相(島相)として分散している海島構造を有する溶融混練物が得られる。第2の工程において、第1の工程で得られた溶融混練物と(S)カルボキシ基、酸無水物基、アミノ基、及びシラノール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する重合体とを溶融混練することにより、(B)成分の連続相(海相)中に(A)成分と(S)成分とが分散相(島相)として分散している海島構造を有する溶融混練物が得られる。
【0100】
溶融混練を行うことのできる装置としては、例えば、開放型のミキシングロール、非開放型のバンバリーミキサー、ニーダー、一軸押出機、同方向回転型連続式二軸押出機、異方向回転型連続式二軸混練機等の装置を挙げることができる。また、この混練装置で行う処理は、バッチ式又は連続式の何れであってもよい。
【0101】
溶融混練の温度条件は、(A)成分、(B)成分、及び(S)成分の溶融と架橋反応とのバランスの観点から、150~250℃の範囲で行うことが好ましい。溶融混練の処理時間は、特に限定されないが、生産性等を考慮すると、通常0.1~30分である。
【0102】
2.実施例
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の「%」又は「部」は、特に断らない限り質量基準である。
【0103】
2.1.熱可塑性エラストマー組成物の製造
下表1に示した種類及び量の、エチレン・α-オレフィン系共重合ゴム、水添ブロック共重合体、ポリオレフィン樹脂、鉱物油系軟化剤、架橋剤、架橋助剤、老化防止剤、ポリジメチルシロキサンを溶融混練し、熱可塑性エラストマー組成物(T-1)~(T-5)を製造した。
次いで、下表2に示した種類及び量の、熱可塑性エラストマー組成物(T-1)~(T-5)のいずれか1種と、酸無水物基含有ポリオレフィン(S-1)又はシラノール基含有ポリオレフィン(S-2)とを溶融混練し、実施例1~8で使用する各熱可塑性エラストマー組成物を製造した。比較例1~5は、熱可塑性エラストマー組成物(T-1)~(T-5)をそのまま使用した。
【0104】
2.2.評価方法
(1)流動性
JIS K7210-1:2014に準拠して、MFR(メルトフローレート)を、温度230℃、荷重21.2N(2.16kg)の条件にて測定した。得られた測定値を流動性の評価値とした。
【0105】
次いで、得られたペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を型締力100トンの射出成形機(日本製鋼社製、商品名「J100ADS」)を用いて120mm×120mm×2mm(縦×横×厚さ)の平板を射出成形して試験片を得た。得られた試験片について、硬度、引張強さ、最大伸び、圧縮永久歪み、及び摺動性を評価した。
【0106】
(2)硬度(デュロA)
JIS K6253-3:2012(Duro-A)に準拠して測定した。
【0107】
(3)引張試験
JIS K6251:2017に準拠して、引張強さ(TB)、最大伸び(EB)を測定した。
【0108】
(4)圧縮永久歪み
弾性回復性の指標として、JIS K6262:2013に準拠して70℃で22時間、25%圧縮したときの圧縮永久歪みを測定した。圧縮永久歪みの値が小さいほど、弾性回復性がよいと判断できる。
【0109】
(5)摺動性
摺動性の指標として動摩擦係数を測定し、この動摩擦係数により摺動性を評価した。より具体的には、往復摺動試験機(新東科学社製、商品名「TYPE:38」)を用いて、室温にて荷重200g/1.5mm2(面圧133g/mm2)、ガラス試験片摺動速度100mm/分(1ストローク50mm)の条件で、直径10mmの球状ガラス試験片に対する、シート状の成形品の動摩擦係数を測定した。
【0110】
(6)ガラス接着性
(6-1)ガラスとの接合体の作製
まず、射出成形機(菱屋精工社製、商品名「VNT-70S」)の割型内に、エタノールで表面を洗浄したガラス板(100mm×100mm×2mm(縦×横×厚さ))を予め挿入した。上記で製造した熱可塑性エラストマー組成物のいずれかを、欠部(ガラス板を挿入した割型内)に収まるように、上記欠部内に射出成形し(射出温度230℃、金型冷却温度45℃)、上記熱可塑性エラストマー組成物とガラス板とを射出融着した平板(150mm×150mm×4mm(縦×横×厚さ))を得た。次いで、この平板を、10mm幅にスリットして試験片を得た。
【0111】
(6-2)ガラスとの接着性評価
引張試験機(島津製作所社製、商品名「AG-X」)を用いて、上記試験片の一端末を保持し、剥離角度180°、負荷速度200mm/分にて剥離し、剥離強度の値(単位N/mm)をもってガラス接着性の指標とした。
【0112】
(7)加硫ゴム接着性
(7-1)加硫ゴム被着体の作製
エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン三元共重合体(商品名「EP 57C」、ENEOSマテリアル社製、エチレン単位含量67質量%、5-エチリデン-2-ノルボルネン単位含量4.5質量%、ムーニー粘度58)100質量部、カーボンブラック(商品名「シーストSO」、東海カーボン社製)113質量部、炭酸カルシウム(商品名「スーパーSSS」、丸尾カルシウム社製)67質量部、パラフィン系のプロセスオイル(商品名「PW90」、出光興産社製)67質量部、活性亜鉛華(堺化学工業社製)5質量部、ステアリン酸(ADEKA社製)1質量部、バンバリーミキサーを用いて50℃、70rpm、2.5分の条件で混合して混合物を得た。
得られた混合物の全量(353質量部)に、脱水剤(商品名「ベスタPP」、井上石灰工業社製)10質量部、可塑剤(商品名「PEG#4000」、日油社製)2質量部、加硫促進剤として商品名「ノクセラーM-P」1質量部、商品名「ノクセラーCZ-G」1質量部、商品名「ノクセラーTET-G」1.2質量部及び商品名「ノクセラーBZ-P」2質量部(以上、いずれも大内新興化学工業社製)並びに硫黄2質量部を添加し、オープンロールを用いて50℃において混練した後、170℃において20分間加硫して、120mm×120mm×2mm(縦×横×厚さ)の大きさに成形したシートを作製した。このシートを、ダンベルカッターで長さ60mm、幅50mmに打ち抜き、これをオレフィン系加硫ゴム被着体とした。
【0113】
(7-2)加硫ゴム被着体との接合体の作製
まず、射出成形機(日本製鋼所社製、商品名「J100ADS」)の割型内に、上記で作製したオレフィン系加硫ゴム被着体を予め挿入した。次いで、上記で製造した熱可塑性
エラストマー組成物のいずれかを、欠部(オレフィン系加硫ゴム被着体を挿入した割型内)に収まるように、上記欠部内に射出成形し(射出温度230℃、金型冷却温度45℃)、上記熱可塑性エラストマー組成物と上記熱可塑性エラストマー被着体とを射出融着した平板(120mm×120mm×2mm(縦×横×厚さ))を得た。次いで、この平板を、JIS-2号ダンベルカッターで打ち抜いて試験片(ダンベル状試験片)を得た。
【0114】
(7-3)加硫ゴム被着体との接着性評価
引張試験機(島津製作所社製、商品名「AG-X」)を用いて、負荷速度200mm/分にて上記試験片を引っ張り、破断強度の値(単位MPa)をもって加硫ゴム接着性の指標とした。
【0115】
(8)熱可塑性エラストマー接着性
(8-1)熱可塑性エラストマー被着体の作製
Celanese社製の「Santoprene121-73W175」を、射出成形機(日本製鋼所社製、商品名「J100ADS」)により、120mm×120mm×2mmの大きさに成形したシートを作製した。このシートを、ダンベルカッターで長さ60mm、幅50mmに打ち抜き、これを熱可塑性エラストマー被着体とした。
【0116】
(8-2)熱可塑性エラストマー被着体との接合体の作製
まず、射出成形機(日本製鋼所社製、商品名「J100ADS」)の割型内に、上記で作製した熱可塑性エラストマー被着体を予め挿入した。次いで、上記で製造した熱可塑性エラストマー組成物のいずれかを、欠部(熱可塑性エラストマー被着体を挿入した割型内)に収まるように、上記欠部内に射出成形し(射出温度230℃、金型冷却温度45℃)、上記熱可塑性エラストマー組成物と熱可塑性エラストマー被着体とを射出融着した平板(120mm×120mm×2mm(縦×横×厚さ))を得た。次いで、この平板を、JIS-2号ダンベルカッターで打ち抜いて試験片(ダンベル状試験片)を得た。
【0117】
(8-3)熱可塑性エラストマー被着体との接着性評価
引張試験機(島津製作所社製、商品名「AG-X」)を用いて、負荷速度200mm/分にて上記試験片を引っ張り、破断強度の値(単位MPa)をもって熱可塑性エラストマー接着性の指標とした。
【0118】
2.3.評価結果
下表1に、各実施例及び各比較例で使用した熱可塑性エラストマー組成物(T-1)~(T-5)の組成を示す。下表2に、各実施例及び各比較例で作製した熱可塑性エラストマー組成物の各評価結果を示す。
【0119】
【0120】
【0121】
上表1及び上表2に記載された各成分には、以下に示すものを用いた。
・エチレン・α-オレフィン系共重合ゴム:商品名「EP 501EC」、ENEOSマテリアル社製、エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン三元共重合体(エチレン単位含量65.5質量%、5-エチリデン-2-ノルボルネン単位含量5.5質量%)
・水添ブロック共重合体:商品名「TAIPOL-6151」、台湾合成ゴム(TSRC)社製、スチレン・ブタジエン・スチレン水添ブロック共重合体、スチレン含有率:32質量%、重量平均分子量:260,000
・ポリオレフィン樹脂:商品名「ノバテックPP FX4EA」、日本ポリプロ社製、プロピレンランダム共重合体、密度0.90g/cm3、メルトフローレート(230℃、荷重21.2N)5.3g/10分
・架橋剤:商品名「パーヘキサ25B-40」、日油社製、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン
・架橋助剤:商品名「バルノックPM」、大内新興化学工業社製、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド
・ポリジメチルシロキサン:商品名「DOWSIL SH200 Fluid 100cSt」、ダウ・東レ社製、動粘度:100cSt
・鉱物油系軟化剤:商品名「ダイアナプロセスオイルPW90」、出光興産社製
・老化防止剤:商品名「アデカスタブAO-60」、ADEKA社製、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
・酸無水物基含有ポリオレフィン(S-1):商品名「ユーメックス1010」、三洋化成工業社製、無水マレイン酸変性ポリプロピレン
・シラノール基含有ポリオレフィン(S-2):商品名「リンクロンPM700N」、三菱ケミカル社製、シラン変性アモルファスポリ?α?オレフィン、主鎖はプロピレンとエチレンとの共重合体
【0122】
上表2の評価結果より、(T)成分及び(S)成分を含有する実施例1~8の熱可塑性エラストマー組成物では、ガラス接着性の評価において良好な結果が得られている。これに対し、(T)成分のみを含有する比較例1~5の熱可塑性エラストマー組成物では、ガラスと射出融着させても接着しないことがわかった。
【0123】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を包含する。また本発明は、上記の実施形態で説明した構成の本質的でない部分を他の構成に置き換えた構成を包含する。さらに本発明は、上記の実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成をも包含する。さらに本発明は、上記の実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成をも包含する。