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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002350
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】車両の前部構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 5/02 20060101AFI20241226BHJP
   B60R 7/06 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
B60R5/02
B60R7/06 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102460
(22)【出願日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】古谷 啓介
(72)【発明者】
【氏名】石塚 耕三
(72)【発明者】
【氏名】藤井 英明
(72)【発明者】
【氏名】六車 美咲
【テーマコード(参考)】
3D022
【Fターム(参考)】
3D022BB01
3D022BC16
3D022CA08
3D022CB01
3D022CC03
(57)【要約】
【課題】フロントトランクを備える車両の前部構造において、ユーザの利便性の向上を図る。
【解決手段】車両は、フロントトランク12とグローブボックス11と連通部13とベルトコンベア14とを備える。フロントトランク12は、車両の前部に配され、収容空間12aを有する。連通部13は、フロントトランク12の収容空間12aとグローブボックス11の収容空間11aとを連通する連通空間13aを有する。ベルトコンベア14は、連通部13における連通空間13aの後端からフロントトランク12における収容空間12aの前端までの間で荷物を移送する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室よりも前方の車両前部に配され、荷物を収容可能なフロント収容空間を有するフロントトランクと、
前記車室の前部に配され、当該車室側から荷物の出し入れが可能な車室側収容空間を有する車室側収容部と、
前記フロント収容空間と前記車室側収容空間とを連通する連通空間を有する連通部と、
前記連通空間内において、収容された荷物を前後方向に移送可能な移送部と、
を備える、
車両の前部構造。
【請求項2】
前記移送部は、前記フロント収容空間内に進入するように設けられており、前記フロント収容空間における当該移送部の進入領域まで前記荷物を移送可能に構成されている、
請求項1に記載の車両の前部構造。
【請求項3】
前記移送部は、前記連通部における前記車室側収容部との接続箇所またはそれよりも前方の箇所に後端部が配置され、前記連通部における前記フロントトランクとの接続箇所またはそれよりも後方の箇所に前端部が配置されている、
請求項1に記載の車両の前部構造。
【請求項4】
前記移送部は、移送時における前記荷物の前側への位置ズレを規制する位置ズレ規制部を有する、
請求項1に記載の車両の前部構造。
【請求項5】
前記移送部は、ベルトコンベアを有する、
請求項1から請求項4の何れかに記載の車両の前部構造。
【請求項6】
前記移送部は、前記連通空間が延びる方向に沿って配設されたレールと、前記レールに沿って移動可能であって、前記荷物が載置されるトレイと、を含むスライドトレイを有する、
請求項1から請求項4の何れかに記載の車両の前部構造。
【請求項7】
前記車室側収容部は、インストルメントパネルに設けられるとともに、前記車室側収容空間における前記車室側の開口に対して開閉可能な蓋を有するグローブボックスである、
請求項1から請求項4の何れかに記載の車両の前部構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、前部にトランクが設けられてなる車両が開示されている。特許文献1に開示のトランクは、樹脂材料により形成されており、車両前部におけるボンネットの下部に配置されている。ユーザは、ボンネットを開けてトランクに対して荷物の出し入れを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第102020106560号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示のトランクでは、トランクにアクセスしようとする場合に常に車両を停止させてボンネットを開ける必要があり、ユーザの利便性という観点から改善が必要である。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、フロントトランクを備える車両の前部構造において、ユーザの利便性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る車両の前部構造は、フロントトランクと、車室側収容部と、連通部と、移送部とを備える。前記フロントトランクは、車両の車室よりも前方の車両前部に配され、荷物を収容可能なフロント収容空間を有する。前記車室側収容部は、前記車室の前部に配され、当該車室側から荷物の出し入れが可能な車室側収容空間を有する。前記連通部は、前記フロント収容空間と前記車室側収容空間とを連通する連通空間を有する。前記移送部は、前記連通空間内において、収容された荷物を前後方向に移送可能な部位である。
【0007】
上記態様に係る車両の前部構造では、フロントトランクのフロント収容空間と車室側収容部の車室側収容空間とが、連通部によって連通されているので、車室側からもフロントトランクへと荷物を収容することができる。これより、乗員が車両から降車することなく、フロントトランクに対して荷物を収容することができ、高い利便性を実現することができる。
【0008】
また、上記態様に係る車両の前部構造では、移送部を備えるので、連通空間内に位置する荷物を車室側に取り出すこともできる。よって、車室側収容部とフロントトランクとの間の距離に関係なく、車室側から荷物の出し入れが可能であって、さらに高い利便性を実現することができる。
【0009】
上記態様に係る車両の前部構造において、前記移送部は、前記フロント収容空間内に進入するように設けられてもよく、前記フロント収容空間における当該移送部の進入領域まで前記荷物を移送可能に構成されてもよい。
【0010】
上記態様に係る車両の前部構造では、移送部がフロント収容空間内まで進入するように設けられているので、車室側収容部から連通部を介してフロントトランクへと荷物を収容することもできる。よって、連通空間にのみ移送部が設けられている場合に比べて、より多くの荷物を収容することができる。また、荷物を収容するための箇所を広い領域から選択することが可能となる。
【0011】
上記態様に係る車両の前部構造において、前記移送部は、前記連通部における前記車室側収容部との接続箇所またはそれよりも前方の箇所に後端部が配置されてもよく、前記連通部における前記フロントトランクとの接続箇所またはそれよりも後方の箇所に前端部が配置されてもよい。
【0012】
上記態様に係る車両の前部構造では、連通部における前記車室側収容部との接続箇所またはそれよりも前方の箇所から、連通部における前記フロントトランクとの接続箇所またはそれよりも後方の箇所までの範囲で移送部が設けられているので、前記範囲よりも広い範囲で移送部が設けられている場合に比べて移送部の前後長を短くすることができる。このため、前突時に前方から衝撃力が加わった際にも車室内への移送部の進入量を小さく抑えることができる。よって、上記態様に係る車両の前部構造では、前突時における乗員の保護という観点から優位である。
【0013】
上記態様に係る車両の前部構造において、前記移送部は、移送時における前記荷物の前側への位置ズレを規制する位置ズレ規制部を有してもよい。
【0014】
上記態様に係る車両の前部構造では、移送部が位置ズレ規制部を有しているので、例えば、荷物が転がりやすい形状のものであったり、滑りやすいものであったりしても、車室側収容部の側に円滑に荷物を移送させることが可能である。また、車両の走行により振動が加わった場合にも、荷物が不所望にフロントトランクの側へと移動してしまうのを抑制することもできる。
【0015】
上記態様に係る車両の前部構造において、前記移送部は、ベルトコンベアを有してもよい。
【0016】
上記態様に係る車両の前部構造では、移送部としてベルトコンベアを採用するので、ベルト上に載置された荷物を連通空間における任意の箇所まで移動させることができる。なお、ベルトコンベアの駆動に関しては、手動であってもよいし、モータなどによる駆動であってもよい。
【0017】
上記態様に係る車両の前部構造において、前記移送部は、前記連通空間が延びる方向に沿って配設されたレールと、前記レールに沿って移動可能であって、前記荷物が載置されるトレイと、を含むスライドトレイを有してもよい。
【0018】
上記態様に係る車両の前部構造では、移送部としてスライドトレイを採用しているので、トレイ上に載置された荷物を連通空間における任意の箇所まで移動させることができる。
【0019】
上記態様に係る車両の前部構造において、前記車室側収容部は、インストルメントパネルに設けられるとともに、前記車室側収容空間における前記車室側の開口に対して開閉可能な蓋を有するグローブボックスであってもよい。
【0020】
上記態様に係る車両の前部構造では、既存のグローブボックスを車室側収容部としているので、新たな収容部を設けなくてもよい。そして、グローブボックスは蓋を有するので、収容部の開口にわざわざ蓋を取り付けなくてもよい。よって、上記態様に係る車両の前部構造を採用する場合には、大幅に車両の設計変更をすることなく、車室とフロントトランクとの間の連通構造を構成することが可能である。
【0021】
なお、上記態様に係る車両の前部構造では、蓋を有するグローブボックスをフロントトランクとの連通対象としているので、フロントトランクから車室に向けて臭いが漏れ出たり、荷物が車室側に零れ落ちたりすることが抑制可能である。
【発明の効果】
【0022】
上記の各態様に係る車両の前部構造では、ユーザの利便性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態に係る車両の前部構造を示す模式図である。
図2図1のII-II線断面を示す断面図である。
図3】ベルトコンベアの構成を示す斜視図である。
図4】第2実施形態に係る車両の前部構造の一部を示す斜視図である。
図5】第3実施形態に係る車両の前部構造の一部を示す断面図である。
図6】第4実施形態に係る車両の前部構造の一部を示す斜視図である。
図7】第5実施形態に係る車両の前部構造の一部を示す模式図である。
図8】第6実施形態に係る車両の前部構造の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明を例示的に示すものであって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0025】
[第1実施形態]
1.車両1の前部構造
第1実施形態に係る車両1の前部構造について、図1から図3を用いて説明する。
【0026】
図1に示すように、本実施形態に係る車両1は、ダッシュパネル1cよりも前方の前部1aにフロントトランク12を備える。図2に示すように、フロントトランク12は、ボンネット下に配されており、荷物の収容が可能な収容空間(フロント収容空間)12aを有する。フロントトランク12の収容空間12aは、上方が開口されている(開口部12b)。
【0027】
図1に示すように、車両1は、ダッシュパパネル1cよりも後方の車室1bにインストルメントパネル10を有する。インストルメントパネル10は、車室1bの前方部分において、左右方向に延びるように配されている。インストルメントパネル10には、助手隙側部分1dの前方となる部分にグローブボックス11が設けられている。
【0028】
図2に示すように、グローブボックス11は、荷物の収納が可能な収容空間(車室側収容空間)11aを有するとともに、収容空間11aの車室1b側の開口を開閉可能な蓋11bを有する。なお、本実施形態のグローブボックス11は、車室側収納部に該当する。
【0029】
図1および図2に示すように、車両1は、フロントトランク12とグローブボックス11との間を繋ぐ連通部13を備える。即ち、本実施形態に係る車両1では、フロントトランク12の収容空間12aとグローブボックス11の収容空間11aとが連通部13の連通空間13aによって連通されている。
【0030】
図2に示すように、車両1において、フロントトランク12の内底面12c、連通部13の内底面13b、およびグローブボックス11の内底面11cは、それぞれが水平面で構成され、互いに段差なく接続されている。
【0031】
車両1の前後方向において、フロントトランク12の前端近傍から連通部13の後端近傍(グローブボックス11との接続箇所の近傍)に至る領域には、ベルトコンベア14が配されている。図2および図3に示すように、ベルトコンベア14は、フロントトランク12の内底面12c上に配されたローラ14a、連通部13の内底面13b上に配されたローラ14b、ローラ14a,14b間で張設されたベルト14c、およびローラ14aに回転駆動力を付与するモータ14dを有する。なお、本実施形態では、前方側に配されたローラ14aにモータ14dが取り付けられているが、後方側に配されたローラ14bにモータ14dを取り付けることとしてもよい。
【0032】
図3に示すように、ベルトコンベア14は、ベルト14c上に載置された荷物500を前後方向の何れにも移送することができる。本実施形態のベルトコンベア14は、移送部に該当する。
【0033】
2.効果
本実施形態に係る車両1の前部構造では、フロントトランク12の収容空間12aとグローブボックス11の収容空間11aとが、連通部13の連通空間13aによって連通されているので、車室1b側からもフロントトランク12へと荷物を収容することができる。これより、乗員が車両1から降車することなく、フロントトランク12に対して荷物500を収容することができ、高い利便性を実現することができる。
【0034】
また、車両1の前部構造では、フロントトランク12から連通部13にかけての領域に配設されたベルトコンベア14を備えるので、連通空間13a内に位置する荷物500を車室1b側に取り出すこともできる。よって、グローブボックス11とフロントトランク12との間の距離に関係なく、車室1b側から荷物500の出し入れが可能であって、さらに高い利便性を実現することができる。
【0035】
また、車両1の前部構造では、グローブボックス11を車室側収容部としているので、新たな収容部を設けなくてもよい。そして、グローブボックス11は蓋11bを有するので、新たに設けた収容部の開口にわざわざ蓋を取り付けなくてもよい。よって、車両1の前部構造を採用する場合には、大幅に車両1の設計変更をすることなく、車室1bとフロントトランク12との間の連通構造を構成することが可能である。
【0036】
なお、車両1の前部構造では、蓋11bを有するグローブボックス11をフロントトランク12との連通対象としているので、フロントトランク12から車室1bに向けて臭いが漏れ出たり、荷物500が車室1b側に零れ落ちたりすることが抑制可能である。
【0037】
また、車両1の前部構造では、ベルトコンベア14がフロントトランク12の収容空間12a内まで進入するように設けられているので、グローブボックス11から連通部13を介してフロントトランク12へと荷物500を収容することもできる。よって、連通部13の連通空間13aにのみベルトコンベア14が設けられている場合に比べて、より多くの荷物500を収容することができる。また、荷物500を収容するための箇所を広い領域から選択することが可能となる。
【0038】
また、車両1の前部構造では、荷物500を移送する移送部としてベルトコンベア14を採用するので、ベルト14c上に載置された荷物500を収容空間12aおよび連通空間13aにおける任意の箇所まで移動させることができる。なお、本実施形態では、モータ14dによってベルトコンベア14を駆動することとしたが、手動でベルトコンベア14を駆動してもよい。
【0039】
以上のように、本実施形態に係る車両1の前部構造では、車両1の前部1aに設けられたフロントトランク12の収納空間12aに対して車室1b内からも荷物500を収容することができる。
【0040】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る車両の前部構造について、図4を用いて説明する。図4では、車両の前部構造の内の一部を抜き出して図示している。図4で図示を省略している部分については、上記第1実施形態と同じである。以下では、上記第1実施形態と同じ構成を有する部分についての重ねての説明を省略する。
【0041】
図4に示すように、本実施形態に係る車両の前部構造では、スライドトレイ24を移送部として備える。スライドトレイ24は、トレイ24aと、2本のレール24bと、複数のキャリッジ24cとを有する。
【0042】
スライドトレイ24aは、板状の部材であって、荷物を載置できる。スライドレール24bは、フロントトランク12の内底面12cから連通部13の内底面13bに至る領域(図2を参照。)に敷設される。なお、レール24bについては、1本だけ敷設されてもよいし、3本以上が敷設されてもよい。キャリッジ24cは、トレイ24aの下面に取り付けられており、レール24b上を前後方向に摺動する。
【0043】
なお、図4では詳細な図示を省略しているが、トレイ24aの移動に関しては、モータなどの駆動源を備えてもよいし、乗員が手動で行うこととしてもよい。
【0044】
本実施形態に係る車両の前部構造は、移送部としてスライドトレイ24を備える点を除き、上記第1実施形態と同様の構成を有するので、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0045】
[第3実施形態]
第3実施形態に係る車両の前部構造について、図5を用いて説明する。図5では、車両の前部構造の内の一部を抜き出して図示している。図5で図示を省略している部分については、上記第1実施形態と同じである。また、図5でも上記第1実施形態と同じ構成を有する部分については、同じ符号を付している。そして、上記第1実施形態と同じ構成を有する部分についての重ねての説明を省略する。
【0046】
図5に示すように、本実施形態に係る車両の前部構造では、移送部であるベルトコンベア34が連通部13の連通空間13a内に限り配置されている。ベルトコンベア34は、上記第1実施形態のベルトコンベア14と同様に、ローラ34a,34bと、ベルト34cと、モータ(図示を省略。)とを有する。
【0047】
ローラ34a,34bは、連通部13の内底面13b上に軸支されている。そして、ベルトコンベア34の後端部34dは、連通部13とグローブボックス11との接続箇所よりも若干前方側に配され、ベルトコンベア34の前端部34eは、連通部13とフロントトランク12との接続箇所よりも若干後方側に配されている。なお、後端部34dを連通部13とグローブボックス11との接続箇所に配し、前端部34eを連通部13とフロントトランク12との接続箇所に配してもよい。
【0048】
本実施形態に係る車両の前部構造は、ベルトコンベア34の配設範囲が上記第1実施形態とは異なるが、その他の構成は同様であるので、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0049】
また、本実施形態に係る車両の前部構造では、ベルトコンベア34の配設範囲を上記第1実施形態よりも短くしているので、前突時に前方から衝撃力が加わった際にも車室内へのベルトコンベア34の進入量を小さく抑えることができる。よって、本実施形態に係る車両の前部構造では、前突時における乗員の保護という観点から優位である。
【0050】
[第4実施形態]
第4実施形態に係る車両の前部構造について、図6を用いて説明する。図6では、車両の前部構造の内の一部を抜き出して図示している。図6で図示を省略している部分については、上記第1実施形態と同じである。以下では、上記第1実施形態と同じ構成を有する部分についての重ねての説明を省略する。
【0051】
図6に示すように、本実施形態に係る車両の前部構造は、移送部としてのベルトコンベア44を備える。ベルトコンベア44は、ローラ44a,44b、ベルト44c、モータ44dに加えて、縦壁部44eを有する。
【0052】
縦壁部44eは、ベルト44c上に取り付けられており、ベルト44cの幅と略同じ幅を有する。そして、縦壁部44eは、ベルト44c上に所定の高さを有するとともに、連通部の周囲壁に接触しないように構成されている。そして、縦壁部44eは、モータ44dの駆動によるベルト44cの走行に連動して、ローラ44aの上方位置からローラ44bの上方位置までの間を移動可能となっている。
【0053】
本実施形態に係る車両の前部構造は、ベルトコンベア44が縦壁部44eを有する点を除き、上記第1実施形態と同様の構成を有するので、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0054】
また、本実施形態に係る車両の前部構造では、ベルトコンベア44の縦壁部44eがベルト44c上に載置された荷物500の位置ズレを規制する機能を有する。即ち、本実施形態の縦壁部44eは、位置ズレ規制部に該当する。このように縦壁部44eを有するベルトコンベア44を採用することにより、例えば、荷物500が転がりやすい形状のものであったり、滑りやすいものであったりしても、グローブボックス11側に荷物500を取り出そうとする場合にも円滑に荷物500を移送させることが可能である。
【0055】
また、車両の走行によりベルト44cなどに振動が加わった場合にも、荷物500が不所望にフロントトランクの側へと移動してしまうのを抑制することもできる。
【0056】
ここで、本実施形態では、位置ズレ規制部の一例として縦壁部44eを採用したが、これ以外にも網状の部材や縦棒などを採用することも可能である。
【0057】
[第5実施形態]
第5実施形態に係る車両の前部構造について、図7を用いて説明する。図7では、車両の前部構造の内の一部を抜き出して図示している。図7で図示を省略している部分については、上記第1実施形態と同じである。また、図7でも上記第1実施形態と同じ構成を有する部分については、同じ符号を付している。そして、上記第1実施形態と同じ構成を有する部分についての重ねての説明を省略する。
【0058】
図7に示すように、本実施形態に係る車両の前部構造では、フロントトランク22が仕切り部22bを有する。仕切り部22bは、収容空間22aを2つの空間22a1,22a2に仕切る。
【0059】
仕切り部22bによって仕切られた一方の空間22a1は、ベルトコンベア14が進入していない空間(第1空間)である。第1空間22a1に対する荷物の出し入れは、ボンネットを開けて行われる。
【0060】
これに対して、仕切り部22bによって仕切られたもう一方の空間22a2は、連通部13が接続され、ベルトコンベア14の一部が進入している空間(第2空間)である。第2空間22a2への荷物の出し入れは、ボンネットを開けて行うこともできるし、ベルトコンベア14を用いてグローブボックス11(車室内側)から行うこともできる。
【0061】
なお、仕切り部22bは、板状の部材で形成されており、ベルトコンベア14よりも高い位置まで仕切るように形成されている。
【0062】
本実施形態に係る車両の前部構造は、フロントトランク22の収容空間22aが仕切り部22bによって2つの空間22a1,22a2に仕切られている点を除き、上記第1実施形態と同様の構成を有するので、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0063】
また、本実施形態に係る車両の前部構造では、仕切り部22bによって収容空間22aを2つの空間22a1,22a2に仕切っているので、車両の走行中に車室側から出し入れするような荷物を第2空間22a2に収容し、それ以外の荷物を第1空間22a1に収容するなど、ユーザの使用態様に応じた使い方が可能である。
【0064】
さらに、仕切り部22bが板状の部材で形成されているので、第2空間22a2内に収容された荷物が走行時における振動などにより不所望に第1空間22a1側に移動したりするのを抑制することもできる。
【0065】
[第6実施形態]
第6実施形態に係る車両の前部構造について、図8を用いて説明する。図8では、車両の前部構造の内の一部を抜き出して図示している。図8で図示を省略している部分については、上記第1実施形態と同じである。また、図8でも上記第1実施形態と同じ構成を有する部分については、同じ符号を付している。そして、上記第1実施形態と同じ構成を有する部分についての重ねての説明を省略する。
【0066】
図8に示すように、本実施形態に係る車両の前部構造では、フロントトランク32の底壁の一部が開口されており(開口部32b)、連通部23の底壁の一部も開口されている(開口部23b)。
【0067】
上記第1実施形態では、ベルトコンベア14がフロントトランク12および連通部13の内底面12c、13b上に配されていたが(図2を参照。)、本実施形態では、ベルトコンベア54が開口部32b,23b内に填まり込むように配されている。そして、ベルトコンベア54のローラ54a,54bは、ベルト54cの上面がフロントトランク32の開口部32bを臨む上縁部および連通部23の開口部23bを臨む上縁部に対して略段差ができないように配設されている。
【0068】
本実施形態に係る車両の前部構造は、フロントトランク32および連通部23に対するベルトコンベア54の配設形態を除き、上記第1実施形態と同様の構成を有するので、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0069】
また、本実施形態に係る車両の前部構造では、フロントトランク32の開口部32bおよび連通部23の開口部23bにベルトコンベア54が填まり込むように配しているので、上下方向でのスペース効率を向上させることができる。即ち、フロントトランク32や連通部23の上下方向での高さを抑えながら、高さが高い荷物を収容することができる。
【0070】
[変形例]
上記第1実施形態から上記第6実施形態では、連通部13,23の車室1b側の接続対象をグローブボックス11としたが、本発明は、連通部の車室側の接続対象はこれに限定を受けるものではない。インストルメントパネルの上部や下部にグローブボックスとは別の収容部を設け、当該収容部を連通部の接続対象としてもよい。ただし、この場合には、収容部に開閉可能な蓋を設けることが臭いの漏れ出しや荷物の零れ落ちなどを防ぐ観点から望ましい。
【0071】
また、上記第1実施形態から上記第6実施形態では、連通部13,23の車室1b側の接続対象をグローブボックス11としたため、車室1bの助手席側部分1dに車室側収容部を配置することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、インストルメントパネルにおけるステアリングホイールの前方部分に車室側収容部を設けることや、運転席と助手席との間の前方部分に車室側収容部を設けることとしてもよい。
【0072】
また、上記第1実施形態から上記第6実施形態では、車両1の前部1aに1つのフロントトランク12,22,32を設けることとしたが、本発明は、車両の前部に複数のフロントトランクを設けることとしてもよい。この場合には、少なくとも1つのフロントトランクに対して連通部を介して車室側収容部と接続しておけばよい。
【0073】
また、上記第5実施形態では、仕切り部22bによってフロントトランク22の収容空間22aを2つの空間22a1,22a2に仕切ることとしたが、本発明は、フロントトランクの収容空間を3つ以上の空間に仕切ることとしてもよい。
【0074】
また、上記第1実施形態、および上記第3実施形態から上記第6実施形態では、移送部の一例としてベルトコンベア14,34,44,54を採用し、上記第2実施形態では、移送部の一例としてスライドトレイ24を採用することとしたが、本発明は、移送部についてこれに限定を受けるものではない。例えば、リング状のワイヤーロープをフロントトランクから連通部に至る範囲に張り渡し、ワイヤーロープの一部に荷物を収納できる袋体などを取り付けてなる移送部などを採用することもできる。また、エアーシュータを移送部として採用することもできる。
【0075】
また、上記第1実施形態、および上記第3実施形態から上記第6実施形態では、前後方向に直線状に延びるベルトコンベア14,34,44,54を採用したが、本発明では、ベルトコンベアの配設形態についてこれに限定を受けるものではない。例えば、カーブコンベアを用いることや、直線状に延びるコンベアとカーブコンベアとを組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 車両
1a 前部
11 グローブボックス(車室側収容部)
12,22,32 フロントトランク
13,23 連通部
14,34,44,54 ベルトコンベア(移送部)
24 スライドトレイ(移送部)
24a トレイ
24b レール
24c キャリッジ
34d 後端部
34e 前端部
44e 縦壁部(位置ズレ規制部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8