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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002352
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】営巣除去袋
(51)【国際特許分類】
   A01M 29/32 20110101AFI20241226BHJP
   A01M 99/00 20060101ALI20241226BHJP
   H02G 1/02 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
A01M29/32
A01M99/00
H02G1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102464
(22)【出願日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】520307713
【氏名又は名称】関西電力送配電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100127797
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 晴洋
(72)【発明者】
【氏名】藤森 真弥
(72)【発明者】
【氏名】山下 久志
【テーマコード(参考)】
2B121
5G352
【Fターム(参考)】
2B121AA07
2B121BB14
2B121BB32
2B121BB40
2B121EA21
2B121FA02
5G352AB01
5G352AM05
(57)【要約】
【課題】巣の高所からの撤去の際に、営巣構成物の落下や飛散を抑制できる営巣除去袋を提供する。
【解決手段】営巣除去袋1は、鉄塔6等の構造物の高所に存在する営巣を除去するために用いられる。営巣除去袋1は、営巣を収容可能な容積を有し、営巣の取り入れ用の開口2Hを有する袋本体2と、開口2Hを塞ぐ押えシート3と、押えシート3が開口2Hを塞いだ状態で、開口2Hを絞ることが可能な絞りロープ4と、袋本体2を作業者が背負う際に使用される背負いベルト5とを備える。押えシート3は、縫合部31により袋本体2と結合されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の高所に存在する営巣を除去するための営巣除去袋であって、
営巣を収容可能な容積を有し、前記営巣の取り入れ用の開口を有する袋本体と、
前記開口を塞ぐ押えシートと、
前記押えシートが前記開口を塞いだ状態で、前記開口を絞ることが可能な絞り手段と、
を備える営巣除去袋。
【請求項2】
請求項1に記載の営巣除去袋において、
前記押えシートは、当該押えシートの周縁の一部が前記袋本体に結合された結合部を有する、営巣除去袋。
【請求項3】
請求項2に記載の営巣除去袋において、
前記結合部は、前記袋本体を前記開口が下向きとなるような姿勢としたとき、当該結合部から前記押えシートが垂下して前記開口を実質的に全開とする結合態様を有する、営巣除去袋。
【請求項4】
請求項2または3に記載の営巣除去袋において、
前記袋本体は、円形状の底部と、前記底部の周縁から上方に延びる円筒状の側部とを有し、前記開口は前記側部の上端に位置している、営巣除去袋。
【請求項5】
請求項4に記載の営巣除去袋において、
前記袋本体は、前記底部の直径よりも前記側部の高さの方が短い形状を有する、営巣除去袋。
【請求項6】
請求項4に記載の営巣除去袋において、
前記底部の背面に取り付けられ、前記袋本体を作業者が背負う背負いベルトをさらに備える、営巣除去袋。
【請求項7】
請求項6に記載の営巣除去袋において、
前記袋本体を作業者が背負った状態で、当該袋本体の上端側に前記結合部が位置するよう、前記押えシートが前記袋本体に結合されている、営巣除去袋。
【請求項8】
請求項1に記載の営巣除去袋において、
前記袋本体は、前記開口の周縁部に複数の通し孔を有し、
前記絞り手段は、前記複数の通し孔に挿通された絞りロープである、営巣除去袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電線の鉄塔などの構造物の高所に存在する営巣を除去する際に用いられる営巣除去袋に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧送電線を支持する鉄塔には、カラスなどの野生鳥類が営巣することがある。営巣の構成物の一部、例えば導電性の線条体が短絡経路を作り、地絡事故を引き起こすことが希に生じる。このため、営巣は可及的に除去することが望ましい。営巣の除去には、作業員が鉄塔の営巣位置まで登り、当該営巣を撤去するとともに、撤去した営巣を地上まで持ち帰る作業が必要となる。
【0003】
特許文献1には、折り畳みが可能な営巣材収納作業網が開示されている。作業者は、前記営巣材収納作業網を折り畳んだ状態で鉄塔に登り、本来の作業網の状態に組み立て、当該作業網で営巣を撤去する。特許文献2には、営巣の下方において鉄塔に展開するシートを含み、鉄塔から落とした営巣を包み込んで回収する営巣除去袋が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-182734号公報
【特許文献2】特開2018-38308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高所からの営巣の除去に際しては、鉄塔からの営巣の撤去時、ならびに撤去した営巣の持ち帰り時などに、営巣構成物の落下や飛散を抑制することが肝要となる。しかし、特許文献1の作業網では、営巣構成物の落下・飛散がどうしても生じてしまう。特許文献2の営巣除去袋では、前記シート上に営巣を落下させる際に営巣構成物の飛散が生じ易い。
【0006】
本発明の目的は、営巣の高所からの撤去の際に、営巣構成物の落下や飛散を抑制できる営巣除去袋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係る営巣除去袋は、構造物の高所に存在する営巣を除去するための営巣除去袋であって、営巣を収容可能な容積を有し、前記営巣の取り入れ用の開口を有する袋本体と、前記開口を塞ぐ押えシートと、前記押えシートが前記開口を塞いだ状態で、前記開口を絞ることが可能な絞り手段と、を備える。
【0008】
この営巣除去袋によれば、開口を通して営巣をそっくり袋本体へ取り入れることが可能である。例えば、営巣を前記開口から包み込むようにして袋本体に取り入れることができる。このため、営巣を構造物から取り外す際の営巣構成物の落下・飛散を抑制し易い。営巣の取り入れ後は、押えシートで前記開口を塞ぎ、さらに絞り手段で前記開口を絞ることができる。従って、高所から地上への営巣の持ち帰り時にも、営巣構成物の落下・飛散を抑制できる。
【0009】
上記の営巣除去袋において、前記押えシートは、当該押えシートの周縁の一部が前記袋本体に結合された結合部を有することが望ましい。
【0010】
この営巣除去袋によれば、結合部において袋本体に押えシートが繋がった状態で、袋本体の開口の開閉が行える。このため、営巣の除去作業性に優れる。例えば、営巣を袋本体へ取り入れた後に、押えシートを営巣に上掛けする作業を簡単に行える。また、袋本体に押えシートが一体化されているので、高所への昇降時における営巣除去袋の運搬性、倉庫等での保管性にも優れる。
【0011】
上記の営巣除去袋において、前記結合部は、前記袋本体を前記開口が下向きとなるような姿勢としたとき、当該結合部から前記押えシートが垂下して前記開口を実質的に全開とする結合態様を有することが望ましい。
【0012】
この営巣除去袋によれば、袋本体を開口が下向きになる姿勢とすれば、押えシートが垂下して前記開口が開く。このため、営巣に対して上側から袋本体を被せ、営巣を持ち上げながら袋本体を反転させ、営巣を袋本体に取り入れるという作業が行い易くなる。当該作業を行えば、営巣構成物のこぼれ落ちを最小限とすることが可能である。
【0013】
上記の営巣除去袋において、前記袋本体は、円形状の底部と、前記底部の周縁から上方に延びる円筒状の側部とを有し、前記開口は前記側部の上端に位置していることが望ましい。
【0014】
営巣の多くは円形のドーム型の形状を呈している。上記の営巣除去袋によれば、営巣の収容効率を高めることができる。
【0015】
この場合、前記袋本体は、前記底部の直径よりも前記側部の高さの方が短い形状を有することがより望ましい。
【0016】
この営巣除去袋によれば、袋本体が軸長の短い円筒型、つまり厚さの薄い円筒型の形状となる。このため、営巣の取り入れ後において袋本体をコンパクトにでき、充電部への接触等が起こり難くすることができる。
【0017】
上記の営巣除去袋において、前記底部の背面に取り付けられ、前記袋本体を作業者が背負う背負いベルトをさらに備えることが望ましい。
【0018】
この営巣除去袋によれば、作業員は、営巣を袋本体へ取り入れた後、営巣の持ち帰り時に背負いベルトを利用して営巣除去袋を背負うことができる。このため、作業員の両手がフリーとなり、高所からの下降動作をスムースに行わせることができる。
【0019】
上記の営巣除去袋において、前記袋本体を作業者が背負った状態で、当該袋本体の上端側に前記結合部が位置するよう、前記押えシートが前記袋本体に結合されていることが望ましい。
【0020】
この営巣除去袋によれば、袋本体を作業者が背負った状態では、押えシートが結合部から垂下した状態となる。つまり、押えシートが自ずと開口を塞ぐ姿勢となる。従って、作業員の高所からの下降時において、営巣構成物の落下を一層抑制できる。
【0021】
上記の営巣除去袋において、前記袋本体は、前記開口の周縁部に複数の通し孔を有し、前記絞り手段は、前記複数の通し孔に挿通された絞りロープであることが望ましい。
【0022】
この営巣除去袋によれば、押えシートで袋本体の開口を塞いだ後、絞りロープで前記開口を絞るという簡単な操作で、営巣を完全に包み込むことが可能となる。従って、営巣除去作業の効率化を図ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、営巣の高所からの撤去の際に、営巣構成物の落下や飛散を抑制できる営巣除去袋を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1(A)は、本発明の一実施形態に係る営巣除去袋の概略的な斜視図、図1(B)は営巣の取り入れ開口を開放した状態の営巣除去袋の斜視図である。
図2図2(A)は、営巣除去袋の袋本体の正面図、図2(B)は、袋本体の側面図、図2(C)は、押えシートの正面図である。
図3図3は、作業者に背負われた状態の営巣除去袋を示す図である。
図4図4(A)~(C)は、営巣除去袋を用いた、鉄塔上の営巣の除去手順を示す図である。
図5図5(A)~(C)は、営巣除去袋を用いた、鉄塔上の営巣の除去手順を示す図である。
図6図6(A)~(C)は、営巣除去袋を用いた、鉄塔上の営巣の除去手順を示す図である。
図7図7は、営巣除去袋の実例の正面図である。
図8図8は、営巣除去袋の実例の背面図である。
図9図9は、営巣除去袋の実例の平面図である。
図10図10は、営巣除去袋の実例の右側面図である。
図11図11は、営巣除去袋の実例の左側面図である。
図12図12は、営巣除去袋の実例の底面図である。
図13図13は、営巣除去袋の実例の斜視図である。
図14図14は、営巣除去袋の実例において、押えシートを開いた状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態に係る営巣除去袋を、図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態の営巣除去袋は、高層ビル、電波塔、モニュメント、送電鉄塔、電柱などの構造物の高所に存在する野生の鳥類の営巣を、作業者が除去して当該営巣を持ち帰る際に使用される袋である。本実施形態の営巣除去袋の好ましい具体的用途の一つは、カラスが高圧送電線を支持する鉄塔に作る営巣を、撤去および収容する用途である。この場合、作業者が営巣除去袋を持参して鉄塔の営巣箇所まで登り、営巣を撤去して営巣除去袋へ当該営巣を取り入れた後、鉄塔から下塔するという作業が行われる。
【0026】
[営巣除去袋の構成]
図1(A)は、本発明の一実施形態に係る営巣除去袋1の概略的な斜視図である。営巣除去袋1は、袋本体2、押えシート3、絞りロープ4(絞り手段)および背負いベルト5を備えている。図1(B)は、図1(A)の営巣除去袋1において、押えシート3を開いた状態を示す図である。図2(A)は、袋本体2の正面図、図2(B)は、袋本体2の側面図、図2(C)は、押えシート3の正面図である。
【0027】
袋本体2は、除去対象の営巣を収容可能な容積を有し、営巣の取り入れ用の開口2Hを有している。袋本体2は、例えば幌生地やデニムなどの高強度の布、レザーや合成樹脂シートなどの縫製品で構成することができる。袋本体2は、円形状の底部21と、底部21の周縁から上方に延びる円筒状の側部22とを有している。営巣の取り入れ用の開口2Hは側部22の上端23に位置する円形の開口である。袋本体2は、底部21の直径dよりも側部22の高さhの方が短い、つまり軸長の短い短筒の円筒型形状を有している。
【0028】
鳥類の営巣は、概ね産卵および養育箇所となる中央部分と、この中央部分を下支えする外周部分とを含む、円形のドーム型の形状を呈している。短筒の円筒型形状を有する袋本体2とすることで、ドーム型の営巣の収容効率を高めることができる。また、営巣の取り入れ後において袋本体2をコンパクトにでき、鉄塔の充電部への接触等が起こり難くすることができる。
【0029】
カラスが高圧送電鉄塔に作る営巣は、直径が50cm~70cm程度、高さが20cm~30cm程度である。構成材は、樹木の枝、草の茎、羽毛などであるが、電線や金属線などの導電性を有する人工物が含まれることもある。このようなカラスの営巣を除去対象とする場合、例えば、強度および柔軟性に優れる幌生地を用い、底部21の直径d=60cm、側部22の高さh=30cmの袋本体2とすることができる。
【0030】
d/hは、1~3程度、好ましくは1.5~2.5程度の範囲から選択することができる。d/hが1を下回ると、袋本体2が軸方向に長い円筒体となり、作業者が営巣除去袋1を背負ったときに背中からの突出度が大きくなる。この場合、充電部への接触の可能性が高まり、また鉄塔骨材への接触が生じて鉄塔昇降に支障を来すといった不具合が生じ易くなる。一方、d/hが3を上回ると、袋本体2が過度な短筒形状となり、営巣の収容性が悪化する。なお、袋本体2の円筒形状を保持するための骨材や、折り畳みを可能とするフレーム材を組み込んでも良い。もちろん、骨材等を一体化させず、自在に折り畳みまたは丸め込みが可能な袋本体2としても良い。
【0031】
押えシート3は、袋本体2の開口2Hを塞ぐ、円形のシートである。押えシート3は、底部21の直径dと同等の直径を有するものとし、袋本体2と同じ材料で形成することができる。袋本体2に開口2Hを通して収容された営巣は、開口2Hから脱落しないように押えシート3により押さえられる。
【0032】
押えシート3は、袋本体2と結合するための縫合部31(結合部)を有している。縫合部31は、円形の押えシート3の周縁近傍において、押えシート3の一部を袋本体2の上端23付近に縫合して形成されている。縫合長は、押えシート3の周長の1/8~1/15程度で良い。押えシート3の周縁の残部は、袋本体2に縫合されていない。このため押えシート3は、縫合部31を基端部として、袋本体2に対して自在に動かせる。すなわち、図1(B)に示すように、袋本体2の開口2Hを開放したり、図1(A)に示すように開口2Hを塞いだりすることが、自在に行える。
【0033】
また、袋本体2を開口2Hが下向きとなるような姿勢としたとき、縫合部31から押えシート3が自重で垂下して開口2Hを実質的に全開とすることができる。このような縫合部31の結合態様としておくことで、作業者は、袋本体2を開口2Hが下向きになる姿勢とすれば、自ずと押えシート3が垂下して開口2Hを開くことができる。このため、営巣に対して上側から袋本体2を被せ、袋本体2を反転させながら営巣を持ち上げ、営巣を袋本体に取り入れるという作業が行い易くなる。これにより、営巣構成物のこぼれ落ちを最小限とした、営巣の袋本体2への取り込みが可能である。
【0034】
押えシート3は、袋本体2とは別体とすることもできる。しかし、縫合部31により押えシート3を袋本体2に一体化しておけば、袋本体2に押えシート3が繋がった状態で、開口2Hの開閉が行える。従って、営巣の除去作業性に優れる。例えば、営巣を袋本体2へ取り入れた後に、押えシート3を営巣に上掛けする作業を簡単に行える。また、高所への昇降時における営巣除去袋1の運搬性にも優れる。さらに、倉庫等への保管の際に、押えシート3が袋本体2と分離してしまうことがなく、押えシート3の紛失を防止できる。なお、縫合に依らない他の結合部としても良く、例えば面ファスナーで袋本体2と押えシート3とを結合させても良い。
【0035】
絞りロープ4は、堅牢な繊維の撚り線からなり、押えシート3が開口2Hを塞いだ状態で、開口2Hを絞るために設けられている。袋本体2の上端23、つまり開口2Hの周縁部には、周方向に均等間隔で配置された複数の通し孔24が設けられている。絞りロープ4は、通し孔24に挿通される。本実施形態では、絞りロープ4および通し孔24が、開口2Hを絞る絞り手段である。絞りロープ4は、袋本体2の内側から通し孔24を通って外側へ、周方向の次の通し孔24には外側から内側へというように挿通される。絞りロープ4の両方のロープ端末41を引っ張り、通し孔24間の距離を縮めることで、開口2Hを絞ることができる。通し孔24に代えて、袋本体2の上端23を折り返し縫製してなる周方向通し孔を設け、当該周方向通し孔に絞りロープ4を挿通する、巾着絞り型の絞り手段としても良い。
【0036】
背負いベルト5は、袋本体2を作業者が背負うためのベルトである。背負いベルト5は、袋本体2の底部21の背面にループ状に取り付けられた一対のベルト片からなる。背負いベルト5の態様に限定はなく、作業者が背負い易い形態であれば良い。なお、図8では、一対のベルト片がV字型に配置された背負いベルト5を例示している。作業者は、営巣を袋本体2へ取り入れた後、営巣の持ち帰り時に背負いベルト5を利用して営巣除去袋1を背負うことができる。このため、作業員の両手がフリーとなり、高所からの下降動作をスムースに行わせることができる。
【0037】
図3は、作業者OPに背負われた状態の営巣除去袋1を示す図である。背負いベルト5が作業者OPの肩に通され、袋本体2の底部21が作業者OPの背中に対峙している。絞りロープ4は、ロープ端末41が引っ張られ、押えシート3を袋本体2の内側に押し込むようにして、開口2Hが絞られている。絞りロープ4の引っ張り出し部分には、当該絞りロープ4を結んだ締結部42が形成されている。袋本体2は短筒形状であるため、営巣を収容した状態でも、作業者OPの背中からの突出度が少ない。
【0038】
袋本体2を作業者OPが背負った状態で、当該袋本体2の上端側に縫合部31が位置するよう、押えシート3が袋本体2に結合されている。図3では、絞りロープ4の絞りにより縫合部31は隠れているが、背負われている袋本体2の上端付近に縫合部31が位置している。このような縫合部31とすれば、袋本体2を作業者OPが背負った状態では、押えシート3が縫合部31から垂下した状態となる。つまり、押えシート3が自ずと開口2Hを塞ぐ姿勢となる。従って、例えば営巣撤去後の作業者OPの高所からの下降時において、袋本体2からの営巣構成物の脱落を一層抑制できる。
【0039】
[営巣除去袋の使用例]
続いて、上記で説明した営巣除去袋1の使用例について説明する。図4(A)~図6(C)は、営巣除去袋1を用いた、鉄塔6上の営巣BNの除去手順を示す図である。鉄塔6は、上下方向に延びる主柱材61と、主柱材61から水平方向に延び一対の主柱材61間を繋ぐ水平材62と、補強用の斜材63とを含む。図4図6では、主柱材61における、水平材62および斜材63の延び出し位置に、営巣BNが作られている例を示している。営巣BNは、上面視で概ね円形で、中央部が下方に膨らむドーム型の形状を備え、営巣下面が水平材62で支持された態様である。
【0040】
作業者は営巣除去袋1を携帯し、鉄塔6の営巣BNが作られている位置まで登る。営巣除去袋1は、丸めた状態、あるいは折り畳んだ状態として携帯することができる。営巣BNの位置まで到達したら、図4(A)に示すように、営巣除去袋1を営巣BNの上側に配置する。営巣除去袋1は、絞りロープ4が緩められて押えシート3が拘束されておらず、袋本体2の開口2Hが開放された状態とされる。この状態で営巣除去袋1が反転され、つまり上端23の開口2Hが下に向けられ、営巣BNの上から営巣除去袋1が被せられる。押えシート3は垂下した状態である。
【0041】
次いで作業者は、図4(B)~(C)に示すように、営巣BNを包み込むようにして、営巣BNを開口2Hから袋本体2の内部へ取り入れる。なお、営巣BNに居る卵や雛は、作業者が別途持参した収容袋に入れて保護する。営巣BNの外周縁付近の営巣構成物、例えば木の枝が開口2Hのカバー域から飛び出ているような場合、当該飛び出し枝を作業員が手指で袋本体2内へ収める。すなわち、図4(C)に示すように、営巣除去袋1を営巣BNに対して上から被せた状態で、営巣除去袋1よりもはみ出している枝等があれば、その枝等を作業員が手指を使って袋本体2へ詰め込む。
【0042】
上記の作業により、営巣BNの全体が袋本体2で包み込まれた状態となる。続いて、作業者は、営巣BNの包み込み状態が維持されるよう営巣除去袋1を両手で抱え込みながら、営巣BNを持ち上げる。営巣BNが鉄塔6の水平材62と癒着や係合している部分があれば、当該癒着や係合を解除する。その後、図5(A)に示すように、作業者は営巣除去袋1を反転させる。つまり、開口2Hが上向きとなるように、営巣除去袋1を半回転させる。
【0043】
このように、本実施形態では、営巣BNの鉄塔6からの持ち上げ(取り外し)と、営巣除去袋1への営巣BNの袋入れとが、ほぼ同時に行われる。例えば、単純なバケツ型の営巣除去袋である場合、営巣BNを鉄塔6から持ち上げ、次に営巣BNをバケツ型の袋に収納するという2段階の作業が必要となる。営巣BNの持ち上げの際に、枝等の営巣構成物の落下が生じ易い。また、持ち上げた営巣BNを袋に収める際にも、営巣構成物の落下が生じてしまうことがある。しかし、本実施形態の営巣除去袋1を用いれば、営巣BNの持ち上げおよび袋入れを一気に達成できるので、落下物の発生を大幅に抑制できる。
【0044】
続いて作業者は、図5(B)に示すように、反転させた営巣除去袋1を水平材62の上に載置する。前記反転の際に袋本体2からはみ出した枝等があれば、これを袋本体2内へ押し込む。次に作業者は、図5(C)に示すように、営巣BNを上から押さえるように、押えシート3で開口2Hを塞ぐ。この際、押えシート3と袋本体2の上端23との間に隙間が生じないように、押えシート3の外周縁部分が、収容された営巣BNと袋本体2の側部22との隙間に押し込まれる。
【0045】
図6(A)は、押えシート3による開口2Hの閉塞が完了した状態を示している。この段階で、営巣構成物の袋本体2からのはみ出しが無いかが確認される。営巣BNの袋本体2への収容状態が良好であれば、絞りロープ4による開口2Hの絞りが行われる。すなわち、図6(B)に示すように、作業者はロープ端末41を引っ張り、開口2Hの径が小さくなるように絞る。この際、押えシート3の外周縁部分が絞りロープ4の高さ位置よりも下方へ潜るよう、作業者は前記外周縁部分を押さえ込みながらロープ端末41を引っ張る。この作業により、袋本体2の上端23が、押えシート3の外周縁部分に上から重なるような状態となる。
【0046】
最後に作業者は、図6(C)に示すように、ロープ端末41を引っ張りにより生じた余長部分に結び目を作り、締結部42を形成する。締結部42によって、開口2Hが絞られ、且つ絞りロープ4で押えシート3の外周縁部分が押圧された状態が維持される。つまり、袋本体2に収容された営巣BNが、押えシート3で押さえられた状態が維持される。しかる後、作業者は、背負いベルト5を利用して営巣除去袋1を背負う。この背負い状態は、先に図3に示した通りである。作業者は、営巣除去袋1を背負った状態で、鉄塔6から降塔する。営巣BNは、袋本体2および押えシート3で完全に包まれた状態であるので、降塔時に営巣構成物が飛散することはない。
【0047】
[営巣除去袋の実例]
図7図14は、営巣除去袋1の実例を示す図である。図7図14に付している符号は、図1図6において付した符号と同じである。営巣除去袋1は、袋本体2、押えシート3、絞りロープ4および背負いベルト5を備えている。図7は、営巣除去袋1の正面図である。袋本体2の上面、つまり押えシート3と正対する方向を正面図と扱っている。図8は営巣除去袋1の背面図、図9は平面図、図10は右側面図、図11は左側面図、図12は底面図、図13は斜視図である。
【0048】
図14は、押えシート3を開けた状態の営巣除去袋1の斜視図である。押えシート3は縫合部31を回動位置として上方に持ち上がり、袋本体2の開口2Hが露呈している。袋本体2の上端23に沿って周方向に配索されている絞りロープ4のロープ端末41は、縫合部31の裏側に位置している。絞りロープ4は引っ張られておらず、開口2Hは最も拡がった状態である。
【0049】
以上説明した営巣除去袋1によれば、開口2Hを通して営巣BNをそっくり袋本体2へ取り入れることができる。例えば、図4図5に例示したように、営巣BNを上側から開口2Hを通して包み込むようにして袋本体2に取り入れ、袋本体2を反転させつつ営巣BNを持ち上げることで、営巣BNを鉄塔6から除去することができる。このため、営巣BNを鉄塔6から取り外す際の営巣構成物の落下・飛散を抑制できる。営巣BNの取り入れ後は、押えシート3で開口2Hを塞ぎ、さらに絞りロープ4で開口2Hを絞ることができる。従って、鉄塔6から地上への降塔時にも、営巣構成物の落下・飛散を抑制できる。
【符号の説明】
【0050】
OP 作業者
BN 営巣
1 営巣除去袋
2 袋本体
2H 開口
21 底部
22 側部
23 上端
24 通し孔(絞り手段)
3 押えシート
31 縫合部(結合部)
4 絞りロープ(絞り手段)
5 背負いベルト
6 鉄塔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図12
図13
図14